JP2006276066A - 非線形光学材料製造用の原料溶液、非線形光学材料、及び非線形光学素子 - Google Patents

非線形光学材料製造用の原料溶液、非線形光学材料、及び非線形光学素子 Download PDF

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Abstract

【課題】凝集化や結晶化の問題がなく、優れたポットライフを有する、架橋硬化系の非線形光学材料製造用の原料溶液の提供。
【解決手段】湿式法による非線形光学材料製造用の原料溶液であって、2つ以上の開環重合性官能基を有する非線形光学活性有機化合物を含むことを特徴とする非線形光学材料製造用の原料溶液。
【選択図】 なし

Description

本発明は、光通信、光配線、光情報処理、センサー、あるいは画像処理等の分野に適用することが可能な非線形光学材料及び非線形光学素子、及びそれらを製造するための原料溶液に関するものである。
具体的には、2次の非線形光学効果を利用した光スイッチ素子、光変調素子、波長変換素子、位相シフト素子、あるいはフォトリフラクティブ効果を利用したメモリ素子、画像処理素子、等の非線形光学素子、及びこれらに適用可能な非線形光学材料、並びにそれらの製造用の原料溶液に関するものである。
光を活用する光通信、光配線、光情報処理、センサー、あるいは画像処理等の分野において重要な波長変換素子、光変調素子、光スイッチ素子等の機能性素子の多くは、非線形光学材料、特に2次の非線形光学材料を用いることによって具現化される。2次非線形光学材料としては、これまでにニオブ酸リチウム、燐酸二水素カリウム等の無機非線形光学材料が既に実用化され、広く用いられているが、近年、これらの無機材料に対し、高い非線形光学性能、安価な材料並びに製造コスト、高い量産性等の優位性を有する有機非線形光学材料が注目され、実用化に向けての活発な研究開発が行われている。
2次非線形光学効果は、原理的に系に対称中心が存在しないことが必須要件であり、2次非線形光学材料は、非線形光学活性を有する有機化合物を対称中心の存在しない結晶構造に結晶化させた系(以下、「結晶系」と称する)と、非線形光学活性を有する有機化合物(非線形光学活性有機化合物)を高分子バインダー中に分散させ、該非線形光学活性有機化合物を何らかの手段によって配向させ対称中心を有さなくした系(以下、「分散系」と称する)とに大別される。
前記結晶系の有機非線形光学材料は、非常に高い非線形光学性能を発揮し得ることが知られているが、結晶構造の人為的な制御は現状では不可能に近く、対称中心の存在しない結晶構造が得られることは非常に稀であり、たとえ得られたとしても素子化に必要な大きな有機結晶を作製することは困難である。また、有機結晶の強度は非常に脆く素子化工程で破損してしまう等、種々の問題がある。
これに対し、前記分散系の有機非線形光学材料は、高分子バインダーにより、素子化するに当って有用な成膜性、機械的強度等の好ましい特性が付与され、実用化に向けてのポテンシャルが高く有望視されている。
分散系の有機非線形光学材料では、高分子バインダー中に非線形光学活性有機化合物が凝集せずに均一に分散され、光学的に均質透明となることが要求される。さらに、前記の通り2次の非線形光学効果を発現するには、非線形光学活性有機化合物を何らかの手段によって配向させ異方性を付与しなければならず、また機能性素子として利用するに当っては、その配向状態が、素子の製造時、動作時、及び保管時の温湿度環境にあって安定に保持されなければならない。
したがって、分散系の有機非線形光学材料に用いる非線形光学活性有機化合物としては、高い非線形光学性能に加えて、凝集性が低く高分子バインダーとの相溶性に優れることが要求される。また、分散系の有機非線形光学材料は一般に薄膜の形態にて素子化され、該薄膜の形成法としては湿式塗布法が好適に用いられる。このため、分散系の有機非線形光学材料に用いる非線形光学活性有機化合物は、原料溶液溶剤への高い溶解性が要求される。一方、高分子バインダーとしては、高い成膜性、機械的強度等に加え、内包する非線形光学活性有機化合物の配向状態を安定に保持するための高いガラス転移温度が要求される。
また、分散系の有機非線形光学材料において、前記2次の非線形光学活性を生起させるには、上述のように非線形光学活性有機化合物を配向させる必要があるが、このための配向法としては、一般に電界ポーリング法が用いられる。該電界ポーリング法は、非線形光学材料に電界を印加し、非線形光学活性化合物の双極子モーメントと印加電界とのクーロン力によって、非線形光学活性化合物を印加電界方向に配向させる配向法であり、一般に、電界印加時に、ガラス転移温度付近の温度にまで加熱することによって、非線形光学活性化合物の分子運動を促進させ配向を支援することが行われる。
前記非線形光学活性有機化合物としては、π共役鎖の一方の端に電子供与性基、他方の端に電子吸引性基を有する、所謂プッシュ−プル型π共役系化合物が有効であることが知られている。例えば、π共役鎖としてのアゾベンゼン構造の一方の端の4位に電子供与性基としてのN−エチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミノ基、他方の端の4’位に電子吸引性基としてニトロ基を有するDisperse Red 1 (一般にDR1と略称される)が、代表的な非線形光学活性有機化合物としてよく知られている。しかしながら、上記DR1は本質的に非線形光学性能があまり高くなく、また通常の高分子バインダーとの相溶性が低いだけでなく、昇華し易いため、塗布成膜における乾燥時や電界ポーリング時の加熱に伴い昇華消失してしまったり、ジアルキルアミノ基部分が酸化され変質してしまったりする等の問題がある。
これらの問題を解決するために、これまでに種々の非線形光学活性有機化合物が開発されてきたが、未だに全ての必要特性を同時に満足するものは見出されていない。特に、高い非線形光学性能と高いバインダー相溶性との両立は困難である。すなわち、前記プッシュ−プル型π共役系化合物においては、一般に、π共役鎖を長くする、電子吸引性基の電子吸引能を強くする、電子供与性基の電子供与能を強くする、等によって非線形光学性能が向上することが知られているが、これらは同時に分子間の凝集性を増大させ、高分子バインダーとの相溶性の低下を齎す。
例えば、下記の構造の化合物が、非常に高い非線形光学性能を有するものの、凝集性が非常に高く結晶の析出を抑えて高分子バインダー中に分子分散させた膜を得ることが非常に困難であることが開示されている(例えば、非特許文献1参照)。さらには、汎用溶剤への溶解性が低く、塗布溶剤として沸点の低いハロゲン系の溶剤を用いる必要があることも開示されているが、ハロゲン系の溶剤は大気環境への悪影響が大きく、実用化に当っては好ましくない。
Figure 2006276066
一方、前記高分子バインダーとしては、ポリメチルメタクリレート(一般にPMMAと略称される)が最もよく検討されてきたが、PMMAのガラス転移温度は100℃程度と低く、PMMAを高分子バインダーとして用いた分散系の有機非線形光学材料の配向状態は室温でも徐々に緩和し、非線形光学性能が経時で著しく低下してしまうため、機能性素子としての実用化には耐えないことが知られている(例えば、非特許文献2参照)。
この問題を解決するために、PMMAに代わるバインダー高分子の探索が活発に行われ、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリスルフォン、ポリ環状オレフィン等のPMMAよりもガラス転移温度の高い高分子の有効性が報告されているが(例えば、特許文献1参照)、これらの高いガラス転移温度を有する高分子バインダーを用いると、電界ポーリング時に必要となる加熱温度も上がることになり、前記DR1等の非線形光学活性有機化合物が電界ポーリング時に昇華により消失してしまったり、酸化されてしまったりするという問題があった。また、これらの高いガラス転移温度を有する高分子バインダーとDR1等の非線形光学活性有機化合物との相溶性は必ずしもよくなく、非線形光学性能を高めるために非線形光学活性有機化合物を高濃度で添加すると、それらが凝集化あるいは結晶化してしまったり、また低濃度であっても加熱や経時により凝集化あるいは結晶化が起こってしまったりする問題もあった。
