JP2006308497A - 炉底温度測定方法及び装置、並びに溶融炉の炉底監視方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 溶融炉10の炉底17表面を測定範囲に含む位置にサーモグラフィ装置30を設置し、前記測定範囲に含まれる任意の温度測定点32の近傍に、放射率を1.0若しくはこれに近似させた黒体31を設けておき、予め基準放射率を1.0若しくはこれに近似させた値に設定し、前記サーモグラフィ装置30にて前記黒体31の放射エネルギから黒体温度を測定し、該サーモグラフィ装置にて前記測定点の放射エネルギから測定した測定点温度が、前記黒体温度と略一致する放射率を求め、該求めた放射率を前記測定範囲の放射率に設定し、前記サーモグラフィ装置により該測定範囲の温度分布を測定する。
【選択図】 図1
Description
一例として、プラズマ式溶融炉につき図7を参照して説明すると、このプラズマ式溶融炉50は、炉頂部から垂下される主電極51と、炉底に配設される炉底電極52とが設けられ、これらの両電極間に直流電圧53を印加することによりプラズマアークを発生する。そして、投入ホッパ55より炉本体54内に投下された被処理物をプラズマ熱により加熱して溶融する。被処理物は溶融して溶融スラグ56と、これより比重が大である溶融メタル57が炉本体54内に溜まり、出滓口58より排出される。また、炉本体54内は高温に維持されるため、その内部は不定形耐火材60や耐火レンガ61等の耐火材により形成され、この耐火材を鉄皮62により被覆した構造が採られている。
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、炉底表面の温度を広範囲に亘って精度良く測定することができる炉底温度測定方法及び装置を提供することを目的とする。さらにまた、前記炉底温度測定技術を用いて、炉底の異常を検知することが可能である溶融炉の炉底監視方法及び装置を提供することを目的とする。
溶融炉の炉底表面を測定範囲に含む位置にサーモグラフィ装置を設置し、前記測定範囲に含まれる任意の温度測定点の近傍に、放射率を1.0若しくはこれに近似させた黒体を設けておき、
予め基準放射率を1.0若しくはこれに近似させた値に設定し、前記サーモグラフィ装置にて前記黒体の放射エネルギから黒体温度を測定する工程と、
前記サーモグラフィ装置にて前記測定点の放射エネルギから測定した測定点温度が、前記黒体温度と略一致する放射率を求める工程と、
前記求めた放射率を前記測定範囲の放射率に設定し、前記サーモグラフィ装置により該測定範囲の温度分布を測定する工程と、を備えたことを特徴とする。
本発明のように、溶融スラグの流れ方向であって、溶融炉の略中心位置から出滓口を結ぶ線上のうち何れかの位置に黒体を設け、溶融炉において最も高温になり易く、炉内耐火材の侵食が著しい出滓口近傍を測定範囲とすることによって、炉底の異常を確実に検知することが可能となる。
これは、溶融スラグ及び溶融メタルの温度の関係から、溶融炉の同心円上は温度変化が小さいため、該同心円状に黒体を複数設けることにより、温度変化による放射率の誤差を最小限に抑え、測定域の温度分布をより一層正確に測定することが可能である。また、前記半径方向は、温度分布が比較的大きいため、ここに複数の黒体を設けることにより放射率の温度依存を補正することができる。
また、前記サーモグラフィ装置の選定波長を、8〜14μmの範囲内とすることが好ましく、これにより前記サーモグラフィ装置にて検出する放射エネルギに対する太陽光の影響を防ぎ、より一層精度の高い温度測定が可能となる。
前記測定した温度分布に基づき、通常運転時より高温を示す高温域を検出する工程と、該検出した高温域に基づき炉底の異常を検知する工程と、を備えたことを特徴とする。
