JP2006299577A - 隙間調整された三重管制震ブレース - Google Patents

隙間調整された三重管制震ブレース Download PDF

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隆 神谷
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孝 田口
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Abstract

【課題】地震によって軸力管が全体座屈及び局部的な座屈により、耐力の低下することのない、エネルギー吸収能力に優れた三重管制震ブレースを提供すること。
【解決手段】一般的構造用鋼管14と低降伏点鋼管16とが同軸に接続された軸力管12と、軸力管12の内側及び外側にそれぞれ補剛管(26、28)が同心状に配設された三重管制震ブレースにおいて、軸力管12の一般的構造用鋼管14の端縁に櫛歯状のフィンガー部40が延設形成され、内側補剛管28の外周面にフィンガー部40が挿入されるスリット溝46が形成された三重管制震ブレースとする。
【選択図】 図2

Description

本発明は、制震ブレースに関し、更に詳しくは、地震により軸力管に圧縮及び引張の繰返し軸力による応力が作用しても軸力管が全体及び局部的な座屈により耐力が低下することのない三重管制震ブレースに関するものである。
従来、地震による軸力管の降伏負荷に対する対策品としては、例えば、特開平11−193570号公報に示されるような二重管構造のものがある。これを図5に示して説明すると、一般的な構造用又は建築用の鋼材からなる厚肉管82とこれよりも降伏点の低い低降伏点鋼材からなる薄肉管84とが同軸に接合された軸力管80の両端に口金88a,88bを介してクレビス継手86a,86bが取付けられ、軸力管80の外側にはその軸力管の座屈を抑止するため全長に亘って同心状に外筒管81が配設され、一方の口金88bに溶接止め83されている。
しかしながら、この公報に示されるものは、地震により軸力管80に応力が作用した時に、軸力管80の薄肉管84が外方へ膨らむ座屈に対しては外筒管81によりその座屈が抑止されるが、内方へ凹む座屈に対しては抑止しようがないという問題がある。しかもその薄肉管84と外筒管81との間には全長に亘って隙間が形成されているため薄肉管84に局部的な座屈が生じたときにこれを回避できないという問題がある。特開平8−68110号公報に示される二重管構造のものも同様である。
又、二重管構造の耐震構造材として、例えば特開2003−34983号公報に示されるように、軸力管の内側に内筒管を設けたものもある。この公報のものでは、軸力管の内方への座屈に対しては内筒管によりその座屈が抑止されるが、今度は逆に外側への座屈に対しては抑止しようがないという問題がある。しかもこの場合にも軸力管と内筒管との間にはやはり全長に亘って隙間が生じているために軸力管の局部的な座屈をその内筒管によっては回避できないことがあるという問題もある。
一方、本願出願人は、先に三重管構造の制震ブレースについて出願している。これは一般的な構造用又は建築用の鋼材の鋼管とその構造用又は建築用の鋼管よりも降伏点の低い低降伏点鋼材の鋼管とが同軸に接合される軸力管の低降伏点鋼管の内側と外側の両方に補剛管が軸力管との間に少しの間隔を置いて同心状になるように配設されたものである。
これによれば、地震により軸力管に圧縮及び引張の繰返し軸力による応力が作用した場合にその軸力管の低降伏点鋼管が内側に座屈しようととすれば、内側の補剛管により座屈が抑止され、外側に座屈しようとすれば、外側の補剛管により座屈が抑止される。しかしながら、このような三重管構造のものであっても、軸力管の低降伏点鋼管と内側、外側の両補剛管の間に全長に亘って隙間が生じているため軸力管の局部的な座屈による耐力の低下を回避することができないという問題がある。
また、本出願人は、上記三重管構造の制震ブレースの上記問題を回避するために、軸力管の低降伏点鋼管と、内側及び外側の両補剛管の間に全長に亘って生じていた隙間を埋めるべく、軸力管と補剛管との隙間に軸方向にピッチ間隔をもって螺旋状に形成されたコイル形状の隙間調整部材を介設させた三重管制震ブレースについても出願している。
これによれば、軸力管の低降伏点鋼管と内側、外側の両補剛管の間に全長に亘って生じていた隙間による軸力管の局部的な座屈による耐力の低下が抑止されることとなる。
しかしながら、前記隙間を埋めるためには、別途隙間調整部材を製作することが必要となるため、その分の材料コストがかかり、また製作工程が増えるといった問題がある。
特開平11−193570号公報 特開平8−68110号公報 特開2003−34983号公報
本発明が解決しようとする課題は、地震により軸力管に圧縮及び引張の繰り返し軸力による応力が作用しても全体座屈及び局部的座屈することなく十分に塑性変形させるために、軸力管の内側と外側の両方に補剛管を配設し、更に、隙間調整部材を用いることなく、その軸力管と補剛管との隙間を最小限にした、エネルギー吸収能力に優れた三重管制震ブレースを提供することにある。
