続いて、本発明の一実施形態である熱源装置の固定装置および当該固定装置を採用して構成される熱源装置の固定構造について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明において上下左右および正面、背面の位置関係は、図1に示す姿勢を基本として説明する。固定構造1は、後述する上固定装置5や下固定装置6を用いて形成されるものであり、図1に示すように、集合住宅に設けられた排水用の縦管等が収容されているパイプシャフトあるいはパイプスペースと称されるようなスペースに固定された支持体40に熱源装置50を固定する固定構造である。
ここで、支持体40には、例えば図2や図3に示すように、上枠体41および下枠体42に対して左枠体43および右枠体44を固定して形成される枠状の部材が採用される。上枠体41および下枠体42は、それぞれ金属板を折り曲げ加工して形成されるものであり、同一の形状とされている。
上枠体41は、図3に示すように、短冊状の金属板を断面形状がクランク形状となるように折り曲げて形成されるものである。すなわち、上枠体41は、天面部41aと、この短手方向両端部分をそれぞれ逆方向に折り曲げることにより形成された固定部41bと、フランジ部41cとを有する。
下枠体42は、上枠体41と同一の形状を有し、底面部42aと、これに対して互いに逆方向に折れ曲がった固定部42bおよびフランジ42cを有する。固定部41b,42bおよびフランジ41c,42cは、それぞれ天面部41aあるいは底面部42aに対して略垂直に折れ曲がっている。
左枠体43および右枠体44は、それぞれ金属板を折り曲げ加工して形成されるものであり、ほぼ同一の形状とされている。すなわち、左枠体43は、側面部43aと、この側面部43aの長手方向両端部(図3において上下端部)を折り曲げて形成された連結部43b,43cを有する。また、左枠体43は、側面部43aの短手方向の両端部分をそれぞれ逆方向に折り曲げることにより形成された固定部43dとフランジ43eとを有する。フランジ43eは、側面部43aに対して連結部43b,43cと同一方向に折り曲げられている。右枠体44は、大きさおよび形状が左枠体43と同一とされており、側面部44aと、これに対して略垂直に折れ曲がった連結部44b,44c、固定部44dおよびフランジ44eを有する。
支持体40は、図2や図3に示すように、上枠体41、下枠体42、左枠体43および右枠体44を、固定部41b,42b,43d,44dが天面部41a、底面部42aおよび側面部43a,44aによって囲まれた開口領域45に対して外側を向き、フランジ部41c,42c,43e,44eが内側を向くように組み立てられる。支持体40は、連結部43b,43cや連結部44b,44cと天面部41aおよび底面部42aにわたってネジを装着することにより一体化されている。支持体40は、図1や図2に示すように、固定部41b,42b,43d,44dをパイプシャフト等の空間PSに取り付けられた熱源装置50設置用の金枠100にネジ止め等して固定される。この際、支持体40は、図2に示すように、固定部41b,42b,43d,44dが空間PSの入口側に向き、フランジ部41c,42c,43e,44eが空間PSの奥側に向く姿勢として取り付けられる。
熱源装置50は、従来公知のものと同様に、図2に示すような直方体状の本体ケース51内に図示しないバーナーやポンプ、熱交換器等を内蔵した構造とされている。すなわち、熱源装置50は、本体ケース51内に振動源となる装置類を内蔵している。熱源装置50の本体ケース51は、正面52および背面53と、これに対して略直交する方向に広がる天面55、底面56、左側面57および右側面58を有する。本体ケース51は、天面55、底面56、左側面57および右側面58に対して略直交し、本体ケース51の外側に向けて突出したフランジ60を有する。
固定構造1は、金属製の上固定装置5および下固定装置6とを用いて熱源装置50を支持体40に固定することによって構成される。上固定装置5および下固定装置6は、熱源装置50のフランジ60のうち、天面55および底面56から突出した部分(以下、必要に応じて天面側フランジ60a、底面側フランジ60bと称す)に取り付けられる部材である。中間部材7は、略直方体状であり、上固定装置5および下固定装置6に装着して使用される。
さらに具体的に説明すると、上固定装置5は、図4(a)や図5に示すように上固定体本体10に対して3つの中間部材7と気密パッキン11を装着して構成される。上固定体本体10は、熱源装置50の幅、すなわち左側面57と右側面58との間隔と同程度の長さで、断面形状が略L字形の鋼材によって構成されており、上面部12と熱源取付部13とに大別される。上面部12は、図11に示すように、支持体40の天面部41aに対向するように取り付けられる部分であり、長手方向の中央部とこの両側方の合計3箇所に中間部材装着部15を有する。
