JP2006305714A - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】 優れた耐欠損性および耐摩耗性を有する長寿命の切削工具を提供する。
【解決手段】 すくい面4と逃げ面5との交差稜を切刃6として、超硬合金を基体2とし、基体2の表面に、TiCN層7を少なくとも1層被覆してなり、TiCN層7のX線回折分析において、以下の式にて算出される値をTiCN層7の(422)面の配向係数Tとしたとき、すくい面4における配向係数TCFが逃げ面5における配向係数TCRよりも大きいTiCN層7とした表面被覆切削工具1を作製する。
=I(422)/〔(1/6)×{I(422)+I(111)+I(200)+I(311)+I(420)+I(220)}〕
【選択図】 図1

Description

本発明は、優れた耐チッピング性および耐摩耗性を有する硬質被覆層を表面に被着形成した表面被覆切削工具に関する。
従来より、金属の切削加工に広く用いられている切削工具は、超硬合金からなる基体の表面に、TiC層、TiN層、Al層およびTiCN層等の硬質被覆層を単層または複数層被着形成した表面被覆切削工具が多用されている。
また、特許文献1には、TiCN層の結晶配向ピークが(422)面において最大となるようにすることで、優れた耐摩耗性、耐欠損性を示すことが報告されている。
特開平6−158325号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載されたTiCN層の配向制御によっても鋼の断続切削等の大きな衝撃がかかるような切削においては、すくい面と逃げ面での求められる性能が微妙に異なるため、TiCN層の(422)面での結晶配向ピークを最強とするだけでは、すくい面、逃げ面の各々に求められる性能を満足できず、工具の異常摩耗、突発的欠損を防止することができないのが現状であった。
したがって、本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、硬質被覆層のTiCN層の構成をすくい面と逃げ面とで各々最適化することによって、優れた耐欠損性および耐摩耗性を有する長寿命の切削工具を提供することにある。
本発明者は、上記課題に対し、工具の耐欠損性および耐摩耗性を高める方法について検討した結果、X線回折分析において、すくい面におけるTiCN層の(422)面の配向係数を逃げ面におけるTiCN層の(422)面の配向係数よりも大きい構成とすることによって、すくい面側においてはTiCN層の耐衝撃性が高く、また、逃げ面側においては、すくい面側に比べてTiCN層が基体および硬質被覆層の他の被覆層との付着力が高くなり硬質被覆層の耐摩耗性が高いことから、各部に求められる性能に応じた層構成とすることができ、従来の被覆超硬合金に比べてさらに優れた耐欠損性および耐摩耗性を有する切削工具が得られることを知見した。
すなわち、本発明の表面被覆切削工具は、超硬合金を基体とし、該基体の表面に、TiCN層を少なくとも1層被覆してなり、すくい面と逃げ面との交差稜を切刃とする表面被覆切削工具であって、前記TiCN層のX線回折分析において、以下の式にて算出される値を前記TiCN層の(422)面の配向係数Tとしたとき、前記すくい面における配向係数TCFが、前記逃げ面における配向係数TCRよりも大きいことを特徴とするものである。
=I(422)/〔(1/6)×{I(422)+I(111)+I(200)+I(311)+I(420)+I(220)}〕
また、前記TiCN層において、前記配向係数TCRと前記配向係数TCFとの比(TCR/TCF)が1.1〜2.5の範囲内にあることが、すくい面側では、TiCN層の耐衝撃性が高くなり、逃げ面側では、すくい面と比べてTiCN層が基体および硬質被覆層の他の被覆層との付着力が高くなり硬質被覆層の耐摩耗性が高くなる点で望ましい。
さらに、前記逃げ面における前記基体の表面部での結合相量Bと、前記すくい面における前記基体の表面部での結合相量Bとが、B<Bであることが、上述のTiCN層の結晶配向を上記範囲内に制御できて、優れた耐欠損性、耐摩耗性を発揮することを可能とする。
