JP2006277914A - 光ディスクの光透過層用フィルムおよびポリカーボネートフィルムの製造方法 - Google Patents

光ディスクの光透過層用フィルムおよびポリカーボネートフィルムの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】光ディスクの光透過層用フィルムとして好ましい物性及び光学的特性を有するフィルムおよびかかるポリカーボネートフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】ポリカーボネート樹脂を溶融押出しして作成した光ディスクの光透過層用フィルムであって、フィルムの厚みが10〜150μm、厚み斑が±2μm以下、140℃で1hr熱処理後の熱寸法変化率が0.08%以下、全光線透過率が89%以上、面内レターデーションが1〜15nm、厚み方向のレターデーションが100nm以下、中心線平均表面粗さが両面共に1〜5nmの範囲であることを特徴とする光ディスクの光透過層用フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、レーザー光などにより情報の記録、再生、消去などを行う光ディスクの光透過層として用いる薄肉のポリカーボネートフィルムに関する。また、この光ディスクの光透過層用フィルムを溶融製膜法によって製造するポリカーボネートフィルムの製造方法に関する。
<光記録層と光透過層>
ポリカーボネート樹脂は透明性、耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性、更に加工性に優れることから光学用途に広く利用されている。例えば、レーザー光を使用する光ディスクは、高密度、大容量の記録媒体として種々の研究、開発、商品化がおこなわれている。光ディスクに動画情報を含む大容量の記憶が可能なような種々の技術が開発されている。その一つに片面から情報を読み出す膜面入射方式の光ディスクの技術が提案され、特許文献1及び非特許文献1〜2等が公表されている。
膜面入射方式の光デイスクとは、上記の文献類に記載されたように主にポリカーボネート樹脂より形成されたディスク状に光記録層が付与された高密度記録媒体のことであり、光記録層は厚み約0.6〜1.1mmのディスク面上に形成される。さらにこの光記録層を保護するために、約0.01〜0.1mmの厚みのフィルムを光透過層として接着剤等で光記録層に付着(接着)させたものである。
本発明では光ディスクの信号記録層を光記録層と呼び、また、この光記録層を保護するための薄肉フィルムを光透過層用フィルムと呼ぶことにする。
<光透過層>
従来からポリカーボネート樹脂フィルムを製造する方法としては、溶融製膜法または溶液製膜法が採用されている。
特許文献2には、溶融キャスト法(実質的に溶液製膜法)により作製された樹脂シートを光透過層として用いること、その樹脂の一つとしてポリカーボネートを用いたること、該シートで、厚み斑、複屈折並びに残留溶媒等が制御された特性のものを用いて、光学記録媒体を製造する方法が提案されている。
また、特許文献3及び4には、ポリカーボネートを用い溶液製膜法によって光透過層用フィルムを製造することが記載されている。ここには、フィルムの厚み、厚み斑、熱寸法変化率、全光線透過率、含有溶媒量、面内レターデーション、厚み方向のレターデーションKの最大値、表面粗さなどが規定されている。
溶液製膜法によれば光記録層用フィルムとして品質の優れたものが得られるという利点がある、しかし、溶液製膜法はポリカーボネート樹脂を塩化メチレン溶液として支持体面上にキャストする製膜法のために、その乾燥工程において塩化メチレンの蒸発除去のための多くのエネルギーを費やす上、装置も大型化せざるをえないという問題点を持っている。そして、溶液を含んだ表面の比較的軟らかいフィルムを搬送しつつ熱処理するために、支持体や搬送ロール表面の傷や欠陥の転写による表面欠点を発生しやすく、打痕や転写傷等の表面欠点を解消するのが設備上も運転操作上も難しいなど品質管理上の煩雑な問題もある。
一方、溶融製膜法により得られる溶融押出しポリカーボネートフィルムは製造上いくつかの技術的問題、例えば、複屈折を十分に小さくするのが難しい、厚み斑が十分には良くない(小さくない)並びに表面欠点が多いなどの問題点を解消できていないため、満足な特性が得られていないのが現状である。
<溶液製膜法について>
なお、光ディスクの更なる高密度化が推進されている。例えば、一枚で2層の光記録層を備えた光ディスクの場合には、約50μmと約100μmの光透過層用フィルムが用いられている。50μmの光透過層用フィルムは光ディスクの内層部に、また、100μmの光透過層用フィルムは光ディスクの表層部にそれぞれ用いられる。
しかしながら、塩化メチレンを溶媒とする溶液製膜法においては、製造できるポリカーボネートフィルム厚みの点で制約がある。すなわち、ポリカーボネートを用いて溶液製膜する場合、ポリカーボネート(殊にビスフェノールA−PC)は溶媒の乾燥過程で結晶化して、透明で柔軟性のあるフィルムを得にくくなるという問題がある。
光ディスク基板として用いられているビスフェノールA−PC(粘度平均分子量が15,000)の塩化メチレン溶液からフィルムを製造しようとすると、50μm以上の厚い透明フィルムを作成することが難しい。この結果から本発明で要求されるような、光透過層用フィルムの厚みが約10〜150μmの範囲のものすべてをカバーするようなものは溶液製膜法で製造することが難しいことがわかった。このように、溶液製膜法であっても先に述べたフィルム品質上の問題をクリアーして効率的に光ディスクの光透過層用フィルムを作るにはまだ問題が残されているのが現状である。
一方、溶融製膜法であれば溶融したビスフェノールA−PCをフィルム状にして、急冷すれば溶融状態からの結晶化が防止できるから容易に高透明のフィルムを作ることができるという利点がある。
<従来の溶融製膜法に関する技術課題>
しかし、従来の方法で得られた溶融製膜法のフィルムを光透過層用フィルムに使うには、(i)異物・表面欠点が発生しやすい問題、(ii)厚み斑が十分に小さくない、並びに(iii)得られるフィルムの複屈折・レターデーションの十分に小さいものが、広幅、長尺(大判)のフィルムで得られていない等の技術問題がある。
(i)異物・表面欠点
ポリカーボネート系樹脂は一般に溶融粘度が高く、樹脂の押出し機中の滞留時間の長さや押出し温度が高温である影響を受け、異物欠点が発生し易い。市販の粘度平均分子量が23,000であるビスフェノールA−PC樹脂を溶融製膜した150μm厚みの透明フィルムの欠点を分析した結果では、欠点の大きさは20〜50μm程度であり、その原因物はポリカーボネートの熱劣化物(茶色〜黒色に着色している)が数にして60%、金属やガラスの微小な破片が30%、そして、人体の角質が10%であった。金属やガラス片は高分子を合成する前に用いる原料に十分対策すれば取り除けるし、人体の角質は製膜装置やそこで働く人のクリーン度を上げることによって除去できる。しかし、異物として大部分を占めるポリカーボネートの熱劣化物は一度生じると散発的に製品フィルム中に出てくるため除去が難しくなる。ポリカーボネートの光透過用フィルムでは熱劣化異物を発生させないで製膜する技術を開発することが一つの課題である。また、表面欠点のうち冷却ロール表面傷、搬送系ロールの表面傷のフィルムへの転写等によって生じる欠点は、製膜室のクリーン度を上げたり、ロール表面傷・付着物等を極力減らしたりすることで解決できる。
非特許文献3には、ポリカーボネート樹脂の成形加工時の熱安定性について記載されている。ここには、溶融押出し時水分が存在すると加水分解を受け、分子量が著しく低下すること、また、高温度に樹脂を滞留させると炭酸ガスを発生しつつ熱分解すること、などが記載されている。これらの熱劣化を極力防ぐための通常のポリカーボネートの成形加工温度は260〜320℃であること、例外としてコンパクトディスク(CD)等光学用途に使用されている純度の高いポリカーボネートの場合は、340〜350℃のような高い温度条件で成形されることもあると記載されている。ポリカーボネートは高温下で空気中の酸素と接触すると酸化され黄変する傾向があり、さらに長時間その状態を続けると褐色の炭化物を生成する、このためポリカーボネートを高温下で長時間滞留させることは避けるべきことなどが明らかになっている。
しかし、このような基礎的結果は解っていても熱劣化物の発生防止を具体的にどのようにするかは明らかにされていない。
(ii)厚み斑の問題
ビスフェノールA−PCの溶融押し出しフィルムの厚み斑には大別すると2種類あり、ひとつは走行方向の幅方向で見ると大きなうねり状の厚み斑であり、幅が約1mの溶融押し出しフィルムで、平均厚みが数十μmのフィルムを調べると、斑(厚みの最大値と最小値の差R)が数μm以上のものも見られる。
もう一つは、微細な筋状の欠点(本発明者らはこれをダイ筋やリップ筋と呼ぶことがある)である。押出しダイのエッジ部に傷がある場合は比較的強いほぼ連続した筋となってフィルム面に生じる。しかし、リップエッジを十分に整備してリップに傷がないダイを用いて、溶融押出しを実施した場合にも微小な走行方向の間歇的な筋が目視で検知されることがある。なお、このような微細な筋はフィルム面を連続して接触して厚みを測る連続厚み計では検出できないことが多い。ところが、フィルム面に平行光線を角度を変えながら斜め方向から投射してスクリーンに映して目視すると筋状の欠点が明瞭に見える。このようにして見える筋は高さが0.2μm(200nm)程度以下できわめて小さいものである。
溶融製膜法ではフィルムの冷却ロールへの密着・冷却固化法として、樹脂温度、エアーギャップ、冷却ロール温度をうまく組み合わせてフィルムを低複屈折の状態で製造する方法が開示されている。例えば特許文献5には、ポリカーボネートフィルムの厚み0.02〜2.0mmの範囲で、所定の複屈折を得るために、溶融押出成形条件を(i)樹脂温度300〜330℃、(i i)エアーギャップ80〜100mm、(iii)冷却ロール温度100〜140℃とすることが示されている。
