JP2006291066A - ポリプロピレン系樹脂射出発泡成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ポリプロピレン系樹脂組成物の特徴を損なうことなく、樹脂組成物中の揮発性有機化合物を低減し、かつ高発泡倍率であるがために軽量性、剛性に優れる発泡成形体を提供する。
【解決手段】 メルトフローレートが0.1g/10分以上50g/10分未満、メルトテンションが2cN以上で、かつ歪硬化性を示す改質ポリプロピレン系樹脂からなるポリプロピレン系樹脂射出発泡成形体であって、該ポリプロピレン系樹脂射出発泡成形体から発生する揮発性有機化合物のうち、トルエン・キシレン・エチルベンゼンの総放散濃度が700μg/m3以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂射出発泡成形体。
【選択図】 なし
【解決手段】 メルトフローレートが0.1g/10分以上50g/10分未満、メルトテンションが2cN以上で、かつ歪硬化性を示す改質ポリプロピレン系樹脂からなるポリプロピレン系樹脂射出発泡成形体であって、該ポリプロピレン系樹脂射出発泡成形体から発生する揮発性有機化合物のうち、トルエン・キシレン・エチルベンゼンの総放散濃度が700μg/m3以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂射出発泡成形体。
【選択図】 なし
Description
本発明は、ポリプロピレン系樹脂からなる射出発泡成形体に関する。詳しくは、高発泡倍率であり、かつ、揮発性有機化合物量が少ないポリプロピレン系樹脂射出発泡成形体に関する。
ポリプロピレン系樹脂の射出成形において、軽量化、コストダウン、成形体の反り・ヒケ防止を目的に発泡を行ういわゆる射出発泡成形が従来から行われてきた。しかし、通常の線状ポリプロピレン系樹脂は結晶性でメルトテンション(溶融張力)が低く、気泡が破壊されやすい。その結果、成形体表面にシルバーストリーク(またはスワールマーク)と呼ばれる外観不良が発生しやすかったり、さらには内部にボイドが発生しやすく、発泡倍率を高くすることが困難であった。また、気泡が不均一で大きいために得られた成形体の剛性も十分でなかった。なお、本件でいうボイドとは内部の気泡が連通化するなどして生じる粗大な気泡で、実質その径が1.5mmを越える気泡のことをいう。
射出発泡成形体において発泡性を改良する方法として、架橋剤やシラングラフト熱可塑性樹脂を添加してポリプロピレン系樹脂のメルトテンションを高める方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。しかし、この方法では高発泡倍率の発泡成形体が得られるものの溶融時の粘度が上がりすぎ、射出成形が困難となるとともに、得られた成形体の表面性も悪いものであった。
また、無架橋のポリプロピレン系樹脂に発泡性を付与する方法として、放射線照射により長鎖分岐を導入する方法(特許文献3)やポリプロピレン系樹脂とイソプレン単量体とラジカル重合開始剤とを溶融混練して改質ポリプロピレン系樹脂を製造する方法(特許文献4)、ポリオレフィン系樹脂とジオキシム化合物を溶融混和して樹脂改質して改質ポリプロピレン系樹脂を製造する方法(特許文献5)等が提案されている。しかしながら、当該文献には該樹脂を利用して射出発泡成形体を作製する点については具体的に開示されていない。
一方で、通常の線状ポリプロピレン樹脂には重合後のペレット化工程において、安定剤など種々の添加剤が添加されるため、これらに起因する揮発性有機化合物(揮発性有機化合物)が発生する場合がある。また、前記記載のポリプロピレン系樹脂組成物中にも未反応の単量体や反応・分解による副生物などに起因する揮発性有機化合物が微量に存在する。近年、住宅に使用される建材などから室内に発散するVOCにより、人の健康に影響があったとする事例が報告され、いわゆるシックハウス問題(シックハウス症候群)として指摘されている。厚生労働省の「快適で健康的な住宅に関する検討会議・シックハウス問題検討会」は、これまでに13種類のVOCについての室内濃度指針値を公表している。(社)日本自動車工業会においても、車室内を居住空間の一部と考え、自動車の使われ方や住宅とは異なる環境を考慮した最適なVOC濃度試験方法の研究や実態調査等を進めており、今般、濃度測定に必要な「車室内VOC試験方法(乗用車)」を新たに策定し、2007年度以降の新型乗用車について厚生労働省の定めた13物質の室内濃度指針値を満足させる「車室内のVOC低減に対する自主的な取り組み」を開始している。今後、自動車関連部材・素材メーカーは、その自主取り組みに対する対応を求められている。
