JP2006300167A - 一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置 - Google Patents

一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置に内蔵されるローラクラッチがロック状態からオーバーラン状態に切り替わる際に生じる摩耗を防止し、耐久性に優れた一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置を提供する。
【解決手段】 スリーブ11と、スリーブ11の外周にスリーブ11と同心に配置されたプーリ12と、スリーブ11の外周面とプーリ12の内周面との間に設けられる転がり軸受2,2と、一方向クラッチ34と、を備えた一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置において、カム面を形成するクラッチ用内輪31は、所定濃度のC、Si、Mn、Cr、V、Mo、Niを含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる合金材料を、920度以上の温度で浸炭窒化し、その表面を、C濃度:0.7質量%以上1.3質量%以下、N濃度:0.15質量%以上0.3質量%以下とし、少なくとも1回の焼戻し処理を行うことで形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置に関し、特に構成部品が耐摩耗性を有し、長寿命な一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置に関する。
オルタネータ等の自動車用補機、補機駆動装置やエンジンのクランクシャフト等には、所定方向の駆動力のみを取り出すために、一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置を用いることが知られている(特許文献1参照)。
特開2002−206572号公報
上記一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置に組み込む一般的な一方向クラッチとして、ローラクラッチが知られている。このローラクラッチは、内側部材と、外側部材とがわずかに相対回転した場合にもその回転力を断接するので、一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置に組み込む一方向クラッチとして適当である。
しかしながら、オルタネータに組み込む一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置に内蔵されるローラクラッチは使用状態が一般的なローラクラッチに比べて相当に厳しい。ローラクラッチがロック状態からオーバーラン状態に切り替わる瞬間、すなわちローラの回転方向が逆転する瞬間はローラと内側部材及び外側部材との間に潤滑剤が拡散しにくくなり、油膜の形成が困難になるために金属接触が生じやすく、その結果摩耗が発生しやすいという問題がある。
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、耐摩耗性に優れた粒子を分散させた鋼を一方向クラッチを構成する部材に用いることにより、長寿命な一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の請求項1による一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置は、内側部材と、前記内側部材の外周に前記内側部材と同心に配置された外側部材と、前記内側部材の外周面と前記外側部材の内周面との間に設けられ、前記内側部材と前記外側部材とを相対回転自在に支持する転がり軸受と、前記両周面の間に設けられ、前記外側部材及び前記内側部材の一方が他方に対して所定方向に相対回転する場合にのみ、前記両周面の間に配される複数の係合子と前記両周面とがカム面を通じて回転力を伝達する一方向クラッチと、を備えた一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置において、前記内側部材、前記外側部材及び前記係合子のうちの少なくともいずれかの部材は、C濃度:0.1質量%以上0.7質量%以下、Si濃度:0.1質量%以上1.5質量%以下、Mn濃度:0.1質量%以上1.5質量%以下、Cr濃度:0.5質量%以上3.0質量%以下、V濃度:0.6質量%以上2.0質量%以下、Mo濃度:3.0質量%以下、Ni濃度:2.0質量%以下を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる合金鋼で構成され、かつ、その表面において、C濃度:0.7質量%以上1.3質量%以下、N濃度:0.15質量%以上0.3質量%以下であることを特徴とする。
