JP2006295768A - ボイスコイルボビン、および、スピーカ装置 - Google Patents

ボイスコイルボビン、および、スピーカ装置 Download PDF

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聡 八矢
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Abstract

【課題】良好な音質特性が得られるボイスコイルボビンを提供する。
【解決手段】周囲に巻かれたボイスコイル600からの駆動力を受けて振動板400に当該駆動力を伝達するボイスコイルボビン500を、平面に対して略平行で異なる4方向に軸方向が沿う線状部材を有した基材にて形成している。このため、基材における伸縮性や強度の特異的な方向性がなくなり、繊維自体の強度を特に高めなくても実質的にボイスコイルボビン500の強度を向上できる。ボイスコイルボビン500が径方向に撓むことを防ぐことができ、スピーカ装置100の良好な音質特性を得ることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、周囲に巻かれたボイスコイルからの駆動力を受けて振動板に当該駆動力を伝達するボイスコイルボビン、および、スピーカ装置に関する。
従来、スピーカ装置において、周囲に巻かれたボイスコイルからの駆動力を受けて振動板に当該駆動力を伝達するボイスコイルボビンが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載のボイスコイルボビンは、ガラス繊維からなる縦繊維と横繊維とを織り込んだクロス材にて、円筒状に形成されている。このボイスコイルボビンは、円筒状の周囲に巻かれたボイスコイルからの円筒軸と同方向の駆動力を受けて、その駆動力を振動板に伝達する。そして、縦繊維または横繊維は、駆動力の方向に対して45度の配置角度で設けられる構成が採られている。
このため、ボイスコイルからの駆動力およびボイスコイル自体の自重が、縦繊維と横繊維との両方に分散されて作用することになり、繊維自体の強度を特に高めなくても実質的にボイスコイルボビンの強度を向上させたことになり、重量またはコストに影響なくボイスコイルボビンに必要な機械的強度を確保することができる。
特開2004−120665号公報(第3頁−第4頁、図2参照)
しかしながら、上記特許文献1に記載のような構成では、縦繊維または横繊維を円筒軸に対して45度の配置角度とすることから、特異的な方向性が生じ、当該ボイスコイルボビンをスピーカ装置に用いた際、スピーカ動作時にボイスコイルボビンが径方向に撓んでしまうおそれがある。このことにより、ボイスコイルボビンがボイスコイルからの駆動力を振動板に好適に伝達することができず、スピーカ装置の良好な音質特性が得られなくなるおそれがあるなどの問題が一例として挙げられる。
本発明は、上述したような実情などに鑑みて、良好な音質特性が得られるボイスコイルボビン、および、スピーカ装置を提供することを1つの目的とする。
請求項1に記載の発明は、周囲に巻かれたボイスコイルからの駆動力を受けて振動板に当該駆動力を伝達するボイスコイルボビンであって、略薄膜状に形成され平面に対して略平行で異なる4方向に軸方向が沿う線状部材を有した基材を備えたことを特徴としたボイスコイルボビンである。
請求項2に記載の発明は、周囲に巻かれたボイスコイルからの駆動力を受けて振動板に当該駆動力を伝達するボイスコイルボビンであって、略薄膜状に形成され平面に対して略平行で異なる4方向に軸方向が沿う線状部材を有した基材にて形成されたことを特徴としたボイスコイルボビンである。
請求項6に記載の発明は、振動板と、この振動板に取り付けられた請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のボイスコイルボビンと、磁性体と、前記振動板および前記ボイスコイルボビンを保持し前記磁性体とにより磁気回路を形成するヨークを備えたフレームと、を具備したことを特徴としたスピーカ装置である。
以下に、本発明の一実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態では、コーン型のスピーカ装置について例示するが、この限りではない。図1は、本発明における一実施の形態に係るスピーカ装置を示す断面図である。図2は、スピーカ装置のボイスコイルボビンを示す斜視図である。図3は、ボイスコイルボビンの基材の織り組織を示す平面図である。図4は、図3におけるI−I線に沿った基材の織り組織の断面図である。