また、前記基体が4,5,6族元素から選ばれる1種以上の化合物、立方晶窒化硼素、ダイヤモンドを主成分とする硬質相と鉄族金属を主成分とする結合相とからなり、前記逃げ面における前記基体の表面部での結合相量Bが、前記基体内部での結合相量Bに対してB/B=0.6〜0.9、かつ前記すくい面における前記基体の表面部での結合相量Bが前記基体内部での結合相量Bに対して、B/B=1.1〜1.6であることが、上述のTiCN層の結晶配向を上記範囲内に制御できて、優れた耐欠損性、耐摩耗性を発揮することを可能とする。
なお、前記TiCN層が前記基体表面に対して垂直に伸びる筋状形状のTiCN粒子からなり、前記すくい面における前記筋状形状のTiCN粒子の層厚み方向に対して垂直な方向についての平均結晶幅をw、前記逃げ面における前記筋状形状のTiCN粒子の平均結晶幅をwとするとき、これらの比(w/w)が0.4〜0.8であることが、TiCN層の靭性および硬度が向上して、切削工具の優れた耐欠損性、耐摩耗性を発揮できる点で望ましい。
さらに、前記すくい面における前記TiCN層の層厚みtと、前記逃げ面における前記TiCN層の層厚みtとの比(t/t)が0.8〜1.2であることが、すくい面における耐欠損性と逃げ面における耐摩耗性の最適化ができる点で望ましい。
また、前記すくい面および前記逃げ面における前記TiCN層の層厚みがいずれも3μm〜20μmであることが、すくい面側では耐衝撃性を、逃げ面では、すくい面と比べてTiCN層が基体および硬質被覆層の他の被覆層との付着力が高くなり硬質被覆層の耐摩耗性が高くできる点で望ましい。
切削工具において、すくい面と逃げ面にかかる力は厳密には違いがある。すくい面は断続切削において逃げ面に比べ衝撃が強くかかる傾向にある。一方、逃げ面はすくい面に比べてかかる衝撃は弱いものの、連続切削においては被削材とのこすれが強くこのこすれ摩擦によって硬質被覆層が摩耗しやすく、また、硬質被覆層が引き剥がされやすいために、硬質被覆層の基体に対する付着力、および硬質被覆層が多層構成からなる場合には各層間の付着力が必要となる。
本発明の表面被覆切削工具によれば、超硬合金基体の表面を被覆する硬質被覆層のうちにTiCN層を含み、該TiCN層の構成を切削工具の各部分に要求される性能に応じた構成に制御することによって、切削工具として優れた性能を発揮するものである。
具体的には、TiCN層について、すくい面においてX線回折分析におけるTiCN層の(422)結晶面の配向係数を、逃げ面におけるその配向係数よりも大きくすることによって、すくい面側においては耐衝撃性を高め、また逃げ面においては基体および硬質被覆層中の他の被覆層との付着力を高めて層剥離や、それに伴う異常摩耗を防止できることから硬質被覆層の耐摩耗性を高めることができる。その結果、断続切削においても連続切削においても優れた耐欠損性および耐摩耗性を有する切削工具が得られる。
本発明の表面被覆切削工具の好適例であるスローアウェイチップについて、その一例についての模式図である図1をもとに説明する。
図1によれば、表面被覆切削工具(以下、単に工具と略す。)1は、炭化タングステン(WC)と、所望により周期律表第4、5、6族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物の群から選ばれる少なくとも1種を含有せしめた硬質相を、コバルト(Co)またはニッケル(Ni)の結合相にて結合させた超硬合金を基体2とし、基体2の表面に複数の被覆層からなる硬質被覆層3が被着形成されてなり、また、すくい面4と逃げ面5の交差稜に切刃6が形成されている。
また、本発明の工具に使用される基体の材質としては、4,5,6族元素の化合物、立方晶窒化硼素、ダイヤモンドを主成分とする硬質相と、鉄族金属を主成分とする結合相とからなる硬質合金、例えば、上述のように炭化タングステンを主成分とする硬質相と、コバルトを主成分とする結合相とからなる超硬合金を用いることで、切削加工を行うための十分な硬度、強度を得ることができる。
本発明によれば、図1に示すように、硬質被覆層3としてTiCN層7を少なくとも1層具備している。そして、工具1のTiCN層7のX線回折分析において、以下の式にて算出される値をTiCN層7の(422)面の配向係数Tとしたとき、すくい面4におけるTiCN層8の(422)面の配向係数TCRが、逃げ面5におけるTiCN層9の(422)面の配向係数TCFよりもが大きいことが大きな特徴である。
