JP3526180B2 - 転がり軸受 - Google Patents

転がり軸受

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JP3526180B2
JP3526180B2 JP21903897A JP21903897A JP3526180B2 JP 3526180 B2 JP3526180 B2 JP 3526180B2 JP 21903897 A JP21903897 A JP 21903897A JP 21903897 A JP21903897 A JP 21903897A JP 3526180 B2 JP3526180 B2 JP 3526180B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジン補機(オ
ルタネータ,電磁クラッチ,中間プーリ,水ポンプ)な
どに使用される転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車の小型・軽量化に伴ってエ
ンジン補機類にも小型・軽量化と共に高性能・高出力化
が求められている。エンジンの作動時、例えば、オルタ
ネータ用軸受には高速回転に伴う高振動、高荷重(重力
加速度で4G〜20G位)がベルトを介して同時に作用
し、この結果、固定輪である外輪軌道輪に早期剥離が生
じて軸受の寿命を短くする原因になっている。
【0003】高振動、高荷重下で使用される軸受の寿命
向上を図る技術として、例えば、特開平5−25580
9号公報には、アルミニウムAl,ニオブNbのうち少
なくとも一種を所定量添加することにより、マルテンサ
イト結晶粒の粗大化を防ぐ軸受鋼が開示されている。
【0004】また、特開平4−28845号公報には、
炭素C濃度を低くし、クロムCr濃度を高くすることに
より、転がり疲労による炭素Cの拡散速度を遅らせ、更
に、ニッケルNi,モリブデンMo,バナジウムVのう
ち少なくとも一種を所定量添加することにより、組織の
強靱性を向上させた軸受鋼が開示されている。
【0005】ところで、早期剥離を防止する対策とし
て、「SAEテクニカルペーパー:SAE950944
(開催日1995年2月27日〜3月2日)」の第1〜
第14項には、オルタネータ用軸受の疲労メカニズムを
解明し、封入グリースをEグリース(基油:合成炭化水
素油)からダンパー効果の高いMグリース(基油:エー
テル系合成油)に変更することにより、このMグリース
で高振動・高荷重を吸収して早期剥離を防止する技術が
開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記特
開平5−255809号公報に開示された軸受には、ア
ルミニウムAlやニオブNbによる炭化物や炭窒化物の
生成により結晶粒の粗大化を防ぐものであるが、このよ
うな添加の組合せでは結晶粒の微細化が期待できず、早
期剥離を十分に防止することができない。
【0007】また、上記特開平4−28845号公報に
開示された軸受においても、炭素C濃度を低下させ、ク
ロムCr濃度を向上させて組織変化の発生を抑制するこ
とを狙ったものであるが、単にニッケルNi,モリブデ
ンMo,バナジウムVを添加しても結晶粒の粗大化を防
ぐためだけのものであるので、早期剥離を十分に防止す
ることができない。
【0008】本発明は、かかる不具合を解消するために
なされたものであり、高振動、高荷重に起因する早期剥
離を良好に防止して軸受寿命の大幅な延長を可能にする
ことができる転がり軸受を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明者等は鋭意研究した結果、従来の軸受鋼材料
にチタンTiを0.05重量%〜0.40重量%添加す
ることにより、鋼中に平均粒径50nm以下のチタン
(Ti)炭化物およびチタン(Ti)炭窒化物の少なく
とも一種を微細に分散析出させ、転動疲労中の組織変化
を抑制しかつ焼入れ時の結晶粒の粗大化を抑制すること
