JP2009221413A - 耐熱生分解性ポリエステルの製造方法 - Google Patents

耐熱生分解性ポリエステルの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱生分解性ポリエステルの製造方法であって、特にポリ乳酸の透明性を損なうことなく、用途に応じて物性を改善することのできる、耐熱生分解性ポリエステルの製造方法を提供すること。
【解決手段】1分子内に2以上の二重結合を有する多官能性モノマーと透明性を保持できる無機物を、少なくとも1種の生分解性ポリエステルに混練する工程と、前記混練物を前記生分解性ポリエステルのガラス転移温度に加熱加圧下で仮成型し、融解温度に加熱加圧下で成型した後急冷する工程と、前記成型した混練物に放射線を照射する工程と前記照射混練物の前記生分解性ポリエステルの結晶化温度以上で熱分解温度以下の温度に加熱する工程とを含む。好ましくは、生分解性ポリエステルはポリ乳酸であり、多官能性モノマーはトリアリルイソシアヌレート又はトリアリルシアヌレートであり、無機物は二酸化珪素である。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐熱性を有する生分解性ポリエステルの製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、ポリ乳酸などの生分解性ポリエステルに、用途に応じて必要な耐熱性を持たせることができる耐熱生分解性ポリエステルの製造方法に関する。
日本国内で使用されているプラスチックは年間約1,400万トンに達し、そのおよそ60%にあたる約840万トンは廃棄プラスチックとして処理されている。この廃棄プラスチックは、通常、焼却と埋立てによる方法により処分されているが、プラスチック廃棄に関しては、種々の社会問題が懸念されている。例えば、焼却処理においては、熱や排出ガスによる地球温暖化や環境ホルモンとして有害なダイオキシン発生による食物・人体への影響が懸念されている。一方、埋設処理においては、廃棄プラスチックが生分解することなく長い期間土壌中に滞留し、劣化とともに可塑剤等の添加物を流出する恐れがあり、また廃棄埋設処理地の確保等の問題も存在する。
これらの問題に対して、使用後に、環境に負荷を与えることなく容易に処理することができるプラスチック材料が求められている。デンプンやポリ乳酸等の植物由来の生分解性ポリマーは、汎用の石油合成ポリマーと比較して燃焼に伴う発熱量が小さく、また土壌中の微生物による分解・消化によりコンポスト化廃棄処理できる環境に優しい資源循環型の材料であることから、今後の用途開発が期待されている材料である。とりわけ、生分解性脂肪族ポリエステルは、強度などの物性において、石油合成ポリマーに匹敵する特性を有することから、近年、注目を浴びている材料である。しかしながら、生分解性脂肪族ポリエステルは加工性や耐熱性が低いため、現在のところ実用化が遅れている。したがって、用途に応じて必要とされる所望の特性を達成することができる生分解性脂肪族ポリエステルの改質方法に対する必要性が存在する。
プラスチックの有用な改質技術の一つとして、放射線処理により分子鎖間を橋かけし、耐熱性などの物性を改善する方法がある。ラジアルタイヤの加工性向上や、耐熱性電線の被覆材、発泡体の加工製造などに、放射線処理による橋かけ技術が使用されている。これらの材料には天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンなどが用いられている。特にポリエチレンやポリプロピレンを橋かけする技術は、耐熱性改善を主な目的として行われている。しかしながら、ポリマー単独での橋かけ改質技術においては、材料の種類や形態に依存するが、一般に、橋かけ反応を起こすためには大線量の放射線照射を必要とする。
