JPH05255810A - 軸受用鋼 - Google Patents

軸受用鋼

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JPH05255810A
JPH05255810A JP6564591A JP6564591A JPH05255810A JP H05255810 A JPH05255810 A JP H05255810A JP 6564591 A JP6564591 A JP 6564591A JP 6564591 A JP6564591 A JP 6564591A JP H05255810 A JPH05255810 A JP H05255810A
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steel
rolling
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machinability
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JP6564591A
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English (en)
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Yatsuka Takada
八束 高田
Hiroshi Muroga
啓 室賀
Masao Goto
将夫 後藤
Toshihiro Kawaguchi
敏弘 川口
Teruo Hoshino
照男 星野
Masayuki Kitamura
昌之 北村
Yoshitaka Natsume
喜孝 夏目
Teruhiro Mizutani
彰宏 水谷
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Koyo Seiko Co Ltd
Denso Corp
Aichi Steel Corp
Original Assignee
Koyo Seiko Co Ltd
Aichi Steel Corp
NipponDenso Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 被削性を向上した高寿命の軸受用鋼。 【構成】 重量比にして、C:0.65〜0.90%、Si:0.
15〜0.50%、Mn:0.15〜1.00%、Cr:2.0〜5.0%を
含有し、さらに、S:0.020〜0.050%、希土類元素:0.
005〜0.10%、Pb:0.02〜0.30%、Ca:0.0005〜0.0
100%、Bi:0.001〜0.200%、Se:0.005〜0.20%、
Te:0.005〜0.100%のうちの1種又は2種以上を含有
して、残部Fe及び不可避的不純物から成る。必要に応
じて、Ni:0.20〜0.50%、Mo:0.10〜2.00%、V:
0.05〜1.00%のうちの1種又は2種以上を含有してもよ
い。 【効果】 C含有量を低下させ、更に、主にCr含有に
よる炭素原子の拡散抑制効果により有害な白層の生成を
防止して転動寿命を上げ、S、REM、Pb、Ca、B
i、Se、Teにより被削性を向上させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車等のエンジン及
びエンジンにより駆動されるオルタネータ等の補機類で
用いられる、特に振動、衝撃荷重下で使用され転がり軸
受、あるいは自動車等の転動、摺動部品に用いられる軸
受用鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】転がり軸受の軌道輪及び転動体の材料と
しては、高炭素クロム軸受鋼(特にJIS SUJ2)が最も多
く用いられているが、転がり軸受の使用条件の多様化に
対応してその他にも種々の材料が用いられ、例えば衝撃
荷重が作用する軸受では、靱性を高めるために肌焼鋼
(SAE 5120等)に浸炭焼入・焼戻し処理を施したものが
用いられる。
【0003】近年、自動車等のエンジン及びエンジンに
