JP2006313273A - 顕微鏡 - Google Patents
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Abstract
【課題】 観察対象物に含まれる分子の3次元位置及び3次元配向を観測することができる顕微鏡の提供。
【解決手段】 フェムト秒レーザをパルス発振させるレーザ出力装置10、レーザ出力装置10から出力されるレーザ光を空間光変調器12に照射させるミラー11、空間光変調器12からの反射光の位相を変調したうえで再度空間光変調器12に照射させる1/4波長板13及びミラー14、空間光変調器12からの反射光を1/4波長板15を透過させたうえでガルバノスキャナ18へ導くミラー16,17、ガルバノスキャナ18で走査される光を試料22の内部に集光させる対物レンズ21、試料22からの光のうち、第2高調波を検出する光電子増倍管25を備える。
【選択図】 図1
【解決手段】 フェムト秒レーザをパルス発振させるレーザ出力装置10、レーザ出力装置10から出力されるレーザ光を空間光変調器12に照射させるミラー11、空間光変調器12からの反射光の位相を変調したうえで再度空間光変調器12に照射させる1/4波長板13及びミラー14、空間光変調器12からの反射光を1/4波長板15を透過させたうえでガルバノスキャナ18へ導くミラー16,17、ガルバノスキャナ18で走査される光を試料22の内部に集光させる対物レンズ21、試料22からの光のうち、第2高調波を検出する光電子増倍管25を備える。
【選択図】 図1
Description
本発明は、観察対象物に含まれる分子の位置及び向きを観察する顕微鏡に関する。
第2高調波(以下、SHGという。SHG : Second Harmonic Generation)は非線形光学効果によって生じるため、レーザ光の集光スポットのみで生じる。このため対物レンズでレーザ光を絞り込み、ビーム走査、観察試料走査、又は両走査を行った場合には3次元分布像が得られる。
また、分子配向に非常に敏感であるため、入射光の偏光により分子の方向を観測することができる。例えば、生体内のコラーゲン線維を顕微鏡下でSHGによって観測する場合、入射レーザ光の偏光方向を向いた線維を観測することができる(非特許文献1参照)。
M. Kobayashi, K. Fujita, T. Kaneko, O. Nakamura, and S.Kawata著 「オプティクス レターズ(Optics Letters)」Vol.27 No.15,pp.1324-1326 2002年発行
M. Kobayashi, K. Fujita, T. Kaneko, O. Nakamura, and S.Kawata著 「オプティクス レターズ(Optics Letters)」Vol.27 No.15,pp.1324-1326 2002年発行
しかしながら、従来の直線偏光を集光した場合には、主に面内方向に向いた電場しか形成できないため、面内方向の分子配向の計測、すなわち、5次元観測(分子の3次元空間内での位置、及び面内の2次元配向)しかできないという問題点を有していた。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、照射するビーム光の空間変調を行う空間光変調器と、ビーム光のビーム断面における偏光分布を制御する制御手段とを備える構成とすることにより、観察対象物に含まれる分子の向きおよび三次元位置を高空間分解能で観測することができる顕微鏡を提供することを目的とする。
第1発明に係る顕微鏡は、観察対象物に対してビーム光を照射し、前記観察対象物からの光を検出して前記観察対象物の観察像を取得する顕微鏡において、照射すべきビーム光に対して空間変調を行う空間光変調器と、前記ビーム光のビーム断面における偏光分布を制御すべく前記空間光変調器を制御する制御手段と、偏光分布を制御したビーム光を前記観察対象物内に集光する集光手段と、集光したビーム光により生じる非線形光学現象を観測する観測手段とを備えることを特徴とする。
第1発明にあっては、空間光変調器を制御することによってビーム断面における偏光分布を制御し、偏光分布を制御したビーム光を観察対象物内に集光するようにしているため、集光点でのビーム光の電場の向きを制御することが可能である。例えば、ビーム断面内の任意の点で同一方向に偏光したビーム光を集光した場合、集光点では光軸に対して垂直な方向の電場が形成され、ビーム断面内で光軸から放射状に偏光したビーム光を集光した場合、集光点では光軸方向に向いた電場が形成される。また、非線形光学現象は、光強度の2乗又は3乗に比例するため、ビーム光を集光させた場合には集光スポットのみで生じる。
