以下、本発明の光情報記録媒体について説明する。本発明の光情報記録媒体は、基板上に、記録層、中間層、接着層およびカバー層をこの順に有する光情報記録媒体である。
本発明の光情報記録媒体は、中間層からカバー層までのモコン法による水分透過度が、75g/(m2・d)以下となっている。水分透過度が、75g/(m2・d)を超えるとカバー層から水分が記録層や反射層に混入し、記録特性が低下してしまう。当該水分透過度は、40g/(m2・d)以下であることが好ましい。ここで、水分透過度の単位中の「d」は、1日(24h)のことである。なお、特に限定されるものではないが、現状での下限値は0.01g/(m2・d)である。
当該モコン法による水分透過度の測定は、主に、「JIS K7129B」を基本として、以下のようにして行う。すなわち、モコン社製の水分透過率測定機(PERMATRAN W3/31)を使用し、温度40℃、上部セルの湿度10%と下部セルの湿度100%(上下セルの相対湿度差:90%)に設定し、上下セルの中間に、測定するフィルム状のカバー層を挿入する。上下セルはカバー層を通して区切られた構造になっている。下部セルは相対湿度の高い雰囲気を保ち、上部セルは試験片を通過してきた水蒸気を蓄積する構造であり上部セルにある赤外線湿度センサーにて通過してきた水分量を測定する。測定時間は、好ましくは12〜36時間であり、厳密には24時間である。
前述のフィルム状のカバー層は、以下の2種類(方法1および方法2)のいずれかの方法で作製することが好ましい。これら2種の方法は、接着する方法や中間層を設ける場所等に応じて選ぶことができる。
方法1(ディスク(光情報記録媒体)から剥離し測定する方法):
作製した光情報記録媒体の記録層より上部(中間層からカバー層まで)を剥離する。剥離したフィルム(カバー層)を開口部にあわせて切り出す。透過面積が5cm2になるように一部をアルミニウムでマスクして、フィルム状のカバー層とする。
方法2(基板上に貼り合せる前に測定する方法):
貼り合せる前のカバー層(カバーシート)をセルの開口部にあわせて切り出す。透過面積が5cm2になるように一部をアルミニウムでマスクする。このとき、通常、記録層上に設ける中間層は同条件でカバーフィルム上に成膜して、フィルム状のカバー層とする。
本発明の光情報記録媒体の層構成としては、基板上に、記録層と、中間層と、接着層とカバーシートを含むカバー層とが形成された構成であれば特に限定されるものではない。例えば、カバー層が、カバーシートと、その上に形成されたハードコート層とを含む構成であってもよい。ハードコート層を形成することで、水分透過度を上記範囲に調整することが容易となり、また、耐傷性も向上させることができる。
また、記録層と接着層との間に形成される中間層の他に、接着層とカバー層との間に、さらに、中間層(以下、「第2の中間層」ということがある)が形成されていることが好ましい。第2の中間層が形成されることで、水分透過率の調整がより容易にしやすくなる。
本発明の光情報記録媒体の層構成を図1に例示する。当該光情報記録媒体100は、基板10上に、任意の反射層12と、記録層14と、中間層16と、接着層18と、カバー層としてのカバーシート20とをこの順に有している。以下、主に、基板および各層について説明する。
<基板>
基板としては、従来の光情報記録媒体の基板材料として用いられている各種の材料を任意に選択して使用することができる。
具体的には、ガラス;ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;エポキシ樹脂;アモルファスポリオレフィン;ポリエステル;アルミニウム等の金属;等を挙げることができ、所望によりこれらを併用してもよい。
上記材料の中では、耐湿性、寸法安定性および低価格等の点から、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィンが好ましく、ポリカーボネートが特に好ましい。また、基板の厚さは、0.5〜1.4mmとすることが好ましい。
基板には、トラッキング用の案内溝またはアドレス信号等の情報を表わす凹凸(プレグルーブ)が形成されている。より高い記録密度を達成するためにCD−RやDVD−Rに比べて、より狭いトラックピッチのプレグルーブが形成された基板を用いることが好ましい。プレグルーブのトラックピッチは、300〜600nmである。また、プレグルーブの深さ(溝深さ)は、40〜150nmの範囲である。
なお、後述する反射層が設けられる側の基板表面には、平面性の改善、接着力の向上の目的で、下塗層を形成することが好ましい。
該下塗層の材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、N−メチロールアクリルアミド、スチレン・ビニルトルエン共重合体、クロルスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の高分子物質;シランカップリング剤等の表面改質剤;を挙げることができる。
下塗層は、上記材料を適当な溶剤に溶解または分散して塗布液を調製した後、この塗布液をスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコート等の塗布法により基板表面に塗布することにより形成することができる。下塗層の層厚は、一般に0.005〜20μmの範囲にあり、好ましくは0.01〜10μmの範囲である。
<反射層>
反射層には、レーザ光に対する反射率が高い光反射性物質が用いられる。当該反射率としては、70%以上である。
反射率の高い光反射性物質としては、Mg、Se、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi等の金属および半金属あるいはステンレス鋼を挙げることができる。これらの光反射性物質は単独で用いてもよいし、あるいは二種以上の組合せで、または合金として用いてもよい。これらのうちで好ましいものは、Cr、Ni、Pt、Cu、Ag、Au、Alおよびステンレス鋼である。特に好ましくは、Au、Ag、Alあるいはこれらの合金であり、最も好ましくは、Au、Agあるいはこれらの合金である。
反射層は、前述した光反射性物質を蒸着、スパッタリングまたはイオンプレーティングすることにより基板上に形成することができる。反射層の層厚は、一般的には10〜300nmの範囲とし、50〜200nmの範囲とすることが好ましい。当該反射層は、以下の記録層の反射率が十分大きい場合には必ずしも必要ではない。
<記録層>
記録層は、基板もしくは上記反射層上に形成され、少なくとも、波長が380〜500nmで、レンズ開口率NAが0.7以上のレーザ光により情報の記録再生が可能な有機物(色素)を含有する層であることが好ましい。
前記有機物としては、トリアゾール系化合物、フタロシアニン化合物、ポリフィリン系化合物、アミノブタジエン系化合物、シアニン系化合物、オキソノール化合物(オキソノール色素)等でこれらの少なくとも一種であることが好ましい。特に、フタロシアニン色素およびオキソノール色素が好ましい。
また、特開平4−74690号公報、特開平8−127174号公報、同11−53758号公報、同11−334204号公報、同11−334205号公報、同11−334206号公報、同11−334207号公報、特開2000−43423号公報、同2000−108513号公報、および同2000−158818号公報等に記載されている色素を併用することができる。
さらに、上記色素には限定されず、トリアゾール化合物、トリアジン化合物、シアニン化合物、メロシアニン化合物、アミノブタジエン化合物、フタロシアニン化合物、桂皮酸化合物、ビオロゲン化合物、アゾ化合物、オキソノールベンゾオキサゾール化合物、ベンゾトリアゾール誘導体等の有機化合物も好適に用いられる。これらの化合物の中では、ベンゾトリアゾール誘導体、フタロシアニン化合物が特に好ましい。
以下、特に好ましい色素であるフタロシアニン色素およびオキソノール色素について説明する。