特開昭61−152754号公報
特開平7−109372号公報
特開昭62−121704号公報
特開平9−188774号公報
特開平11−228722号公報
(社)日本自動車工業会HP、ニュースリリース−2005年2月14日
本発明の目的は、上記の点に鑑み、高発泡倍率であるために軽量性、剛性に優れた発泡成形体であって、かつ、改質ポリプロピレン系樹脂射出発泡成形体中の揮発性有機化合物が低減された、ポリプロピレン系樹脂射出発泡成形体を提供することにある。
本発明者らは前記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、高発泡倍率であるために軽量性、剛性に優れ、かつ、揮発性有機化合物を低減した射出発泡成形体が得られることを見出し本発明の完成に至った。
すなわち本発明は、メルトフローレートが0.1g/10分以上50g/10分未満、メルトテンションが2cN以上で、かつ歪硬化性を示す改質ポリプロピレン系樹脂からなるポリプロピレン系樹脂射出発泡成形体であって、該ポリプロピレン系樹脂射出発泡成形体から発生する揮発性有機化合物のうち、トルエン・キシレン・エチルベンゼンの総放散濃度が700μg/m3以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂射出発泡成形体に関する。
好ましい実施態様としては、熱処理した改質ポリプロピレン系樹脂を使用することを特徴とする前記記載のポリプロピレン系樹脂射出発泡成形体に関し、更に好ましい態様としては、前記改質ポリプロピレン系樹脂が、線状ポリプロピレン系樹脂、ラジカル重合開始剤、共役ジエン化合物を溶融混合して得られたものであることを特徴とする請求項1または2記載のポリプロピレン系樹脂射出発泡成形体に関する。
本発明の射出発泡成形体は、軽量性、剛性に優れ、かつ、揮発性有機化合物が低減される。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明のポリプロピレン系樹脂射出発泡成形体は、該射出発泡成形体から発生する揮発性有機化合物のうち、トルエン・キシレン・エチルベンゼンの総放散濃度が700μg/m3以下であることを特徴とする。好ましくは、600μg/m3以下である。これらの物質は、厚生労働省が策定している「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会」において室内濃度指針値が確定している物質の1種であり、具体的には当該指針においては、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレン、クロルピリホス、フタル酸ジ−n−ブチル、テトラデカン、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、ダイアジノン、アセトアルデヒド、フェノブカルブが列挙されている。
本発明で使用する改質ポリプロピレン系樹脂は、メルトフローレートが0.1g/10分以上50g/10分未満、好ましくは0.3g/10分以上20g/10分以下であり、メルトテンションが2cN以上、好ましくは4cN以上で、かつ歪硬化性を示すものである。メルトフローレートが0.1g/10分以上20g/10分未満であると、高発泡倍率であり気泡が均一の射出発泡成形体が得られる。また、メルトテンションが4cN以上の場合には2倍以上の均一微細な気泡の射出発泡成形体が得られる。
メルトフローレートとは、ASTM D−1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重下で測定したものを言い、メルトテンションとは、メルトテンション測定用アタッチメントを付けたキャピログラフ(東洋精機製作所製)を使用して、230℃でφ1mm、長さ10mmの孔を有するダイスから、ピストン降下速度10mm/分で降下させたストランドを1m/分で引き取り、安定後に40m/分2で引き取り速度を増加させたとき、破断したときのロードセル付きプーリーの引き取り荷重を言う。