第2発明に係る顕微鏡は、前記空間光変調器は、前記ビーム断面を複数の区画に分割した各区画についてビーム光の偏光状態及び位相状態を制御可能になしてあることを特徴とする。
第2発明にあっては、ビーム断面を複数の区画に分割した各区画についてビーム光の偏光状態及び位相状態を制御できるため、このような空間光変調器を用いることにより任意の偏光分布を持つビーム光が生成される。
第3発明に係る顕微鏡は、前記空間光変調器は、1又は複数の液晶空間光変調素子を備えることを特徴とする。
第3発明にあっては、1又は複数の液晶空間光変調素子を用いて偏光分布の制御を行う。1つの液晶空間光変調素子を用いる場合には、当該液晶光変調素子にビーム光を2回照射することによって、各区画(各画素)の偏光状態及び位相状態が調整される。また、2つ以上の液晶空間光変調素子を用いる場合には、各液晶光変調素子に1回ずつビーム光を照射することによって、各区画(各画素)の変更状態及び位相状態が調整される。しかも、本発明では液晶空間光変調素子を用いるため、これらの調整が高速かつ非メカニカルに実現される。
第4発明に係る顕微鏡は、前記制御手段は、集光させたビーム光が光軸方向の偏光成分を持つように前記偏光分布を制御するようにしてあることを特徴とする。
第4発明にあっては、集光させたビーム光が光軸方向の偏光成分を持つように偏光分布を制御するようにしているため、このような偏光成分を持つビーム光を観察対象物に照射することによって、光軸方向に向いた分子が観察される。
第5発明に係る顕微鏡は、前記制御手段は、集光させたビーム光が光軸と交叉する方向の偏光成分を持つように前記偏光分布を制御するようにしてあることを特徴とする。
第5発明にあっては、集光させたビーム光が光軸と交叉する方向の偏光成分を持つように偏光分布を制御するようにしているため、このような偏光成分を持つビーム光を観察対象物に照射することによって、光軸方向と交叉する方向に向いた分子が観察される。
第6発明に係る顕微鏡は、前記ビーム光は、レーザ光であることを特徴とする。
第6発明にあっては、レーザ光を集光するようにしているため、観察対象物内で非常に大きなパワー密度の光電界が生じることとなり、非線形光学効果に起因した現象が観察対象物内で生じる。
第7発明に係る顕微鏡は、前記ビーム光は、ピコ秒又はフェムト秒のパルス長を有するパルス光であることを特徴とする。
第7発明にあっては、ピコ秒又はフェムト秒のパルス長を有するパルス光を集光するようにしているため、平均パワーが大きくない場合であっても、観察対象物内で非常に大きなパワー密度の光電界が生じることとなり、非線形光学効果に起因した現象が観察対象物内で生じる。
第8発明に係る顕微鏡は、前記ビーム光は、X線領域、紫外光領域、可視光領域、赤外光領域、又はテラヘルツ領域の光であることを特徴とする。
第8発明にあっては、観察対象物内で非線形光学現象を発生させるために、X線領域、紫外光領域、可視光領域、赤外光領域、又はテラヘルツ領域の光を用いることができる。
第9発明に係る顕微鏡は、単波長の光、又は複数の波長の光を前記観察対象物に照射するようにしてあることを特徴とする。
第9発明にあっては、単波長の光、又は複数の波長の光を観察対象物に照射するようにしているため、単波長の光を入射させたときには非線形光学現象として第2高調波が発生し、複数の波長の光を入射させたときには和周波、差周波、コヒーレントアンチストークスラマン現象、ラマンゲイン、2光子励起蛍光、飽和吸収現象、過渡吸収現象、過渡ラマン現象、蛍光消光現象等の非線形光学現象の観測も可能となる。
第10発明に係る顕微鏡は、前記非線形光学現象は、第2高調波の発生であることを特徴とする。
第10発明にあっては、第2高調波の発生を観察対象物内で生じる非線形光学現象として観測するようにしているため、分子の位置及び向きの情報が得られる。
第11発明に係る顕微鏡は、前記観察対象物からの光から不要な光を除去する手段を備えることを特徴とする。
第11発明にあっては、不要な光を除去するようにしているため、ビーム光の集光スポットのみで生じる非線形光学効果に起因した光のみが検出される。
第12発明に係る顕微鏡は、前記観察対象物に対する前記観測手段及び集光手段の配置関係が対向配置又は落射配置であることを特徴とする。