中間部材装着部15は、開口16と、舌片部17(突部)とを有する。舌片部17は、図5や図8(a)等に示すように、開口16を構成する辺のうち、上固定装置5の延伸方向に沿って伸びる辺であって、熱源取付部13から離れた位置にある辺に相当する部分を、熱源取付部13と同一方向(図5において下方)に向けて折り曲げることにより形成されている。熱源取付部13は、上面部12に対して略垂直に折り曲げられた部分であり、熱源装置50の天面側フランジ60aに固定される部分である。
中間部材7は、防振ゴムや制振ゴムと称されるような振動を効率よく吸収可能なゴムによって形成された弾性体である。中間部材7は、図6等に示すように、略直方体状の制振本体20と、制振本体20を構成する一面(天面20a)から突出した連結部21とを有する。連結部21は、略直方体状の制振本体20を平面視した場合に、短辺方向の略中央部から一端側にずれた位置に偏在している。
連結部21は、上記した上固定装置5に設けられた開口16よりも一回り大きな頭部22と、頭部22と制振本体20とを繋ぐくびれ部23とを有する。くびれ部23は、上固定装置5の開口16にほぼ隙間無く嵌る程度の大きさであり、くびれ部23の高さ、すなわち頭部22と制振本体20との間隔は上固定装置5の板厚程度とされている。そのため、図5や図11(a)に示すように、上固定装置5の裏面側(図5、図11(a)において下方側)から開口16に中間部材7を差し込むと、くびれ部23に上面部12を形成する金属板が嵌り込み、制振本体20と頭部22とによって挟み込まれた状態になる。これにより、中間部材7は、図4や図11(b)に示すように、制振本体20が上面部12の裏面側(熱源取付部13の延伸方向)に密着し、突出した状態で固定される。
中間部材7は、図6や図11、図12等に示すように、頭部22の略中央部から制振本体20の裏面側に向けて貫通する貫通孔25を有する。また、頭部22に対して連結部21の偏在方向とは逆側に隣接する位置には、上固定装置5の舌片部17を差し込むための舌片差込部26が形成されている。舌片差込部26は、貫通孔25と同様に制振本体20の表面から裏面側に向けて貫通している。舌偏差仕込部26に対してさらに連結部21から離れた部位は、熱源装置50の設置時等に作用する負荷を支持する支持部24として機能する。
気密パッキン11は、熱源装置50の設置時に、本体ケース51の天面側フランジ60aと、支持体40の上枠体41を構成するフランジ部41cとの間に介在し、両者の隙間を埋めて気密状態とするためのものである。気密パッキン11は、上固定装置5の熱源取付部13のうち、上面部12の延出方向側の面(以下、必要に応じてパッキン取付面13bと称す)に、熱源取付部13の全長にわたって装着される。
下固定装置6は、図4(b)や図7、図12等に示すように、下固定体本体30と、これを支持体40の下枠体42に固定するための支持体側取付部材31とに大別される。下固定体本体30は、熱源装置50の幅と同程度の長さで、断面形状が略L字形の鋼材に対して上記した2つの中間部材7と気密パッキン11を装着して構成される。
下固定体本体30は、下面部32と、これに対して垂直な熱源取付部33を有する。下面部32は、長手方向両端側に中間部材装着部35を有する。中間部材装着部35は、上固定装置5に設けられた中間部材装着部15と同様の構成とされている。すなわち、中間部材装着部35は、開口36と、舌片部37(突部)とを有する。
舌片部37は、図7や図9に示すように、開口36を構成する辺のうち、下固定体本体30の延伸方向に伸びる辺であって、熱源取付部33側の辺に相当する部分を、熱源取付部13とは逆方向(図7において下方)に向けて折り曲げることにより形成されている。
上記した上固定体本体10と同様に、中間部材装着部35には中間部材7が取り付けられる。さらに具体的には、図7や図12(a)のように、開口36には、下面部32の裏面側、すなわち舌片部37の突出側から頭部22を先頭にして中間部材7が差し込まれる。これにより、図4(b)や図12(b)等に示すように、頭部22が開口36を乗り越えて下面部32の表面側に突出し、舌片差込部26に舌辺部37が差し込まれた状態となる。中間部材7は、制振部材本体20が下面部32の裏面側に突出した状態で下固定体本体30に固定される。
熱源取付部33は、図7等に示すように、下面部32に対して略垂直に折り曲げられ、熱源装置50のフランジ60のうち、底面56から下方に向けて突出した部位に固定される部分である。熱源取付部33のうち、下面部32の延出方向側の面(以下、必要に応じてパッキン取付面33bと称す)には、気密パッキン11が装着されている。
支持体側取付部材31は、支持体40側に固定される部材(他部材)下固定体本体30と略同一の長さを有する長尺体であり、図4や図7等に示すように、金属板を断面形状がクランク状になるように折り曲げ加工したものである。支持体側取付部材31は、中間部材固定部31aと、これに連続する垂直部31bおよび固定部31cを有する。中間部材固定部31aは、図7や図10に示すように、支持体側取付部材31の長手方向中央部が矩形に切りかかれ、略「コ」字型に成形されている。
