JP2006291698A - 耐震性能に優れる柱梁接合部と鉄骨骨組、鉄骨構造物 - Google Patents

耐震性能に優れる柱梁接合部と鉄骨骨組、鉄骨構造物 Download PDF

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Abstract

【課題】耐震性に優れた柱梁接合部を提供する。
【解決手段】柱と梁の節点に設けられた接合部パネルの曲げ耐力を、該接合部パネルの上下となる柱の曲げ耐力の和未満とする。または接合部パネルの降伏応力度を柱、梁の板厚、降伏応力度をパラメータとして規定したり、その構成する鋼材の耐力と板厚が、該接合部パネルの上下となる柱に用いる鋼材の耐力と板厚にそれぞれ等しい場合は、付加軸力、梁フランジ中心間距離、柱フランジ中心間距離、接合部パネルに用いた鋼材の降伏比をパラメータとして、接合部パネルの鋼材の耐力と板厚を規定する。降伏層間変位角が1/100以上である鉄骨ラーメン骨組と、エネルギー吸収部材を設置した鉄骨骨組において上記柱梁接合部を少なくとも一つ有し、最下層の柱の柱脚に柱よりも耐力の低い柱脚を用いる。
【選択図】図4

Description

本発明は、耐震性能に優れる柱梁接合部と鉄骨ラーメン骨組およびその骨組を用いたその構造物に関する。
建築骨組、特に柱と梁が剛接合されているラーメン骨組の耐震設計は、(1)中小地震時には弾性範囲に留め、(2)大地震時には骨組の塑性化によるエネルギー吸収性能に期待して塑性化を許容し、塑性変形性能性能に応じて設計耐力を低減することを基本思想としている。
想定以上の地震力が作用する場合は、より大きなエネルギーを吸収する必要があるため、骨組を構成する部材を、降伏点YPと引張り強さTSの比YR(=YP/TS)が0.80以下の低YR鋼材として塑性変形性を向上させたりすることが一般的である。また、骨組の崩壊モードをエネルギー吸収に適した、全体崩壊モードとすることが推奨されている。
例えば、非特許文献1では、全体崩壊モードを実現するために各節点で柱梁耐力比を1.5以上とすることが推奨されている。
尚、崩壊モードは、ある層の全ての柱が先行降伏し、一層もしくは複数の特定層が崩壊する部分崩壊モードと梁が先行降伏し、塑性ヒンジが全層にわたって分散する全体崩壊モードに大別される。
部分崩壊モードは、ある層の全ての柱が先行降伏するもので、発生する塑性ヒンジの数が少なくても崩壊が生じる。
一方、全体崩壊モードは、梁が先行降伏する場合で、塑性ヒンジが全層にわたって生成しなければ崩壊機構(メカニズムという)が形成されず、同じ塑性変形性能の部材を用いた場合、全体崩壊モードは部分崩壊モードと比較して骨組のエネルギー吸収能力が高い。
尚、ブレース、壁などのエネルギー吸収デバイスが設置されたラーメン骨組の場合は、柱梁のみよりなる骨組の損傷を小さくするため、エネルギー吸収デバイスとその支持部材からなるデバイス系の降伏変位角を小さくし、主骨組の降伏変位角をできるだけ大きくすることが有効とされている。
普通鋼材を用いた従来のラーメン骨組の降伏層間変位角は1/140〜1/120である。この値を大きくするためには、高張力鋼材の柱と梁への使用が有効である。
「冷間成形角形鋼管設計・施工マニュアル」(日本建築センター)
しかしながら、柱の曲げ耐力は軸力の作用によって低減するが、梁の曲げ耐力はいろいろな要因により上昇する場合があり、柱梁耐力比を1.5以上とすることは実設計において容易でなく、柱崩壊の部分崩壊モードを完全に防止し、全体崩壊モードとすることは困難である。
すなわち、下記の理由により柱が梁よりも早期に塑性化することが指摘されている。
(1)地震力は骨組の面内だけでなく任意の方向に作用し、斜め方向に作用した場合でも、梁の降伏を先行させるためには直交2方向の梁が塑性化するまで柱は、ほぼ弾性状態を保つ必要がある。直交2方向の梁が塑性化する耐力は1方向の場合の約1.4倍である。