第12発明にあっては、観測手段の配置を適切に設定することにより、観測強度の確保が可能となる。
第13発明に係る顕微鏡は、前記観測手段は、入射される光のスペクトルを観測する分光器であることを特徴とする。
第13発明にあっては、入射される光のスペクトルを分光器により観測するようにしているため、観察対象物内で複数種の非線形光学現象が生じた場合であっても分光器によって観測される。
第1発明による場合は、例えば、ビーム断面内の任意の点で同一方向に偏光したビーム光を集光させることにより、集光点で光軸に対して垂直な方向の電場を形成することができ、光軸から放射状に偏光したビーム光を集光させることにより、集光点で光軸方向に向いた電場を形成することができる。したがって、このようなビーム光を用いることにより、集光点での分子の向きを観測することができる。しかも、非線形光学現象は、光強度の2乗又は3乗に比例することから、ビーム光を集光させた場合には集光スポットのみで生じることとなり、非線形光学現象を観測することによって集光点の3次元位置に関する情報を得ることができる。すなわち、本発明では、観察対象物に含まれる分子の位置及びその分子の向き(3次元配向性、ある特定の官能器の向き等)を高空間分解能で観測することができる。
第2発明による場合は、ビーム断面を複数の区画に分割した各区画についてビーム光の偏光状態及び位相状態を制御できる。したがって、このような空間光変調器を用いることにより任意の偏光分布を持つビーム光を生成することができる。
第3発明による場合は、1又は複数の液晶空間光変調素子を用いて偏光分布の制御を行う。1つの液晶空間光変調素子を用いる場合には、当該液晶光変調素子にビーム光を2回照射することによって、各区画(各画素)における偏光状態及び位相状態を調整することができる。また、2つ以上の液晶空間光変調素子を用いる場合には、各液晶光変調素子に1回ずつビーム光を照射することによって、各区画(各画素)における偏光状態及び位相状態を調整することができる。しかも、本発明では液晶空間光変調素子を用いるため、各画素の濃淡を調整することによって制御可能となり、高速かつ非メカニカルに偏光状態及び位相状態を制御することができる。
第4発明による場合は、集光させたビーム光が光軸方向の偏光成分を持つように偏光分布を制御するようにしている。したがって、このような偏光成分を持つビーム光を観察対象物に照射することによって、光軸方向に向いた分子を観察することができる。
第5発明による場合は、集光させたビーム光が光軸と交叉する方向の偏光成分を持つように偏光分布を制御するようにしている。したがって、このような偏光成分を持つビーム光を観察対象物に照射することによって、光軸方向と交叉する方向に向いた分子を観察することができる。
第6発明による場合は、レーザ光を集光するようにしている。したがって、観察対象物内で非常に大きなパワー密度の光電界が生じることとなり、非線形光学効果に起因した現象が観察対象物内で生じる。観測手段によって非線形光学現象を観測することにより、分子の3次元位置を高分解能で特定することができる。
第7発明による場合は、ピコ秒又はフェムト秒のパルス長を有するパルス光を集光するようにしている。したがって、照射するビーム光の平均パワーが大きくない場合であっても、観察対象物内に非常に大きなパワー密度の光電界を発生させることができ、観察対象物を破壊することなく、非線形光学効果に起因した現象を発生させることができる。観測手段によって非線形光学現象を観測することにより、分子の3次元位置を高分解能で特定することができる。
第8発明による場合は、観察対象物内で非線形光学現象を発生させるために、X線領域、紫外光領域、可視光領域、赤外光領域、又はテラヘルツ領域の光を用いることができる。
第9発明による場合は、単波長の光、又は複数の波長の光を観察対象物に照射するようにしている。したがって、単波長の光を入射させたときには非線形光学現象として第2高調波が発生し、複数の波長の光を入射させたときには和周波、差周波、コヒーレントアンチストークスラマン現象、ラマンゲイン、2光子励起蛍光、飽和吸収現象、過渡吸収現象、過渡ラマン現象、蛍光消光現象等の非線形光学現象が生じることとなる。これらの非線形光学現象を観測することによって分子の3次元位置を高空間分解能で特定することができる。
第10発明による場合は、第2高調波を観察対象物内で生じる非線形光学現象として観測する。したがって、このような非線形光学現象を観測することによって分子の3次元位置を高空間分解能で特定することができる。