上述のような非生分解性ポリマーにおいては、比較的早くから耐熱性の改善がおこなわれてきたが、生分解性ポリマーにおいては、耐熱性の改善があまり行われてきていないのが現状である。耐熱性を改善した生分解性ポリマーの製造方法として、本発明者らにより、生分解性ポリマーに橋かけ反応を促進させる多官能性モノマーを添加し、比較的低線量の放射線照射により橋かけを行わせ、耐熱性を改善した、橋かけ生分解性材料の製造方法が開発されている(特許文献1参照)。
特開2003−313214号公報(特許第3759067号公報)
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、生分解性ポリエステルの耐熱性を、用途に応じて改善することのできる耐熱生分解性ポリエステルの製造方法を提供することにある。
本発明の1つの観点に係る耐熱生分解性ポリエステルの製造方法は、1分子内に2以上の二重結合を有する多官能性モノマーと無機物を、少なくとも1種の生分解性ポリエステルに混練する工程と、前記混練物を前記生分解性ポリエステルのガラス転移温度に加熱加圧下で仮成型し、融解温度に加熱加圧下で成型したあと、急冷する工程と、前記成形した混練物を、放射線を照射する工程と、前記照射混練物の前記生分解性ポリエステルの結晶化温度以上で熱分解温度以下の温度に加熱する工程を含むことを特徴とする。
これにより、生分解性ポリエステルの透明性を損なうことなく、用途に応じて耐熱性を改善することができ、ポリエステル材料を所望の形態に成形できる製造方法を提供することができる。
上述した本発明の耐熱生分解性ポリエステルの製造方法では、放射線がγ線又は電子線であり、その線量が5〜200kGyであることが好ましい。
上述した本発明の耐熱生分解性ポリエステルの製造方法では、多官能性モノマーを0.1〜20重量%の濃度で混練することが好ましい。特に好ましいのは、1〜10重量%の濃度で混練することである
上述した本発明の耐熱生分解性ポリエステルの製造方法では、生分解性ポリエステルが透明性の高いポリ乳酸であることが好ましい。これにより、得られる橋かけ材料を、大量に製造、廃棄される汎用プラスチック製品全般の代替材料として、又は、骨や腱などを再生する足場の基材などの再生医療材料として好適に使用することができる。
上述した本発明の耐熱生分解性ポリエステルの製造方法では、多官能性モノマーがトリアリルイソシアヌレート又はトリアリルシアヌレートであることが好ましい。これにより、低いモノマー濃度でかつ低い線量で、高いゲル分率の橋かけ材料を得ることができる。
上述した本発明の耐熱生分解性ポリエステルの製造方法では、無機物が二酸化珪素であることが好ましい。これにより、透明性を保持したまま、耐熱性が改善したポリ乳酸橋かけ材料を得ることができる。
本発明によれば、生分解性ポリエステルであるポリ乳酸の透明性を損なうことなく、用途に応じて物性を改善することのできる、耐熱生分解性ポリエステルの製造方法を提供することができる。この方法によって耐熱性が改善された橋かけ材料は、これまで利用できなかった耐熱性が必要とされる様々な用途に利用することができる。
以下、本発明の耐熱生分解性ポリエステルの製造方法について説明する。ここで、本明細書中における「耐熱性改善」とは、生分解性ポリエステルであるポリ乳酸の場合、ガラス転移温度点以上の70℃における曲げ変形に対して、向上したポリ乳酸橋かけ体が得られることをいうものとし、これらに限定されるものではないが、他の生分解性ポリエステルでは、ガラス転移温度以上熱分解温度以下での向上とする。
[生分解性ポリエステル]
本発明において使用することができる生分解性ポリエステルは、生分解性脂肪族ポリエステルや生分解性芳香族ポリエステルであり、特に限定はないが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート・アジペート)共重合体、ポリ(ブチレンサクシネート・カーボネート)共重合体、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)とその共重合体、ポリ(ブチレンサクシネート・テレフタレート)共重合体、ポリブチレンテレフタレート・アジペート共重合体、ポリエチレンテレフタレート・アジペート共重合体等が挙げられる。これらは複数種をブレンドして用いてもよく、デンプン、セルロースなどの他の生分解性ポリマーとブレンドして用いてもよい。