また、特許文献6によれば、液晶表示パネル用電極基板に用いられるポリカーボネートフィルムを製造する方法として、フィルム両端部を冷却ドラムに密着及び/若しくは圧着させる方法が示されている。
しかしながら、これらのポリカーボネートの溶融押出製膜法で得られたポリカーボネートフィルムは、ある程度厚み斑は低減されるけれども、そのレターデーションの値が大きく光ディスクの光透過層用フィルムとしては適さない。
(iii)Re低下技術
溶融製膜法において、レターデーション(複屈折)の小さいフィルムを得る技術が提案されている。
特許文献7では、非晶性熱可塑性樹脂の押出し成形において、フィルムに静電印加して冷却ロール上に密着固定することを特徴とする非旋光性の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法が開示されている。そして、この技術を実施する際には電極として、静電ワイアーを用いることが記載されている。
また、特許文献8では、粘度平均分子量が14,000〜19,000の範囲にあるポリカーボネート樹脂を溶融押出しして通常厚さが0.1〜3mm程度で、押出し幅方向の複屈折が40nm以下のシートを得る製造方法が提案されている。
さらに、特許文献9では、粘度平均分子量が、14,000〜19,000のポリカーボネート樹脂よりなり、複屈折が20nm以下、反り率が0.5%以下で且つ厚みが0.1〜1mmである光学用ポリカーボネート樹脂シートの製造方法が記載されている。
しかしながら、これらの技術では光透過層に用いることができる程度に幅方向に均一な低いレターデーション(複屈折)を有するフィルムを安定して製造することはできない。すなわち、フィルムの幅方向の両端部がその中央部よりもレターデーションが大きくなる。この両端部のレターデーションが高い現象はダイリップから流下する溶融樹脂がその両端部で幅を狭めるように流れ、この状態で高分子が流動配向しやすいためであろうと推定される。
特開平08−235638号公報 片面12Gbyteの大容量光ディスク OplusE、20巻、No.2、183ページ(1998年2月) 光ディスク及び周辺材料 98−2高分子光エレクトロニクス研究会講演要旨集 高分子学会高分子エレクトロニクス研究会(平成11年1月22日) 特開2002−074749号公報 特開2001−243658号公報 特開2001−243659号公報 ポリカーボネート樹脂ハンドブック、401ページ、本間 精一編 1992年8月28日発行 日刊工業新聞社発行 特開平04−275129号公報 特開平08−171001号公報 特開昭60−214922号公報 特開平04−166319号公報 特開平10−217313号公報
本発明の目的は、光ディスクの光透過層用フィルムとして好ましい物性及び光学的特性を有するフィルムおよびかかるポリカーボネートフィルムの製造方法を提供することである。
本発明者らは、この目的を達成するために、ポリカーボネートフィルムの溶融製膜法について鋭意検討を行った結果、特に光ディスク用の光透過層用フィルムとして物性及び光学的特性が良好なポリカーボネートフィルムを製造する溶融押出方法を見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明によれば、
1.ポリカーボネート樹脂を溶融押出しして作成した光ディスクの光透過層用フィルムであって、フィルムの厚みが10〜150μm、厚み斑が±2μm以下、140℃で1hr熱処理後の熱寸法変化率が0.08%以下、全光線透過率が89%以上、面内レターデーションが1〜15nm、厚み方向のレターデーションが100nm以下、中心線平均表面粗さが両面共に1〜5nmの範囲であることを特徴とする光ディスクの光透過層用フィルム、
2.ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールAを少なくとも50モル%有するジヒドロキシ成分から得られたポリカーボネート樹脂である前項1記載の光ディスクの光透過層用フィルム、
3.ポリカーボネート樹脂は、その粘度平均分子量が14,000〜30,000の範囲である前項1記載の光ディスクの光透過層用フィルム、
4.最大長が10μm以上および高さが3μm以上の表面欠点が10個/平方メートル以下であり、最大長が20μm以上の塊状の内部異物が5個/平方メートル以下であり、且つ最大長が200μm以上の打痕状の表面欠点が1個/平方メートル以下である前項1記載の光ディスクの光透過層用フィルム、
5.前項1に記載のフィルムを積層し、巻き上げたことを特徴とする光ディスクの光透過層用フィルム巻層体、
6.前項1に記載のフィルムを光ディスクの光透過層として使用した光ディスク、
7.溶融押出ししたポリカーボネート樹脂製フィルムを下記(1)〜(3)の条件で熱処理することを特徴とするポリカーボネート樹脂製フィルムの製造方法、
(1)熱処理温度;(Tg−10)〜Tg(ただし、Tgはポリカーボネート樹脂のガラス転移温度)
(2)熱処理張力;フィルム断面荷重として、0.5〜3Kg/平方センチメートル
(3)熱処理時間;30秒以上
8.熱処理する工程が、ロール懸垂型熱処理機を使用して熱処理する工程である前項7記載のポリカーボネート樹脂製フィルムの製造方法、
9.ポリカーボネート樹脂をダイよりフィルム状に溶融押出し、ダイと冷却ロール間のエアーギャップを10〜30mmとし、フィルム全面を静電密着法によってロールに密着させ冷却して得られたフィルムを、前項7に記載の条件で熱処理するポリカーボネート樹脂製フィルムの製造方法、
10.ポリカーボネート樹脂をダイよりフィルム状に溶融押出し、ダイと冷却ロール間のエアーギャップを10〜30mmとし、冷却ロール表面に液体の薄膜を付与し、その薄膜の上に溶融フィルムを押出してロールに密着させ冷却して得られたフィルムを、前項7に記載の条件で熱処理するポリカーボネート樹脂製フィルムの製造方法、
11.ポリカーボネート樹脂をダイよりフィルム状に溶融押出し、ダイと冷却ロール間のエアーギャップを40〜150mmとし、溶融フィルムを押出してフィルムの両端部を冷却ロールに密着させ冷却して得られたフィルムを、前項7に記載の条件で熱処理するポリカーボネート樹脂製フィルムの製造方法、および
12.前項7〜11のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂製フィルムの製造方法により得られた前項1記載の光ディスクの光透過層用フィルム、
が提供される。
本発明の光ディスクの光透過層用フィルムは、高度に平坦性に優れ、光学的歪みがほとんどなく、光学的な均質性が良好であり、工業的に生産性の高い光ディスクを提供できる。
また、本発明のポリカーボネート樹脂製フィルムの製造方法により得られたポリカーボネートフィルムは、厚み斑が小さく、フィルム全幅方向に渡ってレターデーションが15nmと小さく、液晶表示パネル電極基板用フィルム、光導電性感光体電極基板用フィルム、面状発熱体用電極基板用フィルム、有機EL電極基板用フィルム、位相差フィルムの無延伸原反用フィルム、光ディスク用の光透過層用フィルムとして好適であり、特に光ディスク用の光透過層用フィルムとして好適である。
<光記録層>
光ディスクにおける光記録層は、読み出しだけ可能なROM型、読み出しと書き込みだけが可能なWORAM型、および読み出し、書き込み、消去が可能な書き換え可能型がある。ROM型には誘電体やALなどの光反射膜を利用するCD、CD−ROMやビディオディスク、また、書き込み型には有機色素やTeなどの無機材料を用いるCD−Rや一般の追記型ディスク、また、書き換え型にはTbFeCoに代表される光磁気記録媒体やGeTeSbに代表される相変化記録媒体が挙げられる。ただし本発明で使用される光ディスクの光記録層はこれらの材料に限られるものではない。
また、光ディスク基板用の樹脂は粘度平均分子量が15,000程度のポリカーボネート樹脂を成型したものが多用されている。これはポリカーボネート樹脂(一般にビスフェノールAから得られたポリカーボネート樹脂)の分子量を下げて溶融時の流動性を改良したものである。従って、樹脂の流動配向によって生じる光学的歪、複屈折を小さくできる上、記録信号を精細に刻むことができる(信号転写後のクリープ等により分子が動くことによる信号の劣化が少ない)などの利点を持っている。
<光透過層>
本発明は上記の光ディスクの光記録層を保護し、光透過層として用いるためのポリカーボネートフィルムである。
ポリカーボネート樹脂は、通常ジヒドロキシ成分とカーボネート前駆体とを界面重合法または溶融重合法で反応させて得られるものである。ジヒドロキシ成分の代表的な例としては2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン等が挙げられる。これらの二価フェノールは単独または2種以上を混合して使用できる。なかでも、ビスフェノールAを好ましくは少なくとも50モル%、より好ましくは少なくとも60モル%、さらに好ましくは少なくとも75モル%、特に好ましくは少なくとも90モル%有するジヒドロキシ成分から得られたポリカーボネート樹脂である
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法または溶融重合法によって反応させてポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化防止剤等を使用してもよい。またポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であっても、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよく、また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
ポリカーボネート樹脂の分子量は粘度平均分子量で表して通常10,000〜40,000の範囲、好ましくは13,000〜30,000の範囲であり、さらに好ましくは14,000〜19,000の範囲である。
