JP2006306276A - 鉄道車両のヨーダンパ装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 前後に連結された鉄道車両100と鉄道車両100との間で少なくとも左右のいずれかの端部に設けられ、内部の油の移動における粘性抵抗により各車両の接離方向移動に抵抗力を付与するヨーダンパ20と、いずれかの鉄道車両の脱線状態を検出する脱線検出手段11L,11Rとを備え、各ヨーダンパに、内部の油の移動可能状態と移動規制状態とを切り替え可能とする規制手段26,28,30,32を設けると共に、脱線検出手段により脱線状態の検出が行われると、各ヨーダンパの規制手段を流動状態から移動規制状態に切り替える制御を行う制御手段40を備える、という構成を採っている。
【選択図】図2
Description
このため、震災の対策としては、地震の震動がP波(初期微動、縦波)とS波(主要動、横波)とからなり、P波の伝達速度の方が高速であることを利用して、P波を感知すると警報を伝え、S波の到達前に例えば走行中の鉄道車両を緊急停止させる等の措置が採用されている。
しかしながら、上記対策は、地震の震源が深く或いは遠い場合には有効だが、震源が浅く或いは近い場合には、P波とS波の到達時間に差が生じないため、緊急の措置が間に合わないという問題があった。
また、上記対策は、震災時の対策に限定され、その他の要因によるものには対処できないという問題もあった。
そして、いずれかの鉄道車両で脱線を生じ、これが脱線検出手段により検出されると、制御手段が、規制手段を流動状態から移動規制状態に切り替える。これにより、ヨーダンパによって連結された各車両の間は接離方向移動が規制され、互いに同方向を向いた状態が維持される。
なお、ダンパに使用される粘性流体は、ダンパに一般的に使用される油かそれと同程度の粘性抵抗を示す流体であれば良い。
かかる構成では、脱線時において、各車両の左右両側でその接離方向の移動が規制され、より強固に同方向を向いた状態が維持される。
また、本発明のヨーダンパ装置は、脱線を生じない場合には、各車両間のヨーイングを抑制する機能を有し、走行安定化及び制振を図ることが可能となる。さらに、このため、鉄道車両に対してヨーイングの制振装置と脱線対策を行う装置とを搭載する場合と異なり、搭載車両の省スペース化及び軽量化を図ることが可能となる。
本発明の実施形態たるヨーダンパ装置10について図1及び図2に基づいて説明する。図1(A)は本発明の実施形態であるヨーダンパ装置10が適用された鉄道車両100,100の左側面図であり、図1(B)は鉄道車両100,100の平面図である。
ヨーダンパ装置10は、鉄道車両100が何らかの要因により脱線を生じた場合に、通常は各鉄道車両の前端部又は後端部における左右方向の振れの緩和に用いられる車体左右のヨーダンパ20,20を使用して、当該脱線による被害を最小限に押さえることを目的として搭載されるものである。
なお、以下の説明において、鉄道車両100の前進方向を前側、その逆方向の後側、前進方向を向いて左手を左側、前進方向を向いて右手を右側、鉄道車両100を水平面上に配置した状態での上方を上側、同状態での下方を下側として以下の説明を行うものとする。
鉄道車両100は、運転室や客室等が設けられる箱状の車体110と、当該車体110の下側の前後にそれぞれ設けられた台車120とから構成される。
車体110は、その下側に配置される台枠と、台枠上の左右両側に配置される左右の側構体と、台枠上の前後両端に配置される前後の妻構体と、屋根となる屋根構体とからなる六面体で構成された箱状の構造物となっている。
台車120は、車輪を両端部で保持する車軸を前後に並列に支持しており、その中央部に設けられた図示しない牽引装置により車体110の下部に連結されている。牽引装置は、車体110に対する台車120上下方向に沿った軸中心の揺動(ヨーイング)を許容し、軌道の湾曲に対応して走行することを可能としている。
そして、複数の鉄道車両100が、前後に並んだ状態で、各車両の後端部と前端部とが図示しない連結器により連結されている。
図2にはヨーダンパ装置10の制御系を示すブロックである。図1及び図2に基づいてヨーダンパ装置10について説明する。なお、図2においてヨーダンパ20は一つしか図示していないが、実際には、連結された複数の鉄道車両100の間に設けられる全てのヨーダンパ20が備える電磁弁が制御回路40に接続されてその開閉制御が行われる。