当該フタロシアニン色素は、下記一般式(A)で表される構造を有することが好ましい。
一般式(A)中、Rα1〜Rα8及びRβ1〜Rβ8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、カルボキシル基、スルホ基、炭素数1〜20の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数6〜14の置換若しくは無置換のアリール基、炭素数1〜10の置換若しくは無置換のヘテロ環基、炭素数1〜20の置換若しくは無置換のアルコキシ基、炭素数6〜14の置換若しくは無置換のアリールオキシ基、炭素数2〜21の置換若しくは無置換のアシル基、炭素数1〜20の置換若しくは無置換のアルキルスルホニル基、炭素数6〜14の置換若しくは無置換のアリールスルホニル基、炭素数1〜10のヘテリルスルホニル基、炭素数1〜25の置換若しくは無置換のカルバモイル基、炭素数0〜32の置換若しくは無置換のスルファモイル基、炭素数2〜20の置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、炭素数7〜15のアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜21の置換若しくは無置換のアシルアミノ基、又は炭素数1〜20の置換若しくは無置換のスルホニルアミノ基を表す。また、Rα1〜Rα8のすべてが水素原子であることはなく、Rα1〜Rα8及びRβ1〜Rβ8のうち少なくとも8つは水素原子である。Mは、2個の水素原子、2価〜4価の金属原子、2価〜4価のオキシ金属原子、又は配位子を有する2価〜4価の金属原子を表す。
一般式(A)におけるRα1〜Rα8及びRβ1〜Rβ8の好ましいものとしては、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、炭素数1〜16の置換若しくは無置換のアルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル)、炭素数6〜14の置換若しくは無置換のアリール基(例えば、フェニル、p−メトキシフェニル、p−オクタデシルフェニル)、炭素数1〜16の置換若しくは無置換のアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、n−オクチルオキシ)、炭素数6〜10の置換若しくは無置換のアリールオキシ基(フェノキシ、p−エトキシフェノキシ)、炭素数1〜20の置換若しくは無置換のアルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル、n−プロピルスルホニル、n−オクチルスルホニル)、炭素数6〜14の置換若しくは無置換のアリールスルホニル基(例えば、トルエンスルホニル、ベンゼンスルホニル)、炭素数0〜20の置換若しくは無置換のスルファモイル基(メチルスルファモイル基、n−ブチルスルファモイル)、炭素数1〜17のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル)、炭素数7〜15の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル、m−クロロフェニルカルボニル)、炭素数2〜21の置換若しくは無置換のアシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、n−ヘキシルアミノ)、炭素数1〜18のスルホニルアミノ基(例えば、メタンスルホニルアミノ、n−ブタンスルホニルアミノ)である。
中でも、Rα1〜Rα8及びRβ1〜Rβ8のより好ましいものは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、炭素数1〜16の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数1〜16の置換若しくは無置換のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数6〜14の置換若しくは無置換のアリールスルホニル基、炭素数2〜20のスルファモイル基、炭素数1〜13のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜21の置換若しくは無置換のアシルアミノ基、炭素数1〜18のスルホニルアミノ基である。
更に好ましいものは、Rα1〜Rα8が、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、炭素数1〜16の置換若しくは無置換のアルコキシ基、炭素数1〜20の置換若しくは無置換のアルキルスルホニル基、炭素数6〜14の置換若しくは無置換のアリールスルホニル基、炭素数2〜20の置換若しくは無置換のスルファモイル基、炭素数2〜12のアシルアミノ基、炭素数1〜18のスルホニルアミノ基であり、Rβ1〜Rβ8が、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子である。
特に好ましいものは、Rα1〜Rα8が、それぞれ独立に、水素原子、スルホ基、炭素数1〜20の無置換のアルキルスルホニル基、炭素数6〜14の無置換のアリールスルホニル基、炭素数7〜20の無置換のスルファモイル基であり、Rβ1〜Rβ8が、水素原子である。
前記一般式(A)における、Rα1及びRα2のいずれか一方、Rα3及びRα4のいずれか一方、Rα5及びRα6のいずれか一方、Rα7及びRα8のいずれか一方の計4つの置換基は、同時に水素原子ではないことが好ましい。
一般式(A)におけるRα1〜Rα8及びRβ1〜Rβ8は、更に置換基を有していてもよく、その導入可能な置換基の例としては、以下に記載のものを挙げることができる。
炭素数1〜20の鎖状又は環状の置換若しくは無置換のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基)、炭素数6〜18の置換若しくは無置換のアリール基(例えば、フェニル基、クロロフェニル基、2,4−ジ−t−アミルフェニル基、1−ナフチル基)、炭素数2〜20の置換若しくは無置換のアルケニル基(例えば、ビニル基、2−メチルビニル基)、炭素数2〜20の置換若しくは無置換のアルキニル基(例えば、エチニル基、2−メチルエチニル基、2−フェニルエチニル基)、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I)、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、炭素数2〜20の置換若しくは無置換のアシル基(例えば、アセチル基、ベンゾイル基、サリチロイル基、ピバロイル基)、炭素数1〜20の置換若しくは無置換のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基)、炭素数6〜20のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、1−ナフトキシ基、p−メトキシフェノキシ基)、炭素数1〜20の置換若しくは無置換のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、ブチルチオ基、ベンジルチオ基、3−メトキシプロピルチオ基)、炭素数6〜20の置換若しくは無置換のアリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、4−クロロフェニルチオ基)、炭素数1〜20の置換若しくは無置換のアルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、ブタンスルホニル基)、