光ディスク基板には粘度平均分子量15,000程度のポリカーボネート樹脂を使用することから、光透過層として用いるポリカーボネートフィルムが上述の範囲であれば、得られるフィルムが脆くなり難く、円盤状に打ち抜く際に端面にノッチを発生したりすることが少なくなる。また、溶融押出し時に異物が発生し難く、厚み斑を発生し難くなる点で好ましい。さらに、得られるフィルムの高分子が緩和し易い傾向があるためその後の熱処理時にレターデーション値が低下し易く、また、ロール状に巻き上げた後、ロールを解きほぐす際に、たとえばディスク状に打ち抜いて機械的に搬送する場合においても平面性が良好となり、記録層に貼り合わせる際にトラブルを生じ難くなるので好ましい。
最も好ましいポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量の範囲は14,500〜17,500である。また、ポリカーボネート樹脂としては極力高分子量の異物や熱劣化物等が含まれないものを使用することが好ましい。
本発明でいう粘度平均分子量は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]
[η]=1.23×10−40.83
(但しc=0.7、[η]は極限粘度)
また、光透過層には光ディスク基板を形成するものと同一特性の(すなわち、同一原料で近似の粘度平均分子量を有する)ポリカーボネート樹脂からなるフィルムを用いるのが最適である。光透過層用フィルムの品質上の要求として、光記録層を有する光ディスク基板の物理特性と光透過層の物理特性を極力合わせることが好ましい。物理特性として、熱膨張率、吸湿膨張率、熱収縮率、粘弾性挙動等が挙げられる。光ディスク基板と光透過層の熱や吸湿による膨張特性、熱伸縮特性が異なる場合や、両者の粘弾性挙動が異なる場合には光記録層を有する光ディスク基板と光透過層とを貼りあわせた後の光ディスクが耐久性の促進テストや長期の経時変化によって不等に変形して歪んでしまいスキュー現象が起こる場合がある。
本発明の光ディスクの光透過層用フィルムは、厚みが10〜150μmの範囲であり、好ましくは10〜100μmの範囲である。この厚みは光ディスクの信号を最適状態で入出力するために重要である。
本発明の光ディスクの光透過層用フィルムは、厚み斑が±2μm以下であり、好ましくは±1.5μm以下である。厚み斑が大きくなると光学的歪が顕著となり、信号の入出力変動(ノイズ)が大きくなる。
本発明の光ディスクの光透過層用フィルムは、140℃で1hr熱処理後の熱寸法変化率が0.08%以下であり、好ましくは0.07%以下である。熱寸法変化率が大きくなると光記録層と光透過層との界面でのミクロな剥離が起こり易くなる。
本発明の光ディスクの光透過層用フィルムは、全光線透過率が89%以上であり、好ましくは90%以上である。光透過層を通しての光信号の劣化を防止するには全光線透過率は高いほど良く、89%未満では光信号の劣化が光ディスクとして許容できない場合がある。
本発明の光ディスクの光透過層用フィルムは、面内レターデーションが1〜15nmの範囲であり、好ましくは1〜10nmの範囲であり、より好ましくは1〜7nmの範囲であり、特に好ましくは1〜5nmの範囲である。面内レターデーションが高くなると、読取り光の再生信号へのモジュレーションが大きくなり再生信号レベルが不安定化する。
また、読取り光の再生信号へのモジュレーションを小さくし再生信号レベルを安定化するため、面内レターデーションのフィルム面内でのばらつきは好ましくは1〜8nmであり、より好ましくは1〜6nmである。
本発明の光ディスクの光透過層用フィルムは、厚み方向のレターデーションが100nm以下であり、好ましくは80nm以下である。なお、この厚み方向のレターデーションは後述する測定方法で求められたK値の最大値(0nm以上の値)を意味する。K値の最大値が大きくなるとノイズが増大する。
本発明の光ディスクの光透過層用フィルムは、中心線平均表面粗さが両面共に1〜5nmの範囲であり、好ましくは1〜3nmの範囲である。中心線平均表面粗さが大きすぎると表面凹凸部が光を散乱させる結果ノイズが増大する。
本発明の光ディスクの光透過層用フィルムは、ノイズを防止するために表面欠点や内部異物が少ないものが好ましい。すなわち、最大長が10μm以上および高さが3μm以上の表面欠点が10個/平方メートル以下、好ましくは5個/平方メートル以下であり、最大長が20μm以上の塊状の内部異物が5個/平方メートル以下、好ましくは3個/平方メートル以下であり、且つ最大長が200μm以上の打痕状の表面欠点が1個/平方メートル以下、好ましくは0個/平方メートルである。表面欠点の高さはフィルムをハードコート処理など表面コートする際に問題になることがあり、高さが3μmを超える欠点はその頂上が塗布剤によって埋めることができないので問題になる。このようなフィルム表面の突起は冷却ロールやフィルム搬送ロールの傷(大部分はくぼみ状のもの)が原因で、フィルム面にそれが転写されて突起となる。打痕は比較的なだらかな凹み状となっていて深さは浅い場合が多い。フィルム面上の強い打痕は走査型電子顕微鏡観察すると欠点のほぼ中央部に割れめができたり、そこに微小な異物が付着していたりする。一般に200μm未満の小さな打痕は後の表面加工時に塗り込められるか、加熱することによって歪みが緩和し、消失する。
本発明の光ディスクの光透過層用フィルムには、安定剤、紫外線吸収剤、調色剤、帯電防止剤等を溶融製膜したフィルムの特性、例えば、フィルムの透明性などを損なわない範囲で含んでいても良い。そして、本発明の製造方法で好適に使用される静電密着法を容易にするために、微量の酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどのポリカーボネートに溶解する物質を、NaイオンやKイオンの金属イオンが静電密着効果を強化し得る量添加することもできる。
<光透過層用フィルムの製造方法>
次に、上記特性を有する光透過層用フィルムを製造する方法について具体的に説明する。
(溶融押出条件)
溶融押出しの際にポリカーボネート樹脂の熱劣化が生じない工夫を行うことが好ましい。例えば、溶融押出し前に原料を120℃程度で十分に乾燥して、押出し機のホッパーに投入し、このホッパーは外から加熱して110℃程度に保温する。こうして加水分解等化学反応による樹脂の劣化を防止する。このホッパー内の空気(酸素)が樹脂の熱劣化を促進させることを防ぐため、この雰囲気を熱窒素ガスで置換するか、熱窒素ガスを流通させる方法を採用する。
本発明者らは押出し工程のどの場所で熱劣化物が発生し易いのか、ポリカーボネート樹脂(具体的にはビスフェノールA−PC)の熱劣化がスクリュー押出し機からダイ押出しまでの工程間でどのような場所に起こるのかをスクリューを押出し機から抜き出して調べた。その結果、樹脂を最初にかみ込む供給口の部分、この部分で樹脂がスクリューの噛みこみ開始部とバレル間で粘着状となりスクリューに絡みついて、その後の樹脂の供給が阻害され、これがひどい場合は吐出変動を起こす。このような樹脂が長い時間滞留すると徐々に劣化して、茶色や黒色の熱劣化物を生じることが分かった。この樹脂の絡みつきはスクリューの噛込み部(供給部)のバレル部を水冷することによって防止できる。
また、押出し機の先端部とフィルターハウジングとを接続するフランジ部、溶融樹脂の導管、フィルターハウジングと押出しダイとを接続する溶融樹脂の導管やフィルターハウジングの構造が熱劣化物を極力生じないように設計することが重要である。このためには、まず、溶融樹脂の導管内で樹脂の局所的な滞留を起こさせないように急激に曲げるような構造としないなどの対策が挙げられる。
フィルターのハウジングは一般に円筒形をしていて、このハウジングの中に必要な濾過面積を持ったフィルターエレメントを多数枚組み合わせて納める構造となっている。この円筒形のフィルターハウジングを水平にセットして使用するのが一般的である。しかし、このフィルターは縦型とするほうが好ましい。横型(または水平型)であると、最初溶融樹脂をフィルターハウジングに注入する時に空気を押出すことが完全にはできずにハウジング内に空気溜りができる場合が多い。そしてこの空気溜りは樹脂を押出す時の高い圧力によって圧縮されて小さくなっている。このような高温下の空気溜りとポリカーボネート樹脂が接触して酸素による熱劣化が徐々に進む。また、滞留時間が長くなるとこの熱劣化物が滞留していて微小な劣化物が時々フィルターエレメントを通過して押出し樹脂中に放出され、フィルムの内部異物となる。この対策のひとつとしては、溶融樹脂を注入するフィルターハウジングを縦型にすることによって防ぐことができる。この場合空気溜り滞留はできにくいからフィルター内での熱劣化物は発生しにくくなる。溶融押出し立ち上げ時には一般にスクリュウ先端から樹脂を押出し、押出し機の先端には初期の熱劣化物を放流させて完全に流し出してしまってから、フィルターエレメントを組み込んだフィルターハウジングのポリマー導管部を押出し機先端に接続することが好ましい。
透明のプラスチック製のフィルターハウジング内へ高い粘性の水あめを流して、樹脂注入の模擬テストを実施した結果によればハウジング内で空気の滞留が起こるのが確認された。実際に高温でフィルター内へ樹脂を流した時にもこの滞留現象は起こっていることが推定された。そして、このハウジング内での空気の滞留(空気の滞留以外にも高温空気(酸素)と樹脂とが反応してできたガス状物が混合しているものと思われる)は押出し機運転の途中で例えば押出しの吐出量を下げるなどすると空気溜りの空気が膨張してその一部が気泡状になって吐出されることがある。このような場合には、ポリカーボネートの熱劣化物と劣化によって生じたガスによりフィルムの表面欠点が生じる。
先に述べた非特許文献3(ポリカーボネート樹脂ハンドブック)によれば、ポリカーボネートを高温下で長時間滞留させることは避けなければならない。また、ポリカーボネート樹脂の空気中での炭酸ガス発生量と保持温度を調べた結果(処理時間30分)によれば260〜280℃の時は少ないが300℃以上の温度では急増する結果と、これが窒素雰囲気中ではさらに少なく340〜360℃でもきわめて微量の炭酸ガスが発生することが示されている。