ヨーダンパ装置10は、前後に連結された鉄道車両100と鉄道車両100との間で左右に設けられた一対のヨーダンパ20と、軌道に対する鉄道車両100の各車輪の脱線状態を検出する脱線検出手段としての路面センサ11L,11Rと、各ヨーダンパ20内に設けられた四つの電磁弁26,28,30,32の動作制御を行う制御手段としての制御回路40とを備えている。
上記ヨーダンパ20は、前述したように、前後に並んだ鉄道車両100と鉄道車両100との間において、左右両端部にそれぞれ設けられている。つまり、図1(B)に示すように、前側の鉄道車両100の後端部左側と後側の鉄道車両100の前端部左側とが一方のヨーダンパ20で連結され、前側の鉄道車両100の後端部右側と後側の鉄道車両100の前端部右側とが一方のヨーダンパ20で連結されている。
シリンダー21は、外筒部23とその内側に設けられた内筒部24との二重の筒状構造となっている。そして、シリンダー21の内部は、外筒部23と内筒部24との間の領域(外側領域とする)と内筒部24の内側領域とに仕切られており、内側領域には所定の粘性のある油で満たされている。
さらに、一方の流路には、外側領域から内側領域に向かう方向にのみ油の移動を可能とする逆止弁25と、当該流路について油の移動可能状態と移動規制状態とを切り替え可能とする規制手段としての電磁弁26とが設けられている。
また。他方の流路には、内側領域から外側領域に向かう方向にのみ油の移動を可能とする逆止弁27と、当該流路について油の移動可能状態と移動規制状態とを切り替え可能とする規制手段としての電磁弁28とが設けられている。
そして、ピストン22には、その往復移動方向に沿って第一の内側領域と第二の内側領域とを連通する二つの流路(オリフィス)が形成されている。
さらに、一方の流路には、第一の内側領域から第二の内側領域に向かう方向にのみ油の移動を可能とする逆止弁29と、当該流路について油の移動可能状態と移動規制状態とを切り替え可能とする規制手段としての電磁弁30とが設けられている。
また。他方の流路には、第二の内側領域から第一の内側領域に向かう方向にのみ油の移動を可能とする逆止弁31と、当該流路について油の移動可能状態と移動規制状態とを切り替え可能とする規制手段としての電磁弁32とが設けられている。
そして、このとき、各流路は細く絞られているので、油の移動には粘性抵抗を生じ、ピストン22の前進移動に抵抗力が付与される。
また、ヨーダンパ20が伸張する方向、即ち、ピストン22が後退(図2における左側)すると、逆止弁31を通過して第二の内側領域から第一の内側領域へ油の移動が行われる。また同様に、逆止弁26を通過して外側領域から第一の内側領域へ油の移動が行われる。このときも、各流路は細く絞られているので、油の移動には粘性抵抗を生じ、ピストン22の後退移動に抵抗力が付与される。
さらに、全電磁弁26,28,30,32が閉鎖されると、各流路における油の移動が行われないので、ピストン22の進退移動は阻止される。
このように、全電磁弁26,28,30,32を開放させた状態では、ピストン22の進退移動に対して油の粘性抵抗により抵抗力が付与され、この抵抗力は、内筒部24の一端側に形成された内側領域と外側領域とを連通する二つの流路の内径と、ピストン22に形成された第一の内側領域と第二の内側領域とを連通する二つの流路の内径とにより決定されるため、各車両100,100の間のヨーイング方向の制振に適した値に設定することが望ましい。
路面センサ11L,11Rは、図1に示すように、台車120の下側であって左右両側部にそれぞれ設けられている。かかる路面センサ11L,11Rは下方に光照射を行う光源とその反射光を受光する受光素子とからなり、発光と受光の時間差から道床までの距離を検出することを可能とするものである。
つまり、各路面センサ11L,11Rからの出力により、制御回路40は、台車120の下面から道床までの距離を算出し、その距離が通常走行時における距離よりも過剰に接近しているか否かによって脱線による台車120の傾斜やレールからの脱落の有無の判断を行うようになっている。
制御回路40は、所定の制御プログラムや基本データを記憶するメモリと演算処理を実行する演算装置と各路面センサ11L,11Rを接続するA/D変換器と、各電磁弁26,28,30,32を駆動させる駆動回路とを備えている。
前述した図1,2に基づいてヨーダンパ装置10の動作説明を行う。