上述した分散系の有機非線形光学材料の問題を解決する手段として、非線形光学活性有機化合物を高分子の主鎖及び/または側鎖に導入し、非線形光学活性有機化合物自身を高分子化する方策が検討されている。
例えば、DR1構造をPMMAの側鎖に結合させた下記の構造の非線形光学活性高分子化合物が開発されている。
Figure 2006276066
この非線形光学活性高分子化合物のガラス転移温度は約165℃であり、PMMAのガラス転移温度(約100℃)よりも高いガラス転移温度を有する。また、DR1はPMMA中に30質量%程度までしか結晶析出なしに分散させることができないのに対して、この非線形光学活性高分子化合物では、その構造中のDR1骨格の濃度が82質量%に相当するにも関わらず、相分離のないクリアな膜が得られる。よって、この非線形光学活性高分子化合物は、DR1をPMMAに分散させた分散系よりも高い非線形光学性能と高い安定性を示す。
しかしながら、非線形光学活性有機化合物を主鎖及び/または側鎖に有する高分子を合成するに当たっては、嵩高い非線形光学活性構造を有するビニル系モノマーを重合させることは困難であり、たとえ重合させることができてもその重合度を制御することは困難である。そして、重合度が上がらない場合には、得られた高分子の機械的強度は低いものとなってしまう。また、一定の重合度に制御できなければ、湿式法にて薄膜を作製するための塗布液(原料溶液)を調製した場合に、合成ロット毎にその粘度が変わってしまうことになり、一定の膜厚を得ることが困難になるという問題がある。また、高分子の精製は困難であり、重合触媒等の不純物が残存してしまい、電界ポーリング時に有効な電界が掛からないという問題が生起する場合もある。したがって、非線形光学活性有機化合物を高分子の主鎖及び/または側鎖に導入する方策は、必ずしも最善の手段とは言えない。
また、前述の分散系の有機非線形光学材料の問題を解決する手段として、DR1等の非線形光学活性有機化合物に架橋性官能基を導入した架橋性非線形光学活性有機化合物を合成し、該架橋性非線形光学活性有機化合物を塗布、乾燥した後、電界ポーリングと架橋硬化を同時に行う方策(以下、「架橋硬化系」と称する)が検討されている。この方策によれば、電界ポーリングにより配向した状態が架橋硬化され固定されるため、配向状態が非常に安定なものになるという好ましい効果が得られる。また、原料の架橋性非線形光学活性有機化合物自身は低分子化合物であるため、前述の非線形光学活性高分子化合物における重合や精製に関する問題は低減される。
しかしながら、従来の非線形光学活性有機化合物は凝集性が非常に高いため、架橋性官能基を導入し架橋硬化を行おうとしても、一般に、架橋硬化の前の乾燥工程にて凝集化あるいは結晶化が起こってしまい、クリアな硬化膜が得られないという問題があった。また、塗布成膜用の原料溶液中でも架橋反応が進行し、原料溶液がゲル化してしまう、あるいは沈殿が生じてしまう等の原料溶液のポットライフ上の問題があり、これらは得られる膜の光学品質の低下や製造コストの上昇を齎していた。
ケミストリー オブ マテリアルズ(Chemistry of Materials)、2001年、13巻、3043〜3050頁 ケミカル レビューズ(Chemical Reviews)、1994年、94巻、1号、31〜75頁 特開平6−202177号公報
本発明は、以上のような従来技術の問題を解決することを目的とする。
すなわち、本発明は、凝集化や結晶化の問題を回避し、また優れた原料溶液のポットライフを有する、架橋硬化系の非線形光学材料製造用の原料溶液を提供することを目的とする。さらに本発明の目的は、この原料溶液を活用することによって、優れた非線形光学性能と優れた安定性を有する非線形光学材料、並びに非線形光学素子を低コストにて提供することにある。
本発明者等は、前記の課題を解決すべく、非線形光学活性有機化合物ならびに架橋硬化手法に関して鋭意検討を行った結果、開環重合性の架橋基を有する非線形光学活性有機化合物を活用することにより、前記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は:
<1> 湿式法による非線形光学材料製造用の原料溶液であって、2つ以上の開環重合性官能基を有する非線形光学活性有機化合物を含むことを特徴とする非線形光学材料製造用の原料溶液である。
<2> 湿式法による非線形光学材料製造用の原料溶液であって、2つ以上の開環重合性官能基を有するマトリックス形成化合物と、該開環重合性官能基と反応連結し得る官能基を1つ以上有する非線形光学活性有機化合物とを含むことを特徴とする非線形光学材料製造用の原料溶液である。
<3> 前記非線形光学活性有機化合物が、下記一般式(1)で示されるプッシュ−プル型π共役系化合物であることを特徴とする<1>に記載の非線形光学材料製造用の原料溶液である。
Figure 2006276066
(一般式(1)中、Z1、Z2及びZ3は、互いに独立に置換基を有してもよい芳香族基を示し、Lは置換基を有してもよいπ共役基を示し、Aは置換基を有してもよい電子吸引性基を示す。尚、Z1、Z2、Z3、L及びAは、各々任意のいずれかと連結して環構造を形成してもよい。但し、Z1、Z2、Z3、L及びAの1又は2以上の置換基中には、開環重合性官能基を有し、該開環重合性官能基は非線形光学活性有機化合物1分子中に2つ以上含まれる。mは0または1を示す。)
<4> 前記非線形光学活性有機化合物が、下記一般式(2)で示されるプッシュ−プル型π共役系化合物であることを特徴とする<2>に記載の非線形光学材料製造用の原料溶液である。
Figure 2006276066
(一般式(2)中、Z4、Z5及びZ6は、互いに独立に置換基を有してもよい芳香族基を示し、Dは置換基を有してもよいπ共役基を示し、Eは置換基を有してもよい電子吸引性基を示す。尚、Z4、Z5、Z6、D及びEは、各々任意のいずれかと連結して環構造を形成してもよく、また、Z4、Z5、Z6、D及びEの置換基のうち少なくとも1つは1つ以上の前記開環重合性官能基と反応連結し得る官能基を有する。nは0または1を示す。)
<5> 前記一般式(1)中のAが、置換基を有してもよい、環構造を含むπ共役系電子吸引性基であることを特徴とする<3>に記載の非線形光学材料製造用の原料溶液である。
<6> 前記一般式(2)中のEが、置換基を有してもよい、環構造を含むπ共役系電子吸引性基であることを特徴とする<4>に記載の非線形光学材料製造用の原料溶液である。
<7> 前記一般式(1)中のZ3−Lmにおける両端に亘るπ共役系が、5個以上の不飽和結合が連なって形成されてなることを特徴とする<3>に記載の非線形光学材料製造用の原料溶液である。
<8> 前記一般式(2)中のZ6−Dnにおける両端に亘るπ共役系が、5個以上の不飽和結合が連なって形成されてなることを特徴とする<4>に記載の非線形光学材料製造用の原料溶液である。
<9> 前記開環重合性官能基が、環状エーテル、環状チオエーテル、環状エステル、環状チオエステル、環状アミド、環状カーボネート、環状サルファイト及び環状ジチオカーボネートから選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする<1>又は<2>に記載の非線形光学材料製造用の原料溶液である。
<10> 前記開環重合性官能基と反応連結し得る官能基が、カルボキシル基、アミノ基、フェノール性水酸基の何れかであることを特徴とする<2>に記載の非線形光学材料製造用の原料溶液である。
<11> 更に、熱および/または光により開環重合に対する触媒活性を発現する潜在性触媒を添加したことを特徴とする<1>又は<2>に記載の非線形光学材料製造用の原料溶液である。
<12> <1>〜<11>の何れか1項に記載の原料溶液を塗布し製造されたものである非線形光学材料である。
<13> <12>に記載の非線形光学材料を有することを特徴とする非線形光学素子である。
