JP2006342580A - 建物の天井構造 - Google Patents

Abstract

【課題】 歩行感を悪化させることなく、しかも構造体に多大な重量付加を与えたり、大幅な設計変更を伴うことなく、簡単な施工で重量床衝撃音を効率良く低減する建物の天井構造を提供する。
【解決手段】 この天井構造においては、上層階の床梁１に取り付けられる天井下地材２の野縁受け４・・に、質量体３０と弾性体３１とを組み合わせてなるダイナミックダンパー３・・を、その弾性体３１によって質量体３０を弾性支持するようにして装着している。
【選択図】 図１

Description

この発明は、例えば住宅やマンション等の建物の天井構造に関する。

従来、住宅等の上層階から下層階への重量床衝撃音の伝搬を低減する対策として、例えば上層階の床材や下層階の天井材の重量を上げるといった方法が採られている。この場合、多大な重量付加を伴うことになり、ＲＣ系住宅では、柱や梁の構造変更によって、さほど支障なく床材や天井材の重量を上げることが可能であるが、軽量鉄骨系プレハブ住宅や木造住宅では、重量の重い床材や天井材を支えるだけの構造を確保すると、設計プランの自由度が制限されることが多い。

このため、特に軽量鉄骨系プレハブ住宅や木造住宅においては、上層階の床材と床梁との間に防振ゴム等の防振機構を介装したり、例えば特許文献１や特許文献２に開示されているように、下層階の天井板を支持する天井支持材における振動の伝達経路上に防振ゴム等の防振機構を組み込むことで、重量床衝撃音の低減を図るようにしている。

特開２００１−１０７５０３号公報 特開平１１−１００９３８号公報

しかしながら、床材と床梁との間に防振ゴム等を介装する場合には、床材が揺れ易くなって歩行振動が大きくなり、上層階の居住性の低下を招き易く、何らかの対策が必要となる。さらに、このような歩行振動対策に加えて、床の沈み込み対策やクリープ対策などの検討も必要になる。

また、天井下地材における振動の伝達経路上に防振ゴム等を組み込む場合には、天井下地材の設計変更を伴うだけでなく、重量床衝撃音の低減のための調整が複雑になり、調整が十分になされないとかえって床衝撃音が伝わり易くなるといった問題があった。

そこで、この発明は、上記の不具合を解消して、歩行感を悪化させることなく、しかも構造体に多大な重量付加を与えたり、大幅な設計変更を伴うことなく、簡単な施工で重量床衝撃音を効率良く低減することができる建物の天井構造の提供を目的とする。

上記の課題を解決するため、この発明の建物の天井構造は、上層階の床梁１に取り付けられる天井下地材２に、質量体３０と弾性体３１とを組み合わせてなるダイナミックダンパー３を、その弾性体３１によって質量体３０を弾性支持するようにして装着したことを特徴とする。

具体的に、前記天井下地材２は、複数の野縁受け４・・と複数の野縁５・・とを格子状に組み付けてなり、それら複数の野縁受け４・・に前記ダイナミックダンパー３・・を装着している。

また、前記野縁受け４は、上下一対のフランジ６、７と、それらフランジ６、７の長手方向に沿った一端部同士を連結するウエブ８とを備え、その野縁受け４のウエブ８に、前記ダイナミックダンパー３・・を水平方向へ張り出させた状態で装着している。さらに、前記野縁受け４に、前記ダイナミックダンパー３・・を予め一体に装着している。

さらにまた、前記複数の野縁受け４・・と複数の野縁５・・との各交差部付近に、前記ダイナミックダンパー３・・を配置している。また、前記複数の野縁受け４・・間の間隔及び前記複数の野縁５・・間の間隔を、３００〜５００ｍｍとしている。

この発明の天井構造においては、天井下地材に設けたダイナミックダンパーによって、上層階の床における歩行感の悪化を招くことなく、また床材や天井材の重量を上げるときのような建物構造体に対して多大なる重量付加を与えることなく、上層階から下層階へ伝搬する重量床衝撃音を低減することができる。

しかも、ダイナミックダンパーは、その弾性体によって質量体を弾性支持するように天井下地材に装着されていて、上層階の床において発生した衝撃に伴って質量体が振動することにより、下層階へ伝搬する重量床衝撃音を低減するようになっているので、従来のように天井下地材における振動の伝達経路上に組み込む必要がなく、よって天井下地材の大幅な設計変更を伴わずに、簡単な調整だけで重量床衝撃音の低減対策を施すことができる。