まず、制御回路40は、各路面センサ11L,11Rによる検出距離がいずれも適正な値を示している場合には、各電磁弁26,28,30,32を開放状態に切り替える。
これにより、各ヨーダンパ20のピストン22はシリンダー21に対してその進退移動を行う際に、内部の油の流動における粘性抵抗による抵抗力が付与される。その結果、連結された一方の鉄道車両100と他方の鉄道車両100の間における左右それぞれの端部で接離方向における移動に抵抗力が付与されて当該移動が緩慢となるため、一方の鉄道車両100に対する他方の鉄道車両100のヨーイング方向において制振効果が付与される。
上記ヨーダンパ装置10では、上述の通り、脱線時において各ヨーダンパ20を伸縮不能に固定することにより、連結された二つの鉄道車両100間の左右両端部において、接離間隔の変動が規制される。このため、脱線時に、一方の鉄道車両100に対して他方の鉄道車両100が屈曲し、一方或いは双方の鉄道車両100が軌道から大きく外れ、周囲設備、隣接車両或いは装置搭載車両自体の損壊を発生させる事態を有効に回避することが可能となる。これにより、脱線による事故被害の拡大を防止することが可能となる。
また、上記ヨーダンパ装置10は、脱線を生じていない通常走行時には、各鉄道車両100の間のヨーイングによる振動を抑制し、走行安定化及び制振を図ることが可能となる。このため、鉄道車両100に対してヨーイングの制振装置と脱線対策を行う装置とを搭載する場合と異なり、搭載車両の省スペース化及び軽量化を図ることが可能となる。
ヨーダンパ20は、上記構造に限らず、内部流体の強制的な流動により、抵抗力を発生されるいかなる構造のものを使用しても良い。また、内部の流体も油に限らず、同程度の粘性抵抗を有するものであれば良い。
また、制御回路40は、デジタル回路とアナログ回路のいずれで構成しても良い。
つまり、地震の発生の報知を受けると鉄道車両100の走行を停止させる緊急停止システムを搭載し、地震の発生時には上記システムにより緊急停止を図り、万が一その緊急停止が間に合わず、脱線を生じた場合には、ヨーダンパ装置10により、鉄道車両100間での屈曲を防止し、軌道から大きく逸脱することを防止させる構成としても良い。かかる構成によれば、地震による脱線の被害の拡大を防止することが可能となる。
上記安全レールとは、脱線した鉄道車両100が軌道から大きく飛び出して大事故になるのを防止するために,脱線した車輪を誘導するように本線レールの内側または外側に沿って設けられたレールをいう。橋梁上や高所などに設けられる。脱線防止レールは脱線そのものを防止するために設けられているが、これとは機能的に異なり、安全レールは本線レールとの間隔も大きく設置される。
また、上記脱線防止ガードとは、断面がL字形をした鋼鉄製のガードであり、機能的には脱線防止レールと同じように、脱線防止に用いられているが、軽くて作業がしやすいのでこちらの方が一般的である。
上述のような安全レール、脱線防止レール又は脱線防止ガードが設けられた軌道を走行する鉄道車両100にヨーダンパ装置10を搭載することにより、各鉄道車両100の屈曲を防止して姿勢を維持する作用が、車両を安全に誘導する安全レール、脱線防止レール又は脱線防止ガードの作用を補い、より効果的に脱線を防止し或いは脱線時の事故被害を低減させることが可能となる。
11L,11R 路面センサ(脱線検出手段)
20 ヨーダンパ
26,28,30,32 電磁弁(規制手段)
40 制御回路(制御手段)
100 鉄道車両
110 車体
120 台車
Claims (2)
- 前後に連結された鉄道車両と鉄道車両との間で少なくとも左右のいずれかの端部近傍に設けられ、内部の粘性流体の移動における粘性抵抗により各車両の接離方向移動に抵抗力を付与するヨーダンパと、
いずれかの前記鉄道車両の脱線状態を検出する脱線検出手段とを備え、
前記各ヨーダンパに、前記内部の粘性流体の移動可能状態と移動規制状態とを切り替え可能とする規制手段を設けると共に、
前記脱線検出手段により脱線状態の検出が行われると、前記各ヨーダンパの規制手段を流動状態から移動規制状態に切り替える制御を行う制御手段を備えることを特徴とする鉄道車両のヨーダンパ装置。 - 前記ヨーダンパは、左右にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両のヨーダンパ装置。
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