本発明の非線形光学材料製造用の原料溶液は、湿式法を用いて非線形光学材料を形成する際の作業性に優れる。また、本発明の非線形光学材料は、優れた非線形光学性能と架橋硬化によるその高い熱安定性を兼ね備え、さらにそれを活用することによって、安定性が高く、かつ長寿命の優れた非線形光学素子を安価に提供することができる。
以下に本発明を実施の形態に沿って詳しく説明する。
<原料溶液>
本発明の原料溶液は、第1の原料溶液及び第2の原料溶液の2つに分けられる。
本発明の第1の原料溶液は、湿式法による非線形光学材料製造用の原料溶液であって、2つ以上の開環重合性官能基を有する非線形光学活性有機化合物を含むことを特徴とする。
本発明の第2の原料溶液は、湿式法による非線形光学材料製造用の原料溶液であって、2つ以上の開環重合性官能基を有するマトリックス形成化合物と、該開環重合性官能基と反応連結し得る官能基を1つ以上有する非線形光学活性有機化合物とを含むことを特徴とする。
本発明は、2つ以上の開環重合性官能基を有する化合物(架橋硬化主剤)を用いることによって、開環重合反応により3次元的に架橋硬化した架橋硬化系有機非線形光学材料を形成することを最大の特徴とする。
第一の原料溶液は、前記架橋硬化主剤として、非線形光学活性有機化合物を用いる場合である。
第二の原料溶液では、架橋硬化主剤としては非線形光学活性を有さない化合物を用い、その開環重合によって3次元マトリックスを形成し、該開環重合性官能基と反応連結し得る官能基を1つ以上有する非線形光学活性有機化合物を用いることで、該3次元マトリックスに非線形光学活性有機化合物を共有結合により連結させ、全体として3次元的に架橋硬化した架橋硬化系有機非線形光学材料を形成させる。
本発明においては、第一の原料溶液にあっては、特に、前記非線形光学活性有機化合物が、上記一般式(1)で示されるプッシュ−プル型π共役系化合物である場合に、第二の原料溶液にあっては、特に、前記非線形光学活性有機化合物が、上記一般式(2)で示されるプッシュ−プル型π共役系化合物である場合に、より好ましい効果が発現される。尚、上記一般式(1)と(2)の違いは、それぞれ、開環重合性官能基を有するか、開環重合性官能基と反応連結し得る官能基を有するかの違いのみであり、他の点に関しては、構造は共通している。
後述するように、上記一般式(1)または(2)で示される構造の化合物は、大きな非線形光学効果を有するものであるが、本発明によれば、原料溶液がゲル化、あるいは沈殿が生じてしまったりすることがなく、優れたポットライフを有する原料溶液が得られ、また、この原料溶液により非線形光学特性およびその安定性に優れた非線形光学材料を作製することができる。
一般式(1)と(2)における、構造は殆ど共通していることから、一般式(1)を例にして、次に、より好ましい構造に関して述べる。
前記一般式(1)中のZ1〜Z3は、互いに独立に置換基を有してもよい芳香族基であり、合成の容易さ、化学的安定性等の点で、置換基を有してもよいフェニル基またはフェニレン基であることが好ましい。このようなトリアリールアミン構造をとることにより、化合物の耐酸化性を向上させることができ、熱劣化や光劣化が抑えられる。さらに、トリアリールアミン構造をとることにより、分子間の会合性が抑えられ非線形光学活性有機化合物の架橋膜中での分子分散性が向上し、凝集化や結晶化が抑制される。また、Lは置換基を有してもよいπ共役基である。Aは置換基を有してもよい電子吸引性基であり、化学的安定性、非線形光学性能等の点で、置換基を有してもよい環構造を含むπ共役系電子吸引性基であることが好ましい。
本発明において、前記Z1〜Z3、L及びAは、各々任意のいずれかと連結して環構造を形成していてもよい。環構造を形成しバルキーかつリジッドな構造となることで、分子間の会合性が抑えられるとともに耐酸化性がさらに向上する。
また、前記一般式(1)中のZ3−Lmで示される構造が、両端に亘るπ共役系が5個以上の不飽和結合が連なって形成されていることが好ましい。前述のように、プッシュ−プル型のπ共役系化合物においては、電子吸引性基と電子供与性基との間のπ共役鎖を長くすることが非線形光学性能向上の観点から望ましく、本発明における一般式(1)に示す化合物では、前記π共役系が5個以上連なっていると、特に優れた非線形光学特性が得られる。
上記π共役系は、非線形光学性能の観点からは、7個以上連なっていることがより好ましいが、耐酸化性、耐凝集性の確保の点から、上限は15個程度であることが好ましい。なお、本発明において、前記「π共役系が連なっている」とは、不飽和結合が結合1つおきに存在して連なっていることをいう。
一般に開環重合とは、下式に示すように環状モノマーを開いて線状ポリマーにする反応である。
Figure 2006276066
上式において、Yは任意の有機基を表し、nは任意の正数を表す。Xは開環重合に与る官能基であり、例えば、-CH=CH-、またはヘテロ原子(酸素、窒素、イオウ、珪素、燐など)を少なくとも1つ含むものであり、環状モノマーにおける分子内での結合がXの内部またはXとYの間で解裂し、該解裂部が分子間で再結合することにより同一組成、同一官能基を持つ線状ポリマーを与える。
前記Xの具体例としては、-CH=CH-(オレフィン類)、-O-(エーテル類)、-S-(チオエーテル類)、-NH-(イミン類)、-OCH2O-(ホルマール類)、-SCH2O-(モノチオホルマール類)、-SCH2S-(ジチオホルマール類)、-SS-(ジサルファイド類)、-OC(=O)-(エステル類)、-SC(=O)-(チオエステル類)、-NHC(=O)-(アミド類)、-OC(=O)O-(カーボネート類)、-OS(=O)O-(サルファイト類)-SC(=S)O-(ジチオカーボネート類)、-NHC(=O)NH-(尿素類)、-NHC(=O)O-(ウレタン類)、-C(=O)OC(=O)-(酸無水物類)、-C(=O)NHC(=O)-(イミド類)、-SiMe2-O-SiMe2-(シロキサン類)、-N=CH-O-(イミノエーテル類)等が挙げられる。
本発明の特徴をなす開環重合性基として、第一の原料溶液では、非線形光学活性有機化合物に上記の環状モノマー構造を、第二の原料溶液ではマトリックス形成化合物に上記の環状モノマー構造をそれぞれ用いるが、合成の容易さ、開環重合性等の点で、該環状モノマー構造が、環状エーテル、環状チオエーテル、環状エステル、環状チオエステル、環状アミド、環状カーボネート、環状サルファイト、環状ジチオカーボネートの何れかであることが特に好ましい。
一般に、1つの開環重合性官能基を有する化合物が単独で開環重合した場合には、線状ポリマーが得られるが、本発明では、2つ以上の開環重合性官能基を有する化合物を用いることによって、3次元的に架橋した重合物が得られ、優れた耐溶剤性や熱安定性が実現される。尚、前記2つ以上の開環重合性官能基は、全てが同一の構造のものでもよいが、互いに共重合する組み合わせであれば異なる構造のものを混合して用いてもよい。
開環重合性官能基は、Z1、Z2、Z3、L及びAの有する置換基中に存在せしめることが好ましく、かつ、該開環重合性官能基は非線形光学活性有機化合物1分子中に2つ以上含まれる。
本発明者らは、先に、架橋硬化性官能基、特に加水分解性シリル基を有する非線形光学活性有機化合物を用いた架橋硬化系有機非線形光学材料、およびポトライフに優れたその原料溶液を開発した(特願2003-429569)。しかしながら、加水分解性シリル基の重合反応形式は脱水重縮合反応であり、架橋硬化の進展に伴い水が副生する。架橋硬化系有機非線形光学材料においては、架橋硬化とポーリングを同時に行うことが多いが、その場合に、水が副生すると、該水によるイオン伝導により実効のポーリング電界が低下してしまい同じ配向度合いを得るに、より強いポーリング電界あるいはより長いポーリング時間が必要となるという問題が生じる場合がある。より強いポーリング電界あるいはより長いポーリング時間は、作業性、生産性の低下という弊害に加え、有機非線形光学材料へのストレスが増すことを意味し、有機非線形光学材料の劣化を引き起こす場合がある。
また、ポーリング方法として、後述するコンタクト電極ポーリング法を採用した場合には、副生水の蒸発に伴い上部の電極等が劣化する場合がある。