炭素数6〜20の置換若しくは無置換のアリールスルホニル基(例えば、ベンゼンスルホニル基、パラトルエンスルホニル基)、炭素数1〜17の置換若しくは無置換のカルバモイル基(例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、n−ブチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基)、炭素数1〜16の置換若しくは無置換のアシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基)、炭素数2〜10の置換若しくは無置換のアシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基)、炭素数2〜10の置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基)、及び5員若しくは6員の置換若しくは無置換のヘテロ環基(例えば、ピリジル基、チエニル基、フリル基、チアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基等の芳香族ヘテロ環基;ピロリジン環基、ピペリジン環基、モルホリン環基、ピラン環基、チオピラン環基、ジオキサン環基、ジチオラン環基等のヘテロ環基)。
また、Rα1〜Rα8及びRβ1〜Rβ8に導入可能な置換基として好ましいものは、炭素数1〜16の鎖状又は環状の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数6〜14の置換若しくは無置換のアリール基、炭素数1〜16の置換若しくは無置換のアルコキシ基、炭素数6〜14の置換若しくは無置換のアリールオキシ基、ハロゲン原子、炭素数2〜17の置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10の置換若しくは無置換のカルバモイル基、炭素数1〜10の置換若しくは無置換のアシルアミノ基である。
より好ましいものは、炭素数1〜10の鎖状又は環状のアルキル基、炭素数6〜10の置換若しくは無置換のアリール基、炭素数1〜10の置換若しくは無置換のアルコキシ基、炭素数6〜10の置換若しくは無置換のアリールオキシ基、塩素原子、炭素数2〜11の置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜7の置換若しくは無置換のカルバモイル基、炭素数1〜8の置換若しくは無置換のアシルアミノ基である。
更に好ましいものとしては、炭素数1〜8の鎖状分岐又は環状の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数1〜8の置換若しくは無置換のアルコキシ基、炭素数3〜9の置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、フェニル基、塩素原子である。
最も好ましいものは、炭素数1〜6の無置換のアルコキシ基である。
一般式(A)におけるMは、2価〜4価の金属原子であることが好ましく、中でも、銅原子、ニッケル原子、又はパラジウム原子が好ましく、更に、銅原子又はニッケル原子がより好ましく、特に、銅原子が好ましい。
一般式(A)で表される化合物(フタロシアニン色素)は、任意の位置で結合して多量体を形成していてもよく、この場合の各単位は互いに同一でも異なっていてもよい。また、一般式(A)で表される化合物は、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、セルロース等のポリマー鎖に結合していてもよい。
以下に、一般式(A)で表されるフタロシアニン色素の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
下記表1〜表7において、例えば、Rx/Ry(x及びyは、α1〜α8、β1〜β8のいずれかを表わす)という表記はRx又はRyのいずれか一方という意味を表しており、従ってこの表記のある化合物は置換位置異性体の混合物である。また、無置換の場合、即ち水素原子が置換している場合は表記を省略している。
本発明において色素記録層に含有する色素として、一般式(A)で表されるフタロシアニン色素を使用する場合、1種を単独で使用してもよく、また、構造の異なったものを複数種混合して用いてもよく、更に、他の色素と併用してもよい。特に、色素記録層の結晶化を防ぐ目的で、置換基の置換位置が異なる異性体の混合物を使用することが好ましい。
また、本発明においてオキソノール色素とは、アニオン性発色団を有するポリメチン色素と定義する。記録特性に優れる点で、下記一般式(I)で表されるオキソノール色素が特に好適に用いられる。
一般式(I)中、A、B、C及びDは、AとBのハメットのσp値の合計及びCとDのハメットのσp値の合計がそれぞれ0.6以上となる電子吸引性基であり、AとBもしくはCとDは連結して環を形成していてもよく、Rはメチン炭素上の置換基を表し、mは0乃至3の整数を表し、nは0乃至2m+1の整数を表し、nが2以上の整数のとき、複数個のRは互いに同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成していてもよく、Yt+はt価のカチオンを表し、tは1乃至10の整数を表す。
一般式(I)はアニオンの局在位置の表記の違いによる複数の互変異性体を含むものであるが、特にA、B、C、Dのいずれかが−CO−E(Eは置換基)である場合、酸素原子上に負電荷を局在させて表記することが一般的である。例えばDが−CO−Eである場合、表記としては下記一般式(II)が一般的であり、このような表記のものも一般式(I)に含まれる。
一般式(II)におけるA、B、C、R、m、n、Yt+、tの定義は一般式(I)と同一である。
以下、上記一般式(I)で表されるオキソノール色素について説明する。一般式(II)において、A、B、CおよびDは、AとBのハメットの置換基定数σp値の合計及びCとDのハメットの置換基定数σp値の合計がそれぞれ0.6以上となる電子吸引性基を表す。A、B、CおよびDはそれぞれ同一でもよく、また異なっていてもよい。また、AとB、もしくはCとDは連結して環を形成していてもよい。A、B、C及びDで表される電子吸引性基のハメットの置換基定数σp値は、それぞれ独立に0.30〜0.85の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは、0.35〜0.80の範囲である。
ハメットの置換基定数σp値(以下、σp値という)は、例えばChem.Rev.91,165(1991)及びこれに引用されている参考文献に記載されており、記載されていないものについても同文献記載の方法によって求めることが可能である。AとB(CとD)が連結して環を形成している場合、A(C)のσp値は、−A−B−H(−C−D−H)基のσp値を意味し、B(D)のσp値は、−B−A−H(−D−C−H)基のσp値を意味する。この場合、両者は結合の方向が異なるためσp値は異なる。
A、B、C及びDで表される電子吸引性基の好ましい具体例としては、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1乃至10のアシル基(例、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ピバロイル、ベンゾイル)、炭素原子数2乃至12のアルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、デシルオキシカルボニル)、炭素原子数7乃至11のアリールオキシカルボニル基(例、フェノキシカルボニル)、炭素原子数1乃至10のカルバモイル基(例、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、フェニルカルバモイル)、炭素原子数1乃至10のアルキルスルホニル基(例、メタンスルホニル)、炭素原子数6乃至10のアリールスルホニル基(例、ベンゼンスルホニル)、炭素原子数1乃至10のアルコキシスルホニル基(例、メトキシスルホニル)、炭素原子数1乃至10のスルファモイル基(例、エチルスルファモイル、フェニルスルファモイル)、炭素原子数1乃至10のアルキルスルフィニル基(例、メタンスルフィニル、エタンスルフィニル)、炭素原子数6乃至10のアリールスルフィニル基(例、ベンゼンスルフィニル)、炭素原子数1乃至10のアルキルスルフェニル基(例、メタンスルフェニル、エタンスルフェニル)、炭素原子数6乃至10のアリールスルフェニル基(例、ベンゼンスルフェニル)、ハロゲン原子、炭素原子数2乃至10のアルキニル基(例、エチニル)、炭素原子数2乃至10のジアシルアミノ基(例、ジアセチルアミノ)、ホスホリル基、カルボキシル基、5員もしくは640員のヘテロ環基(例えば、2−ベンゾチアゾリル、2−ベンゾオキサゾリル、3−ピリジル、5−(1H)−テトラゾリル、4−ピリミジル)を挙げることができる。