また、本発明の請求項2による一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置は、前記内側部材、前記外側部材及び前記係合子のうちの少なくともいずれかの部材は、C濃度:0.1質量%以上0.7質量%以下、Si濃度:0.1質量%以上1.5質量%以下、Mn濃度:0.1質量%以上1.5質量%以下、Cr濃度:0.5質量%以上3.0質量%以下、V濃度:0.6質量%以上2.0質量%以下、Mo濃度:3.0質量%以下、Ni濃度:2.0質量%以下を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる合金材料を、920度以上の温度で浸炭窒化して、その表面を、C濃度:0.7質量%以上1.3質量%以下、N濃度:0.15質量%以上0.3質量%以下とし、少なくとも1回の焼戻し処理を行うことで形成したものであることを特徴とする。
このようにすれば、浸炭窒化処理により部材の表面には炭化物、窒化物及び炭窒化物が分散形成されるため通常のJIS鋼種とした場合よりも優れた耐摩耗性を有するとともに、当該部材の中心部は軟らかく粘いので全体としての強度にも優れる。従って、一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置は耐久性に優れる。
なお、請求項1に記載の前記内側部材、前記外側部材及び前記係合子のうちの少なくともいずれかの部材と、請求項2に記載の前記内側部材、前記外側部材及び前記係合子のうちの少なくともいずれかの部材とは、同一の部材である。
前記内側部材、前記外側部材及び前記係合子のうちの少なくともいずれかの部材は、特に限定されるものではないが、好ましくはカム面を形成する部材である。
ここで、カム面としては、例えば、内側部材の内周面や外側部材の外周面の一部に設けられた一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置の軸からの距離が一定でない部分であり、ここに係合子が係合することで、外側部材、内側部材及び係合子とが相互に接続し回転力が伝達される。あるいは、カム面は係合子に形成することもでき、例えば係合子のうちの外周面のうち、前記両周面の間隔よりも幅広な部分をカム面として設けることで、当該部分が両周面の間に係合し、回転力の伝達が可能となる。例えば、一方向クラッチがローラクラッチであれば、カム面は内側部材及び外側部材のうちの少なくともいずれか一方に設けられる。また、スプラグクラッチやカムクラッチであれば、カム面は係合子に形成される。このように、カム面は、回転力伝達時には常に他の部材と接続する部位であることから摩耗も激しい。従って、このカム面に浸炭窒化処理を施すことで、耐摩耗性を付与し、一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置を長寿命なものとすることができる。
なお、一方向クラッチは、前記内側部材の外周面及び前記外側部材の内周面に、直接係合子が配される構成に限られず、例えば、内側部材に外嵌した部材の外周面や外側部材に内嵌した部材の内周面に配される構成のものであってもよい。
また、少なくとも前記内側部材、前記外側部材及び前記係合子のうちのいずれかの部材を上記組成の合金鋼で構成したものであれば、さらにそれ以外の部材のいずれか又は全てを同様の合金鋼で構成しても、あるいは、カム面を形成した部材のみを上記組成の合金鋼で構成したものであってもよい。なお、以下この明細書において、係合子、これとカム面を通じて接続する前記内側部材及び外側部材をまとめて、クラッチ部材と記すこともある。
以下に、本発明に用いる鋼の合金元素の作用及びその臨界的意義について説明する。
[C濃度:0.1質量%以上0.7質量%以下について]
Cは、基地をマルテンサイト化することにより焼入れ・焼戻し後の硬さを向上させるために、必要な元素である。その濃度を0.1質量%以上としたのは、必要な強度を確保するためである。また、上限を0.7質量%としたのは、この範囲を超えると素材の段階で既に炭化物が析出し、熱処理以前の製品形成のための塑性加工、旋削加工等における加工性が悪くなるためである。
[Si濃度:0.1質量%以上1.5質量%以下について]
Siは、製鋼時の脱酸剤として必要な元素であり、また、焼戻し軟化抵抗を高め、疲労寿命を向上させるのに有効な元素であるため0.1質量%以上含有させるが、浸炭窒化時に炭素や窒素が表面から侵入するのを阻害し、熱処理生産性を低下させるため上限を1.5質量%とした。
[Mn濃度:0.1質量%以上1.5質量%以下について]
Mnは、製鋼時の脱酸剤及び脱硫剤として必要な元素であり、また、焼入性を向上させるのに有効な元素であるため0.1質量%以上含有させるが、多量に添加すると被削性を低下させるため上限を1.5質量%とした。
[Cr濃度:0.5質量%以上3.0質量%以下について]