本発明者等は、先の発明のこれらの問題点を解決するため、さらに架橋硬化性官能基に関する検討を進め、本発明を開発するに至った。すなわち、本発明における架橋硬化手段の特徴をなす開環重合系では、単に分子内から分子間への結合の組換えが起こるだけであり副生物は生じず、上述の重縮合系の問題は解消される。
尚、副生物を伴わない重合反応形式としては、開環重合反応のほかにも、ビニル重合反応(特開2003-66497)や重付加反応が知られるが、ビニル重合反応では、酸素による反応阻害があり、大気中での取り扱いができない、等の問題がある。さらに、ビニル重合反応では、一般にラジカルを発生する開始剤の添加が不可欠であり、一般に紫外線照射により該開始剤からラジカルを発生させるが、該紫外線や発生したラジカルにより非線形光学活性有機化合物が分解してしまうという問題が生ずる場合もある。尚、特開2003-66497には、架橋性官能基としてグリシジル基(環状エーテル類)が挙げられているが、具体的な記載はなく、本発明を予見するものではない。また、ウレタン樹脂を代表とする重付加反応系に関しては、一般にモノマーの反応性が非常に高く、それを含む原料溶液のポットライフが非常に短いものとなるという問題がある。さらに、重付加反応のモノマー(イソシアネート類等)およびその原料は一般に毒性が高いという問題もある。
第二の原料溶液における開環重合性官能基と反応連結し得る官能基としては、開環重合性官能基と反応連結し得るものであれば如何なるものでも構わないが、開環重合性官能基に対し開環重付加するものが好ましく、例えば、アミノ基、水酸基、チオール基等の活性水素を有する官能基が好ましい。また、前記開環重合性官能基と反応連結し得る官能基としては、併用するマトリックス形成化合物の開環重合性官能基と共重合する開環重合性官能基でもよい。この場合、マトリックス形成化合物の開環重合性官能基と非線形光学活性有機化合物の開環重合性官能基は、互いに共重合すれば、同じ構造のものでも異なる構造のものでもどちらでも構わない。
第二の原料溶液における開環重合性官能基と反応連結し得る官能基の数は1つ以上であればよいが、2つ以上であることがより好ましい。
本発明の原料溶液に用いられる溶媒としては、アルコール類(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)、ケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等)、エーテル類(例えばテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等)、エステル類(例えば酢酸エチル、酢酸イソプロピル)、芳香族類(例えばベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、テトラヒドロナフタレン)、アミド類(例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド)、ジメチルスルホキシド等を、単独、或いは2種以上を混合して用いることができる。尚、本発明の原料溶液の必須の構成成分のみで液状となる場合には、別途、溶剤を添加しなくともよい。
原料溶液中に含まれる溶媒の量は、特に限定されないが、少な過ぎると固形物が析出し易くなるため、原料溶液中の溶媒を含む液体成分以外の構成成分が原料溶液全体に対して0.5〜50質量%の範囲となるように調整することが好ましい。
本発明の原料溶液には、開環重合反応を促進するための触媒を添加することが望ましいが、優れたポットライフを確保するという観点から、外部からの熱や光等のエネルギー付与により触媒作用を発揮する所謂、潜在性触媒を用いることが好ましい。
潜在性触媒の例としては、文献3(高分子、社団法人高分子学会刊、1996年、45巻、3月号、128〜131頁)等に記載のスルホニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、ヒドラジニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム法、カルボン酸エステル類、アミンイミド類、等が挙げられる。
添加する硬化触媒の量は、特に限定されないが、一般に、原料溶液中に含まれる開環重合性官能基を有する化合物の合計量に対して、0.1〜20質量%の範囲で用いられる。
本発明の原料溶液には、原料溶液の特性(粘度、濡れ性、レベリング性、ポットライフ等)や塗布膜の特性(アモルファス性、表面平滑性、強度、架橋密度、化学的安定性、難燃性、接着性等)を調節あるいは改良する目的で、任意の添加剤を添加してもよいが、該添加剤としては、必須成分の開環重合性官能基と反応連結し得る官能基を1つ以上有するものが好ましい。
特に、第一の原料溶液においては、第二の原料溶液において好適に用いられるものと同様の2つ以上の開環重合性官能基を有するマトリックス形成化合物を添加することによって、膜強度の改善、等の好ましい効果が得られる場合がある。
本発明の原料溶液において、必須成分の非線形光学活性有機化合物の含有量は、「該原料溶液から得られる架橋硬化物」中に占める「非線形光学活性有機化合物の架橋反応に関わる官能基を除外した非線形光学活性構造部分」の含有量として、1〜90質量%の範囲となるように調整することが好ましい。
本発明の第一の原料溶液の必須成分である、2つ以上の開環重合性官能基を有する非線形光学活性有機化合物の具体例を以下に示す。
Figure 2006276066
これらの化合物の製造方法は特に制約されないが、例えば、一般的な有機合成手法を用い、まず2つ以上の水酸基あるいはカルボキシル基を持つ非線形光学活性有機化合物を合成し、それと、ハロゲン原子または水酸基を持つ開館重合成モノマーとを、置換反応または縮合反応により、反応連結させることによって製造することができる。
本発明の第二の原料溶液の必須成分である、2つ以上の開環重合性官能基を有するマトリックス形成化合物の具体例としては、以下に示すような公知のエポキシ樹脂原料、オキセタン樹脂原料、チイラン樹脂原料、等が挙げられる(上記、文献3、128〜131頁参照)。
Figure 2006276066
更に、該開環重合性官能基と反応連結し得る官能基を1つ以上有する非線形光学活性有機化合物としては、次のものが挙げられる。
Figure 2006276066
これらの化合物の製造方法は、特に制約はなく、対応する原材料を用意し、一般的な、Ullmann縮合法、アゾカップリング法、Heckカップリング法等の縮合反応やカップリング反応を駆使することによって製造できる。
<非線形光学材料>
次に、本発明の非線形光学材料について説明する。
本発明の非線形光学材料は、前記本発明の原料溶液を用いて作製されるものであれば、その製造方法および形態は特に限定されず、例えば、鋳型に原料溶液を流し込んで架橋硬化することにより任意の形状の非線形光学材料を形成したり、あるいは、板状やファイバー状等の任意の形状を有する基材表面に原料溶液を塗布し、架橋硬化させることにより膜状の非線形光学材料を形成することができる。また、溶剤を除去し固形化したものを加熱加圧成型することにより、成形と架橋硬化を同時に行うことにより任意の形状の非線形光学材料が得られる。
以下、非線形光学素子への適用において一般的な、基板表面に原料溶液を塗布し薄膜とする場合を前提として、非線形光学材料及びその製造方法について説明する。
原料溶液の塗布方法としては、特に限定されないが、スピンコート法、スプレーコート法、ブレードコート法、浸漬塗布法、インクジェト法等の公知の湿式塗布法を用いることができる。
基材表面に原料溶液を塗布した後、架橋硬化処理を行う。架橋硬化処理は、自然乾燥によって溶媒を除去し自然硬化させる方法であってもよいが、減圧乾燥等により溶媒を除去した後、原料溶液中に予め添加しておいた潜在性触媒を利用して加熱や光照射等を行うことによって硬化反応を生起させる方法が好ましい。
非線形光学材料において2次の非線形光学活性を誘起させるには、上述のように、何らかの配向処理を行うことによって非線形光学活性有機化合物を配向させる必要がある。
