JP2006291091A - 架橋性生分解性樹脂の生分解速度を制御する方法及びその生分解速度制御された架橋性生分解性樹脂成形物 - Google Patents
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Abstract
【課題】
従来のプラスチックと同等の機能、例えば強度、耐水性、成形加工性、耐熱性および耐久性を有し、かつ廃棄後には自然界に一般に存在する微生物等により速やかに分解される生分解性を制御する方法、並びに生分解性樹脂、生分解性樹脂組成物、および生分解性樹脂または生分解性樹脂組成物から得られる成形物を提供することにある。
【解決手段】
生分解性樹脂に生分解速度制御助剤を配合した後、活性エネルギー線照射することを特徴とする生分解性樹脂、生分解性樹脂組成物またはそれらから得られる成形物の生分解速度を制御する方法、および生分解速度を制御する為の生分解性樹脂組成物またはそれらから得られる生分解速度制御成形物。
【選択図】 図1
従来のプラスチックと同等の機能、例えば強度、耐水性、成形加工性、耐熱性および耐久性を有し、かつ廃棄後には自然界に一般に存在する微生物等により速やかに分解される生分解性を制御する方法、並びに生分解性樹脂、生分解性樹脂組成物、および生分解性樹脂または生分解性樹脂組成物から得られる成形物を提供することにある。
【解決手段】
生分解性樹脂に生分解速度制御助剤を配合した後、活性エネルギー線照射することを特徴とする生分解性樹脂、生分解性樹脂組成物またはそれらから得られる成形物の生分解速度を制御する方法、および生分解速度を制御する為の生分解性樹脂組成物またはそれらから得られる生分解速度制御成形物。
【選択図】 図1
Description
本発明は、生分解性樹脂に生分解制御助剤を配合した後、活性エネルギー線を照射することを特徴とする架橋性生分解性樹脂、架橋性生分解性樹脂組成物またはそれらから得られる成形物の生分解速度を制御する方法、および生分解速度が制御された架橋性生分解性樹脂、架橋性生分解性樹脂組成物またはそれらから得られる成形物に関するものである。
生分解性プラスチックは、環境低負荷材料として注目され、多くの種類が開発されるようになってきた。生分解性プラスチックの原料となる生分解性ポリマーは自然界や例えば微生物等の生体の作用で分解して、同化される有機材料であり、環境に適合した理想的な材料として開発されてきた。このような生分解性ポリマーとしては、例えばセルロース、デンプン、デキストラン、キチン等の多糖誘導体やコラーゲン、カゼイン、フィブリン、ゼラチン等のポリペプチド類、ポリアミノ酸、ポリビニルアルコール、ナイロン4、ナイロン2/ナイロン6共重合体等のポリアミド、脂肪酸ポリエステル等が挙げられる。
現時点では、生分解性ポリマーは、脂肪族系ポリエステル樹脂を中心に、農林水産用資材(フィルム、植栽ポット、釣糸、魚網等)、土木工事資材(保水シート、植物ネット、土嚢等)、包装・容器分野(土、食品等が付着してリサイクルが難しいもの)等に利用され始めている。
上述したような生分解性ポリエステルをはじめとする生分解性プラスチック成形物は、一般的には使用時に従来のプラスチックと同等の機能、例えば強度、耐水性、成形加工性、耐熱性および耐久性を有し、かつ廃棄後には自然界に一般に存在する微生物等により速やかに分解されるという性質を持つことが望まれているが、このようなインテリジェント的材料を開発するのは困難である。現在は分解速度の遅い樹脂は分解速度を促進することで、分解速度の速い樹脂は遅延することで種々調整されている。速やかに分解する方法としては、例えば、生分解性樹脂組成物の生分解性を促進する方法が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、耐久性と分解性は相反する性質といえ、耐久性を上げるためには生分解に由来する骨格構造の濃度を極力下げなければならず、分解性を高めるためには生分解に由来する骨格構造の濃度を極力上げなければならず、同一素材で達成は困難である。また、その成形物の種類、使用目的によって、その耐久性に対する期待値は異なる。例えば、使用期間の短い成形物は、分解性が大きいことが望まれるために耐久性を上げることができず、逆に使用期間の長い成形物は、耐久性が望まれるが分解性も無視できない。従って、生分解性樹脂、生分解性樹脂組成物およびこれらから得られる成形物の耐久性を向上し、なおかつ分解速度を制御する方法の出現が望まれていた。
これを解決する方法として、例えば、生分解性樹脂、生分解性樹脂組成物にカルボジイミド化合物、イソシアネート化合物またはオキサゾリン系化合物等を配合した後、活性エネルギー線照射することによって生分解速度を遅延する方法が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、このような化合物は活性エネルギー線を照射しても十分な生分解速度の阻害効果が得られず、耐熱性や耐久性などの面から従来のプラスチックと同等の機能を与えることができなかった。
特開平5-345836号公報
特開2003-34734号公報
現時点では、生分解性ポリマーは、脂肪族系ポリエステル樹脂を中心に、農林水産用資材(フィルム、植栽ポット、釣糸、魚網等)、土木工事資材(保水シート、植物ネット、土嚢等)、包装・容器分野(土、食品等が付着してリサイクルが難しいもの)等に利用され始めている。
上述したような生分解性ポリエステルをはじめとする生分解性プラスチック成形物は、一般的には使用時に従来のプラスチックと同等の機能、例えば強度、耐水性、成形加工性、耐熱性および耐久性を有し、かつ廃棄後には自然界に一般に存在する微生物等により速やかに分解されるという性質を持つことが望まれているが、このようなインテリジェント的材料を開発するのは困難である。現在は分解速度の遅い樹脂は分解速度を促進することで、分解速度の速い樹脂は遅延することで種々調整されている。速やかに分解する方法としては、例えば、生分解性樹脂組成物の生分解性を促進する方法が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、耐久性と分解性は相反する性質といえ、耐久性を上げるためには生分解に由来する骨格構造の濃度を極力下げなければならず、分解性を高めるためには生分解に由来する骨格構造の濃度を極力上げなければならず、同一素材で達成は困難である。また、その成形物の種類、使用目的によって、その耐久性に対する期待値は異なる。例えば、使用期間の短い成形物は、分解性が大きいことが望まれるために耐久性を上げることができず、逆に使用期間の長い成形物は、耐久性が望まれるが分解性も無視できない。従って、生分解性樹脂、生分解性樹脂組成物およびこれらから得られる成形物の耐久性を向上し、なおかつ分解速度を制御する方法の出現が望まれていた。
