JP2004176156A - 転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】転がり軸受1の内外輪2,3を、炭素を0.65〜1.25質量%、ケイ素を0.7〜2.5質量%、マンガンを0.1〜1.5質量%、クロムを0.5〜3.0質量%、モリブデンを1.5質量%以下、酸素を9ppm以下、チタンを30ppm以下、イオウを80ppm以下含有するとともに、ASTM E45に規定された方法によるThinタイプのA系介在物のレーティングナンバーが1.5以下で且つHeavyタイプのA系介在物のレーティングナンバーが1.0以下である鋼で構成した。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高荷重,高振動,高温が作用するような環境下において使用されても長寿命な転がり軸受に係り、特に、エンジン補機類(例えば、オルタネータ,電磁クラッチ,中間プーリ,カーエアコンディショナ用コンプレッサ,水ポンプ等)やガスヒートポンプ等に好適に使用される転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、転がり軸受においては、その構成部材である軌道輪と転動体との間で転がり運動が行われ、軌道輪及び転動体は繰り返し応力を受ける。そのため、これらの部材を構成する材料には、硬い、負荷に耐える、転がり疲労寿命が長い、滑りに対する耐摩耗性が良好である等の性質が要求される。
【0003】
そこで、一般的には、これらの部材を構成する材料として、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼が好適に使用されている。この軸受鋼は、必要とされる硬さ,耐摩耗性,及び転がり疲労寿命等の物性を得るために、焼入れ,焼戻しが施されて、硬さはHRC58〜64とされている。
ところが、近年の自動車の小型化,軽量化に伴い、エンジン補機類に対しても小型化,軽量化が求められており、さらに高性能化,高出力化も求められている。そのため、例えばオルタネータであれば、エンジン作動時には転がり軸受に高速回転に伴う高振動,高荷重(4〜20G程度) がベルトを介して作用するとともに、該転がり軸受は高温状態となる。そうすると、特に固定輪である外輪に早期剥離が生じて、転がり軸受が短寿命となる。また、例えば電磁クラッチ,中間プーリであれば、固定輪である内輪に早期剥離が生じて、転がり軸受が短寿命となる。
【0004】
この早期剥離現象は、以下のようなメカニズムにより生じるものと考えられている。
(1)高荷重,高振動,回転変動,高温等により油膜形成が困難となって、軌道面と転動体とが接触しやすくなる。
(2)潤滑剤又は潤滑剤中に含まれている水分が、軌道輪と転動体との接触面の活性化された新生面で触媒作用により分解して、水素イオンが発生する。
【0005】
(3)発生した水素イオンが前記新生面に吸着され、水素原子となって高ひずみ場(最大せん断応力位置近傍)へ集積されることにより、白色組織(white structure )と呼ばれる組織へ組織変化する。そして、この組織変化によって剥離が生じる。
また、内外輪間で起こる放電現象が、前述のような組織変化をともなった早期剥離を生じやすくさせているとも考えられている。つまり、例えばオルタネータにおいては、エンジンのクランクシャフトから伝達される高速回転運動により、ベルトとプーリとの間に静電気が発生する。回転中の軸受の内外輪間は、通常は潤滑剤の油膜によって絶縁状態になっているが、内外輪の電位差が大きくなると(約100〜500V)、内外輪間で放電現象が起こる。この放電により潤滑剤であるグリース又はグリースに含まれる水分が分解し、水素イオンが発生し、水素原子となって軌道面から侵入して前述のような組織変化が生じる。
【0006】
前述のような高荷重,高振動下で使用される軸受の寿命向上を図る従来技術としては、例えば、特公平7−72565号公報(以降は従来技術1と記す),特許第2724019号公報(以降は従来技術2と記す),特開昭62−218542号公報(以降は従来技術3と記す)等がある。