より駆動されるオルタネータ等の補機類では小型・軽量
化及び高性能化が急であるが、それに伴い、それらに用
いられる転がり軸受も小型化され、使用回転数も高速化
している。このため、転がり軸受に加わる振動、衝撃荷
重が著しく増大し、また、軸受温度が上昇するという現
象が生じ、上記従来の鋼では短時間で剥離が生じて使用
不能に至るという問題が生じている。例えば、エンジン
により駆動されて発電を行なうオルタネータでは、自動
車走行時の路面からの突き上げ等よる衝撃荷重に加え、
エンジンからの駆動ベルトによる振動が常時軸受に加わ
る。エンジンや補機類の小型・軽量化及び高性能化は、
自動車等の燃費改善に対する一層の強い要請により、今
後益々進展することは明かであり、高速回転、振動・衝
撃荷重下で長寿命を発揮する軸受用鋼の開発が強く要請
されている。本発明者らは上記課題の解決に向けた研究
を行なうにあたり、先ず、高速回転に伴う軸受の寿命低
下の原因を調査した。その結果、寿命消尽の形態は表面
的には剥離であるが、剥離の発生過程では従来解釈され
ていたものと異なる現象が生じていることを発見した。
【0004】先ず、高速回転において短時間で剥離した
軸受の転走面下の断面のミクロ組織を観察したところ、
調査したすべての軸受において、剥離と共に、転走面下
の最大剪断応力発生位置付近に、マトリクス(母相)と
異なった、腐食されにくく、白く観察される組織(以
下、白層と呼ぶ)が生じていた。図1に白層を含む断面
のミクロ組織の顕微鏡写真を示す。次に、白層部分と周
辺のマトリクスの硬さをマイクロビッカース硬さ試験機
で測定したところ、マトリクスの硬さが約HV750である
のに対して、白層の硬さはHV1100〜1300であり、白層部
分はマトリクス部分よりも非常に硬いことが判明した。
この結果より、高速回転に伴って寿命が短くなるのは、
最大剪断応力発生位置付近に白層が生じ、しかも、その
白層が硬くて脆いために剪断応力の繰り返し負荷によっ
て早期に亀裂が発生し、容易にマトリクスまで進展して
剥離に至るためであると推定された。しかし、通常の軸
受寿命試験ではこのような白層を生じて短寿命となる例
は認められず、白層発生による短寿命の要因には、振動
・衝撃荷重が大きく作用していることが考えられたの
で、それを確認するための試験を行なった。
【0005】表1に示す2種の材料により、内外輪を同
一の材料で玉軸受6303(内径17mm、外径47mm)を作
製し、右欄に示す硬さとなるように中欄の熱処理を施し
た。この試料軸受に対し、表2に示すように、負荷荷重
を静的と動的の2種類の方法で加えて回転寿命試験を行
なった。静的荷重試験は、試料軸受を寿命試験機に組み
込み、静的に負荷した状態で連続回転させるものであ
る。一方、動的荷重試験は、寿命試験機を加振台上に設
置し、試料軸受に静的荷重を加えると同時に試験機全体
を加振した状態で連続回転試験を行うものである。回転
寿命試験は各材料及び各試験条件について2個ずつ行な
ったが、その結果を表3に示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【0006】この試験の結果、静的荷重試験では回転時
間1000時間でもいずれの試料軸受についても剥離は発生
せず、寿命時間としては問題がなかった。しかし、振動
が重畳された動的荷重試験では、JIS SUJ2を材料とする
ものではわずか43及び61時間で、SAE 5120肌焼鋼を材料
とするものでも189及び202時間で剥離が発生し、寿命が
大幅に低下することが判明した。この動的荷重試験で短
寿命であった試料の転走面下のミクロ組織を観察したと
ころ、図1で示したと同様の白層が生じていることが認
められた。この白層を含む組織のC濃度分布をEPMA
(エレクトロン・プローブ・マイクロアナライザ)によ
り分析したところ、白層部分ではマトリクス部分よりも
炭素(C)濃度が高いことが判明した。図2はEPMA
により白層とその周辺の炭素濃度分布を調査した結果を
模写したものであるが、白層2はマトリクス1よりも炭
素濃度が高いことが明瞭に示されている。また、白層2
中に、白層2よりも更に炭素濃度の高い部分(高炭素部