第11発明による場合は、不要な光を除去するようにしているため、ビーム光の集光スポットのみで生じる非線形光学効果に起因した光のみを検出することができる。
第12発明による場合は、観測手段の配置を適切に設定することによって観測強度を十分に確保することができ、明瞭な観察像を取得することができる。
第13発明による場合は、入射される光のスペクトルを分光器により観測するようにしているため、観察対象物内で複数種の非線形光学現象が生じた場合であっても分光器によって観測することができる。
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る顕微鏡の構成例を説明する模式図である。図中10は、観察対象物に対してビーム光を照射する手段としてのレーザ出力装置である。レーザ出力装置10は、例えば、レーザ媒質としてチタンサファイアを用いたモードロックレーザであり、フェムト秒のパルス長を持ったレーザ光を出力する。レーザ出力装置10から出力されるレーザ光はミラー11により反射され、空間光変調器12に入射される。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る顕微鏡の構成例を説明する模式図である。図中10は、観察対象物に対してビーム光を照射する手段としてのレーザ出力装置である。レーザ出力装置10は、例えば、レーザ媒質としてチタンサファイアを用いたモードロックレーザであり、フェムト秒のパルス長を持ったレーザ光を出力する。レーザ出力装置10から出力されるレーザ光はミラー11により反射され、空間光変調器12に入射される。
空間光変調器12は、入射されるレーザ光の偏光状態及び位相状態を変化させる機能を有する。空間光変調器12としては、例えば、ガラス基板上に画素電極、NT液晶(NT : Non-Twisted)、透明電極を積層した液晶型の空間光変調器を用いることができる。このような液晶を用いた空間光変調器12では、画素電極に印可する電圧を制御して各画素の濃淡を調整することによって入射されるレーザ光の偏光状態及び位相状態を各画素毎に調整できるように構成されている。制御部30は、具体的には、パーソナルコンピュータであり、空間光変調器12に描画すべき画像データ(すなわち、各画素の濃淡の情報)を記憶してあり、この画像データに従って画素電極に印可する電圧の制御を行う。
空間光変調器12によって変調されたレーザ光はミラー14によって反射され、再度、空間光変調器12に入射される。このとき、ミラー11による反射光の入射位置(第1の照射点)と、ミラー14による反射光の入射位置(第2の照射点)とが異なるように2つのミラー11,14の配置関係が調整されている。また、第1の照射点から第2の照射点に至る光路中に1/4波長板13を配置することによって、2回目の入射時に偏光角を所定角度だけ回転させるようにしている。このように、本実施の形態では、レーザ光を空間光変調器12に対して2回入射させると共に、2回目の入射時に偏光角を所定角度だけ回転させることにより、レーザ光のビーム断面での偏光分布を制御するようにしている。
空間光変調器12によってビーム断面の偏光分布が調整されたレーザ光は、1/4波長板15を通過した後、2組のミラー16,17によりガルバノスキャナ18へ導かれる。ガルバノスキャナ18により走査されるビーム光は、レンズ19,20を通過した後、対物レンズ21によって、当該顕微鏡の観察対象物である試料22の表面又は内部に集光される。観察対象物は、例えば、コラーゲン線維のような生体物質、液晶、合成線維のような化学物質等である。本顕微鏡は、線維の3次元構造、液晶分子の位置及び各分子の配向状態を詳細に観察することができる。
試料22内で作用を受けた光は、入射用の対物レンズ21に対向配置させた観測側の対物レンズ23によって集められる。そして、光学フィルタ24により基本波を除去した第2高調波のみを光電子増倍管25により検出する。すなわち、光電子増倍管25は、第2高調波に起因した信号(以下、SHG信号という)を検出し、検出したSHG信号を画像処理部(不図示)へ出力する。この画像処理部は、光電子増倍管25からの検出信号に基づき、試料22の観察像を生成する。画像処理部によって生成された観察像は、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ等の表示装置(不図示)にて表示される。