従来技術1には、荷重入力側、すなわちプーリ側の外輪を構成する鋼中の残留オーステナイト量を0.05〜6%とすることにより、軌道面下での残留オーステナイトの分解による塑性変形を抑制し、振動を低減できる旨が記載されている。また、従来技術2には、所定量の合金成分(C,Si,Mn,Cr,Mo)を含有する耐熱軸受鋼が開示されている。さらに、従来技術3には、軸受の軌道輪を、所定量の合金成分(C,Si,Mn,Cr)を含有し且つ残留オーステナイト量が8%以下である鋼で構成し、さらに表面硬さをHRC60以上とする旨が記載されている。
【0007】
【特許文献1】
特公平7−72565号公報
【特許文献2】
特許第2724019号公報
【特許文献3】
特開昭62−218542号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来技術1のように単に残留オーステナイト量を少量とするだけでは、高温環境下における寸法安定性の向上には効果が発揮されるものの、前述した水素侵入による早期剥離に対しては寿命延長効果は認められない。
また、前記従来技術2は、Si,Mo等のような鋼の耐焼戻し抵抗性を高める元素を添加することにより、高温使用時でも転がり疲れに耐え得る硬さを維持するというものであるが、前述した水素侵入による早期剥離については全く考慮がなされていないため、寿命延長効果は期待できない。
【0009】
さらに、前記従来技術3は、Si,Al等のような鋼の耐焼戻し抵抗性を高める元素を添加して高温焼戻しすることにより、残留オーステナイト量を8%以下としているので、高温環境下でも経年寸法変化の小さい軌道輪とすることができる。しかし、前記従来技術2と同様に、水素侵入による早期剥離については全く考慮がなされていないので、寿命延長効果は期待できない。
【0010】
このように、いずれの従来技術においても、白色組織への組織変化による早期剥離については考慮されていないので、十分な寿命延長効果は期待できない。
そこで本発明は、このような従来技術が有する問題点を解決し、高荷重,高振動,高温が作用するような環境下において使用されても長寿命な転がり軸受を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1の転がり軸受は、内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備え、前記内輪及び前記外輪のうち少なくとも一方が鋼で構成された転がり軸受において、前記鋼は、炭素を0.65〜1.25質量%、ケイ素を0.7〜2.5質量%、マンガンを0.1〜1.5質量%、クロムを0.5〜3.0質量%、モリブデンを1.5質量%以下、酸素を9ppm以下、チタンを30ppm以下、イオウを80ppm以下含有するとともに、ASTM E45に規定された方法によるThinタイプのA系介在物のレーティングナンバーが1.5以下で且つHeavyタイプのA系介在物のレーティングナンバーが1.0以下であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る請求項2の転がり軸受は、請求項1に記載の転がり軸受において、前記鋼中の残留オーステナイトが4体積%以下であることを特徴とする。
本発明の転がり軸受は、ケイ素,クロム,モリブデン等を合金化した鋼で軌道輪が構成されているので、耐熱性が優れている。また、鋼中のイオウ量及びA系介在物量が少ないので、水素侵入による白色組織への組織変化に起因する早期剥離が生じにくい。よって、本発明の転がり軸受は、高荷重,高振動,高温(例えばエンジン補機類においては180℃以上)が作用するような環境下において使用されても長寿命である。
【0013】
以下に、本発明における鋼に添加される各元素等について説明する。
〔炭素について〕
炭素(C)は、基地に固溶して焼入れ,焼戻し後の硬さを向上せしめて強度を増加させる作用を有する。
炭素の含有量が0.65質量%未満であると、基地に固溶する炭素量が不足して、焼入れ,焼戻し後に十分な硬さを確保できなくなる。一方、炭素の含有量が1.25質量%超過であると、製鋼時に粗大な共晶炭化物が生成しやすくなって疲労寿命や強度を著しく損なう場合がある。また、冷間加工性や被削性が低下して、コストの上昇を招く場合がある。
【0014】
〔ケイ素について〕