分)3が存在することが確認された。白層部分において
炭素濃度が高いのは、そこに炭素原子が拡散、凝集する
ためであるが、炭素原子の拡散は応力により誘起され
る。振動による繰り返し応力の負荷はこの炭素原子の応
力誘起拡散を促進し、白層部分への炭素の凝集を助長し
ているものと考えられる。また、繰り返し応力の負荷に
よりミクロ的歪が転走面下に蓄積され、この歪の蓄積に
より、炭素原子がそこに固着する。すなわち、衝撃応力
の繰り返しにより転走面下の最大剪断応力位置に炭素原
子が拡散・固着し、これにより、硬さが非常に高く、腐
食され難い白層を生じたものである。そして、繰り返し
衝撃荷重の負荷により、この非常に硬く、脆い白層から
亀裂が生成し、マトリクスに伝播・進展して早期剥離に
至るものである。
【0007】本発明者らはこのような研究の結果を踏ま
え、軸受を長寿命化するためにはこの白層の生成を阻止
することが必要であるとの考えより、炭素の拡散を抑制
し、かつ、マトリクス強度を向上するために化学組成を
最適化した軸受用鋼を既に提案している(特願平2−1
33489)。その内容は次の通りである。まず、炭素
及びその他の合金元素濃度と炭素の拡散速度との関係を
調査した結果、炭素の拡散速度を遅くするためには炭素
濃度を下げること及びクロム濃度を上げることが有効な
手段であることを見いだした。また、その他の合金成分
についても、軸受として使用するに十分な機械的性質を
与え、更に、転がり軸受用鋼として有害となる炭化物や
非金属介在物を極力減少させることを考慮した成分設計
を行なった。その結果、重量比にして、C:0.65〜0.90
%、Si:0.15〜0.50%、Mn:0.15〜1.00%、Cr:
2.00〜5.00%を含有し、必要に応じてNi:0.20〜0.50
%、Mo:0.1〜2.0%、V:0.05〜1.00%のうちの1種
又は2種以上を含有して、残部Fe及び不可避的不純物
から成る転がり軸受用鋼を発明したものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】素材である軸受鋼から
転がり軸受を製造する場合には、中間形状又は最終形状
(ボール、ローラ又はレース)に整形する段階で必ず鋼
素材を切削する必要がある。また、軸受用鋼は従来、多
くが転がり軸受ユニット用の材料として用いられてきた
が、近年の自動車部品技術の向上に伴い、CVJ(等速
ジョイント)、フェースカム等の転動、摺動自動車部品
にも使用されるようになってきている。これらの自動車
部品を製造する際にも切削工程が行なわれるが、自動車
部品は一般に大量にしかも低コストで生産しなければな
らないため、材料の被削性は重要な品質要因となってい
る。鋼材を切削する場合には、通常その前に焼なましを
施して硬さを下げるが、軸受用鋼は炭素の含有量が高い
ため、十分な焼なましを施しても被削性が十分ではな
く、切削工程において軸受や部品の製造能率が悪くなる
という問題点があった。特に、上記軸受用鋼ではCr成
分量が比較的高いため、焼なまし後の硬さがやや高く、
被削性を改善することが望まれていた。
【0009】
【課題を解決するための手段】そこで本発明者等は、上
記軸受用鋼の高寿命特性を減殺することなく、しかも、
軸受製造工程においてネックとなっている切削工程の能
率を上げることのできる軸受用鋼を開発した。本発明に
係る転がり軸受用鋼は、重量比にして、C:0.65〜0.90
%、Si:0.15〜0.50%、Mn:0.15〜1.00%、Cr:
2.0〜5.0%を含有し、さらに、S:0.020〜0.050%、希
土類元素:0.005〜0.10%、Pb:0.02〜0.30%、C
a:0.0005〜0.0100%、Bi:0.001〜0.200%、Se:
0.005〜0.20%、Te:0.005〜0.100%のうちの1種又
は2種以上を含有して、残部Fe及び不可避的不純物か
ら成ることを特徴とする。また、それらに加えて、必要
に応じて、Ni:0.20〜0.50%、Mo:0.10〜2.00%、
V:0.05〜1.00%のうちの1種又は2種以上を含有して
もよい。
【0010】