上記課題を解決するために本発明の三重管制震ブレースは、請求項1に記載のように、一般的な構造用鋼管と低降伏点鋼管とが同軸に接続される軸力管と、該軸力管の前記低降伏点鋼管側の内側及び外側にそれぞれ前記軸力管の座屈を阻止する補剛管が同心状に配設されてなる三重管構造の制震ブレースにおいて、前記軸力管の構造用鋼管の端縁に前記櫛歯状のフィンガー部が延設形成され、内側補剛管の外周面に前記フィンガー部が挿入されるスリット溝が形成され、前記フィンガー部と前記スリット溝とのフィンガージョイント構造による軸力管と補剛管との隙間調整がなされてなることを要旨とする。
この場合、請求項2に記載のように、前記軸力管に軸方向への長さ調整機構が設けられている場合に好適に用いられる。
本発明の請求項1に記載の三重管制震ブレースによれば、軸力管の低降伏点鋼管の内側と外側の両方に補剛管を配設した三重管構造となっているため、軸力管の座屈が内側あるいは外側のいずれに生じても内側か外側のいずれかの補剛管によって全体的な座屈が抑止される。
また、軸力管の構造用鋼管の端縁に延設形成された櫛歯状のフィンガー部と内側補剛管の外周面に形成されたスリット溝とがフィンガージョイント構造を形成することによって、軸力管と補剛管との隙間を最小限にし、低降伏点鋼管の局部的な座屈も抑止される。そして、低降伏点鋼管に均等な歪みが発生することにより地震時のエネルギーが効率よく吸収されて、二重管の弱点である片側のみの座屈しか阻止されないという欠点は解消される。
さらに、軸力管と補剛管との隙間が最小限になることから、低降伏点鋼管の局部的な座屈を抑えるための隙間調整部材を別途製作しなくても良いため、その分の材料コストが抑えられ、その製作工程を増やすこともない。
そして、請求項2に記載のように、前記軸力管に設けられた長さ調整機構によって軸方向に制震ブレース全体を伸縮させることが可能となるため、建築構造物に制震ブレースを取り付ける際の施行誤差によって生ずる制震ブレースの長さ調整の問題は解決し、作業工程が容易となる。そして、その制震ブレースを建築構造物に接合するための接合部材は、クレビス継手やボルト接合等、種々の部材にも対応できるようになる。
以下に本発明の実施の形態について、図1〜図4を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る三重管制震ブレースの断面構造を示したものである。この制震ブレース10は、軸力管12と、その内側及び外側にそれぞれ配設された補剛管(28、26)とを含むものである。
そして、軸力管12は、一般的な構造用鋼管からなる厚肉管14と、一般的な構造用鋼管14と外径が等しい低降伏点鋼管からなる薄肉管16とを溶接止め18により同軸に接合されたものである。
この場合、厚肉管14としては、例えば、一般的な構造用鋼管「STK400」、「STK490」や建築構造用鋼管「STKN400B」、「STKN490B」などが用いられ、薄肉管16としては、それよりも剛性、耐力の弱い低降伏点鋼管、例えば「LY100」や「LY225」などが一般に用いられる。
軸力管12は、その一方の管端(一般的構造用鋼管14側)が口金22aに溶接止めされ、他方の管端(低降伏点鋼管16側)が口金22bに同じく溶接止め24されている。そして低降伏点鋼管16の外側には該低降伏点鋼管16よりもやや大径の外側補剛管26が軸力管12との間に最小限の隙間で同心的に配設され、その一端が口金22bに溶接止め30されており、さらに該低降伏点鋼管16の内側には該低降伏点鋼管16よりもやや小径の内側補剛管28が同じく軸力管12との間に最小限の隙間で同心的に配設され、その一端が同じくその口金22bに溶接止め32されている。これらの補剛管26,28は軸力管12の一般的構造用鋼管14と同材質の鋼管が一般に用いられている。そして、口金22a,22bの両端にはそれぞれボルト接合部材20a,20bが取付けられている。
図2は、一般的構造用鋼管14と内側補剛管28とのフィンガージョイント構造の一例を示している。一般的構造用鋼管14の端縁軸方向には、櫛歯状のフィンガー部40が延設形成されており、このフィンガー部40は、一般的構造用鋼管14の一端の外側表層を、削りだし等の方法によって管の肉を薄くし、その後、櫛歯状としたものである。
また、内側補剛管28の一端の外側表層は、フィンガー部40の内径よりやや小さい外径になるよう、削りだし等の方法によって管の肉を薄くした挿入部44と、フィンガー部40の外径よりやや小さな外径の軸部48を有する。そして、その軸部48の外側表層には、フィンガー部40の櫛歯が挿入可能になるようスリット溝46が複数形成されている。
この一般的構造用鋼管14を矢印Xの方向に移動させることによってフィンガー部40がスリット溝46に挿入され、フィンガージョイント構造となる。そして、図示しないが、このフィンガー部40から軸部48にかけて、一般的構造用鋼管14の軸部42の外径と同じ外径となる低降伏点鋼管16が配設され、フィンガー部40の根本側と溶接される。このため、低降伏点鋼管16は、フィンガー部40と軸部48によって隙間が最小限となるように配設できる。