図1において、100はスピーカ装置で、このスピーカ装置100は、電気的に接続される再生装置(図示せず)からの電気信号である音声データを発音により出力する。このスピーカ装置100は、フレーム200と、磁石300と、振動板400と、ボイスコイルボビン500と、ボイスコイル600と、ダンパ700とを備えている。
フレーム200は、例えば硬質の合成樹脂やアルミニウム合金などの軽量金属材料などにて形成されている。そして、フレーム200は、一面側に向けて拡開する略凹状の本体部210と、この本体部210に一体的に設けられた磁気回路部220と、を備えている。
本体部210は、底部211と、取付段差部212と、架橋部213と、天板部214と、図示しないターミナルと、を備えている。底部211は、略円盤状に形成され、その中央に円形の開口211Aが穿設されている。取付段差部212は、略リング状に形成されたブロック部材であり、底部211上面の外周端側に設けられる。架橋部213は、底部211の外周縁側から略放射状に延出し、先端側で互いに拡開する状態に複数一連に設けられている。天板部214は、中央部が大きく開口された略リング状に形成され、内周端側に架橋部213の先端部が一体的に連結されている。ターミナルは、電気信号の音声データが入力される端子を有しており、例えば架橋部213などに取り付けられている。
磁気回路部220は、上プレート221と、下ヨーク222と、を備えている。上プレート221は、磁性材料にて略リング状に形成されている。この上プレート221は、例えば接着剤などにて本体部210の底部211の下面に、内周が底部211の開口211Aと同軸上となる状態に一体的に取り付けられる。下ヨーク222は、例えば上プレート221と同材質にて形成され、板部222Aと、突起部222Bと、などを備えている。板部222Aは、略円板状に形成されている。突起部222Bは、略円柱状に形成され、板部222Aの一面側の略中央に一体的に設けられる。
磁石300は、略リング状に形成され、軸方向の両端面に磁極面が形成されている。そして、磁石300は、上プレート221と下ヨーク222の板部222Aとの間に挾持される状態で、例えば接着剤などにて取り付けられている。この取り付けられた状態は、磁石300の内周側に下ヨーク222の突起部222Bが略同軸上に貫通する状態となっている。この磁石300の取り付けにより、下ヨーク222の突起部222Bの外周面と上プレート221の内周面とが異なる磁極で対向する状態となって磁気ギャップが形成される。
振動板400は、例えば表面が防触処理されたマグネシウム薄板やコーン紙、各種繊維のシート部材などにて略薄膜状に形成されている。この振動板400は、振動部410と、エッジ部420と、鍔部430とを備えている。振動部410は、略円形の裁頭形状(コーン形状)に形成されている。この振動部410の径小となる側の略中央には円状の中央孔411が形成されている。エッジ部420は、振動部410の拡開する端部側が径方向外側に突出する状態に設けられ、平面視において略リング状で、かつ断面が略U字状に屈曲して形成されている。鍔部430は、エッジ部420の外周縁から外方に向けて鍔状に突出して形成されている。そして、この鍔部430は、天板部214上面の内周側に例えば接着剤にて取り付けられ、フレーム200に支持される。なお、エッジ部420および鍔部430を別部材として、振動部410の外周縁近傍に接着剤などにより取り付けて一連に振動板400を構成してもよい。
ボイスコイルボビン500は、図2に示すように、略薄膜状に形成された後述する基材510にて、振動板400の中央孔411の内径と略同寸法の外径を有した円筒状に形成されている。このボイスコイルボビン500の外周面における軸方向一端側は、例えば接着剤などにて振動板400における中央孔411の内周側に一体的に取り付けられている。また、ボイスコイルボビン500における当該軸方向一端には、その端面を閉塞する球面ドーム状のダストキャップ520が、例えば接着剤にて接着されて一体的に設けられている。なお、ボイスコイルボビン500は、例えばポリイミド樹脂などの熱可塑性樹脂が含浸されて基材510を加熱プレス成形したり、加熱プレスにより基材510を構成する材質が熱硬化されて所定の形状に成形したり、加熱プレスにより基材510を構成する部材を熱軟化させて所定の形状に形成しつつ冷却して成形したりするなど、いずれの方法を適用して成形することができる。
ボイスコイル600は、図2に示すように、銅などの導電性を有した材料からなる線材であり、ボイスコイルボビン500の外周面における開口端側に巻装されている。このボイスコイル600の巻装状態は、例えば接着剤等にて固定されている。また、ボイスコイル600は、振動板400がフレーム200に取り付けられた状態で、例えばリング状の上プレート221の内周側に形成される磁気ギャップ内に位置する状態に巻装される。そして、ボイスコイル600の両端部610が引き出され、フレーム200に設けられた図示しないターミナルの端子に接続されて音声信号が入力される。
