以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
(第一の実施の形態)
本発明の第一の実施の形態に係る照明システムにおいて用いられるメタルハライドランプの一例を図1に示す。
定格ランプ電力150Wのメタルハライドランプ(セラミックメタルハライドランプ)1は、全長T1 が175mm〜185mm、例えば180mmであり、外管2と、この外管2内に配置された発光管3と、外管2の端部に固着されたねじ込み式(E形)の口金4とを備えている。
なお、発光管3の長手方向の中心軸(図1中、Xで示す)は外管2の長手方向の中心軸(図1中、Yで示す)と略一致している。
外管2は、外径R1 が25mm〜55mm、例えば40mmの略円筒状の例えば硬質ガラス等からなり、一端部が半球状に閉塞され、かつ他端部に例えばホウケイ酸ガラスからなるフレア5が封着されている。
また、外管2内(発光管3が配置された密閉の空間内)は、300Kでの気圧が1×101 Pa以下、例えば1×10-1Paの真空状態になっている。このように外管2内の真空度を300Kで1×101 Pa以下に規定することにより、発光管3の熱がその空間内のガスを介して外管2に伝わり、外部へ放出されるのを抑制することができるので、熱ロスによって発光効率が低下するのを防止することができる。一方、外管2内の真空度が300Kで1×101 Paを超える場合、発光管3の熱がその空間内のガスを介して外管2に伝わり、外部へ放出されやすくなるので、熱ロスによって発光効率が低下するおそれがある。
フレア5には、例えばニッケルまたは軟鋼からなる二本のステム線6,7の一部がそれぞれ封止されている。二本のステム線6,7の一端部はそれぞれ外管2内に引き込まれており、そのうちの一方のステム線6は電力供給線8を介して発光管3から導出した後述の二本の外部リード線9,10のうちの一方に、他方のステム線7は直接、残る外部リード線10にそれぞれ電気的に接続されている。発光管3は、これら二本のステム線6,7および電力供給線8によって外管2内で支持されている。また、一方のステム線6の他端部は口金4のアイレット部11に、他方のステム線7の他端部は口金4のシェル部12にそれぞれ電気的に接続されている。
ステム線6,7は、複数の金属線をそれぞれ溶接して一体化された一本の金属線からなる。
電力供給線8は、フレア5の近傍から外管2の閉塞部側まで外管2の内面形状に沿って直線状に延びた後、外管2の閉塞部の内面形状に沿って略半円状に曲げられ、さらに外部リード線9と略直角に交差するように外管2の長手方向の中心軸Yへ向かって折り曲げられ、真っ直ぐ延びている。また、電力供給線8のうち、外管2の閉塞部側に位置する部分には、バリウムゲッター13が取り付けられている。
発光管3は、図2に示すように、その全長T2 (後述する本管部16、第一の細管部17aおよび第二の細管部17bとを合わせた長さ)が60mm〜85mm、例えば71mmである。また、発光管3は、外径R2 が4.5mm〜8.0mm、例えば6.4mmであって、内径r1 (図3参照)が2.5mm〜6.0mm、例えば4.0mmの円筒部14とこの円筒部14の両端部に連接されている半球状部15とからなる本管部16と、半球状部15に連接された外径R3 が2.5mm〜4.0mm、例えば3.2mmであって、内径r2 (図3参照)が0.8mm〜1.2mm、例えば1.0mmの第一の細管部17aおよび第二の細管部17bとからなる多結晶アルミナ製の外囲器18を有している。外囲器18の内容積(各細管部17a,17bを除く)は0.16cm3 〜0.85cm3 、例えば0.435cm3 である。
ここで、発光管3は、発光管3の最大内径、つまり円筒部14の内径をr1 (mm)、後述する第一の電極部25aと第二の電極部25bとの間の距離をL(mm)としたとき、L/r1 ≧2.0なる関係式を満たす。つまり、この発光管3は、L/r1 が従来のメタルハライドランプの発光管におけるL/r1 (例えば0.5〜1.2)に比して大きく、細長い形状を有することを意味している。その結果、発光管3内に封入する水銀量が2.5mg/cm3 以下という少ない量であっても、安定点灯時、80V〜100Vのランプ電圧を得ることができる。
また、後述するように近接導体19の一部を発光管3の外面のうち、電極導入体が位置する部分に設置した場合、上記したとおり発光管3の形状を細長くすることにより、近接導体19と第一の電極導入体21(または第二の電極導入体22)との間の距離を短くすることができるので、その近接導体19と第一の電極導入体21(または第二の電極導入体22)との間での絶縁破壊が起きやすくなり、再始動特性の向上に寄与することができると考えられる。
なお、発光管3の外囲器18を構成する材料としては、多結晶アルミナ以外にイットリウム−アルミニウム−ガーネット(YAG)、窒化アルミニウム、イットリア、またはジルコニア等の透光性セラミックを用いることができる。また、外囲器18として、図2に示した例のように外囲器18を構成する各部分はそれぞれ一体成形され、繋ぎ目がないものを用いたが、例えば本管部16の半球状部15に、別工程で成型された各細管部17a,17bを焼きばめることによって各部材を一体化させたものを用いてもよい。
また、発光管3内には、発光物質としての例えばヨウ化プラセオジウム(PrI3 )とヨウ化ナトリウム(NaI)とからなる金属ハロゲン化物、緩衝ガスとしての水銀、および始動補助ガスとしてのキセノンガス(Xe)がそれぞれ封入されている。金属ハロゲン化物は、総量で5.5〜19mg、例えば9mgであり、各成分のモル比が例えば1:8となるように封入されている。水銀は、2.5mg/cm3 以下になるように封入されている。もちろん、水銀の封入量は2.5mg/cm3 以下の範囲において、点灯時、所望のランプ電圧が得られるように適宜調整されるが、場合によっては封入物を調整するなどして公知の手段を用いて無水銀(0.0mg/cm3 )としてもよい。無水銀としない場合、例えば90Vのランプ電圧を得るために、水銀の封入量は少なくとも0.8mg/cm3 以上封入されることが好ましい。キセノンガスは、300Kで25kPaとなるように封入されている。