=I(422)/〔1/6{I(422)+I(111)+I(200)+I(311)+I(420)+I(220)}〕
なお、上記式において、I(hkl)とは、TiCN層7のX線回折分析において、(hkl)面(h、k、l=0、1、2...)に帰属されるピークのピーク強度を指す。
これによって、すくい面4側では硬質被覆層3の耐衝撃性が高く、また逃げ面5では、硬質被覆層3の耐摩耗性を高めることができることから、結果的に工具1の耐摩耗性および耐欠損性が向上する。
すなわち、すくい面4の配向係数TcRが、逃げ面5の配向係数TCFよりも小さいかまたは同じとき、工具1のすくい面4側でチッピングや欠損が発生するか、または逃げ面5側で、層剥離や、これに伴う異常摩耗が進行しする結果、工具1の寿命が短くなってしまう。
また、TiCN層7において、前記すくい面4の配向係数TCRと、逃げ面の配向係数TCFとの比(TCR/TCF)は1.1〜2.5の範囲内にあることが、耐衝撃性と耐摩耗性を最適化の点で望ましい。
さらに、本発明の工具1の性能を達成するために、逃げ面5の基体2の表面14における結合相量Bが、すくい面4の基体2の表面13における結合相量Bよりも少ない(B<B)ことが望ましい。これによって、すくい面4と逃げ面5におけるTiCN層7を成膜する際の膜成長状態に違いが出て、すくい面4のTiCN層8は(422)面に配向しやすくなり、逃げ面5のTiCN層9は(422)面に配向しにくくなる。ちなみに、B/Bの望ましい範囲は1.2〜3.5である。
また、前記結合相量Bと基体2の内部における結合相量Bとの比(B/B)が0.6〜0.9であり、かつ前記結合相量Bと前記結合相量Bとの比(B/B)が1.1〜1.6であることが、すくい面4のTiCN層8および逃げ面5のTiCN層9中のTiCN粒子の成長状態を所定の範囲に制御できる点で望ましい。
なお、すくい面4および逃げ面5における基体2の表面部での結合相量B、B、および基体2の内部における結合相量Bを測定する際には、X線マイクロアナライザー(Electron Probe Micro−Anarysis:EPMA)、オージェ電子分光分析(Auger Electron Spectroscopy:AES)等の表面分析法にて測定することができる。また、詳しくは、測定する基体2の表面および内部を露出させて測定すればよく、例えば硬質被覆層を研磨、エッチング等をして、基体2の表面を露出させた面や、ダイヤモンド砥石等で試料を切断して得られる断面にて測定することができる。すくい面4および逃げ面5における基体2の表面部の結合相量B、Bは、すくい面4および逃げ面5における基体2と硬質被覆層との界面から、基体2の内部に向かって1.5μm以下の領域で、基体2の内部の結合相量Bは、基体2の表面から基体2の内部に向かって500μm以上の深さ領域で測定することができる。
さらに、TiCN層7が基体2の表面に対して垂直に伸びる筋状形状のTiCN粒子からなり、すくい面4における前記筋状形状のTiCN粒子の層厚み方向に対して垂直な方向についての平均結晶幅をw、逃げ面における筋状形状のTiCN粒子の平均結晶幅をwとするとき、これらの比(w/w)が0.4〜0.8であることが、すくい面4および逃げ面5における耐摩耗性および耐欠損性を最適化できる点で望ましい。
また、その筋状形状のTiCNTiCN粒子の平均結晶幅(w、w)が0.1〜1.0μmであることが、TiCN層7および硬質被覆層3の耐衝撃性を高める点で望ましい。
なお、平均結晶幅(w、w)は、インターセプト法を用いて、図2に示すように、硬質被覆層3のTiCN層7を含む任意の破断面5箇所における線分A上を横切る粒界数を測定し、該粒界数と線分Aの長さをもとに、筋状形状のTiCN粒子の結晶幅7cに換算した値の5箇所の平均値として算出することができる。
さらに、すくい面4におけるTiCN層8の層厚みtと逃げ面5におけるTiCN層9の層厚みtとの比(t/t)が0.8〜1.2であることが望ましい。この範囲内であれば、TiCN層8およびTiCN層9がそれぞれの優れた特性をバランスよく発揮できる。
なお、工具1のTiCN層7の層厚みが3μm〜20μmである場合には、切削工具としての耐欠損性および耐摩耗性が両立できる。しかも、TiCN層8およびTiCN層9の膜厚みが上記範囲内であれば、確実にTiCN層8とTiCN層9の配向係数比(TCR/TCF)を上記範囲内に制御できる。