ダンパ700は、例えば綿などに樹脂を含浸し加熱成形することにより同心円状に拡がった波型に形成された、いわゆるコルゲーションダンパであり、取付段差部212の内径寸法よりも若干大きな外径寸法を有した略円盤状に形成されている。このダンパ700の外周端部側は、例えば接着剤などにて取付段差部212上に取り付けられる。また、ダンパ700の中央部には円状の貫通孔710が形成されている。この貫通孔710の内周縁部には、ボイスコイルボビン500の外周面における閉塞端部側が、例えば接着剤などにて取り付けられている。なお、この貫通孔710と、本体部210における開口211Aと、磁気回路部220と、磁石300と、振動板400の中央孔411と、ボイスコイルボビン500と、ボイスコイル600のそれぞれにおける中心軸は、すべて同一軸上に形成されている。
ここで、ボイスコイルボビン500を構成する基材510は、例えば図3および図4に示すように、異なる4方向に軸方向が沿う線状部材としての、緯糸群511と、表斜め糸群512と、裏斜め糸群513と、経糸群514と、で織られたいわゆる4軸織物として構成されている。すなわち、この基材510は、表斜め糸群512、緯糸群511および裏斜め糸群513の軸方向が、経糸群514の軸方向に対してそれぞれ約45°、約90°、約135°の角度をなす状態にそれぞれ配設されて構成されている。そして、緯糸群511、表斜め糸群512、裏斜め糸群513、および経糸群514は、例えば綿、麻などの天然繊維、綿およびアラミド繊維の混紡や綿およびポリエステルの混紡などの合成繊維、アラミド繊維、カーボン繊維、液晶繊維、PBO(ポリパラフェニレン・ベンゾビス・オキサゾール)繊維、ガラス繊維などにて形成されている。なお、これらの部材に限らず、いずれの線状部材が適用できる。また、緯糸群511、表斜め糸群512、裏斜め糸群513、および経糸群514の各部材を同一としても、あるいは、それぞれ異なる部材としてもよい。また、例えば1本の線状部材にて異なる4方向に軸方向が沿う状態に織られた構成など、4軸の線状部材にて織られた構成に限らず、軸方向が4方向に沿う状態に配置されたいずれの構成が適用できる。
そして、緯糸群511は、例えば図4に示すように、基材510の厚さ方向略中央に配設されている。この緯糸群511は、それぞれ複数の第1の緯糸511Aおよび第1の緯糸511Bを備えている。なお、説明の都合上、第1の緯糸511Aおよび第1の緯糸511Bの2種で説明するが、同一の部材でよく、また第3の緯糸を用いるなど、3種以上で緯糸群511を構成してもよい。ここで、第1の緯糸511Aおよび第1の緯糸511Bの使用糸の太さとしては、33dtex以上5010dtex以下とすることが好ましい。そして、第1の緯糸511Aおよび第1の緯糸511Bが、本発明の第2の線状部材に対応している。そして、第1の緯糸511Aおよび第1の緯糸511Bは、例えば図3に示すように、ボイスコイルボビン500の表面に沿った方向(以下、面方向と称す)に間隔Aで交互に配設されている。ここで、間隔Aとしては、1.6mm以上3.5mm以下とすることが望ましい。
表斜め糸群512は、緯糸群511の上側に配設されている。この表斜め糸群512は、例えば第1の緯糸511Aと同様の材料にて糸状に形状された複数の第1の線状部材としての表斜め糸512Aを備えている。なお、表斜め糸群512としては、表斜め糸512Aの1種のみに限らず、第2の表斜め糸を用いるなど、複数種以上で構成してもよい。ここで、表斜め糸512Aの使用糸の太さとしては、第1の緯糸511Aおよび第1の緯糸511Bと同様に、33dtex以上5010dtex以下とすることが好ましい。そして、これら表斜め糸512Aは、ボイスコイルボビン500の面方向に間隔Aよりも広い間隔Bで第1の緯糸511Aとのなす角度が約45°となる状態に配設されている。ここで、間隔Bとしては、間隔Aよりも狭い1.3mm以上2.48mm以下とすることが好ましい。
裏斜め糸群513は、緯糸群511の下側に配設されている。この裏斜め糸群513は、例えば第1の緯糸511Aと同様の材料にて糸状に形状された複数の第3の線状部材としての裏斜め糸513Aを備えている。なお、裏斜め糸群513としては、裏斜め糸513Aの1種のみに限らず、第2の裏斜め糸を用いるなど、複数種以上で構成してもよい。ここで、裏斜め糸513Aの使用糸の太さとしては、緯糸群511および表斜め糸群512と同様に、33dtex以上5010dtex以下とすることが好ましい。そして、これら裏斜め糸513Aは、ボイスコイルボビン500の面方向に間隔Bで表斜め糸512Aと略直交する状態に配設されている。