本発明において使用することができる生分解性ポリエステルは、好ましくは、ポリ乳酸である。ポリ乳酸は、カーボンニュートラルである植物由来のプラスチックであるため、地球環境における生態系に及ぼす影響が極めて少なく、また透明性が良いことから、大量に製造、廃棄される汎用プラスチック製品全般の透明性が必要な代替材料として、好適に使用することができる。ポリ乳酸は、分子構造ユニットがL体、D体であってもよく、透明性を保持できる形態であれば、これらを単独あるいは2種類以上を混合したものを用いてもよい。
[多官能性モノマー]
本発明において使用することができる多官能性モノマーは、1分子内2以上の二重結合を有するモノマーである。このようなモノマーを使用することにより、このモノマーを含む生分解性ポリエステル混練物に放射線を照射した場合に生分解性ポリエステルの橋かけ効率を向上させることができる。
多官能性モノマーは、特に限定はないが、1,6ヘキサンジオールジアクリレートなどのアクリル系モノマー、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどのメタクリル系モノマー、アリル系モノマーなどが挙げられる。
多官能性モノマーは、非常に低濃度かつ低線量で高い橋かけ度が得られることから、アリル系モノマーが好ましい。アリル系モノマーとしては、特に限定はないが、トリアリルイソシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメタアリルシアヌレート、ジアリルアミン、トリアリルアミン、アリルアセテート、アリルベンゾエート、アリルジプロピルイソシアヌレート、アリルオクチルオキサレート、アリルプロピルフタレート、ビチルアリルマレート、ジアリルアジペート、ジアリルカーボネート、ジアリルフマレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルマロネート、ジアリルプロピルイソシアヌレート、ジアリルセパセート、ジアリルサクシネート、ジアリルテレフタレート、ジアリルタトレート、ジメタアリルフタレート、エチルアリルマレート、メチルアリルフマレート、メチルメタアリルマレート、ジアクリルクロレンテート、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。好ましいアリル系モノマーは、トリアリルイソシアヌレート(以下、TAICと記す)であり、加熱によってTAICに構造変換しうることから、トリアリルシアヌレート(以下、TACと記す)も実質的に橋かけ効果は同じである。
多官能性モノマーは、生分解性ポリエステルと多官能性モノマーの全体重量基準で、0.1〜20重量%、好ましくは、2〜10重量%の濃度で使用する。
[無機物]
本発明において使用することができる無機物は、市販されている無機化合物で良く、二酸化珪素、珪素粉末、活性炭、カーボン、モレキュラーシーブ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化鉄、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、塩化カルシウム等の金属化合物の粉末、モンモリオナイト、カオリン、タルク、マイカもしくはシリカ等の無機系フィラーが望ましく、透明性を保持する上では、ナノからサブミクロン程度の二酸化珪素系が特に望ましい。なお、上述の無機物は、生分解性ポリマー及び多官能性ポリマーと十分に混合されれば、これに限定されるものではない。
[放射線]
本発明において使用することができる放射線は、特に限定はないが、α線、β線、γ線、エックス線などの電離性放射線、又は紫外線が挙げられる。橋かけ反応を開始させるためには、有機酸化物、アゾ化合物などのラジカル開始剤を添加したり、又は加熱したりしてもよいが、これらの方法によると、未反応多官能性モノマーの残留が危惧され、橋かけ反応を完了させる目的のためには放射線を使用するのが望ましく、電離性放射線が好ましい。
