JP2006169911A - 隙間調整部材を有する三重管制震ブレース - Google Patents

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隆 神谷
Takashi Taguchi
孝 田口
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Abstract

【課題】 地震により軸力管に圧縮及び引張の繰返し軸力による応力が作用しても軸力管が全体及び局部的に座屈することのない三重管制震ブレースを提供すること。
【解決手段】一般的な構造用又は建築用の鋼管12とその構造用又は建築用の鋼管12よりも降伏点の低い低降伏点鋼管13とが同軸に接合された軸力管11の前記低降伏点鋼管13側の内側と外側の両方に該低降伏点鋼管13の座屈を阻止する補剛管16,19が少しの間隔をあけて同心状に配設され、かつ該補剛管16,19と前記低降伏点鋼管13との間の隙間には該低降伏点鋼管13の局部的座屈を防止する隙間調整部材26,28が介設されている。
【選択図】図2

Description

本発明は、制震ブレースに関し、更に詳しくは、地震により軸力管に圧縮及び引張の繰返し軸力による応力が作用しても軸力管が全体及び局部的に座屈することのない三重管制震ブレースに関するものである。
従来、地震による軸力管の降伏負荷に対する対策品としては、例えば、特開平11−193570号公報に示されるような二重管構造のものがある。これを図8に示して説明すると、一般的な構造用又は建築用の鋼材からなる厚肉管82とこれよりも降伏点の低い低降伏点鋼材からなる薄肉管84とが同軸に接合された軸力管80の両端に口金88a,88bを介してクレビス継手86a,86bが取付けられ、軸力管80の外側にはその軸力管の座屈を抑止するため全長に亘って同心状に外筒管81が配設され、一方の口金88bに溶接止め83されている。
しかしながら、この公報に示されるものは、地震により軸力管80に応力が作用した時に、軸力管80の薄肉管84が外方へ膨らむ座屈に対しては外筒管81によりその座屈が抑止されるが、内方へ凹む座屈に対しては抑止しようがないという問題がある。しかもその薄肉管84と外筒管81との間には全長に亘って隙間が形成されているため薄肉管84に局部的な座屈が生じたときにこれを回避できないという問題がある。特開平8−68110号公報に示される二重管構造のものも同様である。
又、二重管構造の耐震構造材として、例えば特開2003−34983号公報に示されるように、軸力管の内側に内筒管を設けたものもある。この公報のものでは、軸力管の内方への座屈に対しては内筒管によりその座屈が抑止されるが、今度は逆に外側への座屈に対しては抑止しようがないという問題がある。しかもこの場合にも軸力管と内筒管との間にはやはり全長に亘って隙間が生じているために軸力管の局部的な座屈をその内筒管によっては回避できないことがあるという問題もある。
一方、本願出願人は、先に三重管構造の制震ブレースについて出願している。これは一般的な構造用又は建築用の鋼材の鋼管とその構造用又は建築用の鋼管よりも降伏点の低い低降伏点鋼材の鋼管とが同軸に接合される軸力管の低降伏点鋼管の内側と外側の両方に補剛管が軸力管との間に少しの間隔を置いて同心状になるように配設されたものである。
これによれば、地震により軸力管に圧縮及び引張の繰返し軸力による応力が作用した場合にその軸力管の低降伏点鋼管が内側に座屈しようととすれば、内側の補剛管により座屈が抑止され、外側に座屈しようとすれば、外側の補剛管により座屈が抑止される。しかしながら、このような三重管構造のものであっても、軸力管の低降伏点鋼管と内側、外側の両補剛管の間に全長に亘って隙間が生じているため軸力管の局部的な座屈を回避することができないという問題がある。
特開平11−193570号公報 特開平8−68110号公報 特開2003−34983号公報