経糸群514は、例えば第1の緯糸511Aと同様の材料にて糸状に形状されたそれぞれ複数の第1の経糸514Aおよび第2の経糸514Bを備えている。なお、説明の都合上、第1の経糸514Aおよび第2の経糸514Bの2種で説明するが、同一の部材でよく、また第3の緯糸を用いるなど、3種以上で経糸群514を構成してもよい。ここで、第1の経糸514Aおよび第2の経糸514Bの使用糸の太さとしては、緯糸群511、表斜め糸群512および裏斜め糸群513と同様に、33dtex以上5010dtexとすることが好ましい。なお、第1の経糸514Aおよび第2の経糸514Bが本発明の第4の線状部材に対応している。第1の経糸514Aおよび第2の経糸514Bは、ボイスコイルボビン500の面方向に間隔Aで交互に、かつ、第1の緯糸511Aと略直交する状態に配設されている。また、第1の経糸514Aは、第1の緯糸511Aの下側および表斜め糸512Aの上側を交互に通過する状態に設けられている。第2の経糸514Bは、第1の緯糸511Aの上側および裏斜め糸513Aの下側を交互に通過する状態に設けられている。すなわち、第1の経糸514Aおよび第2の経糸514Bは、基材510の表裏の組織が同一の織り組織となる状態に設けられている。
なお、図3では、説明の都合上、表斜め糸512Aが第1の緯糸511Aおよび第1の緯糸511Bから離隔している状態を図示しているが、基材510がボイスコイルボビン500に設けられる場合、基材510は、第1の経糸514Aおよび第2の経糸514Bの図示しない両端が左右方向に引っ張られた状態でボイスコイルボビン500に設けられる。このため、表斜め糸512Aは、第1の経糸514Aに加え、第1の緯糸511A、第1の緯糸511B、裏斜め糸513Aにも接触する状態となる。また、裏斜め糸513Aは、第2の経糸514Bに加え、第1の緯糸511A、第1の緯糸511B、表斜め糸512Aにも接触する状態となる。
〔スピーカ装置の動作〕
次に、上記スピーカ装置100の動作について説明する。
上記スピーカ装置100が完成された状態において、振動板400と、ボイスコイルボビン500と、ボイスコイル600とは、フレーム200およびダンパ700にて軸方向に振動可能に弾性支持された状態となっている。すなわち、フレーム200の天板部214上面の内周側には、振動板400の鍔部430が取り付けられている。そして、振動板400の中央孔411の内周側には、ボイスコイルボビン500の外周面における軸方向一端側が一体的に取り付けられている。さらに、当該ボイスコイルボビン500の外周面における軸方向一端側には、ダンパ700における貫通孔710の内周面が取り付けられている。そして、ダンパ700の外周端部側は、フレーム200における取付段差部212上に取り付けられている。この状態において、ボイスコイル600は、磁石300および磁気回路部220にて構成される磁気回路の磁気ギャップ内に位置している。
ここで、本体部210のターミナルより電気信号の音声データが入力されると、ボイスコイル600に電圧が印加され、磁石300および磁気回路部220にて構成される磁気回路の磁気ギャップの作用によりボイスコイル600が軸方向に振動する。そして、ボイスコイル600の駆動力を受けて、振動板400、ボイスコイルボビン500およびダンパ700が軸方向に振動し、振動板400より音声が出力される。
この際、ボイスコイルボビン500には、ボイスコイル600からの駆動力およびボイスコイル600自体の自重が、基材510における緯糸群511と、表斜め糸群512と、裏斜め糸群513と、経糸群514とにそれぞれ分散されて作用することになる。特に、斜め糸群512、緯糸群511および裏斜め糸群513の軸方向が、経糸群514の軸方向に対してそれぞれ約45°、約90°、約135°の角度をなす状態にそれぞれ配設されているので、各繊維へ作用する張力は均等に分散されることになる。
これにより、振幅伝播時の作用力が各軸方向に大きく傾斜することがなくなる。また、各軸の交差する位置では、4本の繊維が絡んで、交差部における繊維相互の結合力が強まるため、軸方向に傾斜して張力が作用した場合でも、作用した張力は各繊維の交差部で軸方向に分散して各繊維に軸方向力として吸収され易くなる。このため、基材510における伸縮性や強度の特異的な方向性がなくなり、繊維自体の強度を特に高めなくても実質的にボイスコイルボビン500の強度が向上する。そして、ボイスコイルボビン500は、径方向に対しても高い剛性を有することになり、ボイスコイルボビン500が径方向に撓むことがなくなる。これにより、ボイスコイルボビン500が円筒軸に対して傾斜して移動するいわゆるローリングが生じることなく、良好に軸方向に沿って移動する状態が得られ、ボイスコイル600の軸方向に沿った駆動力が振動板400に確実に伝達される。