なお、すくい面4および逃げ面5における層厚み(t、t)の測定は、TiCN層8およびTiCN層9を含む任意の破断面を顕微鏡等で観察することによって行うことができる。また各層厚みは、各任意の5箇所における層厚みの平均値とする。
また、図1によれば、TiCN層7の上面にAl層15を形成している。このAl層15は、α型結晶構造からなることが、構造的に安定で高温になっても優れた耐摩耗性を維持できる点で望ましい。なお、Al結晶の一部をα型結晶構造以外のκ型結晶構造として、すなわちAl層5の結晶構造をα型結晶構造とκ型結晶構造との混晶としてAl層5の付着力を調整することも可能である。
さらに、Al層15をα型結晶構造とする場合には、少なくともチタンと酸素を含む層、例えば、TiCO層、TiNO層、TiCNO層、TiO層、Ti層等の硬質層を、少なくとも1層、中間層16としてTiCN層7とAl層15との間に形成することが安定してα型結晶構造を成長させることができる点で望ましい。
また、図1によれば、基体2表面の直上に第1層として最下層TiN層17を形成している。これによって、基体2の成分が硬質被覆層3内に拡散するのを抑制する効果、およびTiCN層7の粒子形状を容易に制御できる効果がある。さらに、図1によれば、Al層15の上に硬質被覆層3の最上層として最上層TiN層18を形成している。これによって、工具が金色を呈するため、工具1を使用したときに最上層TiN層18が摩耗して使用済みかどうかの判別がつきやすく、また、摩耗の進行を容易に確認できるため望ましい。さらには、最上層は最上層TiN層18に限定されるものではなく、摺動性を高めるためにDLC(ダイヤモンドライクカーボン)層やCrN層を形成する場合もある。
(製造方法)
また、上述した表面被覆切削工具を製造するには、まず、上述した超硬合金を焼成によって形成しうる金属炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物等の無機物粉末に、金属粉末、カーボン粉末等を適宜添加、混合し、プレス成形、鋳込成形、押出成形、冷間静水圧プレス成形等の公知の成形方法によって所定の工具形状に成形した後、真空中または非酸化性雰囲気中にて1500℃〜1550℃にて1〜1.5時間保持して焼成する。そして、本発明においては、前記焼成温度で焼成した後、さらに焼成温度よりも30℃〜50℃高い温度で5分〜10分間保持するか、または上記焼成温度で焼成し冷却して焼成を一旦終了した後再度上記焼成温度よりも30℃〜50℃高い温度で5分〜10分間保持する熱処理をする。これにより、基体の表面に結合相が蒸発した結合相貧化層、そしてその直下(内部)に結合相の含有量が基体2の内部よりも多い結合相富化層を具備する基体2が得られる。
次に、本発明によれば、上記基体2のすくい面4の表面に存在する結合相貧化層を除去し、望ましくは結合相富化層を残存させてこれがすくい面4の基体2表面に露出するように研摩加工を施す。これによって、基体2のすくい面4の表面と逃げ面5の表面に存在する結合相含有量が所定の範囲(B>B)となるように制御することができ、後述するTiCN層7を成膜する際に、すくい面4側および逃げ面5側のTiCN層7の結晶成長状態を制御することができる。また、上記結合相貧化層の研摩除去処理によって、すくい面4の平滑性も高められるという作用もある。
その後、上記基体2の表面に化学気相蒸着法によって硬質被覆層3を成膜する。
まず、所望により、最下層TiN層17を成膜する。具体的な成膜条件としては、反応ガス組成としてTiClガスを0.1〜10体積%、Nガスを30〜60体積%、残りがHガスからなる混合ガスを順次調整して反応チャンバ内に導入し、チャンバ内を800〜1100℃、5〜85kPaとする。
次に、TiCN層7を成膜する。
TiCN層の具体的な成膜条件は、例えば、反応ガス組成として、TiClガスを1.5〜10体積%、Nガスを30〜80体積%、CHCNガスを0.1〜1体積%、残りがHガスからなる混合ガスを調整して反応チャンバ内に導入し、チャンバ内を780〜1000℃、5〜85kPaにて成膜する。