なお、対物レンズ21,23は、ラジアル偏光ビームで効率的に光軸方向に向いた電場を発生させ、高空間分解能を達成するために、高い開口数(NA≧1.2)の油侵対物レンズを使用することが望ましい。
図2は、偏光分布の制御原理を説明する模式図である。図2では、入射方向をz軸方向とし、xy面内(x方向)の直線偏光を持つレーザ光を入射させた場合を想定している。光軸上には、2つの空間光変調素子120A,120B、及び1/4波長板150を配置している。空間光変調素子120A,120Bに示した2つの指標a,bは、それぞれ異常光及び常光の偏光方向を示している。また、1/4波長板150に示した2つの指標f,sは、それぞれ進相軸及び遅相軸を示している。空間光変調素子120B及び1/4波長板150は、直線偏光の方向を回転させる素子として機能し、空間光変調素子120Aは、空間光変調素子120Bで起こる位相の遅れを補償する素子として機能する。
このとき、空間光変調素子120A,120B、及び1/4波長板150を透過する透過光の電場Eout は、ジョーンズベクトル(Jones vector)を用いた表記法により、次式のように表すことできる。
ここで、R(α)及びQは、それぞれ、回転行列及びジョーンズ行列(Jones matrix)であり、以下のように表すことができる。
また、空間光変調素子120Aにおける常光と異常光との遅延をη、空間光変調素子120Bにおける常光と異常光との遅延をξとした場合、数1は、以下のように算出することができる。
したがって、透過光の電場Eout は以下のように表すことができる。
数4から明らかなように、ξ=η=0である場合、x方向に偏光した透過光が得られる。また、ξ=π、η=0である場合、y方向に偏光した透過光が得られる。更に、ξ=2φ、η=2π−φ(φは方位角)である場合、放射状に偏光した透過光が得られる。
本実施の形態では、2つの空間光変調素子120A,120Bを使用する代わりに、1つの空間光変調器の異なる部位にレーザ光を2回照射し、しかも2回目の照射時に偏光角を光軸回りに回転させることによって、前述と同様の効果を得るようにしている。
図3及び図4は、偏光分布を調整したレーザ光を集光した場合の集光点での電場の向きを説明する説明図である。図3(a)に示したように、ビーム断面の任意の点において同一方向に偏光しているレーザ光(以下、直線偏光ビームという)を対物レンズ21で集光する場合について説明する。光の伝搬方向と電場の方向とは垂直であり、しかも直線偏光ビームは図3(b)に示した矢符の方向の電場を持つため、集光点(すなわち、対物レンズ21の焦点)では、光軸方向の成分が打ち消し合い、光軸と垂直な面内成分のみが残る。したがって、直線偏光ビームを集光させた場合には、集光点において、面内方向に向いた電場のみが形成されることになる。
次に、図4(a)に示したように、ビーム断面の任意の点において半径方向に偏光しているレーザ光(以下、ラジアル偏光ビームという)を対物レンズ21で集光する場合について説明する。光の伝搬方向と電場の方向とは垂直であり、しかもラジアル偏光ビームは図4(b)に示した矢符の方向の電場を持つため、集光点では、光軸と垂直な面内の成分が打ち消し合い、光軸方向の成分のみが残る。したがって、ラジアル偏光ビームを集光させた場合には、集光点において、光軸方向に向いた電場のみが形成されることとなる。
ところで、SHGは、分子配向に関して非常に敏感であり、例えば、コラーゲン線維と電界の方向とが同一である場合に強くSHGが放射される。そのため、光軸と垂直の面内に配向した分子を観測するときには、直線偏光ビームを照射し、集光点にて面内方向を向く電場を形成することが望ましい。また、光軸方向に配向した分子を観測するときには、直線偏光ビームでは観測できないため、ラジアル偏光ビームを照射し、集光点で光軸方向を向く電場を形成する必要がある。
本実施の形態では、NT液晶からなる空間光変調器12を高速かつ非メカニカルに制御することにより、試料22に対して照射するレーザ光を、直線偏光ビーム又はラジアル偏光ビームの何れか一方に切り替えることができ、面内配向だけでなく光軸方向の分子配向も観測することができる。更に、第2高調波は非線形光学効果によって生じるため、レーザ光の集光スポットのみで生じる。このため、対物レンズ21でレーザ光を絞り込み、ガルバノスキャナ18でビーム走査することによって、3次元分布像が得られる。したがって、本発明の顕微鏡では、面内方向の分子配向に加えて、光軸方向の分子配向を3次元空間に渡って観測することができ、従来には実現できなかった6次元観測を可能としている。