ができるという知見を得た。
【0010】かかる知見に基づいてなされた本発明の請
求項1に記載の転がり軸受は、固定輪と回転輪との間に
複数の転動体が配置された転がり軸受において、少なく
とも前記固定輪の軸受鋼の合金組成成分として、炭素C
を0.65〜1.20重量%,シリコンSiを0.05
〜0.70重量%,マンガンMnを0.2〜1.5重量
%,クロムCrを0.15〜2.0重量%,チタンTi
を0.05〜0.40重量%,窒素Nを0.01重量%
以下含有し、かつ、少なくとも軌道表面に平均粒径50
nm以下のチタン(Ti)炭化物およびチタン(Ti)
炭窒化物の少なくとも一種を分散させてなることを特徴
とする。チタンTiを0.05〜0.40重量%添加す
ることにより、鋼中の平均粒径50nm以下のチタン
(Ti)炭化物およびチタン(Ti)炭窒化物の少なく
とも一種を微細に分散させ、マトリックスを強化し、高
荷重・高振動を緩和し、マトリックスの組織変化を抑制
しかつ遅延させて転がり寿命を向上させる。
【0011】また、モリブデンMoを0.03〜1.0
重量%、ニッケルNiを0.1〜3.0重量%の範囲内
でモリブデンMoおよびニッケルNiの少なくとも一種
を含み、平均粒径30nm以下のチタン(Ti)炭化物
およびチタン(Ti)炭窒化物の少なくとも一種を鋼中
に分散させることが好ましい。モリブデンMoおよびニ
ッケルNiは転がり寿命向上に効果のある元素であり、
選択的に添加することにより平均粒径を小さくすること
ができる。
【0012】さらに、平均粒径15nm以下のチタン
(Ti)炭化物およびチタン(Ti)炭窒化物の少なく
とも一種を鋼中に分散させることがより好ましい。平均
粒径が15nm以下であると、微細分散化の効果により
さらに長寿命となるが、これは添加されるモリブデンM
o、ニッケルNiが鋼の機械的性質を向上させる元素で
あり、炭素C、クロムCrと結びつくことにより、添加
前と比較して微細な炭化物を形成するので、チタン炭化
物(TiC),チタン炭窒化物(TiCN)も超微細な
炭化物を形成しやすくなるためである。
【0013】また、ボロンBを0.0005〜0.00
50重量%を含み、平均粒径50nm以下のチタン(T
i)炭化物およびチタン(Ti)炭窒化物の少なくとも
一種を鋼中に分散させることが好ましい。ボロンBの添
加は焼入れ性を向上させるためであり、チタン(Ti)
炭化物、チタン(Ti)炭窒化物の微細化には直接関係
しない。ボロンBを添加することは肉厚、大径の転がり
軸受においても有効である。
【0014】さらに、モリブデンMoを0.03〜1.
0重量%、ニッケルNiを0.1〜3.0重量%の範囲
内でモリブデンMoおよびニッケルNiの少なくとも一
種を含み、かつボロンBを0.0005〜0.0050
重量%を含み、平均粒径50nm以下のチタン(Ti)
炭化物およびチタン(Ti)炭窒化物の少なくとも一種
を鋼中に分散させることが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の転がり軸受の実施の形態
について説明する。図1は実施の形態における転がり軸
受およびこれを評価する試験機の概略的構成を示す図で
ある。
【0016】内輪回転用の深みぞ玉軸受1では、外輪2
がハウジング8に固定され、内輪3がシャフト7に組み
込まれている。外輪2と内輪3との間には保持器5に保
持された多数の転動体4が配置されており、保持器5両
側の外輪2と内輪3との間にはシール部材6が装着され
ている。そして、外輪2、内輪3およびシール部材6に
よって囲まれる保持器5周囲の空間には、Eグリースが
封入されている。
【0017】この深みぞ玉軸受1では、シャフト7の回
転に伴って内輪3が回転し、その回転による振動荷重は
シャフト7から内輪3および転動体4を介して外輪2の
負荷圏に作用する。
【0018】なお、Eグリースはつぎのような性状を有
する。すなわち、増ちょう剤:ウレア,基油:合成炭化
水素油,基油動粘度:47.3cSt(40℃),7.