本発明が解決しようとする課題は、地震により軸力管に圧縮及び引張の繰り返し軸力による応力が作用しても全体座屈及び局部的座屈することなく十分に塑性変形させるために、軸力管の内側と外側の両方に補剛管を配設し、更にその軸力管と補剛管の隙間に隙間調整部材を介設することでエネルギー吸収能力に優れた三重管制震ブレースを提供することにある。
上記課題を解決するために本発明の三重管制震ブレースは、請求項1に記載のように、一般的な構造用又は建築用の鋼材の鋼管とその構造用又は建築用の鋼管よりも降伏点の低い低降伏点鋼材の鋼管とが同軸に接合された軸力管の前記低降伏点鋼管側の内側と外側の両方に該軸力管の座屈を阻止する補剛管が該軸力管との間に少しの間隔をあけて同心状に配設され、かつ該補剛管と前記低降伏点鋼管との間の隙間には該低降伏点鋼管の局部的座屈を防止する隙間調整部材が介設されていることを要旨とする。
この場合前記隙間調整部材は、請求項2に記載のように、前記軸力管の軸方向にピッチ間隔をもって螺旋状に形成されたコイル形状のものであると良い。
本発明の請求項1に記載の三重管制震ブレースによれば、軸力管の低降伏点鋼管の内側と外側の両方に補剛管を配設した三重管構造となっているため軸力管の座屈が内側あるいは外側のいずれに生じても内側か外側のいずれかの補剛管によって全体的な座屈が抑止されるばかりではなく、更に軸力管と補剛管の隙間には隙間調整部材が介設されているため局部的な座屈も抑止され、低降伏点鋼管に均等な歪みが発生することにより地震時のエネルギーが効率よく吸収されて、二重管の弱点である片側のみの座屈が阻止されるという欠点は解消される。したがってこのような三重管構造の制震ブレースに適用することはより効率的なものである。
そしてこの場合に請求項2に記載のように、隙間調整部材が軸力管の軸方向にピッチ間隔をもって螺旋状に形成されたコイル形状のものであれば、軸力管と補剛管との隙間に応じた厚みに加工することが可能であり、市場に出まわる鋼管の規格に合わせ隙間調整をすることが可能である。又、コイル形状であるため、軸力管である低降伏点鋼管の軸方向の変形を妨げることもない。
以下に本発明の一実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。初めに図1〜図5は本発明が三重管構造の制震ブレースに適用された例を示したものである。図1はその三重管制震ブレースの外観図であり、図2はその三重管制震ブレースの要部を断面で示したものである。
この図1〜図5に示した三重管制震ブレース10は、主構造材である軸力管11が一般的な構造用又は建築用の鋼材の鋼管12とその構造用又は建築用の鋼管よりも降伏点強度の低い低降伏点鋼材の鋼管13とを溶接止め15により同軸に接合され、その両端には口金14a,14bを介してそれぞれ複数のボルト穴が列設されるボルト接合部材18a,18bが取り付けられている。この場合構造用又は建築用の鋼管12の材料としては、一般的な構造用又は建築用の鋼材、例えば設計基準強度が235,325,355,385,440(N/mm)のような鋼材が用いられ、低降伏点鋼管13の鋼材としては、それよりも剛性、耐力の弱い極低降伏点材料、例えば設計基準強度が80,100,120,160,225(N/mm)のような鋼材が用いられる。
この軸力管11は、その一方の管端(構造用又は建築用の鋼管12側)が口金14aに溶接止め17aされ、他方の管端(低降伏点鋼管13側)が口金14bに同じく溶接止め17bされている。そして低降伏点鋼管13の外側にはやや大径の補剛管16が少し間隔があくように同心的に配設され、その一端が口金14bに溶接止め22されており、更に低降伏点鋼管13の内側にはやや小径の補剛管19が同じく少し間隔があくように同心的に配設され、その一端が同じくその口金14bに溶接止め24されている。又、外側と内側の両補剛管16,19と軸力管11の隙間にはそれぞれ構造用又は建築用の鋼管12と同材質の隙間調整部材26,28が介設されている。
図3の(a)は、図2に示した三重管制震ブレース10の内側補剛管19の外側に周設される隙間調整部材28を示したものであり、(b)は外側補剛管16の内側に周設される隙間調整部材26を示した図である。図3(a)の隙間調整部材28は、軸力管11の低降伏点鋼管13と内側補剛管19との隙間に軸方向にピッチ間隔をもって螺旋状に形成されたコイル形状のものであり、この隙間調整部材28は内側補剛管19の外周面に沿って螺旋状に介設されている。