これを解決する方法として、例えば、生分解性樹脂、生分解性樹脂組成物にカルボジイミド化合物、イソシアネート化合物またはオキサゾリン系化合物等を配合した後、活性エネルギー線照射することによって生分解速度を遅延する方法が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、このような化合物は活性エネルギー線を照射しても十分な生分解速度の阻害効果が得られず、耐熱性や耐久性などの面から従来のプラスチックと同等の機能を与えることができなかった。
本発明の目的は、生分解性樹脂に生分解速度制御助剤を配合した後、活性エネルギー線照射することを特徴とする架橋性生分解性樹脂、架橋性生分解性樹脂組成物またはそれらから得られる成形物の生分解速度を制御する方法、および生分解速度を制御する為の架橋性生分解性樹脂組成物またはそれらから得られる架橋性生分解速度制御成形物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、生分解性樹脂に生分解速度制御助剤を配合した後、活性エネルギー線照射を施すことにより、生分解性速度の制御が可能になることを見出した。また、生分解速度制御助剤の種類、添加量および活性エネルギー線照射量を変えることにより、耐久性が向上するものもあれば、劣るものもあることを見出した。従って、活性エネルギー線照射量および配合した生分解速度制御助剤の種類、配合量を詳細に検討することにより耐久性が向上し、なおかつそれを制御する方法を見出し、更に検討を重ね、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(1)生分解性樹脂に生分解速度制御助剤を配合した架橋性生分解性樹脂に活性エネルギー線を照射することを特徴とする架橋性生分解性樹脂の生分解速度を制御する方法、(2)前記生分解速度制御助剤が分子中にエーテル若しくはエステル基を有するビニル性二重結合を2個以上有する多官能性モノマーであることを特徴とする(1)記載の架橋性生分解性樹脂の生分解速度を制御する方法、(3)前記活性エネルギー線が電離性放射線であることを特徴とする(1)記載の架橋性生分解性樹脂の生分解速度を制御する方法、(4)前記架橋性生分解性樹脂の活性エネルギー線量に対する架橋度の相関関係を利用して、生分解速度制御助剤の種類もしくは添加量を特定することを特徴とする(1)記載の架橋性生分解性樹脂の生分解速度を制御する方法、(5)前記架橋性生分解性樹脂の活性エネルギー線量に対する架橋度の相関関係を利用して、活性エネルギー線量を特定することを特徴とする(1)記載の架橋性生分解性樹脂の生分解速度を制御する方法、(6)活性エネルギー線の照射量が、5〜100kGyであることを特徴とする(1)記載の架橋性生分解性樹脂の生分解速度を制御する方法、(7)生分解性樹脂が、ポリブチレンサクシネートとその共重合体、ポリ乳酸、ポリ(ε−カプロラクトン)、他の石油合成により得られる生分解性材料、若しくは天然高分子、又はそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする(1)記載の架橋性生分解性樹脂の生分解速度を制御する方法、(8)(1)から(7)のいずれかに記載の方法で生分解速度が制御された架橋性生分解性樹脂、(9)(1)から(7)のいずれかに記載の方法で生分解速度が制御された架橋性生分解性樹脂組成物、(10)(1)から(7)のいずれかに記載の方法で生分解速度が制御された架橋性生分解性樹脂または架橋性生分解性樹脂組成物から得られる成形物に関する。
すなわち、本発明は、(1)生分解性樹脂に生分解速度制御助剤を配合した架橋性生分解性樹脂に活性エネルギー線を照射することを特徴とする架橋性生分解性樹脂の生分解速度を制御する方法、(2)前記生分解速度制御助剤が分子中にエーテル若しくはエステル基を有するビニル性二重結合を2個以上有する多官能性モノマーであることを特徴とする(1)記載の架橋性生分解性樹脂の生分解速度を制御する方法、(3)前記活性エネルギー線が電離性放射線であることを特徴とする(1)記載の架橋性生分解性樹脂の生分解速度を制御する方法、(4)前記架橋性生分解性樹脂の活性エネルギー線量に対する架橋度の相関関係を利用して、生分解速度制御助剤の種類もしくは添加量を特定することを特徴とする(1)記載の架橋性生分解性樹脂の生分解速度を制御する方法、(5)前記架橋性生分解性樹脂の活性エネルギー線量に対する架橋度の相関関係を利用して、活性エネルギー線量を特定することを特徴とする(1)記載の架橋性生分解性樹脂の生分解速度を制御する方法、(6)活性エネルギー線の照射量が、5〜100kGyであることを特徴とする(1)記載の架橋性生分解性樹脂の生分解速度を制御する方法、(7)生分解性樹脂が、ポリブチレンサクシネートとその共重合体、ポリ乳酸、ポリ(ε−カプロラクトン)、他の石油合成により得られる生分解性材料、若しくは天然高分子、又はそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする(1)記載の架橋性生分解性樹脂の生分解速度を制御する方法、(8)(1)から(7)のいずれかに記載の方法で生分解速度が制御された架橋性生分解性樹脂、(9)(1)から(7)のいずれかに記載の方法で生分解速度が制御された架橋性生分解性樹脂組成物、(10)(1)から(7)のいずれかに記載の方法で生分解速度が制御された架橋性生分解性樹脂または架橋性生分解性樹脂組成物から得られる成形物に関する。
生分解性樹脂は本来、使用後は自然界において微生物或いは紫外線、赤外線等が関与して低分子化合物、最終的に水と二酸化炭素に分解するプラスチックであるものの、その分解挙動は温湿度など自然環境に左右され、現実問題として最終製品としての機械的強度の保持期間が製造後1〜3年程度ではプラスチックとしての汎用性が得られず、そのため特殊な分野やナチュラリストなど特定の生活スタイルを好む人々の間でしか用いられずコストパフォーマンスの点が問題であった。
本発明によれば、この生分解速度を制御したため飛躍的に用途が拡大することが予想され、従来、リサイクル時産業廃棄物としてでしか処理できなかったものが、自然界で無害で処理可能となる。
本発明によれば、この生分解速度を制御したため飛躍的に用途が拡大することが予想され、従来、リサイクル時産業廃棄物としてでしか処理できなかったものが、自然界で無害で処理可能となる。