ここで、上記成膜条件のうち、TiCN層7の成膜前期における反応ガス中の塩化チタン(TiCl)ガスの導入流量とアセトニトリル(CHCN)ガスの導入流量との比率(塩化チタン(TiCl)/アセトニトリル(CHCN)ガス)よりもTiCN層7の成膜後期における反応ガス中の上記比率(塩化チタン(TiCl)/アセトニトリル(CHCN)ガス)を大きくすることによって、上述したTiCN層7(TiCN層8およびTiCN層9)の組織構成とすることができる。より望ましくは、TiCN層の成膜前期における上記比率(塩化チタン(TiCl)/アセトニトリル(CHCN)ガス)に対してTiCN層の成膜後期時における上記比率(塩化チタン(TiCl)/アセトニトリル(CHCN)ガス)を1.5倍以上とすることにより確実な制御が可能である。
また、窒素ガスの流量の望ましい範囲は、成膜初期において5〜45体積%であり、成膜後期においては成膜初期における流量の2倍とすることである。
なお、成膜温度の望ましい範囲は、成膜初期において830〜1000℃であり、成膜後期においては780〜900℃であり、かつ成膜初期よりも50℃以上低くすることが望ましい。特に、上記成膜条件は徐々に変化させることが望ましい。
また、本発明によれば、引き続き、AlClガスを3〜20体積%、HClガスを0.5〜3.5体積%、COガスを0.01〜5.0体積%、HSガスを0〜0.5体積%、残りがHガスからなる混合ガスを用い、900〜1100℃、5〜10kPaの条件でAl層15を成膜することが望ましい。
続いて、所望により、最上層TiN層18を成膜する。具体的な成膜条件は、反応ガス組成としてTiClガスを0.1〜10体積%、Nガスを40〜60体積%、残りがHガスからなる混合ガスを順次調整して反応チャンバ内に導入し、チャンバ内を800〜1100℃、5〜85kPaとすればよい。
平均粒径1.5μmの炭化タングステン(WC)粉末、平均粒径1.2μmの金属コバルト(Co)粉末および平均粒径2.0μmの表1に示す原料粉末を表1に示す比率で添加、混合して、プレス成形により切削工具形状(CNMG120408)に成形した。そして、脱バインダ処理を施し、さらに、1000℃以上を3℃/分の速度で昇温して、0.01Paの真空中、表1の条件で焼成した後、さらに表1の条件で熱処理してから冷却することにより、表面に結合相貧化層と結合相富化層とを有する超硬合金を作製した。
そして、上記超硬合金に対して、すくい面表面が表1に示す状態となるように研摩加工を施した後、CVD法により表2に示す成膜条件で表3の層構成からなる硬質被覆層を形成した切削工具を作製した。
得られた切削工具に対して、すくい面および逃げ面において硬質被覆層の表面からそれぞれX線回折測定を行ない、配向係数TCR、TCFを測定し、その比(TCR/TCF)を表3に表記した。なお、X線回折測定においては、Cu−Kα線を用いて電圧40Kv、電流40mAの条件で測定し、回折チャートにおいてはKα線除去処理を行ったデータを用いた。
また、硬質被覆層を含む断面の走査型顕微鏡観察よりすくい面の層厚を測定した。また、TiCN層については逃げ面の層厚も測定して、表3中にすくい面の層厚tと逃げ面の層厚tとの比(t/t)を表記した。さらに、すくい面および逃げ面における筋状形状のTiCN粒子の層厚み方向に対して垂直な方向についての平均結晶幅w、wをインターセプト法に基づいて算出し、これらの比(w/w)を表3に表記した。
またさらに、得られた切削工具について、すくい面および逃げ面における基体の表面部での結合相量B、B、および基体の内部における結合相量Bを、X線マイクロアナライザー(Electron Probe Micro−Anarysis:EPMA)、の表面分析法にて測定し、表1に表記した。なお、ダイヤモンド砥石等で試料を切断して得られた断面において、露出した基体の表面および内部を前述のとおり測定した。
そして、この切削工具を用いて下記の条件により切削試験を行い、切削性能を評価した。結果は表3に示した。
(摩耗試験)
被削材 :クロムモリブデン鋼(SCM435)
工具形状:CNMG120408
切削速度:300m/分
送り速度:0.3mm/rev
切り込み:2mm
その他 :水溶性切削液使用
切削時間:12.5分間
評価項目:切削終了後、切刃の状態を顕微鏡にて観察。また、逃げ面のフランク摩耗量および先端摩耗量を測定(なお、摩耗が急激に進行した試料No.4のみは、9.5分で切削を終了。)
(耐欠損試験)