このようにポリカーボネート樹脂の高温下での滞留時間が長い時の熱劣化は無視することができない。溶融押出し機の能力はフィルムの厚み、幅、製造速度(すなわち溶融樹脂の吐出量)がその製造に適切であるように、樹脂の押出し機から押出しダイ先端出口までの滞留時間を極力短くなるように決める必要がある。製造能力の増強などの対策をする場合は、樹脂を十分に溶かす能力と、熱劣化異物を発生させないような滞留時間として極力短時間とする必要がある。これらの兼ね合いで押出し機の吐出能力を決める。本発明で好適に用いられるビスフェノールA−PC樹脂(粘度平均分子量14,000〜19,000程度)を製膜する場合は樹脂の押出成形温度を270〜320℃とし、滞留時間を30分以内、好ましくは20分以内、さらに好ましくは10分以内とするのが好ましい。特に滞留時間が5〜10分であるようにするのが好ましい。滞留時間が短すぎる場合には、特に溶融押出しに用いる樹脂が結晶化しているような場合には未溶融物が残留して、フィルム中に異物欠点として出てくる場合がある。このようなものはゲル状異物として樹脂のフィルターエレメントを通過してしまう場合が多い。溶融温度と滞留時間を上記範囲にすることにより、ポリカーボネート樹脂の熱分解が抑えられる結果、熱劣化異物が発生し難くなる。
溶融押出し機としては、吐出量が最高130Kg/hr程度のものを選ぶことが好ましい。例えば、押出しダイの幅を1200mmとし、幅方向の特性が均一であるフィルム幅が1100mmありフィルム厚みが50μmのものを製造しようとする時には計算上ではフィルムの引取り速度が約30m/分である。そして、この時の吐出量は約130Kg/hrである。スクリューはポリカーボネートを溶融押出しするための通常のスクリユーまたは樹脂の溶融工程で固体と液体とを分離するようになした公知の二溝スクリユーのどちらでも用いることができる。スクリュー先端部では樹脂温度を連続的に測定して制御することが好ましい。
また、溶融樹脂の流量を精密に制御できるギヤーポンプを通すことによって、フィルムの特に長さ方向(走行方向)の厚み変動を抑えることができる。
本発明においては、濾過用フィルターエレメントは従来公知のものを用いることができる。市販されている金属製の焼結金属型や極細金属繊維の集合体型などの耐熱、耐圧性のフィルターエレメントを用いることが好ましい。フィルターエレメントを使う場合には樹脂が滞留しても熱劣化等を促進させない材質を選択することも必要である。
また、使用する樹脂として光学ディスクグレードのポリカーボネート樹脂(例えば帝人化成(株)製AD−5503)が好ましい。光学ディスクグレードは異物に細心の注意を払って合成しているためポリマーそのものに異物が極めて少なく、この樹脂を溶融押出して光ディスクを製造する際にも異物の発生が殆ど無いため熱劣化物等をトラップするフィルターは精密なものを使わなくとも問題無いとされており、本発明に好適である。
濾過装置とダイとを接続するポリマー導管内において、ダイの直前に、ミキサーを用いて、樹脂の温度、粘度を均一にするとさらに厚み斑を良化させることができる。
(ダイ押出し条件)
溶融したポリカーボネート樹脂をダイから押出す際に、ダイリップから押出された樹脂フィルムは、エアーギャップ部(ダイ先端と冷却ロールとの間)での収縮や雰囲気空気の乱れなどの影響を受け、厚み斑やダイ筋が生じ易い。特に溶融粘度が低い場合(粘度平均分子量14,000〜19,000)は顕著である。従来のようなエアーギャップ(ダイ先端と冷却ロールとの間隔)を広く取った溶融製膜法では均一な製膜ができ難い。
本発明者らは溶融押出しのダイリップ先端と冷却ロールとの間隔を十分に狭くして溶融樹脂の空間でのゆれをなくすことによって、溶融製膜法により得たポリカーボネート樹脂フィルムに顕著に現れるうねり状の厚み斑と微小な筋状の欠点(ダイ筋)を発生させることが無く、所望の物性及び光学的特性を満足するポリカーボネート樹脂フィルムが得られることを見出した。
すなわち、押出しダイのダイリップ先端部と冷却ロール面との距離を10〜30mmの範囲とすることが好ましく、15〜30mmの範囲とすることがより好ましい。
また、ダイの構造も、特にその突出部分で周辺空気の異常な流動を起こし、フィルム厚み斑を生じる原因になるのでダイの凹凸構造も極力注意して無くすかまたは少なくするための対策をすることが好ましい。
ポリカーボネートの溶融押出しダイとしては、ダイの幅方向の中央部から樹脂を供給するタイプのT−ダイ(コートハンガー型ダイ)またはT−ダイを樹脂の流入部で二分した形状のダイとし、ダイの幅方向の一端部から樹脂を流入させるタイプのI−ダイ等従来公知のものを用いることができる。この際押出しダイで樹脂が吐出されるリップは十分にシャープ形状に仕上げることが好ましい。そして、リップは一般に用いられているような突き出し型ではなく、リップの下面とリップをダイ本体に固定する螺子や螺子孔等がある場合には目潰しして極力平面をなすようにすることが好ましい。平坦化するためにダイリップ下面に表面が鏡面の部材をはめ込む方法が好ましく採用される。こうすることによって、溶融吐出されるポリカーボネート樹脂の樹脂温度並びに流動性を幅方向で均一にすることができる。
そして、ダイの開度(リップ開度)は、例えば、100μmの厚みのフィルムを押出し製膜する場合は1mm〜2mm程度とすることが好適である。さらに、ダイの幅方向においては樹脂流入部から遠くなるにしたがってダイ開度が少しずつ大きくなるように設定することが好ましい。こうしてダイの幅方向においてダイリップにかかる圧力がほぼ均一になり、溶融樹脂が流れ易くなるように工夫する。実際はダイを使用前にリップの開度を調整してから使用する。溶融押出し開始後は、ダイのリップ部のボルトをフィルムの厚み(斑)の状態を見ながら、自動又は手動で調整するようにすると特に厚み斑を小さく良くする点で好ましい。厚み斑の自動調整にはダイのリップボルトを機械的に回転させて、リップ間隙を調整する方式やダイリップに一定間隔で加熱装置をつけ、それらを個別に温度調整して溶融樹脂の粘度の温度変化を利用してフィルム厚みを調整する方式(温度リップ)を採ることができる。厚み斑の調整のし易さから、機械的なリップ開度調整法よりも温度リップを用いるのが好ましい。特に広幅のフィルムを製造する場合には機械的に動かす部分の無い温度リップを用いるのが好適である。
(冷却ロールについて)
ダイより押出した溶融樹脂フィルムを均一(厚み斑を悪くしない、筋状斑を出さない、レターデーションを大きくかつ不均一にしない等)に回転する冷却ロール面上に押出す。この際に用いる冷却ロール(冷却装置)は直径300mm程度の小径ロールを数本組み合わせた方式のものや(図1)、直径800mm程度の大径のロールで冷却する方法(図2)など公知の方法を適用できる。
この冷却ロールの表面温度を均一にするためにロールの内部に冷却媒体として温度を制御した水を流し冷却することができる。均一に冷却するための冷却媒体を流す流路は向流とすることが好ましい。水温は20℃〜70℃であることが好ましい。冷却ロール表面は硬質クロームメッキ等を施し、それをさらに超仕上げ(スーパーフィニッシユ)した、表面が鏡面であるものを用いることが好ましい。このような表面の表面粗さRaは約1〜5nmである。溶融ポリカーボネート樹脂はこの超鏡面に吐出され密着され冷却されるから、フィルム表面の表面粗さはこの冷却ロールの表面粗さを転写する。この冷却ロールの表面は表面粗さをこのように維持するだけではなく、表面に傷や付着物をつけないように維持する。なお、次工程の冷却したフィルムを引き取る引取りロール表面も傷や付着物のない平坦な表面とする。本発明の光透過層用フィルムの表面粗さRaは両面ともに1〜5nmの範囲である。
ロールの直径は800mm程度、ロールの面長は1500mm程度のものとするのが好ましい。ロールの直径が800mm程度の場合、例えば、100μm厚みのフィルムを毎分数十メートルの速度で冷却できる。
(溶融フィルムの冷却ロールへの密着冷却法)
ダイから押出した溶融樹脂は冷却ロール上で固化されフィルムを作製する。この際、上述したように押出しダイのダイリップ先端部と冷却ロール面との距離を10〜30mmの範囲とすることが好ましい。ダイリップから吐出された樹脂は冷却ロールのほぼ頂点に流下するようにする。
フィルムを冷却ロールに密着させて均一に冷却するために、本発明ではフィルムを全幅に渡り静電密着法によって冷却ロールに密着させ、フィルムを急冷固化させる方法が好ましく採用される。静電密着のためにはプラス極に従来公知のSUS製の金属ワイアーを用いることができる。この金属ワイアーをフィルム面上約4〜7mm離れた空間に適度な張力で張ればよい。金属ワイアーの設置位置や架ける電圧は試行錯誤で容易に決めることができる。この静電密着の条件はフィルムの厚み斑や表面欠点の発生に影響する。静電界の電圧は数キロボルト〜10キロボルトである、密着が良好に行われるときは数ミリアンペアーの電流が流れる。電圧が低すぎる場合、静電密着が起こるところとそうでないところが斑状に生じて、結果としてフィルムの厚み斑が極端に悪くなる。また、電圧が高すぎる場合は溶融状態から冷却されて固化するフィルムが絶縁破壊を起こして、フィルムの製造を中断せざるを得なくなる場合がある。電源は直流電源を用い、静電ワイアーをプラスの電極に接続し、冷却ロール側をアースに接続する。本発明ではフィルムの静電密着の調整範囲を広げ、その効果を安定化させるためにポリカーボネート中に例えばNaイオン等の金属イオンを、フィルムの光学特性を劣化させない程度の微量加えても良い。
また、ダイリップの下面は凹凸がなく平坦化することが好ましい。ダイリップの下面を平坦化することによって静電気力が均一にフィルム密着力として働くようになる。
フィルムを冷却ロールに密着させて均一に冷却するために、本発明では冷却ロール表面に液体を塗り、その液体薄膜上に溶融フィルムを押出しロールに密着させ冷却して引き取る方法も好ましく採用される。ダイと冷却ロールの配置は静電密着法と同様にして、例えば、ロールコーターにより数μm程度〜数十μmの厚みの水の薄膜を冷却ロール表面に塗布して、その水膜面上に高分子フィルムを密着させて冷却固化させる。水膜が厚すぎる場合は冷却固化された高分子フィルムがロール面上を滑るので引取りがうまく行かないので注意する。また、水の膜が薄すぎる場合はフィルム表面が冷却ロールにくっついて取り除くのが難しくなる。水の膜厚みは試行錯誤法によって決めることができる。