中間部材固定部31aは、垂直部31bを介して固定部31cに繋がっている。固定部31cは、中間部材固定部31aと略平行であり、図12等に示すように支持体40を構成する下枠体42の底面部42bに固定される部分である。中間部材固定部31aと固定部31cとの距離、すなわち垂直部31bの高さは、中間部材7の底面から頭部22の表面までの厚みよりも大きい。
支持体側取付部材31は、図12(b),(c)に示すように、下固定本体6に装着された中間部材7の頭部22側から挿通されたビス38により中間部材装着部35と接続される。ビス38の軸部にはスペーサ39が装着されている。これにより、下固定体本体30と支持体側取付部材31とが一体化され、下固定装置6が形成されている。すなわち、下固定体本体30は、図12(c)等に示すように、中間部材7と、支持体側取付部材31に固定されたビス38とを介して支持体側取付部材31と間接的に接続される。
続いて、上記した上固定装置5や下固定装置6によって熱源装置50を支持体40に固定する固定方法、並びに、上固定装置5や下固定装置6によって構成される熱源装置50の固定構造1について図面を参照しながら詳細に説明する。
固定装置1を構成する上固定装置5および下固定装置6は、それぞれ熱源装置50への取付に先立って、予め中間部材7等を装着して組み立てた状態とされる。すなわち、図5や図11(a)に示すように、上固定体本体10の熱源取付部13のパッキン取付面13bに気密パッキン11が貼付され、中間部材装着部15に、上面部12の裏面側(図11において下方側)から中間部材7が装着される。これにより、図4や図11(b)に示すように、上固定体本体10の舌片部17が舌片部差込部26に嵌り込んだ状態(係合状態)になると共に、中間部材7の頭部22が上面部12の表面に突き出た状態になり、上面部12の裏面側に中間部材7の制振本体20が密着した状態で固定される。
一方、下固定装置6は、図7や図12に示すように、下固定体本体30に設けられた開口36に下方(舌片部37の突出方向)から中間部材7の頭部22が差し込まれる。これにより、図12(b)に示すように中間部材7が中間部材固定部31aに固定された状態になり、舌片差込部26に舌片部37が嵌め込まれた状態(係合状態)となる。これにより、中間部材7は、制振本体20が下固定体本体30の下面部32に面接触し、下面部32よりも下方(舌片部37の突出方向)に突出した状態となる。下固定体本体30の熱源取付部33には、気密パッキン11が貼付される。
上記したようにして下固定体本体30に中間部材7が装着され、気密パッキン11が貼付されると、図12(b)に示すように、中間部材7の底面に支持体側取付部材31の中間部材固定部31aが面接触するようにあてがわれる。この時、支持体側取付部材31は、垂直部31bが下固定体本体30の熱源取付部33に対向するように立ち上がり、固定部31cが熱源取付部33から離反する方向に延出する姿勢とされる。このようにして下固定体本体30と支持体側取付部材31との位置合わせがなされると、予め下固定装置6に装着されている中間部材7の頭部22側から軸部にスペーサ39を装着したビス38が差し込まれ、支持体側取付部材31に締結される。すなわち、ビス38の軸とこれに装着されたスペーサ39とが中間部材7の貫通孔25に差し込まれると共に、ビス38の軸部が支持体側取付部材31に締結固定される。ビス38の頭部は、中間部材7の頭部22に引っかかる。すなわち、ビス38と下固定体本体30との間には、中間部材7が介在した状態になる。これにより、図4(b)や図12(b)に示すように、下固定体本体30と支持体側取付部材31とがビス38により、中間部材7を介して間接的に連結された状態になる。
上記したようにして組み立てられた上固定装置5および下固定装置6は、先ず支持体40側あるいは熱源装置50側のいずれか一方に固定された後、他方に固定される。さらに具体的に説明すると、例えば先ず支持体40側に上固定装置5および下固定装置6を固定した後、上固定装置5および下固定装置6と熱源装置50とを固定する場合、上固定装置5は、図11(b),(c)や図13(a)に示すように、予め支持体40の上枠体41に対して天面部41aの上方に中間部材7の底面が面接触し、熱源取付部13に貼付された気密パッキン11が支持体40の正面側に存在するフランジ部41cに面接触するように位置合わせされる。上固定装置5は、軸部にスペーサ39が装着されたビス38により、上枠体41に対して固定される。これにより、中間部材7および気密パッキン11を挟んで、上固定装置5が支持体40に固定された状態になり、熱源取付部13のパッキン取付面13bとは反対側の面(以下、必要に応じて熱源取付面13aと称す)が正面側に露出した状態になる。