Crは、焼入性を向上させ、基地を固溶強化する他、浸炭窒化によりクラッチ部材表面層に炭化物、窒化物及び炭窒化物を析出させ、疲労寿命及び耐摩耗性を向上させるのに役立つ。Crの濃度の好ましい下限値として0.5質量%としたのは、これ以下ではその添加効果が少ないためである。一方、多量に添加すると表面にCr酸化物が形成され、浸炭窒化時に炭素や窒素が表面から侵入するのを阻害し、熱処理生産性を低下させるため上限を3.0質量%とした。
[V濃度:0.6質量%以上2.0質量%以下について]
Vは、焼戻し軟化抵抗を増大し、耐摩耗性の向上に有効な非常に微細で高硬度な炭化物、窒化物及び炭窒化物を形成する。高温で浸炭窒化する場合に、深い部分まで窒素濃度を高くするためには、0.6質量%以上添加することが好ましいため、下限値を0.6質量%とした。一方、多量に添加してもその添加効果は飽和すること、また、加工性が低下すること及び高価であるためコスト的にも不利になることから、上限を2.0質量%とした。
[Mo濃度:3.0質量%以下について]
Moは、焼戻し軟化抵抗を増大し、また、Crと同様に浸炭窒化によりクラッチ部材表面層に炭化物、窒化物及び炭窒化物を析出させることから、疲労寿命及び耐摩耗性を向上させるのに有効な元素である。上限を3.0質量%としたのは、あまり多量に添加すると塑性加工性が悪くなること及び高価になるためである。
[Ni濃度:2.0質量%以下について]
Niは、マトリクスに固溶して靭性を向上させるのに有効な元素である。しかしながら、あまり多量に添加すると表面層の残留オーステナイト量が増加しすぎて硬さが低下するため上限を2.0質量%とした。
なお、これら合金元素の他に、不可避の不純物として、P≦0.02質量%、S≦0.05質量%、Cu≦0.10質量%等を含むことができる。
続いて、本発明の耐摩耗性に優れたクラッチ部材における完成品表面の炭素濃度、窒素濃度、並びに微細炭化物、窒化物、炭窒化物の臨界的意義について説明する。
[表面C濃度:0.7質量%以上1.3質量%以下について]
クラッチ部材として必要な表面硬さを得るためには、通常0.8質量%以上必要とされているが、本発明においては、浸炭窒化により窒素を含有させるため、下限を0.7質量%とした。しかしながら、窒素と合わせてその濃度が過剰になると、表面の残留オーステナイト量が過剰に生成して硬さが低下したり、初析セメンタイトが析出したりして疲労寿命を低下させる恐れがあるため、上限を1.3質量%とした。
[表面N濃度:0.15質量%以上0.3質量%以下について]
窒素は、耐摩耗性を向上させるのに非常に有効な元素であり、浸炭窒化処理により表面層に添加されるが、濃度が0.15質量%未満では十分な効果が得られない。しかしながら、高くしすぎると研削性が悪くなり、また、大型製品の製造においては深くまで高い窒素濃度を得る必要があり、その場合熱処理に非常に長時間を要するためコストが高くなることから、上限を0.3質量%とした。
本発明の請求項3による一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置は、請求項1又は2において、前記係合子をローラとし、前記カム面を前記内側部材及び外側部材のうちのいずれか一方に形成したことを特徴とする。
特に一方向クラッチとしてローラクラッチを用いた一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置は、ローラの回転方向が逆転する瞬間の面圧が大きくなる傾向にあるため、特にカム面の摩耗が進行しやすい。従って、本発明のようにすることで、一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置は耐久性に優れたものとなる。
本発明によれば、一方向クラッチが耐摩耗性に優れているので、長寿命である。
次に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1に、本実施形態に係る自動車用オルタネータに用いられる一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置を示す。
一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置は、スリーブ(内側部材)11と、このスリーブ11の外周にスリーブ11と同心に配置されたプーリ(外側部材)12と、このスリーブ11とプーリ12との間に設けられる転がり軸受2,2及び一方向クラッチ3と、を備える。
プーリ12は、略円筒状の回転部材であり、外周には軸方向に沿う断面が波形となるように凹凸が形成され、不図示の無端ベルト(ポリVベルト)が掛け渡される。無端ベルトは、図示しないが、エンジンのクランクシャフトに取り付けられた駆動プーリにも掛け渡されており、この無端ベルトを介してエンジンのクランクシャフトの駆動力がプーリ12に伝達されるようになっている。
スリーブ11は、図1ではオルタネータ軸Sに外嵌固定された筒状部材であり、このオルタネータ軸Sに回転力を伝達する。スリーブ11の軸方向中間部には、外径寸法の大きな大径部11Aが形成されている。なお、オルタネータ軸Sには発電用ローターが固定されており、オルタネータ軸Sの回転によって発電する。