本発明においては、冷却ロールへの全面静電密着法と全面水塗布法を併用しても良い。これらの併用の場合は静電密着に使う冷却ロール表面と静電ワイアー間に架ける電圧を下げることができるので、密着時のフィルムが薄い時などのようにフィルムが絶縁破壊を起こし易いような条件では均一密着の範囲を更に広げることができる。
こうして得られた溶融押出しフィルムは幅方向の大きなうねり状の厚み斑が無いばかりか、筋状の表面欠点も無い。特に冷却ロールに水を塗布して製膜した場合にはダイ筋などの欠点がないフィルムを作ることができる。これは、この密着の雰囲気に水が存在することによってダイリップ先端などに付着したポリカーボネートが加水分解され取り除かれるためではないかと思われる。
(フィルム引取り並びに複屈折の低下方法)
冷却ロールで冷却された溶融押出しフィルムは通常引き取りロールを介して引き取られる。得られたフィルムは、幅方向の中央部の面内レターデーション(複屈折)が比較的小さくても、その両端に近いところの複屈折が大きくなる、いわゆる鍋底型のレターデーション分布になることが多い。これはポリマーの流動配向による複屈折が押出しの幅方向で異なっているためと推定される。ダイ先端部と冷却ロールとの間隔を本発明のように狭くしても、エアーギャップ間でのダイから押出されたポリカーボネート樹脂フィルムの狭まりを完全に無くすことはできないうえ、いわゆるポリカーボネートの流動配向によって複屈折を生じるから、フィルム幅方向でこのレターデーションを小さくかつ均一にすることは難しい。従って、次工程でフィルムの熱処理を行うことが好ましい。かかる熱処理を行うことによって、フィルム幅が1,000〜1,500mmでその幅方向全てにおいて、レターデーションが10nmより小さいフィルムを得ることができる。
フィルムの熱処理はフィルムを搬送しながら所望温度の熱風を調整した熱処理装置に通す方法が好ましく採用される。この工程を行うことにより、簡便に溶融押出しフィルムの複屈折(レターデーション値)を光透過層用ポリカーボネートフィルムの所望の値まで小さくすること並びにフィルムの面内で均一にすることができる。
熱処理温度は溶融押出しされたポリカーボネート樹脂のガラス転移温度をTgとするとき、(Tg−10)℃〜Tg℃の範囲とすることが好ましく、(Tg−10)℃〜(Tg−2)℃の範囲とすることがより好ましい。また、その際フィルムにかかる張力(搬送張力)は低いほど好ましい。そして、この熱処理前のレターデーションが低い場合にはより高い熱処理温度とより低い搬送張力の条件を選択する。より詳細には、熱処理時のフィルム断面積あたりの張力は0.5〜3Kg/平方センチメートル、好ましくは0.5〜2.8Kg/平方センチメートル、より好ましくは0.5〜2.5Kg/平方センチメートル、さらに好ましくは0.5〜1.8Kg/平方センチメートルである。張力は低ければ低いほど好ましいが、フィルムを搬送するのでゼロにすることはできず、1Kg/平方センチメートル以上がより好ましい。また、熱処理時間は我々の実験によれば処理するフィルムの全断面の温度が加熱する熱風の温度とほぼ同じになるまで加熱できれば充分である。厚み100μmのポリカーボネートフィルムを熱風で加熱する時の概算によれば、熱風とその熱風中に導入されたフィルムとがほぼ同じ温度になる加熱時間は約30秒である。したがって、少なくとも30秒以上の時間フィルムが滞留することができるような熱風オーブンの大きさとすることが必要である。また、熱処理時間は1時間以内で充分である。
フィルムに掛かる張力は、熱処理のオーブンにフィルムを搬送させる時の出口の張力を張力検出器で測定することができる。高分子フィルムを高温・低張力下で熱処理する設備としては、(i)空気オーブン内に設置した複数本のロールにフィルムを架けて搬送する、いわゆるロール懸垂型の熱処理装置、(ii)空気浮遊式の熱処理機で、オーブン内では高速の空気を上下からフィルムに吹き付けるようにして、フィルムがロール表面等に非接触で熱処理する装置、(iii)大型のドラムの表面に多数の小穴を開けて、その子穴から熱風が吹き出し、この上にフィルムを架けてドラム表面からわずかに浮上させて熱処理する装置が挙げられる。(ii)の方法は意外にもフィルムに張力がかかりやすくフィルムの複屈折を低下させるのが難しい。サインカーブ状になったフィルムを炉内から引き出すための力が過度に加わるためと思われる。
このようにいくつかの設備は従来からあるが、本発明で用いる熱処理の装置は上記(i)のロール懸垂型を用いるのがもっとも好ましい(図1参照)。フィルムに掛ける張力とは熱処理オーブンに入ったフィルムを熱処理後に引き取る張力であり、この張力にはフィルムをロールに掛けて走行させる時の全てのロールの回転抵抗の和(熱処理ゾーンでフィルムに掛かるロールの回転抵抗の全てと、その直後の冷却ゾーン(冷却装置)11でフィルムに掛かる力とフィルムを走行させるために必要な張力を含んでいる。そしてこの張力は熱処理装置に入る直前を起点として、冷却終了後のニップロールに掛ける張力を測定して制御する。すなわち、フィルムに掛かる張力は装置の入り口前ニップロール6,7と出口後ニップロール13、14で張力検出器で測定して制御することができる。
熱処理のフィルム張力を低下させるためには、懸垂型熱処理機内に用いるロール10はフィルムが掛かった場合に極めて弱い力で回転できるようにする必要がある。このロール一本の回転力は50g以下、より好ましくは30g以下、さらに好ましくは20g以下である。このためには自由回転ロールの支持部分がロールのシャフトの熱膨張によって回転が不良になったり、焼きついたりしないような構造としなければならない。またロールが弱い回転力で回転できるような構造をとるようにしなければならない。この対策の一つとしては、ロールの支持体を熱処理機の外に設置したり、滑動部のグリースが温度が大幅に変化してもその硬さが変わって回転しなくなったりしないような温度に保つ構造上の注意が必要である。
熱処理用ロール10はその回転抵抗を極力小さくするために軽いアルミ等の材質を用い、表面硬度を維持するためにクロムメッキなどを施すことも好ましい。そしてロールの表面の粗さは超鏡面とするのが、熱処理されるフィルムにスリキズや転写などの欠点を生じ難いので好ましい。また、本発明では、ロールは直径は95mm以上150mm以下とし、その外殻をアルミニウムで作成し、ロール全体を軽くし、低抵抗で回転するようにすることが望ましい。こうして懸垂型熱処理機内でフィルムに掛かる抵抗を3Kg/cmに設定することが好ましい。なお、このロール10の直径を上記範囲で変えることによって、万が一フィルム面に擦り傷が発生するようなトラブルが起こった場合、発生源となったロールを特定し易いので好ましい(擦り傷のピッチから傷発生ロールを比較的容易に特定できる)。
熱処理用ロール10の水平面間距離は95mm〜150mmが好ましい。上下のロールの間隔は2m以下、より好ましくは1.7m以下とする。ロールの水平面間隔が小さすぎたり上下のロール間隔が大きすぎると、ロールに掛けられた走行するフィルムがその低張力のために、面同士が擦れ合ったり、融着したりして、フィルムに表面欠点を生じたり製膜を中断したりすることがある。また、ロールの直径や面間距離が大き過ぎると乾燥機を不当に大きくしなければならないという欠点がある。また、上下のロール間隔が大きすぎるとロールに掛るフィルムの自重での張力によりレターデーションを低下させる熱処理の効果が減殺されることがある。
本発明に適用するのに好ましいロール懸垂型熱処理機では、フィルム全体を均一に熱処理して複屈折を小さくかつ均一にするために、オーブンの天井からパンチングプレートを通して、熱風を流下させるようにして、そしてこの熱処理装置の床にパンチングプレートを設置して加熱空気を吸引し、熱処理機8の外部で温度を再調整して循環させる方式とするのが好ましい。このときの風速は数m/秒以下である。
熱処理が済んだフィルムを引き続いて同様なロール懸垂型のフィルム冷却ゾーン11を通すことが好ましい。ここでのフィルム冷却の熱風温度は80〜50℃とすることが好ましく、次いでフィルムを室温域に取り出す。このようにしてフィルムを徐冷するとフィルムの急激な長さや幅の変化が生じないためフィルムに皺が寄ってスクラッチ(擦り傷)を生じたり走行不良に陥るなどの問題を防止できる。
(フィルムの表面処理)
本発明のフィルムは、帯電防止剤の塗布やハードコート処理など公知の表面処理を施すことができる。
本発明に係るポリカーボネート樹脂フィルムは光ディスクの光透過層用として好ましく使用される。光記録層の表面に本発明の光記録層を積層した光ディスクは、取り扱う際の表面破損防止や傷付け防止のための処理が施されることが好ましい。このために本発明の光透過層フィルムの少なくとも片面に従来公知の方法により表面硬化処理(ハードコート処理)がされていても良い。また、コロナ処理及びアンカーコート処理によって、本発明のフィルム表面の表面エネルギーを上げて、接着性等を上昇させる処理等を公知の方法で適宜実施することができる。このようないわゆる後加工処理は、一度巻き上げたロールを別の工程で後加工処理し、再びプロテクトフィルムと共巻して巻き上げロールとし、次の加工工程へ送ることができる。
(フィルムの巻き取り並びにフィルム巻層体の形成)
本発明の光透過層用フィルムは幅約1m程度のロール状に巻き上げた巻層体の状態で、または、これを更にスリットしてより狭幅の巻き上げロールとして使用に供することができる。