9cSt(100℃),混和ちょう度:250(25
℃,60W),滴点:260℃以上,銅板腐食:合格
(100℃,24h),蒸発量:0.34%(99℃,
22h),離油度:0.3%(99℃,24h),酸化
安定度:0.025Mpa(99℃,100h),混和
安定度:364(25℃,105 W,水洗耐水度2%
(79℃,1h)である。
【0019】つぎに、転がり軸受に適用される鋼の組成
割合の限定理由について説明する。
【0020】炭素Cは転がり軸受として要求される硬さ
を付与する元素であるが、0.65重量%未満である
と、転がり軸受として要求される硬さHRC59以上を
確保できない場合があり、一方、1.20重量%を越え
て含有させると、巨大炭化物が生成し易くなって疲労寿
命や衝撃荷重が低下する場合があるので、炭素Cの含有
量を0.65〜1.20重量%にする。
【0021】シリコンSiは組織変化の遅延、および焼
入れ性を向上させる元素であるが、0.05重量%未満
では脱酸効果が十分でなく、0.70重量%を越えると
加工性が著しく低下するので、シリコンSiの含有量を
0.05〜0.70重量%にする。
【0022】マンガンMnは鋼の焼入れ性に効果のある
元素であるが、0.2重量%未満では焼入れ性が不足
し、1.5重量%越えると加工性が低下するので、マン
ガンMnの含有量を0.2〜1.5重量%にする。
【0023】クロムCrは焼入れ性を向上させ、かつ炭
化物球状化を促進させる元素であり、少なくとも0.1
5重量%以上を含有させる必要があるが、2.0重量%
を越えて含有させると、炭化物が粗大化して平均結晶粒
が大きくなり、また、被削性を劣化させる場合があるの
で、クロムCrの含有量を0.15重量%〜2.0重量
%にする。
【0024】チタンTiは鋼中にチタン(Ti)炭化物
およびチタン(Ti)炭窒化物の少なくとも一種の形で
微細分散し、転がり寿命を向上させ、焼入れ時の結晶粒
の粗大化を抑制する元素であるが、0.05重量%未満
では、その多くは1μm以上のTi炭化物、Ti炭窒化
物、Ti窒化物となり、超微細な50nm以下のTi効
果を得ることができない。また、0.40重量%を超え
ると、加工性が低下することと、転がり寿命を低下させ
る1μm以上の介在物(TiN,TiS等)の個数が増
加するため、Tiの含有量を0.05重量%〜0.40
重量%にする。
【0025】窒素Nは転がり寿命を向上させるチタン
(Ti)炭化物およびチタン(Ti)炭窒化物の少なく
とも一種の微細分散による大きな分散強化効果を付与す
るが、窒素Nの含有量が増加するほど1μm以上のTi
炭窒化物、Ti窒化物が増加し、50nm以下のチタン
炭化物(TiC)、チタン炭窒化物(TiCN)の量が
減少してしまう。このため、窒素Nの含有量を0.01
重量%以下にする。なお、チタン窒化物が増加すると転
がり寿命が低下してしまう。
【0026】ボロンBは極く微量の添加によって、鋼の
焼入れ性を著しく向上させる元素であるが、0.000
5重量%未満ではその効果が十分ではなく、0.005
重量%を越えると、逆に焼入れ性を低下させて靭性を劣
化させる。このため、ボロンBの含有量を0.0005
〜0.0050重量%にする。
【0027】モリブデンMoとニッケルNiは、転がり
寿命向上に効果のある元素で選択的に添加するが、少な
すぎると寿命向上の効果がなく、多すぎると効果は飽和
する。そこで、モリブデンMoの含有量を0.03〜
1.00重量%、ニッケルNiの含有量を0.03〜
3.00重量%にする。
【0028】リンPは転がり寿命および靭性を低下させ
る元素であるので、その含有量の上限を0.02重量%
にする。
【0029】イオウSは被削性を向上させる元素である
が、マンガンMnあるいはチタンTiと結合して転がり
寿命を低下させる硫化系介在物を形成するので、その含
有量の上限を0.02重量%にする。
【0030】酸素Oは鋼中において酸化物系の介在物を
生成し、転がり寿命を低下させる元素であるので、その
含有量の上限を0.0016重量%にする。
【0031】本実施形態における外輪2の軸受鋼は、合
金組成成分として炭素Cを0.65〜1.20重量%,
シリコンSiを0.05〜0.70重量%,マンガンM
nを0.2〜1.5重量%,クロムCrを0.15〜
2.0重量%,チタンTiを0.05〜0.40重量
%,窒素Nを0.01重量%以下およびボロンBを0.
