JP6042800B2 - トマトシドaの抽出方法 - Google Patents

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Description

本発明は、トマト種子由来サポニンであるトマトシドA又はその生理学的に許容される塩を含有する、脂質異常症に関連する疾患の予防又は治療用組成物及びその製造方法に関する。本発明はまた、トマトシドA又はその生理学的に許容される塩を含有するコレステロール上昇抑制剤、トリグリセリド上昇抑制剤及び肝中コレステロール蓄積抑制剤に関する。
近年日本人の食生活の欧米化の結果として、コレステロールや脂質を過剰に摂取する人が増え、生体内のコレステロールやトリグリセリドが上昇して脂質異常症及びこれに関連した各種疾病を引き起こす原因になっている。
平成18年国民健康調査の概要によると、このような脂質異常症が疑われる人は日本国内で少なくとも約1410万人と推計されている。脂質異常症は動脈硬化性疾患など、多様な疾患を引き起こす原因となる。例えば動脈硬化性疾患のうち、特に心筋梗塞を中心とした心血管系疾患と、脳梗塞・脳卒中を中心とした脳血管障害による死亡は、がんと並んで大きな位置を占め、日本人の死因の約30%に及んでいる。その危険性は、急速な高齢化社会への移行によってさらに高まることが予想される。日本国内のみならず世界的にも有効な予防法、治療法の確立が急務である。
このような状況に対して薬物療法のみならず、食事内容や運動を中心とする生活習慣の是正が推奨されており、これまでにコレステロール低下作用又はコレステロール上昇抑制作用を有する食品成分として、食物繊維、植物ステロール、サポニン、リン脂質、大豆タンパク質等が報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
一方、トマトは、野菜の中で最も多く栽培されており、世界中で広く食され、人々の健康増進に高く貢献している野菜である。トマトには、例えば食物繊維(セルロース、ペクチン等)等、多くの種類の機能的な栄養成分が含まれ、長年にわたってその研究が進められてきた。
トマトに含まれる代表的なカロテノイド類であるリコピンは、強い抗酸化活性を有することが知られ、前立腺がん、すい臓がん、肺がんの発症リスクの低下、肝機能の正常化、心筋梗塞予防、白内障予防等の効果が報告されている。また、トマト果皮に存在するポリフェノールの一種であるナリンゲニンカルコンが花粉症などの鼻アレルギーに代表されるI型アレルギーを抑制するという報告がある(例えば、非特許文献2、3参照)。
トマトに含まれる成分として、微量ではあるが未熟トマト果実中にα−トマチンと呼ばれるアルカロイド配糖体の存在が知られている。α−トマチンにはステロイド系配糖体であるトマチジンにキシロース1分子、グルコース2分子、ガラクトース1分子が結合しており、その濃度は果実の成熟とともに減少する。α−トマチンは、コレステロールと不溶性複合体を形成する特性があり、ハムスターへの給餌試験では悪玉コレステロールであるLDLコレステロール値を減少させるという報告がある(例えば、非特許文献4参照)。
従来提案されているトマト由来の脂質代謝改善剤として、特許文献1は、トマト果実収穫後のトマト地上部(茎・葉など)から得られたトマチジンを有効成分として含む、動脈硬化の予防・治療剤、血中コレステロール低下剤及びマクロファージの泡沫化阻害剤を開示する。特許文献2は、リコピンを含まず、水不溶性粒子状物質を含まない、水溶性トマト抽出物又はそのフラクションの、血漿トリグリセリド濃度低下作用について開示する。
また、サポニンの一種であるトマトシドAは、トマト種子(種子を含むゼリー部)に非常に多く存在する成分であり(例えば、非特許文献6参照)、界面活性作用を有することが知られている(例えば、非特許文献5参照)。しかしながら、これまでにトマト種子に含まれる成分による生理活性に関する報告はない。
特開2009−209099号公報 特表2008−530076号公報
Atherosclerosis Supplements(2010)11、45−48 日本食品保蔵科学会誌(2007)33、3、143−157 日本食品保蔵科学会誌(2007)33、4、223−232 Food and Chemical Toxicology(2000)38、549−553 Journal of Agricultural and Food Chemistry(2008)56、11432−11440 Journal of Agricultural and Food Chemistry(2009)57、3786−3791
本発明は、高コレステロール血症又は高トリグリセリド血症のような脂質異常症及びこれに関連する疾患を予防又は治療するための組成物を提供することを目的とする。本発明はまた、コレステロール上昇抑制剤、トリグリセリド上昇抑制剤及び肝中コレステロール蓄積抑制剤のいずれか1以上を提供することも目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を重ね、トマトジュース、トマトピューレ、トマトペーストなどに用いるトマト果実の搾汁液を製造する際に発生する搾汁粕から分離したトマトシドAがコレステロールやトリグリセリト等の血中脂質濃度の上昇を抑制し、肝臓中のコレステロールの蓄積を抑制する作用を有することを発見した。また、このトマトシドAを含むトマト加工飲食品は、風味が損なわれることなく、上記の作用がより強化された食品となることを見出した。また、トマトシドAを含む組成物をトマト搾汁粕から容易に効率よく分離する方法を見出した。