〔スピーカ装置の作用効果〕
上述したように、上記実施の形態では、周囲に巻かれたボイスコイル600からの駆動力を受けて振動板400に当該駆動力を伝達するボイスコイルボビン500を、平面に対して略平行で異なる4方向に軸方向が沿う線状部材、すなわち緯糸群511と、表斜め糸群512と、裏斜め糸群513と、経糸群514とを有した基材510にて形成している。このため、当該ボイスコイルボビン500をスピーカ装置100に用いた際、スピーカ装置100の動作時にボイスコイル600からの駆動力およびボイスコイル600自体の自重が、基材510における緯糸群511と、表斜め糸群512と、裏斜め糸群513と、経糸群514とにそれぞれ分散されて作用することになる。これにより、基材510における伸縮性や強度の特異的な方向性がなくなり、繊維自体の強度を特に高めなくても実質的にボイスコイルボビン500の強度が向上する。そして、ボイスコイルボビン500は、径方向に対しても高い剛性を有することになり、ボイスコイルボビン500が径方向に撓むことを防ぐことができる。このことより、ボイスコイルボビン500が軸方向に沿って良好に移動する状態が得られ、ボイスコイル600の軸方向に沿った駆動力を振動板400に確実に伝達することができる。したがって、スピーカ装置100の良好な音質特性を得ることができる。
そして、4つの緯糸群511と、表斜め糸群512と、裏斜め糸群513と、経糸群514とにて基材510を形成している。このため、例えば4方向で引張強度がほぼ同等となる基材510を容易に形成できる。さらに、緯糸群511と、表斜め糸群512と、裏斜め糸群513と、経糸群514とをそれぞれ同一材料にて形成することで、より強度バランスが均一化した状態が容易に得られる。さらに、これら緯糸群511、表斜め糸群512、裏斜め糸群513、および経糸群514を織り込んだ織布として基材510を構成している。このため、緯糸群511と、表斜め糸群512と、裏斜め糸群513と、経糸群514とがそれぞれ他の線状部材と干渉する状態となり、織り込まない不織布に比して、各線状部材の不要振動を抑制できる。また、従来の3軸織物の場合に比して、線状部材同士の接触する接触点が増大するので、各線状部材の不要振動を抑制できる。したがって、ボイスコイルボビン500が径方向に撓むことを防ぐことができ、良好な音質特性を得ることができる。
また、表斜め糸512Aを第1の経糸514Aに対して約45°をなす状態に、第1の緯糸511Aを第1の経糸514Aに対して約90°をなす状態に、裏斜め糸513Aを第1の経糸514Aに対して約135°をなす状態に、それぞれ配設している。このため、引っ張り強度が略同一になる方向を約45°毎に、すなわち略同一角度毎に設定できる。したがって、引張強度が略同一となる方向が略同一角度毎とならない構成、例えば表斜め糸512Aを第1の経糸514Aに対して約30°、第1の緯糸511Aを第1の経糸514Aに対して約90°、裏斜め糸513Aを第1の経糸514Aに対して約150°、とそれぞれなす状態に配設する構成と比べて、ボイスコイルボビン500の変形状態の差異を小さくできる。すなわち、ボイスコイルボビン500の引張強度が径方向でより均一化する状態となる。したがって、ボイスコイルボビン500が径方向に撓むことを防ぐことができ、良好な音質特性を得ることができる。
そして、基材510を、第1の経糸514Aおよび第2の経糸514Bにより表裏の組織が同一の織り組織となる状態に構成している。このため、例えばボイスコイルボビン500の製造工程において、表裏を気にすることなく基材510を取り扱うことができる。したがって、ボイスコイルボビン500を容易に製造できる。
〔実施の形態の変形〕
なお、本発明は、上述した各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で以下に示される変形をも含むものである。
すなわち、本発明のボイスコイルボビン500を、コーン形状の振動板400を備えたコーン型のスピーカ装置100に適用した構成ついて説明したが、例えばホーン型などのスピーカ装置など、いずれの形状の振動板を備えたスピーカ装置に適用することができる。
そして、ボイスコイルボビン500の外周面における軸方向一端側を、振動板400における中央孔411の内周側に一体的に取り付ける構成について説明したが、これに限らない。すなわち、例えば、ボイスコイルボビン500および振動板400を一体的に形成する、つまり、振動部410の中央孔411から円筒状に突出形成した部分に、基材510を積層する状態に貼り合わせたものをボイスコイルボビン500とする構成としてもよい。このような構成にしても、上記実施の形態と同様の作用効果を奏する、すなわち、ボイスコイルボビン500が径方向に撓むことを防ぐことができ、良好な音質特性を得ることができる。