以下、本顕微鏡による観測結果を説明する。図5は、観察対象物を模式的に示した図であり、図6は、図5に示した観察対象物を本発明の顕微鏡で観察した場合の観察像を示す写真である。観察対象物は、ヒトのアキレス腱をミクロトームでスライスした薄切片である。図5に示したものは、コラーゲン線維に沿ってスライスされており、レーザ光の光軸とコラーゲン線維の方向とが略垂直となるように、しかも、線維の方向が光軸に垂直な面内で略45度傾いた状態となるように配置されている。
図6に示した観察像は、光電子増倍管25で得られるSHG信号の強度分布を表している。すなわち、明度が高い領域はSHG信号の強度が高い領域に対応し、明度が低い領域はSHG信号の強度が低い領域に対応する。このような観察像は、ガルバノスキャナ18を制御して観察対象物を2次元的に走査することによって得られる。
図6(a)及び図6(b)は何れも直線偏光ビームを入射した場合の観察像であるが、図6(a)はコラーゲン線維の方向と交叉する方向の直線偏光を有するレーザ光を入射させており、図6(b)はコラーゲン線維の方向と略平行の直線偏光を有するレーザ光を入射させている。前述したように、分子の向き(線維の方向)と電場の方向とが平行である場合、励起効率が高くなるため、図6(b)に示した状態である場合に強いSHG信号が得られていることが分かる。
次に、他の観測結果について説明する。一方、図6(c)はラジアル偏光ビームを入射した場合の観察像である。この場合、レーザ光の集光点にて電場の方向と線維の方向とが垂直となるため、SHG信号の観測強度が弱くなっていることが分かる。
図7は、観察対象物を模式的に示した図であり、図8は、図7に示した観察対象物を本発明の顕微鏡で観察した場合の観察像を示す写真である。観察対象物は、前述と同じく、ヒトのアキレス腱をミクロトームでスライスした薄切片である。図7に示したものは、コラーゲン線維と垂直な方向にスライスされており、照射するレーザ光の光軸と線維の方向とが略平行となるように配置されている。
図8(a)及び図8(b)は何れも直線偏光ビームを入射した場合の観察像であるが、図8(a)はコラーゲン線維の方向と交叉する方向の直線偏光を有するレーザ光を入射させており、図8(b)はコラーゲン線維の方向と略平行の直線偏光を有するレーザ光を入射させている。これらの場合、何れもレーザ光の集光点にて電場の方向と線維の方向とが略垂直となるため、SHG信号の観測強度が比較的弱くなっていることが分かる。なお、コラーゲン線維の方向と電場の方向とが完全に垂直である場合には、SHG信号が観測されないはずであるが、図8(a)には斜め45度の方向に縞状の観測強度が観測されているため、線維の方向が光軸に対して少しだけ傾いた状態で配置されている様子が見て取れる。
一方、図8(c)はラジアル偏光ビームを入射した場合の観察像である。この場合、レーザ光の集光点にて電場の方向と線維の方向とが略平行となるため、SHG信号の観測強度が強くなっていることが分かる。
このように、本発明では、面内の分子配向及び光軸方向の分子配向を、3次元空間にわたって観測することができる。
なお、本実施の形態では、1つの空間光変調器12にレーザ光を2回照射してビーム断面における偏光状態及び位相状態を制御する構成としたが、図2に示したように2つの空間光変調素子120A,120Bを用いて偏光状態及び位相状態を制御する構成としてもよい。1つの空間光変調器12を用いる構成とした場合には、装置コストを低く抑えることができるという利点を有しており、2つの空間光変調素子120A,120Bを用いる構成とした場合には、装置構成(光学系の構成)を簡略化できるという利点を有している。
また、本実施の形態では、観察対象物内で生じる非線形光学現象として第2高調波を光電子増倍管25で観測する構成としたが、第2高調波以外の非線形光学現象を観測する構成としてもよい。観測可能な非線形光学現象として、例えば、和周波の発生、差周波の発生、コヒーレントアンチストークスラマン現象、ラマンゲイン、2光子励起蛍光、飽和吸収現象、過渡吸収現象、過渡ラマン現象、蛍光消光現象等を挙げることができる。更に、これらの観測手段は必ずしも光電子増倍管25である必要はなく、アバランシェフォトダイオードのような高感度の検出器、スペクトルを観測する分光器等を用いてもよい。
実施の形態2.