本発明者らによる前記の知見に基づく本発明は以下の通りである:
[1]トマトシドA又はその生理学的に許容される塩を含有するコレステロール上昇抑制剤;
[2]トマトシドA又はその生理学的に許容される塩を含有するトリグリセリド上昇抑制剤;
[3]トマトシドA又はその生理学的に許容される塩を含有する肝中コレステロール蓄積抑制剤;
[4]トマトシドA又はその生理学的に許容される塩を含有する、脂質異常症に関連する疾患の予防又は治療用組成物;
[5]前記トマトシドA又はその生理学的に許容される塩の含有量が、0.001〜80重量%である、[1]〜[4]のいずれかに記載の剤又は組成物;
[6][1]〜[4]のいずれか1項に記載の剤又は組成物を配合したトマト加工飲食品であって、前記トマトシドA又はその生理学的に許容される塩の含有量が、0.001〜80重量%である、トマト加工飲食品;
[7]トマト種子を含むトマト果実由来物を、抽出溶媒として10体積%以上90体積%未満の有機溶媒を用いて抽出する工程を含む、トマトシドA又はその生理学的に許容される塩を含む組成物の製造方法;並びに
[8]前記有機溶媒が、エタノール溶媒である、[7]に記載の製造方法。
さらに、本発明は、以下の方法にも関する:
[9]トマトシドA又はその生理学的に許容される塩の有効量を投与する工程を含む、コレステロール上昇抑制方法;
[10]トマトシドA又はその生理学的に許容される塩の有効量を投与する工程を含む、トリグリセリド上昇抑制方法;
[11]トマトシドA又はその生理学的に許容される塩の有効量を投与する工程を含む、肝中コレステロール蓄積抑制方法;及び
[12]トマトシドA又はその生理学的に許容される塩の有効量を投与する工程を含む、脂質異常症に関連する疾患の予防又は治療方法。
本発明により、高コレステロール血症又は高トリグリセリド血症のような脂質異常症及びこれに関連する疾患を予防又は治療するための組成物並びにコレステロール上昇抑制剤、トリグリセリド上昇抑制剤、及び肝中コレステロール蓄積抑制剤のいずれか1以上を提供することができる。特に該組成物及び剤を、飲食品(特にトマト加工飲食品)に配合することにより、風味が損なわれず摂取しやすく、しかもトマトシドA又はその生理学的に許容される塩を単独で摂取するよりも効能のよりすぐれたな飲食品も提供することができる。さらに、本発明によれば、該組成物及び剤をトマト搾汁粕より容易に効率よく分離することができる。
以下、本発明を具体的に説明する。本発明の組成物及び剤(以下、単に「本発明の組成物」ともいう)の有効成分であるトマトシドA(トマトサイドA、tomatosideA)は、以下の構造を有する化合物である。
Figure 0006042800
トマトシドAは、サポニンの一種であり、トマト種子に多く含まれることが知られる水に難溶性の化合物である。本発明の組成物における有効成分であるトマトシドAの生理学的に許容される塩としては上記の構造を有する化合物のナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられるが、所望の作用を有し、生理学的に許容される塩であれば特に限定されない。以下、トマトシドA及び/又はその生理学的に許容される塩を、単に「トマトシドA」ともいう。
トマトシドAとしては、化学的に合成したものを用いてもよいが、より簡便には、トマト種子を含むトマト果実由来物を、抽出溶媒として10体積%以上90体積%未満の有機溶媒を用いて抽出する工程を含む方法により、トマトシドAを含む組成物を得ることができる。以下にその方法を詳述する。
原料となるトマト果実由来物は、トマト種子を含むものであれば特に限定されないが、トマトの品種や成熟度によって、種子の形状、数量が異なることを考慮することが好ましい。トマト果実の搾汁液を得る過程において得られる搾汁粕は、一般的に廃棄されるか、家畜飼料となるが、この搾汁粕を用いれば、廃棄原料を有効利用でき、しかも高濃度のトマトシドAを含む組成物を容易に効率よく得ることができるため好ましい。トマトジュース、トマトピューレ、トマトペーストなどに用いるトマト果実の搾汁液は、常法により、トマト果実を洗浄し、破砕したのち予備加熱を行い、次いで、これを搾汁して得られる。この搾汁の過程において、果実の約1〜5%が搾汁粕として発生する。搾汁粕は主として果皮と種子から構成されており、この中には水溶性食物繊維であるペクチンや不溶性食物繊維であるセルロース、ヘミセルロースなどの繊維質が豊富に含まれるだけでなく、ポリフェノール類やサポニン類も残存している。