さらに、基材510のみからなる一層構造のボイスコイルボビン500を例示したが、これに限らない。すなわち、例えば、ボイスコイルボビンを、基材510と、アルミニウムやチタンなどの薄い箔やプラスチックシートなどとを組み合わせた2層構造としてもよい。このような構成にしても、上記実施の形態と同様の作用効果を奏する、すなわち、ボイスコイルボビン500が径方向に撓むことを防ぐことができる。
また、基材510として、緯糸群511、表斜め糸群512、裏斜め糸群513、経糸群514を引っ張り強度が略同一となる方向が略同一角度毎とならない状態に配設する構成としてもよい。例えば表斜め糸512Aを第1の経糸514Aに対して約30°を、第1の緯糸511Aを第1の経糸514Aに対して約90°を、裏斜め糸513Aを第1の経糸514Aに対して約150°を、それぞれなす状態に配設する構成としてもよい。このような構成にしても、従来の3軸織物を利用する構成と比べて基材510における引張強度の均一化が得られ、ボイスコイルボビン500が径方向に撓むことを防ぐことができる。
さらに、基材510を4軸織物として構成せずに、例えば緯糸群511、表斜め糸群512、裏斜め糸群513、経糸群514を層状に順次配置したいわゆる4軸組布として構成してもよい。このような構成にすれば、基材510を織る処理を実施する必要がなく、基材を容易に製造できる。また、このような構成において、緯糸群511、表斜め糸群512、裏斜め糸群513、経糸群514を接着剤などで接着固定したり、互いを熱圧着したりする構成とすれば、各線状部材がバラバラとならず、基材を容易に取り扱うことができる。
そして、例えば第1の経糸514Aや第2の経糸514Bを第1の緯糸511Aのみに絡めた状態に設けた構成について例示したが、第1の緯糸511Bにも絡めて基材510の表裏の組織が同一の織り組織となる状態に設ける構成としてもよい。具体的には、第1の経糸514Aを第1の緯糸511Aの下側、表斜め糸512Aの上側、第1の緯糸511Bの下側、表斜め糸512Aの上側を交互に通過する状態に、第2の経糸514Bを第1の緯糸511Aの上側、裏斜め糸513Aの下側、第1の緯糸511Bの上側、裏斜め糸513Aの下側を交互に通過する状態に織り込んだ構成としてもよい。このような構成にしても、上記実施の形態と同様の作用効果を奏する、すなわち、ボイスコイルボビン500が径方向に撓むことを防ぐことができる。
また、基材510に代えて、例えば図5に示すような表裏の組織が同一の織り組織となる基材530を用いる構成としてもよい。この基材530において、第1の経糸514Aは、第1の緯糸511Aおよび第1の緯糸511Bの下側、表斜め糸512Aの上側を交互に通過する状態に設けられている。また、第2の経糸514Bは、第1の緯糸511Bおよび第1の緯糸511Aの上側、裏斜め糸513Aの下側を交互に通過する状態に織り込み形成している。このような構成にしても、上記実施の形態と同様の作用効果を奏する、すなわち、ボイスコイルボビン500が径方向に撓むことを防ぐことができる。
さらに、基材510に代えて、例えば図6に示すような表裏の組織が同一の織り組織となる基材540を用いる構成としてもよい。この基材540は、緯糸群511と、表斜め糸群512と、裏斜め糸群513と、第4の線状部材としての経糸群541と、を備えている。第1の緯糸511Aは、基材540の厚さ方向上側に配設されている。第1の緯糸511Bは、基材540の厚さ方向下側に配設されている。また、表斜め糸512Aは、第1の緯糸511Aの下側に配設されている。裏斜め糸513Aは、第1の緯糸511Bの上側かつ表斜め糸512Aの下側に配設されている。経糸群541は、所定間隔で第1の緯糸511Aおよび第1の緯糸511Bと略直交する状態に配設された複数の第4の線状部材としての経糸541Aを備えている。そして、経糸541Aは、第1の緯糸511Aおよび表斜め糸512Aの上側、第1の緯糸511Bおよび裏斜め糸513Aの下側を交互に通過する状態に設けられている。このような構成にしても、上記実施の形態と同様の作用効果を奏する、すなわち、ボイスコイルボビン500が径方向に撓むことを防ぐことができる。
また、基材510に代えて、例えば図7および図8に示すような表裏の組織が同一の織り組織となる基材550を用いる構成としてもよい。ここで、図8は、図7のII−II線に沿った基材の織り組織の断面図である。この基材550は、緯糸群511と、表斜め糸群551と、裏斜め糸群552と、経糸群514と、で織られたいわゆる4軸織物として構成されている。
