JP2006289306A - 廃棄物からのフッ素および重金属の溶出を抑制する方法および安定化処理剤 - Google Patents

廃棄物からのフッ素および重金属の溶出を抑制する方法および安定化処理剤 Download PDF

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Abstract

【課題】
都市ゴミ焼却灰や製鋼スラグなどの廃棄物の固化処理に当たり、固化体から、フッ素および(または)重金属が溶出することを抑制する方法と、その溶出抑制方法の実施に使用する安定化処理剤を提供する。
【解決手段】
フッ素および(または)重金属を含有する廃棄物に、固化剤として、高炉セメント、高炉水砕スラグ粉末、高炉徐冷スラグ粉末およびポルトランドセメントから選んだ水硬性物質を添加するとともに、安定化剤として、焼成ドロマイトの粉末、好ましくはさらに石膏の粉末を混合し、水を加えて混練し、反応させて凝結固化させる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、フッ素および(または)重金属を含有する廃棄物を処理して、それら有害成分の処分された廃棄物からの溶出を抑制する方法と、その方法の実施に使用する安定化処理剤に関する。
たとえば都市ゴミを焼却処理した時に発生する焼却灰は、そのまま、またはさらに減容のため溶融して溶融灰として廃棄処分されるが、廃棄に当たって、その中に存在することのある重金属、とくに鉛やクロムなどが溶出する危険をなくす必要がある。フッ素の溶出も防止しなければならず、製鋼スラグには原料の蛍石に由来するフッ素が必然的に含まれているほか、一般ゴミにもフッ素が含まれている危険はある。このため、土壌の環境基準において、フッ素に関する規定がある。重金属の溶出を抑制するため、廃棄物を、セメント固化法、キレート薬剤法、酸抽出法および溶融法のいずれかにより処理することが、旧厚生省告示第194号により推奨されている。ところが、ゴミ処理において直接溶融法が導入されるに至って、灰の中の重金属濃度が上昇し、セメント固化法やキレート薬剤法では十分な安定化処理ができないという問題が生じている。
製鋼過程においては、スラグの融点を下げて流動性を高め、スラグと溶鋼との反応性を高める目的で、しばしば蛍石が添加され、それに由来するフッ素が、合金成分中の重金属とともにスラグ中に入る。このため、製鋼スラグを土木工事や埋め立てに用いる場合には、製鋼スラグを処理してフッ素および重金属の溶出を抑制し、環境汚染を防止する必要がある。
セメント固化による重金属の固定に関しては、多くの特許出願がある(たとえば特許文献1)。重金属の固定をセメントの成分であるカルシウムアルミネートを利用して行なうことも、提案されている(特許文献2、特許文献3)。発明者らの一人は、カルシウムアルミネートを用いて、製鋼スラグや一般ゴミから溶出したフッ素を固定する方法をいくつか発明し、発表した(特許文献4、特許文献5、特許文献6)。しかし、カルシウムアルミネートは比較的高価な処理剤であって、水質汚濁法の排出基準を遵守するための処理には使用できるが、大規模に排出される産業廃棄物を処理する処理剤としては、コスト面で困難があった。
特開平10−128272 特開昭53−100167 特開2000−93927 特開2000−225383 特開2000−247694 特開2000−335946
処理の対象とすべき廃棄物どうしを組み合わせて、一石二鳥の処理を行なうという意図のもとに、ごみ焼却灰の溶融処理の際に発生する二次飛灰を、製鋼スラグを用いて処理するという技術もある(特許文献7)。フッ素を高濃度で含有する溶液に対して、その溶液中のカルシウム濃度を著しく高めてフッ化カルシウムを沈殿させ、フッ素を除去する技術も知られている(特許文献8)。しかし、フッ素濃度が低い溶液中では、フッ化カルシウムが生成する反応は進行しない。最近の研究発表には、発明者の一人による、「高炉スラグによる焼却灰中フッ素、重金属の固定化」(非特許文献1)がある。
特許3598832 特開昭59−120285 2004年9月28日 日本鉄鋼協会講演大会(講演番号142,CAMP ISIJ Vol.17(2004)-887)
セメント固化による廃棄物の処理は、セメントゲルによる物理的な封じ込め作用を利用するものであって、固化体は透水性が低く、化学的な安定性が高いため、この処理法は原理的には、有害物質の封じ込めに効果的である。しかし、セメント固化による重金属の溶出抑制においては、セメント中の酸化物が水と結合して水和物を生成し、硬化する際に重金属類がケイ酸カルシウム水和物の表面に吸着され固溶化される、という原理にもとづくものであり、セメントは重金属を包含できる量が少ないので、重金属の濃度が高い溶融飛灰に対しては、あまり有効とはいえない。
一方、製鋼スラグ中のフッ素および重金属の固定に、消石灰を使用することが試みられている。その安定化機構は、C−S−Hゲル相の形成、具体的には、下記の安定な化合物の形成である。
CaO−SiO2−H2O−XO(Xは重金属)化合物
CaO−SiO2−H2O−F化合物
発明者らは、ドロマイトを使用して固定することを着想し、試験の結果、消石灰よりさらに高い固定効果が得られることを知った。ドロマイト中のMgを利用すると、Mgイオンを含んだ安定なセメントゲルMg(OH,F)2が形成し、それによって重金属の包含がより効果的に実現することができるわけである。具体的には、下記の安定な化合物の形成である。
CaO−MgO−SiO2−H2O−XO(Xは重金属)化合物
CaO−MgO−SiO2−H2O−F化合物
Mg(OH,F)2化合物
CaO−MgO−SiO2−H2O−SO4−XO化合物
CaO−MgO−SiO2−H2O−SO4−F化合物
ドロマイトは、CaCO3とMgCO3を主成分とする鉱物であって、国内のいくつかの鉱山で大量に産出するから、安価に安定的に入手でき、廃棄物の処理に利用するのに適した資源である。ドロマイトをそれほど高くない温度に焼成すると、脱炭酸が起こってCaOとMgOを主成分とする「軽焼ドロマイト」が得られる。軽焼ドロマイト中のCaO成分は、アルカリ刺激剤として、上記のゲル化を促進するはたらきがある。一方、MgOは、その水和に際して、フッ素を上記のMg(OH,F)2化合物として沈殿させ、固定する作用を示す。したがって、軽焼ドロマイトを廃棄物の処理に使用することにより、重金属の溶出の防止とフッ素の固定との、両方の効果が得られる。
本発明の目的は、廃棄物の固化処理体からのフッ素および(または)重金属の溶出を抑制するための安定化処理技術を改良し、安定化効果がいっそうすぐれた廃棄物からのフッ素および重金属の溶出を抑制する方法と、その安定化処理方法を提供することにある。