歪硬化性とは、溶融物の延伸歪みの増加に伴い粘度が上昇することとして定義され、通常は特開昭62−121704号公報に記載の方法、すなわち市販のレオメーターにより測定した伸長粘度と時間の関係をプロットすることで判定することができる。また、例えばメルトテンション測定時の溶融ストランドの破断挙動からも歪硬化性を判定できる。すなわち、引き取り速度を増加させたときに急激にメルトテンションが増加し、切断に至るときは歪硬化性を示す場合である。改質ポリプロピレン系樹脂が歪硬化性を示し、メルトテンションが高い場合に発泡倍率が2倍以上の射出発泡成形体が得られ、射出成形時の溶融樹脂流動先端部で破泡しやすくなることによっておこるシルバーストリークが出にくくなる等の理由から表面平滑性に優れた射出発泡成形体が得られる。
このような改質ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、線状ポリプロピレン系樹脂に放射線を照射するか、または線状ポリプロピレン系樹脂、ラジカル重合開始剤、共役ジエン化合物を溶融混合するなどの方法により得られる分岐構造あるいは高分子量成分を含有する改質ポリプロピレン系樹脂が挙げられる。これらの中で、本発明においては、線状ポリプロピレン樹脂、ラジカル重合開始剤、共役ジエン化合物を溶融混合して得られる改質ポリプロピレン系樹脂が、高価な設備を必要としない点から安価に製造できるため好ましい。
この改質ポリプロピレン系樹脂の製造に用いられる原料の線状ポリプロピレン系樹脂としては、線状の分子構造を有しているポリプロピレン系樹脂であり、通常の重合方法、例えば担体に担持させた遷移金属化合物と有機金属化合物から得られる触媒系(例えばチーグラー・ナッタ触媒)の存在下の重合で得られる。具体的には、プロピレンの単独重合体、ブロック共重合体およびランダム共重合体であって、結晶性の重合体があげられる。プロピレンの共重合体としては、プロピレンを75重量%以上含有しているものが、ポリプロピレン系樹脂の特徴である結晶性、剛性、耐薬品性などが保持されている点で好ましい。共重合可能なα−オレフィンは、エチレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどの炭素数2または4〜12のα−オレフィン、シクロペンテン、ノルボルネン、テトラシクロ[6,2,11,8,13,6]−4−ドデセンなどの環状オレフィン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンなどのジエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどのビニル単量体などが挙げられる。これらのうち、エチレン、1−ブテンが耐寒脆性向上、安価等という点で好ましい。
前記共役ジエン化合物としては、例えばブタジエン、イソプレン、1,3−ヘプタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエンなどがあげられるが、これらを単独または組み合わせ使用してもよい。これらの中では、ブタジエン、イソプレンが安価で取り扱いやすく、反応が均一に進みやすい点からとくに好ましい。
前記共役ジエン化合物の添加量としては、線状ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上20重量部以下が好ましく、0.05重量部以上5重量部以下がさらに好ましい。0.01重量部未満では改質の効果が得られにくい場合があり、また20重量部を越える添加量においては効果が飽和してしまい、経済的でない場合がある。
前記共役ジエン化合物と共重合可能な単量体、たとえば塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸金属塩、メタクリル酸金属塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリルなどのメタクリル酸エステルなどを併用してもよい。
ラジカル重合開始剤としては、一般に過酸化物、アゾ化合物などが挙げられるが、線状ポリプロピレン系樹脂や共役ジエン化合物からの水素引き抜き能を有するものが好ましく、一般にケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステルなどの有機過酸化物が挙げられる。これらのうち、とくに水素引き抜き能が高いものが好ましく、たとえば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシンなどのジアルキルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルなどの1種または2種以上が挙げられる。