一方、下固定装置6は、図12(c),(d)や図14(a)に示すように、支持体40の下枠体42に対して、底面部42aの下方から支持体側取付部材31の固定部31cが面接触し、熱源取付部33のパッキン取付面33bに貼付された気密パッキン11が支持体40のフランジ部42cに面接触するように位置合わせされる。下固定装置6は、図12等に示すように支持体側取付部材31の固定部31cと下枠体42の底面部42aにわたって挿通されたビス48によってネジ止め固定される。これにより、下固定装置6は、中間部材7および気密パッキン11を介して支持体40に対して固定された状態になり、熱源取付部33のパッキン取付面33bとは反対側の面(以下、必要に応じて熱源取付面33aと称す)が正面側に露出した状態になる。
上記したようにして上固定装置5および下固定装置6が支持体40に対して固定される一方、図2に示すように、熱源装置50のフランジ60のうち左右側面57,58から突出した部分(以下、必要に応じて左フランジ60c、右フランジ60dと称す)の正面52側の面、あるいは、支持体40のフランジ部43e,44eに気密パッキン11が貼付される。
上固定装置5および下固定装置6が支持体40に固定されると、図2や図13、図14に矢印Aで示すように熱源装置50が、正面52側を先頭にして支持枠40の開口領域45に差し込まれる。熱源装置50のフランジ60が上固定装置5や下固定装置6の熱源取付部13,33に面接触するまで押し込まれると、熱源装置50の正面52側から天面側フランジ60aおよび底面側フランジ60bと、熱源取付部13,33とがネジ止め固定される。また、熱源装置50の左右フランジ60c,60dと、支持体40のフランジ部43e,44eとが気密パッキン11を介在した状態でネジ止め固定される。これにより、熱源装置50が支持体40に固定された状態になる。
上記したようにして熱源装置50を支持体40に対して固定すると、図11(c)や図12(d)のように、熱源装置50側に固定される上固定装置5や下固定装置6と支持体40とがビス38により中間部材7を介して間接的に固定された状態になる。
さらに具体的には、上固定装置5は、図11(c)に示すように、支持体40の天面部41aと、これよりも上方に配された上固定体本体10の上面部12との間に中間部材7を介在させ、熱源取付部13とフランジ部41cとの間に気密パッキン11を介在させた状態とされている。また、中間部材7の貫通孔25にはスペーサ39が差し込まれ、この開口部分に差し込まれたビス38が支持部材40の天面部41aに固定されている。そのため、ビス38は、中間部材7と直に接触していない。
スペーサ39は、中間部材7の貫通孔25に差し込まれ、上固定体本体10の上面部12と支持体40の天面部41との間に介在した状態とされる。そのため、スペーサ39は、中間部材7が上面部12と天面部41とが近接する方向に圧縮変形するのを阻止することができる。すなわち、中間部材7に対してスペーサ39を差し込むことにより、ビス38を装着しても、上面部12と天面部41との間隔がスペーサ39の長さ以上に縮まらず、上面部12および天面部41が中間部材7に対して強く押しつけられた状態にならない。そのため、スペーサ39を装着することにより、中間部材7の弾力を維持することができる。従って、スペーサ39を中間部材7の貫通孔25に差し込むことにより中間部材7の振動吸収能力を確保でき、上固定体本体10側から伝わる振動を中間部材7で十分吸収することができる。
さらに、上記した固定構造では、ビス38の頭部が、上固定体本体10に設けられた中間部材装着部15に嵌め込まれ、上面部12から突出した中間部材7の頭部22に面接触しており、頭部22を介して上固定体本体10に接続されている。すなわち、ビス38の頭部と上固定体本体10との間には、中間部材7の頭部22が介在しており、ビス38と上固定体本体10とは直接的に接触していない。そのため、上固定装置5から支持体40に繋がる振動の伝播経路、すなわち図11(c)に矢印P1で示す振動の伝播経路(上面部12→中間部材7→支持体40)の中途には、必ず中間部材7が介在している。要するに、上固定装置5は、支持体40や、支持体40側に固定されたビス38に中間部材7を介して間接的に接続されており、支持体40側への直接的な振動の伝播が抑制されている。従って、熱源装置50側から伝播してくる振動は、中間部材7に吸収され、支持体40側には殆ど伝播しない。
また同様に、下固定装置6は、図12(d)に示すように、支持体側取付部材31の中間部材固定部31aと、これよりも上方に配された下固定体本体30の下面部32との間に中間部材7を介在させ、熱源取付部33とフランジ部42cとの間に気密パッキン11を介在させた状態で装着されている。
上記した上固定装置5側の固定構造と同様に、中間部材7の貫通孔25にはスペーサ39が差し込まれ、この開口部分に差し込まれたビス38が下面部32に固定されている。スペーサ39によって下固定体本体30の下面部32と支持体側取付部材31の中間部材固定部31aとの間隔が維持されるため、ビス38の締結力が中間部材7に過剰に働かず、中間部材7がさほど圧縮された状態にならない。そのため、下固定装置6側の中間部材7についても弾力および振動吸収能力が維持される。従って、下固定体本体30に伝わる振動の大部分が中間部材7によって吸収され、支持体40側に伝播しない。