ロール状に巻き上げる方法としては、(i)広幅フィルムの両端部に狭い幅で機械的または熱的などの方法で凹凸をつけて、それより内部のフィルム面を離間させて擦過を防ぎ巻き取るいわゆるナーリング付与巻取り、(ii)他の材料の狭幅フィルムと両端部のみを重ね巻きしてそれより内部のフィルム面を擦過から保護する共巻き(または重ね巻き)、(iii)他の高分子フィルムと本発明のフィルムとを全面重ね巻きする方法、(iv)表面に弱粘着層を持ったプロテクトフィルムと本発明の光透過層フィルムとを重ね巻きして使用に供する方法等を採用することができる。これらの光透過層用フィルム表面の保護方法は使用に供する条件などによって好ましい方法を選択する。フィルム巻上げロール(巻層体)のフィルムを光透過層として使用する前に、表面処理やロールを狭幅にスリットするような場合には、本発明の光透過層は片面に弱粘着性を持つようなプロテクトフィルムで表面を保護した状態で用いるのが好ましい。
プロテクトフィルムを用いた巻上げ体については上記特許文献3や特許文献4に記載されている。本発明の光透過層フィルムは一般にはプロテクトフィルムと弱く貼り付けられた状態で円盤状に打ち抜いて後、光ディスク製造装置の狭い搬送工程を通って搬送されて光ディスクの光記録層に貼り付けられる。この貼り付け工程において、打ち抜かれたフィルム状円盤がカールを起こして、搬送装置の構成物に引っかかりトラブルを生じることがあると指摘されている。そして、このカールが10mm以下であればこの問題は回避されることがわかっている。
一般的にはプロテクトフィルムはヤング率の低い、比較的やわらかいフィルムを基材として、表面が弱粘着性を持つように加工されたものが多用されている。これらのプロテクトフィルムを本発明のフィルム製造工程中において、フィルムに重ね巻きするが、まず、プロテクトフィルムを巻きだし機にセットして巻きだす。この際、巻きだし張力でプロテクトフィルムが引っ張られて変形しないように極力弱い力で巻きだすようにしなければならない。このようにして巻きだしたプロテクトフィルムを本発明の光透過層のフィルムに合流させて、プロテクトフィルムの粘着面を光透過層用フィルムの面に向けてニップロールで弱くニップして貼りあわせ、その後巻き取る。また、プロテクトフィルムと貼りあわせた複合体もやはり弱い巻取り張力で巻き取る。巻き取り時の温度や張力の条件が巻き上げロールを巻きだして円盤状に打ち抜いた後のカールの大小に影響する。さらに、巻芯(巻取りコア)としては、大きな径のものを用いできるだけ低い張力で巻き取り、巻き取り後のロールフィルムに保管時の巻締り力などによるいわゆる光透過層用フィルムの歪発生を極力小さくしなければならない。
カールを小さくするにはプロテクトフィルムとして変形しにくい、ヤング率の比較的高い二軸延伸熱固定したポリエステルフィルムを用いることも出来る。
また、ロールを保管しておく際にいわゆる巻き締りによって光透過層のフィルムを微小に変形させたりするため、本発明のフィルムを巻きだして使用する際に、予備的に熱処理を実施して巻き上げ体として保管した時の光学的な歪を除去することもできる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例における本発明の測定、効果の評価は次の方法によった。
(1)粘度平均分子量の測定方法
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量Mは、濃度0.7g/dlの塩化メチレン溶液の20℃での粘度測定から極限粘度[η]を求め、下記式より算出した。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
(2)フィルム厚みの測定方法
プロテクトフィルムを積層していないポリカーボネートフィルムの巻き取り方向に1.0mの全幅分(1.3m)のサンプルを採取した。その幅方向(巻き取り方向と直角方向)と巻き取り方向とに10cm×10cm方眼(幅方向の端数が5cmを越える場合にはその部分も測定サンプルとした)にフィルムを区切り、この各々のほぼ中央部で、その厚みを(株)ミツトヨ製のマイクロメーターを用いて測定した。そして、測定点130点の厚みの平均値を求めて、これをフィルムの厚みとして表示した。
(3)フィルム厚み斑の測定方法
上記(2)のマイクロメーターによる測定方法では、測定点以外に存在する可能性のある厚み斑、例えば広幅の帯状や細い筋状の厚み斑を見逃す恐れがあるため、厚み斑をアンリツ(株)製フィルムシックネステスターKG601を用いて連続測定した。測定フィルムのサンプリングは次のように行った。すなわち、フィルムの巻き取り方向に5cm間隔で全幅分のサンプルを連続して20枚(フィルム巻取り方向に合計100cmを)切り出した。このそれぞれの厚み分布を上記フィルムシックネステスターで測定し、記録紙に記録した。かくして記録された厚みの最大値と最小値との差(厚みの範囲)を上記20枚のフィルム(5cm×130cm)について求め、この内から厚みの範囲が最大であるものをこのフィルムの平均厚みからの厚み斑として表示した。
(4)熱寸法変化率
ポリカーボネートフィルムの幅方向(フィルム幅はほぼ1.3m)3ヵ所から適当な大きさの親サンプルを採取した。そして、更にこの各親サンプルより熱寸法変化率測定用サンプル10個ずつ、計30個作成した。熱寸法変化率測定用サンプルの大きさは、各親サンプル10個の内5個については,フィルムの巻き取り方向を150mm、それに直角な方向を10mmとし、残りの5個については、フィルムの巻き取り方向を10mm、それに直角方向を150mmとした。そしてそれぞれのサンプルについて、150mm長さ方向に,熱寸法変化率測定のための標点を、100mm間隔で印した。かくして、フィルムの巻き取り方向15点、それに直角方向(幅方向)に15点の測定用サンプルを準備した。
測定用のサンプルを140℃の恒温槽にて無荷重下でつりさげて1時間処理した後、室温に取り出し冷却して後、標点間隔を測定した。寸法の測定は、恒温恒湿下、23℃、55%RHの条件下で、読取り顕微鏡を用いて実施した。寸法の変化率は140℃熱処理前後の寸法から次のように、巻き取り方向の15点、幅方向の15点について求めた。そしてその最大値を熱寸法変化率として表示した。
熱寸法変化率=[{(処理前の寸法)−(処理後の寸法)}/(処理前の寸法)]×100(%)
(5)全光線透過率
ポリカーボネートフィルムの幅方向3ヵ所から約300mm平方のサンプルを採取した(フィルム幅はほぼ1.3m)。サンプルの全光線透過率を日本電色工業(株)製の色差・濁度測定器COH−300Aを用いて測定した。各サンプルについて5点測定し、幅方向3サンプルについての計15点の平均値を全光線透過率とした。
(6)面内レターデーション値(Re.)の測定
ポリカーボネートフィルムの幅方向で巻き取り方向の長さ40mmの短冊状サンプルを、巻き取り方向に3箇所、50cm間隔で採取した。ついで、この短冊状フィルムを40mm間隔に切って40mm平方の測定用サンプルを作成した。すなわち、フィルム全幅方向の長さ1300mmから33個、短冊状サンプルが3個あるので、全部で99個の測定用サンプルを得た。これらのサンプルにつき面内レターデーション値(Re.)を測定した。数値の表示はRe.値の範囲とし、その最小値〜最大値として表示した。
測定機は王子計測機器(株)製の複屈折率測定器である商品名KOBRA−21ADHを使用して、光線をポリカーボネートフィルム面に垂直方向に入射し面内レターデーションRe.値を測定した。
(7)厚み方向のレターデーション値Kの測定
上記(6)項の測定と同様にサンプリングしKOBRA−21ADHで測定した。ポリカーボネートフィルムサンプルをその遅相軸または進相軸で回転させて入射角度を変えてレターデーションを測定し、これらのデータから屈折率nx、ny並びにnzを計算した。更にこれらの値からK値=((nx+ny)/2−nz)×dを計算した。
ここで、nxは巻き取り方向の屈折率を、nyは巻き取り方向に直交する方向の屈折率を、nzは厚み方向の屈折率を表し、dは測定フィルムの厚み(単位はμm)を表す。なお、K値の単位は、上記の計算の時はμmで算出されるが、これを表示する時にはnm単位に換算している。本願明細書においてK値の最大値とはそれらの中での最大値を意味する。
(8)中心線平均表面粗さ(Ra)の測定
中心線平均表面粗さ(Ra)とはJIS−B0601で定義される値であり、本願明細書における数値は、(株)小坂研究所の接触式表面粗さ計(Surfcorder、SE−30C)を用いて測定した。
Raの測定条件は下記のとおりであった。
触針先端半径:2μm
測定の圧力:30mg
カットオフ:0.08mm
測定長:1.0mm
上記(4)の親サンプルと同様にして、フィルムの幅方向3箇所についてサンプリングし測定に用いた。同一試料について5回繰り返し測定し、その測定値(μm単位による小数点以下4桁目までの値)に付いて、最も大きな値を一つ除き、残りの4つのデータを得、全3箇所のデータである12個の値の平均値の小数点以下4桁目を四捨五入して、小数点以下3桁目までをnm単位で示した。
(9)異物および表面欠点の測定
マスキングフィルムと共巻きする直前のポリカーボネートフィルムを約1平方メートルサンプリング(フィルム1.3m幅×押出し方向長さ約1m)して、測定に供した。
(i)熱劣化物等の塊状異物
サンプリングしたフィルムを塩化メチレンに溶解させて、低濃度(1重量%)のポリカーボネート溶液としこの異物を10μmフィルターで濾別した。このものを顕微鏡観察して最大長が20μm以上の大きさのものを計数した。また、異物の素性(原因物)はFT−IRとEPMAで定性分析して確認した。
(ii)フィルム表面の突起
大きな欠点はフィルム表面を斜め上方から光照射し、その反射光で目視観察して見つけた。この欠点部をキーエンス社製のレーザー顕微鏡を使ってその高さを測定した。また、目視では見つからない小さな欠点はフィルム5cm角をサンプリングし透過顕微鏡観察で欠点を見つけ、この周りに目印をつけて更にレーザー顕微鏡で観察して、欠点の高さ、広がり等を測定した。最大長が10μm以上及び高さが3μm以上のものを計数した。
(iii)打痕
打痕の出現頻度は1平方メートルのフィルムで計数した。打痕は斜方照明目視で最大長が200μm以上のものを計数した。打痕は、小さなものはフィルム面を正面から見た場合、目視では殆ど見つけることができないが、斜方照明目視で容易に見つけることができる。この方法は黒色の平板上に広げたフィルム上斜め方向から光を照射し、その反射光を目視することによって微小な光の反射の不均一部分を見つける方法である。