本発明で用いられる生分解性樹脂、生分解性樹脂組成物またはそれらから得られる成形物は、使用後は自然界において微生物が関与して低分子化合物、最終的に水と二酸化炭素に分解するプラスチックである(生分解性プラスチック研究会、ISO/TC−207/SC3)。このような生分解性プラスチックの原料となる生分解性ポリマーとしては、セルロース、デンプン、デキストラン、キチン等の多糖誘導体、コラーゲン、カゼイン、フィブリン、ゼラチン等のペプチド類、ポリアミノ酸、ポリビニルアルコール、ナイロン4、ナイロン2/ナイロン6共重合体等のポリアミド、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリコハク酸エステル、ポリシュウ酸エステル、ポリヒドロキシ酪酸、ポリジグリコール酸ブチレン、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン等のポリエステル等が挙げられ、本発明で生分解性樹脂として用いることが可能である。すなわち、本発明における生分解性樹脂は自然界や生体の作用で分解して、同化される有機材料であり、環境に適合した理想的な材料であり、本発明の目的を損なわなければ、どのような材料でもかまわない。中でも、特に好ましいのは、生分解性ポリエステルである。
本発明で用いられる生分解性ポリエステルとは、主鎖にエステル結合;−CO−O−を有する高分子であり、本発明で使用する生分解性ポリエステルとしては、例えば微生物によって代謝されるポリエステルを挙げることができ、中でも脂肪族ポリエステル樹脂が好ましい。上記脂肪族ポリエステル樹脂としては、ポリシュウ酸エステル、ポリコハク酸エステル、ポリヒドロキシ酪酸、ポリジグリコール酸ブチレン、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、乳酸、リンゴ酸もしくはグルコール酸等のオキシ酸の重合体またはこれらの共重合体等のヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステル樹脂が挙げられる。中でも特にポリ乳酸に代表されるヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステル樹脂が好ましい。
本発明で用いられる生分解性ポリエステルは、公知の方法に従って合成できる。例えば、(1)ラクチド法、(2)多価アルコールと多塩基酸との重縮合、または(3)分子内に水酸基とカルボキシル基とを有するヒドロキシカルボン酸の分子間重縮合等が挙げられる。
ラクチド法とは、環状ジエステルおよび対応するラクトン類の開環重合による方法である。このような環状ジエステルの例としては、例えば、ラクチド、グリコリド等、また、ラクトンとしては、例えばε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。
多価アルコールと多塩基酸との重縮合で用いられる多価アルコールとしては、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、1,3−ブタンジオ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル等が挙げられ、またこれに使用される多塩基酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、例えばアジピン酸、セバシン酸、シュウ酸、コハク酸、無水コハク酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、ダイマ−酸等の脂肪族ジカルボン酸類、例えば1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸類が代表例として例示できるが、芳香属ジカルボン酸を用いた物は結晶性が高くなるため、本来の生分解性が悪化するで好ましく無く、本発明では、原料となる多価アルコール、多塩基酸とも、脂肪族化合物であることが好ましい。
また、分子内に水酸基とカルボキシル基とを有するヒドロキシカルボン酸の分子間重縮合は、公知の方法に従って行われうる。例えば、対応するヒドロキシカルボン酸の通接脱水縮合法により得ることができる。このようなヒドロキシカルボン酸としては、例えば
乳酸、2−ヒドロキシ酢酸、2−ヒドロキシプロパン酸、2−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、2−ヒドロキシヘキサン酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸およびそれらから誘導されるオリゴマーが挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステル樹脂を製造するための触媒としては、スズ、アンチモン、亜鉛、チタン、鉄、アルミニウム化合物を例示することができ、中でもスズ系触媒、アルミニウム系触媒が好ましく、オクチル酸スズ、アルミニウムアセチルアセ
トナートが特に好適である。
上記ヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステル樹脂の中でも、ラクチド開環重合により得られるポリL−乳酸が、加水分解されてL−乳酸になると共にその安全性も確認されているために特に好ましいが、本発明で使用するヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステル樹脂はこれに限定されることはなく、従ってその製造に使用するラクチドについても、L体に限定されるものではない。
本発明に係る生分解性樹脂組成物は、生分解性樹脂と少なくとも1種以上の添加物を含有していることを特徴としている。該添加物には、本発明中の生分解速度制御助剤は含まれず、それ以外の、例えば、発泡剤、酸化防止剤、滑剤、熱安定剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、核剤、可塑剤、抗菌剤、発泡剤分解促進剤、光安定剤、気泡安定剤、金属害防止剤、有機過酸化物、充填剤、補強繊維、光分解剤、生分解促進剤、無機フィラー、着色剤、耐加水分解安定剤など本発明の目的を損なわない物質を意味している。すなわち、本発明における生分解性樹脂組成物は、通常は、生分解性樹脂に生分解速度制御助剤以外の添加物が配合されている組成物を意味しており、単独もしくは2種類以上併用して用いることができる。
本発明の難燃剤としては、例えば、公知の各種のホウ酸系難燃化合物、リン系難燃化合物、無機系難燃化合物、チッソ系難燃化合物、ハロゲン系難燃化合物、有機系難燃化合物、コロイド系難燃化合物等が挙げられる。難燃剤は、一種あるいは二種以上用いても構わないが、生分解の観点からはリン或いはハロゲンを含まない物が好ましい。
本発明の生分解促進剤としては、例えば、オキソ酸(例えば、グリコール酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などの炭素数2〜6程度のオキソ酸)、飽和ジカルボン酸(例えば、修酸、マロン酸、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸、などの炭素数2〜6程度の低級飽和ジカルボン酸など)などの有機酸;これらの有機酸と炭素数1〜4程度のアルコールとの低級アルキルエステルが含まれる。好ましい生分解促進剤には、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などの炭素数2〜6程度の有機酸、および椰子殻活性炭等が挙げられる。これらの生分解促進剤も1種または2種以上併用できる。