なお、発光物質としては、ヨウ化プラセオジウムとヨウ化ナトリウムとの組み合わせに代えて、ヨウ化セリウム(CeI3 )とヨウ化ナトリウムとを組み合わせたものや、高演色タイプのセラミックメタルハライドランプによく用いられているヨウ化ディスプロシウム(DyI3 )、ヨウ化ツリウム(TmI3 )、ヨウ化ホルミウム(HoI3 )等の希土類金属のヨウ化物とヨウ化タリウム(TlI)およびヨウ化ナトリウムとを組み合わせたもの等、所望の色特性に応じて公知の種々の金属ヨウ化物を用いることができる。もっとも、ヨウ化物の全部または一部を臭化物に代えて用いることもできる。始動補助ガスとしては、キセノンガスに代えて、アルゴンガス(Ar)やクリプトンガス(Kr)、またはこれらの混合ガスを用いることができる。
また、発光管3の外面には、例えば0.2mmのモリブデン線からなる始動補助用の近接導体19が接触するように配置されている。近接導体19は、一方の電極部、例えば第二の電極部25bに電気的に接続されて発光管3の外面に設置されていればよく、公知の種々の取り付け方が適用できると考えられる。つまり、発光管3の外面に対する近接導体19の設置位置は、始動を補助するという機能が発揮されるように適宜決定すればよい。例えば、近接導体19の一端部を第二の電極部25bに電気的に接続するために外部リード線9に電気的に、かつ機械的に接続し、その近接導体19の残部を第一の細管部17aに向かって延ばし、本管部16の表面に直線的に伸ばした状態でまたは巻き付けるようにして接触させてもよい。
もっとも、近接導体19が第二の電極部25bに電気的に接続されている場合、近接導体19の他端部は、第一の細管部17aのうち、第一の細管部17aと第一の電極導入体21との間に隙間が形成されている領域に巻き付けられていることが好ましい。逆に、近接導体19が第一の電極部25aに電気的に接続されている場合、近接導体19の他端部は、第二の細管部17bのうち、第二の細管部17bと第二の電極導入体22との間に隙間が形成されている領域に巻き付けられていることが好ましい。
これにより、始動時および再始動時、近接導体19が第一の細管部17a(第二の細管部17b)を介して第一の電極導入体21(第二の電極導入体22)と容量結合し、近接導体19と第一の電極導入体21(第二の電極導入体22)との間であって、かつ第一の細管部17a(第二の細管部17b)内において低いパルス電圧であっても微小放電が起こり初期電子等を発生させることができるので、始動特性を向上させることができる。
さらに、近接導体19のうち、第一の細管部17a(第二の細管部17b)に巻き付けられている部分のターン数を少なくとも2ターン以上とすることが好ましい。これにより、再始動時において、第一の細管部17aの内面と電極軸部27aやコイル28aとの間に形成された隙間で発生する微小放電の強度を高めることができるとともに、微小放電が発生する領域を拡大することができるので、本管部16内に供給される初期電子の数や紫外線の放射量を増大させることができる。
具体的には図2に示すように、近接導体19は、まず第一の細管部17aの外面のうち、本管部16側の端部に少なくとも2ターン以上(図2に示す例では第一の細管部17aの外面のうち、本管部16側の端から2mmまでの領域全体に亘って2ターン)密着させて螺旋状に巻き付けられた後、本管部16を縦断するように発光管3の長手方向に沿わせて、つまり本管部16に対してほとんど巻き付けられることなく本管部16の外面に密着させて配置され、さらに第二の細管部17bの外面のうち、本管部16側の端部に0.8ターンほど螺旋状に巻き付けられ、最終的に抵抗体20を介して外部リード線9に電気的に接続されている。したがって、この近接導体19は、後述する第二の電極部25b(電極導入体22)と同電位となる。
また、近接導体19のうち、第一の細管部17aに巻き付けられている第一の螺旋状部分19aは、この近接導体19とは異極となる後述する第一の電極部25aに近接されている。このとき、第一の螺旋状部分19aにおいて、少なくとも隣接するターン同士が接触していなければ問題ないが、つまり巻きピッチが100%でなければ問題ないが、点灯と消灯とのヒートサイクルによってその形状が変化し、隣接するターン同士が接触するのを確実に防止するために、巻きピッチは150%以上であることが好ましい。巻きピッチが150%未満では、点灯と消灯とのヒートサイクルによってその形状が徐々に変化していき、隣接するターン同士が接触するおそれがある。しかし、巻きピッチが大きすぎると、第一の螺旋状部分19aを第一の細管部17aのうち、本管部16側の端部に局所的に配置することができなくなる。そこで、その巻きピッチは1000%以下であることが好ましい。
ただし、「巻きピッチ」とは、近接導体19であるモリブデン線の線径(直径)に対して、コイルの各ターンのうちの隣接する一対のターンの中心間の距離の比率を%で表わした値である。したがって、巻きピッチが100%とは隣接するターン同士が接触していることを表わしている。もっとも、上記した例では、モリブデン線は裸線を用いているので、隣接するターン同士が接触しないようにしているが、このモリブデン線を公知の絶縁部材で被覆していれば、隣接するターン同士が接触していてもよい。
また、図2に示す例において、近接導体19の一部を第二の細管部17bに巻き付けているのは、近接導体19が発光管3に対して外れないように密着させつつ保持するためである。したがって、再始動特性の観点からは近接導体19を第二の細管部17bに必ずしも巻き付ける必要はないが、確実に保持するという観点からは複数ターン巻き付けた方がよい。