(2)床スラブと梁はスタッドなどのシヤコネクターで一体化されている場合が多い。床スラブが圧縮側になる場合約1.4倍、引張側に場合には約1.1倍、平均的には約1.25倍に梁耐力は大きくなる。
(3)地震時の骨組の応答は1次モードだけでなく、高次モードの振動成分がある。この影響により柱の応力が大きくなって、梁より早期に降伏する可能性がある。高次モードの影響を避けるためには柱の耐力を約1.3倍にする必要がある。
(4)鋼材の降伏点のばらつきにより、設計上は梁が先行降伏するものでも実際には梁の強度が高く、そうならない場合がある。これを避けるためには鋼材の降伏点のばらつきを統計的に評価する必要がある。この影響を避けるためには、柱耐力を1.15〜1.2倍にする必要がある。
(5)角形鋼管柱の場合、斜め方向の断面性能(耐力)が低くなる。45度方向の場合、0(90)度方向に比較して約6%断面性能が低下する。従って柱耐力を1.06倍にする必要がある。
(6)上記の全てを考慮すれば、柱の塑性化を完全に防止するためには柱の耐力を1.4×1.25×1.3×1.2×1.06=2.89倍もしくは√(1.4+1.25+1.3+1.2+1.06)=2.79倍とする必要がある。その結果、柱として通常の設計に従う場合の約3倍の耐力の断面を使うこととなり、建築コストの上昇を招く。
一方、建築構造用鋼材として耐震性を向上させるためには、母材の低YR化と、母材および溶接部の靱性を両立させる必要があるが、鋼材の降伏比と靱性は組織的に相反する特性を要求し、両立させるためには合金成分の添加、圧延時の熱加工制御など原材料費の拡大、生産効率の低下などコストアップすることになる。
すなわち、靱性を確保するために組織を細粒化すると降伏点(YP)は高くなり、低YR化を意図して製造すれば粗粒化させることが必要で、靱性の確保が困難となる。
また、高張力鋼材は、普通鋼材と比較して一般的に溶接性に劣りYRも高く、低YR鋼材は、伸び性能も小さく、成分調整や圧延時の熱加工制御を行って製造するので原材料費、製造コストが高い。
上述したように、実建築物において崩壊モードを全体崩壊モードとすることは困難で、柱部材に低YR特性に優れる高張力鋼材を適用することも経済的に不利で実施にあたっての制約が大きい。
そこで、本発明は、柱部材として用いる鋼材の降伏比YRに拠らず、優れた耐震性が得られる鉄骨骨組と構造物を提供することを目的とする。
本発明者等は、従来、鉄骨骨組の崩壊モードの検討において対象とされていなかった節点における塑性変形挙動に着目し、柱梁の節点を接合部パネルとし、該接合部パネルに適切な変形性能を与えることにより、耐震性を必要とする場合に、接合部パネルの上下の柱に要求されるYR特性を緩和させることを検討した。
図1は鉄骨骨組の柱梁接合部を説明する図で(a)はモデル図、(b)は(a)に示したモデルの実施例、(c)は(b)に示した実施例の具体的構造を説明する斜視図を示す。本発明において接合部パネル4は柱の一部分で、梁材3が取り付けられる個所を指し、従来では節点とされていた部分である。
2aは上の柱、2bは下の柱で、接合部パネル4を有する鋼管41とダイヤフラム42を介して接続されている。ダイヤフラム42は、梁フランジ3a、3c、5a、5cが溶接されると共に柱2a、2bと鋼管41も溶接にて接合されている。
同時に、鋼管41には梁ウェブ3b、5bが溶接されている。柱2は上の柱2a、下の柱2b、ダイヤフラム42および鋼管41からなり、本実施例の場合は角型鋼管を使用している。即ち、柱2と梁3、5は鋼管41とダイヤフラム42を介して剛接合されている。
鋼管41において、梁ウェブ3b、5bに平行な2つの面が接合部パネル4として働く。
図2に接合部パネルの変形挙動の調査に用いた試験装置を示す。地上に固定された試験台8にパネル部試験体4を固定し、地震力として水平力7を負荷する。
水平力7は、パネル部試験体4の上部に載置梁6を固定し、載置梁6からパネル部試験体の上部に伝達される。パネル部試験体は、YRがそれぞれ異なる50キロ鋼、60キロ鋼、80キロ鋼を用い、径厚比を同じとして製造した。