ケイ素(Si)は、製鋼時の脱酸剤として必要な元素である。また、焼入性を向上させるとともに、基地のマルテンサイトを強化し、軸受寿命を向上させることに有効な元素である。さらに、焼戻し軟化抵抗性,寸法安定性,耐熱性を高める作用も有する。このような効果を十分に発揮させるためには、ケイ素の含有量は0.7質量%以上とする必要がある。しかし、2.5質量%を超えて添加すると、被削性,鍛造性,冷間加工性を低下させる場合がある。
【0015】
〔マンガンについて〕
マンガン(Mn)は、Siと同様に製鋼時の脱酸剤として必要な元素であり、0.1質量%以上含有させる必要がある。また、基地に固溶して焼入れ性を高める作用を有する。ただし、多量に添加すると冷間加工性や被削性を低下させるだけでなく、マルテンサイト変態開始温度を低下させて(残留オースラナイト量が増加して)十分な硬さが得られなくなる場合があるので、1.5質量%以下とする必要がある。
【0016】
〔クロムについて〕
クロム(Cr)は基地に固溶して焼入れ性,焼戻し軟化抵抗性,耐食性などを高める作用を有する。また、炭化物の球状化を促進させる作用も有し、微細な炭化物を形成して熱処理時の結晶粒粗大化を防止したり、疲労寿命特性,耐摩耗性,耐熱性も高める作用を有する。
【0017】
このような効果を十分に発揮させるためには、クロムの含有量は0.5質量%以上とする必要がある。しかし、クロムの含有量が多すぎると、鋼材の製造性又は軸受製造時の冷間加工性や被削性が低下して著しいコストアップを招いたり、炭素含有量が多くなると粗大な炭化物が生成して疲労寿命や強度を著しく損なう場合があるので、3.0質量%以下とする必要がある。
【0018】
〔モリブデンについて〕
モリブデン(Mo)は、Crと同様に、基地に固溶して焼入性,焼戻し軟化抵抗性,耐食性等を高める作用を有し、さらに、微細な炭化物を形成して熱処理時の結晶粒粗大化を防止したり、疲労寿命特性や耐摩耗性も高める作用を有する。よって、軸受の使用温度や耐久寿命等を考慮して選択的に添加される。
【0019】
しかし、過剰に添加すると、鋼材の製造性又は軸受製造時の冷間加工性や被削性が低下して著しいコストアップを招く場合があるので、上限を1.5質量%とする必要がある。
〔酸素及びチタンについて〕
酸素(O)及びチタン(Ti)は鋼中不純物であり、Al2 O3 等の酸化物系介在物やTiN等の窒化物系介在物となって軸受の寿命を低下させる。そのため、両者共に含有量は低い方が好ましく、Oは9ppm以下、Tiは30ppm以下とする必要がある。
【0020】
〔イオウ及びA系介在物について〕
イオウ(S)は鋼中不純物であり、通常はMnS等のA系介在物として鋼中に存在する。また、A系介在物はチップブレーカーとして作用し、鋼の被削性を向上する作用を有するため、有効利用されることも少なくない。さらに、これまでA系介在物は、B系介在物やD系介在物のように軸受の寿命にはあまり影響しないと考えられてきた。
【0021】
しかしながら、軸受が高温,高荷重,高振動,高速等の特定の条件が整った環境下で使用される場合には、軌道輪と転動体との接触面内において潤滑剤又は潤滑剤中に含まれている水分が分解して水素が発生し、この水素が鋼中に急激に侵入して、寿命が著しく低下する場合がある。これは、先にも述べたように、侵入した水素が高ひずみ場へ集積されることによって鋼の耐力が低下し、局部的な塑性流動を伴なって白色組織と呼ばれる組織への組織変化が引き起こされることに起因している。
【0022】
本発明者らは、A系介在物のうちASTM E45に規定された方法によるHeavyタイプのA系介在物のレーティングナンバーを1.0以下とすると、上記のような特異な組織変化に起因する早期剥離に対して、軸受の寿命が改善できることを見出した。
A系介在物は水素吸蔵サイトとして作用するが、水素との結合力が弱いので、大きな剪断応力場においては水素を放出する。そのため、鋼中にA系介在物の量が多いと、白色組織が生成しやすくなって軸受の寿命が低下する。軸受を長寿命とするためには、S量を80ppm以下(好ましくは50ppm以下)とし且つA系介在物である硫化物の量を低減する必要がある。
【0023】
また、A系介在物の大きさが大きいほど、水素の吸蔵量は大きくなる。さらに、A系介在物は軟質で剪断応力に耐えるだけの強度を有しないため、A系介在物の近傍の組織に作用する単位面積当たりの剪断応力が高くなって、塑性流動しやすくなり、白色組織が生成しやすくなる。そのため、特にASTM E45に規定された方法によるThinタイプのA系介在物のレーティングナンバーを1.5以下とし且つHeavyタイプのA系介在物のレーティングナンバーを1.0以下とする必要がある。より好ましくは、ASTM E45に規定された方法によるThinタイプのA系介在物のレーティングナンバーを1.0以下とし且つHeavyタイプのA系介在物のレーティングナンバーを0.5以下とする。