ビス38の軸部は、中間部材固定部31aに対してねじ込まれているが、ビス38の頭部は下面部32から突出している中間部材7の頭部22を介して下固定体本体30に接続されている。そのため、ビス38の頭部と下固定体本体10との間には、中間部材7の頭部22が介在している。よって、図12(d)に矢印P2で示すように、下固定装置6から支持体40側に固定された支持体側取付部材31に繋がる経路の中途には、必ず中間部材7が介在しており、下固定装置6が、中間部材7を介して間接的に支持体40に接続された状態になる。従って、熱源装置50側から伝播してくる振動は、中間部材7に吸収され、支持体40側に固定された支持体側取付部材31に殆ど伝播しない。
ここで、熱源装置50は、フランジ60が正面52側に偏在している。そのため、熱源装置50を支持体40に対して設置した場合、熱源装置50の重心の位置が、熱源装置50と支持体40とが固定されている位置よりも背面53側に存在している。従って、熱源装置50を支持体40に対して装着した状態では、熱源装置50に回転モーメントが発生し、図11(c)、図12(d)等に矢印M1、M2で示すような応力が作用するものと想定される。すなわち、上固定装置5側には、熱源装置50の背面53側(図11において左側)に倒れ込もうとするような応力M1が作用し、下固定装置6側には、熱源装置50の正面52側に向かう応力M2が作用するものと想定される。
本実施形態の熱源装置50の固定構造1では、上固定装置5や下固定装置6に矢印M1,M2に対して交差する方向に伸びる舌片部17,37を設け、この舌片部17,37を中間部材7の舌片差込部26に差し込む構造とされている。さらに、図11(c)や図12(d)に示すように、上固定装置5や下固定装置6において、舌片差込部26に対して矢印M1,M2側に隣接する部位(支持部)には、スペーサ39が装着されたビス38が挿通されている。すなわち、固定構造1では、熱源装置50の重力に起因して作用する応力M1,M2の影響により、中間部材7に圧縮力が作用する位置にスペーサ39を装着したビス38が差し込まれている。そのため、熱源装置50や上固定体本体10、下固定体本体30に作用する応力M1,M2は、中間部材7の弾性力や、舌片部17,37と舌片差込部26,26との嵌合構造およびビス38によって支持される。従って、上記した固定構造1によって熱源装置50を固定すれば、熱源装置50を支持体40に対してしっかりと固定することができる。
上記した熱源装置50の設置方法では、予め支持体40側に取り付けられた上固定装置5や下固定装置6に対して熱源装置50とを固定する方法が採用されていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、上固定装置5および下固定装置6のいずれか一方を予め熱源装置50側に固定しておき、これを支持体40に固定する方法を採用することも可能である。
さらに具体的に説明すると、上記したようにして熱源装置50を支持体40に設置する場合は、例えば図15(a)に示すように、熱源装置50の天面側フランジ60aや底面側フランジ60bの正面52側に、予め上記したようにして別途組み立てられた上固定装置5や下固定装置6をネジ止め固定しておく。また、熱源装置50の左右フランジ部60a,60bあるいは支持体40の左右フランジ60c,60dには、気密パッキン11が貼付される。
上固定装置5や下固定装置6が熱源装置50に取り付けられると、熱源装置50は、図15(a)に矢印で示すように、正面52側を先頭にして支持体40の開口領域45内に差し込まれる。熱源装置50が上固定装置5の上固定体本体10や、下固定装置6の下固定体本体30に貼付された気密パッキン11,11が支持体40のフランジ部41c,42cに面接触するまで差し込まれると、図15(b)に示すように上固定装置5の上方側および下固定装置6の下方側からビス38,48が装着される。これにより、熱源装置50が支持体40に対して固定される。
上記したように、予め熱源装置50側に上固定装置5や下固定装置6を装着しておく構成とした場合についても、熱源装置50側に固定される上固定体本体10や下固定体本体30と、支持体40や支持体40側に固定される支持体側取付部材31との間に中間部材7が介在した状態になる。また、熱源装置50のフランジ60や、熱源取付部13,33の間には気密パッキン11が介在している。従って、熱源装置50において発生した振動は、中間部材7や気密パッキン11において減衰され、支持体40や支持体40が取り付けられた壁面には殆ど伝播しない。