上記非線形光学活性有機化合物を配向させる配向法としては、原料溶液を、表面に配向膜を有する基板上に塗布し、該配向膜の配向性により、非線形光学材料中の非線形光学活性有機化合物の配向を誘起する方法がある。また、光ポーリング法、光アシスト電界ポーリング法、電界ポーリング法等の公知のポーリング法も有効に利用できる。これらの中でも、電界ポーリング法は、装置の簡便性、得られる配向度合いの高さ、等の点で特に好ましい。
電界ポーリング法は、非線形光学活性有機化合物の双極子モーメントと印加電界とのクーロン力によって、非線形光学活性有機化合物を印加電界方向に配向させる配向法である。電界ポーリング法においては、一般的に、電界を印加した状態で、加熱することによって、非線形光学活性有機化合物の電界方向への配向移動を促進させ十分な配向が誘起された後、印加電界を除去する。本発明の架橋硬化系の非線形光学材料では、電界ポーリングを架橋硬化と同時、またはその前に行うことによって、電界ポーリングによって誘起される配向状態が架橋硬化によって凍結され安定なものとなる。
このように、架橋硬化前の柔軟な段階で配向処理を行い、そのまま架橋硬化することによって、高い配向度の実現と、その安定性の両立とが達成される。尚、電界ポーリング処理の前に、部分的に架橋硬化反応を進行させておいても構わない。
加熱による硬化処理と電界ポーリング処理とを同時に行なう場合には、電界を印加しながら硬化反応温度まで一気に昇温してもよいが、その場合、十分な配向が起こる前に硬化反応が進行してしまい非線形光学活性有機化合物が動き難くなってしまい、有効な配向処理が行えない場合がある。
従って、上記のような場合には、電界を印加した状態で温度を徐々に連続的に昇温させる方法、あるいは、段階的に昇温させる方法が有効である。
電界ポーリング処理の際に印加する電界強度は、一定であってもよいし、連続的あるいは段階的に変化させてもよい。また、その際に周期的に変化する電界を重畳してもよい。
電界ポーリング処理における非線形光学材料への電界の印加方法は、公知の方法を採用することができ、針状、ワイヤ状、ノコギリ歯状、板状等の電極、あるいは、これらの電極にグリッド電極を組み合わせたもの等によって非線形光学材料に放電電荷を供給するコロナ放電法や、非線形光学材料に電極対を設け電界を印加するコンタクト電極法、等を用いることができる。
上記コンタクト電極法の場合、非線形光学材料表面に直接電極を形成してもよいし、電界ポーリング処理の際のみ電極を近接あるいは接触させてもよい。膜表面に直接形成し得る電極材料としては、金、アルミニウム、ニッケル、クロム、パラジウム等の各種金属、及びこれらの合金、あるいは導電性金属酸化物や導電性高分子等を用いることができる。
膜表面に直接電極を形成する方法としては、一般的な蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。また、膜に近接あるいは接触させる電極としては、上記と同じものや、ガラスやプラスチック等の非導電性基体表面に導電性の膜を形成したものが使用できる。
電界ポーリング処理は大気中で行うこともできるが、窒素、アルゴン等の不活性ガス中、あるいは、吸引下にて行うことが好ましい。このような環境下にて行うことによって、前記放電法においては、空気中の酸素や放電生成物等による非線形光学材料の劣化を防止できる場合があったり、また、電極法においては、高電界を印加する場合に発生する不要な火花放電を防止する効果が得られたりする。
<非線形光学素子>
以上のようにして得られる本発明の非線形光学材料は、非線形光学機能を利用する如何なる素子にも、任意の形態にて適用することが可能であり、例えば、透明基板上の薄膜として波長変換素子等に適用できる。また、導波路構造を有する電気光学素子のコア層等に適用することもできる。
以下に、本発明の好ましい適用例である、本発明の非線形光学材料から形成したコア層を有する導波路型電気光学素子について詳述する。
本発明の非線形光学素子の一つである導波路型電気光学素子の構成としては、特に制限されず、種々の構成を採ることができる。また、例えば、複数の層から構成されてなる素子においては、各層のうちの少なくとも1層が、前記本発明の原料溶液を用いて形成されていればよいが、光が伝播するコア層を本発明の原料溶液を用いて形成することが好ましい。この場合、その他の層に用いられる材料は特に制限されない。
図1〜図4に、本発明の非線形光学素子の一つである導波路型電気光学素子の構成の例を、模式断面図として示す。
前記導波路型電気光学素子は、基板表面に少なくとも下部クラッド層とコア層とを有する構成とすることが望ましく、さらに図1に示す構成のように、上部クラッド層2を設けた構成とすることが好ましい。
本発明の非線形光学材料は、導波路型電気光学素子のコア層として用いることによって、得られる素子の非線形光学性能が優れたものとなり、且つ高い安定性が保証される。さらに、本発明の非線形光学材料をコア層に用いることによって、前述の高分子系非線形光学材料において上部クラッド層を設ける場合や、後述するコア層や上部電極に対してパターニングを行う場合に、コア層が侵食されてしまうという問題が解消される。
本発明の非線形光学素子を用いた導波路型電気光学素子においては、素子を駆動するために、少なくとも本発明の非線形光学材料を含む層に電界が掛かるように電極対を設ける必要がある。電極対としては、図1に示すように、下部電極5及び上部電極1が、下部クラッド層4、コア層3、上部クラッド層2からなる導波路層を挟み込む構成が好ましい。
基板6を構成する材料としては、アルミニウム、金、鉄、ニッケル、クロム、チタン等の金属;シリコン、ガリウム−ヒ素、インジウム−燐、酸化チタン、酸化亜鉛等の半導体;ガラス等のセラミックス;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエーテルケトン、ポリイミド等のプラスチック;等を挙げることができる。
これらの基板材料の表面には、導電性膜が形成されていてもよく、該導電性膜の材料としては、アルミニウム、金、ニッケル、クロム、チタン等の金属;酸化スズ、酸化インジウム、ITO(酸化スズ−酸化インジウム複合酸化物)等の導電性酸化物;ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリアセチレン等の導電性高分子;等が用いられる。これらの導電性膜は、蒸着、スパッタリング等の公知の乾式成膜法や、スプレー塗布法、浸漬塗布法、インクジェット法、電解析出法、メッキ法、無電解メッキ法等の公知の湿式成膜法を利用して形成され、必要に応じてパターンが形成されていてもよい。なお、導電性基板、あるいは、基板上に形成された導電性膜は、電界ポーリングや素子駆動用の電極(図1等における下部電極5)として利用される。
基板6の表面には、さらに必要に応じて、その上に形成される膜と基板6との接着性を向上させるための接着層、基板表面の凹凸を平滑化するためのレベリング層、あるいはこれらの機能を一括して提供する何らかの中間層が形成されていてもよい。
このような層を形成する材料としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、アミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ビニルアルコール樹脂、アセタール樹脂等およびそれらの共重合物;ジルコニウムアルコキシド化合物、チタンアルコキシド化合物、シランカップリング剤等の架橋物およびそれらの共架橋物;等の公知のものを用いることができる。
前記のように、本発明の非線形光学素子は、一つ以上のコア層と、それを挟むクラッド層とを含む導波路構造を有するものとして形成することが好ましく、前記本発明の非線形光学材料を、導波路のコア層に含有させることが特に好ましい。
本発明の非線形光学材料を含有するコア層3と基板6との間には、下部クラッド層4を形成することが好ましい。この下部クラッド層4としては、コア層3よりも屈折率が低く、コア層形成の際に侵されないものであれば如何なるものでもよい。このようなものとして、アクリル系、エポキシ系、シリコーン系等のUV硬化性あるいは熱硬化性の樹脂;ポリイミド;SiO2等が好ましく使用される。また、本発明の非線形光学材料も用いることができる。但し、その場合、非線形光学活性有機化合物の構造、含有量等を調整して、コア層3に用いる非線形光学材料よりも屈折率を小さくする必要がある。