電離性放射線は、工業的生産のためコバルト−60からのγ線又は加速器による電子線が好ましい。電子加速器は、被照射試料の厚さを透過するエネルギーを有する電子線を発生できるものであればよく、被照射試料の厚さが1mm以上で厚い場合は、加速電圧1MeV以上の中エネルギー〜高エネルギーの電子加速器が好ましく、被照射試料の厚さが1mm未満で薄い場合は、1MeV以下の低エネルギー電子加速器であってもよい。
[混練工程]
本発明においては、混練工程により、生分解性ポリエステルに多官能性モノマーを混練する。この工程により、生分解性ポリエステルと多官能性モノマーと無機物を均一に分散・混合させることができ、橋かけを効率よく行うことができる。混練は、当技術分野において既知のいずれかの手段により行うことができるが、好ましくは、温度保持機能を有するミキサーを使用する。
混練温度は、特に限定はないが、生分解性ポリエステルが軟化する温度が好ましい。生分解性ポリエステルが軟化する温度で混練することにより、多官能性モノマーと無機物との分散・混合の程度を高めることができる。
本発明の一つの好ましい態様においては、生分解性ポリエステルと多官能性モノマーと無機物を予め良く混合し、混合物を生分解性ポリエステルが軟化する温度まで加熱したミキサー内で溶融ブレンドするか、軟化する温度まで加熱した生分解性ポリエステルに多官能性モノマーと無機物を添加して、溶融ブレンドする。
本発明の別の好ましい態様においては、生分解性ポリエステルが溶解するクロロホルム等のような溶媒に、生分解性ポリエステルと多官能性モノマーと無機物とを溶解・分散して混合する。
混練後に得られる混練物は、加熱等により軟化させて所望の形状に成形してもよい。
[成形工程]
上記の混練工程についで、場合により、成形工程により、混練物を加熱加圧下で成形したあと、急冷する。これにより、ポリエステル材料を所望の形態に成形することができる。
成形は当技術分野において既知のいずれかの手段により行うことができる。成形の際の加熱加圧条件は、特に限定はなく、生分解性ポリエステル及び多官能性モノマーの性質と、成形条件とに依存して適宜決定することができる。また、急冷は、例えば、水冷、氷冷、風冷などの当技術分野において既知のいずれかの手段により行うことができる。成形したあと混練物を再結晶化温度以下に急冷することにより、非結晶部分を保持することができ、橋かけ効率を高めることができる。
本発明の一態様においては、ポリ乳酸とトリアリルイソシアヌレートと無機物を含む混練物を、ポリ乳酸のガラス転移温度で加圧しながら仮成型を行い、融点である160℃〜200℃の温度で成型して所望の形態に成形したあと、50℃以下に水冷する。
[放射線照射工程]
上記の混練工程、又は場合により成形工程についで、放射線照射工程により、所定の温度に加熱しながら混練物に放射線を照射する。多官能性モノマーを含む生分解性ポリエステル混練物に放射線を照射することにより、橋かけを行うことができる。
照射線量は、特に限定はないが、1〜200kGyであり、好ましくは、10〜150kGyであり、最も好ましくは、50kGyである。また、線量が200kGyを超えると、ポリ乳酸などの放射線分解型のポリエステルが分解することから好ましくない。電子線照射の際、周囲雰囲気中の酸素による橋かけへの影響は殆どないが、橋かけ密度の低下を抑制するため、被照射試料を含む照射領域を、例えば、ポリエステルフィルムなどの適する手段で真空シールしてから照射するのが望ましい。
[熱処理工程]
照射した上記混練物を混練りした生分解性ポリエステルの再結晶化温度以上融度以下で熱処理による微結晶化をすることにより耐熱性を向上させる。
本発明の一態様においては、ポリ乳酸とトリアリルイソシアヌレートと無機物を含む照射した混練物成形体を、ポリ乳酸の再結晶化温度である約100℃で加熱処理して微結晶化する。