さらにまた、前記高温域検出工程にて検出した高温域が局所的であるか広域的であるかを判定する工程と、
前記高温域が広域的であると判定された場合に、他の測定因子に基づき溶融炉の炉内温度が適正温度より高温であるか否かを判定する工程と、
前記炉内温度が適正である場合、若しくは前記高温域が局所的である場合には、前記炉底の耐火材に異常が発生したと判断する工程と、を備えたことを特徴とする。
このように、前記測定した温度分布から高温域を検出することにより、運転中であっても炉底の耐火材の侵食、浮き上がり等の不具合を正確に把握することが可能であり、鉄皮の変形、抜け落ち等を未然に防止することが可能である。尚、前記他の測定因子とは、例えば、熱電対或いは放射温度計により測定した溶融スラグ温度、熱電対により測定した耐火材温度、炉壁の冷却水熱量等が挙げられる。
基準放射率を1.0若しくはこれに近似させた値に設定して前記サーモグラフィ装置にて測定された黒体温度を記憶させる記憶手段と、前記サーモグラフィ装置にて測定した測定点温度が、前記黒体温度と略一致する放射率を求める放射率補正手段と、を有する制御装置を備え、
前記制御装置にて求めた放射率を前記測定範囲の放射率に設定し、前記サーモグラフィ装置により該測定範囲の温度分布を測定することを特徴とする。
また、前記サーモグラフィ装置を炉底の直下を外れた位置に配置したことを特徴とし、これにより、溶融炉からの溶融物等の落下によるサーモグラフィ装置の損傷等を防止できる。
さらに、前記黒体を複数設ける場合であって、該黒体を、溶融炉の中心位置を中心軸とした同心円上に複数設けるか、或いは前記溶融炉の半径方向に複数設けることを特徴とする。
さらにまた、前記サーモグラフィ装置の選定波長が、8〜14μmの範囲内であることが好ましい。
また、前記炉底温度測定装置を用いた溶融炉の炉底監視装置において、
前記制御装置が、前記測定した温度分布に基づき、通常運転時より高温を示す高温域を検出する手段と、該検出した高温域に基づき炉底の異常を検知する手段と、を備えたことを特徴とする。
本実施例では炉底温度測定、監視対象である溶融炉として、一例としてプラズマ式溶融炉につき説明するが、被処理物を溶融処理する溶融炉であれば特にこれに限定されるものではない。
図1は本発明の実施例に係る炉底監視装置を備えた溶融炉の側断面を示す全体構成図、図2は本実施例に係る炉底監視装置を備えた炉底部の概略を示す側断面図、図3は図2に示した炉底監視装置を備えた炉底部の概略を示す平面図である。
また、前記プラズマ式溶融炉10では、円滑で適正な運転を行なうために各種計測器(不図示)を具備し、これにより取得した計測値に基づいて運転及び炉内監視を行なっている。例えば、炉蓋に設けられた計測用開口に設置されたスラグ温度計、炉壁に埋設され耐火レンガ温度を検出する熱電対、前記出滓口の内部に通流する冷却水の入口温度及び出口温度を検出する温度検出計、炉内温度を検出する温度検出計、前記電極間の電流、電圧を計測する電流計及び電圧計、炉内へ投入する灰を計量する計量器などが挙げられる。
前記サーモグラフィ装置30は、測定対象から放出される放射エネルギ量を非接触で検出して該放射エネルギ量から測定対象の温度を求める周知の装置である。該サーモグラフィ装置30は、前記炉底17の鉄皮表面のうち少なくとも一部を測定範囲に含む位置に設置され、特に好ましくは、前記溶融炉10の直下から外れた側方位置から炉底17を測定範囲とする位置に設置される。これにより、溶融スラグ22等が流出した際に、サーモグラフィ装置30に落下して損傷することを防止する。該サーモグラフィ装置30は、複数設けるようにしても良い。また、前記サーモグラフィ装置30を炉底の直下に配置する場合には、該サーモグラフィ装置30を治具等により自在に移動可能にしても良い。さらに、前記サーモグラフィ装置30を移動自在な構造とし、定期的に測定範囲が異なる位置に移動するようにしても良い。