また、複数の野縁受けと複数の野縁とを格子状に組み付けてなる天井下地材において、その野縁受けにダイナミックダンパーを装着することで、ダイナミックダンパーによる重量床衝撃音の低減効果を天井全体に効率良く利かすことができる。しかも、野縁受けは、一般に野縁よりも剛性が高く、ダイナミックダンパーを安定して装着することができる。

さらに、野縁受けのウエブに、ダイナミックダンパーを水平方向へ張り出させた状態で装着することで、天井下地材からのダイナミックダンパーの上下方向への張り出しを抑えて、床下空間における配管や断熱材等の施工に際して邪魔にならないようにすることができる。さらにまた、ダイナミックダンパーを予め一体に装着した野縁受けを用いることで、この野縁受けを現場において施工するだけで、ダイナミックダンパーの現場での取り付け作業をなくして、重量床衝撃音の低減対策を簡単に施すことができる。

また、複数のダイナミックダンパーを野縁受けと野縁との各交差部付近に設けることで、ダイナミックダンパーが天井全体に亘って均一に分散配置されて、上層階の床のどのような位置で重量床衝撃音が発生しても、それら重量床衝撃音を効果的に低減することができる。

以下、この発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
この発明の一実施形態に係る天井構造は、図１〜図３に示すように、上層階のＨ形鋼からなる床梁１に取り付けられる天井下地材２に、複数のダイナミックダンパー３・・を取り付けて、上層階から下層階への重量床衝撃音の伝搬を低減している。

天井下地材２は、互いに平行に配された複数の野縁受け４・・と、これら野縁受け４・・に対して直交するようにして互いに平行に配された複数の野縁５・・とを、格子状に組み付けてなる。野縁受け４・・は、図６に示すように、例えば３００〜５００ｍｍ、具体的には約３３０ｍｍの間隔Ｌ１をあけて同一平面上に配置されている。また、野縁５・・も同様に、野縁受け４・・の下側において、例えば３００〜５００ｍｍ、具体的には約３３０ｍｍの間隔Ｌ２をあけて同一平面上に配置されている。なお、野縁５・・には、その下面間に跨って石膏ボードからなる天井板４０が張り付けられている。

野縁受け４は、開口部分を側方へ向けるように配置した溝型鋼からなり、上下一対のフランジ６、７と、それらフランジ６、７の長手方向に沿った一端部同士を連結するウエブ８とを備えている。そして、上側フランジ６及びウエブ８には、その長手方向に間隔をあけて複数のボルト挿通用孔９、１０が形成されている(図５参照)。

そして、野縁受け４・・のうちの数本が、その上方に位置する床梁１・・に所定の間隔をあけて取り付けた吊り下げ具１１・・によって吊り下げ支持されている。すなわち、床梁１・・に吊り下げ支持される野縁受け４・・の間に、床梁１・・に吊り下げ支持されることのない数本の野縁受け４・・を補助的に設けて、天井下地材２におけるダイナミックダンパー３・・を施工するために必要な強度を確保している。上記構造により、天井下地材２の全体的な剛性を向上して、ダイナミックダンパー３・・の効果を全体に波及させるとともに、ダイナミックダンパー３・・の取り付けピッチを小さくして、多数のダイナミックダンパー３・・を配置可能としている。なお、図２に示すように、吊り下げ具１１は、床梁１の下部フランジ１２に係合する係合金具１３と、この係合金具１３から垂下した吊りボルト１４とからなり、その吊りボルト１４の下端部が野縁受け４の上側フランジ６のボルト挿通用孔９に挿通されてナット１５、１５により固定されている。

野縁５は、断面略ロ字状の鋼製筒材からなり、その側面片１６、１６にはその長手方向に沿って係止溝１７、１７が夫々形成されている。

これら野縁５・・は、野縁受け４・・に取り付けた複数の野縁支持具２０・・によって支持されている。野縁支持具２０は、図２、図４に示すように、上面部２１と、この上面部２１の側縁から下方へ延出した一対の側面部２２、２２とによって下向きの略コ字状に形成されている。この野縁支持具２０の上面部２１には、一対の係合片２３、２３が形成されており、側面部２２、２２には、一対の係止爪２４、２４が夫々形成されている。

そして、野縁支持具２０の係合片２３、２３を、野縁受け４の下側フランジ７に係合させることで、野縁支持具２０が野縁受け４の下側フランジ７に取り付けられ、この野縁支持具２０の側面部２２、２２間に野縁５の上部を差し入れて、野縁支持具２０の係止爪２４、２４を野縁５の係止溝１７、１７に係合させることで、野縁５が野縁支持具２０に支持されるようになっている。なお、このような野縁支持具２０・・による支持は、野縁受け４・・と野縁５・・との各交差部においてなされている。

