JP2006010958A - 有機機能性材料及びそれを用いた有機機能性素子 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、コピー機、プリンター、電子ペーパー等に利用できる有機電子写真感光体;電子表示板、ディスプレー等に利用できる有機電界発光素子;光情報通信、光情報処理等において有用な光変調器、光スイッチ、光集積回路、光コンピューター、光メモリー、波長変換素子、フォログラフ素子等に利用できる有機非線形光学素子;等の光及び/または電気に関する機能を発揮する有機機能性素子に関する。さらに、本発明は、前記有機機能性素子を形成するために必要とされる有機機能性材料に関する。
光を用いる光情報通信、光情報処理、イメージング等の分野において重要な波長変換素子、光変調器、光スイッチ、等の機能性素子の多くは、非線形光学材料、特に2次非線形光学材料を用いることによって具現化される。2次非線形光学材料としては、これまでにニオブ酸リチウム、燐酸二水素カリウム等の無機非線形光学材料が既に実用化され、広く用いられているが、近年、これらの無機材料に対し、高い非線形光学性能、安価な材料ならびに製造コスト、高い量産性、等の優位性を有する有機非線形光学材料が注目され、実用化に向けての活発な研究開発が行われている。
2次非線形光学効果は、原理的に系に対称中心が存在しないことが必須要件であり、非線形光学活性を有する有機化合物を対称中心の存在しない結晶構造に結晶化させた系(以下、「結晶系」と称する)と、非線形光学活性を有する有機化合物を高分子バインダーに含有または結合させ、該非線形光学活性有機化合物を何らかの手段によって配向させた系(以下、「高分子系」と称する)とに大別される。
前記結晶系の有機非線形光学材料は、非常に高い非線形光学性能を発揮し得ることが知られているが、結晶構造の人為的な制御は現状では不可能に近く対称中心の存在しない結晶構造が得られことは稀である。したがって、たとえ得られたとしても素子化に必要な大きな有機結晶を作製することは困難であり、また有機結晶の強度は非常に脆く素子化工程で破損してしまう等の問題がある。これに対し、前記高分子の系有機非線形光学材料は、高分子バインダーにより、素子化するに当って有用な成膜性、機械的強度、等の好ましい特性が付与され、実用化に向けてのポテンシャルが高く有望視されている。
前記高分子系の有機非線形光学材料では、高分子バインダー中に非線形光学活性有機化合物が凝集せずに均一に分散または結合され、光学的に均質透明となることが要求される。さらに、前記の通り2次の非線形光学効果を発現するには、非線形光学活性有機化合物を何らかの手段によって配向させ異方性を付与しなければならず、また、有機機能性素子に利用するに当っては、その配向状態が素子の置かれる温湿度環境にあって長期間に亘って安定に保持されなければならない。
したがって、高分子系の有機非線形光学材料に用いる非線形光学活性を有する有機化合物としては、高い非線形光学性能に加えて、凝集性が低く、高分子バインダーとの相溶性に優れることが要求される。また、高分子系の有機非線形光学材料は一般に薄膜の形態にて素子化され、該薄膜の形成法としては湿式塗布法が好適に用いられるため、高分子系有機非線形光学材料に用いる非線形光学活性有機化合物としては、塗布溶剤への高い溶解性が要求される。一方、高分子バインダーとしては、高い成膜性、機械的強度等に加え、内包する非線形光学活性有機化合物の配向状態を安定に保持するための高いガラス転移温度が要求される。
また、高分子系の有機非線形光学材料において、前記2次の非線形光学活性を生起させるには、上述の様に非線形光学活性有機化合物を配向させる必要があるが、このための配向法としては、一般に電界ポーリング法が用いられる。該電界ポーリング法は、非線形光学材料に電界を印加し、非線形光学活性化合物の双極子モーメントと印加電界とのクーロン力によって、非線形光学活性化合物を印加電界方向に配向させる配向法であり、一般に、電界印加に加え、有機非線形光学材料のガラス転移温度付近の温度にまで加熱することによって、非線形光学活性化合物の分子運動を促進させる方法である。
前記非線形光学活性を有する有機化合物としては、π共役鎖の一方の端に電子供与性基、他方の端に電子吸引性基を有する、所謂プッシュ−プル型のπ共役系化合物が有効であることが知られている。例えば、π共役鎖としてのジアゾベンゼン構造の4位に電子供与性基としてのN−エチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミノ基、4’位に電子吸引性基としてニトロ基を有するDisperse Red 1(一般にDR1と略称される)が、代表的な非線形光学活性を有する有機化合物としてよく知られている。しかしながら、DR1は通常の高分子バインダーとの相溶性が低いだけでなく、昇華し易いため、乾燥時や電界ポーリング時の加熱に伴い消失してしまったり、ジアルキルアミノ基が酸化され変質してしまったり、非線形光学性能が低かったりする等の問題がある。