本発明の耐加水分解安定剤としては、例えばカルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、またはオキサゾリン系化合物等の架橋剤が適用可能であるが、特にカルボジイミド化合物が生分解性樹脂および生分解性樹脂組成物と容易に溶融混練できるため、好ましく用いることができる。また、これらの架橋剤も1種または2種以上併用できる。
本発明において、生分解性樹脂および生分解性樹脂組成物の混合は従来公知の混合方法によって行うことができる。例えば、ヘンシェルミキサ、バンバリーミキサ、ミキシング、混練押出機による混合などがあり、単独または併用して使用される。尚、本発明で用いる生分解性樹脂は加熱下で加水分解を受けやすいため、予め真空乾燥機で含有水分率を0.1重量%以下に低下させておくことが好ましい。
次に、本発明に係る生分解性樹脂、生分解性樹脂組成物またはそれから得られる成形体の分解速度を制御する好ましい一態様について説明する。
本発明の生分解性速度を制御する方法としては、電離性放射線を用いる必要がある。電離性放射線としては、例えば、α線、β線、γ線、電子線等を挙げることができる。中でも特に電子加速器の使用によりβ線、電子線などの電離性放射線を所定線量照射する電子線架橋法が好ましく用いられる。電子線架橋法は生分解速度制御助剤を配合することにより、反応に必要な活性エネルギー線量を抑えつつ架橋性生分解性樹脂の架橋反応を促進するため、照射に伴う分解副反応を抑制することが可能となる。よって、生分解性樹脂の骨格を破壊することなく効率的に架橋構造を形成することができる。
本発明に係る生分解速度制御助剤としては、活性エネルギー線照射による架橋反応効率の高い分子中にエーテル若しくはエステル基を有するビニル性二重結合を2個以上有する多官能モノマーである必要がある。たとえば脂肪族系ジ(メタ)アクリレート化合物、(多環)芳香族系ジ(メタ)アクリレート化合物、ヘテロ環系ジ(メタ)アクリレート化合物を有する化合物などの多官能性モノマーを使用することができる。中でも、取り扱いやすく、生分解速度の制御がし易いことから、多官能性(メタ)アクリル酸系化合物が望ましく、特に炭素数2〜12の脂肪族系ジ(メタ)アクリレート化合物、具体的には炭素数4〜9の(メタ)アクリレートがより好ましく、特に1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9ノナンジメタクリレートを好ましく用いることができる。一方、耐熱性を要求される場合は、ベンゼン環やヘテロ環構造を有するジ(メタ)アクリレート化合物、具体的にはトリシクロデカンジメタクリレート、ビフェニルジメタクリレート等が上げられるが、これら生分解速度制御助剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
生分解性樹脂に生分解速度制御助剤を配合する方法は、通常、生分解性樹脂に生分解速度制御助剤を溶融前、溶融時あるいは溶融後のいずれでもよい。すなわち、溶融して、生分解速度制御助剤と十分に混合すれば、いつでもかまわない。
本発明は、生分解性樹脂に上記生分解速度制御助剤を配合した架橋性生分解性樹脂、またはその樹脂組成物について、活性エネルギー線量に対する架橋度の関係を利用して生分解速度制御助剤の配合量を特定するか、もしくは生分解性樹脂または生分解性樹脂組成物に上記生分解速度制御助剤を配合した後、活性エネルギー線照射量に対する架橋度の相関関係を利用して活性エネルギー線の照射量を特定するいずれか1種の方法により生分解速度を制御することにある。
本発明でいう架橋度、すなわちゲル分率とは、以下の方法にて算出した値のことである。架橋樹脂、架橋樹脂組成物、またはそれらから得られる成形物を約50mg精密に秤量し、130℃のテトラリン25mlに3時間浸漬した後、200メッシュのステンレス製金網で濾過して、金網状の不溶解分を真空乾燥する。次いで、この不溶解分の重量を精密に秤量し、以下の式に従ってゲル分率を百分率で算出する。
ゲル分率(%)={不溶解分の重量(mg)/秤量した架橋樹脂発泡体の重量(mg)}×100
尚、自然界、とりわけ土壌中で分解する速度は、使用する生分解性樹脂または生分解性樹脂組成物により異なり一該には言えないが、生分解速度制御助剤の種類、配合量、または電離性放射線の活性エネルギー線照射量を特定することにより、生分解樹脂の生分解性骨格を破壊することなく、脂肪鎖部分に効率的に架橋構造を導入して架橋度を制御することで、耐久性と生分解性を両立することが可能となる。よって、目的とする製品に応じて配合する生分解速度制御助剤の種類、配合量及び活性エネルギー線照射量を決定すればよい。
活性エネルギー線照射量は、架橋性生分解性樹脂、架橋性生分解性樹脂組成物またはそれらから得られる成形物に対して効果的に生分解を制御できる範囲であればどのようなものでもかまわないが、例えば、電子線の場合、照射エネルギー線量は通常1〜300kGy、好ましくは5〜100kGyである。照射線量が少なすぎると、生分解速度制御助剤が架橋構造を形成する機能を十分に発揮せずに生分解が進行してしまい、逆に、照射線量が多すぎると生分解速度制御助剤による架橋反応が著しく進行するために、生分解性骨格の脂肪鎖部分にまで架橋構造が形成し、生分解性骨子を破壊して分解を促進するので好ましくない。また、照射回数は通常4回以下である。照射回数が4回を超えると樹脂の劣化が進行し、同じく十分な耐久性が得られない。
また、生分解制御助剤の添加量は使用する生分解性樹脂または生分解性樹脂組成物により異なり一該には言えないが、好ましくは10重量%以下、より好ましくは6重量%以下の範囲で用いられる。生分解制御助剤の添加量が10重量%を越えると添加効果が飽和し、単にコストアップに繋がるのみであるため好ましくない。