一般式(I)において、Rで表されるメチン炭素上の置換基としては、例えば以下に記載のものを挙げることができる。炭素原子数1〜20の鎖状又は環状のアルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル)、炭素原子数6〜18の置換又は無置換のアリール基(例えば、フェニル、クロロフェニル、アニシル、トルイル、2,4−ジ−t−アミル、1−ナフチル)、アルケニル基(例えば、ビニル、2−メチルビニル)、アルキニル基(例えば、エチニル、2−メチルエチニル、2−フェニルエチニル)、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I)、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アシル基(例えば、アセチル、ベンゾイル、サリチロイル、ピバロイル)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、ブトキシ、シクロヘキシルオキシ)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、1−ナフトキシ)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、ブチルチオ、ベンジルチオ、3−メトキシプロピルチオ)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、4−クロロフェニルチオ)、
アルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル、ブタンスルホニル)、アリールスルホニル基(例えば、ベンゼンスルホニル、パラトルエンスルホニル)、炭素原子数1〜10のカルバモイル基、炭素原子数1〜10のアミド基、炭素原子数2〜12のイミド基、炭素原子数2〜10のアシルオキシ基、炭素原子数2〜10のアルコキシカルボニル基、ヘテロ環基(例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリルなどの芳香族ヘテロ環、ピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環、ピラン環、チオピラン環、ジオキサン環、ジチオラン環などの脂肪族ヘテロ環)である。
Rとして好ましいものは、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至8の鎖状又は環状のアルキル基、炭素原子数6乃至10のアリール基、炭素原子数1乃至8のアルコキシ基、炭素原子数6乃至10のアリールオキシ基、炭素原子数3乃至10のヘテロ環基であり、特に塩素原子、炭素原子数1乃至4のアルキル基(例:メチル、エチル、イソプロピル)、フェニル、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基(例:メトキシ、エトキシ)、フェノキシ、炭素原子数4乃至8の含窒素ヘテロ環基(例:4−ピリジル、ベンゾオキサゾール−2−イル、ベンゾチアゾール−2−イル)が好ましい。
nは0乃至2m+1の整数を表すが、nが2以上の整数のとき、複数個のRは互いに同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成してもよい。このとき環員数は4乃至8が好ましく、特に5又は6が好ましく、環の構成原子は炭素原子、酸素原子又は窒素原子が好ましく、特に炭素原子が好ましい。
A、B、C、D及びRは更に置換基を有していてもよく、置換基の例としては、一般式(I)におけるRで表される一価の置換基の例として先に挙げたものと同様のものを挙げることができる。
光情報記録媒体に用いられる色素としては熱分解性の観点からAとB、またはCとDが連結して環を形成することが好ましく、そのような環の例として以下のようなものが挙げられる。なお、例示中、Ra、Rb及びRcは各々独立に、水素原子または置換基を表す。
上記好ましい環は、A−8、A−9、A−10、A−11、A−12、A−13、A−14、A−16、A−17,A−36、A−39、A−41、A−54、及びA−57で示されるものである。更に好ましくは、A−8、A−9、A−10、A−13、A−14、A−16、A−17及びA−57で示されるものである。最も好ましくは、A−9、A−10、A−13、A−17及びA−57で示されるものである。
Ra、Rb及びRcで表される置換基は、それぞれ前記Rで表される置換基として挙げたものと同義である。またRa、Rb及びRcはそれぞれ互いに連結して炭素環又は複素環を形成してもよい。炭素環としては、例えば、シクロヘキシル環、シクロペンチル環、シクロヘキセン環、及びベンゼン環などの飽和または不飽和の4〜7員の炭素環を挙げることができる。また複素環としては、例えば、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、テトラヒドロフラン環、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、及びピラジン環などの飽和または不飽和の4〜7員の複素環を挙げることができる。これらの炭素環または複素環は更に置換されていてもよい。更に置換し得る基としては、前記Rで表される置換基として挙げたものと同義である。
一般式(I)において、mは0乃至3の整数であるが、このmの値によって該オキソノール色素の吸収波長が大きく変化する。記録再生に用いるレーザの発振波長に応じて最適な吸収波長の色素を設計する必要があるが、この点においてmの値の選択は重要である。録再生に用いるレーザの中心発振波長が780nmの場合(CD−R記録用の半導体レーザ)、一般式(I)においてmは2又は3が好ましく、中心発振波長が635nm又は650nmの場合(DVD−R記録用の半導体レーザ)、mは1又は2が好ましく、中心発振波長が550nm以下の場合(例えば、中心発振波長405nmの青紫色半導体レーザ)は、mは0又は1が好ましい。
一般式(I)において、Yt+で表されるt価のカチオンは、無機又は有機の何れのカチオンでもよく、無機のカチオンとしては、例えば、水素イオン、金属イオン、アンモニウムイオン(NH4 +)を挙げることができ、好ましくは金属イオンであり、特にアルカリ金属イオン(例:Li+、Na+、K+)又は遷移金属イオン(例:Cu2+、Co2+)が好ましい。また、遷移金属イオンの場合、有機リガンドが配位しているものでも良い。
Yt+で表されるt価の有機のカチオンとしては、オニウムイオンが好ましく、下記一般式(III)で表されるものが特に好ましい。これらの化合物は、対応するジピリジルと目的の置換基を持つハロゲン化物とのメンシュトキン反応(例えば、特開昭61−148162号公報参照)、あるいは特開昭51−16675号公報および特開平1−96171号公報に記載の方法に準ずるアリール化反応により容易に得ることができる。
式中R31およびR32はそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、R33は置換基を表し、sは0乃至8の整数を表し、sが2以上の整数のとき、複数個のR33はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成していてもよい。