これらの問題を解決するために、これまでに種々の非線形光学活性を有する有機化合物が開発されてきたが、未だに全てを同時に満足するものは見出されていない。特に、高い非線形光学性能と高い高分子バインダー相溶性の両立が困難である。すなわち、プッシュ−プル型のπ共役系化合物においては、一般に、π共役鎖を長くする、電子吸引性基の電子吸引能を強くする、電子供与性基の電子供与能を強くする、等によって非線形光学性能が向上することが知られているが、これらは同時に、凝集性の増加を伴い高分子バインダーとの相溶性の低下を齎す。
例えば、下記の構造の化合物(式中、「Me」はメチル基、「tBu」はターシャリーブチル基を各々表す)が、非常に高い非線形光学性能を有するものの、凝集性が非常に高く結晶の析出を抑えて高分子バインダー中に分子分散させた膜を得ることが非常に困難であることが開示されている(例えば、非特許文献1参照)。また、塗布溶剤として沸点の低いハロゲン系の溶剤を用いる必要があることも開示されているが、ハロゲン系の溶剤は大気環境への悪影響が大きく、実用化に当っては好ましくない。
上記高分子バインダーとの相溶化に関しては、3,5,3’,5’−テトラアルキルジフェノキノン誘導体電子吸引性化合物や、4H−チオピラン−1,1−ジオキシド誘導体電子吸引性化合物が、強い電子吸引性と高いバインダー相溶性とを有し、高分子バインダーに分散することによって優れた電子輸送材料として機能することが開示されている(例えば、非特許文献2、特許文献1参照)。
しかしながら、これらの電子吸引性基を有する化合物は、電子写真用感光体としてはある程度の特性が得られるものの、非線形光学特性等の多様な機能特性への適用という点で十分なものではなかった。
しかしながら、これらの電子吸引性基を有する化合物は、電子写真用感光体としてはある程度の特性が得られるものの、非線形光学特性等の多様な機能特性への適用という点で十分なものではなかった。
一方、前記高分子バインダーとしては、ポリメチルメタクリレート(一般にPMMAと略称される)が最もよく検討されてきたが、PMMAのガラス転移温度は100℃程度と低く、PMMAを高分子バインダーとして用いた分散系の有機非線形光学材料の配向状態は室温でも徐々に緩和し、非線形光学性能が経時で著しく低下してしまうため、機能性素子としての実用化には耐えないことが知られている(例えば、非特許文献3参照)。
この問題を解決するために、PMMAに代わる高分子バインダーの探索が活発に行われ、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリスルフォン等のPMMAよりもガラス転移温度の高い高分子の有効性が報告されているが(例えば、特許文献2参照)、これらの高いガラス転移温度を有する高分子バインダーを用いると、電界ポーリング時に必要となる加熱温度も上がることになり、前記DR1等の非線形光学活性有機化合物が電界ポーリング時に昇華により消失してしまったり、酸化されてしまったりするという問題があった。
また、これらの高いガラス転移温度を有する高分子バインダーとDR1等の非線形光学活性有機化合物との相溶性は必ずしもよくなく、非線形光学性能を高めるために非線形光学活性有機化合物を高濃度で添加すると、それらが凝集化あるいは結晶化してしまったり、また低濃度であっても加熱や経時により凝集化あるいは結晶化が起こってしまったりする問題もあった。
以上述べたような高分子系の有機非線形光学材料における、高い機能(非線形光学材料においては非線形光学性能)の発現、及び高分子バインダーとの高い相溶性の両立という課題は、有機機能性化合物を高分子バインダーに含有させてなる有機機能性材料に共通する課題である。
Chemistry of Materials、2001年、13巻、3043〜3050頁 Chemistry of Materials、1991年、3巻、709〜714頁 Chemical Reviews、1994年、94巻、1号、31〜75頁 米国特許第4968811号明細書
特開平6−202177号公報
Chemistry of Materials、2001年、13巻、3043〜3050頁 Chemistry of Materials、1991年、3巻、709〜714頁 Chemical Reviews、1994年、94巻、1号、31〜75頁
本発明は、以上のような従来技術の問題を解決することを目的とする。
すなわち、本発明は、優れた機能性能に加え、凝集性が低く高分子バインダーとの相溶性に優れ、かつ耐酸化性や耐昇華性等にも優れた特定の機能性有機化合物を用いることによって、高いガラス転移温度を有する高分子バインダーが有効に活用でき、優れた機能性及びその優れた安定性を兼ね備えた有機機能性材料、並びにそれを用いた有機機能性素子を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、優れた機能性能に加え、凝集性が低く高分子バインダーとの相溶性に優れ、かつ耐酸化性や耐昇華性等にも優れた特定の機能性有機化合物を用いることによって、高いガラス転移温度を有する高分子バインダーが有効に活用でき、優れた機能性及びその優れた安定性を兼ね備えた有機機能性材料、並びにそれを用いた有機機能性素子を提供することを目的とする。