すなわち、図8に示すように、表斜め糸群551は、緯糸群511の上側に配設されている。この表斜め糸群551は、それぞれ複数の第1の表斜め糸551Aおよび第2の表斜め糸551Bを備えている。なお、この表斜め糸群551についても、説明の都合上、第1の表斜め糸551Aおよび第2の表斜め糸551Bの2種で説明するが、同一の部材でよく、また第3の緯糸を用いるなど、3種以上で表斜め糸群551を構成してもよい。ここで、第1の表斜め糸551Aおよび第2の表斜め糸551Bが本発明の第1の線状部材に対応している。第1の表斜め糸551Aは、図7に示すように、第1の緯糸511Aとのなす角度が約45°となる状態に配設されている。第2の表斜め糸551Bは、第1の表斜め糸551Aの下側にかつ第1の表斜め糸551Aと略直交する状態に配設されている。裏斜め糸群552は、緯糸群511の下側に配設されている。この裏斜め糸群552は、それぞれ複数の第1の裏斜め糸552Aおよび第2の裏斜め糸552Bを備えている。この裏斜め糸群552についても、説明の都合上、第1の裏斜め糸552Aおよび第2の裏斜め糸552Bの2種で説明するが、同一の部材でよく、また第3の緯糸を用いるなど、3種以上で裏斜め糸群552を構成してもよい。ここで、第1の裏斜め糸552Aおよび第2の裏斜め糸552Bが本発明の第3の線状部材に対応している。第1の裏斜め糸552Aは、第1の表斜め糸551Aと略平行となる状態に配設されている。第2の裏斜め糸552Bは、第1の裏斜め糸552Aの下側にかつ第2の表斜め糸551Bと略平行となる状態に配設されている。第1の経糸514Aは、第1の緯糸511Aの下側、第1の表斜め糸551Aおよび第2の表斜め糸551Bの上側を交互に通過する状態に設けられている。第2の経糸514Bは、第1の緯糸511Aの上側、第1の裏斜め糸552Aおよび第2の裏斜め糸552Bの下側を交互に通過する状態に織り込まれている。このような構成にしても、上記実施の形態と同様の作用効果を奏する、すなわち、ボイスコイルボビン500が径方向に撓むことを防ぐことができる。
また、基材510に代えて、例えば図9に示すような表裏の組織が異なる織り組織となる基材560を用いる構成としてもよい。この基材560は、緯糸群511と、表斜め糸群512と、裏斜め糸群513と、経糸群561と、を備えている。第1の緯糸511Aおよび第1の緯糸511Bは、基材560の厚さ方向下側に配設されている。表斜め糸512Aは、第1の緯糸511Aの上側に配設されている。裏斜め糸513Aは、第1の緯糸511Aと、表斜め糸512Aと、の間に配設されている。経糸群561は、所定間隔で第1の緯糸511Aと略直交する状態に配設された複数の第4の線状部材としての経糸561Aを備えている。そして、経糸561Aは、第1の緯糸511Aおよび裏斜め糸513Aの下側、表斜め糸512Aの上側、第1の緯糸511Bおよび裏斜め糸513Aの下側、表斜め糸512Aの上側を交互に通過する状態に織り込まれている。このような構成にしても、上記実施の形態と同様の作用効果を奏する、すなわち、ボイスコイルボビン500が径方向に撓むことを防ぐことができる。
そして、ボイスコイルボビン500における軸方向一端には、その端面を閉塞する球面ドーム状のダストキャップ520を一体的に設ける構成としたが、これに限らない。すなわち、振動部410の中央孔411を塞ぐ状態に振動部410にダストキャップを取り付ける構成などとしてもよい。このような構成でも、上記実施の形態と同様の作用効果を奏する、すなわち、ボイスコイルボビン500が径方向に撓むことを防ぐことができる。
また、振動部410を略円形の裁頭形状に形成したが、例えば略楕円形の裁頭形状に形成したものでも適用できる。
さらに、フレーム200の構成として、上述したフレーム200および磁気回路部220を有し一面側に拡開する構造に限られない。すなわち、例えば、フレームを、携帯電話やノート型パソコンなどの携帯機器に利用される小型のものとする場合に利用される略円筒形状のものとするなど、いずれの形状とすることができる。さらには、磁気回路部220を、内磁型、外磁型など、いずれの磁気回路を構成するいずれの形状のものとしてもよい。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
〔実施の形態の作用効果〕