上記のトマト果実由来物を、抽出溶媒を用いて、例えば後述の実施例に記載のように、当業者に公知の手法を用いて抽出する。抽出効率を高めるため、トマト果実由来物は乾燥品であることが好ましい。抽出溶媒としては、食品添加物の抽出溶剤となり得る有機溶媒であれば特に限定されず、例えば、アセトン、エタノール、エチルメチルケトン、グリセリン、酢酸エチル、酢酸メチル、ジエチルエーテル、シクロヘキサン、ジクロロメタン、食用油脂、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,2−トリクロロエテン、1−ブタノール、2−ブタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、プロピレングリコール、ヘキサン、水、メタノール等から選択される1又は複数の有機溶媒を用いることができる。これらのうち好ましくは、エタノール(10体積%以上90体積%未満)、メタノール(10体積%以上90体積%未満)、1−ブタノール(30体積%以上90体積%未満)及びヘキサン(5体積%70体積%未満)から選択される有機溶媒を用いることができ、最も好ましくはエタノールを用いることができる。例えば、抽出溶媒として、10体積%以上90体積%未満のエタノール溶媒を用いることができ、好ましくは30体積%以上70体積%以下のエタノール溶媒を用いることができ、より好ましくは70体積%程度のエタノール溶媒を用いることができる。なお、70体積%のエタノール溶媒とは、エタノールと水の体積比7:3の混合物を指す。
抽出溶媒のpHは、トマトシドAが抽出される限り特に制限されないが、抽出効率の観点から、強酸性ではないことが望ましく、pH4以上が好ましく、pH5以上がより好ましい。
抽出時の温度は、トマトシドAが抽出される限り特に制限されないが、抽出効率の観点から、0℃以上55℃未満が好ましく、5℃以上40℃以下がより好ましい。作業容易性の観点から、室温程度の25℃前後で抽出を行うことが特に好ましい。
抽出時間は、トマトシドAが抽出される限り特に制限されないが、抽出効率及び作業容易性の観点から、30分以上が好ましく、1時間以上2時間以下がより好ましい。抽出は、静置抽出及び撹拌抽出のいずれの方法でも行うことができるが、抽出効率の観点から、好ましくは撹拌抽出を行う。
抽出回数は、トマトシドAが抽出される限り特に制限されず、例えば1〜3回程度の抽出を行うことができるが、70体積%のエタノール溶媒を抽出溶媒とし、室温で1時間抽出した場合、1〜2回の抽出で十分な抽出をすることができる。
抽出後、濾過により残渣を除去して得られた抽出液は、常法により、減圧下での濃縮や、凍結乾燥を行い、トマトシドAを含む組成物を得ることができる。このようにして得られた組成物は、トマトシドAの他、原料となるトマト果実由来物に含まれるポリフェノール類やトマトシドA以外のサポニン類も含有し得る。得られた組成物は必要に応じて、例えばクロマトグラフィー等によりさらに精製を行ってもよい。得られた組成物にトマトシドAが含まれているかは、例えば標準品を用いたHPLC等、常法により確認することができる。得られた組成物は、そのまま本発明の組成物としてもよいし、そのまま又は精製物を下記の医薬品及び飲食品に配合してもよい。
トマトシドAは、後述の実施例に記載の通り、in vitroでコレステロール吸着活性を示し、in vivoで、コレステロール負荷による血中脂質濃度の上昇抑制作用(特に、血清総コレステロール上昇抑制作用、血清非HDLコレステロール上昇抑制作用及び血清トリグリセライド上昇抑制作用)や、コレステロール負荷によって引き起こされた高コレステロール血症を改善する作用を有する。この作用は、従来コレステロール低下作用が知られる大豆サポニンと比較しても高い効果である。また、上記の作用に伴い、動脈硬化のリスクを軽減する作用も有する。さらに、コレステロール負荷による肝臓へのコレステロール蓄積を予防する作用も有する。
従って、トマトシドAを含有する組成物は、コレステロール上昇抑制剤(特に血中コレステロール上昇抑制剤)、トリグリセリド上昇抑制剤又は肝中コレステロール蓄積抑制剤として用いることができる。なお、本明細書中において、特に記載のない限り「コレステロール」とは「血中コレステロール」を意味する。また、トマトシドAを含有する組成物を、脂質異常症に関連する疾患、例えば高コレステロール血症又は高トリグリセリド血症に関連する疾患の予防又は治療用組成物や、脂質異常症に関連する状態の予防又は改善用組成物として、用いることができる。これらの剤及び組成物を、そのまま、ヒトを含む動物等に投与することができるほか、医薬品(医薬組成物)及び飲食品に配合して利用することができる。
さらに、上記のトマトシドAの作用に基づき、トマトシドAの有効量を投与する工程を含む、コレステロール上昇抑制方法、トリグリセリド上昇抑制方法、肝中コレステロール蓄積抑制方法、及び脂質異常症に関連する疾患の予防又は治療方法を提供することもできる。
脂質異常症に関連する疾患及び状態としては、例えば、高コレステロール血症に関連する疾患、高LDLコレステロール血症に関連する疾患、高トリグリセリド血症に関連する疾患等が挙げられる。より具体的には、動脈硬化症、動脈硬化性疾患である狭心症、心筋梗塞等の虚血性心疾患、脳梗塞、脳卒中脳血栓、脳出血、クモ膜下出血等の脳血管疾患、膵炎等が挙げられる。