また、前記サーモグラフィ装置30の選定波長は8〜14μmとすることが好適である。これにより、太陽光の影響を受けず、正確な測定が可能となる。
前記黒体31は、一又は複数設けられる。さらに、該黒体31の設置位置は、炉底17のうち、スラグの流れ方向に沿って、前記炉底電極12と前記出滓口25を結ぶ線上に対応する位置に設けることが好ましい。これは、溶融炉10において最も高温になり易く、炉内耐火材の侵食が著しい出滓口近傍を測定範囲33とするためである。
また、前記黒体31を複数設ける場合には、電極12を中心とした同心円状に設けることが好ましい。これは、溶融炉10の同心円上は温度変化が小さいため、該同心円状に黒体31を複数設けることにより、温度変化による放射率の誤差を最小限に抑え、測定範囲33の温度分布をより一層正確に測定するためである。また、前記炉底17の半径方向に複数設けるようにしても良く、半径方向は温度分布が比較的大きいため、ここに複数の黒体を設けることにより放射率の温度依存を補償することができる。
図に示されるように、まず、基準放射率をεbを1.0、若しくはこれに近似した値に設定してサーモグラフィ装置30にて黒体31の温度Tbを測定し(S1)、測定した黒体温度Tbを記録しておく(S2)。さらに、サーモグラフィ装置30を任意の予測放射率εtに設定して、前記測定点32の放射エネルギから該測定点温度Ttを測定し、前記予測放射率εbを段階的に変化させていき(S3)、黒体温度Tbと前記測定点温度Ttが略一致するときの予測放射率εtを測定範囲33の放射率に設定する(S4)。
このようにして炉底鉄皮表面の放射率εtを設定し、該放射率に応じて前記サーモグラフィ装置30により炉底17の温度分布を測定する。これにより、正確な炉底の温度分布を得ることが可能となる。
この炉底監視装置は、サーモグラフィ装置30と、該サーモグラフィ装置30に接続された制御装置40とからなり、該制御装置40にて演算された制御信号が溶融炉10の各種制御機器へ伝達されるようになっている。
炉底監視を行う方法の一例につき図6を参照して説明すると、通常運転(S10)の際に、定期的に前記サーモグラフィ装置30により炉底鉄皮表面の温度分布を測定する(S11)。該測定された温度分布から、高温域が局所的であるか広域的であるかを判断し(S12)、広域的である場合には、前記溶融炉10が具備する前記各種計測器により求められた他の測定因子から運転状態の確認を行う(S13)。該測定因子とは、例えば、検出スラグ温度(S14)、計算スラグ温度(S15)、冷却水熱量(S16)、スタンプ温度(S17)等が挙げられる。これらの測定因子から、溶融炉の運転温度が高いために高温域が広域的に現れているか否かを判断し(S18)、運転温度が高いと判断された場合には、直流電源13の制御、主電極の上昇、被処理物投入量の増加等により運転温度を低下させ(S19)、通常運転に戻る。
一方、サーモグラフィ装置30により得られた温度分布画像から、前記高温域が局所的であると判断された場合には、炉底17の耐火レンガ18が部分的に浮いている可能性が高いと判断され(S23)、炉の運転を停止し(S24)、耐火レンガ18の補修・交換を行う(S25)。
このように、前記測定した温度分布から高温域を検出することにより、運転中であっても炉底17の耐火材の侵食、浮き上がり等の不具合を正確に把握することが可能であり、鉄皮16の変形、抜け落ち等を未然に防ぐことが可能である。
11 主電極
12 炉底電極
14 炉本体
15 不定形耐火材
16 鉄皮
17 炉底
18 耐火レンガ
22 溶融スラグ
23 溶融メタル
25 出滓口
30 サーモグラフィ装置
31 黒体
32 標的
40 制御装置