表1に、パネル部試験体の諸元と調査結果を示す。YRが94%の80キロ鋼を用いても耐力上昇率は1.14で累積塑性せん断変形角として0.48が得られ、接合部パネルをYRの高い鋼材を用いて製造しても大地震時に要望される塑性変形性能を十分な安全率をもって得ることが可能である。
Figure 2006291698
本発明は得られた知見を基に更に検討を加えてなされたもので、すなわち、本発明は、1.柱および梁から構成され、該柱と該梁が剛接合されている柱梁接合部において、
前記柱と前記梁の節点に設けられた接合部パネルの曲げ耐力を、該接合部パネルの上下となる柱の曲げ耐力の和未満にすることを特徴とする柱梁接合部。
2.柱および梁から構成され、該柱と該梁が剛接合されている柱梁接合部において、
前記柱と前記梁の節点に設けられた接合部パネルは、柱が角形鋼管の場合、式(3−2)、または、柱が円形鋼管の場合、式(6−1)の条件を満たすことを特徴とする柱梁接合部。
Figure 2006291698
Figure 2006291698
ここで、n:付加軸力、α:歪硬化による耐力上昇率、σ:接合部パネルの降伏応力度、t:接合部パネルの板厚、d:梁フランジ中心間距離、σ:柱の降伏応力度、t:柱の板厚、d:柱フランジ中心間距離
3.柱および梁から構成され、該柱と該梁が剛接合されている柱梁接合部において、
前記柱と前記梁の節点に設けられた接合部パネルは、その構成する鋼材の耐力と板厚がが、該接合部パネルの上下となる柱に用いる鋼材の耐力と板厚にそれぞれ等しく、且つ、柱が角形鋼管の場合、式(3−3)、または、柱が円形鋼管の場合、式(6−2)の条件を満たすことを特徴とする柱梁接合部。
Figure 2006291698
Figure 2006291698
ここで、n:付加軸力、d:梁フランジ中心間距離、d:柱フランジ中心間距離、YR:接合部パネルに用いた鋼材の降伏比
4.柱および梁から構成され、該柱と該梁が剛接合されている柱梁接合部において、
前記柱と前記梁の節点に設けられた接合部パネルの曲げ耐力を、該接合部パネルの上下となる柱の曲げ耐力の和未満とし、かつ接合部パネルの上下となる柱の鋼材としてYRが80%を超える高張力鋼材を用いたことを特徴とする柱梁接合部。
5.柱および梁から構成され、柱と梁の節点を複数有する鉄骨ラーメン骨組を含む鉄骨骨組であって、
1乃至4の何れか1つ記載の柱梁接合部を少なくとも一つ有することを特徴とする鉄骨骨組。
6.柱および梁から構成され、柱と梁の節点を複数有し、降伏層間変位角が1/100以上である鉄骨ラーメン骨組と、エネルギー吸収部材を設置した鉄骨骨組であって、
1乃至4の何れか1つ記載の柱梁接合部を少なくとも一つ有することを特徴とする鉄骨骨組。
7.5または6に記載の鉄骨骨組を有し、最下層の柱の柱脚に柱よりも耐力の低い柱脚を設けたことを特徴とする鉄骨構造物。
本発明によれば、接合部パネルの上下にある柱用鋼材のYRに関わらず、接合部パネルを塑性変形させることが可能となるので、鉄骨ラーメン骨組や鉄骨構造物の耐震性を損なうことなく柱の鋼材を溶接性やコストを考慮して選択する事ができる。例えば、接合部パネルの上下の柱にYRが80%を超える高張力鋼材(例えば80キロ級鋼)を用いて溶接性を確保しながら柱を細くすれば、建築物の美観を向上させることが可能である。
本発明は、接合部パネル高さ/接合部パネル幅を柱軸力比と接合部パネルに用いる鋼材のYRに応じて規定し、接合部パネルを塑性変形させることにより、柱の塑性化を防止する。
接合部パネルを塑性変形させるためには、接合部パネルの曲げ耐力を、該接合部パネルの上下となる柱の曲げ耐力未満にすればよく、または、(1)接合部パネルの形状を規定したり、(2)接合部パネルを構成する鋼材の耐力と板厚を、該接合部パネルの上下となる柱に用いる鋼材の耐力と板厚とをそれぞれ同一とし、且つ接合部パネルの形状を規定して行う。