尚、活性エネルギー線照射により架橋構造を形成する場合、架橋性生分解性樹脂、または架橋性生分解性樹脂組成物に予め光架橋剤、シラン架橋剤、または有機過酸化物のような架橋に必要とされる架橋剤を添加する必要はないが、配合する架橋剤の種類および配合量によりその生分解速度を調節することができるので、目的とする製品に応じ、適時配合する種類および配合量を決定すればよい。また、架橋剤を配合する方法は、通常、溶融前、溶融時あるいは溶融後に配合し、溶融し混合することにより行われ、溶融して充分に混合すれば、いつでもかまわない。また、これら架橋剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明で用いられる生分解性ポリエステルとは、主鎖にエステル結合;−CO−O−を有する高分子であり、本発明で使用する生分解性ポリエステルとしては、例えば微生物によって代謝されるポリエステルを挙げることができ、中でも脂肪族ポリエステル樹脂が好ましい。上記脂肪族ポリエステル樹脂としては、ポリシュウ酸エステル、ポリコハク酸エステル、ポリヒドロキシ酪酸、ポリジグリコール酸ブチレン、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、乳酸、リンゴ酸もしくはグルコール酸等のオキシ酸の重合体またはこれらの共重合体等のヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステル樹脂が挙げられる。中でも特にポリ乳酸に代表されるヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステル樹脂が好ましい。
本発明で用いられる生分解性ポリエステルは、公知の方法に従って合成できる。例えば、(1)ラクチド法、(2)多価アルコールと多塩基酸との重縮合、または(3)分子内に水酸基とカルボキシル基とを有するヒドロキシカルボン酸の分子間重縮合等が挙げられる。
ラクチド法とは、環状ジエステルおよび対応するラクトン類の開環重合による方法である。このような環状ジエステルの例としては、例えば、ラクチド、グリコリド等、また、ラクトンとしては、例えばε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。
多価アルコールと多塩基酸との重縮合で用いられる多価アルコールとしては、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、1,3−ブタンジオ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル等が挙げられ、またこれに使用される多塩基酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、例えばアジピン酸、セバシン酸、シュウ酸、コハク酸、無水コハク酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、ダイマ−酸等の脂肪族ジカルボン酸類、例えば1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸類が代表例として例示できるが、芳香属ジカルボン酸を用いた物は結晶性が高くなるため、本来の生分解性が悪化するで好ましく無く、本発明では、原料となる多価アルコール、多塩基酸とも、脂肪族化合物であることが好ましい。
また、分子内に水酸基とカルボキシル基とを有するヒドロキシカルボン酸の分子間重縮合は、公知の方法に従って行われうる。例えば、対応するヒドロキシカルボン酸の通接脱水縮合法により得ることができる。このようなヒドロキシカルボン酸としては、例えば
乳酸、2−ヒドロキシ酢酸、2−ヒドロキシプロパン酸、2−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、2−ヒドロキシヘキサン酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸およびそれらから誘導されるオリゴマーが挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステル樹脂を製造するための触媒としては、スズ、アンチモン、亜鉛、チタン、鉄、アルミニウム化合物を例示することができ、中でもスズ系触媒、アルミニウム系触媒が好ましく、オクチル酸スズ、アルミニウムアセチルアセ
トナートが特に好適である。
上記ヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステル樹脂の中でも、ラクチド開環重合により得られるポリL−乳酸が、加水分解されてL−乳酸になると共にその安全性も確認されているために特に好ましいが、本発明で使用するヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステル樹脂はこれに限定されることはなく、従ってその製造に使用するラクチドについても、L体に限定されるものではない。
本発明に係る生分解性樹脂組成物は、生分解性樹脂と少なくとも1種以上の添加物を含有していることを特徴としている。該添加物には、本発明中の生分解速度制御助剤は含まれず、それ以外の、例えば、発泡剤、酸化防止剤、滑剤、熱安定剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、核剤、可塑剤、抗菌剤、発泡剤分解促進剤、光安定剤、気泡安定剤、金属害防止剤、有機過酸化物、充填剤、補強繊維、光分解剤、生分解促進剤、無機フィラー、着色剤、耐加水分解安定剤など本発明の目的を損なわない物質を意味している。すなわち、本発明における生分解性樹脂組成物は、通常は、生分解性樹脂に生分解速度制御助剤以外の添加物が配合されている組成物を意味しており、単独もしくは2種類以上併用して用いることができる。
本発明の難燃剤としては、例えば、公知の各種のホウ酸系難燃化合物、リン系難燃化合物、無機系難燃化合物、チッソ系難燃化合物、ハロゲン系難燃化合物、有機系難燃化合物、コロイド系難燃化合物等が挙げられる。難燃剤は、一種あるいは二種以上用いても構わないが、生分解の観点からはリン或いはハロゲンを含まない物が好ましい。
本発明の生分解促進剤としては、例えば、オキソ酸(例えば、グリコール酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などの炭素数2〜6程度のオキソ酸)、飽和ジカルボン酸(例えば、修酸、マロン酸、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸、などの炭素数2〜6程度の低級飽和ジカルボン酸など)などの有機酸;これらの有機酸と炭素数1〜4程度のアルコールとの低級アルキルエステルが含まれる。好ましい生分解促進剤には、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などの炭素数2〜6程度の有機酸、および椰子殻活性炭等が挙げられる。これらの生分解促進剤も1種または2種以上併用できる。
本発明の耐加水分解安定剤としては、例えばカルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、またはオキサゾリン系化合物等の架橋剤が適用可能であるが、特にカルボジイミド化合物が生分解性樹脂および生分解性樹脂組成物と容易に溶融混練できるため、好ましく用いることができる。また、これらの架橋剤も1種または2種以上併用できる。