ラジカル重合開始剤の添加量としては、線状ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上10重量部以下が好ましく、0.05重量部以上2重量部以下がさらに好ましい。0.01重量部未満では改質の効果が得られにくい場合があり、また10重量部を越える添加量では、改質の効果が飽和してしまい経済的でない場合がある。
線状ポリプロピレン系樹脂、共役ジエン化合物、およびラジカル重合開始剤を溶融混合させるための装置としては、ロール、コニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダー、単軸押出機、2軸押出機などの混練機、2軸表面更新機、2軸多円板装置などの横型撹拌機、ダブルヘリカルリボン撹拌機などの縦型撹拌機、などが挙げられる。これらのうち、混練機を使用することが好ましく、とくに押出機が生産性の点から好ましい。
線状ポリプロピレン系樹脂、共役ジエン化合物、およびラジカル重合開始剤を混合、混練(撹拌)する順序、方法にはとくに制限はない。線状ポリプロピレン系樹脂、共役ジエン化合物、およびラジカル重合開始剤を混合したのち溶融混練(撹拌)してもよいし、ポリプロピレン系樹脂を溶融混練(撹拌)したのち、共役ジエン化合物あるいはラジカル開始剤を同時にあるいは別々に、一括してあるいは分割して混合してもよい。混練(撹拌)機の温度は130〜300℃であることが、線状ポリプロピレン系樹脂が溶融し、かつ熱分解しないという点で好ましい。またその時間は一般に1〜60分が好ましい。
このようにして、本発明に用いる改質ポリプロピレン系樹脂を製造することができる。改質ポリプロピレン系樹脂の形状、大きさに制限はなく、ペレット状でもよい。
ポリプロピレン系樹脂射出発泡成形体中の揮発性有機化合物を除去する方法としては、種々ありうるが、熱処理による方法が処理コストおよび費用対効果の面で好ましい。また、熱処理した改質ポリプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。熱処理を行う装置としては、熱風通気乾燥機、防湿熱風乾燥機、減圧伝熱式乾燥機などがあげられ、乾燥機の形状はホッパー型、箱型などがあげられる。
前記改質ポリプロピレン系樹脂を熱処理する温度は、含有する揮発性有機化合物成分の沸点以上、前記ポリプロピレン系樹脂の融点より30℃低い温度以下であることが好ましい。処理温度が前記揮発性有機化合物成分の沸点未満の場合、揮発性有機化合物を除去するのに時間がかかる傾向がある。処理温度が前記ポリプロピレン系樹脂の融点より30℃低い温度以上の場合、ポリプロピレン系樹脂のペレットが溶融・融着し、さらには劣化する可能性がある。
前記改質ポリプロピレン系樹脂を熱処理する時間は、好ましくは1時間以上であり、より好ましくは2時間以上である。処理時間が1時間未満の場合、揮発性有機化合物の除去が不十分になる場合がある。
本発明で使用する射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物は、改質ポリプロピレン系樹脂と発泡剤を混合することで得ることが出来る。混合方法は特に限定はなく、公知の方法で行うことが出来、例えば、ペレット状の樹脂をブレンダー、ミキサー等を用いてドライブレンドする、溶融混合する、溶剤に溶解して混合する等の方法が挙げられる。本発明においてはドライブレンドした上で射出発泡成形に供する方法が、熱履歴が少なくて済み、メルトテンションの低下が少なくなる為、好ましい。
本発明は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明で使用する改質ポリプロピレン系樹脂に、流動性を改善する目的で、流動性の高い線状ポリプロピレン系樹脂を使用してもよい。その場合、使用する流動性の高い線状ポリプロピレン樹脂は、100重量部中40重量部以上95重量部以下が好ましく、さらに好ましくは50重量部以上80重量部以下である。前記配合量であれば、均一微細な気泡を有する、発泡倍率が2倍以上の射出発泡成形体が得られる。
本発明で使用できる化学発泡剤は、射出発泡成形に通常使用できるものであればとくに制限はない。化学発泡剤は、改質ポリプロピレン系樹脂と予め混合してから射出成形機に供給され、シリンダ内で分解して炭酸ガス等の気体を発生するものである。化学発泡剤としては、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の無機系化学発泡剤や、アゾジカルボンアミド、N,N’−ジニトロソペンタテトラミン等の有機系化学発泡剤があげられる。