以下、接合部パネルの設計方法について、柱が角形鋼管、円形鋼管のそれぞれの場合について具体的に説明する。
[角形鋼管]
図3は、地震時における、接合部パネルでの応力状態を模式的に示す図で、接合部パネルには、上の柱と接合部パネルの境界面に作用する柱のモ−メントTMcと下の柱と接合部パネルの境界面に作用する柱のモーメントBMcがそのまま作用するので、接合部パネルの曲げ耐力Mpが、両者の和よりも小さければ、接合部パネルは塑性変形を生じる。ただし、梁が極端に弱い場合は、接合部パネルが塑性化しないこともあるが、全体崩壊となるので問題ない。
尚、左右の梁と接合部パネルの境界面に作用する梁のモーメントLMb,RMbも同様にそのまま作用するが、本発明では省略する。
柱の全塑性曲げ耐力は柱の軸力比nによって変化し、下式で求められる。
Figure 2006291698
ここに、σおよびは柱の降伏応力度と塑性断面係数である。柱にブレースなど
が取り付く場合にはブレースからの付加軸力もnに考慮する。は柱フランジ中心間距
離(例えば、柱の外径から柱の板厚を減じた値)dと柱の板厚tを用いて下式で求められる。
Figure 2006291698
一方、接合部パネルの、塑性化による歪硬化を考慮した最大曲げ耐力は下式で求め
られる。
Figure 2006291698
ここに、σおよびVは接合部パネルの降伏応力度と体積(せん断断面積と接合部パネル高さの積)でありVはほぼ2t(tは接合部パネル板厚、dは梁フランジ中心間距離(例えば、梁せい−フランジ板厚を減じた値))に近似できる。αは歪硬化による耐力上昇率であり近似的に1/YRで求められる。YRは接合部パネルに用いた鋼材の降伏比である。
柱の塑性化が大きく進行しないための条件は、接合部パネルに接続する上下それぞれの柱の曲げモーメント耐力TcBcと接合部パネルの最大曲げ耐力を用いて下式で求められる。
Figure 2006291698
柱軸力比nは、接合部パネルに接続する上下柱の平均値で接合部パネルの軸力比に等しいとし、柱のσなどの断面性能は上下柱の平均値を用いると、上式は以下の様に書く事ができる。
Figure 2006291698
(3−1)式は以下のように書きなおせる。
Figure 2006291698
通常、接合部パネルと柱の板厚は同厚であり、強度も同じ場合が多いので、上式は下式のように簡略化される。
Figure 2006291698
実物件においては、接合部パネルの高さはdとほぼ等しく、接合部パネルの幅はdとほぼ等しいので、そのように近似した上で、上式に従い、接合部パネル高さ(≒d)/接合部パネル幅(≒d)を柱軸力比と鋼材のYRによって規定される数値未満とすれば、柱の塑性化を防止することが可能となる。
[円形鋼管]
柱の全塑性曲げ耐力cMpは柱の軸力比nによって変化し、(4)式で求められる。
Figure 2006291698
ここに、cσyは柱の降伏応力度である。柱にブレースなどが取りつく場合にはブレースからの付加軸力もnに考慮する。
一方、接合部パネルの、塑性化による歪硬化を考慮した最大曲げ耐力pMpは(5)式で求められる。
Figure 2006291698
ここに、pσyは接合部パネルの降伏応力度である。αは歪硬化による耐力上昇率であり近似的に1/YRで求められる。YRは接合部パネルに用いた鋼材の降伏比である。
柱の塑性化が大きく進行しないための条件は、接合部パネルに接続する上下それぞれの柱の曲げモーメント耐力TcMp,BcMpと接合部パネルの最大曲げ耐力pMpを用いて(6)式で求められる。
Figure 2006291698
柱軸力比nは、接合部パネルに接続する上下柱の平均値で接合部パネルの軸力比に等しいとし、柱のcσyなどの断面性能は上下柱の平均値を用いると、(6)式は(6−1)式となる。
Figure 2006291698
通常、接合部パネルと柱の板厚は同厚であり、強度も同じ場合が多いので、(6−1)式は(6−2)式のように簡略化される。
Figure 2006291698