本発明において、生分解性樹脂および生分解性樹脂組成物の混合は従来公知の混合方法によって行うことができる。例えば、ヘンシェルミキサ、バンバリーミキサ、ミキシング、混練押出機による混合などがあり、単独または併用して使用される。尚、本発明で用いる生分解性樹脂は加熱下で加水分解を受けやすいため、予め真空乾燥機で含有水分率を0.1重量%以下に低下させておくことが好ましい。
次に、本発明に係る生分解性樹脂、生分解性樹脂組成物またはそれから得られる成形体の分解速度を制御する好ましい一態様について説明する。
本発明の生分解性速度を制御する方法としては、電離性放射線を用いる必要がある。電離性放射線としては、例えば、α線、β線、γ線、電子線等を挙げることができる。中でも特に電子加速器の使用によりβ線、電子線などの電離性放射線を所定線量照射する電子線架橋法が好ましく用いられる。電子線架橋法は生分解速度制御助剤を配合することにより、反応に必要な活性エネルギー線量を抑えつつ架橋性生分解性樹脂の架橋反応を促進するため、照射に伴う分解副反応を抑制することが可能となる。よって、生分解性樹脂の骨格を破壊することなく効率的に架橋構造を形成することができる。
本発明に係る生分解速度制御助剤としては、活性エネルギー線照射による架橋反応効率の高い分子中にエーテル若しくはエステル基を有するビニル性二重結合を2個以上有する多官能モノマーである必要がある。たとえば脂肪族系ジ(メタ)アクリレート化合物、(多環)芳香族系ジ(メタ)アクリレート化合物、ヘテロ環系ジ(メタ)アクリレート化合物を有する化合物などの多官能性モノマーを使用することができる。中でも、取り扱いやすく、生分解速度の制御がし易いことから、多官能性(メタ)アクリル酸系化合物が望ましく、特に炭素数2〜12の脂肪族系ジ(メタ)アクリレート化合物、具体的には炭素数4〜9の(メタ)アクリレートがより好ましく、特に1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9ノナンジメタクリレートを好ましく用いることができる。一方、耐熱性を要求される場合は、ベンゼン環やヘテロ環構造を有するジ(メタ)アクリレート化合物、具体的にはトリシクロデカンジメタクリレート、ビフェニルジメタクリレート等が上げられるが、これら生分解速度制御助剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
生分解性樹脂に生分解速度制御助剤を配合する方法は、通常、生分解性樹脂に生分解速度制御助剤を溶融前、溶融時あるいは溶融後のいずれでもよい。すなわち、溶融して、生分解速度制御助剤と十分に混合すれば、いつでもかまわない。
本発明は、生分解性樹脂に上記生分解速度制御助剤を配合した架橋性生分解性樹脂、またはその樹脂組成物について、活性エネルギー線量に対する架橋度の関係を利用して生分解速度制御助剤の配合量を特定するか、もしくは生分解性樹脂または生分解性樹脂組成物に上記生分解速度制御助剤を配合した後、活性エネルギー線照射量に対する架橋度の相関関係を利用して活性エネルギー線の照射量を特定するいずれか1種の方法により生分解速度を制御することにある。
本発明でいう架橋度、すなわちゲル分率とは、以下の方法にて算出した値のことである。架橋樹脂、架橋樹脂組成物、またはそれらから得られる成形物を約50mg精密に秤量し、130℃のテトラリン25mlに3時間浸漬した後、200メッシュのステンレス製金網で濾過して、金網状の不溶解分を真空乾燥する。次いで、この不溶解分の重量を精密に秤量し、以下の式に従ってゲル分率を百分率で算出する。
ゲル分率(%)={不溶解分の重量(mg)/秤量した架橋樹脂発泡体の重量(mg)}×100
尚、自然界、とりわけ土壌中で分解する速度は、使用する生分解性樹脂または生分解性樹脂組成物により異なり一該には言えないが、生分解速度制御助剤の種類、配合量、または電離性放射線の活性エネルギー線照射量を特定することにより、生分解樹脂の生分解性骨格を破壊することなく、脂肪鎖部分に効率的に架橋構造を導入して架橋度を制御することで、耐久性と生分解性を両立することが可能となる。よって、目的とする製品に応じて配合する生分解速度制御助剤の種類、配合量及び活性エネルギー線照射量を決定すればよい。
活性エネルギー線照射量は、架橋性生分解性樹脂、架橋性生分解性樹脂組成物またはそれらから得られる成形物に対して効果的に生分解を制御できる範囲であればどのようなものでもかまわないが、例えば、電子線の場合、照射エネルギー線量は通常1〜300kGy、好ましくは5〜100kGyである。照射線量が少なすぎると、生分解速度制御助剤が架橋構造を形成する機能を十分に発揮せずに生分解が進行してしまい、逆に、照射線量が多すぎると生分解速度制御助剤による架橋反応が著しく進行するために、生分解性骨格の脂肪鎖部分にまで架橋構造が形成し、生分解性骨子を破壊して分解を促進するので好ましくない。また、照射回数は通常4回以下である。照射回数が4回を超えると樹脂の劣化が進行し、同じく十分な耐久性が得られない。
また、生分解制御助剤の添加量は使用する生分解性樹脂または生分解性樹脂組成物により異なり一該には言えないが、好ましくは10重量%以下、より好ましくは6重量%以下の範囲で用いられる。生分解制御助剤の添加量が10重量%を越えると添加効果が飽和し、単にコストアップに繋がるのみであるため好ましくない。
尚、活性エネルギー線照射により架橋構造を形成する場合、架橋性生分解性樹脂、または架橋性生分解性樹脂組成物に予め光架橋剤、シラン架橋剤、または有機過酸化物のような架橋に必要とされる架橋剤を添加する必要はないが、配合する架橋剤の種類および配合量によりその生分解速度を調節することができるので、目的とする製品に応じ、適時配合する種類および配合量を決定すればよい。また、架橋剤を配合する方法は、通常、溶融前、溶融時あるいは溶融後に配合し、溶融し混合することにより行われ、溶融して充分に混合すれば、いつでもかまわない。また、これら架橋剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の架橋性生分解性樹脂、または架橋性生分解性樹脂組成物を成形して得られる成形物としては特に限定されず、例えばマイク、テレビ、キーボード、自動車材料、建材用途等幅広く用いることができる。
成形物を得る方法としては公知の方法に従ってよく、成形のために種々の手段が成形品の種類に応じて選択される。成形方法としては、例えば、押出成形、射出成形、発泡成形等が挙げられる。押出成形または射出成形は、定法に従い、自体公知の例えば単軸押出機、多軸押出機、タンデム押出機等の押出成形機、または、例えばインラインスクリュー式射出成形機、多層射出成形機、2頭式射出成形機等の射出成形機にて行うことができ、所望の形状に成形する。発泡成形は定法に従い、従来公知の例えば縦型および横型の熱風発泡炉、あるいは薬液浴発泡炉などで行うことができる。生分解性樹脂として脂肪族ポリエステル等のような加水分解を起こしやすい樹脂を用いる場合は、薬液浴上で発泡させるよりも縦型および横型の熱風発泡炉で発泡を行った方が表面状態の良好な発泡体を得られる。