また、近接導体19は、上述したとおり実質的に本管部16に対してほとんど巻き付けられていないが、つまり意図的に巻き付けられているのではないが、実際には第一の細管部17aに巻き付けられた後、近接導体19に特別な加工を施すことなく第二の細管部17bに巻き付けるために本管部16全体に亘って0.1ターンほど巻き付けられることになる。
ここで、近接導体19として使用しているモリブデン線の線径は、螺旋形状に加工しやすく、しかもその螺旋形状を安定的に保つとともに、線の陰によって光束が低下したり配光特性が悪化したりするのを抑えるために、0.1mm〜0.3mmからなることが好ましい。その線径が0.1mm未満では、螺旋形状に加工しにくく、その形状を安定させることができないおそれがある。逆に、その線径が0.3mmを越えると、点灯時、近接導体19の線の影が目視でも顕著に現れ始め、光束が低下したり配光特性が悪化したりするおそれがある。
なお、近接導体19の材質としては、モリブデン以外にタングステン(W)、白金(Pt)、金(Au)またはこれらの合金等も用いることができる。
また、ここで言う「密着」とは、厳密な意味で言う近接導体19が発光管3の外面に完全に密着している場合はもちろんのこと、近接導体19が発光管3の外面に対して部分的に、かつ不可避的に浮き上がってしまっている場合も含むものとする。
ここで、始動時および再始動時における近接導体19の機能について説明する。
近接導体19の第一の螺旋状部分19aは、始動時および再始動時において、その反対側の端部が外部リード線9に電気的に接続されているために第二の電極部25bと同電位になるので、第一の電極部25aに対しては異極となる。また、第一の細管部17aの構成材料である多結晶アルミナは誘電体としても機能する。したがって、近接導体19のうちの第一の螺旋状部分19aは、始動時および再始動時において、第一の細管部17aを介して第一の電極導入体21と容量結合する。つまり、近接導体19が例えばプラスのとき、電極軸部27aやコイル28aはマイナスであり、第一の細管部17aの外面側にはマイナス電荷が帯電し、その反対側の第一の細管部17aの内面側にはプラス電荷が帯電する。その結果、始動時および再始動時において、まず第一の細管部17aの内面と電極軸部27aやコイル28aとの間に形成された隙間で絶縁破壊が起きて微小放電が発生する。それによって初期電子が発生したり紫外線が放射されたりする。また、この紫外線放射に起因して本管部16内に存在する分子が励起されることによっても初期電子が発生する。
一方、近接導体19のうち、本管部16の第一の細管部17a側の端部に位置する部分も、その本管部16を介して第一の電極部25aと容量結合している。したがって、本管部16の第一の細管部17a側の端部内において、前記初期電子によって近接導体19と第一の電極部25aとの間でその本管部16を介して絶縁破壊が誘発され、アーク放電が発生する。これによって各電極部25a,25b間での絶縁破壊に向けた電離過程が促進され、ランプが再始動状態においても短時間で始動させることができる。
抵抗体20は、ランプの不点時に近接導体19とこれと異極の部材、例えば外部リード線10との間で異常放電が起きるのを防止するためのものであり、その抵抗値として10kΩ〜100kΩ、例えば20kΩに設定されている。
図3に示すように、第一の細管部17a内には第一の電極導入体21が、第二の細管部17b内には第二の電極導入体22がそれぞれ挿入されている。これら各電極導入体21,22は、本管部16とは反対側の端部において各々の細管部17a,17bと各々の電極導入体21,22との間の隙間23に流し込まれたガラスフリット24によってそれぞれ封着されている。
第一の電極導入体21は、先端部に形成された第一の電極部25aと、一端部がこの電極部25aに接続された例えば酸化アルミニウム(Al2 O3 )とモリブデン(Mo)とを焼結した導電性サーメットからなる直径が例えば0.9mmの内部リード線26aと、一端部がこの内部リード線26aに接続された例えばニオビウムからなる外部リード線10と、第一の電極部25aのうち後述する電極軸部27aの一部に巻き付けられた線径が例えば0.2mmのモリブデンからなるコイル28aとを有している。
一方、同様に第二の電極導入体22も、先端部に形成された第二の電極部25bと、一端部がこの電極部25bに接続された例えば酸化アルミニウム(Al2 O3 )とモリブデン(Mo)とを焼結した導電性サーメットからなる直径が例えば0.9mmの内部リード線26bと、一端部がこの内部リード線26bに接続された例えばニオビウムからなる外部リード線9と、第二の電極部25bのうち後述する電極軸部27bの一部に巻き付けられた線径が例えば0.2mmのモリブデンからなるコイル28bとを有している。
したがって、各細管部17a,17bの内径r2 が例えば1.0mmの場合、各電極導入体21,22の最大外径(コイル28a,28bを含む)は0.9mmとなるので、各々の細管部17a,17bと電極導入体21,22との間には、平均で0.1mmの隙間が形成されることになる。この隙間の大きさは、各電極導入体21,22をそれぞれの細管部17a,17bに挿入する際、裕度を持って挿入することを可能とする。もっとも、プロセス上、各電極導入体21,22はそれぞれの細管部17a,17bの長手方向の中心軸(中心軸Xと同一軸上にある)に対して偏心した位置で封着されていることが多い。
各電極部25a,25bは、直径が例えば0.5mmのタングステンからなる電極軸部27a,27bとこの電極軸部27a,27bの先端部に取り付けられた電極コイル部29a,29bとを有している。これら二つの電極部25a,25bは先端同士が互いに略対向するような状態になっている。これら電極部25a,25b間の距離Lは24mm〜40mm、例えば32mmに設定されている。