一対の転がり軸受2,2は、外輪22と、内輪21と、転動体23と、転動体23を保持する保持器24と、を備え、一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置に生じるラジアル荷重を支持しつつ、スリーブ11とプーリ12との相対回転を自在としている。
一方向クラッチ3の詳細な構成を図2に示す。図2に示すように、一方向クラッチ3は、クラッチ用内輪31と、クラッチ用外輪32と、クラッチ用内輪31及びクラッチ用外輪32の間に配された複数のローラ33と、ローラ33を保持するクラッチ用保持器34と、を備える。
クラッチ用内輪31は、スリーブ11に締まり嵌めで外嵌固定された略円筒状部材であり、その外周には円周方向に向かうにつれて徐々に窪みの深くなる凹状のカム面31aが円周方向に複数等間隔に形成されている。
また、クラッチ用外輪32は、プーリ12に締まり嵌めで内嵌固定された略円筒状部材であり、クラッチ用内輪31に対向する内周面は通常の円筒面32bとされている。この結果、クラッチ用内輪31とクラッチ用外輪32との間隔は、カム面31aでは円周方向に向かうにつれて徐々に広くあるいは狭くなっている。
これらクラッチ用内輪31とクラッチ用外輪32との間には、クラッチ用保持器34に保持された複数のローラ33がそれぞれ転動及び円周方向に若干移動可能に配されている。
クラッチ用保持器34は、詳細な構成を図3に示すように、ローラ33,33間に配される柱部34aと、この柱部に固定された板状部材よりなるばね34bと、を備え合成樹脂で形成されており、ローラ33は、このばね34bによってクラッチ用内輪31とクラッチ用外輪32との間隔が狭くなる方向に弾性的に押圧される。
前記のような構成の一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置はオルタネータ軸Sに取り付けられた状態で、次のように動作する。
無端ベルトの走行により回転するプーリ12の回転速度がオルタネータ軸Sの回転速度と同等以上であるときは、ローラ33がカム面31aの窪みの浅くなる方へ移動する傾向となる。この際、クラッチ用保持器34のばねにも押圧されることで、ローラ33がクラッチ用内輪31とクラッチ用外輪32の間に楔状に食い込む(クラッチロック状態)。これにより、プーリ12からスリーブ11へ回転力が伝達されるようになり、無端ベルトの駆動力がオルタネータ軸Sに伝達される。
一方、無端ベルトの走行が減速し、慣性で回転するオルタネータ軸Sの回転速度よりも小さくなったときは、スリーブ11とプーリ12の相対回転の方向が反転し、ローラ33がカム面31aの窪みが深くなる方へ移動する傾向となる。このため、ロック状態が解除され、クラッチ用内輪31とクラッチ用外輪32との接続が切断される。この状態では、転がり軸受2,2によって支持されて、プーリ12がスリーブ11に対して相対回転するため(オーバラン状態)、無端ベルトの減速に従ってオルタネータ軸Sも減速することなく、そのままの速度で回転を継続する。この結果、エンジンのクランクシャフトの回転角速度が変動した場合でも、無端ベルトとプーリ12が擦れ合うことを防止できるので、鳴きと呼ばれる異音の発生や、摩耗による無端ベルトの寿命低下を防止できる。これとともに、オルタネータの発電効率の低下を防止できる。
このような一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置において、本発明では、この一方向クラッチ3を構成するクラッチ用内輪31を、C濃度:0.1質量%以上0.7質量%以下、Si濃度:0.1質量%以上1.5質量%以下、Mn濃度:0.1質量%以上1.5質量%以下、Cr濃度:0.5質量%以上3.0質量%以下、V濃度:0.6質量%以上2.0質量%以下、Mo濃度:3.0質量%以下、Ni濃度:2.0質量%以下を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる合金鋼で構成している。そして、この合金鋼に、920℃以上の温度で浸炭窒化を施して、その完成品の表面を、C濃度:0.7質量%以上1.3質量%以下、N濃度:0.15質量%以上0.3質量%以下とし、さらに、少なくとも1回の焼き戻し処理を行っている。この焼き戻し処理によって部材の靭性が向上し、一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置がより長寿命となる。