ここで、実際に本発明に係わる生分解性ポリエステルとして実施を行ったが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例で用いられた活性エネルギー線源については、以下に示す通りである。
照射条件雰囲気;大気中
電子線照射器;日新ハイボルテージ(株)社製電子線照射器
加速電圧;1.2MV
照射を施した生分解性樹脂組成物の分子量および分解性の評価は下記の条件で測定した。
1)分解性試験
酵素液にサンプルを浸し、サンプルの経時的な重量変化を調べる方法であるため、自然環境下での分解とは必ずしも一致しないが、おおよその分解性について傾向をとらえることができることから以下の方法に従って行った。
電子線照射器;日新ハイボルテージ(株)社製電子線照射器
加速電圧;1.2MV
照射を施した生分解性樹脂組成物の分子量および分解性の評価は下記の条件で測定した。
1)分解性試験
酵素液にサンプルを浸し、サンプルの経時的な重量変化を調べる方法であるため、自然環境下での分解とは必ずしも一致しないが、おおよその分解性について傾向をとらえることができることから以下の方法に従って行った。
操作:試験管内の酵素液にサンプルを浸漬し、振盪機にて60℃で所定時間反応後、蒸留水洗浄ついでメタノール洗浄を行い、真空乾燥後、重量測定を行った。1試験管あたりのサンプル量、酵素組成は以下の通りである。
使用薬品:
(1)Lipase AK enzyme:天野エンザイム製 100mg/ml
(2)0.2M Phosphate Baffer :和光純薬工業製(161-12191)pH7.0 4ml
(3)0.1%MgCl2 surfactant :和光純薬工業製(135-00165) 1ml
振盪機温度;60℃
洗浄方法:
(1)蒸留水洗浄
上記操作における酵素との所定時間反応後、酵素液を廃棄し、洗瓶の蒸留水約10mlにてサンプルごとに試験管内を洗浄する。蒸留水を交換後、振盪機にて室温で1〜2時間、さらに蒸留水を交換して、振盪機にて同様に2時間〜一晩洗浄する。
(2)メタノール洗浄
上記(1)の蒸留水洗浄を行い、蒸留水を廃棄後、蒸留水洗浄同様にして、洗浄を行う。その後、洗浄済みのサンプルを一晩、真空乾燥する。重量測定;真空乾燥した後、サンプルを0.0001gまで精秤した。真空乾燥後、測定まで重量を安定させるために、室内に1時間放置し、その後重量測定を行った。
[実施例1]
生分解性樹脂として脂肪族ポリエステル(”ビオノーレ”(登録商標)#1003 昭和高分子(株)製)100重量部を真空乾燥機で含有水分率を0.1重量%以下に乾燥させた後、生分解速度制御助剤としてジメタクリル酸1,6−ヘキサンジオール(アクリルエステルHX 三菱レイヨン(株)製)3.0重量部、安定剤として酸化防止剤(”アデカスタブ”(登録商標)AO-60(旭電化工業(株)製)0.5重量部、(”イルガノックス”(登録商標)PS802(チバ・スペシャルティケミカルズ(株)製)0.3重量部を準備し、これらを窒素置換されたヘンシェルミキサに投入し、200〜400rpmの低速回転で約6分間混合して樹脂組成物とした。この樹脂組成物を生分解性樹脂の融点以上の温度、具体的には120℃に加熱したベント付きの押出し機に導入、Tダイから押出し、厚みが1mmのシートに成形した後、50mm×50mm×1mmの試験片を切り出し、真空乾燥させた。この試験片に対し、照射線量2kGy、20kGy、100kGy、200kGyで室温条件下にて電子線照射した後、上記組成物を上記条件下にてリパーゼ反応性試験を行い、相対重量変化を測定した。リパーゼ反応時間に対する相対重量をプロットした結果を図1に示す。尚、相対重量は、リパーゼ反応前の重量を100として表している。
使用薬品:
(1)Lipase AK enzyme:天野エンザイム製 100mg/ml
(2)0.2M Phosphate Baffer :和光純薬工業製(161-12191)pH7.0 4ml
(3)0.1%MgCl2 surfactant :和光純薬工業製(135-00165) 1ml
振盪機温度;60℃
洗浄方法:
(1)蒸留水洗浄
上記操作における酵素との所定時間反応後、酵素液を廃棄し、洗瓶の蒸留水約10mlにてサンプルごとに試験管内を洗浄する。蒸留水を交換後、振盪機にて室温で1〜2時間、さらに蒸留水を交換して、振盪機にて同様に2時間〜一晩洗浄する。
(2)メタノール洗浄
上記(1)の蒸留水洗浄を行い、蒸留水を廃棄後、蒸留水洗浄同様にして、洗浄を行う。その後、洗浄済みのサンプルを一晩、真空乾燥する。重量測定;真空乾燥した後、サンプルを0.0001gまで精秤した。真空乾燥後、測定まで重量を安定させるために、室内に1時間放置し、その後重量測定を行った。
[実施例1]
生分解性樹脂として脂肪族ポリエステル(”ビオノーレ”(登録商標)#1003 昭和高分子(株)製)100重量部を真空乾燥機で含有水分率を0.1重量%以下に乾燥させた後、生分解速度制御助剤としてジメタクリル酸1,6−ヘキサンジオール(アクリルエステルHX 三菱レイヨン(株)製)3.0重量部、安定剤として酸化防止剤(”アデカスタブ”(登録商標)AO-60(旭電化工業(株)製)0.5重量部、(”イルガノックス”(登録商標)PS802(チバ・スペシャルティケミカルズ(株)製)0.3重量部を準備し、これらを窒素置換されたヘンシェルミキサに投入し、200〜400rpmの低速回転で約6分間混合して樹脂組成物とした。この樹脂組成物を生分解性樹脂の融点以上の温度、具体的には120℃に加熱したベント付きの押出し機に導入、Tダイから押出し、厚みが1mmのシートに成形した後、50mm×50mm×1mmの試験片を切り出し、真空乾燥させた。この試験片に対し、照射線量2kGy、20kGy、100kGy、200kGyで室温条件下にて電子線照射した後、上記組成物を上記条件下にてリパーゼ反応性試験を行い、相対重量変化を測定した。リパーゼ反応時間に対する相対重量をプロットした結果を図1に示す。尚、相対重量は、リパーゼ反応前の重量を100として表している。
図1より、相対重量はどのサンプルでも減少したが、減少の度合いは20kGy、100kGy、200kGy、2kGyの順に大きくなることがわかった。その結果、電子線の照射量には最適値が存在し、その値よりも照射線量が少ない場合、生分解速度制御助剤が架橋構造を形成する機能を十分に発揮せずに生分解が進行してしまい、逆に、その値よりも照射線量が多い場合、生分解速度制御助剤による架橋反応が著しく進行し、生分解性骨格の脂肪鎖部分にまで架橋構造が形成され、生分解性骨子が架橋反応により破壊された結果、生分解が進行しやすくなると知見された。従って、電子線の照射量を適正化することにより脂肪族ポリエステルの分解性を制御できることがわかった。