本発明者等は、前記の課題を解決すべく、有機機能性化合物ならびに高分子バインダーに関して鋭意検討を行った結果、特定の有機機能性化合物を活用することにより、前記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
<1> 有機機能性化合物を含有する有機機能性材料であって、前記有機機能性化合物として、下記一般式(1)で示される化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする有機機能性材料である。
<1> 有機機能性化合物を含有する有機機能性材料であって、前記有機機能性化合物として、下記一般式(1)で示される化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする有機機能性材料である。
上記式中、X1は置換基を有してもよい有機基もしくはハロゲン原子であり、L1は置換基を有してもよいπ共役基であり、D1は置換基を有してもよい電子供与性基である。また、mは0または1である。
<2> 前記化合物におけるD1が3級アミノ基を含むことを特徴とする<1>に記載の有機機能性材料である。
<3> 前記化合物におけるD1−L1が、下記一般式(2)で示される構造であることを特徴とする<2>に記載の有機機能性材料である。
上記式中、Z1〜Z3は互いに独立に置換または未置換の芳香族基であり、L’は環構造に含まれもせず、あるいは隣接もしていない不飽和結合を含まず、置換基を有してもよいπ共役基である。また、Z1〜Z3、L’はいずれかが連結して環構造を形成してもよい。なお、mは0または1である。
<4> 有機機能性化合物を含有する有機機能性材料であって、前記有機機能性化合物として、下記一般式(3)で示される化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする有機機能性材料である。
上記式中、X2は置換基を有してもよい有機基もしくはハロゲン原子であり、L2は置換基を有してもよいπ共役基であり、D2は置換基を有してもよい電子供与性基である。また、nは0または1である。
<5> 前記化合物におけるD2が3級アミノ基を含むことを特徴とする<4>に記載の有機機能性材料である。
<6> 前記化合物におけるD2−L2が、下記一般式(4)で示される構造であることを特徴とする<5>に記載の有機機能性材料である。
上記式中、Z4〜Z6は互いに独立に置換または未置換の芳香族基であり、L”は環構造に含まれもせず、あるいは隣接もしていない不飽和結合を含まず、置換基を有してもよいπ共役基である。また、Z4〜Z6、L”はいずれかが連結して環構造を形成してもよい。なお、nは0または1である。
<7> 少なくとも有機機能性化合物を高分子バインダーに分散または結合させてなることを特徴とする<1>〜<6>のいずれかに記載の有機機能性材料である。
<8> 前記高分子バインダーとして、少なくとも、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリ環状オレフィンのいずれかを含有することを特徴とする<7>に記載の有機機能性材料である。
<9> <1>〜<8>のいずれかに記載の有機機能性材料を用いたことを特徴とする有機機能性素子である。
<10> 非線形光学機能に基づき動作することを特徴とする<9>に記載の有機機能性素子である。
本発明の有機機能性材料は、非線形光学機能等の機能性能、アモルファス性、耐熱性、耐昇華性等に優れた特定の構造の有機機能性化合物を、高いガラス転移温度を有する高分子バインダーに分散または結合させてなることを特徴とし、材料中に高い濃度で有機機能性化合物を存在させても、これらが凝集せずに均一な分散状態を取るため、高い光学品質と優れた機能性能を兼ね備える。また、特に有機非線形光学材料として用いた場合には、配向状態の耐熱性ならびに経時安定性が高く、長期に亘って優れた性能を保持できる等の好ましい効果を奏する。このため、本発明の有機機能性材料を用いることによって、諸特性ならびに安定性に優れた有機機能性素子を具現化することができる。
以下に、本発明を実施の形態に沿って詳しく説明する。
<有機機能性材料>
本発明の有機機能性材料は、第1の有機機能性材料及び第2の有機機能性材料の2つに分けられる。
本発明の第1の有機機能性材料は、有機機能性化合物を含有する有機機能性材料であって、下記一般式(1)で示される化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする。