【作用】各化学成分の限定理由は次の通りである。
【0011】C:0.65〜0.90% 転がり軸受は転動体と軌道輪(レース)との接触部が線
(ローラ軸受)又は点(ボール軸受)であるため、接触
圧が非常に高い。従って、接触部で塑性変形を起こさ
ず、軸受のスムーズな運動を保証するために、転がり軸
受用鋼の特性としては硬さが高いことが最も重要であ
る。また、耐摩耗性の点からも硬さが高いことが必要で
あり、これらの理由から炭素は0.65%以上の含有が必要
である。しかし、0.90%を超えて含有させると炭素の拡
散速度が大きくなること、また、炭化物が巨大化して応
力集中の原因となることから、使用中に組織変化が生じ
る。これは前記の通り転がり寿命低下の原因となる。ま
た、炭化物量が増加して被削性が悪化する。従って、上
限は0.90%とした。
【0012】Si:0.15〜0.50% シリコンは鋼の精錬に際して脱酸剤として用いられる。
鋼の脱酸が不十分である場合には鋼中に酸化物系介在物
が増加し、これがやはり応力集中源となって使用中の組
織変化を促進する。この脱酸には少なくとも0.15%のシ
リコンの含有が必要である。しかし、0.50%を超えて含
有させると、焼入れ後の残留オーステナイト量が増加
し、焼入硬さが低下して転がり寿命が低下する。また、
球状化焼鈍に際して炭化物の球状化を妨げるため、異形
炭化物による応力集中の弊害も生じる。更に、焼鈍後の
硬さの低下が十分でないため、被削性が低下する。
【0013】Mn:0.15〜1.00% マンガンは精錬に際してシリコンと同様に脱酸剤として
用いられる元素である。また、焼入性を向上する効果が
大きく、比較的大きな部品において完全な焼入れを行な
うために有用な元素である。これらの効果を発揮させる
ためには、少なくとも0.15%のマンガンを含有させる必
要がある。しかし、1.00%を超えると焼入れ後の残留オ
ーステナイト量が多くなり、焼入硬さが低下して転がり
寿命が低下する。
【0014】Cr:2.00〜5.00% クロムは焼入性の確保に重要な元素であり、また、炭素
の拡散による組織変化を抑制して寿命向上に寄与する。
このような効果を発揮するために、クロムは最低2.0%
の含有が必要である。しかし、5.0%を超えるとその効
果が飽和すると共に、逆に、圧延、鍛造、切削等の工程
における加工性が低下し、また、材料価格も上昇する。
【0015】S:0.020〜0.050% 硫黄はMnSとして鋼中に分散する。MnSは鋼よりも
はるかに柔らかい物質であり、このため、切削時には内
部切欠作用によって刃先における剪断変形応力を低減す
る。また切削箇所における潤滑作用によっても切削力を
低減し、これらにより鋼の被削性を向上させる。このよ
うな切削性向上効果を有効に発揮させるためには、最低
0.020%の含有が必要である。しかし、0.050%を超えて
含有させた場合には、ビスマスと結合して熱間加工性を
阻害する。また、非金属介在物であるMnSの量が過多
となり、転がり軸受の転動寿命を低下させる。
【0016】REM:0.005〜0.10% 希土類元素も被削性を向上させる元素であり、その効果
を発揮させるためには0.005%以上の含有が必要であ
る。しかし、0.10%を超えて含有させても被削性向上の
効果は飽和し、多くが未溶解のままマトリクス中に無駄
に残存する。また、前記組織変化とは別の原因により転
動寿命を低下させる。
【0017】Pb:0.02〜0.30% 鉛は鋼中に固溶せず、単体として、また硫化物と共存し
て、鋼中に微細に分散する。鉛も鋼よりもはるかに柔ら
かい物質であるため、上記MnSと同様の作用によって
鋼の被削性を向上させる。このような鉛の切削性向上効
果を有効に発揮させるためには、最低0.02%の含有が必
要である。しかし、0.30%を超えて含有させると、熱間
加工性が悪くなると共に、軸受用鋼の転動寿命を低下さ
せる。
【0018】Ca:0.0005〜0.0100% カルシウムは工具の切削面に付着するベラークと呼ばれ
る堆積物の拡散摩耗を防止する効果を有し、これにより
工具寿命を延長させるという点で、鋼の被削性を向上さ
せる。このような効果を奏するためには、少なくとも0.