これらの化学発泡剤の中では、通常の射出成形機が安全に使用でき、均一微細な気泡が得られやすいものとして、無機系化学発泡剤が好ましい。
これらの化学発泡剤には、発泡成形体の気泡を安定的に均一微細にするために必要に応じて、例えばクエン酸のような有機酸等の発泡助剤やタルクのような無機微粒子等の造核剤を添加してもよい。通常、上記無機系化学発泡剤は取扱性、貯蔵安定性、ポリプロピレン系樹脂への分散性の点から、10〜50重量%濃度のポリオレフィン系樹脂のマスターバッチとして使用されるのが好ましい。
上記化学発泡剤の使用量は、最終製品の発泡倍率と発泡剤の種類や成形時の樹脂温度によって適宜設定すればよい。例えば、通常無機系化学発泡剤の場合は、本発明のポリプロピレン系樹脂100重量部に対して好ましくは、0.1重量部以上20重量部以下、更に好ましくは0.5重量部以上10重量部以下の範囲で使用される。この範囲で使用することにより、経済的に発泡倍率が2倍以上、且つ均一微細気泡の射出発泡成形体が得られやすい。
さらに必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、金属不活性剤、燐系加工安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、蛍光増白剤、金属石鹸、制酸吸着剤などの安定剤、架橋剤、連鎖移動剤、核剤、滑剤、可塑剤、充填材、強化材、顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を併用してもよい。必要に応じて用いられるこれらの添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲で使用されるのはもちろんであるが、一般に本発明で用いる改質ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上10重量部以下使用される。
次に射出発泡成形体の製造方法について具体的に説明する。成形体の製造方法自体は公知の方法が適用でき、改質ポリプロピレン系樹脂のMFR、発泡剤の種類、成形機の種類あるいは金型の形状によって適宜成形条件を調整すればよい。通常、ポリプロピレン系樹脂の場合は樹脂温度170〜250℃、金型温度10〜100℃、成形サイクル1〜60分、射出速度10〜300mm/秒、射出圧10〜200MPa等の条件で行われる。また、金型内で発泡させる方法としては種々有るが、なかでも固定型と任意の位置に前進および後退が可能な可動型とから構成される金型を使用し、射出完了後、可動型を後退させて発泡させる、いわゆるコアバック法(MovingCavity法)が、表面に非発泡層が形成され、内部の発泡層が高発泡倍率で均一微細気泡になりやすく、軽量性、剛性に優れた発泡成形体が得られやすいことから好ましい。
このようにして得られる本発明の射出発泡成形体は、平均気泡径が好ましくは500μm以下、更に好ましくは200μm以下の発泡層と、該発泡層の少なくとも片側の表面に形成される厚みが好ましくは10μm以上1000μm以下、更に好ましくは100μm以上500μm以下の非発泡層とを有する。発泡層の平均気泡径が500μmを越える場合は優れた剛性が得られない場合がある。非発泡層の厚みが10μm未満では剛性が低下する傾向があり、1000μmを越える場合は軽量性が得られにくい恐れがある。
また、本発明の射出発泡成形体の発泡倍率は、好ましくは2倍以上10倍以下、更に好ましくは3倍以上6倍以下、肉厚は好ましくは30mm以下、更に好ましくは20mm以下である。発泡倍率が2倍未満では軽量性が得られにくい場合があり、10倍を越える場合には剛性の低下が著しくなる傾向がある。発泡倍率は、射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物に化学発泡剤を添加しない以外は発泡成形体と同条件で射出成形した非発泡成形体との比重の比から得られた値である。
以下に実施例によって本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。実施例および比較例において、各種の評価方法に用いられた試験法および判定基準は次の通りである。