【0024】
〔残留オーステナイトについて〕
通常、軸受鋼は焼入れ,焼戻し後において、8〜12体積%程度の残留オーステナイト(γR )を含有している。このγR は高温下で軸受が使用された際に分解しやすく、分解すると軸受寸法が膨張して、隙間詰まりや真円度の崩れ等が生じ回転不良や焼付きに至る場合がある。そのため、焼入れ後に、例えば260〜320℃程度の高温で焼戻しを施して、γR を4体積%以下とすることが好ましい。本発明においては、鋼がC,Si,Cr等を適量含有しているので、高温焼戻し時においても十分な硬さを確保できる。なお、転がり疲れ寿命の観点から、軌道輪の硬さはHRC59以上とすることが好ましい。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明に係る転がり軸受の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態である転がり軸受の構造を示す断面図である。
この転がり軸受1はJIS呼び番号6303の深溝玉軸受であり、外輪2がハウジング8に固定されて固定輪となり、内輪3はシャフト7に外嵌されて回転輪となっている。また、外輪2の軌道面2aと内輪3の軌道面3aとの間には、保持器5により保持された多数の転動体4が配設され、保持器5の両側位置の外輪2と内輪3との間には、シール部材6,6が装着されている。
【0026】
また、シール部材6,6によって囲まれる空間にはグリース10が封入されている。そして、この転がり軸受1は、シャフト7の回転に伴って内輪3が回転し、この回転による荷重,振動は、シャフト7から内輪3及び転動体4を介して外輪2の負荷圏に作用する。
ここで、内外輪2,3は、表1に示す組成の鋼材(A1〜A9)で構成されており、以下のようにして製造されたものである。すなわち、内外輪2,3は、所定の寸法に成形した鋼材に830〜880℃で焼入れを行い、260〜320℃で焼戻しを行った後、研削仕上げ加工を施すことにより製造されている。
【0027】
なお、軌道面2aと軌道面3aとの表面粗さは0.01〜0.03μm程度である。また、転動体4は、等級20相当のSUJ2製の鋼球である。さらに、A系介在物のレーティングナンバーは、外輪2を用いて以下のように測定した。すなわち、外輪2を転がり方向に対して垂直に破断し、その断面のうち300mm2 を観察し、1視野が0.80mm径の顕微鏡アイピースを使用して最悪視野押えで評価した。
【0028】
【表1】
【0029】
次に、上記のような構成の深溝玉軸受について、その寿命を評価した。この深溝玉軸受は、表2及び表3に示すように、内輪及び外輪が表1に示した鋼材(A1〜A9及びB1〜B5)で構成されている。そして、焼戻し温度は、実施例1〜9の軸受については260〜320℃であり、比較例1〜10の軸受については160〜180℃,220〜240℃,又は260〜320℃である。
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
寿命の評価は、エンジン補機類に軸受を使用することを想定して、図2に示すような試験機を使用したグリース潤滑寿命試験により行った。グリース潤滑寿命試験は、水素侵入による白色組織への組織変化に起因する早期剥離をシミュレートできるので好ましい。
試験条件は以下の通りである。まず、試験温度は60〜80℃とした。また、軸受の回転速度は、所定時間毎(例えば9秒毎)に9000min−1と18000min−1とを切り換えることとした(急加減速試験)。さらに、荷重条件は、P(動等価荷重)/C(基本動定格荷重)=0.1とし、潤滑剤にはウレア系グリース(基油の40℃における動粘度は47.3mm2 /s)を用いた。
【0033】
そして、1種の軸受について10個ずつ寿命試験を行い、L10寿命を求めた。L10寿命の評価結果を、表2及び表3に併せて示す。なお、試験打ち切り時間は1000時間とし、10個の試験軸受すべてが、前記試験打ち切り時間までに寿命に至らなかった場合には、L10寿命を1000時間とした。