本発明の廃棄物の安定化処理方法は、フッ素および(または)重金属を含有する廃棄物に、固化剤として水硬性物質を添加するとともに、安定化剤として焼成ドロマイトの粉末を混合し、水を加えて反応させ、凝結固化させることにより、フッ素および(または)重金属の溶出を防止することからなる。ここで、「焼成ドロマイト」の語は、「軽焼ドロマイト」と「消化ドロマイト」とを併せた意義を有する。
本発明の安定化処理方法により廃棄物を安定的に固化処理すれば、有害物質の溶出量が画期的に抑制された固化体を得ることができ、容易に環境基準を満たすことができる。固化剤として使用する水硬性物質は、高炉セメントのように安価なものを使用することができるし、安定剤として使用する焼成ドロマイトもまた廉価に提供できるから、本発明の安定化処理方法は、都市ゴミ焼却により発生する廃棄物に対しても、また製鋼工程で発生する製鋼スラグのような産業廃棄物に対しても、低コストで実施可能である。
固化剤として使用する水硬性物質は、高炉セメント、高炉水砕スラグ粉末、高炉徐冷スラグ粉末およびポルトランドセメントから選んだものが好適である。これらの2種またはそれ以上を組み合わせて使用してもよいことは、もちろんである。
安定化剤としては、上記のように焼成ドロマイトすなわち軽焼ドロマイトまたは消化ドロマイトの粉末を使用するが、これに、石膏の粉末を併用することが好ましい。石膏として半水石膏を選べば、これは水硬性を有するから、固化剤としても役立つ。
固化剤および安定化剤の使用量は、廃棄物100重量部に対して、固化剤粉末20〜50重量部、安定化剤粉末は5〜20重量部の範囲内からえらぶとよい。安定化剤として、焼成ドロマイト粉末に石膏粉末を併用する場合は、焼成ドロマイト粉末30〜80重量%と石膏70〜20重量%との配合が好適である。固化剤および安定化剤は微細粉末であることが好ましく、平均粒径が200μm以下の粉末を使用するのがよい。
固化体の製造工程は、廃棄物に固化剤および安定剤を添加し、水を加えて混練して適宜の形状に成形することからなる。水は、混練作業が可能であって、かつ、[固化剤の混水量+(安定剤が水硬性である場合はそのための混水量)+前記の反応に要する水の量]の合計量以上であって、かつ、これになるべく近い量が適切である。
試験例
都市ゴミ焼却施設であって、焼却灰を直接溶融する方式の炉をもつ施設において、バグフィルターにより集塵された溶融飛灰を分析して、表1に示す結果(重量%)を得た。
表1
Figure 2006289306
上記の溶融飛灰について、環境庁告示第46号に規定された溶出試験を行なった。重金属の溶出量と、土壌環境基準および廃棄物処理判定の規制値とを対比して、表2に示す。表2のデータは、鉛およびフッ素の溶出量が規制値を超えていることを示す。この溶融飛灰に関しては、鉛に加えてカドミウム、六価クロムおよびフッ素の固定をする必要がある。
表2
Figure 2006289306
そこで、各種の水硬性物質を用いて固化処理する実験を行なった。焼却飛灰100重量部に対して、種々の粒度の高炉徐冷スラグ、高炉水砕スラグ、高炉スラグセメントまたはポルトランドセメント50重量部を添加し、適量の水で混練し、凝結固化させた。固化体に対して、環境庁告示第13号に規定された溶出試験(以下「13号溶出試験」という)を行なった。溶出液中の重金属の濃度とフッ素の濃度とを、使用した固化剤の粒度に関して、表3に示す。表3のデータから、100μm以下の微細な粉末の水硬性物質で固化した場合は、溶出液中の鉛および六価クロムの濃度が、廃棄物処理判定基準の埋め立ての規制値より低いが、200μm以下または500μm以下の場合には規制値を超えていることがわかる。
表3 単位はmg/L PC:ポルトランドセメント
Figure 2006289306
同じ焼却飛灰100重量部に対して、粒度が200μm以下の高炉徐冷スラグ、高炉水砕スラグまたは高炉スラグセメント50重量部と、粒度200μm以下のドロマイト粉末を5重量部または20重量部添加した固化剤を使用して、固化処理を行なった。得られた固化体について、13号溶出試験を行なった。結果を、表4に示す。この表には、比較しやすいように、ドロマイト粉末を添加しなかった場合のデータを表3から抜き出して、併記した。表4の結果から、固化剤がとくに微細粉末でなくても、ドロマイトを添加したことにより、溶出液中の鉛および六価クロムの濃度が、廃棄物処理判定基準の埋め立ての規制値を下回ったことがわかる。フッ素の溶出量に関しても、ドロマイトの添加が効果を発揮し、土壌環境規制値を大きく下回っている。
表4 単位はmg/L
Figure 2006289306
実施例1と同じ焼却飛灰100重量部に対して、粒度が200μm以下である3種の水硬性物質20重量部に、粒度200μm以下のドロマイト粉末を20重量部添加した固化剤を使用して、固化処理を行なった。得られた固化体を対象にして、13号溶出試験を行なった。結果を、表5に示す。
表5 単位はmg/L
Figure 2006289306
表5のデータは、実施例1のように多量の水硬性物質を使用しなくても、ドロマイト粉末の量が足りていれば、溶出液中の鉛および六価クロム、またフッ素の濃度が、廃棄物処理判定基準の埋め立ての規制値をクリアできることを示している。
実施例1と同じ焼却飛灰100重量部に対して、粒度が200μm以下である3種の水硬性物質20重量部に、粒度200μm以下のドロマイト粉末5重量部、および粒度100μm以下の石膏粉末を5重量部添加した固化剤を使用して、固化処理を行なった。比較のため、石膏粉末を添加しない固化剤を使用した場合の固化体も作った。得られた固化体を対象にして、13号溶出試験を行なった。その結果を、表6に示す。表6の結果から、石膏の添加により、多量の水硬性物質を使用しなくても、溶出液中の鉛および六価クロムの濃度を低くできること、フッ素の濃度も低くなっていることがわかる。
表6 単位はmg/L
Figure 2006289306
実施例1と同じ焼却飛灰100重量部に対して、粒度が100μm以下である3種の水硬性物質50重量部に、粒度200μm以下のドロマイト粉末5重量部、および粒度100μm以下の石膏粉末を5重量部添加した固化剤を使用して、固化処理を行なった。比較のため、ドロマイト粉末を添加しない固化剤を使用した場合の固化体も作った。得られた固化体を対象にして、13号溶出試験を行なった。その結果を、表7に示す。表7の結果から、適量のドロマイトおよび石膏の両方を添加することにより、溶出液中の鉛および六価クロムの濃度、フッ素の濃度が、土壌環境規制値より低くできることがわかる。
表7 単位はmg/L
Figure 2006289306