上記したようにして熱源装置50側に上固定装置5や下固定装置6が予め熱源装置50に取り付けられる場合は、図16に示すように熱源装置50を寝かせた状態でフランジ60に上固定装置5や下固定装置6を固定した後、矢印N1で示すように応力を作用させ、熱源装置50の底面56側に固定された下固定装置6を支点として天面55側を持ち上げることが想定される。このようにして熱源装置50が持ち上げられると、矢印N2で示すように下固定装置6に大きな荷重が作用し、中間部材7に圧縮力が作用することになる。しかし、上記した固定構造1では、熱源装置50の重力に起因して圧縮力が作用する位置に支持部24が設けられており、この支持部24において矢印N2で示すような荷重を支持可能な構成とされている。そのため、上記した固定構造1によれば、図16に矢印N2で示すような荷重が作用した場合でもしっかりと受け止めることができ、下固定装置6の変形等の不具合の発生を防止できる。
上記した固定構造1では、熱源装置50の荷重がかかり、振動が伝播しやすいと想定される部位に中間部材7を配した構成とされている。そのため、固定構造1では、熱源装置50において発生した振動が、支持体40側に伝播しにくい。さらに、中間部材7とビス38とを用いて構成される接続構造は、熱源装置50の天面55側および底面56側において熱源装置50の幅方向に分散して設けられており、中間部材7が配されていない部分は、上固定体本体10の上面部12や下固定体本体30の下面部32と、支持体40の天面部41aや底面部42aとの間に隙間が形成されている。そのため、固定構造1では、中間部材7が配されていない部分から支持体40側への振動の伝播が起こらない。
また、上記した固定構造1では、支持体40に支持体側取付部材31を取り付けることにより、中間部材固定部31が中間部材固定部31が支持体40の底面部42aから離れた位置に存在した状態になる。そのため、上記した固定構造1では、支持体40側に直接的に荷重がかからず、支持体40側に振動が伝播しにくい。
さらに、上記実施形態の固定構造1では、図17等に示すように、熱源装置50に作用する回転モーメントを考慮し、熱源装置50の底面56側よりも天面55側の方が多くの箇所で中間部材7とビス38とを用いて構成される接続構造が形成されている。そのため、固定構造1によれば、熱源装置50に作用する回転モーメントの影響で、熱源装置50と支持体40との間に隙間が発生したり、上固定装置5や下固定装置6が変形するといったような不具合の発生を防止できる。
また、固定構造1では、図17(d)に示すように、底面56側において中間部材7とビス38とを用いて構成される接続構造が熱源装置50の幅方向に偏在しており、底面56の中央部分には存在していない。また、固定構造1では、図7等に示すように支持体側取付部材31の中間部材固定部31aが略「コ」字型に切り欠かれている。そのため、固定構造1により熱源装置50を固定すれば、底面56側に突出している配管の接続口等に湯水やガスが流れる配管を容易に接続できる。
舌片部17,37が上面部12や下面部32に対して略垂直に突出しており、中間部材7に設けられた舌片差込部26に差し込まれて係合している。上記したように、固定構造1では、舌片部17,37と舌片差込部26によって構成される係合構造により、熱源装置50が支持体40から離反するのが阻止されている。そのため、上記した固定構造1によれば、熱源装置50を支持体40に対してぴったりと密着させた状態で固定することができる。
上記した固定構造1では、図11(c)や図12(d)に矢印M1,M2によって示す方向に、熱源装置50に作用する重力に起因する応力が作用する。固定構造1では、中間部材7の貫通孔25に挿通されたビス38やスペーサ39に対して、矢印M1,M2で示される応力の作用方向とは反対方向に隣接する位置に舌片差込部26が設けられており、ここに舌片部17,37が差し込まれる構成とされている。換言すれば、固定構造1では、矢印M1,M2で示される応力の影響により、舌片部17,37から中間部材7に作用する圧縮力の作用方向に隣接する位置にビス38やスペーサ39が差し込まれている。そのため、上記した固定構造1によれば、矢印M1,M2で示すような応力を中間部材7でしっかりと受け止め、熱源装置50を支持体40に強固に固定することができる。
上記実施形態に例示した中間部材7において、舌片差込部26は、舌片部17,37を差し込み可能な孔であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、舌片部17,37が係合可能な凹部や凸部であってもよい。
上記実施形態では、上固定装置5や下固定装置6に中間部材7を装着し、中間部材7に対して挿入されたビス38によって上固定体本体10を支持体40に固定したり、支持体40側に固定される支持体側取付部材31に下固定体本体30を固定する構造を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、中間部材7に代わって図18に示す中間部材70のようなものを採用した構成であってもよい。以下、中間部材70およびこれを採用して構成される上固定装置80および下固定装置81について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、上固定装置80および下固定装置81や、これを採用して構成される固定構造71は、上記した上固定装置5や下固定装置6および固定構造1と大部分の構成が同一であるため、共通する部分には同一の符号を付し、詳細の説明については省略する。