(1)揮発性有機化合物放散濃度:成形後2週間放置した発泡成形体から80mm×100mmの試料を切り出し、フレックサンプラーに入れて封をし、この中に活性炭を通過させた高純度窒素4Lを加えてオーブンにいれ、65℃×2時間加熱し、揮発した炭化水素化合物をガスクロマトグラフィーおよび質量分析計にて測定した。
捕集管:Supelco製TENAX−TA 60/80mesh
サンプリングバック:フレックサンプラー(近江オドエアサービス製)
加熱導入装置:PerkinElmer TurboMatrix ATD
ガスクロマトグラフ:Agilent Technologies HP6890plus
質量分析計:Agilent Technologies HP5973N
定量下限:0.02μg
(2)メルトフローレート:ASTM1238に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgで測定した。
(3)メルトテンション:メルトテンション測定用アタッチメントを付けたキャピログラフ(東洋精機製作所製)を使用した。230℃でφ1mm、長さ10mmの孔を有するダイスから、ピストン降下速度10mm/分で降下させたストランドを1m/分で引き取り、安定後に40m/分2で引き取り速度を増加させたとき、破断したときのロードセル付きプーリーの引き取り荷重をメルトテンションとした。
(4)歪硬化性:上記メルトテンション測定時、引き取り速度を増加させたときに急激に引き取り荷重が増加し、破断に至った場合を「歪硬化性を示す」、そうでない場合を「歪硬化性を示さない」とした。
(5)発泡倍率:発泡成形体の底面部から表面の非発泡層も含めた試片を切り出し、別途作製した肉厚3mmの非発泡成形体(参考例1)の底面部との比重の比から求めた。
(6)平均気泡径、非発泡層厚み:発泡成形体の底面部を厚み方向に切断した断面の顕微鏡写真より求めた。平均気泡径については任意に選んだ20個の平均値とした。非発泡層は可動型側と固定型側の平均値とした。
(7)内部ボイド:発泡成形体の底面部を厚み方向に切断した断面を観察し、発泡層中の大きさ1mm以上のボイドの有無をしらべた。
内部ボイドがほとんどないもの・・・・・○
有るもの・・・・・・・・・・・・・・・×
(8)剛性:JIS−K6911に準拠して試片の長手方向が射出樹脂流れ方向に直角になるように、発泡成形体の底面部から10mm巾に切り出した試片について測定した曲げ弾性率(E)と断面二次モーメント(I)から、次式を用いて曲げ剛性(G)を求めた。
(1)揮発性有機化合物放散濃度:成形後2週間放置した発泡成形体から80mm×100mmの試料を切り出し、フレックサンプラーに入れて封をし、この中に活性炭を通過させた高純度窒素4Lを加えてオーブンにいれ、65℃×2時間加熱し、揮発した炭化水素化合物をガスクロマトグラフィーおよび質量分析計にて測定した。
捕集管:Supelco製TENAX−TA 60/80mesh
サンプリングバック:フレックサンプラー(近江オドエアサービス製)
加熱導入装置:PerkinElmer TurboMatrix ATD
ガスクロマトグラフ:Agilent Technologies HP6890plus
質量分析計:Agilent Technologies HP5973N
定量下限:0.02μg
(2)メルトフローレート:ASTM1238に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgで測定した。
(3)メルトテンション:メルトテンション測定用アタッチメントを付けたキャピログラフ(東洋精機製作所製)を使用した。230℃でφ1mm、長さ10mmの孔を有するダイスから、ピストン降下速度10mm/分で降下させたストランドを1m/分で引き取り、安定後に40m/分2で引き取り速度を増加させたとき、破断したときのロードセル付きプーリーの引き取り荷重をメルトテンションとした。
(4)歪硬化性:上記メルトテンション測定時、引き取り速度を増加させたときに急激に引き取り荷重が増加し、破断に至った場合を「歪硬化性を示す」、そうでない場合を「歪硬化性を示さない」とした。
(5)発泡倍率:発泡成形体の底面部から表面の非発泡層も含めた試片を切り出し、別途作製した肉厚3mmの非発泡成形体(参考例1)の底面部との比重の比から求めた。
(6)平均気泡径、非発泡層厚み:発泡成形体の底面部を厚み方向に切断した断面の顕微鏡写真より求めた。平均気泡径については任意に選んだ20個の平均値とした。非発泡層は可動型側と固定型側の平均値とした。