Claims (7)

  1. フッ素および(または)重金属を含有する廃棄物からのフッ素および重金属の溶出を抑制する方法であって、固化剤としての水硬性物質と、安定化剤としての焼成ドロマイトの粉末とからなる安定化処理剤を添加し、水を加えて混練することにより反応させ、凝結固化させることからなる溶出抑制方法。
  2. 廃棄物が、都市ゴミの消却処理により発生する焼却灰、または製鋼工程で発生する製鋼スラグである請求項1の溶出抑制方法。
  3. 固化剤として、高炉セメント、高炉水砕スラグ粉末、高炉徐冷スラグ粉末およびポルトランドセメントから選んだ1種または2種以上の水硬性物質を使用する請求項1の溶出抑制方法。
  4. 安定化剤として、焼成ドロマイトの粉末と石膏の粉末とを併用する請求項1の溶出抑制方法。
  5. 固化剤の粉末および安定化剤の粉末として、平均粒径が200μm以下の粉末を使用する請求項1の廃棄物の溶出抑制方法。
  6. 廃棄物100重量部に対して、固化剤20〜50重量部と安定化剤5〜20重量部とからなる安定化処理剤を添加して実施する請求項1の溶出抑制方法。
  7. 安定化処理剤が、焼成ドロマイト粉末30〜80重量%と半水石膏粉末70〜20重量%とからなる請求項1の安定化処理剤。
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