0005%の含有が必要である。しかし、0.0100%を超えて
含有させてもそのような効果はもはや飽和し、材料価格
を無駄に上昇させる。また、転動寿命を低下させる。
【0019】Bi:0.001〜0.200% ビスマスは鉛と同様にそれ自身で鋼中に分散して鋼の被
削性を高める。そのための最低必要含有量が0.001%で
ある。しかし、0.200%を超えて含有させると、鉛同
様、熱間加工性及び転動寿命を低下させる。
【0020】Se:0.005〜0.20%、Te:0.005〜0.10
% セレン及びテルルは硫黄と同族の元素であり、上記硫黄
の場合と同様の作用により鋼の被削性を向上させる。ま
た、MnSの形状を球状に近くするという作用により、
延伸形状のMnS先端部からの亀裂生成という転動寿命
低下の要因を除去するという効果を有し、この点から転
動寿命の向上にも寄与する。これらの効果はセレン、テ
ルルとも0.005%以上の含有ではじめて発揮される。し
かし、セレンの場合には0.20%以上、テルルの場合には
0.10%以上含有させてもその効果は飽和し、材料価格を
無駄に上昇させるばかりか、転動寿命を低下させる。
【0021】Ni:0.20〜0.50% ニッケルはマトリクスを強化して靱性を向上させ、これ
により転がり寿命を向上させるという効果を有する。こ
のような効果を確実に奏するためには0.20%以上の含有
が必要である。しかし、0.50%を超えて含有させると残
留オーステナイト量が増加し、焼入硬さが低下するた
め、逆に転がり寿命は低下する。また、ニッケルは高価
な元素であり、余分な添加は材料価格を無駄に上昇させ
るのみである。
【0022】Mo:0.1〜2.0% モリブデンはマトリクスを強化すると共に、炭素の拡散
を抑制することで組織変化に伴う転がり寿命の低下を防
止する。このような効果を奏するためには、モリブデン
量は0.1%以上含まれていなければならない。しかし、
2.0%を超えて含有させるとそのような効果が飽和する
とともに、鋼の加工性が低下し、材料価格が無駄に上昇
する。
【0023】V:0.05〜1.00% バナジウムは微細で安定した炭化物を形成し、これによ
り炭素の拡散を抑制して使用中の組織変化を防止する。
すなわち、転がり寿命の向上に有効な元素であり、この
ような効果は0.05%以上の含有で得ることができる。し
かし、1.0%を超えて含有させるとこのような効果が飽
和すると共に、鋼の加工性及び被削性が低下し、材料価
格が無駄に上昇する。
【0024】
【実施例】次に、本発明鋼の特徴を比較鋼、従来鋼と対
比して、実施例でもって説明する。表4及び表5にこれ
ら供試鋼の化学成分を示す。
【表4】
【表5】
【0025】表4及び表5において、A1〜A13が本発
明鋼(そのうち、A1〜A4が第1発明鋼、A5〜A13
が第2発明鋼)であり、B1〜B4はいずれかの成分が
本発明で規定する範囲を外れている比較鋼、C1及びC
2は従来鋼である。従来鋼のうち、C1はJIS SUJ2鋼で
あり、C2はSAE 5120鋼である。まず各供試鋼の被削性
を調べるため、各供試鋼の圧延丸棒に球状化焼鈍熱処理
を施し、次のような条件で丸棒切削試験を行なった。 工具 :SKH4 切り込み:1mm 送り :0.2mm/rev 切削速度:50m/min 切削油 :なし なお、工具寿命は、VB=0.3mmとなった時点とした。切
削試験の結果を表6の左欄に示す。この結果をみると明
かな通り、本発明鋼A1〜A13はいずれも従来鋼(C
1、C2)よりも長い工具寿命を示している。
【0026】次に、転動寿命試験を行なうために、表面
硬さがほぼHRC61〜62となるように所定の熱処理を施し
た。その後、転動試験片を完成し、表2に示した負荷条
件でボールを転動させて動的荷重試験を行なった。その
結果を表6の右欄に示す。なお、ここにおける「転動寿
命」とは、軸受表面に剥離が発生するまでの時間(hr)
である。
【表6】 表6右欄に示す動的荷重試験の結果をみると、本発明鋼
A1〜A13はいずれも1100時間以上の高寿命を達成して
いる。それに対し、比較鋼B1〜B4は長いものでも90
0時間程度であり、従来鋼に至っては数十時間から200時
間程度と、極めて短寿命となっている。以上の通り、本
発明鋼は被削性に優れていると共に、動的負荷状態の下
でも転動疲労寿命は非常に良好な値を示している。本発
明の成分範囲のいずれかにおいて外れている比較鋼で
は、被削性については十分な性能を有するものの、動的
負荷状態の転動寿命試験結果は、自動車等の衝撃・振動
が加わるような箇所への適用には不向きであることを示
している。なお、上記実施例では供試鋼を軌道輪に用い
て転動寿命を測定したが、本発明鋼を転動体(ボール、
ローラ)に用いても同様に高寿命が得られることは、剥
離機構を考慮すれば当然のことである。
【0027】
【発明の効果】以上の結果から明かな通り、本発明に係
る軸受用鋼は、特に振動、衝撃荷重が負荷されるという
厳しい条件の下で高寿命を発揮する。従って、高速回転