一般式(III)において、R31もしくはR32で表されるアルキル基は、炭素原子数1〜18が好ましく、更に炭素数1〜8が好ましく、直鎖、分岐又は環状であってもよく、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、イソアミル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、2−エチルヘキシル、n−オクチルを挙げることができる。
一般式(III)において、R31もしくはR32で表されるアルケニル基は、炭素数2〜18が好ましく、更に炭素数2〜8が好ましく、例えばビニル、2−プロペニル、2−メチルプロペニル、1,3−ブタジエニルを挙げることができる。
一般式(III)において、R31もしくはR32で表されるアルキニル基は、炭素数2〜18が好ましく、更に炭素数2〜8が好ましく、例えばエチニル、プロピニル、3,3−ジメチルブチニルを挙げることができる。
一般式(III)において、R31もしくはR32で表されるアリール基は、炭素数6〜18が好ましく、更に炭素数6〜10が好ましく、例えばフェニル、1−ナフチル、2−ナフチルを挙げることができる。
一般式(III)において、R31もしくはR32で表されるヘテロ環基は、炭素数4〜7の飽和又は不飽和のヘテロ環基が好ましく、含有されるヘテロ原子としては窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましく、例えば4−ピリジル、2−ピリジル、2−ピラジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、2−イミダゾリル、2−フリル、2−チオフェニル、2−ベンゾオキサゾリル、2−ベンゾチオキサゾリルを挙げることができる。
一般式(III)のR31およびR32は更に置換基を有していてもよく、置換基としては一般式(I)のRを表す置換基として例示したものと同様のものを挙げることが
できる。
一般式(III)においてR33で表される置換基は、一般式(II)のRと同義であり、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜8の無置換アルキル基である。
一般式(III)において、sは0乃至8の整数を表すが、sは0〜4が好ましく、更に0〜2であることが好ましく、特に0が好ましい。sが2以上の整数のとき、複数個のR33はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、また互いに連結して環を形成していてもよい。また、一般式(III)において二つのピリジン環は、何れの位置で連結していてもよいが、ピリジン環の2位もしくは4位で連結するのが好ましく、特に両ピリジン環の4位同士で連結するのが好ましい。
一般式(I)で表されるオキソノール色素は、任意の位置で結合して多量体を形成していてもよく、この場合の各単位は互いに同一でも異なっていてもよく、またポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、セルロース等のポリマー鎖に結合していてもよい。
一般式(I)で表されるオキソノール色素の具体例としては、特開昭63−209995号公報、特開平10−297103号公報、同11−78106号公報、同11−348420公報、特開2000−52658公報、特願平11−78106号公報に記載されたオキソノール色素の具体例を挙げることができる。その一部の化合物を以下に例示する。
記録層は、その耐光性を向上させるために、種々の褪色防止剤を含有することが好ましい。褪色防止剤としては、有機酸化剤や一重項酸素クエンチャーを挙げることができる。褪色防止剤として用いられる有機酸化剤としては、特開平10−151861号に記載されている化合物が好ましい。一重項酸素クエンチャーとしては、既に公知の特許明細書等の刊行物に記載のものを利用することができる。その具体例としては、特開昭58−175693号、同59−81194号、同60−18387号、同60−19586号、同60−19587号、同60−35054号、同60−36190号、同60−36191号、同60−44554号、同60−44555号、同60−44389号、同60−44390号、同60−54892号、同60−47069号、同63−209995号、特開平4−25492号、特公平1−38680号、及び同6−26028号等の各公報、ドイツ特許350399号明細書、そして日本化学学会誌1992年10月号第1141頁などに記載のものを挙げることができる。
好ましい一重項酸素クエンチャーの例としては、下記の一般式(IV)で表わ
される化合物を挙げることができる。
(但し、上記式中、R31は置換基を有していてもよいアルキル基を表わし、Q-はアニオンを表わす。)
一般式(IV)において、R31は置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキ
ル基が一般的であり、無置換の炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。アルキル基の置換基としては、ハロゲン原子(例、F,Cl)、アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ)、アルキルチオ基(例、メチルチオ、エチルチオ)、アシル基(例、アセチル、プロピオニル)、アシルオキシ基(例、アセトキシ、プロピオニルオキシ)、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル)、アルケニル基(例、ビニル)、アリール基(例、フェニル、ナフチル)を挙げることができる。これらの中で、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基が好ましい。Q-のアニオンの例としては、ClO4-、AsF6-、BF4-、及びSbF6-が好ましい。
前記一重項酸素クエンチャー等の褪色防止剤の使用量は、記録するための化合物の量に対して、通常0.1〜50質量%の範囲であり、好ましくは、0.5〜45質量%の範囲、更に好ましくは、3〜40質量%の範囲、特に好ましくは5〜25質量%の範囲である。
記録層は、上記色素(有機物等)等の記録物質を、結合剤等と共に適当な溶剤に溶解して記録層塗布液を調製し、次いでこの記録層塗布液を基板表面に形成された反射層上に塗布して塗膜を形成したのち乾燥することにより形成される。記録層塗布液中の記録物質の濃度は、一般に0.01〜15質量%の範囲であり、好ましくは0.1〜10質量%の範囲、より好ましくは0.5〜5質量%の範囲、最も好ましくは0.5〜3質量%の範囲である。また、記録物質等を溶解処理する方法としては、超音波処理、ホモジナイザー、加温等の方法を適用することができる。
記録層塗布液を調製する際の溶剤としては、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン;ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素;ジメチルホルムアミド等のアミド;メチルシクロヘキサン等の炭化水素;テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサン等のエーテル;エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールジアセトンアルコール等のアルコール;2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;等を挙げることができる。
上記溶剤は使用する記録物質の溶解性を考慮して単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。塗布液中にはさらに酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、潤滑剤等各種の添加剤を目的に応じて添加してもよい。