また、野縁受け４・・と野縁５・・との各交差部付近において、複数のダイナミックダンパー３・・が野縁受け４・・に装着されている。

ダイナミックダンパー３は、図２、図５に示すように、質量体３０と弾性体３１とを備えている。質量体３０は、略直方体状の金属製の錘からなり、その一側面には螺子孔３２が形成されている。弾性体３１は、一対のプレート３３、３３間に防振ゴム３４を介装して構成され、これらプレート３３、３３及び防振ゴム３４の中心部に連結ボルト３５が貫通されている。そして、弾性体３１の連結ボルト３５の一端部を、質量体３０の螺子孔３２に螺合して締め付けることによって、弾性体３１と質量体３０とが一体的に組み付けられている。

このようにして構成されたダイナミックダンパー３は、その弾性体３１の連結ボルト３５の他端部を、野縁受け４のウエブ８のボルト挿通用孔１０に挿通させて、その連結ボルト３５の他端部に螺合したナット３６を締め付けることで、剛性の高い野縁受け４のウエブ８に取り付けられている。

この取付状態において、ダイナミックダンパー３は、野縁受け４のウエブ８から野縁５に沿うようにして水平方向に張り出しており、弾性体３１によって質量体３０が弾性支持された状態となっている。また、ダイナミックダンパー３は、図２に示すように野縁受け４のウエブ８の高さ寸法内に収まり、且つ、図３に示すように野縁５の幅寸法内に収まるようにして配置されている。

実際の施工に際しては、予め工場等において、各野縁受け４・・に複数のダイナミックダンパー３・・を一体に装着しておいて、施工現場にて野縁受け４・・と野縁５・・を格子状に組み合わせて天井下地材２を構築するだけで、図６に示すように、ダイナミックダンパー３・・を天井全体に亘って均一に分散配置している。

このような天井構造においては、各ダイナミックダンパー３・・の共振周波数が例えば４５Ｈｚ付近にチューニングされており、上層階の床において発生した重量床衝撃音が床梁１から天井下地材２へ伝搬されると、ダイナミックダンパー３・・の質量体３０・・が上下方向に振動して、下層階への重量床衝撃音の伝搬を効果的に低減するようになっている。なお、各ダイナミックダンパー３・・の共振周波数は、４５Ｈｚ付近にチューニングするだけに限らず、別途対策が必要となる周波数に対応して適宜チューニングしても良い。

この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正及び変更を加え得ることは勿論である。

この発明の一実施形態に係る建物の天井構造の斜視図である。 同じくその縦断面図である。 同じくその平面図である。 同じくその天井下地材の分解斜視図である。 ダイナミックダンパーの分解斜視図である。 ダイナミックダンパーの配置を示す図である。

符号の説明

１・・床梁、２・・天井下地材、３・・ダイナミックダンパー、４・・野縁受け、５・・野縁、６、７・・フランジ、８・・ウエブ、３０・・質量体、３１・・弾性体

Claims (6)

1. 上層階の床梁（１）に取り付けられる天井下地材（２）に、質量体（３０）と弾性体（３１）とを組み合わせてなるダイナミックダンパー（３）を、その弾性体（３１）によって質量体（３０）を弾性支持するようにして装着したことを特徴とする建物の天井構造。
2. 前記天井下地材（２）は、複数の野縁受け（４）・・と複数の野縁（５）・・とを格子状に組み付けてなり、それら複数の野縁受け（４）・・に前記ダイナミックダンパー（３）・・を装着した請求項１記載の建物の天井構造。
3. 前記野縁受け（４）は、上下一対のフランジ（６）（７）と、それらフランジ（６）（７）の長手方向に沿った一端部同士を連結するウエブ（８）とを備え、その野縁受け（４）のウエブ（８）に、前記ダイナミックダンパー（３）・・を水平方向へ張り出させた状態で装着した請求項２記載の建物の天井構造。
4. 前記野縁受け（４）に、前記ダイナミックダンパー（３）・・を予め一体に装着してある請求項２又は３記載の建物の天井構造。
5. 前記複数の野縁受け（４）・・と複数の野縁（５）・・との各交差部付近に、前記ダイナミックダンパー（３）・・を配置した請求項２〜４のいずれかに記載の建物の天井構造。
6. 前記複数の野縁受け（４）・・間の間隔及び前記複数の野縁（５）・・間の間隔を、３００〜５００ｍｍとした請求項５記載の建物の天井構造。