ここで、各電極部25a,25b間の距離Lが長すぎると、ランプ電圧が等しい場合、電界が弱まるので、初期電子を十分に加速させることができず、その結果、初期電子が水銀原子と衝突して二次電子を放出するのに必要なエネルギーが得られなくなり、前記電離過程を十分に促進することができなくなるおそれがある。したがって、前記距離L(mm)は定格電力とは無関係にL≦55なる関係式を満たすことが好ましい。
内部リード線26a,26bの端部のうち、電極軸部27a,27bとは反対側の端部は、各々の細管部17a,17bの端部から外部に導出しており、上述したとおりそれぞれ外部リード線10,9を介してステム線7または電力供給線8に電気的に接続されている。
コイル28a,28bは、各細管部17a,17bと電極軸部27a,27bとの間に形成される隙間を極力埋めて、その隙間に液状の金属ハロゲン化物が沈み込むのを抑制している。
なお、電極導入体21,22として、タングステンからなる電極部25a,25b、導電性サーメットからなる内部リード線26a,26b、ニオビウムからなる外部リード線10,9およびモリブデンからなるコイル28a,28bから構成されたもの以外に、その材質や構造において既知の電極導入体を用いることができる。
次に、本発明の第一の実施の形態に係る照明システムに搭載された共振型始動方式のイグナイタ回路を有する電子安定器Aを図8に示す。上記したメタルハライドランプ1(以下、単に「ランプ1」という)はこの電子安定器Aによって、再始動状態においてより短時間で電極間に絶縁破壊が引き起こされ始動する。
この電子安定器Aは、商用交流電源ACに接続された直流電源回路部40と、直流電源回路部40の出力を受けてランプ1を始動点灯させる電子点灯回路部42を備えている。直流電源回路部40は、単純な整流平滑回路であっても良いが、ここでは全波整流器DBとインダクタL1、ダイオードD1、平滑用コンデンサC1、スイッチング素子Q1よりなる昇圧チョッパ回路を用いている。昇圧チョッパ回路の動作は周知であり、スイッチング素子Q1が高周波でオン・オフすることで、全波整流器DBの出力電圧のピーク値よりも高い直流電圧が平滑用コンデンサC1に充電される。制御回路41は平滑用コンデンサC1が所定の電圧に充電されるようにスイッチング素子Q1をオン・オフ制御する。
電子点灯回路部42は、スイッチング素子Q2、インダクタL2、コンデンサC2、ダイオードD2よりなる降圧チョッパ回路と、スイッチング素子Q3〜Q6及びダイオードD3〜D6よりなる極性反転回路、並びにインダクタL3とコンデンサC3よりなるLC直列共振回路と負荷としての放電ランプ1を備えている。
降圧チョッパ回路の動作は周知であり、高周波でオン・オフするスイッチング素子Q2のオン幅を制御することで、入力電圧を降圧した任意の直流電圧がコンデンサC2に得られるように動作する。降圧チョッパ回路のスイッチング素子Q2は、制御回路43からの制御信号により駆動回路44を介してオン・オフ制御され、ランプ1の状態に応じて、コンデンサC2の電圧が適正電圧となるようにスイッチング素子Q2のオン幅を制御する。
極性反転回路は、コンデンサC2の両端に並列接続されたスイッチング素子Q3,Q4の直列回路と、スイッチング素子Q5,Q6の直列回路を備えており、スイッチング素子Q3,Q6がオン、スイッチング素子Q4,Q5がオフの状態と、スイッチング素子Q3,Q6がオフ、スイッチング素子Q4,Q5がオンの状態とが切り替わることで、出力電圧極性を反転可能となっている。各スイッチング素子Q3,Q4,Q5,Q6にはそれぞれダイオードD3,D4,D5,D6が逆並列接続されている。スイッチング素子としてMOSFETを用いた場合には、逆並列ダイオードは省略できる。スイッチング素子Q3,Q4は制御回路43の出力によりドライバIC45を介してオン・オフ駆動される。また、スイッチング素子Q5,Q6は制御回路43の出力によりドライバIC46を介してオン・オフ駆動される。ドライバIC45,46は、例えばIR社製IR2308よりなる。
極性反転回路のスイッチング素子Q3,Q4の接続点とスイッチング素子Q5,Q6の接続点の間には、インダクタL3を介してランプ1が接続されている。インダクタL3の一端はスイッチング素子Q3,Q4の接続点に接続されており、他端はコンデンサC3を介してグランドに接続されている。インダクタL3とコンデンサC3は、LC直列共振回路を構成しており、ランプ1の始動時には、スイッチング素子Q3,Q4をインダクタL3とコンデンサC3の共振周波数(又はその整数倍又は整数分の1)近傍のスイッチング周波数でオン・オフ駆動することにより、インダクタL3とコンデンサC3の接続点(つまり、ランプ1の一端)に高電圧の共振電圧が印加される。これにより、ランプ1は絶縁破壊されて、ランプ電流が流れ始める。その後、制御回路43は極性反転回路の動作を低周波矩形波動作に切り替える。
図9に始動時の動作波形、図10に始動時から安定点灯時までの動作波形、図11に安定点灯時の動作波形を示す。
始動時には、図9に示すように、スイッチング素子Q3,Q6とスイッチング素子Q4,Q5が高周波、それもインダクタL3とコンデンサC3よりなるLC直列共振回路の共振周波数(又はその整数倍又は整数分の1)の周波数近傍で交互にオン・オフ動作しており、これによりランプ1の両端電圧Vlaは高周波の高電圧となる。
ここで、コンデンサC3の値(C3)とインダクタL3の値(L3)及びスイッチング素子の動作周波数fとの関係を次式で表す。
(2n+1)・f≒1/(2π√(L3・C3))=f0
(n:整数)
すなわち、コンデンサC3とインダクタL3による共振周波数f0がスイッチング素子Q3〜Q6のスイッチング周波数fの(2n+1)倍近傍であれば図9のようにランプ1の両端電圧Vlaとして高圧パルス電圧を発生させることができる。