(10)カールの測定
フィルム幅方向に均等に150mm角のサンプル7個を切り出した。プロテクトフィルムが弱い力で粘着されているフィルムの場合は、そのまま150mm角に切り出した。このプロテクトフィルム付サンプルのプロテクト面を下にして、ポリカーボネートフィルム面を上に向けて帯電防止処理してある平板上に置いた。この際、フィルムに静電気が発生して、測定が異常にならないように注意した。この状態でフィルムを5分置き、各々のフィルムサンプルの四隅の浮き上がり量をスケールで測定した。四隅の内最大の値をカール値とした。
[実施例1]
帝人化成(株)製のビスフェノールAのホモポリマーである、光学グレードのポリカーボネートペレット(商品名AD−5503、Tg;147℃、粘度平均分子量M;15,000)を減圧乾燥式の棚段乾燥機を用いて、120℃で3時間乾燥した。これを110℃に加熱した溶融押出機の加熱ホッパーに投入して、290℃で溶融押出しした。溶融ポリマーの異物を除去するためのフィルターは平均目開きが10μmのSUSの不織布製のディスク状のものを用いた。濾過後の溶融樹脂を290℃に設定したI−ダイにより、回転する冷却ロール面(表面温度60℃に設定)に押出した。用いた冷却ロールは直径が800mm、ロール面長が1800mmであった。ロールの表面温度が均一になるように冷媒が流れるようにした構造のものを用いた。押出しダイのリップ幅は1500mm、リップ間隙は約2mmであった。ダイリップはその下面に凹凸がない平坦なものを用いた。
押出しダイから流下する樹脂を冷却ロールの頂上部に流下するようにして巻き掛けた(図2参照)。ダイリップ先端部と冷却ロール面との間の距離は25mmとした。フィルムを均一に冷却して引き取るために、フィルム全幅を静電密着法を用いて冷却ロール面に密着させた。静電密着のための電極には太さ約180μmφのSUSのピアノ線を清浄に磨いたものを用いた。このピアノ線に直流電源のプラス電極をつなぎ、冷却ドラム側は接地した。印加電圧は7KVとした。かくして厚みが97μmのフィルムを冷却ロール回転速度10m/分で、テイクオフロールを介して引き取った。
さらに引き続いて、フィルムをロール懸垂型熱処理機に通膜して熱処理した。ロール懸垂型熱処理機内に100mmφのロールを上下交互に配置した。上下ロール間距離を1.6m、ひとつ置いた隣のロールとの距離をロール径と同じ100mmφとした。そして、処理すべきフィルムが、このロール懸垂型熱処理機内のオーブン中にとどまる長さを約50mになるように作成した(滞留時間60秒)。熱処理機内のオーブン中の熱風温度は142℃、オーブン出口でのフィルム張力は3.0Kg/(厚み97μm×フィルム全幅1440mm)であった(断面荷重あたり2.1Kg/平方センチメートルであった。)。オーブンを出た後のフィルムを60℃以下まで同様にロール懸垂型処理機で冷却してのち室温に取り出した。
熱処理後のフィルムの両端部を70mmずつ切り除いて1300mm幅のフィルムとして、厚さが29μmのポリエチレンテレフタレートの二軸延伸、熱固定フィルム表面を弱粘着加工したプロテクトフィルムとともに500mを共巻して、巻層体を完成させた。
得られたフィルムの特性は以下のとおりであり、光透過層用途として優れたものであった。
フィルム厚み並びに厚み斑;平均厚みは97μm、厚み斑範囲は±1.5μm
この厚み斑はフィルムの幅方向においてなだらかに変化するような斑であった。このフィルムには筋状の斑または筋状の表面欠点は検出されなかった。(平行光源をフィルムに投射してそれをスクリーンに映し細かい筋状の欠点を探したが見つからなかった。)
複屈折、レターデーション;幅方向の面内レターデーション分布は平均値4nm、最大値5nm、最小値3nmであった。また厚み方向のレターデーションは80nmであった。
内部異物;最大長が20μm以上の内部異物が1個/平方メートル
表面欠点;最大長が10μm以上、高さが3μm以上の表面欠点が2個/平方メートル、最大長が200μm以上の打痕状の表面欠点が0個/平方メートル
フィルムの熱寸法変化率;0.06%
全光線透過率;90%
カールの量;カールの量の最大値は10mm
フィルムの表面粗さ;両面共に2nm
フィルムの線膨張係数;0.7×10−4/℃
フィルムの吸湿率;0.2%(23℃水中、24時間)
[実施例2]
実施例1で用いたポリカーボネート樹脂、溶融押出し装置、フィルム冷却ロールをこの場合にも適用した。なお、静電密着法を用いる代わりに本実施例ではダイより溶融押出したフィルムの冷却ロールへの密着方法として冷却ロールへ水を塗布する方法を適用した。冷却ロールに水を塗布する位置はフィルムがテイクオフロールを介して引き取られた後、押出しダイからの溶融押出したフィルムが着地するまでの間とした。冷却ロールへの水の供給方法としては、水の汲み上げロール、計量ロール及び水膜を冷却ロール面に転写する3本ロール方式の塗布装置を用いた。
押出しダイから流下する樹脂を冷却ロールの頂上部に流下するようにして巻き掛けた。ダイリップ先端部と冷却ロール面との間の距離を20mmとした。こうして厚みが50μmのフィルムを冷却し、20m/分で引き取った。この後、引き続いてフィルムをロール懸垂型熱処理装置に送り込み、オーブン中の熱風温度を140℃とし(滞留時間60秒)、この後フィルムをロール懸垂型熱処理装置内で60℃まで冷却して室温に取り出した。この際オーブン出口でのフィルムのニップ張力は1.5Kg/(厚み50μm×幅1400mm)(断面荷重は2.1Kg/平方センチメートル)であった。このフィルムを実施例1の方法と同様にしてプロテクトフィルムと注意しつつ重ね巻し、500m巻のロールフィルムを作製した。
得られたフィルムの特性は以下のとおりであり、所定の特性を満足し光透過層用途として優れたものであった。
フィルム厚み並びに厚み斑;平均厚み50μm、厚み斑範囲は±0.8μm
このフィルムには筋状の斑または筋状の表面欠点は検出されなかった。また、平行光源をフィルムに投射してそれをスクリーンに映し細かい筋状の欠点を探したが、この欠点は見つからなかった。
複屈折、レターデーション;幅方向の面内レターデーション分布は平均値4nm、最大値5nm、最小値2nmであった。また厚み方向のレターデーションは80nmであった。
内部異物;最大長が20μm以上の内部異物が1個/平方メートル、
表面欠点;最大長が10μm以上、高さが3μm以上の表面欠点が0個/平方メートル、最大長が200μm以上の打痕状の表面欠点が0個/平方メートル
フィルムの熱寸法変化率;0.06%
全光線透過率;90%
カールの量;カールの量の最大値は8mm
フィルムの表面粗さ;両面共に2nm
フィルムの線膨張係数;0.7×10−4/℃
[実施例3]
粘度平均分子量18,000(Tg;149℃)のポリカーボネートペレットを用いた以外は実施例1と全く同様の製造条件にしてフィルムを得た。得られたフィルムの特性は下記のとおりであった。
フィルム厚み並びに厚み斑;平均厚みは97μm、厚み斑範囲は±1.5μm
このフィルムには筋状の斑または筋状の表面欠点は検出されなかった。
複屈折、レターデーション;幅方向の面内レターデーション分布は平均値5nm、最大値7nm、最小値4nmであった。また厚み方向のレターデーションは80nmであった。
内部異物;最大長が20μm以上の内部異物が3個/平方メートル
表面欠点;最大長が10μm以上、高さが3μm以上の表面欠点が1個/平方メートル、最大長が200μm以上の打痕状の表面欠点が0個/平方メートル
フィルムの熱寸法変化率;0.08%
全光線透過率;90%
カールの量;カールの量の最大値は10mm
フィルムの表面粗さ;両面共に2nm
フィルムの線膨張係数;0.7×10−4/℃
[実施例4〜6、比較例1〜2]
実施例1と同様にして光透過層用フィルムを作製した。その際、熱処理工程におけるフィルムの熱処理温度とそのときの張力を表1に示したように変更した。この時のフィルム特性を表2に示した。
実施例4〜6の熱処理条件では、熱処理温度を(Tg−10)〜Tgとし、熱処理の張力を選択すればレターデーションの小さなかつ均一なフィルムを得ることができた。なお、ここで用いたポリカーボネート樹脂のTgは147℃であった。比較例1では熱処理温度が(Tg−10)℃よりも低い温度で、かつ低い張力で処理する場合を示している。この場合には温度が低すぎて分子鎖の緩和が起こりにくいためレターデーションを所望の値まで低下させることはできなかった。また、比較例2では熱処理温度がTgよりも高い温度で、比較的低い張力で熱処理した場合を示しているが、この条件の場合は温度がTgよりも高すぎて、かなり弱い張力でも分子鎖が熱処理時に引き伸ばされて、複屈折・レターデーションが上昇した。
Figure 2006277914
Figure 2006277914
[実施例7]
帝人化成(株)製のビスフェノールAのホモポリマーであるポリカーボネート樹脂パウダー(粘度平均分子量M;24,600、Tg;153℃)を、充填塔型乾燥機にて乾燥(乾燥温度125℃;乾燥時間6時間)した。次に、この樹脂パウダーを溶融し、極細金属繊維からなる濾過装置(エレメントの平均目開きが10μm)を用いて樹脂中の異物を取り除き、次いで、1800mm幅のTダイ(設定温度282℃)1から樹脂を吐出量127Kg/時で押出した。溶融押出したフィルムは、図1に示したように第1冷却ロール2、第2冷却ロール3及び第3冷却ロール4及び移送ロール(ダンサーロールも兼ねる)5を経て通膜し冷却した。
Tダイの樹脂吐出部から第1冷却ロールの溶融フィルムが接触するまでの距離、エアーギャップは135mmとし、フィルムの両端部(フィルム端面から各々約50mmの範囲)について、静電ワイヤー(印加電圧=10KV;印加有効長さ=45mm)にて印加し、フィルムの両端部を冷却ドラムに密着させる方法によってフィルムを得た。
第1、第2、及び第3冷却ロールの直径はいずれも300mmの鏡面ロール、移送ロール5は直径が120mmの鏡面ロールである。第1冷却ロール2の温度を140℃、第2冷却ロール3の温度を152℃、第3冷却ロール4の温度を150℃とした。移送ロール5は内部に50℃の熱媒を循環させて定温に保った。鏡面ロールの表面速度は10m/分として、フィルムの厚み95μmのものを作成した。