本発明の非線形光学材料を用いたコア層を形成した後、さらにその表面に上部クラッド層2を下部クラッド層4と同様にして形成してもよい。これにより、図1に示す、下部クラッド層/コア層/上部クラッド層という構成のスラブ型導波路が形成される。
また、コア層3を形成した後、反応性イオンエッチング(RIE)、湿式エッチング、フォトリソグラフィー、電子線リソグラフィー等の半導体プロセス技術を用いた公知の方法により、コア層3をパターニングし、チャネル型導波路(図2)あるいはリッジ型導波路(図3)を形成することもできる。また、コア層3の一部に、UV光、電子線等をパターン化して照射することにより、照射部分の屈折率を変化させてチャネル型またはリッジ型導波路を形成することもできる。さらにまた、予め、下部クラッド層4を、反応性イオンエッチング(RIE)、湿式エッチング、フォトリソグラフィー、電子線リソグラフィー等の半導体プロセス技術を用いた公知の方法によりパターニングしておき、その上にコア層3を形成することによって、逆リッジ型導波路を形成することもできる。
上部クラッド層2の表面には、素子を駆動するための上部電極1を、前記上部クラッド層2の所望の領域に形成することで基本的な電気光学素子を形成することができる。
前記クラッド層およびコア層3の成膜方法としては、スピンコート法、スプレーコート法、ブレードコート法、浸漬塗布法、インクジェット法等の公知の塗布方法が利用できる。溶剤の除去は、自然蒸発を待ってもよいが、加熱乾燥機等で加熱する、あるいは真空乾燥機等で減圧することによって強制的に行ってもよい。
本発明の非線形光学材料などの架橋硬化性材料からクラッド層やコア層3を形成する場合、各層の形成時毎に加熱処理やUV処理によって完全に架橋硬化させてもよいし、他の層を積層塗布する時に侵食されない程度に架橋硬化を部分的なものに留めておいてもよい。特に、他の層を積層塗布する際にハジキ等が起こったり、両層の接着性が悪い場合には、架橋硬化を部分的に留めておくことによって、これらの問題が改善されることがある。
下部クラッド層4の膜厚は、利用する光の波長やモード等に依存するが、0.1〜2000μm程度の範囲が好ましく、1〜100μm程度の範囲とすることがより好ましい。
また、コア層3の膜厚は、利用する光の波長やモード等に依存するが、0.1〜500μm程度の範囲であることが好ましく、0.5〜50μm程度の範囲であることがより好ましい。
本発明の非線形光学材料によってコア層3を形成する場合、原料溶液を塗布し、溶剤を除去した後に、加熱硬化処理とポーリング処理とを同時に行なうことが望ましい。溶剤除去と硬化処理は同時に行ってもよい。ポーリング処理の方法等は、本発明の非線形光学材料において説明したものと同じ方法が適用できる。
電界ポーリング処理の場合、加熱温度は、最終段階ではコア層3がほぼ完全に架橋硬化する温度にすることが望ましく、具体的には100〜200℃の範囲内に0.1〜10時間程度保持することが望ましい。ポーリング温度を室温から最終的な温度まで段階的に上昇させる場合、各ステップの上昇温度は5〜50℃程度の範囲、各ステップの時間は5〜120分間程度が望ましく、それらは終始同じでも異なってもよい。連続的に上昇させる場合の昇温速度は、0.1〜20℃/分程度とすることが望ましく、前記の段階的に温度を上昇させるステップと組み合わせてもよい。
前記コロナ放電法では、電極、グリッド、サンプル表面の位置関係はこの順であれば任意であるが、電極とサンプル表面との距離は5〜100mm程度の範囲、グリッドとサンプル表面との最短距離は1〜30mm程度の範囲とすることが好ましい。グリッドを使用することによりコロナ放電を安定化できる場合があり、さらにサンプル表面に必要以上のイオン流が流れ込むのを防止することができるため、サンプル表面の放電生成物によるダメージを抑制する効果もある。
電界ポーリング処理の際に、電極やグリッドに印加する電圧は一定でもよいし、連続的あるいは段階的に変化させてもよく、温度上昇や下降のタイミングに合わせても合わせなくてもよい。例えば、電極に印加する電圧は1〜20kV程度の範囲、グリッドを使用する場合のグリッド電圧は0.1〜2kV程度の範囲とすることが好ましい。
また、コンタクト電極法の電極に印加する電圧としては、0.1〜2kV程度の範囲とすることが好ましい。
電極の極性は正負どちらでもよいが、コロナ放電法の場合には、サンプル表面側を正、すなわち正極放電にした方が放電に伴うオゾンや窒素酸化物等の発生量が少なく、サンプルへのダメージを小さくすることが可能である。
なお、温度を下げる行程まで含んだポーリングの総時間は、24時間以内程度とすることが好ましい。
ポーリングが有効に行われたかどうかを確認する指標として、どれだけの非線形光学分子(一般に二色性を有する)が電場方向に配向したかを表す数値(オーダーパラメーター:φ)がある。具体的には、分子の向きがランダムになっている時の吸光度をA0、電場方向(膜厚方向)に配向させたときの吸光度をAtとした場合、φは1−(At/A0)で計算できる。
上記オーダーパラメーターは、全ての分子が完全に膜厚方向に配向した理想的な状態では1、完全にランダムなときは0となる数値であり、値が大きいほど全体としての分子の配向度が高いことを表わす。この値を測定することにより、どれだけ効率よくポーリングできたかが判断でき、また、その安定性なども評価できる。
上部クラッド層2としては、前記の下部クラッド層用材料と同じもの以外に、一般にポリマー導波路用として使用されている各種の熱可塑性樹脂を使用することもできる。これらの熱可塑樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ環状オレフィン等がある。架橋硬化されている本発明におけるコア層3は、配向安定性および耐溶剤性に優れているため、上部クラッド層材料およびこれを塗布する溶剤、並びに塗布方法の選択肢が非常に広いという長所がある。
コア層3の表面に上部クラッド層2を形成する場合、ポーリング処理は上部クラッド層2を形成した後でもよい。例えば、コア層3を塗布し、必要に応じて溶剤を除去したり部分的に架橋硬化した後、上部クラッド層2を形成した状態、さらには上部電極1を形成した状態で、ポーリング処理を行ってもよい。
本発明の架橋硬化系は開環重合反応からなることから、架橋硬化反応過程での揮発成分の発生がなく、上層を設けた状態で架橋硬化およびポーリング処理を行っても、上層の劣化が起こることがない。
上部クラッド層2の膜厚は、利用する光の波長やモード等に依存するが、0.1〜2000μm程度の範囲が好ましく、1〜100μm程度の範囲とすることがより好ましい。
本発明の非線形光学素子を前記のように導波路型の構成とする場合には、光を屈折率差によってコア層3に閉じ込めるために、コア層3の屈折率に比べ、クラッド層の屈折率を小さくする必要がある。コア層3とクラッド層との屈折率の差は、モード等によって異なるが、例えば、シングルモードの導波路として用いる場合には、上記コア層3とクラッド層との屈折率の差は、0.01〜30%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10%の範囲である。
上述のパターン化したUV光を照射しコア層3をパターニングする方法は、一般に、フォトブリーチング法として知られる。この場合、上記UV光源としては、(高圧)水銀ランプ、キセノンランプ、(メタル)ハロゲンランプ、ブラックライト、D2ランプ、各種レーザーなど、公知のものが使用できる。例えば、高圧水銀ランプを使用する場合、照射強度が5〜1000mW程度で1分〜200時間程度照射すればよい。パターン化の手段としてマスクパターンを使用する場合は、金属マスク法等、公知の方法をそのまま使用できる。
上記フォトブリーチング法でコア層3のパターニングを行う工程は、コア層3を塗布した後であればポーリング処理前でも可能であるが、架橋硬化及びポーリング処理の後の方が好ましい。あるいは、さらに上部クラッド層2や上部電極1を形成した後でも可能である。