被削材 :クロムモリブデン鋼(SCM440)4本溝入り
工具形状 :CNMG120408
切削速度 :300m/分
送り速度 :0.3mm/rev
切り込み :1.5mm
その他 :水溶性切削液使用
評価項目:欠損に至るまでの衝撃回数を測定。
(ただし、最長衝撃回数は3000回までとした。)
Figure 2006305714
Figure 2006305714
Figure 2006305714
表1〜3の結果より、すくい面におけるTiCN層の(422)面の配向係数TCRが、逃げ面におけるTiCN層の(422)面の配向係数TCFよりも小さいか、または同じである試料No.3〜6では、すくい面側に溶着が発生して層剥離するか、または逃げ面でチッピング等から生じる欠損が発生しやすいものであった。
これに対して、本発明に従い、すくい面での配向係数TCRが逃げ面での配向係数TCFよりも大きい試料No.1、2では、いずれも硬質被覆層の剥離、欠損が発生しにくい優れた切削性能を有するものであった。
本発明の表面被覆切削工具の概略断面図である。 平均結晶幅の測定方法を説明する概略図である。
符号の説明
1 表面被覆切削工具
2 基体
3 硬質被覆層
4 すくい面
5 逃げ面
6 切刃
7 TiCN層(すくい面側と逃げ面側の両面を指す)
8 TiCN層(すくい面側)
9 TiCN層(逃げ面側)
13 最表層(すくい面側)
14 最表層(逃げ面側)
15 Al
16 中間層
17 最下層TiN層
18 最上層TiN層

Claims (7)

  1. 超硬合金を基体とし、該基体の表面に、TiCN層を少なくとも1層被覆してなり、すくい面と逃げ面との交差稜を切刃とする表面被覆切削工具であって、前記TiCN層のX線回折分析において、以下の式にて算出される値を前記TiCN層の(422)面の配向係数Tとしたとき、前記すくい面における配向係数TCRが、前記逃げ面における配向係数TCFよりも大きいことを特徴とする表面被覆切削工具。
    =I(422)/〔(1/6)×{I(422)+I(111)+I(200)+I(311)+I(420)+I(220)}〕
  2. 前記TiCN層において、前記配向係数TCRと前記配向係数TCFとの比(TCR/TCF)が1.1〜2.5の範囲内にあることを特徴とする請求項1記載の表面被覆切削工具。
  3. 前記基体が4,5,6族元素から選ばれる1種以上の化合物、立方晶窒化硼素、ダイヤモンドを主成分とする硬質相と鉄族金属を主成分とする結合相とからなり、前記逃げ面における前記基体の表面部での結合相量Bが、前記すくい面における前記基体の表面部での結合相量Bよりも少ないことを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
  4. 前記逃げ面における前記基体の表面部での結合相量Bと、前記基体内部での結合相量Bとの比(B/B)が0.6〜0.9であり、かつ前記すくい面における前記基体の表面部面での結合相量Bと前記基体内部での結合相量Bとの比(B/B)が1.1〜1.6であることを特徴とする請求項3に記載の表面被覆切削工具。
  5. 前記TiCN層が前記基体表面に対して垂直に伸びる筋状形状のTiCN粒子の集合体からなり、前記すくい面における前記筋状形状のTiCN粒子の層厚み方向に対して垂直な方向についての平均結晶幅をw、前記逃げ面における前記筋状形状のTiCN粒子の平均結晶幅をwとするとき、これらの比(w/w)が0.4〜0.8であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の表面被覆切削工具。
  6. 前記すくい面における前記TiCN層の層厚みtと前記逃げ面における前記TiCN層の層厚みtとの比(t/t)が0.8〜1.2であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の表面被覆切削工具。
  7. 前記すくい面および前記逃げ面における前記TiCN層の層厚みがいずれも3μm〜20μmであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか記載の表面被覆切削工具。

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