又、図3(b)の隙間調整部材26は、軸力管11の低降伏点鋼管13と外側補剛管16との隙間にやはり軸方向にピッチ間隔をもって螺旋状に形成されたコイル形状のものであり、この隙間調整部材26は低降伏点鋼管13の外周面に沿って螺旋状に介設されている。隙間調整部材26,28は低降伏点鋼管13と両補剛管16,19の隙間に合わせて厚みを調整することが可能である。又、両隙間調整部材26,28は軸力管11の軸方向にピッチ間隔を持って低降伏点鋼管13の内外周面に周設されているので軸力管11に地震時の圧縮及び引張の繰返し軸力による応力が作用した時、低降伏点鋼管13の軸方向の変形を妨げることなく、低降伏点鋼管13の局部的な座屈はその低降伏点鋼管13の内外周面に周設される隙間調整部材26,28によって回避される。
図4は、図3(a),(b)に示した隙間調整部材26,28の一実施形態としての外観形態を示したものである。隙間調整部材26,28は低降伏点鋼管13よりも耐力の大きい一般的な構造用又は建築用の鋼管と同材質のものが使用され、(a)は断面板状の金属テープをピッチ間隔を持たせて螺旋状(コイル形状)に形成したもので、(b)は丸鋼にピッチ間隔を持たせてやはり螺旋状(コイル形状)に形成したものである。このように加工が容易なものであれば、断面形状にこだわるものではない。
図5は、図1に示した三重管制震ブレース10が建築構造物に適用された状態を一例として示したものである。この実施例では、架構体(建築構造物)30の一方の片隅とその対角位置の片隅とにそれぞれガセット32a,32bが設けられ、両ガセット32a,32b間に三重管制震ブレース10の両端部に設けられたボルト接合部材18a,18bに形成されるボルト穴を介してボルト接合33a,33bによりそれぞれガセット32a,32bに取り付けられている。
そしてこのような建築構造物において大きな地震が発生した時にその架構体が変形して三重管制震ブレース10に圧縮や引張応力がその軸力管11の軸方向に印加されるが、その時に軸力管11の主に低降伏点鋼管13に座屈する程の応力が作用してもその内側と外側とにそれぞれ補剛管16,19が配管されているためにその全体的な座屈が阻止されることとなり、又その低降伏点鋼管13の局部的な座屈が生じようとしてもそれは、その低降伏点鋼管13と内外の補剛管16,19との間に介在される隙間調整部材26,28によって局部的な座屈も阻止されることになる。
図6は本発明の他の実施形態としての三重管構造で伸縮自在な制震ブレースに適用した例を示したものである。図6に示される三重管制震ブレース31は、軸力管部Aと長さ調整管部Bとからなり、軸力管部Aには一般的な構造用又は建築用の鋼管12と低降伏点鋼管13とが同軸に溶接接合15されており、低降伏点鋼管13の内側と外側の両方に低降伏点鋼管13の座屈を阻止する補剛管16,19を備え、軸力管11と両補剛管16,19の隙間部には隙間調整部材26,28が介設されている。そのため上記実施例と同様に地震時の全体座屈や局部的座屈を防ぐことができる。
又、長さ調整部Bは継手部材36の両端内周面に左右逆ねじ構造をなす雌ねじ33a,33bが螺刻され、継手管36の両管端にはねじ部材38a,38bが設けられており、両ねじ部材38a,38bにはそれぞれ逆ねじ構造をなす雄ねじ軸34a,34bが突設され、継手部材36の回動により両側のねじ部材38a,38bが互いに離隔接近する機構により三重管制震ブレース40全体が伸縮自在に構成されている。そのため建築構造物の枠組みに取付ける際の施工誤差の問題を解決でき、ブレース全体を伸縮させる方法に比べ作業工程が容易となる。