角形鋼管の場合と同様に、(6−2)式によれば、パネル高さ(≒db)/パネル幅(≒dc)を柱軸力比と鋼材のYRによって規定される数値未満とすれば、柱の塑性化を防止することが可能となる。
図4、5は接合部パネルと柱に同一の鋼材を用いた場合の、接合部パネルの高さ幅比に及ぼす柱軸力比の影響を鋼材のYR毎に示し、図4は角形鋼管の場合で(3−3)式によるもの、図5は円形鋼管の場合で、(6−2)式によるものを示す。
各図において、接合部パネルの高さ幅比を、YR毎に得られた曲線の下方の領域内となるように、柱軸力比に応じて選定すると、接合部パネルを塑性変形させることが可能で、柱の塑性化が拡大することを防止できる。
尚、柱の軸力には建物の自重や積載荷重による常時荷重と地震時の水平力よる転倒モーメントによる外力が作用する。外柱にはこの転倒モーメントによる外力が柱軸力の主体であるが、中柱には柱の左右の梁の地震時せん断力の差のみが作用するので、地震時の水平力よる転倒モーメントによる外力は通常、小さいとされている。
常時荷重による柱軸力は通常0.15〜0.3程度、地震時軸力は最大0.7〜0.8程度である。
一方、接合部パネルの高さ幅比は、通常、建築鉄骨骨組では柱径よりも梁せいの方が大きく、1.0〜2.0もしくは2.5の範囲である。
尚、建築構造物の最下層の柱は、通常剛性と耐力の高いRC基礎梁に接合されているので、変形能力の高い柱部材を用いるか、柱脚部に柱より耐力の低い部位を用いて柱の柱脚側の塑性化の進展を防止する。ここで柱脚とは、例えば露出型柱脚や半剛接柱脚等を指す。
例えばYRが80%を超える高YR鋼材や、降伏強度が590N/mm以上の高張力鋼材などの塑性変形性能の比較的低い柱を用いる場合、柱脚部の耐力を、軸力を考慮した柱の曲げ耐力よりも小さくする。露出型柱脚や半剛接柱脚を用いてアンカーボルトやベースプレートの耐力の調整により可能である。
本発明に係る接合部パネルを、ラーメン主骨組の降伏層間変位角を大きくするため高張力鋼材を用いた鉄骨骨組に適用すると、より耐震性の高い構造物を提供することが可能となる。
普通鋼材を用いた通常の(日本の建築基準法の許容応力度等計算などを満足させた)ラーメン骨組の降伏層間変位角は1/140〜1/120程度なので、完全には主体骨組の塑性化を防止することはできない。
そこで、普通鋼材の1.2倍から1.4倍の高張力鋼材たとえば降伏点が385N/mm〜440N/mm程度もしくはYRが90%程度の60キロ級鋼材(降伏点は540N/mm程度)や80キロ級鋼材(降伏点は720N/mm程度)を用いて降伏層間変位角を1/100以下特に望ましくは1/80以下とした鉄骨構造物の接合部パネルに本発明を適用すると、更に主体骨組の塑性化が防止され、耐震性が向上する。
尚、低YR鋼は溶接部の靱性(ひいては鋼部材の変形性能)が低下する傾向にあるが、本発明によれば、YRが80%以上の良好な溶接性が得られる鋼材も使用できるので、溶接欠陥の発生を防止し、安定した耐振性能を確保することが可能である。
ダンパーが設置されたラーメン骨組の場合、主体ラーメン骨組とダンパー系の剛性比は通常0.5〜2の間で、適切に設計されたダンパーが設置されたラーメン骨組では地動速度が50kine〜75kine程度の兵庫県南部地震クラスの大地震に対し、骨組みの最大層間変位角を1/100程度に抑えることが可能である。地震応答は建物種類、階数地震動の種類などでばらつくが1/80を超えることはなくすことができる。
ダンパーが設置されたラーメン骨組を主体骨組とする鉄骨構造物に本発明に係る接合部パネルを適用し、更に耐震性を向上させても良く、本発明におけるラーメン骨組構造には、ブレース付き、壁付きラーメン構造も含むものとする。尚、ここでエネルギー吸収部材とは、例えばブレースや壁やせん断型シヤパネル型などの履歴ダンパー、摩擦型ダンパー、オイルダンパー、あるいは粘弾性ダンパー等を指す。
以下、角形鋼管、円形鋼管の場合について本発明に係る実施例と比較例を示す。
[角形鋼管]
(実施例1)