次に、このフィルムを熱処理するため直ちにロール懸垂型熱処理装置8に通膜した。この装置においてフィルムに掛かる張力を2.5Kg/cmとなるようにニップロール13とガイドロール14とで張力を検出し自動調整した。また、熱処理装置内の熱風温度を143℃±0.5℃となるように調整した、さらに、この処理装置内で用いているフィルムの懸垂用ロール10も熱風温度と同じになるようにした。フィルムのこの装置内における滞留時間を10分とし、次いで引き続いてフィルムを65℃に温度を調整したフィルム冷却室11に送り冷却した、この後フィルムを冷却室から外部室温に出し、溶融押出し時に冷却ロールに密着されて表面性が劣るフィルム両端部を75mmずつ切除して後プロテクトフィルム15と重ねあわせ、両者を共にロール状18に巻き取った。かくして、厚み斑が±1.5μmであり、中心線平均表面粗さが2nm、フィルムの幅が1500mmの筋状の欠点がなくかつ表面欠点の無い透明性、均一性に優れた光学用フィルムを得た。このフィルムのレターデーション値は平均値:5nm、最大値:7nm、最小値:2nmであった。製膜条件を表3に、フィルム特性を表4に示した。
[比較例3]
実施例7における熱処理装置8室と11室の温度を室温とし、ガイドロール9からガイドロール12に、フィルムを懸垂ロール10を通さずに直接導き、ニップロール13/ガイドロール14フィルムを搬送した。次いで、このフィルムにマスキングフィルム15を重ねてロール16と17間でニップして貼りあわせロール状18に巻き取った。他の条件は実施例1と同様にした。この場合得られたフィルムのレターデーション値は平均値が20nm、最大値が32nm、最小値が10nmであった。また、厚み斑に優れ筋状の欠点の無い表面欠点の無い透明性に優れ均一性に優れたものが得られた、しかし、このフィルムは幅方向両端部でレターデーションが高く(いわゆるなべ底型のレターデーション分布を示した)、レターデーションの均一性が悪く、レターデーションが均一でかつ小さな特性を満足するものが得られなかった。製膜条件を表3に、フィルム特性を表4に示した。
[実施例8]
帝人化成(株)製のビスフェノールAのホモポリマーであるポリカーボネート樹脂パウダー(粘度平均分子量M;28,000、Tg;154℃)を、充填塔型乾燥機にて乾燥(乾燥温度125℃;乾燥時間6時間)した。スクリュー径が90mmの単軸押出機を用いて樹脂パウダーを溶融押出し、この溶融樹脂を1,800mm幅のコートハンガー型Tダイ(設定温度280℃)により、吐出量175Kg/hrで回転する冷却ロール面の頂上部に流下させた(図2参照)。冷却ロールは直径800mm、幅2,000mmの熱媒により温度調節可能な冷却ロールを用いた。
Tダイの樹脂吐出部から冷却ロール101の溶融フィルムが接触するまでの距離、すなわちエアーギャップは135mmとし、走行方向の張力はテイクオフロール102の直後に設けた張力調整ロール(ダンサーロールとも呼称する)103を通して調整した。更に、フィルム状に押出された溶融フィルムが冷却ドラム101に接触し、固化する過程のフィルムの両端部(フィルム端面から各々約50mmの範囲)について、静電ワイヤー(印加電圧=10KV;印加有効長さ=45mm)にて印加し、フィルムの両端部を冷却ドラムに密着させる方法によってフィルムを得た。製膜速度は15m/minとし、フィルムの厚みは90μmに調整した。
次いで、得られたポリカーボネートフィルムをロール懸垂型熱処理装置8に通膜した。熱処理の熱風温度は145℃、張力は1.5Kg/cm、熱処理時間5分であった。この後フィルム冷却室11を通膜し、室温に取り出して冷却した。溶融押出し時に冷却ロール101に密着されて表面性が劣る端部を除去し、全幅1,500mmのフィルムを得た。得られたフィルムのレターデーションは平均値が8nm、最大値が10nm、最小値が7nmであった。フィルムにはダイ筋状の斑は見られず、厚み斑は±1.5μmであった。中心線平均表面粗さRaはフィルムの両面ともに3nmであった。製膜条件を表3に、フィルム特性を表4に示した。
[実施例9および10]
帝人化成(株)製のビスフェノールAのホモポリマーであるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量M;15,000、Tg;147℃)を、充填塔型乾燥機にて乾燥(乾燥温度125℃;乾燥時間6時間)した。樹脂を溶融し1,800mm幅のTダイ(設定温度280℃)から押出し、直径が300mmの三本の鏡面冷却ロールを用いて冷却した(図1参照)。溶融押出しダイの先端と第1冷却ロールとのエアーギャップを50mmとし、第1冷却ロール面上でフィルム両端部のみを静電ワイアーによって密着固定する方法を用いた。この際冷却ロールの表面温度を75℃となるように設定した。第1冷却ロールと第2冷却ロールとの位置を調整して厚み50μmおよび25μmのフィルムを得た。製膜速度は20m/分とした。
次にこのフィルムを熱処理するためにロール懸垂型熱処理装置8に通膜した。この装置においてフィルムの処理の熱風温度、フィルムに掛ける張力並びに熱処理の時間を調整し、次いで引き続いてフィルムを65℃に温度を調整したフィルム冷却装置11に送り冷却して室温に出し、マスキングフィルム15と巻き重ねてロール状18に巻き取り、フィルム幅が1,400mmのフィルム巻層体を得た。製膜条件を表3に、フィルム特性を表4に示した。
[比較例4]
ロール懸垂型熱処理装置で熱処理をしなかった以外は実施例10と同様の方法によりフィルム幅が1,400mmのフィルム巻層体を得た。製膜条件を表3に、フィルム特性を表4に示した。
Figure 2006277914
Figure 2006277914
本発明で使用される(実施例7、8および10)製膜装置の概略図を示す。 本発明で使用される(実施例1〜6および9)製膜装置の概略図を示す。
符号の説明
1:溶融樹脂押出しダイ
2:第1冷却ロール(鏡面ロール)
3:第2冷却ロール(鏡面ロール)
4:第3冷却ロール(鏡面ロール)
5:搬送ロール(ダンサーロール)
6:ニップロール
7:ガイドロール
8:熱処理装置
9:ガイドロール
10:懸垂ロール
11:冷却装置
12:ガイドロール
13:ニップロール
14:ガイドロール
15:マスキングフィルム
16:ガイドロール
17:ニップロール
18:巻き上げロール
100:溶融押出しダイ
101:冷却ロール
102:引取りロール
103:搬送ロール(ダンサーロール)
104:ニップロール
105:ガイドロール

Claims (12)

  1. ポリカーボネート樹脂を溶融押出しして作成した光ディスクの光透過層用フィルムであって、フィルムの厚みが10〜150μm、厚み斑が±2μm以下、140℃で1hr熱処理後の熱寸法変化率が0.08%以下、全光線透過率が89%以上、面内レターデーションが1〜15nm、厚み方向のレターデーションが100nm以下、中心線平均表面粗さが両面共に1〜5nmの範囲であることを特徴とする光ディスクの光透過層用フィルム。
  2. ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールAを少なくとも50モル%有するジヒドロキシ成分から得られたポリカーボネート樹脂である請求項1記載の光ディスクの光透過層用フィルム。
  3. ポリカーボネート樹脂は、その粘度平均分子量が14,000〜30,000の範囲である請求項1記載の光ディスクの光透過層用フィルム。
  4. 最大長が10μm以上および高さが3μm以上の表面欠点が10個/平方メートル以下であり、最大長が20μm以上の塊状の内部異物が5個/平方メートル以下であり、且つ最大長が200μm以上の打痕状の表面欠点が1個/平方メートル以下である請求項1記載の光ディスクの光透過層用フィルム。
  5. 請求項1に記載のフィルムを積層し、巻き上げたことを特徴とする光ディスクの光透過層用フィルム巻層体。
  6. 請求項1に記載のフィルムを光ディスクの光透過層として使用した光ディスク。
  7. 溶融押出ししたポリカーボネート樹脂製フィルムを下記(1)〜(3)の条件で熱処理することを特徴とするポリカーボネート樹脂製フィルムの製造方法。
    (1)熱処理温度;(Tg−10)〜Tg(ただし、Tgはポリカーボネート樹脂のガラス転移温度)
    (2)熱処理張力;フィルム断面荷重として、0.5〜3Kg/平方センチメートル
    (3)熱処理時間;30秒以上
  8. 熱処理する工程が、ロール懸垂型熱処理機を使用して熱処理する工程である請求項7記載のポリカーボネート樹脂製フィルムの製造方法。
  9. ポリカーボネート樹脂をダイよりフィルム状に溶融押出し、ダイと冷却ロール間のエアーギャップを10〜30mmとし、フィルム全面を静電密着法によってロールに密着させ冷却して得られたフィルムを、請求項7に記載の条件で熱処理するポリカーボネート樹脂製フィルムの製造方法。
  10. ポリカーボネート樹脂をダイよりフィルム状に溶融押出し、ダイと冷却ロール間のエアーギャップを10〜30mmとし、冷却ロール表面に液体の薄膜を付与し、その薄膜の上に溶融フィルムを押出してロールに密着させ冷却して得られたフィルムを、請求項7に記載の条件で熱処理するポリカーボネート樹脂製フィルムの製造方法。
  11. ポリカーボネート樹脂をダイよりフィルム状に溶融押出し、ダイと冷却ロール間のエアーギャップを40〜150mmとし、溶融フィルムを押出してフィルムの両端部を冷却ロールに密着させ冷却して得られたフィルムを、請求項7に記載の条件で熱処理するポリカーボネート樹脂製フィルムの製造方法。
  12. 請求項7〜11のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂製フィルムの製造方法により得られた請求項1記載の光ディスクの光透過層用フィルム。
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