(7)内部ボイド:発泡成形体の底面部を厚み方向に切断した断面を観察し、発泡層中の大きさ1mm以上のボイドの有無をしらべた。
内部ボイドがほとんどないもの・・・・・○
有るもの・・・・・・・・・・・・・・・×
(8)剛性:JIS−K6911に準拠して試片の長手方向が射出樹脂流れ方向に直角になるように、発泡成形体の底面部から10mm巾に切り出した試片について測定した曲げ弾性率(E)と断面二次モーメント(I)から、次式を用いて曲げ剛性(G)を求めた。
(A)改質ポリプロピレン系樹脂
MP−1:線状ポリプロピレン系樹脂としてメルトフローレート15g/10分のポリプロピレン・ホモポリマー100重量部と、ラジカル重合開始剤としてt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.7重量部の混合物を、ホッパーから50kg/時で45mmφ二軸押出機(L/D=40)に供給してシリンダ温度200℃で溶融混練し、途中に設けた圧入部よりイソプレンモノマーを定量ポンプを用いて1kg/時の速度で供給し、ストランドを水冷、細断することにより得た改質ポリプロピレン系樹脂(メルトフローレート3g/10分、メルトテンション14cN、歪硬化性を示す)
MP−2:線状ポリプロピレン系樹脂としてメルトフローレート50g/10分のポリプロピレン・ホモポリマー100重量部と、ラジカル重合開始剤としてt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.7重量部の混合物を、ホッパーから50kg/時で45mmφ二軸押出機(L/D=40)に供給してシリンダ温度200℃で溶融混練し、途中に設けた圧入部よりイソプレンモノマーを定量ポンプを用いて0.5kg/時の速度で供給し、ストランドを水冷、細断することにより得た改質ポリプロピレン系樹脂(メルトフローレート14g/10分、メルトテンション5cN、歪硬化性を示す)
(B)線状ポリプロピレン系樹脂
PP−1:プロピレン・エチレン・ブロックコポリマー、メルトフローレート45g/10分、メルトテンション1cN以下
(C)発泡剤
B−1:化学発泡剤マスターバッチ(永和化成社製ポリスレンEE275、分解ガス量40ml/g)
(実施例1、2)
改質ポリプロピレン系樹脂を表1に示す乾燥時間で予め乾燥し、発泡剤(C)を表1に示す組成比でドライブレンドし、射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
宇部興産機械(株)製「MD350S−IIIDP型」(シャットオフノズル仕様)の射出成形機で、樹脂温度200℃、背圧5MPaで前記発泡剤を含む樹脂組成物を溶融混練した後、40℃に設定された、φ2mmのピンゲートを有し、固定型と前進および後退が可能な可動型とから構成される、縦330mm×横230mm×高さ100mmの箱形状のキャビティ(立壁部:傾斜10度、クリアランス3mm、底面部:クリアランス1.5mm)を有する金型中に、射出速度100mm/秒で射出充填した(射出工程)。射出充填完了直後に(設定保持時間が0秒)、底面部の金型キャビティ・クリアランス4.0mmまで、型開速度50mm/秒にて可動型を後退させ、所定の成形体肉厚になるように最終型内クリアランスを調整して発泡させた。発泡完了後60秒間冷却してから発泡成形体を取り出した。
改質ポリプロピレン系樹脂を表1に示す乾燥時間で予め乾燥し、発泡剤(C)を表1に示す組成比でドライブレンドし、射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
宇部興産機械(株)製「MD350S−IIIDP型」(シャットオフノズル仕様)の射出成形機で、樹脂温度200℃、背圧5MPaで前記発泡剤を含む樹脂組成物を溶融混練した後、40℃に設定された、φ2mmのピンゲートを有し、固定型と前進および後退が可能な可動型とから構成される、縦330mm×横230mm×高さ100mmの箱形状のキャビティ(立壁部:傾斜10度、クリアランス3mm、底面部:クリアランス1.5mm)を有する金型中に、射出速度100mm/秒で射出充填した(射出工程)。射出充填完了直後に(設定保持時間が0秒)、底面部の金型キャビティ・クリアランス4.0mmまで、型開速度50mm/秒にて可動型を後退させ、所定の成形体肉厚になるように最終型内クリアランスを調整して発泡させた。発泡完了後60秒間冷却してから発泡成形体を取り出した。
このときの射出発泡成形性、得られた発泡成形体の揮発性有機化合物放散濃度、剛性および軽量化率を表2に示す。