結合剤を使用する場合に、結合剤の例としては、ゼラチン、セルロース誘導体、デキストラン、ロジン、ゴム等の天然有機高分子物質;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル・ポリ酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂;ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂;ポリビニルアルコール、塩素化ポリエチレン、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ゴム誘導体、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂の初期縮合物等の合成有機高分子;等を挙げることができる。記録層の材料として結合剤を併用する場合に、結合剤の使用量は、一般に記録物質に対して0.01倍量〜50倍量(質量比)の範囲にあり、好ましくは0.1〜5倍量(質量比)の範囲にある。このようにして調製される塗布液中の記録物質の濃度は、一般に0.01〜10質量%の範囲にあり、好ましくは0.1〜5質量%の範囲にある。
塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、スクリーン印刷法等を挙げることができる。記録層は単層でも重層でもよい。また、記録層の層厚は、一般に20〜500nmの範囲にあり、好ましくは30〜300nmの範囲にあり、より好ましくは50〜100nmの範囲にある。また、塗布温度としては、23〜50℃であれば特に問題はないが、好ましくは24〜40℃、さらに好ましくは25〜37℃である。
粘度制御のため、塗布温度は23〜50℃の範囲が好ましく、24〜40℃の範囲がより好ましく、25〜37℃の範囲がさらに好ましい。ディスクの反りを防止するため、塗布膜への紫外線の照射はパルス型の光照射器(好ましくは、UV照射器)を用いて行うのが好ましい。パルス間隔はmsec以下が好ましく、μsec以下がより好ましい。1パルスの照射光量は特に制限されないが、3kW/cm2以下が好ましく、2kW/cm2以下がより好ましい。
また、照射回数は特に制限されないが、20回以下が好ましく、10回以下がより好ましい。
<中間層>
中間層は、少なくとも、上記記録層と後述する接着層との間に形成される。また、既述のように、接着層とカバー層との間に、さらに、中間層(第2の中間層)が形成されていてもよい。記録層上に接着層を形成すると、接着層の接着剤が記録層の有機物を溶解してしまうが、中間層を設けることにより、接着剤が記録層に直接接触せず、記録層が接着剤によって溶解されるのを防止することができる。
中間層で水分透過率を調整するには、中間層を構成する構成成分と中間層の製膜条件とを適宜選択する。
中間層の構成成分としては、Nb、Al、Siを少なくとも1種含む酸化物や窒化物;Znを含む硫化物;等が好ましい。中でも、Nbを含む酸化物がより好ましい。製膜条件としては、できるだけ緻密な膜にすることが好ましく、そのためには、以下に説明する希ガスおよび酸素の混合ガスを用いたスパッタリング条件を採用することが好ましい。
中間層を形成する際に行われる、通常の希ガス(例えば、アルゴンガス)のみを導入してのスパッタリングでは、スパッタ時にはじき飛ばされる金属酸化物中の酸素が希ガスとともに排気され、形成される膜中の酸素数が減少し酸素欠損を招く。この酸素欠損がしみ状となり、中間層の光学特性に影響を及ぼす。そこで、希ガスとともに排気される酸素を補うため、予め導入ガスに酸素を混入させる。つまり、希ガスと酸素とを混合した混合ガスを導入ガスとして使用することにより、形成される膜には、ターゲットの金属酸化物由来の酸素と、混合ガス由来の酸素とが存在する。そして、導入ガス中の酸素量を適宜調整することにより、ターゲット側の金属酸化物の金属と酸素との比で緻密な膜を形成することができる。あるいは、ターゲット側の金属酸化物の金属と酸素との比と、混合ガス中の酸素の比率を調整することにより、所望の金属・酸素比の膜を形成することができる。
中間層は、例えば、Nbを含む酸化物をターゲットとしたスパッタリングにより成膜することができる。この場合、成膜時の圧力は1×10-2〜1×10-5torr(1.33〜1.33×10-3Pa)とすることが好ましく、レート(スパッタ速度)は0.1〜10nm/secとすることが好ましい。スパッタ電力は0.2〜4kWとすることが好ましく、0.4〜3kWとすることがより好ましく、0.5〜2.5kWとすることがさらに好ましい。
本発明においては、既述の通り、スパッタで使用するガスの種類は、Ar等の希ガスと酸素ガスとを使用する。ガスの流量は、希ガス及び酸素ガスのいずれの場合でも、1〜50sccm(1〜50ml/min)とすることが好ましい。また、ターゲットが金属酸化物の場合、酸素ガスの流量は、0.1〜25sccmとすることが好ましく、0.2〜20sccmとすることがより好ましく、0.5〜15sccmとすることがさらに好ましい。酸素ガスの流量を0.1〜25sccmとすることにより、安定な膜を十分な成膜速度で得ることができる。なお、希ガスと酸素ガスは予め混合して混合ガスとしても、スパッタ時に別々に導入してもよい。
RFスパッタの場合、そのチューニング(マッチング)を調整して、FWDに対するREFは10%以下とすることが好ましく、5%以下とすることがより好ましく、2.5%以下とすることがさらに好ましい
DCスパッタの場合、パルススパッタや、チョッパーなどにより、瞬間的にターゲットの帯電を除去する手法を組み合わせることが好ましい。
本発明においては、記録層と接着層との間の中間層の厚みは、30nm以下であることが好ましい。当該中間層は厚ければ相対的に水分透過率が低下する。しかし、厚くすることで、(1)光学特性が変化したり、2ピット部の接着層側への変形がなくなり初期の記録特性が低下してしまう。また、スパッタリングによる製膜時間が長くなり生産性が低下してしまう。そのため、できる限り薄い膜とすることが好ましい。かかる観点から、記録層と接着層との間の中間層の厚みは、30nm以下であることが好ましく、1.5〜20nmであることがより好ましい。
<カバー層>
カバー層は、光情報記録媒体内部への水分の侵入を防ぐために形成される層で、接着層とカバーシートとからなる。該カバー層は、厚さ0.05〜0.09mmのカバーシートを、25℃における硬化前の粘度が130mPa・s以上590mPa・s以下のUV硬化性接着剤を用いて貼り合わせて形成されたものであることが好ましい。カバーシートの材料は、透明な材質であれば特に限定されないが、好ましくはポリカーボネート、三酢酸セルロース等であり、より好ましくは、23℃50%RHでの吸湿率が5%以下の材料である。また、カバーシートの厚さは、好ましくは、0.07〜0.09mmであり、より好ましくは、0.08〜0.09mmである。カバーシートの厚さが0.05mm未満では、接着層の厚みが厚くなり、均一に塗布することが困難となり、厚みムラ±3μmの規格を満足することができなくなる。また、0.09mmを超えると、カバー層の厚さの規格(0.1mm)を満足することが困難になる。
なお、「透明」とは、記録光および再生光の光に対して、該光を透過する(透過率:80%以上)ほどに透明であることを意味する。
カバー層は、真空脱気泡した前記UV硬化性接着剤を、所定温度で中間層上に塗布して塗布膜を形成し、該塗布膜上に、カバーシートを貼り合わせて、このカバーシートの上から光を照射して塗布膜を硬化させて形成される。このように形成されるカバー層の厚さは、0.01〜0.2mmの範囲であることが好ましく、0.03〜0.1mmの範囲であることがより好ましく、0.05〜0.095mmの範囲であることがさらに好ましい。