[実施例2]
生分解速度制御助剤として、ジメタクリル酸1,6−ヘキサンジオール(アクリルエステルHX 三菱レイヨン(株)製)をそれぞれ1、3、5、10重量部添加したことを除けば、実施例1と同じ操作を繰り返して試験片を切り出し、真空乾燥させた。この試験片に対して室温条件下にて一定の照射線量20kGyを電子線照射した後、実施例1と同様の方法にてリパーゼ反応性試験を行い、相対重量変化を測定した。リパーゼ反応時間に対する相対重量をプロットした結果を図2に示す。
[実施例2]
生分解速度制御助剤として、ジメタクリル酸1,6−ヘキサンジオール(アクリルエステルHX 三菱レイヨン(株)製)をそれぞれ1、3、5、10重量部添加したことを除けば、実施例1と同じ操作を繰り返して試験片を切り出し、真空乾燥させた。この試験片に対して室温条件下にて一定の照射線量20kGyを電子線照射した後、実施例1と同様の方法にてリパーゼ反応性試験を行い、相対重量変化を測定した。リパーゼ反応時間に対する相対重量をプロットした結果を図2に示す。
相対重量はどのサンプルでも減少したが、減少の度合いは3、5、10、1重量部の順に大きくなることがわかった。その結果、生分解速度制御助剤の添加量には最適値が存在し、その値よりも添加量が少ない場合、生分解速度制御助剤が架橋構造を形成するために必要な量に満たないため、部分的に架橋が行われるために生分解が進行してしまう。逆に、最適な添加量よりも多い場合、生分解速度制御助剤の量が過剰なため、生分解性骨子にまで架橋反応が進行し、生分解が進行しやすくなると知見された。従って、生分解速度制御助剤の添加量を適正化することにより脂肪族ポリエステルの分解性を制御できることがわかった。
[実施例3]
生分解性樹脂として脂肪族ポリエステル(“エコフレックス”(登録商標)BASF(株)製)100重量部を真空乾燥機で含有水分率を0.1重量%以下に乾燥させた後、生分解速度制御助剤としてジメタクリル酸1,6−ヘキサンジオール(アクリルエステルHX 三菱レイヨン(株)製)2.0重量部、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン(アクリルエステルTMP 三菱レイヨン(株)製)2.0重量部をそれぞれ添加したことを除けば、実施例1と同じ操作を繰り返して試験片の切り出し、実施例1と同じ条件で照射せしめた後、リパーゼによる分解反応試験を行い、相対重量変化を測定した。リパーゼ反応時間に対する相対重量をプロットした結果を図3に示す。
[実施例3]
生分解性樹脂として脂肪族ポリエステル(“エコフレックス”(登録商標)BASF(株)製)100重量部を真空乾燥機で含有水分率を0.1重量%以下に乾燥させた後、生分解速度制御助剤としてジメタクリル酸1,6−ヘキサンジオール(アクリルエステルHX 三菱レイヨン(株)製)2.0重量部、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン(アクリルエステルTMP 三菱レイヨン(株)製)2.0重量部をそれぞれ添加したことを除けば、実施例1と同じ操作を繰り返して試験片の切り出し、実施例1と同じ条件で照射せしめた後、リパーゼによる分解反応試験を行い、相対重量変化を測定した。リパーゼ反応時間に対する相対重量をプロットした結果を図3に示す。
相対重量の減少率は、実施例1のそれと比べていずれの照射線量の場合においても実施例3の方が大きかった。また、減少の度合いは20kGy、100kGy、200kGy、2kGyの順に大きくなることがわかった。その結果、脂肪族ポリエステルと生分解性制御助剤の種類によって分解性が異なるが、生分解速度制御助剤の添加量には最適値が存在し、電子線の照射量を適正化することにより脂肪族ポリエステルの分解性を制御できることがわかった。
Claims (10)
- 生分解性樹脂に生分解速度制御助剤を配合した架橋性生分解性樹脂に活性エネルギー線を照射することを特徴とする架橋性生分解性樹脂の生分解速度を制御する方法。
- 前記生分解速度制御助剤が分子中にエーテル若しくはエステル基を有するビニル性二重結合を2個以上有する多官能性モノマーである請求項1記載の架橋性生分解性樹脂の生分解速度を制御する方法。
- 前記活性エネルギー線が電離性放射線である請求項1記載の架橋性生分解性樹脂の生分解速度を制御する方法。
- 前記架橋性生分解性樹脂の活性エネルギー線量に対する架橋度の相関関係を利用して、生分解速度制御助剤の種類もしくは添加量を特定する請求項1記載の架橋性生分解性樹脂の生分解速度を制御する方法。
- 前記架橋性生分解性樹脂の活性エネルギー線量に対する架橋度の相関関係を利用して、活性エネルギー線量を特定する請求項1記載の架橋性生分解性樹脂の生分解速度を制御する方法。
- 活性エネルギー線の照射量が、5〜100kGyである請求項1記載の架橋性生分解性樹脂の生分解速度を制御する方法。
- 生分解性樹脂が、ポリブチレンサクシネートとその共重合体、ポリ乳酸、ポリ(ε−カプロラクトン)、他の石油合成により得られる生分解性材料、若しくは天然高分子、又はそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1記載の架橋性生分解性樹脂の生分解速度を制御する方法。
- 請求項1から7のいずれかに記載の方法で生分解速度が制御された架橋性生分解性樹脂。
- 請求項1から7のいずれかに記載の方法で生分解速度が制御された架橋性生分解性樹脂組成物。
- 請求項1から7のいずれかに記載の方法で生分解速度が制御された架橋性生分解性樹脂または架橋性生分解性樹脂組成物から得られる成形物。
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Cited By (3)
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---|---|---|---|---|
KR100875371B1 (ko) * | 2007-05-25 | 2008-12-22 | 재단법인서울대학교산학협력재단 | 기계적 강도가 개선된 바이오 복합재료 |
WO2009001625A1 (ja) * | 2007-06-25 | 2008-12-31 | Sumitomo Electric Industries, Ltd. | 樹脂組成物及び該樹脂組成物からなる成形体の製造方法 |
WO2016114216A1 (ja) * | 2015-01-13 | 2016-07-21 | テルモ株式会社 | 生分解性ステント |
-
2005
- 2005-04-13 JP JP2005115702A patent/JP2006291091A/ja not_active Withdrawn
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