上記の作用を有する本発明の組成物を、例えば高コレステロール血症、高LDLコレステロール血症、高トリグリセリド血症等の脂質異常症に対する効果が知られている他の食品や有効成分と併用して投与することにより、相加効果又は相乗効果を得ることもできる。このような食品や有効成分としては、例えば、各種食物繊維(低分子アルギン酸ナトリウム、サイリウム、ペクチン、小麦ふすま、リグニン等)、茶カテキン、キトサン、各種植物ステロール、各種サポニン(大豆サポニン、アルファルファサポニン、ユッカサポニン、薬用人参サポニン、ヒヨコマメサポニン等)、各種リン脂質、大豆タンパク質、キャベツ又はブロッコリー由来の天然アミノ酸、各種脂肪酸(13−oxo−9,11−オクタデカジエン酸等)等が挙げられる。
本発明の組成物並びにこれを配合した飲食品及び医薬品は、有効成分であるトマトシドAを、乾燥重量で好ましくは0.001〜80重量%、より好ましくは0.005〜60重量%、特に好ましくは0.005〜0.6重量%含有する。トマトシドA含有量が少なすぎると、所望の効果を得られないことがある。また、本発明の組成物を特に飲食品に配合する場合、トマトシドA含有量の増加に伴い苦味が増す場合もあることも考慮してトマトシドAを配合することが好ましい。
本発明の組成物を医薬品に配合する場合、薬学的に許容可能な賦形剤を添加して医薬製剤とすることができる。医薬製剤は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、液剤、シロップ剤、チュアブル、トローチ等の経口剤、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、貼付剤等の外用剤、注射剤、舌下剤、吸入剤、点眼剤、坐剤等の剤型であることができる。好ましい剤型は、経口剤である。
本発明の組成物の投与量は、対象疾患及び状態、疾患の程度、対象者の年齢、体重等に応じて適宜設定することができるが、通常成人一日当たりトマトシドAを乾燥物換算で例えば0.1〜1000mg/kg体重、好ましくは例えば0.4〜200mg/kg体重程度投与することができる。投与は単回投与でも数回に分けた投与でもよい。
本発明の組成物の投与経路は、特に限定されないが、簡便には経口投与により投与することができる。
摂取容易性の観点から、好ましくは本発明の組成物を飲食品に配合することができる。飲食品としては、サプリメント、特定保健用食品、栄養機能食品、健康食品、機能性食品、健康補助食品、通常の飲食品等が挙げられる。形状としては、ジュース、清涼飲料、ドリンク剤、茶等の液状、ビスケット、タブレット、顆粒粉末、粉末、カプセル等の固形、ペースト、ゼリー、スープ、調味料、ドレッシング等の半流動状が例示される。これらの飲食品は、いずれも当業者に公知の手法を用いて、トマトシドAを添加して製造することができる。
上記の飲食品は、血中コレステロール上昇抑制作用、血中トリグリセリド上昇抑制作用、肝中コレステロール蓄積抑制作用、脂質異常症予防作用、脂質異常症改善作用、生活習慣病予防作用、生活習慣病改善作用等の作用を有する旨の表示を付した飲食品であってもよい。
上記の飲食品の摂取量は、用途に応じて適宜調整することができるが、例えばトマトシドAを乾燥物換算で0.1〜200mg/日、好ましくは10〜150mg/日、より好ましくは20〜100mg/日程度摂取することができる。摂取量が多いほど所望の効果を得やすい。摂取回数は特に制限されないが、好ましくは1日1〜3回であり、必要に応じて摂取回数を増減してもよい。
特に本発明の組成物をトマト加工飲食品に配合した場合、トマトシドAを添加しても、トマト感やコク味が損なわれず、トマトシドAを添加しないトマト加工飲食品と比較して風味の損なわれないトマト加工飲食品となる。また、トマトシドAを配合したトマト加工飲食品は、トマトシドAのみを投与した場合と比較して、より高い血中コレステロール上昇抑制作用を有する。これは、トマト加工飲食品にもともと含まれる多数の有効成分(例えば、リコピン、α−トマチン、エスクレオサイドA及びB、食物繊維(セルロース、ペクチン等)、各種ポリフェノール等)とトマトシドAとの相方の効果によるものと考えられる。トマト加工飲食品にもともと含まれる多数の有効成分のうち一部は、コレステロールに吸着して腸管からの再吸収を阻害することにより、血中コレステロールの上昇を抑制する作用を有すると推測される。トマトシドAをトマト加工飲食品に配合した場合、トマトシドA自体の作用とこれらの有効成分の作用によって、より高いコレステロール上昇抑制作用を示すと考えられる。
従って、本発明の組成物は、好ましくはトマト加工飲食品に配合することができる。トマト加工飲食品の例としては、トマトジュース、トマトミックスジュース、トマトケチャップ、トマトソース、チリソース、トマト果汁飲料、固形トマト、トマトピューレ、トマトペースト、トマトスープ等が挙げられる。これらのトマト加工飲食品は、通常のトマト加工飲食品の製造法(レシピなど)に従い、トマトシドAを含む本発明の組成物を添加してそれぞれ通常の製法に従って調製される。なお、一般的にトマト加工飲食品は、製造過程で種子が除去され、トマトシドAはほとんど検出されない。例えば、後述の実施例1−1に記載のHPLC法でトマトジュース中のトマトシドA含有量を測定した場合、検出限界以下であったことを本発明者らは確認している。また、さらに高感度の分析法(LC/MS)による測定も行ったところ、トマトジュース中のトマトシドA含有量は0.0005重量%以下であると考えられた。
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの記載によって何ら制限されるものではない。