で使用される軸受や、必然的に振動、衝撃を伴う自動車
・航空機等のエンジン関係やエンジンによって駆動され
る補機類の軸受類に最も適した材料として用いることが
できる。それに加え、本発明鋼では被削性が向上してい
るので、軸受等を製造する際の切削工程において切削速
度を高めることができる。あるいは従来と同じ速度で切
削加工を行なう場合には、工具寿命が長くなるため、い
ずれにせよ製造工程のコストダウンを図ることができ
る。また、切屑処理性にも優れているため、切屑のから
み等による工程トラブルを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 高速回転により短時間で剥離した軸受の転走
面下の断面のミクロ組織を表わす顕微鏡写真。
【図2】 白層とマトリクスの炭素濃度分布をEPMA
で分析した結果の模写図。
【符号の説明】
1…マトリクス(母相)、2…白層、3…高炭素部分
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年2月15日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図面の簡単な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【図面の簡単な説明】
【図1】 高速回転により短時間で剥離した軸受の転走
面下の断面の金属組織を表わす写真
【図2】 白層とマトリクスの炭素濃度分布をEPMA
で分析した結果の模写図。
【符号の説明】 1…マトリクス(母相)、2…白層、3…高炭素部分
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 室賀 啓 愛知県東海市荒尾町ワノ割1番地 愛知製 鋼株式会社内 (72)発明者 後藤 将夫 大阪市中央区南船場三丁目5番8号 光洋 精工株式会社内 (72)発明者 川口 敏弘 大阪市中央区南船場三丁目5番8号 光洋 精工株式会社内 (72)発明者 星野 照男 大阪市中央区南船場三丁目5番8号 光洋 精工株式会社内 (72)発明者 北村 昌之 大阪市中央区南船場三丁目5番8号 光洋 精工株式会社内 (72)発明者 夏目 喜孝 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 日本電 装株式会社内 (72)発明者 水谷 彰宏 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 日本電 装株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量比にして、C:0.65〜0.90%、S
    i:0.15〜0.50%、Mn:0.15〜1.00%、Cr:2.0〜
    5.0%を含有し、さらに、S:0.020〜0.050%、希土類
    元素:0.005〜0.10%、Pb:0.02〜0.30%、Ca:0.0
    005〜0.0100%、Bi:0.001〜0.200%、Se:0.005〜
    0.20%、Te:0.005〜0.100%のうちの1種又は2種以
    上を含有して、残部Fe及び不可避的不純物から成るこ
    とを特徴とする軸受用鋼。
  2. 【請求項2】 重量比にして、C:0.65〜0.90%、S
    i:0.15〜0.50%、Mn:0.15〜1.00%、Cr:2.0〜
    5.0%を含有し、さらに、S:0.020〜0.050%、希土類
    元素:0.005〜0.10%、Pb:0.02〜0.30%、Ca:0.0
    005〜0.0100%、Bi:0.001〜0.200%、Se:0.005〜
    0.20%、Te:0.005〜0.100%のうちの1種又は2種以
    上及びNi:0.20〜0.50%、Mo:0.10〜2.00%、V:
    0.05〜1.00%のうちの1種又は2種以上を含有して、残
    部Fe及び不可避的不純物から成ることを特徴とする軸
    受用鋼。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014181358A (ja) * 2013-03-18 2014-09-29 Aichi Steel Works Ltd 軸受部材及び軸受用鋼
CN111304536A (zh) * 2020-03-25 2020-06-19 包头钢铁(集团)有限责任公司 一种含稀土btzc15轴承钢及其生产方法
CN111349855A (zh) * 2020-03-25 2020-06-30 包头钢铁(集团)有限责任公司 一种采用二火成材工艺生产的btzc15轴承钢及其生产方法
CN111441003A (zh) * 2020-04-03 2020-07-24 包头钢铁(集团)有限责任公司 一种含稀土轴承圆管坯

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