本実施形態において、電子安定器Aの動作は、図10に示すように共振パルス発生区間と低周波矩形波区間とに別れ、共振パルス発生区間において、スイッチング素子Q3〜Q6の動作周波数f1を80kHz〜120kHzの間を高周波側から低周波側に徐々に変動させ、それを50ms間繰り返すことで、連続した高圧パルス電圧をインダクタL3とコンデンサC3の接続点に発生させ、ランプ1に印加する。ここで、コンデンサC3の値(C3)とインダクタL3の値(L3)の関係は次式による。
80kHz<1/3・(2π√(L3・C3))<120kHz
つまり、コンデンサC3とインダクタL3との共振周波数f0の1/3を80kHz〜120kHzの間に設計した。また、上記の設計において、ランプ1の両端に高圧パルス電圧は最大3.5kV発生するように設計した。
なお、上記のようにスイッチング素子Q3〜Q6の動作周波数fと共振周波数f0の関係がf<f0となる場合において、スイッチング素子Q3、Q4、インダクタL3、コンデンサC3からなるイグナイタ回路47には進相電流が流れることがある。そこで、スイッチング素子Q3、Q4に内蔵されるリカバリーダイオードは高速化されていなければならない。
また、電子安定器Aは上記高圧パルス電圧により第一の電極部25aと第二の電極部25bとの間で絶縁破壊した後に、低周波矩形波区間において、ランプ1に低周波の矩形波電圧(約400V)を供給し、ランプ電圧が高い状態においてある一定の実効値を持つ矩形波電流をランプに供給することができる。
低周波矩形波区間における動作波形を図11に示した。この図11に示すように、点灯時には、スイッチング素子Q3,Q6とスイッチング素子Q4,Q5は数10〜数100Hzの低周波で交互にオン・オフ動作しており、これによりランプ1のランプ電流Ilaは低周波の矩形波電流となる。
本実施形態では一例として、ランプ電圧=200Vとなるときに実効値1Aの矩形波電流をランプに供給することができるように設計した。また、低周波の矩形波の周波数は165Hzとした。
なお、低周波矩形波区間は750ms継続した後ランプが放電を開始していれば動作を継続し、ランプが放電を開始していない又は立ち消えた場合には一定区間動作を停止した後、再び共振パルス発生区間に移行する。
次に、本発明の第一の実施の形態に係る定格ランプ電力150Wのメタルハライドランプ1と電子安定器Aを搭載した照明システムの構成による作用効果を確認するための実験を行った。
前記のメタルハライドランプ1と電子安定器Aを搭載した照明システムにおいて一定時間連続点灯させた後に一定時間消灯し、その後再始動を行い、消灯直後(電源オフ後)から再始動するまでの再始動時間を測定したところ、図4のような結果が得られた。
図4は水銀の封入量(mg/cm3 )と平均再始動時間(分)との関係を示す図である。b,cの場合について、水銀の封入量が2.5mg/cm3 以下のときに、再始動時間が30秒以下となっていることが分かる。実線aは第一の螺旋状部分19aのターン数が1ターンの場合、実線b,cは第一の螺旋状部分19aのターン数がそれぞれ2ターン、4ターンの場合である。
なお、ここで言う「再始動時間」とは、電源ON後からランプの電極間で継続した放電が発生するまでの時間である。
以上のとおり、本発明の第一の実施の形態に係る照明システムの構成によれば、再始動特性を大幅に改善することができることが確認された。
このような結果が得られたのは、次のような理由によるものであると考えられる。
つまり、水銀の封入量(2.5mg/cm3 以下)と電子安定器Aが発生する高圧パルスの特性とが再始動時間の短縮に大きく寄与していると考えられる。
まず、水銀の封入量に関しては、2.5mg/cm3 以下に規定することにより、再始動時、水銀の蒸気圧を低下させることができるので、再始動電圧の印加によって本管部16内の初期電子や2次電子のエネルギーを高めることができる。つまり、本管部16内の水銀原子が少ないので、各電子が加速される前に水銀原子と衝突する確率が低くなり、十分な運動エネルギーを得ることができる。これらの結果、各電極部25a,25b間での絶縁破壊に向けた電離過程が一層促進され、再始動時間を30秒以下にすることができたと考えられる。
一方、電子安定器Aが発生する高圧パルスの特性に関しては、電子安定器Aの高圧パルス特性の有効性を検証するために、高圧パルス特性の違う電子安定器Bを用いて上記と同様の再始動試験を行った。ここで、電子安定器Bは高圧パルス特性以外の電気特性は電子安定器Aと同等である。
図12に、始動用パルストランスを有する電子安定器Bの回路構成を示す。昇圧チョッパ回路、降圧チョッパ回路、極性反転回路の構成については、図8に示した共振型始動方式を有する電子安定器Aと同様であるので、説明を省略する。電子安定器Aと電子安定器Bとの相違点は、電子安定器Aにおける共振始動用のLC直列共振回路を構成するインダクタL3とコンデンサC3が電子安定器Bでは省略されており、代りに、始動用のパルストランスPTとパルス発生回路を含むイグナイタ回路48が付加されている点である。パルス発生回路は、スイッチング素子Sと、コンデンサC4及び抵抗Rよりなる。コンデンサC4はスイッチング素子Sを介してパルストランスPTの1次巻線に接続されており、抵抗Rを介して充電される。パルス発生用のスイッチング素子Sはダイアック、SSS、放電ギャップ等の印加電圧に応答してブレークオーバーするタイプのスイッチング素子であり、コンデンサC4の充電電圧がブレークオーバー電圧を越えると、スイッチング素子Sがオンになり、パルストランスPTの1次巻線にパルス状の電流が流れる。これにより、パルストランスPTの2次巻線には、1次巻線と2次巻線の昇圧比に応じた高電圧パルスが発生し、ランプ1に印加される。