[実施例1]
(トマト搾汁粕からのトマトシドAの抽出)
1−1.抽出溶媒の検討
完熟した加工用トマト果実をブラシ洗浄し、チョッパーで破砕した後、間接式のチューブ型加熱器にて予備加熱を行い、これをパルパーフィニッシャーにて搾汁して搾汁液を得た。搾汁過程で発生した搾汁粕を凍結乾燥し、さらに粉砕してトマト種子を含むトマト搾汁粕の乾燥物を得た。得られた乾燥物20gに、表1に示す各抽出溶媒1,000mLを加え、25℃の温度条件下にて2時間撹拌抽出した後、濾過した。得られた抽出液を減圧下にて濃縮し、トマトシドA抽出物を得た。抽出溶媒としては、10体積%エタノール(水とエタノールの体積比9:1の混合物)、30体積%エタノール(水とエタノールの体積比7:3の混合物)、50体積%エタノール(水とエタノールの体積比5:5の混合物)、70体積%エタノール(水とエタノールの体積比3:7の混合物)、90体積%エタノール(水とエタノールの体積比1:9の混合物)、0.1%酢酸添加した70体積%エタノール(水、エタノール、酢酸の体積比3:7:0.01の混合物)、1%酢酸添加した70体積%エタノール(水、エタノール、酢酸の体積比3:7:0.1の混合物)を用いたときの各抽出物のトマトシドAの相対濃度を表1中に併記した。相対濃度は以下に記載の方法で算出した。
相対濃度の算出方法:得られた各抽出液を、常法により、減圧下で濃縮し、逆相系固層抽出カラム(Sep−Pak C18、Waters製)に吸着させた後、水洗浄し、次いでメタノールで溶出させた。得られたメタノール溶出液を再度減圧下で濃縮した試料溶液をフィルター(0.45μm)で濾過し、逆相系カラム(Capcell Pak C18、4.6mm×150mm、資生堂製)を装着した高速液体クロマトグラフ(型式SCL−10AVP、島津製作所製)を用いて、カラム温度35℃でグラディエント法により分析した。移動相A液は蒸留水、B液はアセトニトリル溶液とし、試料注入量は10μL、検出は蒸発光散乱検出器(型式ELSD−LTII、島津製作所製)により行った。測定後、最も高い抽出効率を示した70体積%エタノールによる抽出濃縮物のトマトシドA含量を100として、各抽出条件のトマトシドAの相対濃度を算出した。
表1に示した結果から、トマト種子サポニントマトシドAは、30〜70体積%エタノールを抽出溶媒としたときに十分な抽出効果が得られることが明らかになった。なお、抽出溶媒として用いた水とエタノールの混合液自体のpH測定は困難であったが、抽出溶媒を減圧濃縮してエタノールを除去した後の「濃縮液」のpHは:抽出物試料1〜4で用いた抽出溶媒についてpH4.3;抽出物試料5で用いた抽出溶媒についてpH4.2;抽出物試料6で用いた抽出溶媒についてpH3.4;抽出物試料7で用いた抽出溶媒についてpH2.8であった。濃縮液のpHよりも抽出溶媒のpHが高くなることを考慮すれば、抽出溶媒のpHは強酸性ではないことが望ましく、pH4以上が好ましく、pH5以上がより好ましいと考えられた。また、上記「相対濃度の算出方法」におけるHPLCにおいて、予め作成した既知濃度のトマトシドA標準溶液と比較することにより、トマトシドA濃度を算出したところ、70体積%エタノールを抽出溶媒としたときに得られる抽出物(未乾燥処理)のトマトシドA濃度は、1.3重量%であった。同様の手法を用いて市販のトマトジュース中のトマトシドA含有量を測定したところ検出限界以下であったため、LC/MS法を用いて測定を行った結果、市販のトマトジュース中のトマトシドA含有量は0.0005重量%以下であると考えられた。
Figure 0006042800
1−2.抽出温度の検討
上記1−1で得られたトマト種子を含むトマト搾汁粕の乾燥物20gに、抽出溶媒として70体積%エタノール1,000mLを加え、表2の温度条件下にて2時間撹拌抽出し、濾過した。減圧下にて濃縮し、トマトシドA粗抽出物を得た。各抽出物のトマトシドAの相対濃度を上記1−1と同様の手法で測定し、表2中に併記した。トマトシドAは、70体積%エタノールを抽出溶媒として、室温から40℃程度で最も効率のよい抽出が可能であることが明らかになった。
Figure 0006042800
1−3.抽出時間の検討
上記1−1で得られたトマト種子を含むトマト搾汁粕の乾燥物20gに、抽出溶媒として70体積%エタノール1,000mLを加え、25℃にて表3の時間条件で撹拌抽出し、濾過した。減圧下にて濃縮し、トマトシドA粗抽出物を得た。各抽出物のトマトシドAの相対濃度を表3中に併記した。トマト種子サポニントマトシドAは、70体積%エタノールを抽出溶媒として、室温条件で1時間以上撹拌抽出することで十分な抽出効果が得られることが明らかになった。
Figure 0006042800
1−4.抽出回数の検討
上記1−1で得られたトマト種子を含むトマト搾汁粕の乾燥物20gに、抽出溶媒として70体積%エタノール1,000mLを加え、25℃にて2時間撹拌抽出し、濾過した。濾過後の残渣について、さらに同様の抽出処理を2回行い、得られた全3回の抽出液を各々減圧下にて濃縮し、トマトシドA粗抽出物を得た。各抽出物のトマトシドAの相対濃度を表4中に記した。トマト種子サポニントマトシドAは、70体積%エタノールを抽出溶媒として、室温条件で再抽出を含めて2回の処理で、十分な抽出効果が得られることが明らかになった。