図6に示す2層2スパンの鉄骨ラーメン骨組を製作する。梁には15cmのスラブが付き、合成梁となっている。柱には80キロ級の高張力鋼を用いた□−300x12(mm)の角形鋼管、梁にはSN490を用いたH−650x200x12x19(mm)のH形鋼を用いる。
図には示していないが、柱脚部には柱ヒンジが発生しないように、柱耐力よりも15%低い露出型柱脚を使用した。鉛直荷重は柱の軸力比で0.15となるように設定している。柱の降伏点は827N/mmでYRは94%である。
(実施例2)
実施例1の梁の変わりにH−750x200x12x22(mm)のH形鋼を用いる。接合部パネルの高さ/幅比は2.5である。接合部パネルには柱の板厚を9mmとして耐力を低下させた。
(比較例1)
実施例1の骨組みの柱の鋼種を50キロ鋼とし、梁はSN400を用いたH−650x200x9x16(mm)のH形鋼を用いる。接合部パネルの高さ/幅比は実施例1と同じ1.67である。接合部パネル/柱耐力比は0.88と実施例1と同じである。
(比較例2)
実施例1の梁サイズをH−750x200x12x22(mm)に変更する。その結果、接合部パネル高さ比は2.5となり、接合部パネル/柱耐力比は1.10となっている。
[円形鋼管]
(実施例3)
図6に示す2層2スパンの鉄骨ラーメン骨組を製作する。梁には15cmのスラブが付き、合成梁となっている。柱には80キロ級の高張力鋼を用いた○−300x12(mm)の円形鋼管、梁にはSN490を用いたH−650x200x12x19(mm)のH形鋼を用いる。図には示していないが柱脚部には柱ヒンジが発生しないように、柱耐力よりも15%低い露出型柱脚を使用した。鉛直荷重は柱の軸力比で0.15となるように設定している。柱の降伏点は827N/mmでYRは94%である。
(実施例4)
実施例3の梁の替わりにH−700x200x12x22(mm)のH形鋼を用いる。接合部パネルの高さ/幅比は2.0である。接合部パネルには柱の板厚を9mmとしてパネル耐力を低下させた。
(比較例3)
実施例3の骨組みの柱の鋼種を50キロ鋼とし、梁はSN400を用いたH−500x250x12x22(mm)のH形鋼を用いる。接合部パネルの高さ/幅比は実施例3と同じ1.43である。
(比較例4)
実施例3の梁サイズをH−700x200x12x22(mm)に変更する。その結果、接合部パネル高さ比は2.0となり、接合部パネル/柱耐力比は1.29となっている。
表2に、上述した角形鋼管と円形鋼管の場合の実施例と比較例に用いた柱と梁の断面性能を示す。床スラブの影響は主に梁耐力の上昇であるので、耐力算定には床スラブを無視している。両側の外柱では梁の曲げ耐力和が柱のそれよりも大きく、耐力および耐力比は中柱の数値を示している。
外柱では取り付く梁の数のみ1本で、梁崩壊となっている。中柱では梁の曲げモーメ
ントの和が柱のそれより大きくなっている。したがって、中柱では梁は降伏しない。接合部パネルの高さ/幅比は、角形鋼管の場合、2.17で、円形鋼管の場合、1.43である。
これらの骨組に図6のように建築基準法の耐震規定に準拠した水平荷重P1,P2の比率で載荷する。載荷は第1層の層間変位角で制御し、1/200、1/150、1/100、1/75、1/50をそれぞれ2回ずつ繰り返し、2階床の中柱の塑性変形倍率を算定した。
表3に結果を示す。角形鋼管の場合、実施例1,2では柱は弾性もしくはほぼ弾性状態を保持し、柱に破断は生じていない。比較例1では、層間変位角1/100を超えたあたりで、中柱2層の接合部パネル部に最初に塑性化が見られたが、1/75で柱にも塑性ヒンジが発生した。
その後、床スラブの影響で梁耐力が上昇し、外柱にも塑性ヒンジが発生し層間変形角1/75で層崩壊を生じ、さらに1/50に中柱柱頭で柱が破断した。比較例2では1/75で接合部パネルと柱にほぼ同時に塑性ヒンジが発生し、その後、1/75で中柱柱頭で柱が破断した。