図13に電子安定器Bの始動時の動作波形を示す。安定点灯時の動作は図11と同様である。電子安定器Bでは、ランプ1の始動時においても、スイッチング素子Q3,Q6とスイッチング素子Q4,Q5は数10〜数100Hzの低周波で交互にオン・オフ動作しており、これにより極性反転回路の出力電圧Voは低周波の矩形波電圧となる。この矩形波電圧Voの振幅は、降圧チョッパ回路の出力コンデンサC2の両端電圧と略同じである。降圧チョッパ回路のスイッチング素子Q2のパルス幅を適切に制御することにより、無負荷時の出力電圧Voの振幅をスイッチング素子Sがブレークオーバーできるような電圧に設定しておくことで、ランプ1の両端には矩形波電圧VoにパルストランスPTからの高圧パルス電圧を重畳した電圧Vlaが印加される。これによりランプ1は絶縁破壊されて、ランプ電流が流れ始める。すると、ランプ1の両端電圧は急激に低下し、スイッチング素子SがブレークオーバーしなくなることでパルストランスPTは高圧パルス電圧を発生しなくなる。
このイグナイタ回路48の動作について図14を用いてさらに説明する。極性反転回路により生成された矩形波電圧Va−b(図14(a)参照)を受け、抵抗RとコンデンサC4の時定数によりコンデンサC4の電圧Vc4は図14(b)のように徐々に充電されていく。コンデンサC4の電圧がスイッチング素子Sのブレークオーバー電圧Vboに達するとスイッチング素子SはONし、コンデンサC4に蓄積された電荷をコンデンサC4→スイッチング素子S→パルストランスPTの一次巻線を介して放電させる。この時パルストランスPTに発生したパルス電圧が昇圧されパルストランスPTの二次巻線に高圧パルス電圧(数kV)を発生させる。そしてこの高圧パルス電圧によりランプ1が放電を開始し点灯状態に移行する。
ここで、パルス電圧の波高値は3.5kVとした。また、矩形波電圧Va−bの周波数はランプ1が放電を開始したのちの周波数と同じ165Hzとした。
そして、上記の電子安定器Bを用いて上記と同様の再始動実験を行ったところ、前記のメタルハライドランプ1を用いても再始動に数分を要した。
これは、次のような理由によるものと考えられる。
電子安定器Aは前述したように50ms間は共振動作を行い、高圧パルスを連続して発生させることができ、その間の実効値は約1kVである。一方、電子安定器Bは極性反転毎に1〜数回しかパルスを発生させず、またパルスの幅も約1μsと細いため、例えば50ms間の実効値は二次電圧(約400V)と大きく差はない。つまり、電子安定器AとBは高圧パルス電圧の波高値は同じ(約3.5kV)であっても、時間あたりの高圧パルス密度が全く違うために、ランプ1の第一および第二の電極部25a,25b間での絶縁破壊を引き起こす能力は電子安定器Aの方が大きいからであると考えられる。
以上のように、本発明の第一の実施の形態に係る照明システムにおいて、メタルハライドランプの再始動特性を初始動と同等の始動特性を持たせることができたと確認された。
なお、電子安定器Aは高圧パルスの周波数を変動させているが、これは共振始動型イグナイタ回路47のインダクタL3とコンデンサC3のバラツキによる共振周波数のバラツキを吸収するためである。従って、共振周波数のバラツキが問題とならない場合には、高圧パルスの周波数を変動させる必要はない。
次に、ランプ1の第一および第二の電極部25a,25b間で絶縁破壊が起こった後にランプ1へ供給する電流の効果を説明する。
ランプ1の第一および第二の電極部25a,25b間での絶縁破壊直後にランプ電圧が200Vの時に供給する電流が0.35Aの電子安定器Cを用いて前述の再始動試験を行った。なお、電子安定器Cの高圧パルス特性は電子安定器Aと同等とした。
その結果、電子安定器Cではランプ1は第一および第二の電極部25a,25b間で絶縁破壊するものの、その後の低周波矩形波区間において放電を維持せず、立ち消えることがあった。これは、絶縁破壊直後にランプ1に供給する電流が少なすぎるために第一および第二の電極部25a,25b間での放電が不安定となり、低周波の極性反転時に立ち消えするためであった。以上の結果より、ランプが絶縁破壊した直後で、ランプ電圧が200V程度の状態においては1A以上の電流をランプに供給することが好ましいことが判明した。
(第二の実施の形態)
次に本発明の第二の実施の形態に係る照明システムについて説明する。メタルハライドランプは第一の実施の形態と同じものを用いた。一方、電子安定器Dは電子安定器Aの高圧パルスの周波数を以下のように変更したもので、それ以外の特性は同等である。
第一の実施の形態で説明した通り、スイッチング素子Q3、Q4の動作周波数と共振回路を形成するインダクタL3、コンデンサC3の共振周波数f0の関係がf<f0となる場合において、スイッチング素子Q3、Q4内蔵のリカバリーダイオードを高速化しなければならなかった。
そこで、共振パルス発生区間において常にf0<fの関係を維持しつつ所望の高圧パルス電圧を得るように設計する。
具体的には、共振周波数f0=100kHzとしたときに所望の高圧パルス電圧を動作周波数f>100kHzで得ることができるように設計する。
また、発生した高圧パルス電圧Vlaの値を読込む手段とそれが所望の電圧に達しているかの比較回路49を図15のように設ける。インダクタL3とコンデンサC3のバラツキを吸収するために、f>100kHzの領域においてより高周波側から低周波側へと動作周波数fを変動させていき、その変動にあわせて高圧パルス電圧の値を比較回路49により読込み所望の電圧に達していれば、そこで動作周波数を固定とする。
上記の方法により、インダクタL3とコンデンサC3のバラツキを吸収しつつ所望のパルス電圧を得ることができ、更に共振回路に進相電流が流れないために、スイッチング素子Q3とQ4の内蔵リカバリーダイオードを高速化する必要がないため電子安定器を安価に構成することができる。
(第三の実施の形態)
次に、本発明の第三の実施の形態に係る照明システムについて説明する。
使用するメタルハライドランプは、図5および図6に示すように、近接導体19が本管部16の外面に2ターン密着して螺旋状に巻き付けられ、特に本管部16の外面の所定の領域全体に亘って少なくとも0.5ターン以上密着して螺旋状に巻き付けられている点を除いて上記した本発明の第一の実施の形態に係る定格ランプ電力150Wのメタルハライドランプ1と同じ構成を有している。