0005〜0.0050重量%含有すると共に、モリブ
デンMoを0.03〜1.0重量%,ニッケルNiを
0.1〜3.0重量%の範囲内でモリブデンMoおよび
ニッケルNiのうちのすくなくとも一種を含み、平均粒
径50nm以下のチタン(Ti)炭化物およびチタン
(Ti)炭窒化物の少なくとも一種を鋼中に微細分散さ
せる条件を満足するものである。
【0032】ここで、炭素Cを0.65〜1.20重量
%,シリコンSiを0.05〜0.70重量%,マンガ
ンMnを0.2〜1.5重量%,クロムCrを0.15
〜2.0重量%,チタンTiを0.05〜0.40重量
%,窒素Nを0.01重量%以下含有し、平均粒径50
nm以下のチタン(Ti)炭化物およびチタン(Ti)
炭窒化物の少なくとも一種を鋼中に分散させる条件を、
「条件A」とする。
【0033】また、条件Aを満足し、かつモリブデンM
oを0.03〜1.0重量%、ニッケルNiを0.1〜
3.0重量%の範囲内でモリブデンMoおよびニッケル
Niの少なくとも一種を含み、平均粒径30nm以下の
チタン(Ti)炭化物およびチタン(Ti)炭窒化物
少なくとも一種を鋼中に分散させる条件を、「条件B」
とする。
【0034】さらに、条件Aを満足し、ボロンBを0.
0005〜0.0050重量%を含み、平均粒径50n
m以下のチタン(Ti)炭化物およびチタン(Ti)
窒化物の少なくとも一種を鋼中に分散させる条件を、
「条件C」とする。
【0035】また、条件Aを満足し、モリブデンMoを
0.03〜1.0重量%、ニッケルNiを0.1〜3.
0重量%の範囲内でモリブデンMoおよびニッケルNi
の少なくとも一種を含み、かつボロンBを0.0005
〜0.0050重量%を含み、平均粒径50nm以下の
チタン(Ti)炭化物およびチタン(Ti)炭窒化物
少なくとも一種を鋼中に分散させる条件を、「条件D」
とする。
【0036】
【実施例】表1に各実施例および比較例に用いた供試材
の化学成分を示す。
【0037】
【表1】 実施例1〜5は「条件A」を満足する合金鋼であり、実
施例6〜10は「条件B」を満足する合金鋼である。ま
た、実施例11〜15は「条件C」を満足する合金鋼で
あり、実施例6〜20は「条件D」を満足する合金鋼で
ある。これに対し、比較例1〜16はチタンTi,モリ
ブデンMo,ニッケルNi,ボロンBが「条件A〜D」
を満足していない合金鋼である。
【0038】実施例および比較例の寿命試験に際し、軸
受外輪だけを表1に示す供試材から製作した。この供試
材料では、チタンTiをマトリックスに溶け込ませるた
めに1150〜1350℃で加熱し、溶体化処理を施し
た。この外輪は、表1の材料を冷間加工し、通常熱処理
(840℃で焼入れ加熱、油冷却後、180℃で焼戻
し)を行った。
【0039】なお、外輪の表面硬さはHRC59〜6
4、残留オーステナイト量は10〜20重量%、軌道表
面粗さは0.01〜0.03μmRaである。さらに、
実施例および比較例共に内輪および転動体は同じ軸受鋼
として熱処理を施し、内輪および転動体の表面の硬さを
HRC59〜64、内輪の表面粗さを0.01〜0.0
3μmRa、転動体の表面粗さを0.003〜0.01
0μmRaとした。
【0040】つづいて、実施例の軸受と比較例の軸受と
の寿命試験結果について説明する。試験機としては、回
転数を所定時間毎(例えば、9秒毎)に9000rpm
と18000rpmとに切り替えるベンチ急加減速試験
機を用いた。また、実施例および比較例共に、試験軸受
にはJIS呼び番号6303を用い、荷重条件をP(負
荷荷重)/C(動定格荷重)=0.10とし、封入グリ
ースにEグリースを用いた。さらに、このときの軸受の
計算寿命は、1350時間であり、したがって、試験打
ち切り時間を1000時間とした。試験は各々10個に
対して行った。
【0041】また、TiCの平均粒径は主として炭素
C,クロムCr,窒素Nの量で制御されるが、その他の
TiC微細分散化の要因として溶体化処理温度(高いほ
ど微細になる)が挙げられる。すなわち、各実施例の項
目において、溶体化処理温度の違いにより、TiC系が
異なったと考えられる。特に、温度が1300〜135
0℃に近いほど(実施例のB,D)、溶体化が確実とな
り、TiCが小さくなり、1200〜1250℃と低い