円形鋼管の場合、実施例3,4では柱は弾性もしくはほぼ弾性状態を保持し、柱に破断は生じていない。比較例3では、層間変位角1/100を超えたあたりで、中柱2層の接合部パネル部に最初に塑性化が見られたが、1/75で柱にも塑性ヒンジが発生した。
その後、床スラブの影響で梁耐力が上昇し、外柱にも塑性ヒンジが発生し層間変形角1/75で層崩壊を生じ、さらに1/50に中柱柱頭で柱が破断した。比較例4では1/75で接合部パネルと柱にほぼ同時に塑性ヒンジが発生し、その後、1/75で中柱柱頭で柱が破断した。
Figure 2006291698
Figure 2006291698
接合部パネルを説明する図。 試験装置を説明する図。 接合部パネルのモーメント分布を示す図。 接合部パネルと柱に同一の鋼材を用いた場合の、接合部パネルの高さ幅比に及ぼす柱軸力比の影響を鋼材のYR毎に示す図(角形鋼管の場合)。 接合部パネルと柱に同一の鋼材を用いた場合の、接合部パネルの高さ幅比に及ぼす柱軸力比の影響を鋼材のYR毎に示す図(円形鋼管の場合)。 実施例。
符号の説明
1 柱梁接合部
2 柱
2a 柱(上)
2b 柱(下)
3、5 梁
3a、5a 梁フランジ(上)
3b,5b 梁ウェブ
3c、5c 梁フランジ(下)
4 接合部パネル
41 鋼管
42 ダイヤフラム
6 載置梁
7 水平力
8 試験台

Claims (7)

  1. 柱および梁から構成され、該柱と該梁が剛接合されている柱梁接合部において、
    前記柱と前記梁の節点に設けられた接合部パネルの曲げ耐力を、該接合部パネルの上下となる柱の曲げ耐力の和未満にすることを特徴とする柱梁接合部。
  2. 柱および梁から構成され、該柱と該梁が剛接合されている柱梁接合部において、
    前記柱と前記梁の節点に設けられた接合部パネルは、柱が角形鋼管の場合、式(3−2)、または、柱が円形鋼管の場合、式(6−1)の条件を満たすことを特徴とする柱梁接合部。
    Figure 2006291698
    Figure 2006291698
    ここで、n:付加軸力、α:歪硬化による耐力上昇率、σ:接合部パネルの降伏応力度、t:接合部パネルの板厚、d:梁フランジ中心間距離、σ:柱の降伏応力度、t:柱の板厚、d:柱フランジ中心間距離
  3. 柱および梁から構成され、該柱と該梁が剛接合されている柱梁接合部において、
    前記柱と前記梁の節点に設けられた接合部パネルは、その構成する鋼材の耐力と板厚が、該接合部パネルの上下となる柱に用いる鋼材の耐力と板厚にそれぞれ等しく、且つ、柱が角形鋼管の場合、式(3−3)、または、柱が円形鋼管の場合、式(6−2)の条件を満たすことを特徴とする柱梁接合部。
    Figure 2006291698
    Figure 2006291698
    ここで、n:付加軸力、d:梁フランジ中心間距離、d:柱フランジ中心間距離、YR:接合部パネルに用いた鋼材の降伏比
  4. 柱および梁から構成され、該柱と該梁が剛接合されている柱梁接合部において、
    前記柱と前記梁の節点に設けられた接合部パネルの曲げ耐力を、該接合部パネルの上下となる柱の曲げ耐力の和未満とし、かつ接合部パネルの上下となる柱の鋼材としてYRが80%を超える高張力鋼材を用いたことを特徴とする柱梁接合部。
  5. 柱および梁から構成され、柱と梁の節点を複数有する鉄骨ラーメン骨組を含む鉄骨骨組であって、
    請求項1乃至4の何れか1つ記載の柱梁接合部を少なくとも一つ有することを特徴とする鉄骨骨組。
  6. 柱および梁から構成され、柱と梁の節点を複数有し、降伏層間変位角が1/100以上である鉄骨ラーメン骨組と、エネルギー吸収部材を設置した鉄骨骨組であって、
    請求項1乃至4の何れか1つ記載の柱梁接合部を少なくとも一つ有することを特徴とする鉄骨骨組。
  7. 請求項5または6に記載の鉄骨骨組を有し、最下層の柱の柱脚に柱よりも耐力の低い柱脚を設けたことを特徴とする鉄骨構造物。
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