前記のようにしてチャネル型導波路やリッジ型導波路を形成する際、コア層3のパターンとしては、直線型、Y分岐型、方向性結合器型、Mach−Zehnder型等の公知のデバイス構造を用いることができ、このような構成により、本発明の非線形光学素子は、光スイッチ、光変調器、位相シフト器等の公知の光情報通信用デバイスへの適用が可能となる。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はそれらによって制限されるものではない。
(実施例1)
−原料溶液Aの調製−
下記組成物を十分に混合、溶解した溶液に、潜在性触媒としてスルホニウム塩の一種である三新化学工業社製サンエイドSI−110Lを0.1質量部添加し、非線形光学材料製造用の原料溶液Aを得た。
・下式に示す、2つの開環重合性官能基(環状チオエーテル類)を有するマトリックス形成化合物:10質量部
Figure 2006276066
・下式に示す、前記開環重合性官能基と反応連結し得る官能基(カルボキシル基)を2つ有する非線形光学活性有機化合物:7質量部
Figure 2006276066
・テトラヒドロフラン:30質量部
・シクロペンタノン:20質量部
得られた原料溶液Aは、直ちに密封容器に移し、塗布を行うまでの間、大気下、室温にて保管した。なお、この密封状態でのポットライフを、目視による液状態の観察から評価したところ、3日を経ても粘度変化や固形物の析出等が認められず、安定であった。
尚、本実施例で用いた非線形光学活性有機化合物は、一般式(2)で示される構造であり、且つ、環構造を含むπ共役系電子吸引性基を有し、しかもZ6−Dnにおける両端に亘るπ共役系が、6個の不飽和結合が連なって形成されている。
−非線形光学材料(架橋硬化膜A)の作製、評価−
次に、ITO膜をコートしたガラス基板(1mm厚、表面抵抗値:10Ω/□)のITO形成面に、原料溶液Aをスピンコート法により塗布し、真空デシケータ中、室温にて12時間減圧乾燥した。これをサンプルAとした。
次に、ホットプレートの上に、前記塗布膜が上を向くようにサンプルAを設置し、加熱硬化と電界ポーリング処理とを施すことによって、本発明の非線形光学材料を作製した。なお、電界ポーリング処理は、スコロトロン電極を用いるコロナ放電法を採用し、ワイヤ電極への印加電圧を5kV、グリッド電極の印加電圧を100V、塗布膜表面とグリッド電極との距離を2mmとした。このような設定にて、電圧印加を開始後にホットプレートの温度を室温から140℃まで1時間かけて上昇させ、140℃に30分間維持し、その後約30分間で室温まで戻した後、電圧の印加を停止することにより、電界ポーリング処理と加熱硬化とを同時に行い、架橋硬化膜A(非線形光学活性化合物骨格の濃度:約30質量%)を得た。
電界ポーリング処理を施した架橋硬化膜Aは、光沢のあるクリアな膜であり、目視上の欠陥は認められなかった。また、膜厚は約0.5μmであった。
また、架橋硬化膜Aのポーリング状態の経時劣化については、作製直後のオーダーパラメーターと、10日間暗所に保管した後のオーダーパラメーターとがどちらとも0.35であり配向緩和が全く起こっていないことが確認された。
なお、上記オーダーパラメーターは、ポーリング処理を行なわず、非線形光学活性化合物がランダムに配向している硬化膜1、及びポーリング処理により非線形光学活性化合物が膜厚方向に配向している硬化膜2の両方に対して、吸収スペクトルを分光光度計(日立製作所製、U−3000)で測定し、硬化膜1及び硬化膜2の可視域での吸収が最大になる波長λmaxから、下記式(1)により計算した。
φ=1−At/A0 ・・・ 式(1)
(但し、式(1)中、φは、オーダーパラメーターを表し、Atは、ポーリング処理した硬化膜2の波長λmaxでの吸光度を表し、A0は、ポーリング処理を施さなかった硬化膜1の波長λmaxでの吸光度を表す。)
このようにして得られた架橋硬化膜Aに、1550nmの発振波長を持つ半導体レーザー光を照射したところ、775nmの二次高調波の発生が観測でき、本発明の非線形光学材料である架橋硬化膜Aが非線形光学機能を有することが確認できた。さらに、架橋硬化膜Aを、100℃の高温環境に1時間保持した後に、再度、レーザー光を照射したところ、初期と同等の強度を有する二次高調波の発生が確認でき、本発明の非線形光学材料が高い耐熱性を有することが確認できた。
また、評価後のサンプルをシクロペンタノンに10分間浸漬しても、膜の溶解や変質は観測されず、架橋硬化により耐溶剤性が付与されていることが確認できた。
以上の評価結果を、まとめて表1に示す。
(実施例2)
−原料溶液Bの調製−
下記組成物を十分に混合、溶解した溶液に、潜在性触媒として下式に示すスルホニウム誘導体のPF6塩を3質量部添加し、非線形光学材料製造用の原料溶液Bを得た。
Figure 2006276066
・下式に示す、2つの開環重合性官能基(環状エーテル類)を有する非線形光学活性有機化合物:10質量部
Figure 2006276066
・下式に示すエポキシ化合物:5質量部
Figure 2006276066
・テトラヒドロフラン:25質量部
・シクロペンタノン:20質量部
得られた原料溶液Bは、直ちに密封容器に移し、塗布を行うまでの間、大気下、室温にて保管した。なお、この密封状態でのポットライフを、目視による液状態の観察から評価したところ、3日を経ても粘度変化や固形物の析出等が認められず、非常に安定であった。
尚、本実施例で用いた非線形光学活性有機化合物は、一般式(1)で示される構造であり、且つ、環構造を含むπ共役系電子吸引性基を有し、しかもZ3−Lmにおける両端に亘るπ共役系が、6個の不飽和結合が連なって形成されている。
−非線形光学材料(架橋硬化膜B)の作製、評価−
次に、原料溶液Bを用い、実施例1と同様にして、本発明の非線形光学材料である架橋硬化膜B(非線形光学活性化合物骨格の濃度:約50質量%)を作製し、実施例1と同様にしてその膜特性、非線形光学性能等を評価した。
得られた各種評価結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例2で用いた非線形光学活性有機化合物と同一の非線形光学活性構造を有する下式に示す非線形光学活性有機化合物5質量部と、PMMA樹脂5質量部とを、シクロペンタノン60質量部に溶解させた溶液を、実施例1と同様にして、ITOをコートしたガラス基板表面にスピンコート法により塗布し、140℃にて30分乾燥させたところ、非線形光学活性有機化合物の微結晶が全面に析出してしまい、クリアな膜は得られなかった。
Figure 2006276066
(比較例2)
比較例1における非線形光学活性有機化合物とPMMA樹脂の添加量をそれぞれ、2質量部、8質量部に変更した以外は比較例1と同様にして膜厚が0.5μmの非線形光学材料(非線形光学活性化合物の濃度:20質量%)を作製した。
この非線形光学材料について、実施例1と同様にしてその膜特性、非線形光学性能等を評価した。尚、この系は熱可塑系であり、乾燥時およびポーリング時の加熱によって架橋硬化は行われない。
得られた各種評価結果を表1に示す。
なお、表1における各評価項目は、以下の基準で判定した。
− ポットライフ−
○:原料溶液のポットライフが3日以上。
△:原料溶液のポットライフが3日未満。
×:原料溶液のポットライフが1時間未満。
(上記ポットライフとは、液粘度上昇や析出物がなく、均一に塗工できる状態をいう)。
−成膜性−
○:架橋硬化膜の目視により、クラック;結晶析出等の相分離;膜剥がれ等の欠陥が全く認められない。
△:架橋硬化膜の目視により、何らかの欠陥が僅かに認められる。
×:架橋硬化膜の目視により、何らかの欠陥が全面に認められる。
−耐溶剤性−
○:膜をシクロペンタノンに10分間浸漬しても、膜の溶解や変質が全く認められない。
△:膜をシクロペンタノンに10分間浸漬すると、膜に荒れ等の変質が認められるが、膜は完全には溶解しない。
×:架橋硬化膜をシクロペンタノンに10分間浸漬すると完全に膜が溶解。
−配向状態の経時安定性−
○:10日間以上暗所に保管した後のオーダーパラメーターの低下が20%未満。
×:10日間以上暗所に保管した後のオーダーパラメーターの低下が20%以上。
−非線形光学性能−