Claims (12)
- 溶融炉の炉底表面を測定範囲に含む位置にサーモグラフィ装置を設置し、前記測定範囲に含まれる任意の温度測定点の近傍に、放射率を1.0若しくはこれに近似させた黒体を設けておき、
予め基準放射率を1.0若しくはこれに近似させた値に設定し、前記サーモグラフィ装置にて前記黒体の放射エネルギから黒体温度を測定する工程と、
前記サーモグラフィ装置にて前記測定点の放射エネルギから測定した測定点温度が、前記黒体温度と略一致する放射率を求める工程と、
前記求めた放射率を前記測定範囲の放射率に設定し、前記サーモグラフィ装置により該測定範囲の温度分布を測定する工程と、を備えたことを特徴とする炉底温度測定方法。 - 前記黒体を、前記溶融炉の略中心位置から該溶融炉の出滓口を結ぶ線上に対応する炉底表面に設けることを特徴とする請求項1記載の炉底温度測定方法。
- 前記黒体を複数設ける場合であって、該黒体を、溶融炉の中心位置を中心軸とした同心円上に複数設けるか、或いは前記溶融炉の半径方向に複数設け、該複数の黒体に対応した炉底表面の温度分布を測定するようにしたことを特徴とする請求項1記載の炉底温度測定方法。
- 前記サーモグラフィ装置の選定波長が、8〜14μmの範囲内であることを特徴とする請求項1記載の炉底温度測定方法。
- 請求項1記載の炉底温度測定方法を用いた溶融炉の炉底監視方法において、
前記測定した温度分布に基づき、通常運転時より高温を示す高温域を検出する工程と、該検出した高温域に基づき炉底の異常を検知する工程と、を備えたことを特徴とする溶融炉の炉底監視方法。 - 前記高温域検出工程にて検出した高温域が局所的であるか広域的であるかを判定する工程と、
前記高温域が広域的であると判定された場合に、他の測定因子に基づき溶融炉の炉内温度が適正温度より高温であるか否かを判定する工程と、
前記炉内温度が適正である場合、若しくは前記高温域が局所的である場合には、前記炉底の耐火材に異常が発生したと判断する工程と、を備えたことを特徴とする請求項5記載の溶融炉の炉底監視方法。 - 溶融炉の炉底表面を測定範囲に含む位置に設置されたサーモグラフィ装置と、前記測定範囲に含まれる任意の温度測定点の近傍に設けられた放射率を1.0若しくはこれに近似させた黒体と、を備えるとともに、
基準放射率を1.0若しくはこれに近似させた値に設定して前記サーモグラフィ装置にて測定された黒体温度を記憶させる記憶手段と、前記サーモグラフィ装置にて測定した測定点温度が、前記黒体温度と略一致する放射率を求める放射率補正手段と、を有する制御装置を備え、
前記制御装置にて求めた放射率を前記測定範囲の放射率に設定し、前記サーモグラフィ装置により該測定範囲の温度分布を測定することを特徴とする炉底温度測定装置。 - 前記黒体を、前記溶融炉の略中心位置から該溶融炉の出滓口を結ぶ線上に対応する炉底表面に設けることを特徴とする請求項7記載の炉底温度測定装置。
- 前記サーモグラフィ装置を炉底直下を外れた位置に配置したことを特徴とする請求項7記載の炉底温度測定装置。
- 前記黒体を複数設ける場合であって、該黒体を、溶融炉の中心位置を中心軸とした同心円上に複数設けるか、或いは前記溶融炉の半径方向に複数設けることを特徴とする請求項7記載の炉底温度測定装置。
- 前記サーモグラフィ装置の選定波長が、8〜14μmの範囲内であることを特徴とする請求項7記載の炉底温度測定装置。
- 請求項7記載の炉底温度測定装置を用いた溶融炉の炉底監視装置において、
前記制御装置が、前記測定した温度分布に基づき、通常運転時より高温を示す高温域を検出する手段と、該検出した高温域に基づき炉底の異常を検知する手段と、を備えたことを特徴とする溶融炉の炉底監視装置。
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