Figure 0006042800
1−5トマトシドA含有調製物の製造
上記1−1〜1−4の結果に基づいて最適化した抽出条件で、トマト種子を含むトマト搾汁粕の乾燥物からトマトシドA含有調製物を製造した。上記1−1で得られたトマト種子を含むトマト搾汁粕の乾燥物20gに、抽出溶媒として70体積%エタノール1000mLを加え、室温下にて2時間撹拌抽出した後、濾過した。濾過後の残渣について、さらに同様の抽出処理を1回行い、得られた全2回の抽出液を合わせて減圧下にて濃縮し、トマトシドA粗抽出物を得た。得られた粗抽出物を逆相系カラムクロマトグラフィー(YMC−ODS−A、YMC製)に吸着させ、水、40体積%メタノール、70体積%メタノール、100体積%メタノールで順次溶出して得た溶出画分を凍結乾燥して、トマトシドAを60重量%含有するトマトシドA含有調製物を得た。
[実施例2]
(トマトシドA含有トマトジュースの官能評価)
実施例1−5で得られたトマトシドAを60重量%含有する調製物を、表5に示す量(トマトシドA添加量に換算して0mg〜20mg/100g)添加したトマトジュース(食塩無添加)を作成し、トマト感、コク味及び苦味に関してパネリスト8名による官能評価を行った。トマトシドAを添加しないトマトジュース(対照)のトマト感、コク及び苦味の強さを7段階中4としたときの、各トマトジュースのトマト感、コク及び苦味の強さを7段階で評価し、パネリスト8名の評価の平均を算出した。結果を表5に示す。トマトシドAを添加しても、トマトジュースのトマト感やコク味は損なわれず、トマトシドAを添加しないトマトジュースと比較して遜色ないトマト加工飲食品となった。
Figure 0006042800
[実施例3]
(トマトシドA含有組成物のコレステロール吸着能)
in vitroの系でトマトシドAのコレステロール吸着能を測定した。実施例1−5で得られたトマトシドAを60重量%含有する調製物を表6に示す用量でpH7.5のリン酸緩衝液1mLに分散させ、これに0.5重量%コレステロール(特級コレステロール、和光純薬工業製)のエタノール溶液0.01mLを添加し、良く撹拌した後、37℃で2時間加温した。これを10,000回転、15分間遠心分離し、上清液のコレステロール含量を測定してトマトシドA調製物のコレステロール吸着能を求めた。対照として、pH7.5リン酸緩衝液、及び表6に示す用量の大豆サポニン(一級サポニン、大豆製、和光純薬工業製)を用いた。結果を表6に併記した。トマトシドA調製物は、従来コレステロール低下作用が知られている大豆サポニンと同様に、用量に依存したコレステロール吸着活性を示した。また、トマトシドA精製物を用いて同様にコレステロール吸着能を測定したところ、上記の調製物と同様、コレステロール吸着活性を示した。
Figure 0006042800
[実施例4]
(マウスへのトマトシドA含有組成物の長期投与1)
MF粉末飼料(オリエンタル酵母工業社製)にコレステロール(特級コレステロール、和光純薬工業製)とコール酸ナトリウム(コール酸ナトリウム、和光純薬工業製)を添加した試験飼料を以下の表7に記載の配合で作製し、さらに実施例1−5で得られたトマトシドAを60重量%含む調製物を添加した混餌食(トマトシドAに換算して0.33〜1.0重量%配合)をマウスに投与したときの血中脂質濃度に対する効果を確認した。対象として、大豆サポニンを添加した混餌食をマウスに投与した。
5週齢の雄性C57BL6/Jマウス(日本クレア社生産)24匹を、MF粉末飼料で1週間予備飼育した後、各群6匹の対照群1、投与群2〜4の4群に分けた。対照群1、及び投与群2〜4をそれぞれ表7に示した試験飼料で3週間飼育した。飼料は自由摂取により投与した。
Figure 0006042800
試験飼料の投与開始前(0日後)並びに開始後3、7、10、14及び21日後に採血を行い、血清の総コレステロールを測定した。また、投与開始21日後に血清HDLコレステロールと血清中性脂質を測定した。測定は、コレステロールEテストワコー、HDLコレステロールテストワコー、トリグリセライドテストワコー(和光純薬社製)をそれぞれの使用説明書に従って使用して行った。非HDLコレステロール値は、総コレステロール−HDLコレステロールの値を算出して求めた。動脈硬化指数は、(総コレステロール−HDLコレステロール)/HDLコレステロールの値を算出して求めた。血清総コレステロールの測定結果を表8に、非HDLコレステロールの測定結果を表9に、血清トリグリセライドの測定結果を表10に、動脈硬化指数の測定結果を表11に、それぞれ示す。
表8に示すように、トマトシドAを60重量%含む調製物を混餌した試験群3及び試験群4の血清総コレステロールは、対照群1及び大豆サポニンを混餌した試験群2に比べて低い値を示した。
表9に示すように、非HDLコレステロール値についても試験群3及び試験群4が対照群1及び試験群2に比べて低い値を示した。なお、表9の結果から、大豆サポニンの投与(試験群2)は非HDLコレステロール量に影響を及ぼさなかったと考えられた。
表10に示すように、血清中性脂質についても試験群3及び試験群4が対照群1及び試験群2に比べて低い値を示した。