本発明によって得られた箱形状の発泡発泡成形体は、発泡倍率2.5倍であり、高発泡倍率のものである。平均気泡径は150μm以下で200〜400μmの非発泡層(スキン層)を有しており、成形体内部のボイドもほとんどなかった。この結果、箱形状の発泡成形体にもかかわらず、同等の剛性を有する非発泡成形体に対して、28〜36%の軽量化率を達成した。得られた発泡体中の各揮発性有機化合物放散濃度(μg/m3)は表3に示すとおりであった。
(実施例3)
改質ポリプロピレン系樹脂を事前に乾燥しなかった以外は、実施例1と同様にして実施した。結果を表2および3に示す。実施例1と同等な物性を有する発泡成形体となり、発泡体中のトルエンの放散濃度も400ppm以下であった。
改質ポリプロピレン系樹脂を事前に乾燥しなかった以外は、実施例1と同様にして実施した。結果を表2および3に示す。実施例1と同等な物性を有する発泡成形体となり、発泡体中のトルエンの放散濃度も400ppm以下であった。
(参考例)
実施例において、改質ポリプロピレン系樹脂、発泡剤を使用せず射出充填し、60秒間冷却した後に非発泡成形体を取り出した。このとき、初期の金型底面部のクリアランスを変えることにより、底面部の肉厚の異なる成形体が得られた。
実施例において、改質ポリプロピレン系樹脂、発泡剤を使用せず射出充填し、60秒間冷却した後に非発泡成形体を取り出した。このとき、初期の金型底面部のクリアランスを変えることにより、底面部の肉厚の異なる成形体が得られた。
(比較例1)
改質ポリプロピレン系樹脂の代わりに線状ポリプロピレン系樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にして射出発泡成形体を作製した。結果を表2および3に示す。発泡倍率が2倍程度しか得られず、成形体内部にボイドが発生した。剛性が著しく低下したため、軽量化率も20%未満であった。
改質ポリプロピレン系樹脂の代わりに線状ポリプロピレン系樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にして射出発泡成形体を作製した。結果を表2および3に示す。発泡倍率が2倍程度しか得られず、成形体内部にボイドが発生した。剛性が著しく低下したため、軽量化率も20%未満であった。
本発明の射出発泡成形体は、改質ポリプロピレン系樹脂の特徴を損なうことなく、改質ポリプロピレン系樹脂組成物中の未反応単量体や反応・分解による副生物に起因する揮発性有機化合物が低減され、かつ高発泡倍率であるために軽量性、剛性に優れていることから、ラゲージボックス、コンソールボックス、ツールボックス等の自動車内装材をはじめ、建材、食品包装用容器、家電ハウジング、日用雑貨品のボックス類等に広く使用できる。
Claims (3)
- メルトフローレートが0.1g/10分以上50g/10分未満、メルトテンションが2cN以上で、かつ歪硬化性を示す改質ポリプロピレン系樹脂からなるポリプロピレン系樹脂射出発泡成形体であって、該ポリプロピレン系樹脂射出発泡成形体から発生する揮発性有機化合物のうち、トルエン・キシレン・エチルベンゼンの総放散濃度が700μg/m3以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂射出発泡成形体。
- 熱処理した改質ポリプロピレン系樹脂を使用することを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン系樹脂射出発泡成形体。
- 前記改質ポリプロピレン系樹脂が、線状ポリプロピレン系樹脂、ラジカル重合開始剤、共役ジエン化合物を溶融混合して得られたものであることを特徴とする請求項1または2記載のポリプロピレン系樹脂射出発泡成形体。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2008290282A (ja) * | 2007-05-23 | 2008-12-04 | Kaneka Corp | ポリプロピレン系樹脂射出発泡成形体 |
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2005
- 2005-04-12 JP JP2005114591A patent/JP2006291066A/ja active Pending
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