図7は本発明の更に他の実施形態としてクレビス継手のものを示したものである。この三重管制震ブレース40は、上記の実施例と同様に一般的な構造用又は建築用の鋼管12と低降伏点鋼管13とが同軸に溶接接合15され、主構造材である軸力管11の両端に口金42a,42bを介してクレビス継手44a,44bが取付けられると共に、低降伏点鋼管13の内側と外側の両方に座屈を阻止する補剛管16,19を備え、その低降伏点鋼管13と両補剛管16,19の隙間部には隙間調整部材26,28が介設されている。又、この三重管制震ブレース40は、両端部のクレビス継手44a,44bに形成されるピンジョイントの穴46a,46bを介してピン接合によりガセットに取り付けられる。
このように本発明の三重管制震ブレース10を図6のように適用すると、建築構造物30の枠組みに簡単に取付けることができ、三重管制震ブレース10の全体を伸縮させるので、三重管制震ブレース10と枠組み構造を接合する接合部材は、図7に示すように、ピン接合の形態をなすクレビス継手やボルト接合等にも対応でき施工誤差による長さ調整を簡単に解決することができる。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の改変が可能であることは勿論である。例えば、軸力管の低降伏点鋼管の内側あるいは外側の補剛管との間に介在される隙間調整部材の材質や断面形態は実施例のものに限られるものではなく、又コイル状でなくても要は軸方向に伸縮機能を持たせたものであれば良いことは容易に推察される。
本発明に係る三重管制震ブレースは、鉄骨鉄筋コンクリート建築、鉄筋コンクリート建築、鉄骨建築等の各種の建築構造物や、必要によっては土木構造物等にも使用することができる。
本発明の一実施形態に係る三重管構造の制震ブレースの外観図である。 図1に示した三重管制震ブレースの要部を断面で示した図である。 (a)は、図2に示した三重管制震ブレースの内側補剛管の外側に周設される隙間調整部材を示した図であり、(b)は外側補剛管の内側に周設される隙間調整部材を示した図である。 図3(a),(b)に示した隙間調整部材の断面形態を示した図であり、(a)は断面板状のもの、(b)は断面丸形状のものである。 図1に示した三重管制震ブレースが建築構造物に適用された状態を一例として示した図である。 更に本発明の他の実施形態としての伸縮自在な三重管制震ブレースに適用した例を示したものである。 本発明の更に他の実施形態としてクレビス継手のものを示した図である。 従来一般に知られている二重管構造の制震ブレースの一例を示した図である。
符号の説明
10 三重管制震ブレース
11 軸力管
12 一般的な構造用又は建築用の鋼管
13 低降伏点鋼管
16 外側補剛管
19 内側補剛管
26,28 隙間調整部材
31,40 三重管制震ブレース

Claims (2)

  1. 一般的な構造用又は建築用の鋼材の鋼管とその構造用又は建築用の鋼管よりも降伏点の低い低降伏点鋼材の鋼管とが同軸に接合された軸力管の前記低降伏点鋼管側の内側と外側の両方に該軸力管の座屈を阻止する補剛管が該軸力管との間に少しの間隔をあけて同心状に配設され、かつ該補剛管と前記低降伏点鋼管との間の隙間には該低降伏点鋼管の局部的座屈を防止する隙間調整部材が介設されていることを特徴とする三重管制震ブレース。
  2. 前記隙間調整部材は、前記軸力管の軸方向にピッチ間隔をもって螺旋状に形成されたコイル形状のものであることを特徴とする請求項1に記載の三重管制震ブレース。
















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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN104278770A (zh) * 2014-10-27 2015-01-14 沈阳建筑大学 屈曲防屈曲耗能支撑
CN104674971A (zh) * 2015-02-10 2015-06-03 中国电子工程设计院 一种三重圆钢管自复位防屈曲支撑
CN106088768A (zh) * 2016-07-27 2016-11-09 山东大学 一种具有环向预应力的防屈曲支撑、方法及应用

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