UV硬化性接着剤としては、25℃における硬化前の粘度が130mPa・s以上590mPa・s以下のものを用いることが好ましい。該UV硬化性接着剤の粘度は、より好ましくは140mPa・s以上500mPa・s以下であり、さらに好ましくは150mPa・s以上400mPa・s以下である。該粘度が130mPa・s未満では、脱気泡してもUV硬化性接着剤の気泡が抜けなくなることがあり、590mPa・sを超えると、厚みムラが発生してしまうことがある。また、UV硬化性接着剤の硬化収縮率は、9%以下が好ましい。
前記UV硬化性接着剤は、スピンコート法により、光情報記録媒体の内周から30mm以内の領域に吐出し、塗布することが好ましい。このとき、光情報記録媒体を、例えば30〜8000rpmまで変化させながら回転させ、該UV硬化性接着剤を全面に満遍なく広げる。このようにしてUV硬化性接着剤を塗布すると、よりカバー層の厚みムラを少なくすることができる。
UV硬化性接着剤としては、ディスクの反りを防止するため、硬化収縮率の小さいものが好ましい。このようなUV硬化性接着剤としては、例えば、大日本インキ化学工業(株)製の「SD−640」、「SD−347」等のUV硬化性接着剤を挙げることができる。
UV硬化性接着剤の使用においては、以下の化合物に光重合開始剤を添加することが必要となる。光重合開始剤として芳香族ケトンが使用される。芳香族ケトンは、特に限定されないが、紫外線照射光源として通常使用される水銀灯の輝線スペクトルを生ずる。254,313,865nmの波長において吸光係数の比較的大なるものが好ましい。その代表例としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルメチルケタール、ベンジルエチルケタール、ベンゾインイソブチルケトン、ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−2ジエトキシアセトフェノン、Michler’sケトンなどがあり、種々の芳香族ケトンが使用できる。芳香族ケトンの混合比率は、化合物(a)100質量部に対し0.5〜20質量部、好ましくは2〜15質量部、さらに好ましくは3〜10質量部である。紫外線硬化型接着剤としてあらかじめ光開始剤を添加したものが市販しており、それを使用してもかまわない。紫外線光源としては、水銀灯が用いられる。水銀灯は20〜200W/cmのランプを用い速度0.3m/分〜20m/分で使用される。基体と水銀灯との距離は一般に1〜30cmであることが好ましい。
なお、カバーシートの貼り合わせ面に粘着剤が設けられている場合は、貼り合わせ後の粘着剤からなる層が、接着層となる。
また、本実施形態の光情報記録媒体においては、反射層と記録層との間に、記録層の特性に応じて誘電体層または光透過層を形成することができる。例えば、記録層との接着性向上のための光透過層を設けてもよく、相変化型の記録層を設けた場合には、放熱のための誘電体層を設けてもよい。誘電体層としては、Zn、Si、Ti、Te、Sn、Mo、Ge等の窒化物、酸化物、炭化物、硫化物からなる材料を使用することが好ましく、ZnS−SiO2のようなものであってもよい。光透過層としては、レーザー波長で90%以上の透過率があるものであれば如何なる材料をも使用することができる。
上記誘電体層または光透過層は、従来公知の方法により形成することができる。誘電体層の厚さは、1〜100nmとすることが好ましく、光透過層の厚さは、2〜50nmとすることが好ましい。
また、既述のように、カバーシート上にはハードコート層を設けてもよい。ハードコート層は、傷の発生を防止するための層であり、その材料としては、放射線硬化樹脂を用いることが好ましい。ハードコート層に使用される放射線硬化樹脂としては、放射線照射により硬化可能な樹脂であればよく、より詳細には、分子中に、2個以上の放射線官能性の2重結合を有する樹脂であることが好ましい。
例えば、アクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリル酸エステル類、メタクリル酸アミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等が挙げられる。中でも、好ましくは、2官能以上のアクリレート化合物、メタクリレート化合物である。
ハードコート層の中には、添加剤を含有してもよい。使用する添加剤の種類や量、カバー層表面における添加剤の存在量によっては、カバー層表面が撥水性となり、カバー層への水分の浸入を防ぐことが可能となり、水分透過率を調整することができる。
ハードコート層に用いられる添加剤としては、SiもしくはFを含有するモノマー、あるいは、SiもしくはFを含有するモノマーの共重合体、SiもしくはFを含有するグラフト重合体にアクリル基を含有させたものが使用できる。SiもしくはFの含有量を変えることによりカバー層表面の撥水性が変化し、水分透過率を調整することができる。これらは単独でも、複数種混合してもよい。
SiもしくはFを含有する添加剤としては、以下に示すものが挙げられる。まず、Siを含有するモノマーとしては、ポリジメチルシロキサンと(メタ)アクリル酸等の反応によるシロキサン基を有するモノマーが挙げられる。末端(メタ)アクリレートのシロキサン化合物の具体例としては、X−22−164A、X−22−164B、X−22−164C、X−22−2404、X−22−174D、X−22−8201、X−22−2426(以上、信越化学工業(株)製)、UMS182(チッソ(株)製)などが挙げられる。
また、Fを含有するモノマーとしては、ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、ヘプタデ力フルオロデシルアクリレート、パーフルオロアルキルスルホンアミドエチルアクリレート、パーフルオロアルキルアミドエチルアクリレート等に代表されるパーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
具体的には、2−パーフルオロオクチルエチルメタアクリレート、2―パーフルオロオクチルエチルアクリレート(日本メクトロン(株)製)、M−3633、M−3833、R−3633、R−3833等のアクリレート化合物((株)ダイキンファインケミカル研究所製)、AFC−1000、AFC−2000、FA−16等(共栄社化学(株)製)、メガファック531A(大日本インキ(株)製)などの重合性基を含有する化合物が挙げられる。
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
厚さ1.1mm、直径120mmのスパイラル状のグルーブ(トラックピッチ:340nm、溝深さ:20nm、溝幅:160nm)を有する射出成形ポリカーボネート樹脂(帝人社製ポリカーボネート、商品名:パンライトAD5503)基板のグルーブを有する面に、Agをスパッタリングして120nmの膜厚の反射層を形成した。
フタロシアニン系色素(商品名:オラゾールブルーGN、cibaスぺシャリティケミカル社製)1.00gを2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール100mlに溶解し、塗布液を調製した。この塗布液をスピンコート法により上記反射層上に塗布し、23℃50%RHで2時間アニール処理(加熱処理)を施して、記録層を形成した。
加熱処理後、真空成膜法によりNb2O4.83からなるターゲットを用いて、パルスDC法で5nmの厚みの中間層を製膜した。投入電力は1.5kW、スパッタガスはArガスとO2ガスとを使用し、Arガス流量は、50sccm(50ml/min)とし、O2ガス流量は、10sccm(10ml/min)とした。
その後、UV硬化性接着剤(大日本インキ社製、SD640)をスピンコート法により30mmより内周に塗布厚み5μmとなるように、回転数30〜300rpmとして中間層上に塗布し、その上に、カバーシート(カバー層)としてのポリカーボネートシート(帝人社製ピュアエース、厚さ:95μm)を重ね合わせ、30rpmから8000rpmまで変化させながら全面に接着剤を広げた後、UV照射ランプにて紫外線を照射して硬化させ、光情報記録媒体を作製した。なお、接着層を含むカバー層の厚みは100μmであった。