上記クラッチ用内輪31は、浸炭窒化処理により表面に炭化物、窒化物及び炭窒化物が分散形成されるため通常のJIS鋼種とした場合よりも優れた耐摩耗性を有するとともに、部材の中心部は軟らかく粘いので全体としての強度にも優れる。上述したオルタネータ等エンジン補機に用いられる一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置は、伝達するトルクが大きく、ローラの回転方向が逆転する瞬間の面圧が大きくなる傾向にあるため、特にカム面の摩耗が進行しやすい。これに対して、本実施形態ではカム面31aを形成するクラッチ用内輪31を上記のように形成しているので、一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置は耐久性に優れる。
なお、上記実施形態では、カム面31aを形成したクラッチ用内輪31にのみ浸炭窒化処理を施しているが、これに限定されず、その他のクラッチ部材であるクラッチ用外輪32やローラ33に同様の処理を施してもよい。
また、本発明を適用する一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置は、以上のような構成のものに限定されない。例えば、クラッチ用外輪32の内周面にカム面31aを設けることもできる。この場合には、少なくともクラッチ用外輪32には上記浸炭窒化処理を施す。また、クラッチ用外輪32を省略し、プーリ12の内周面を直接、一方向クラッチ3の摺動面として利用したりすることも可能である。同様に、クラッチ用内輪31を設けずに直接スリーブ11の外周面を一方向クラッチ3の摺動面としてもよい。
さらに、一対の転がり軸受2,2は玉軸受に限らず、ころ軸受を採用した場合であっても、さらにはころ軸受と玉軸受の双方を採用した場合であっても、同様の効果を得られる。
また、一方向クラッチとしてローラクラッチを使用した場合について述べたが、本発明はこの一方向クラッチとして、カムクラッチ(図4〜図7)やスプラグクラッチ(図8、図9)を使用した一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置にも適用可能である。
図4に示すカムクラッチを内蔵した一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置は、内側部材に相当するスリーブ41と、外側部材に相当するプーリ43と、これらの間に設けられるカムクラッチとしての一方向クラッチ6と、一対の転がり軸受5,5と、を備え、スリーブ41とプーリ43とが相対回転可能に構成されたものである。
一方向クラッチ6は、係合子に相当する複数のカム63と、ガータースプリング64と、保持器65と、を備え、スリーブ41の軸方向中間部の外周面41a及び対向するプーリ43の内周面43aとの間に設けられる。スリーブ41の外周面41a及びプーリ43の内周面43aは、通常の円筒面とされており、カム63はこの両円筒面の間に形成される円筒状の間隙において揺動可能に配されている。図6にカム63の形状を詳細に示す。カム63は、軸方向断面がスリーブ41とプーリ43との間隔よりも幅広な広幅部63b及び狭幅な狭幅部63cとを有する変形円筒形状であり、広幅部63bが上記円筒状の間隙に楔状に食い込むことにより、スリーブ41とプーリ43とを接続し、回転力を伝達させる。このロック状態は、プーリ43の相対回転の方向が矢印Y1から矢印Y2の方向へ逆転することで解除され、オーバーラン状態に切り替わる。また、カム63の軸方向中央付近には、ガータースプリング64用の係合溝63aが形成されており、複数のカム63を束ねるようにしてガータースプリング64が掛け渡されている。カム63の係合溝63a底面には、プーリ43に向かって突出した突出部P1がカム63の重心Gを外れた位置に設けられており、この突出部P1にガータースプリング64が当接することでカム63は広幅部63bが上記円筒状の間隙に挟み込まれるように常時弾性的に押圧される。また、図7は、カム63の保持器65の構成を示す図であり、保持器65は、カム63の両端面にぞれぞれ対向する一対のリム部65aと、一対のリム部65aのそれぞれに接続しリム部65aの周方向に等間隔に設けられた複数の柱部65bと、を備える。カム63は、これら一対のリム部65a及び隣り合う柱部65b,65bによって形成されたポケット65cに収容される。
このような構成の一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置において、スリーブ41、プーリ43、及び、カム63のクラッチ部材のうち、カム面を形成するカム63が、本発明の組成の合金鋼で形成され、かつ、浸炭窒化処理により表面に炭化物、窒化物及び炭窒化物が分散形成されている。従って、カム63がロックとオーバーランを繰り返してもカム面は耐摩耗性に優れ、本発明の一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置は耐久性を有する。