温度(実施例のA、C)である場合、溶体化が不十分と
なり、TiCが比較的小さくならない可能性が残る。
【0042】しかしながら、反面、溶体化処理温度を上
げて行うには、設備的にコストアップが考えられるの
で、そのバランスを考える必要がある。
【0043】表2に鋼中のチタン(Ti)炭化物および
チタン(Ti)炭窒化物の少なくとも一種の平均粒径お
よび寿命試験結果を示す。
【0044】
【表2】 図2はチタン(Ti)炭化物およびチタン(Ti)炭窒
化物の少なくとも一種の平均粒径と軸受の耐久寿命との
関係を示す特性図である。図3は図2の平均粒径50n
m以下の範囲における耐久寿命を示す特性図である。
【0045】実施例1〜20のチタン(Ti)炭化物
よびチタン(Ti)炭窒化物の少なくとも一種の平均粒
径は15〜50nmの範囲に全て収まっており、その耐
久寿命L10はいずれも800時間を越えている。
【0046】このように、「条件A」を満足する実施例
1〜5の軸受寿命L10は、全て800時間以上(10
個中2〜4個に剥離が発生)となり、比較例1〜16と
比べて長寿命となった。また、「条件C」を満足する実
施例11〜15の軸受寿命L10は全て900時間以上
(10個中1〜2個に剥離が発生)となり、比較例1〜
16と比べてさらに長寿命となった。
【0047】さらに、「条件B」および「条件D」を満
足する実施例6〜10、16〜20の軸受寿命L10は
全て1000時間以上を越えても剥離が生じず、試験を
打ち切った。
【0048】このように、本実施例では「条件A〜D」
を満足することにより、鋼中に平均粒径50nm以下の
チタン(Ti)炭化物およびチタン(Ti)炭窒化物
少なくとも一種を微細に分散させてマトリックスを強化
し、転がり疲労中の組織変化を遅延させることにより、
転がり軸受疲労寿命に到達する時間を遅らせることがで
きる。この結果、固定輪の早期剥離が良好に防止され、
従来に比べて大幅に転がり寿命を延長することができ
る。
【0049】No.10とNo.17に関しては、同一
試験条件で2000hrに達しても剥離を生じなかっ
た。これはTiCの粒径が15nmであることの効果に
よる。実施例No.10,No.17の合金元素のTi
C微細分散化に与える効果としてはつぎのように考えら
れる。モリブデンMo、ニッケルNiの添加は、鋼の機
械的性質を向上させる元素であり、また、炭素C、クロ
ムCrと結びつくことにより、添加前と比較して微細な
炭化物を形成するので、TiC,TiCNも超微細な炭
化物を形成しやすくなる。一方、モリブデンMo,ニッ
ケルNiの添加量を増やしても寿命向上は飽和し、ま
た、高級な元素であるので、コストアップとなる。
【0050】また、「条件A〜D」を満足していない比
較例1〜16では、全ての軸受の寿命L10が計算寿命
の1/4となっており、剥離部位は全て軸受外輪であっ
た。
【0051】比較例1〜4は「条件A〜D」を満足して
いないので、鋼中に50nm以下のチタンTi炭化物、
チタンTi炭窒化物を生成することができず、長寿命に
ならなかった。
【0052】また、比較例5〜8はチタンTiの添加量
が多いので、チタンTi系の介在物が多くなり、鋼中に
50nm以下のチタン(Ti)炭化物およびチタン(T
i)炭窒化物の少なくとも一種を分散させることができ
ず、寿命延長効果が認められなかった。さらに、比較例
9〜16は「条件A〜D」を満足しておらず、鋼中にチ
タン(Ti)炭化物およびチタン(Ti)炭窒化物の少
なくとも一種を生成することができず、また、ボロンB
添加の効果がみられず、長寿命とならなかった。
【0053】今回、実施例に用いた材料では、軸受鋼の
通常熱処理を行い、軸受の残留オーステナイト量が10
〜20重量%としたが、さらに軸受の残留オーステナイ
ト量を10重量%以下とした寸法安定処理を施した軸受
に関しても同様の効果が得られる。
【0054】
【発明の効果】本発明の請求項1に記載の転がり軸受に
よれば、固定輪と回転輪との間に複数の転動体が配置さ
れた転がり軸受において、少なくとも前記固定輪の軸受
鋼の合金組成成分として、炭素Cを0.65〜1.20
重量%,シリコンSiを0.05〜0.70重量%,マ
ンガンMnを0.2〜1.5重量%,クロムCrを0.