中間部材70は、図18に示すように、台座部72、胴体部73およびネジ軸部75に大別される。台座部72は、金属板により構成されており、両端部に中間部材70をネジ止めするための貫通孔76を有する。胴体部73は、台座部72の略中心部に設けられており、上記した中間部材7と同様に制振ゴムや防振ゴムと称されるようなゴム等の弾性体によってよって構成されている。ネジ軸部75は、台座部72に対して常時において略並行な円盤状の座部75aと、これに対して垂直に突出した軸部75bとを有する。ネジ軸部75は、座部75aが胴体部73を介して台座部72と一体化されている。
上固定装置80や下固定装置81は、上記実施形態の上固定装置5や下固定装置6と実質的に同一の構造を有するが、中間部材70を採用するため、一部の構成が異なる。さらに具体的に説明すると、上固定装置80は、上固定体本体82と気密パッキン11、中間部材70とによって構成される。
さらに詳細に説明すると、上固定体本体82は、上記した上固定体本体10と同様に断面形状が略L字形の鋼材によって構成されており、上面部83と熱源取付部85とを有する。熱源取付部85は、上記した上固定体本体10の熱源取付部13と同様の構成とされており、裏面側のパッキン取付面85bに気密パッキン11が貼付される。一方、上面部83には貫通孔83aが上固定体本体82の長手方向に4つ並べて設けられている。貫通孔83aは、中間部材70のネジ軸部75の軸部75bが挿通可能であり、胴体部73が通過できない程度の大きさの孔である。
上固定体本体82は、図19に示すように、予め支持体40の天面部41aに、上固定体本体82に設けられた貫通孔83aと同一の間隔で一列に並べて固定された中間部材70に対して取り付けられる。さらに具体的には、中間部材70は、図19や図21に示すように支持体40の天面部41aに台座部72が面接触し、ネジ軸部75が上方(開口領域45の外側方向)に向けて突出するように取り付けられる。上固定体本体82は、図21(a)に矢印で示すように、上面部83が中間部材70の上方から被さり、熱源取付部85に貼付された気密パッキン11が支持体40の正面側に設けられたフランジ部41cに面接触するように装着される。その後、図21(b)に示すように上固定体本体82の上面部83から上方に突出したネジ軸部75には、ナット78が装着される。これにより、図21(b)や図23に示すように、支持体40に装着された中間部材70と上固定体本体82とが制振ゴムによって構成される胴体部73を介して連結された状態になる。
一方、下固定装置81は、図20に示すように、断面形状が略L字形の下固定体本体90と、断面形状がクランク型の支持体側取付部材31とを有し、下固定体本体90と支持体側取付部材31とを中間部材70で連結した構造とされている。さらに具体的に説明すると、下固定体本体90は、下固定体本体30と同様に、下面部93と熱源取付部95とが略直交している。熱源取付部95の裏面側のパッキン取付面95bには、気密パッキン11が貼付されている。
中間部材70は、下固定体本体90の下面部93の裏面側(図20において下側)であって、下固定体本体90の長手方向両端側の位置に取り付けられている。中間部材70は、ネジ軸部75が下方に向けて突出するように取り付けられている。すなわち、中間部材70は、台座部72の裏面72aと下面部93の裏面とを面接触させた状態で貫通孔76にビス77を装着することにより、ネジ軸部75が下方に向けて突出するように取り付けられる。
支持体側取付部材31は、上記したように中間部材固定部31a、垂直部31bおよび固定部31cによって構成されている。中間部材固定部31aの略中央部には、中間部材70のネジ軸部75が通過可能であり、胴体部73が通過できない程度の大きさの貫通孔96が設けられている。
貫通孔96には、下固定体本体90に取り付けられた中間部材70のネジ軸部75が挿通され、ナット78が装着される。これにより、下固定体本体90と支持体側取付部材31とが中間部材70を介して連結された状態になる。
上記したようにして組み立てられた下固定装置81は、図22(a)に示すように支持体側取付部材31の固定部31cが支持体40の底面部42aに対向し、熱源取付部95が支持体40のフランジ部42cに対して対向する姿勢とされ、固定部31cと底面部42aとにわたって挿通されたビス48により固定される。これにより、図22(b)や図23に示すように、下固定体本体90は、下面部93と底面部42aとの間に隙間が形成され、熱源取付部95とフランジ部42cとによって気密パッキン11が挟まれた状態で固定される。