図8に示すスプラグクラッチを内蔵した一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置は、内側部材に相当するスリーブ71と、外側部材に相当するプーリ72と、これらの間に設けられるスプラグクラッチとしての一方向クラッチ9と、一対の転がり軸受8,8と、を備え、スリーブ71とプーリ72とが相対回転可能に構成されたものである。一方向クラッチ9の係合子の形状が若干異なる以外は、図4に示した一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置と略同様の構成であり、また一方向クラッチ9は公知のスプラグクラッチであるので詳細は省略する。一方向クラッチ9は、係合子に相当する複数のスプラグ93と、これらのスプラグ93に掛け渡される弾性リング94と、スプラグ93を揺動可能に保持する保持器95と、を備え、スリーブ71の軸方向中間部に外嵌したクラッチ用内輪91及びプーリ72の間に設けられる。クラッチ用内輪91の外周面及びプーリ72の内周面は、通常の円筒面とされており、スプラグ93はこの両円筒面の間に形成される円筒状の間隙において揺動可能に配されている。図9にスプラグ93の形状を詳細に示す。スプラグ93は、クラッチ用内輪91とプーリ72との間隔よりも幅広な広幅部93b及び狭幅な狭幅部93cと、弾性リング94装着用の絞り部93aと、を有する変形円筒形状であり、広幅部93bが上記円筒状の間隙に楔状に食い込むことにより、クラッチ用内輪91とプーリ72とを接続し、回転力を伝達させる。このロック状態は、プーリ72の相対回転の方向が矢印Y3から矢印Y4の方向へ逆転することで解除され、オーバーラン状態に切り替わる。なお、図9中には示さないが、スプラグ93は弾性リング94によって常時広幅部93bが上記円筒状の間隙に食い込むように弾性的に押圧されている。
このような構成の一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置において、クラッチ用内輪91、プーリ72、及び、スプラグ93のクラッチ部材のうち、カム面を形成するスプラグ93が、本発明の組成の合金鋼で形成され、かつ、浸炭窒化処理により表面に炭化物、窒化物及び炭窒化物が分散形成されている。従って、スプラグ93がロックとオーバーランを繰り返してもカム面は耐摩耗性に優れ、本発明の一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置は耐久性を有する。
なお、上記実施形態では自動車用オルタネータに用いる一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置について説明したが、本発明に係る一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置はオルタネータ用途のものに限定されない。例えば、自動車用オルタネータ以外のコンプレッサ、ウォータポンプ、冷却ファン等自動車用補機の従動軸に取り付け、補機駆動装置やエンジンからの所定方向の回転力を伝達させてもよい。あるいは、アイドリングストップ車に搭載するエンジンのクランクシャフト及び補機駆動装置の駆動軸等に装着し、エンジン又は補機駆動装置の一方が運転状態、他方が停止状態にある場合に、運転状態にある一方の回転力のみを伝達し、他方の駆動軸を回転させないようにするために、用いてもよい。また、スタータモータ等の駆動装置の回転軸に取り付けて、一方向のみの回転力を伝達するために用いるものであってもよい。
次に、本発明の効果を確認するために摩耗試験を行ったので説明する。
まず、表1に示すような種々の組成の合金材料に、下記のような種々の条件の熱処理を施して、試験片を作製した。
Figure 2006300167
(1)熱処理A
温度:920〜950℃
熱処理時間:6〜8時間
雰囲気:Rガス(吸熱形ガス)+エンリッチガス+アンモニアガス
冷却:室温まで徐冷
二次焼入れ:820〜880℃
焼き戻し:160〜180℃×2〜3時間
(2)熱処理B
温度:920〜950℃
熱処理時間:6〜8時間
雰囲気:Rガス(吸熱形ガス)+エンリッチガス
冷却:室温まで徐冷
二次焼入れ:820〜880℃
焼き戻し:160〜180℃×2〜3時間
上記のようにして作製した試験片について、図10に示すような二円筒式の試験機を用いて摩耗試験を実施した。試験では、上下に対向させた一対の回転軸に試験片を装着してなる供試体に、上から荷重を負荷しながら互いに接触状態で逆方向に回転させ、両試験片の摩耗率(μg/m)の平均値を求めた。この際、特に潤滑不良状態での摩耗特性を試験すべく、回転中は油膜が切れやすい低粘度潤滑油を注いだ。試験条件を以下に示す。
(試験条件)
荷重:2.0KN
回転数:10min-1
供試体相互のすべり率:20%
潤滑油:スピンドル油
油温:80℃
表2に、鋼種、熱処理条件の組み合わせ別の摩耗試験結果を示す。本発明の実施例である実施例1〜18は、優れた耐摩耗性を発揮することが確認された。また、比較例1及び2は、V添加量が少ない場合の比較例であり、Vの添加不足によって必要な窒素濃度が得られないために耐摩耗性に劣ることが確認された。比較例3は、浸炭処理の場合の比較例であり、窒素が無いため耐摩耗性が劣ることが確認された。比較例4は、V添加なし且つ浸炭処理の場合の比較例であり、摩耗程度がもっとも大きい。以上の実験結果より、本願発明の化学成分範囲および熱処理後の炭素、窒素濃度の範囲とすることで優れた耐摩耗性が得られることが分かった。