実施例1の2次高調波の発生光強度のレベルを○とし、以下のように判断した。
○:2次高調波の発生光強度が実施例1と同等以上。
△:2次高調波の発生光強度が実施例1の半分以上。
×:2次高調波の発生光強度が実施例1の半分未満。
−非線形光学性能の熱安定性(配向状態の熱安定性)−
○:150℃1時間保持後の2次高調波の発生光強度が初期と同等。
△:150℃1時間保持後の2次高調波の発生光強度が初期の半分以上。
×:150℃1時間保持後の2次高調波の発生光強度が初期の半分未満。
(実施例3)
本発明の非線形光学材料を用い、図4に示すような逆リッジ型導波路構造を有するMach−Zehnder型光変調器(非線形光学素子)を作製した。
まず、表面にパターン化された下部電極5として金属マスクを用いてAuをスパッタ法により設けたシリコン基板6上に、下部クラッド層4を、ナガセケムテックス社製エポキシ系UV硬化樹脂を用いて厚さ4μmに形成した。この下部クラッド層4の表面に、幅4μm、深さ1μmの導波路チャネルとなる2つの溝を、フォトリソグラフ法と反応性イオンエッチング法を用い形成した。
この下部クラッド層4の表面に、実施例2で用いた原料溶液Bを用いて厚さ4μmのコア層3を形成し、コア層3の塗布後に、グリッド電極の印加電圧を600Vに変更した以外は実施例2と同様にして加熱硬化と電界ポーリング処理とを行った。
上部クラッド層2は、PMMA樹脂のシクロペンタノン溶液を用いて、厚さ3μmに形成した。
上部クラッド層2上にAuをスパッタすることにより、上部電極1を形成して、本発明の非線形光学素子を作製した。尚、上下電極対によって導波路チャネル部分に電界が印加される導波路長さ(相互作用長)は2cmとした。
得られた光変調器の電気光学性能を、1550nmのレーザー入力光に対し、上下電極対に駆動電圧を印加し、出力光強度の変調を確認する方法にて評価した。尚、分岐部左右の導波路チャネルに逆方向の駆動電圧を印加するデュアル駆動を行った。その結果、駆動電圧に応じて出力光強度が変調する電気光学特性が確認できた。変調能力を示す半波電位(Half−wave Voltage)は約10Vと非常に低く、本光変調器が優れた電気光学性能を有することが確認できた。また、本光変調器を、100℃に1時間保持した後に、再度、光変調特性を評価したところ、初期と同等の特性を示し、本光変調器が高い熱安定性を有することが確認できた。
(比較例3)
実施例3において、コア層を比較例1の非線形光学材料に代えた以外は実施例3と同様にして非線形光学素子を作製しようとしたところ、上部クラッド層の塗布時に、下層のコア層に著しい膜荒れが生じ、評価に耐える非線形光学素子を得ることはできなかった。
Figure 2006276066
本発明によれば、湿式法を用いて非線形光学材料を形成する際の作業性に優れ、且つ、それを用いて作製される非線形光学材料および非線形光学素子の非線形光学性能が優れた非線形光学材料製造用の原料溶液を提供することができる。
また、本発明によれば、優れた非線形光学性能と架橋硬化によるその高い熱安定性を兼ね備えた非線形光学材料を簡便に提供でき、さらにそれを活用することによって、安定性が高く、かつ長寿命の優れた非線形光学素子を安価に提供することができる。
本発明の非線形光学素子である導波路型電気光学素子の構成の1例を示す断面模式図である。 本発明の非線形光学素子である導波路型電気光学素子の構成の他の1例を示す断面模式図である(チャネル型導波路構造)。 本発明の非線形光学素子である導波路型電気光学素子の構成の他の1例を示す断面模式図である(リッジ型導波路構造)。 本発明の非線形光学素子の一例である光変調器の断面模式図である。
符号の説明
1 上部電極
2 上部クラッド層
3 コア層
4 下部クラッド層
5 下部電極
6 基板

Claims (13)

  1. 湿式法による非線形光学材料製造用の原料溶液であって、2つ以上の開環重合性官能基を有する非線形光学活性有機化合物を含むことを特徴とする非線形光学材料製造用の原料溶液
  2. 湿式法による非線形光学材料製造用の原料溶液であって、2つ以上の開環重合性官能基を有するマトリックス形成化合物と、該開環重合性官能基と反応連結し得る官能基を1つ以上有する非線形光学活性有機化合物とを含むことを特徴とする非線形光学材料製造用の原料溶液。
  3. 前記非線形光学活性有機化合物が、下記一般式(1)で示されるプッシュ−プル型π共役系化合物であることを特徴とする請求項1に記載の非線形光学材料製造用の原料溶液。
    Figure 2006276066
    (一般式(1)中、Z1、Z2及びZ3は、互いに独立に置換基を有してもよい芳香族基を示し、Lは置換基を有してもよいπ共役基を示し、Aは置換基を有してもよい電子吸引性基を示す。尚、Z1、Z2、Z3、L及びAは、各々任意のいずれかと連結して環構造を形成してもよい。但し、Z1、Z2、Z3、L及びAの1又は2以上の置換基中には、開環重合性官能基を有し、該開環重合性官能基は非線形光学活性有機化合物1分子中に2つ以上含まれる。mは0または1を示す。)
  4. 前記非線形光学活性有機化合物が、下記一般式(2)で示されるプッシュ−プル型π共役系化合物であることを特徴とする請求項2に記載の非線形光学材料製造用の原料溶液。
    Figure 2006276066
    (一般式(2)中、Z4、Z5及びZ6は、互いに独立に置換基を有してもよい芳香族基を示し、Dは置換基を有してもよいπ共役基を示し、Eは置換基を有してもよい電子吸引性基を示す。尚、Z4、Z5、Z6、D及びEは、各々任意のいずれかと連結して環構造を形成してもよく、また、Z4、Z5、Z6、D及びEの置換基のうち少なくとも1つは1つ以上の前記開環重合性官能基と反応連結し得る官能基を有する。nは0または1を示す。)
  5. 前記一般式(1)中のAが、置換基を有してもよい、環構造を含むπ共役系電子吸引性基であることを特徴とする請求項3に記載の非線形光学材料製造用の原料溶液。
  6. 前記一般式(2)中のEが、置換基を有してもよい、環構造を含むπ共役系電子吸引性基であることを特徴とする請求項4に記載の非線形光学材料製造用の原料溶液。
  7. 前記一般式(1)中のZ3−Lmにおける両端に亘るπ共役系が、5個以上の不飽和結合が連なって形成されてなることを特徴とする請求項3に記載の非線形光学材料製造用の原料溶液。
  8. 前記一般式(2)中のZ6−Dnにおける両端に亘るπ共役系が、5個以上の不飽和結合が連なって形成されてなることを特徴とする請求項4に記載の非線形光学材料製造用の原料溶液。
  9. 前記開環重合性官能基が、環状エーテル、環状チオエーテル、環状エステル、環状チオエステル、環状アミド、環状カーボネート、環状サルファイト及び環状ジチオカーボネートから選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の非線形光学材料製造用の原料溶液。
  10. 前記開環重合性官能基と反応連結し得る官能基が、カルボキシル基、アミノ基又はフェノール性水酸基であることを特徴とする請求項2に記載の非線形光学材料製造用の原料溶液。
  11. 更に、熱および/または光により開環重合に対する触媒活性を発現する潜在性触媒を添加したことを特徴とする請求項1または2に記載の非線形光学材料製造用の原料溶液。
  12. 請求項1〜11の何れか1項記載の原料溶液を塗布し製造されたものである非線形光学材料。
  13. 請求項12に記載の非線形光学材料を有することを特徴とする非線形光学素子。
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CN101718939B (zh) * 2009-11-03 2011-08-24 北京大学 一种光子晶体微腔结构及其制作方法
KR101758726B1 (ko) 2009-09-18 2017-07-31 가부시키가이샤 아데카 신규 에피술피드 화합물, 상기 에피술피드 화합물을 함유하는 경화성 수지 조성물 및 그 경화물

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