実施の形態1では、試料22を挟んで対物レンズ21の対向位置に配置した光電子増倍管25を利用することにより、試料22内部で作用を受けた光を検出し、観察対象物の観察像を取得する構成としたが、光電子増倍管25の配置は必ずしもこのような対向配置である必要はない。本実施の形態では、本発明に係る顕微鏡の光学系に関して他の構成例を説明する。
実施の形態1では、試料22を挟んで対物レンズ21の対向位置に配置した光電子増倍管25を利用することにより、試料22内部で作用を受けた光を検出し、観察対象物の観察像を取得する構成としたが、光電子増倍管25の配置は必ずしもこのような対向配置である必要はない。本実施の形態では、本発明に係る顕微鏡の光学系に関して他の構成例を説明する。
図9は実施の形態2に係る顕微鏡の構成例を説明する模式図である。なお、図9において、レーザ光を試料22に照射するまでの光学系の構成は実施の形態1と全く同様であり、同一の構成要素については図1と同じ符号を付すこととする。
偏光分布を制御したレーザ光を対物レンズ22により試料22の表面又は内部に集光した場合、非線形光学効果により、例えば、第2高調波が発生する。本実施の形態では、この第2高調波を落射配置に置かれた光電子増倍管42により検出する。そのため、試料22から発せられる第2高調波を対物レンズ21で集め、レンズ20,19及びガルバノミラー18を介してダイクロイックミラー41へ導く。そして、ダイクロイックミラー41によって反射された第2高調波を光電子増倍管42によって検出する。光電子増倍管25で得られたSHG信号は、図に示していない画像処理部へ出力されて観察像が生成される。
このように落射配置に置かれた光電子増倍管42により第2高調波を検出することも可能である。観察対象物によっては落射配置の方が観測強度を稼ぐことができ、明瞭な観察像を取得することができる。
10 レーザ出力装置
12 空間光変調器(SLM)
13,15 1/4波長板
18 ガルバノスキャナ
21,23 対物レンズ
22 試料
24 光学フィルタ
25 光電子増倍管
30 制御部
12 空間光変調器(SLM)
13,15 1/4波長板
18 ガルバノスキャナ
21,23 対物レンズ
22 試料
24 光学フィルタ
25 光電子増倍管
30 制御部
Claims (13)
- 観察対象物に対してビーム光を照射し、前記観察対象物からの光を検出して前記観察対象物の観察像を取得する顕微鏡において、
照射すべきビーム光に対して空間変調を行う空間光変調器と、前記ビーム光のビーム断面における偏光分布を制御すべく前記空間光変調器を制御する制御手段と、偏光分布を制御したビーム光を前記観察対象物内に集光する集光手段と、集光したビーム光により生じる非線形光学現象を観測する観測手段とを備えることを特徴とする顕微鏡。 - 前記空間光変調器は、前記ビーム断面を複数の区画に分割した各区画についてビーム光の偏光状態及び位相状態を制御可能になしてあることを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡。
- 前記空間光変調器は、1又は複数の液晶空間光変調素子を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の顕微鏡。
- 前記制御手段は、集光させたビーム光が光軸方向の偏光成分を持つように前記偏光分布を制御するようにしてあることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の顕微鏡。
- 前記制御手段は、集光させたビーム光が光軸と交叉する方向の偏光成分を持つように前記偏光分布を制御するようにしてあることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の顕微鏡。
- 前記ビーム光は、レーザ光であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1つに記載の顕微鏡。
- 前記ビーム光は、ピコ秒又はフェムト秒のパルス長を有するパルス光であることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1つに記載の顕微鏡。
- 前記ビーム光は、X線領域、紫外光領域、可視光領域、赤外光領域、又はテラヘルツ領域の光であることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1つに記載の顕微鏡。
- 単波長の光、又は複数の波長の光を前記観察対象物に照射するようにしてあることを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1つに記載の顕微鏡。
- 前記非線形光学現象は、第2高調波の発生であることを特徴とする請求項1乃至請求項9の何れか1つに記載の顕微鏡。
- 前記観察対象物からの光から不要な光を除去する手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか1つに記載の顕微鏡。
- 前記観察対象物に対する前記観測手段及び集光手段の配置関係が対向配置又は落射配置であることを特徴とする請求項1乃至請求項11の何れか1つに記載の顕微鏡。
- 前記観測手段は、入射される光のスペクトルを観測する分光器であることを特徴とする請求項1乃至請求項12の何れか1つに記載の顕微鏡。
Priority Applications (1)
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JP2005136379A JP2006313273A (ja) | 2005-05-09 | 2005-05-09 | 顕微鏡 |
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JP2005136379A JP2006313273A (ja) | 2005-05-09 | 2005-05-09 | 顕微鏡 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2006313273A (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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-
2005
- 2005-05-09 JP JP2005136379A patent/JP2006313273A/ja active Pending
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