ここでの「本管部16の所定の領域」とは、後述する平面Q(第二の平面)と平面R(第三の平面)とで挟まれた領域を示す。平面Q(第二の平面)は、第一の螺旋状部分19aが位置している第一の細管部17a側に位置する第一の電極部25aの先端を含み、かつ発光管3の長手方向の中心軸Xに対して垂直な平面P(第一の平面)に平行で、かつこの平面Pに対して第二の電極部25b側へ5mmの間隔を有する平面を示す。
平面R(第三の平面)は、発光管3を前記中心軸Xを含む平面で切断した切断面(図5参照)において、第一の細管部17aの端のうち、本管部16とは反対側の端から本管部16へ向かって延びる第一の細管部17aの内面の直線部から半球状部15の内面の曲線部へ変化する変化点A(図5参照)を含み、かつ発光管3の長手方向の中心軸Xに対して垂直な平面を示す。
この変化点Aの位置は、本管部16の内面形状によって種々変化するが、通常、発光管3を前記中心軸Xを含む平面で切断した切断面において、第一の細管部17aの内面は実質的に直線的であるので、この直線が本管部16へ向かって真っ直ぐ延びて別の直線または曲線へと変化し始める点がこれに該当する。例えば、半球状部15の内面と第一の細管部17aの内面とが所定の曲率Rを有する曲線で繋がっているとき、変化点Aは第一の細管部17aの内面の直線と曲率Rを有する曲線との境界点がこれに該当する。
図5に示す例では、近接導体19は、本管部16の前記所定の領域において、平面Rと交差する箇所を始点とし、平面Qと交差する箇所を終点とする1ターン巻きのコイルになっている。なお、このコイルが1ターン以上ある場合、その巻きピッチは100%を越えていればよい。
また、本管部16に巻き付けられている近接導体19のうち、本管部16の所定の領域を除く部分については、再始動特性の観点からはそのターン数は特に限定されるものではなく、必ずしも巻き付けられる必要はなく、また複数ターン巻き付けてもよい。しかし、ターン数が多くなると、発光管3から放射される光を遮ってしまうために、そのターン数は少ないほどよい。図6に示す例では、近接導体19を他方の細管部17bに巻き付けるにあたり、近接導体19を特別な加工を施すことなく自然に巻き付けるためにその部分に1ターン巻き付けられている。
次に、本発明の第三の実施の形態に係る照明システムの構成による作用効果を確認するための実験を行った。
使用したメタルハライドランプにおいて、水銀の封入量を1.84mg/cm3 (全量で0.8mg)とし、第一の螺旋状部分19aのターン数を2ターンとしたものを10本作製した。そして、作製した各々のランプを上記した電子安定器を用いて通常どおりの方法で1時間連続点灯させた後に一旦消灯させて再始動を行い、消灯直後(電源オフ後)から再始動するまでの再始動時間を測定したところ、表1のような結果が得られた。
すなわち、平均再始動時間は本発明の第一の実施の形態に係る照明システムに比して1/3以下である8.2秒であった。なお、サンプルの中で最も再始動時間が短かったのは1.0秒であった。
再始動時、ランプを目視によって観察すると、本発明の第一の実施の形態に係る照明システムのメタルハライドランプ1とは異なる現象が見られた。すなわち、本発明の第一の実施の形態に係る照明システムのメタルハライドランプ1の場合、第一の電極部25aと例えば近接導体19のうち、平面Pと平面Qとの間に存在する任意の点(点a)との間で本管部16を介してアーク放電の発光が見られた後、瞬間的(0.5秒)に各々の電極部25a,25b間の絶縁破壊に移行した。
ところが、本発明の第三の実施の形態に係る照明システムのメタルハライドランプの場合、同様に第一の電極部25aと例えば近接導体19のうち、平面Pと平面Qとの間に存在する任意の点(点a)との間で本管部16を介してアーク放電の発光が見られた後、そのアーク放電が第一の電極部25aと近接導体19のうちの前記点aに対して第二の電極部25b寄りの点bに連続的に移行し、さらにこれが近接導体19のうちの電極部25b付近まで連続的に移行し続け、各々の電極部25a,25b間の絶縁破壊に移行していることがわかった。この間、0.2秒〜0.5秒である。
言い換えれば、本発明の第一の実施の形態に係る照明システムのメタルハライドランプ1の場合、第一の電極部25aと点aとの間で本管部16を介してアーク放電が発生したものの、それがそのまま各々の電極部25a,25b間の絶縁破壊へと移行しない場合があるのに対して、本発明の第三の実施の形態に係る照明システムのメタルハライドランプの場合、同様に第一の電極部25aと点aとの間で本管部16を介して発生したアーク放電は、近接導体19によって第二の電極部25b付近へと誘導され、高い確率で各々の電極部25a,25b間の絶縁破壊に移行していると考えられる。
したがって、本発明の第三の実施の形態に係る照明システムの構成によれば、本発明の第一の実施の形態に係る照明システムに比して再始動の確実性が増し、その結果、再始動特性を一層大幅に改善することができる。
この第三の実施の形態では、水銀の封入量を1.84mg/cm3 とし、第一の螺旋状部分19aのターン数を2ターンとした場合について説明したが、水銀の封入量が2.5mg/cm3 以下、第一の螺旋状部分19aのターン数が2ターン以上であればいずれの場合でも上記と同様の作用効果を得ることができる。
(第四の実施の形態)
以下、第四の実施の形態について説明する。使用する電子安定器の回路構成については、図8と同様である。この実施の形態では、無負荷時のスイッチング素子Q3〜Q6の動作が第一の実施の形態とは異なり、図16に示すように、スイッチング素子Q3,Q6のオン幅t1とスイッチング素子Q4,Q5のオン幅t2とがアンバランス(t1≠t2)となるように制御している。このように制御すると、放電ランプLaへの印加電圧Vlaは図16に示すように、正負の振幅がアンバランスな共振電圧となることから、正の振幅のピークで放電ランプLaが始動しやすくなる。つまり、共振電圧のピーク−ピーク値が図9と同じであっても、図16のように正負の振幅がアンバランスな共振電圧とすることで、放電ランプLaが絶縁破壊しやすくなるという第1の効果がある。