さらに表11に示すように、動脈硬化指数についても、試験群3及び試験群4が、対照群1と比べて有意に低い値を示し、試験群2と比べても低い値を示した。
これらの結果から、トマトシドAは、コレステロール負荷による血中脂質濃度の上昇を抑制する作用を有し、さらにこの作用に伴い、動脈硬化指数低下作用(動脈硬化のリスクを軽減する作用)も有することが明らかとなった。また、その作用は、従来コレステロール低下作用が知られる大豆サポニンと比較して非常に高いことが明らかになった。
Figure 0006042800
Figure 0006042800
Figure 0006042800
Figure 0006042800
[実施例5]
(トマトシドA及び/又はトマトジュース組成物のコレステロール吸着能)
in vitroの系でトマトシドAとトマトジュースの組成物によるコレステロール吸着能を測定した。実施例1−5で得られたトマトシドAを60重量%含有する調製物、及び市販の食塩無添加トマトジュースを凍結乾燥して得たトマトジュース乾燥粉末を、それぞれ表12に示す用量でpH7.5のリン酸緩衝液1mLに分散させ、これに0.5重量%コレステロール(特級コレステロール、和光純薬工業製)のエタノール溶液0.01mLを添加し、良く撹拌した後、37℃で2時間加温した。これを10,000回転、15分間遠心分離し、上清液のコレステロール含量を測定してトマトシドA調製物のコレステロール吸着能を求めた。
対照としてpH7.5リン酸緩衝液を用いた。結果を表12に併記した。
トマトシドA調製物とトマトジュース乾燥粉末を混合した場合に、トマトシドA調製物単独の場合と比較してコレステロール吸着活性が向上した。トマトジュース乾燥粉末に含まれる、食物繊維(セルロース、ペクチン)や、トマトシドAとは異なるサポニンが、トマトシドAと同時にコレステロールを吸着したと考えられた。
Figure 0006042800
[実施例6]
(トマトシドA及び/又はトマトジュース組成物のマウスへの長期投与)
MF粉末飼料(オリエンタル酵母工業社製)にコレステロール(特級コレステロール、和光純薬工業製)とコール酸ナトリウム(コール酸ナトリウム、和光純薬工業製)を添加した試験飼料を以下の表13に示す通り作製し、さらに実施例1−5で得られたトマトシドAを60重量%含む調製物、及び市販の食塩無添加トマトジュースを凍結乾燥して得たトマトジュース乾燥粉末を、それぞれ表13に示す用量で添加した混餌食をマウスに投与したときの血中脂質に対する効果を確認した。
5週齢の雄性C57BL6/Jマウス(日本クレア社生産)24匹を、MF粉末飼料で1週間予備飼育した後、各群5匹の対照群5及び試験群6〜8の4群に分けた。対照群5及び試験群6〜8をそれぞれ表13に示した試験飼料で2週間飼育した。飼料は自由摂取により投与した。試験飼料の投与開始前(0日後)及び開始後3、9及び14日後に採血を行い、血清の総コレステロールを測定した。測定はコレステロールEテストワコー(和光純薬社製)を用いて行った。
血清総コレステロールの測定結果を表14に示す。トマトシドAを60重量%含む調製物を0.034重量%(トマトシドAに換算して0.02重量%)混餌した試験群6、及びトマトジュース乾燥粉末を5重量%混餌した試験群7の血清総コレステロールは、対照群5に比べて低い値を示した。また、トマトシドAを60重量%含む調製物を0.034重量%(トマトシドAに換算して0.02重量%)とトマトジュース凍結粉末5重量%を同時に混餌した試験群8の血清総コレステロールは、投与開始9及び14日後のいずれにおいても、対照群5、試験群6及び7に比べて低い値を示した。トマトシドA調製物及びトマトジュース凍結粉末は、コレステロール負荷による血中脂質濃度の上昇を抑制する作用を有し、トマトシドA調製物とトマトジュース凍結粉末を混合して投与することにより、トマトシドA調製物単独及びトマトジュース乾燥粉末単独の場合と比べて強力な作用を示すことが明らかとなった。
Figure 0006042800
Figure 0006042800
[実施例7]
(マウスへのトマトシドA含有組成物の長期投与2)
MF粉末飼料(オリエンタル酵母工業社製)にコレステロール(特級コレステロール、和光純薬工業製)とコール酸ナトリウム(コール酸ナトリウム、和光純薬工業製)を添加した試験飼料を以下の表15に記載の配合で作製してマウスに投与して、高コレステロール血症マウスとし、続いて実施例1−5で得られたトマトシドAを60重量%含む調製物を試験飼料に添加した混餌食(トマトシドAに換算して0.1重量%配合)をマウスに投与したときの血中脂質濃度に対する効果を確認した。
6週齢の雄性C57BL6/Jマウス(日本クレア社生産)15匹を、MF粉末飼料で3日間予備飼育した後、表15に示した高コレステロール試験飼料で1週間飼育して、高コレステロール血症モデルマウスを作製した。このマウスを一群当たりの平均血清コレステロールが均一になるように1群5匹の対照群9、対照群10及び試験群11に分け、各群についてそれぞれ表16に示した試験飼料で3週間飼育した。飼料は自由摂取により投与した。
Figure 0006042800
Figure 0006042800