15〜2.0重量%,チタンTiを0.05〜0.40
重量%,窒素Nを0.01重量%以下含有し、かつ少な
くとも軌道表面に平均粒径50nm以下のチタン(T
i)炭化物およびチタン(Ti)炭窒化物の少なくとも
一種を分散させてなるので、チタンTiを0.05〜
0.40重量%添加し、鋼中に平均粒径50nm以下の
チタン(Ti)炭化物およびチタン(Ti)炭窒化物
少なくとも一種を微細に分散させることにより、高荷重
・高振動を緩和し、マトリクスを強化し、転がり疲労中
の組織変化を遅延させて転がり軸受の疲労寿命に到達す
る時間を遅らせることがてきる。この結果、固定輪の早
期剥離が良好に防止され、従来に比べて大幅に転がり寿
命を延長することができるようになった。
【0055】従来では微細炭化物の粒径は0.5〜1.
0μmであったが、本願発明ではチタン炭化物(Ti
C)、チタン炭窒化物(TiCN)の粒径は50nm以
下であるので、クラックの伝幡および発生を抑制するピ
ンニング効果を得ることができる。これにより、オルタ
ネータ用軸受などのエンジン補機用軸受に適用する場
合、その寿命L10を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態における転がり軸受およびこれを評
価する試験機の概略的構成を示す図である。
【図2】チタン(Ti)炭化物およびチタン(Ti)
窒化物の少なくとも一種の平均粒径と軸受の耐久寿命と
の関係を示す特性図である。
【図3】図2の平均粒径50nm以下の範囲における耐
久寿命を示す特性図である。
【符号の説明】
1 軸受 2 外輪(固定輪) 3 内輪 4 転動体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 西川 元裕 兵庫県姫路市飾磨区中島宇一文字3007番 地 山陽特殊製鋼株式会社内 (56)参考文献 特開 平8−302445(JP,A) 特開 平5−255809(JP,A) 特開 平4−28845(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16C 33/58 - 33/64 C22C 38/00 C22C 38/50

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 固定輪と回転輪との間に複数の転動体が
    配置された転がり軸受において、 少なくとも前記固定輪の軸受鋼の合金組成成分として、
    炭素Cを0.65〜1.20重量%,シリコンSiを
    0.05〜0.70重量%,マンガンMnを0.2〜
    1.5重量%,クロムCrを0.15〜2.0重量%,
    チタンTiを0.05〜0.40重量%,窒素Nを0.
    01重量%以下含有し、かつ少なくとも軌道表面に平均
    粒径50nm以下のチタン(Ti)炭化物およびチタン
    (Ti)炭窒化物の少なくとも一種を分散させてなるこ
    とを特徴とする転がり軸受。
  2. 【請求項2】 前記合金組成成分は、モリブデンMo:
    0.03〜1.0重量%およびニッケルNi:0.1〜
    3.0重量%の少なくとも1種を含むことを特徴とする
    請求項1記載の転がり軸受。
  3. 【請求項3】 前記合金組成成分は、ボロンB:0.0
    005〜0.0050重量%を含むことを特徴とする請
    求項1または2記載の転がり軸受。
  4. 【請求項4】 前記少なくとも軌道表面に分散させてな
    る前記チタン(Ti)炭化物および前記チタン(Ti)
    炭窒化物の少なくとも一種の平均粒径が30nm以下で
    あることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載
    の転がり軸受。
  5. 【請求項5】 前記少なくとも軌道表面に分散させてな
    る前記チタン(Ti)炭化物および前記チタン(Ti)
    炭窒化物の少なくとも一種の平均粒径が15nm以下で
    あることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載
    の転がり軸受。
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