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
ポリ乳酸(三井化学製ポリ乳酸レイシアH−100)を50g秤量し、ラボプラストミル((株)東洋精機)により180℃で融解させ、アリル系モノマーの1種であるTAICをポリ乳酸に対して5重量%と無機物である二酸化珪素をポリ乳酸に対して10重量%を混合した後、同じ温度(180℃)で加熱加圧プレス機を用いて成形し、直ちに急冷してポリ乳酸の非結晶状態を保持した直ちに急冷してポリ乳酸の非結晶状態を保持した3mm厚のシートを作製した。シートは、コッククロフトワルトン型電子加速器(加速電圧2MeV、電流2.0mA)を用いて、それぞれ、50kGy照射し、橋かけ反応を行ったものを実施例1とした。
(比較例1)
上記の実施例1と同様に混練法でポリ乳酸(三井化学製ポリ乳酸レイシアH−100)を50g秤量し、ラボプラストミル((株)東洋精機)により180℃で融解させ、10分間溶融状態で混練した。その混合物を同じ温度(180℃)で加熱加圧プレス機を用いて成形し、直ちに急冷してポリ乳酸の非結晶状態を保持した3mm厚のシートを作製した。シートは、コッククロフトワルトン型電子加速器(加速電圧2MeV、電流2.0mA)を用いて、それぞれ、50kGy照射したものと未照射のもの(0kGy)を比較例1とした。
(比較例2)
上記の実施例1と同様に混練法でポリ乳酸(三井化学製ポリ乳酸レイシアH−100)を50g秤量し、ラボプラストミル((株)東洋精機)により180℃で融解させ、アリル系モノマーの1種であるTAICをポリ乳酸に対して5重量%添加し、10分間溶融状態で混練した。その混合物を同じ温度(180℃)で加熱加圧プレス機を用いて成形し、直ちに急冷してポリ乳酸の非結晶状態を保持した3mm厚のシートを作製した。シートは、コッククロフトワルトン型電子加速器(加速電圧2MeV、電流2.0mA)を用いて、それぞれ、50kGy、100kGy照射し、橋かけ反応を行ったものを比較例2とした。
(実施例2)
上記の実施例1で作製して照射した混練物を、ポリ乳酸の再結晶化温度である約100℃で1時間熱処理したものを実施例2とした。
(比較例3及び4)
比較例1、2で作製して照射した混練物を、ポリ乳酸の再結晶化温度である約100℃で1時間熱処理し、それぞれ比較例3,4とした。
(実施例及び比較例の評価)
各実施例及び比較例により得られた橋かけ材料について、下記のゲル分率評価(1)、シートの透明性保持性評価(2)、シートの耐熱性評価(3)を行った。橋かけ度の目安となるゲル分率は次のようにして求めた。
ゲル分率評価
得られた橋かけ材料の所定量を正確に測定し、200メッシュのステンレス製の金網で包んだ。次いで、これをクロロホルム溶媒中で48時間浸漬又は24時間煮沸することにより、橋かけしていない溶解成分(ゾル分)をクロロホルム溶媒側に移行させ、橋かけした不溶解成分(ゲル分)のみを金網中に残存させた。付着しているゾル分を除去するため、ゲルの入った金網を冷クロロホルムで洗浄し、更に多量のメタノールで洗浄した。次いで、50℃の真空乾燥器中で24時間以上恒量になるまで乾燥した。ゲル分率は次式により求められる。
ゲル分率(%)=(ゲル分乾燥重量)/(初期乾燥重量)×100
上記の方法で得たゲル分率の結果を表1に示す。
シートの透明性保持性
実施例1、2、比較例1−4で作製したシートの透明性を目視で確認した。上記の方法で得た目視結果を表1に示す。
(3)シートの耐熱性評価
実施例1及び2、比較例1−4で作製したシートを10mm×40mmに切り取り、TAインスルツメンツ社製ARESを用いて、昇温速度を10℃/minで、標線間距離を30mmでの条件で25℃から200℃測定した。3回測定した平均値を測定値にした。上記の方法で得た70℃における貯蔵弾性率(G‘)の結果を表1に示す。
Figure 2009221413
放射線橋かけ技術と無機物添加と熱処理を組み合わせることにより、透明性を保持したまま、70℃での変形耐性が向上することが可能となった。