上記したようにして上固定装置80や下固定装置81が固定されると、図23(c)に矢印で示すように支持体40の開口領域45に、支持体40の正面側から熱源装置50が正面52側を先頭にして差し込まれる。熱源装置50のフランジ60が上固定装置80や下固定装置81の熱源取付部85,95の熱源取付面85a,95aに面接触するまで熱源装置50を差し込み、フランジ60と熱源取付部85,95とをネジ止めすることにより固定構造71が形成される。
上記した熱源装置50の固定構造71では、中間部材70の台座部72が支持体40の天面部41aや、底面部42aに固定された支持体側取付部材31の中間部材固定部31aに固定され、ネジ軸部75が上固定体本体82の上面部83や下固定体本体90の下面部93に固定された構成とされている。そして、支持体40や支持体側取付部材31と、上固定体本体82や下固定体本体90との間は、中間部材70の胴体部73によって連結されている。ここで、上記したように、中間部材70は、台座部72およびネジ軸部75の間がゴムによって構成される胴体部73によって接続されている。そのため、固定構造71を採用した場合は、図21(b)や図22(b)に矢印P3,P4で示すように、上面部83や下面部93から支持体40側に振動が伝播する経路の途中に胴体部73が介在している。従って、上面部83や下面部93に伝播した振動は、大部分が胴体部73に吸収され、支持体40側に伝播しない。
上記した固定構造71では、固定構造1と同様に熱源装置50の荷重がかかり、振動が伝播しやすいと想定される部位に中間部材70を配した構成とされている。また、中間部材70を用いて形成される接続構造は、複数箇所に分散されており、中間部材70が配されていない部分は、空隙になっている。そのため、上記した固定構造71を採用すれば、熱源装置50において発生した振動が支持体40側に伝播するのを最小限に抑制できる。
上記した固定構造1,71では、熱源装置50に作用する重力により発生する回転モーメントを考慮し、熱源装置50の天面55側と底面56側とで中間部材7,70を用いて構成される接続構造の数が異なる構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、天面55側と底面56側とで同一数の接続構造が形成されていてもよい。
また、上記した固定構造1,71では、熱源装置50に対する配管の取り付け等の便宜を考慮して、底面56側の幅方向中央部を外れた位置に中間部材7,70を用いて構成される接続構造を形成する構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、前記した接続構造を底面56の幅方向中央部近傍に設けた構成としてもよい。
上記実施形態では、図11や図12に示すように上下方向に重ね合わされた上固定体本体10や下固定体本体30とこれらに挟まれた中間部材7とにわたってビス38を差し込んで固定する構成や、中間部材7に一体化された台座部72やネジ軸部75を上固定体本体10や下固定体本体30と連結する構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。
さらに具体的には、上記した固定構造1,71に代わって、例えば図24(a)に示すように、防振ゴム等の弾性体により成形されたブロック状の中間体100を上固定体本体10の上面部12や下固定体本体40の下面部32等の熱源装置50側に固定される部材と、支持体40の天面部41や支持体40に固定される支持体側固定部材31等との間に挟み、上面部12の上方側および天面部41の下方側から挿通されたビス101,102により、両者が接触しないようにして固定する構成としてもよい。
また、図24(b)に示すように、中間部材70の台座部72に代わってネジ軸部75と同様の構成を有するネジ軸部111を設けた中間部材110を採用することも可能である。中間部材110を採用する場合は、図24(c)のように、ネジ軸部75,111をそれぞれ上固定体本体10の上面部12等と支持体40の天面部41等とに固定することにより上固定体本体10と支持体40とを一体化することができる。
さらに、図24(d)に示すように、中間部材70のネジ軸部75に代わって台座部72と同様の構成を有する台座部121を設けた中間部材120を採用することも可能である。中間部材120を採用する場合は、図24(e)のように、台座部72,121をそれぞれ上固定体本体10の上面部12等と支持体40の天面部41等とに固定することにより上固定体本体10と支持体40とを一体化することができる。
上記した図24に示す中間部材7,70の変形例である中間部材100,110,120のいずれを採用した場合についても、上固定体本体10,82やこれに固定されるネジ軸部75や台座部121と、下固体体本体30,90やこれに固定されるネジ軸部111や台座部72とが、弾性を有する中間部材100や胴体部73を介して間接的に接続されている。そのため、図24に示すような構成とした場合についても、熱源装置50から上固定体本体10,82や下固体体本体30,90に伝播する振動の大部分は、中間部材100や胴体部73に吸収され、支持体40側に殆ど伝播しない。