また、図17に示すように、絶縁破壊の直後から電極間に直流電流を流すことができるという第2の効果がある。
第一の実施の形態では、図9に示すような始動時の高周波動作から図11に示すような安定点灯時の低周波矩形波動作に切り替えるまでの間は、放電灯Laに直流電流を流せないが、本実施の形態では、図17に示すように、始動時に印加される高周波高電圧を正負の振幅がアンバランスな電圧としておくことで、ランプ始動の直後から電極間に直流のランプ電流Ilaを流し始めることができ、これによりグロー放電からアーク放電への移行に必要なエネルギーを注入し、スムーズにアーク放電に移行させることができる。
(第五の実施の形態)
図18に第五の実施の形態の動作波形を示す。使用する電子安定器の回路構成については、図8と同様である。この実施の形態では、無負荷時のスイッチング素子Q3〜Q6の動作は第一の実施の形態の図9と同様であり、これをA期間とする。また、定常点灯時のスイッチング素子Q3〜Q6の動作は第一の実施の形態の図11と同様であり、これをC期間とする。本実施の形態では、A期間とC期間の間に、第四の実施の形態の図17の動作を介在させており、これをB期間とする。
本実施の形態では、無負荷時の高周波動作の期間Aと定常点灯時の低周波矩形波動作の期間Cの間に、高周波電流と直流電流が重畳して流れる期間Bを設けたことで、スムーズに動作を切り替えることができる利点がある。各期間の切替はタイマーにより切り替えても良いし、放電ランプの状態を検出して切り替えても良い。
(第六の実施の形態)
図19に第六の実施の形態の動作波形を示す。この実施の形態では、第五の実施の形態のB期間において高周波動作の代りにランプに直流電流を流すようにしたものである。
本実施の形態では、ランプ始動直後の放電が不安定な期間にランプに流れる電流が極性反転する際に立消えするのを回避できる効果が得られる。
(第七の実施の形態)
図20に第七の実施の形態の回路構成を示す。図8に示した基本構成において、降圧チョッパ回路を省略した点が異なる。降圧チョッパ回路の機能は、極性反転回路のフルブリッジ回路を構成する片側のスイッチング素子Q5,Q6を高周波動作させることにより実現している。
図21に定常点灯時の動作波形を示す。スイッチング素子Q3,Q4については、図11と同様に数10〜数100Hzの低周波で交互にオン・オフするように動作する。一方、スイッチング素子Q5,Q6については、降圧チョッパ回路のスイッチング素子Q2の機能を兼用するべく、交互に高周波でオン・オフ動作する。スイッチング素子Q3がオンの期間では、スイッチング素子Q6が高周波でオン・オフすることで、インダクタL2を限流要素とし、ダイオードD5を回生用ダイオードとする降圧チョッパ回路として動作する。また、スイッチング素子Q4がオンの期間では、スイッチング素子Q5が高周波でオン・オフすることで、インダクタL2を限流要素とし、ダイオードD6を回生用ダイオードとする降圧チョッパ回路として動作する。
なお、始動時のスイッチング素子Q3〜Q6の動作については、図9の波形図と同様である。始動時にはコンデンサC1の電圧を降圧する必要は無いから、降圧チョッパ回路の機能は不要である。スイッチング素子Q3,Q4が高周波で交互にオン・オフすることでインダクタL3とコンデンサC3のLC直列共振回路には、昇圧チョッパ回路の出力コンデンサC1の電圧が断続的に印加される。スイッチング素子Q3,Q4のスイッチング周波数を、インダクタL3とコンデンサC3のLC直列共振回路の共振周波数(又はその整数倍又は整数分の1)の近傍に設定する(あるいはその周波数近傍で変化させる)ことにより、インダクタL3とコンデンサC3の接続点には共振作用により高電圧が発生し、放電ランプ1を絶縁破壊することができる。
(第八の実施の形態)
図22に第八の実施の形態の回路構成を示す。図20において、スイッチング素子Q5,Q6をそれぞれコンデンサC5,C6に置き換えて、ハーフブリッジ型の極性反転回路としたものであり、出力電圧がフルブリッジ型に比べて約半分に低下する代わりに、片側のドライバIC46とスイッチング素子Q5,Q6を省略でき、回路構成を単純化できる利点がある。なお、直流電源回路部40を昇降圧チョッパ回路または降圧チョッパ回路またはその他のAC−DCコンバータで構成しても良い。
なお、上記各実施の形態では、第一の螺旋状部分19aが第一の細管部17a側に巻き付けられているとともに、近接導体19が第二の細管部17b側に位置している第二の電極部25bと電気的に接続されている場合について説明したが、近接導体19の取付け方が逆の場合、すなわち第一の螺旋状部分19aが第二の細管部17b側に巻き付けられているとともに、近接導体19が第一の細管部17a側に位置している第一の電極部25aと電気的に接続されている場合についても上記と同様の作用効果を得ることができる。
また、上記各実施の形態では、定格電力150Wのメタルハライドランプを用いた場合について説明したが、これに限らず例えば70W〜300Wのメタルハライドランプを用いた場合でも上記と同様の作用効果を得ることができる。
図7は本発明の照明システムを天井用照明装置に適用した構成例を示している。この照明装置では、天井30に組み込まれた傘状の反射灯具31とこの反射灯具31の底部に取り付けられた板状のベース部32と反射灯具31内に底部に設けられたソケット部33とを有する照明器具34と、この照明器具34内のソケット部33に取付けられた本発明の第一の実施の形態に係る定格電力150Wのメタルハライドランプ1と、ベース部32の反射灯具31から離間した位置に取り付けられた電子安定器35とを備えている。