更に、一般的構造用鋼管14の軸部42と低降伏点鋼管16の外側を外側補剛管26が覆って配設されるが、一般的構造用鋼管14の軸部42と低降伏点鋼管16とが同じ外径となるよう配設されているため、それらの上を覆って配設される外側補剛管26との隙間が最小限となるように調整できる。
そして図2のように、軸力管12の一般的構造用鋼管14及び低降伏点鋼管16と補剛管(26、28)との隙間が最小限となるよう配設されるため、地震により軸力管12に圧縮及び引張の繰り返し軸力がかかったときにも、その局部座屈が回避されることになる。またこの場合、軸力管や補剛管以外に、これらの間の隙間を埋めるための特別な部材を製作する必要がないため、その分の材料コストを抑え、製作工程を増やすこともない。
図3は、本発明の三重管制震ブレースに、長さ調整機構を取り付けた例を示したものである。図3に示される三重管制震ブレース50は、軸力管部Aと長さ調整管部Bとからなり、軸力管部Aは、図1及び図2に示す構造の三重管制震ブレース10であり、その三重管制震ブレース10の一端が長さ調整管部Bと接合されている。
長さ調整部Bは継手部材52の両端に左右逆ねじ構造をなす雄ねじ軸54a、54bが突設されたものになっている。そして、軸力管部Aの一端及び口金22aには、その内周面に、それぞれ左右逆ねじ構造をなす雌ねじ56a、56bが螺刻され、継手部材52の雄ねじ軸54a、54bとねじを構成し、継手部材52の回動により両側の軸力管部A及びボルト接合部材20aが取り付けられた口金22aが、互いに離隔接近する機構により三重管制震ブレース50全体が伸縮自在に構成されている。そのため建築構造物の枠組みに取付ける際の施工誤差の問題を解決でき、ブレース全体を伸縮させる作業工程が容易となる。
図4は、本発明の制震ブレースが用いられた建築構造物の枠組みに組み込まれた一例を示したものである。この図示の例では、柱62と梁64とからなる架構体(建築構造物)60の一方の片隅とその対角位置の片隅とにそれぞれガセット66a、66bが設けられ、三重管制震ブレース10の両端部がボルト接合部材20a、20bに形成されるボルト穴を介してボルト接合68a、68bによりそれぞれガセット66a、66bに取り付けられる。
そして、このような建築構造物の枠組みに組み込まれている状態において、地震により軸力管12に圧縮及び引張の繰返し軸力が作用した時に、その軸力管12の低降伏点鋼管16が外方へ座屈しようとした場合には外側の補鋼管26によりその座屈が抑止され、低降伏点鋼管16が内方へ座屈しようとした場合には内側の補剛管28によりその座屈が抑止される。
したがって軸力管12の低降伏点鋼管16が外方と内方のいずれの方向へ座屈しようとする場合もその座屈が抑止され、優れたエネルギー吸収効率を示し、建築構造物の柱や梁の破壊が生じることなく、その骨組の安全性が維持されることになる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
本発明に係る三重管制震ブレースは、鉄骨鉄筋コンクリート建築、鉄筋コンクリート建築、鉄骨建築等の各種の建築構造物や、必要によっては土木構造物等にも使用することができる。
本発明の一実施形態に係る三重管制震ブレースの断面構造を示した図である。 図1に示した三重管制震ブレースのフィンガージョイント形状を示した図である。 図1に示した三重管制震ブレースに、長さ調整部材を備えたものの断面構造を示した図である。 図1に示した三重管制震ブレースが適用される建築構造物の一例を示した図である。 従来知られている二重管構造の制震ブレースの一例を示した図である。
符号の説明
10 三重管制震ブレース
12 軸力管
14 一般的構造用鋼管
16 低降伏点鋼管
26 (外側)補剛管
28 (内側)補剛管
22a、22b 口金
40 フィンガー部
46 スリット溝

Claims (2)

  1. 一般的な構造用鋼管と低降伏点鋼管とが同軸に接続される軸力管と、該軸力管の前記低降伏点鋼管側の内側及び外側にそれぞれ前記軸力管の座屈を阻止する補剛管が同心状に配設されている三重管制震ブレースにおいて、前記軸力管の構造用鋼管の端縁に前記櫛歯状のフィンガー部が延設形成され、内側補剛管の外周面に前記フィンガー部が挿入されるスリット溝が形成され、前記フィンガー部と前記スリット溝とのフィンガージョイント構造による軸力管と補剛管との隙間調整がなされてなることを特徴とする三重管制震ブレース。
  2. 前記軸力管には、軸方向への長さ調整機構が設けられていることを特徴とする請求項1の記載に係る三重管制震ブレース。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012013157A (ja) * 2010-07-01 2012-01-19 Ihi Corp 弾塑性ブレースを用いた防震工法及び防震構造
CN111706141A (zh) * 2020-06-05 2020-09-25 重庆大学 一种全装配三段式防屈曲耗能支撑

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