Figure 2006300167
本発明を適用したローラクラッチを内蔵する一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置を示す図である。 図1のA−A線断面図である。 一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置の径方向から保持器、ばね及びローラを見た図である。 本発明を適用したカムクラッチを内蔵する一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置を示す図である。 図4のB−B断面図である。 図5のC部の拡大図である。 図4の保持器を示す図である。 本発明を適用したスプラグクラッチを内蔵する一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置を示す図である。 図8のプラグクラッチを軸方向から見た図である。 実施例の摩耗試験の様子を示す図である。
符号の説明
2,5,8 転がり軸受
3,6,9 一方向クラッチ
11 スリーブ
11A 大径部
12 プーリ
21 内輪
22 外輪
23 転動体
24 保持器
31 クラッチ用内輪
31a カム面
32 クラッチ用外輪
32b 円筒面
33 ローラ
34 クラッチ用保持器
34a 柱部
41 スリーブ
41a 外周面
43 プーリ
43a 内周面
63 カム
63a 係合溝
63b 広幅部
63c 狭幅部
64 ガータースプリング
65 保持器
65a リム部
65b 柱部
65c ポケット
71 スリーブ
72 プーリ
91 クラッチ用内輪
93 スプラグ
93a 絞り部
93b 広幅部
93c 狭幅部
94 弾性リング
95 保持器
1 突出部
S オルタネータ軸

Claims (3)

  1. 内側部材と、
    前記内側部材の外周に前記内側部材と同心に配置された外側部材と、
    前記内側部材の外周面と前記外側部材の内周面との間に設けられ、前記内側部材と前記外側部材とを相対回転自在に支持する転がり軸受と、
    前記両周面の間に設けられ、前記外側部材及び前記内側部材の一方が他方に対して所定方向に相対回転する場合にのみ、前記両周面の間に配される複数の係合子と前記両周面とがカム面を通じて回転力を伝達する一方向クラッチと、
    を備えた一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置において、
    前記内側部材、前記外側部材及び前記係合子のうちの少なくともいずれかの部材は、
    C濃度:0.1質量%以上0.7質量%以下、
    Si濃度:0.1質量%以上1.5質量%以下、
    Mn濃度:0.1質量%以上1.5質量%以下、
    Cr濃度:0.5質量%以上3.0質量%以下、
    V濃度:0.6質量%以上2.0質量%以下、
    Mo濃度:3.0質量%以下、
    Ni濃度:2.0質量%以下を含有し、
    残部がFe及び不可避不純物からなる合金鋼で構成され、
    かつ、その表面において、C濃度:0.7質量%以上1.3質量%以下、N濃度:0.15質量%以上0.3質量%以下であることを特徴とする一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置。
  2. 前記内側部材、前記外側部材及び前記係合子のうちの少なくともいずれかの部材は、
    C濃度:0.1質量%以上0.7質量%以下、
    Si濃度:0.1質量%以上1.5質量%以下、
    Mn濃度:0.1質量%以上1.5質量%以下、
    Cr濃度:0.5質量%以上3.0質量%以下、
    V濃度:0.6質量%以上2.0質量%以下、
    Mo濃度:3.0質量%以下、
    Ni濃度:2.0質量%以下を含有し、
    残部がFe及び不可避不純物からなる合金材料を、
    920度以上の温度で浸炭窒化して、その表面を、C濃度:0.7質量%以上1.3質量%以下、N濃度:0.15質量%以上0.3質量%以下とし、
    少なくとも1回の焼戻し処理を行うことで形成したものであることを特徴とする請求項1に記載の一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置。
  3. 前記係合子をローラとし、前記カム面を前記内側部材及び外側部材のうちのいずれか一方に形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置。
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