当該光情報記録媒体について、当該光情報記録媒体について、使用したカバー層(カバーシート上に上記条件でUV接着剤をスピンコートし、その後、同一条件で中間層を形成したもの)を別に作製し、透過面積が5cm2になるように一部をアルミニウムでマスクしたもので、モコン法(JIS K7129B準拠方法)で水分透過率を測定したところ、65g/(m2・d)であった。
(実施例2)
スパッタガスにおけるArガス流量を、10sccm(10ml/min)とし、O2ガス流量を、2sccm(2ml/min)とした以外は、実施例1と同様にして、光情報記録媒体を作製した。また、実施例1と同様にして、中間層からカバー層までのモコン法による水分透過度を測定したところ、25g/(m2・d)であった。
(実施例3)
中間層の厚みを10nmとし、スパッタガスにおけるArガス流量を、50sccm(50ml/min)とし、O2ガス流量を、2sccm(2ml/min)とした以外は、実施例1と同様にして、光情報記録媒体を作製した。また、実施例1と同様にして、中間層からカバー層までのモコン法による水分透過度を測定したところ、5g/(m2・d)であった。
(実施例4)
カバーシート上にハードコート層(厚さ3μm)を形成した以外は実施例1と同様にして、光情報記録媒体を作製した。また、実施例1と同様にして、中間層からカバー層(ハードコート層)までのモコン法による水分透過度を測定したところ、65g/(m2・d)であった。なお、ハードコート層は下記(1)〜(3)のようにして形成した。
(1)ハードコート層塗布液の調製:
メチルエチルケトン(MEK)中にグリシジルメタクリレートを溶解させ、熱重合開始剤(V−65、和光純薬工業(株)製)を滴下しながら80℃で2時間反応させた。得られた反応溶液をヘキサンに滴下し、沈殿物を減圧乾燥して得たポリグリシジルメタクリレート(ポリスチレン換算分子量:12000)をメチルエチルケトンに50質量%の濃度になるように溶解した溶液を調製した。当該溶液100質量部に、トリメチロールプロパントリアクリレート(ビスコート♯295、大阪有機化学工業(株)製)150質量部と光ラジカル重合開始剤(イルガキュア184、チバガイギー社製)6質量部と光カチオン重合開始剤(ロードシル2074、ローディア社製)6質量部とを加え、ハードコート層塗布液を調製した。
(2)ハードコート層の形成:
ロール状に巻かれたポリカーボネートフィルム(帝人社製ピュアエース、厚さ:90μm、片面離型フィルム付き)の離形フィルムを剥離し、その面に上記ハードコート層塗布液を5μmの厚みになるようにエクストルージョン方式で塗布、乾燥した。その後、紫外線を照射(700mJ/cm2)して、厚さ95μmのハードコート層が形成されたポリカーボネートフィルムを作製し、ロール状に巻き取った。
(3)打ち抜き:
基板と同一形状に打ち抜き、ハードコート層付カバー層とした。
(実施例5)
カバーシート上にF系添加剤を含有するハードコート層(厚さ3μm)を形成した以外は実施例1と同様にして、光情報記録媒体を作製した。また、実施例1と同様にして、中間層からカバー層(ハードコート層)までのモコン法による水分透過度を測定したところ、55g/(m2・d)であった。なお、F系添加剤を含有するハードコート層は下記のようにして形成した。
すなわち、実施例4のハードコート層塗布液の調製時にF系添加剤であるF−531A(DIC(株)社製 フッ素含有量48%)10質量部を30質量部のメチルイソブチルケトンに溶解したものを撹拌しながら混合し、F系添加剤を含有するハードコート層塗布液を調製した。その後、実施例4と同様にしてかかる塗布液を塗付し、基板と同一形状に打ち抜き、F系添加剤を含有するハードコート層付カバー層とした。
(実施例6)
カバーシート上にSi系添加剤を含有するハードコート層(3μm)を形成した以外は、実施例1と同様にして光情報記録媒体を作製した。また、実施例1と同様にして、中間層からカバー層(ハードコート層)までのモコン法による水分透過度を測定したところ、58g/(m2・d)であった。なお、ハードコート層は下記のようにして形成した。
実施例4のハードコート層塗布液の調製時にSi系添加剤であるUMS182(チッソ(株)社製 ケイ素含有量30.5%)10質量部を30質量部のメチルイソブチルケトンに溶解したものを撹拌しながら混合し、Si系添加剤を含有するハードコート層塗布液を調製した。その後、実施例4と同様にしてかかる塗布液を塗付し、基板と同一形状に打ち抜き、Si系添加剤を含有するハードコート層付カバー層とした。
(実施例7)
中間層の厚みを40nmとした以外は、実施例1と同様にして光情報記録媒体を作製した。また、実施例1と同様にして、中間層からカバー層までのモコン法による水分透過度を測定したところ、3g/(m2・d)であった。
(実施例8)
実施例1で、貼り合せる前のカバーシートに真空製膜法により、Nb2O4.83からなるターゲットを用いてパルスDC法で5nmの厚みの第2の中間層を製膜した。投入電力は1.5kW、スパッタガスはArガスとO2ガスとを使用し、Arガス流量は、50sccm(50ml/min)とし、O2ガス流量は、2sccm(2ml/min)とした。第2の中間層と基板上の中間層とを実施例1と同様の手法で貼り合わせ光情報記録媒体を作製した。
また、実施例1と同様にして、中間層からカバー層までのモコン法による水分透過度を測定したところ、5g/(m2・d)であった。
(比較例1)
中間層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、光情報記録媒体を作製した。また、実施例1と同様にして、接着層からカバー層までのモコン法による水分透過度を測定したところ、85g/(m2・d)であった。
(比較例2)
中間層の製膜時のArガス流量を100sccm(100ml/min)とした以外は、実施例1と同様にして、光情報記録媒体を作製した。なお、実施例1と同様にして、中間層からカバー層までのモコン法による水分透過度を測定したところ、82g/(m2・d)であった。
(比較例3)
中間層上に形成するカバー層の材質をUV硬化樹脂(大日本インキ社製、SD640)とした以外は、実施例1と同様にして光情報記録媒体を作製した。なお、UV硬化樹脂製のカバー層は下記のようにして形成した。
すなわち、中間層上に、100μmの厚みでスピンコート塗付し、UV硬化性接着剤(大日本インク社製、SD640)をスピンコート法により塗付し、UV照射ランプにて紫外線を照射して硬化させて、カバー層を形成した。
当該光情報記録媒体の記録層より上部(中間層およびカバー層)を剥離し、剥離した「中間層およびカバー層」をセルの開口部にあわせて切り出した。透過面積が5cm2になるように一部をアルミニウムでマスクし、モコン法(JIS K7129B準拠方法)で水分透過率を測定したところ、100g/(m2・d)であった。
実施例および比較例で作製した光情報記録媒体について、下記のような湿熱保存性の試験を行い、それぞれについて評価を行った。
(湿熱保存性の試験)
実施例および比較例のそれぞれの光情報記録媒体の初期特性をλ=405nmで発光する青紫色レーザーと、開口数NA=0.85の対物レンズから構成されるピックアップを有した記録再生装置DDU1000(パルステック工業社製)を用いて、17LL変調信号の記録と再生を行い、信号再生ジッターを測定した。その後、60℃90%に調整した高温高湿槽に168時間保存後、上記記録再生装置DDU1000を用いて、17LL変調信号の記録と再生を行い、信号再生ジッターを測定した。結果を下記表8に示す。
表8の結果のとおり、中間層からカバー層までのモコン法による水分透過度が、75g/(m2・d)以下である実施例の光情報記録媒体は、いずれも、優れた初期ジッターおよび保存後ジッターが得られることがわかった。