さらに、温度180℃、回転速度3000min−1、荷重条件P/C=0.1、という条件で高温回転試験を行い、外輪の寸法変化率を測定した。この寸法変化率は、1種の軸受について3個ずつ試験して求めた。結果を表2及び表3に併せて示す。なお、表2及び表3には、外輪の軌道面の硬さHRC及び残留オーステナイト(γR )の量も記載してある。
【0034】
表2及び表3から分かるように、実施例1〜9の軸受は、いずれも、260〜320℃の高温で焼戻しを行なったにもかかわらず表面硬さHRCが59以上という高い硬さを有しており、比較例1〜10よりも長寿命であった。また、高温回転試験後の寸法変化率も非常に小さかった。特に、HeavyタイプのA系介在物のレーティングナンバーが0.0である実施例4,5,及び8は、グリース潤滑寿命試験において1000時間後も軌道輪の破損が全くなかった。
【0035】
それに対して、比較例1〜6は、従来のSUJ2を使用した場合の比較例であるが、両タイプのA系介在物のレーティングナンバーが各実施例よりも大きいので、焼戻し温度に関係なく各実施例よりも寿命が劣っていた。特に、比較例5,6は、鋼中のS量が80ppm以下であるにもかかわらず短寿命であった。このことから、硫化物の絶対量のみが軸受の寿命の要因となっているわけではなく、特に大きな硫化物の量が寿命低下の要因となっていると考えられる。
【0036】
また、比較例7〜10は、実施例7を構成する鋼種A7と類似の合金成分を有する鋼種B4及びB5で構成されているが、A系介在物のレーティングナンバーが大きいので、寿命が各実施例よりも劣っていた。
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては転がり軸受として深溝玉軸受を例示して説明したが、本発明の転がり軸受は、他の種類の様々な転がり軸受に適用可能であることは勿論である。例えば、アンギュラ玉軸受,自動調心玉軸受,円筒ころ軸受,円すいころ軸受,針状ころ軸受,自動調心ころ軸受等のラジアル形の転がり軸受や、スラスト玉軸受,スラストころ軸受等のスラスト形の転がり軸受である。
また、本実施形態の転がり軸受は、エンジン補機類のような高荷重,高振動,高温が作用するような環境下において長寿命であるが、他の環境下で使用しても優れた寿命を有することは勿論である。
【0037】
【発明の効果】
以上のように、本発明の転がり軸受は、所定の合金成分を有し且つA系介在物が少量である鋼で構成されているので、水素侵入による白色組織への組織変化に起因する早期剥離が生じにくい。よって、本発明の転がり軸受は、高荷重,高振動,高温が作用するような環境下において使用されても長寿命である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る転がり軸受の一実施形態である深溝玉軸受の構造を示す断面図である。
【図2】グリース潤滑寿命試験に用いた試験機の構造を示す概略図である。
【符号の説明】
1 転がり軸受
2 外輪
3 内輪
4 転動体
Claims (2)
- 内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備え、前記内輪及び前記外輪のうち少なくとも一方が鋼で構成された転がり軸受において、
前記鋼は、炭素を0.65〜1.25質量%、ケイ素を0.7〜2.5質量%、マンガンを0.1〜1.5質量%、クロムを0.5〜3.0質量%、モリブデンを1.5質量%以下、酸素を9ppm以下、チタンを30ppm以下、イオウを80ppm以下含有するとともに、
ASTM E45に規定された方法によるThinタイプのA系介在物のレーティングナンバーが1.5以下で且つHeavyタイプのA系介在物のレーティングナンバーが1.0以下であることを特徴とする転がり軸受。 - 前記鋼中の残留オーステナイトが4体積%以下であることを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。
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A02 | Decision of refusal |
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