試験飼料の投与開始前(0日後)並びに開始後7、14及び21日後に採血を行い、血清の総コレステロールを測定した。また、投与開始0及び21日後に血清HDLコレステロールを測定した。投与開始21日後に各マウスの肝臓を摘出して、肝臓中の総脂質をFolch法により抽出し、総コレステロールを測定した。測定は、コレステロールEテストワコー、HDLコレステロールテストワコー及びトリグリセライドEテストワコー(和光純薬社製)をそれぞれの使用説明書に従って使用して行った。非HDLコレステロール値は、総コレステロール−HDLコレステロールの値を算出して求めた。動脈硬化指数は、(総コレステロール−HDLコレステロール)/HDLコレステロールの値を算出して求めた。血清総コレステロールの測定結果を表17に、非HDLコレステロールの測定結果を表18に、動脈硬化指数の測定結果を表19に、肝臓総コレステロールの測定結果を表20に、それぞれ示す。
表17に示すように、トマトシドAを60重量%含む調製物を混餌した試験群11の血清総コレステロールは、投与開始前の値より低下し、投与開始21日後には有意に低い値を示した。また、高コレステロール飼料から通常飼料に移行させた対照群10の血清コレステロールと同等の値となった。表18に示すように、投与開始21日後の非HDLコレステロール値は、対照群10及び試験群11が、対照群9に比べて有意に低い値を示した。また、総コレステロールに占めるHDLコレステロール比は、対照群10及び試験群11が、対照群9に比べて高い値を示した。さらに表19に示すように、動脈硬化指数も、対照群10及び試験群11が、対照群9と比べて有意に低い値であった。
これらの結果から、トマトシドAは、コレステロール負荷によって引き起こされた高コレステロール血症を改善し、動脈硬化のリスクを軽減する作用を有することが明らかとなった。
表20に示すように、トマトシドAを60重量%含む調製物を混餌した試験群11の肝中コレステロール蓄積量は、対照群9と比較して有意に低い値を示した。この結果から、トマトシドAは、コレステロール負荷による肝臓へのコレステロールの蓄積を予防する作用を有することが明らかとなった。
Figure 0006042800
Figure 0006042800
Figure 0006042800
Figure 0006042800
[実施例8]
(トマトシドAを含有するトマト加工飲食品の製造)
以下にトマトシドAを原料の一部として使用するトマト加工飲食品の製造例を示す。
製造例1.トマトジュース
シーズンパックトマトジュースの製造方法には、トマト洗浄、選別、破砕、加熱、搾汁、調合、脱気、殺菌、充填、冷却及び箱詰め工程があり、この調合工程で、搾汁したトマトジュースにトマトシドAを添加して調合し、有塩の場合のみ食塩が加えられ、窒素ガスを混合して減圧脱気して、溶存酸素濃度を3ppm以下とした後、121℃、約1分の加熱殺菌をして、90℃まで冷却され、缶に充填される。また、濃縮還元品の製造法は、開けだし工程で、トマト濃縮物を開けだし、規定の無塩可溶性固形分(4.5以上)に水希釈する。その後、トマトシドAを添加して調合し、脱気、殺菌、充填、冷却及び箱詰め工程を経て製造される。
Figure 0006042800
2.野菜ミックスジュース
搾汁したトマトジュース、あるいは、トマト濃縮物を規定の無塩可溶性固形分(4.5以上)に水希釈して得たトマトジュースに、各種野菜汁及びトマトシドAを添加して調合し、脱気、殺菌、充填、冷却及び箱詰め工程を経て製造される。
Figure 0006042800
3.トマトソース
以下の表に示す全原材料を混合して、窒素ガスを混合して減圧脱気して溶存酸素濃度を3ppm以下とした後、2号缶に充填し、110℃、30分のレトルト殺菌をする。
Figure 0006042800
本発明のトマトシドA又はその生理学的に許容される塩を有効成分とする組成物は、高コレステロール血症又は高トリグリセリド血症のような脂質異常症及びこれに関連する疾患を予防又は治療するために利用することができる。また、コレステロール上昇抑制剤、トリグリセリド上昇抑制剤及び肝中コレステロール蓄積抑制剤として利用することができる。本発明は、医薬品、飲食品等の分野で有用である。該組成物及び剤を食品(特にトマト加工飲食品)に添加することにより、風味が損なわれず摂取しやすく、トマトシドA又はその生理学的に許容される塩を単独で摂取するよりも効能のよりすぐれた飲食品となり得るため、対象者への負担なく該組成物及び剤を継続摂取することが可能となる。さらに、本発明によれば、該組成物及び剤をトマト搾汁粕より容易に効率よく分離することができるため、廃棄物の有効利用が可能である。
本出願は、2011年2月21日に出願された日本国特許出願第2011−34750号に基づく優先権を主張するものであり、この内容はここに参照として組み込まれる。

Claims (2)

  1. トマト種子を含むトマト果実由来物を、抽出溶媒として70体積%のエタノール溶媒を用いて抽出する工程を含む、トマトシドA又はその生理学的に許容される塩の抽出方法であって、
    前記エタノール溶媒が、水とエタノールの混合物であり、
    前記抽出工程が、5℃以上40℃以下の温度で1時間以上行われる、方法。
  2. 記抽出工程が、1時間以上2時間以下行われる、請求項1に記載の方法
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