(実施例3)
実施例2で作製した混練物をレンズ状に成形した。一般に無機物を添加すると、加工性が困難になる。そこで、ポリ乳酸のガラス転移温度である約50〜60℃に加熱し、160atm加圧下で仮成型し、融解温度以上である190℃に加熱加圧下で成型した後、急冷加圧する工程により所望の形に成形可能となった。成形した混練物に電子線を50kGy照射し、前記照射混練物のポリ乳酸の再結晶化温度である約100℃で加熱する工程により、耐熱性が改善されたレンズを得ることができた。
以上の実施例においては、橋かけを形成するためにいずれも電子線を50kGy照射しているが、橋かけが生ずる原理からして電子線に限らずγ線等でも良いことは明らかである。また、照射線量についても、別途行われたこれまでの実験によって、5kGyから橋かけが生ずることがわかっており、必ずしも50kGyである必要はない。さらにまた、照射線量が200kGyを越えても橋かけ効果が変わらないため、照射線量としては、5kGyから200kGyが適当と考えられる。
本発明の耐熱性が向上した生分解性ポリエステル材料は、フィルム、容器、筐体などの構造体や部品などのプラスチック製品が利用される分野において、使用後の廃棄処理問題の解決を図るため、土壌中及びコンポスト化により炭酸ガスと水に分解する生分解性製品あるいは部品として利用されるものや、骨や腱などを再生する足場の基材などに使用される再生医療材料分野において、使用前の加熱滅菌に耐え得る耐熱性などを有するポリマー製の生体吸収性再生医療用材料として利用されるものへの応用が期待できる。特に、本発明のポリ乳酸材料は、植物由来プラスチックで透明性を有するため、透明性が必要とされるメガネ用ダミーレンズ等の光学材料、農業用マルチフィルムや包装材等の汎用プラスチック製品の代替品として適用可能である。

Claims (7)

  1. 1分子内に2以上の二重結合を有する多官能性モノマーと無機物を、少なくとも1種の生分解性ポリエステルに混練する工程と、前記混練物を前記生分解性ポリエステルのガラス転移温度に加熱加圧下で仮成型し、融解温度に加熱加圧下で成型した後、急冷する工程と、前記成型した混練物に放射線を照射する工程と前記照射混練物の前記生分解性ポリエステルの結晶化温度以上で熱分解温度以下の温度に加熱する工程とを含む耐熱生分解性ポリエステルの製造方法。
  2. 前記放射線がγ線又は電子線であり、その線量が5〜200kGyである、請求項1に記載の耐熱生分解性ポリエステルの製造方法。
  3. 前記多官能性モノマーを0.1〜20重量%の濃度で混練する、請求項1または2に記載の耐熱生分解性ポリエステルの製造方法。
  4. 前記無機物を0.1〜50重量%の濃度で混練する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐熱生分解性ポリエステルの製造方法。
  5. 前記生分解性ポリエステルがポリ乳酸で、前記多官能性モノマーがトリアリルイソシアヌレート又はトリアリルシアヌレートで、前記無機物が二酸化珪素である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐熱生分解性ポリエステルの製造方法。
  6. ポリ乳酸とトリアリルイソシアヌレート又はトリアリルシアヌレートと二酸化珪素との混練物をポリ乳酸のガラス転移温度である約50〜60℃に加熱加圧下で仮成型し、ポリ乳酸の融解温度以上である約180〜200℃に加熱加圧下で成型したのち急冷する工程と、前記成型した混練物に放射線を照射する工程と前記照射混練物の前記ポリ乳酸の結晶化温度以上である100℃で融解温度以下の温度に加熱する工程とを含む耐熱生分解性ポリエステルの製造方法。
  7. 前記放射線がγ線又は電子線であり、その線量が5〜200kGyである、請求項6に記載の耐熱生分解性ポリエステルの製造方法。
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