上述したように、上記実施の形態では、周囲に巻かれたボイスコイル600からの駆動力を受けて振動板400に当該駆動力を伝達するボイスコイルボビン500を、平面に対して略平行で異なる4方向に軸方向が沿う線状部材を有した基材510にて形成している。このため、当該ボイスコイルボビン500をスピーカ装置100に用いた際、スピーカ装置100の動作時にボイスコイル600からの駆動力およびボイスコイル600自体の自重が、各線状部材にそれぞれ分散されて作用することになる。これにより、基材510における伸縮性や強度の特異的な方向性がなくなり、繊維自体の強度を特に高めなくても実質的にボイスコイルボビン500の強度が向上する。そして、ボイスコイルボビン500は、径方向に対しても高い剛性を有することになり、ボイスコイルボビン500が径方向に撓むことを防ぐことができる。このことより、ボイスコイルボビン500が軸方向に沿って良好に移動する状態が得られ、ボイスコイル600の軸方向に沿った駆動力を振動板400に確実に伝達することができる。したがって、スピーカ装置100の良好な音質特性を得ることができる。
本発明の一実施の形態におけるスピーカ装置を示す断面図である。 前記一実施の形態におけるボイスコイルボビンを示す斜視図である。 前記一実施の形態における基材の織り組織を示す平面図である。 前記一実施の形態における図3中のI−I線に沿った基材の織り組織の断面図である。 本発明の他の実施の形態における基材の織り組織の断面図である。 本発明のさらに他の実施の形態における基材の織り組織の断面図である。 本発明のさらに他の実施の形態における基材の織り組織を示す平面図である。 前記さらに他の実施の形態における図7中のII−II線に沿った基材の織り組織の断面図である。 本発明のさらに他の実施の形態における基材の織り組織の断面図である。
符号の説明
100…スピーカ装置
200…フレーム
220…磁気回路部
221…上プレート
222…下ヨーク
300…磁性体としての磁石
400…振動板
500…ボイスコイルボビン
510,530,540,550,560…基材
511A…線状部材である第2の線状部材としての第1の緯糸
511B…線状部材である第2の線状部材としての第2の緯糸
512A…線状部材である第1の線状部材としての表斜め糸
513A…線状部材である第3の線状部材としての裏斜め糸
514A…線状部材である第4の線状部材としての第1の経糸
514B…線状部材である第4の線状部材としての第2の経糸
541A,561A…線状部材である第4の線状部材としての経糸
551A…線状部材である第1の線状部材としての第1の表斜め糸
551B…線状部材である第1の線状部材としての第2の表斜め糸
552A…線状部材である第3の線状部材としての第1の裏斜め糸
552B…線状部材である第3の線状部材としての第2の裏斜め糸
600…ボイスコイル

Claims (6)

  1. 周囲に巻かれたボイスコイルからの駆動力を受けて振動板に当該駆動力を伝達するボイスコイルボビンであって、
    略薄膜状に形成され平面に対して略平行で異なる4方向に軸方向が沿う線状部材を有した基材を備えた
    ことを特徴としたボイスコイルボビン。
  2. 周囲に巻かれたボイスコイルからの駆動力を受けて振動板に当該駆動力を伝達するボイスコイルボビンであって、
    略薄膜状に形成され平面に対して略平行で異なる4方向に軸方向が沿う線状部材を有した基材にて形成された
    ことを特徴としたボイスコイルボビン。
  3. 請求項1または請求項2に記載のボイスコイルボビンであって、
    前記基材は、互いに交差する状態でかつ互いの軸方向が異なる状態に配設された第1の線状部材、第2の線状部材、第3の線状部材および第4の線状部材を前記線状部材として有する
    ことを特徴としたボイスコイルボビン。
  4. 請求項3に記載のボイスコイルボビンであって、
    前記基材は、前記第1の線状部材、前記第2の線状部材および前記第3の線状部材が、前記第4の線状部材に対してそれぞれ約45°、約90°、約135°の角度をなす状態にそれぞれ配設されて、前記略薄膜状に形成された
    ことを特徴としたボイスコイルボビン。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のボイスコイルボビンであって、
    前記基材は、互いの軸方向が異なる4つの方向に沿う前記線状部材の織布である
    ことを特徴としたボイスコイルボビン。
  6. 振動板と、
    この振動板に取り付けられた請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のボイスコイルボビンと、
    磁性体と、
    前記振動板および前記ボイスコイルボビンを保持し前記磁性体とにより磁気回路を形成するヨークを備えたフレームと、
    を具備したことを特徴としたスピーカ装置。
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