<有機機能性材料>
本発明の有機機能性材料は、第1の有機機能性材料及び第2の有機機能性材料の2つに分けられる。
本発明の第1の有機機能性材料は、有機機能性化合物を含有する有機機能性材料であって、下記一般式(1)で示される化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする。
上記式中、X1は置換基を有してもよい有機基あるいはハロゲン原子であり、L1は置換基を有してもよいπ共役基であり、D1は置換基を有してもよい電子供与性基である。また、mは0または1である。
また、本発明の第2の有機機能性材料は、有機機能性化合物を含有する有機機能性材料であって、前記有機機能性化合物として、下記一般式(3)で示される化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする。
上記式中、X2は置換基を有してもよい有機基あるいはハロゲン原子であり、L2は置換基を有してもよいπ共役基であり、D2は置換基を有してもよい電子供与性基である。また、nは0または1である。
上記一般式(1)及び(3)で示される化合物は、発達したπ共役系と高い電子分極性等を有するため、両極性電荷輸送機能、電荷発生機能等の光導電機能;フォトルミネッセンス機能、エレクトロルミネッセンス機能等の発光機能;高調波発生機能、電気光学機能、フォトリフラクティブ機能等の非線形光学機能;等の機能を有する。
前述のように、一定の構造を有する化合物が高分子バインダーとの相溶性に優れることがわかっているが、本発明者等はこれらと異なる構造についても検討を行い、前記一般式(1)及び(3)で示される化合物における四角酸誘導体構造も高分子バインダーとの相溶性に優れることを見出した。
さらに、これらの電子吸引性化合物にD1−L1基、D2−L2基を連結させ、それらをプッシュ−プル型π共役系化合物の電子吸引性基として用いることによって、高いバインダー相溶性を保持したまま、優れた非線形光学機能や両極性電荷輸送機能等の好ましい機能が発現することを見出した。
(有機機能性化合物)
以下に、まず本発明における前記一般式(1)及び(3)で示される有機機能性化合物について、併せて説明する。
一般式(1)及び(3)中におけるX1、X2は、置換基を有してもよい有機基もしくはハロゲン原子である。好ましい該有機基としては、下記一般式(5)または一般式(6)で示される構造が挙げられる。
以下に、まず本発明における前記一般式(1)及び(3)で示される有機機能性化合物について、併せて説明する。
一般式(1)及び(3)中におけるX1、X2は、置換基を有してもよい有機基もしくはハロゲン原子である。好ましい該有機基としては、下記一般式(5)または一般式(6)で示される構造が挙げられる。
上記式中、Yは酸素原子あるいは硫黄原子であり、R1は置換基を有してもよい炭化水素基あるいは水素原子である。また、R2、R3はそれぞれ置換基を有してもよい炭化水素基あるいは水素原子であり、R2とR3とは互いに結合して環構造をなしていてもよい。
また、前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、あるいは臭素原子を好ましく挙げることができる。
なお、X1、X2の好ましい構造、原子をまとめて示したが、X1、X2は同一であってもよく異なっていてもよい。
なお、X1、X2の好ましい構造、原子をまとめて示したが、X1、X2は同一であってもよく異なっていてもよい。
一般式(1)及び(3)で示される化合物におけるL1及びL2は、置換基を有してもよいπ共役基であり、好ましくは環構造に含まれもせず、直結もせず、あるいは隣接もしていない脂肪族不飽和結合を含まないπ共役基であり、さらに好ましくは芳香族基と隣接しない脂肪族不飽和基を含まないπ共役基である。
前記L1及びL2における「環構造に含まれもせず、直結もせず、あるいは隣接もしていない不飽和結合」とは、環構造から孤立している不飽和結合を意味し、このような不飽和結合は化学的に不安定であるため、化合物中に含まれることが好ましくない。
なお、一般式(1)及び(3)におけるm、nは0または1であり、これらが0のときはD1、D2が前記四角酸誘導体構造に直結することとなる。
なお、一般式(1)及び(3)におけるm、nは0または1であり、これらが0のときはD1、D2が前記四角酸誘導体構造に直結することとなる。
また、D1及びD2は置換基を有してもよい電子供与性基であり、好ましくは3級アミノ基を含むものである。D1及びD2が3級アミノ基を含むと、高い電子供与性が得られ、非線形光学性能、正孔輸送性能等の点で好ましい。
特に、一般式(1)または(3)で示される化合物におけるD1−L1またはD2−L2が、各々下記一般式(2)または(4)で示される構造の有機機能性化合物は、耐熱性、耐酸化性、耐光性、耐昇華性、溶解性、合成の容易さ等の点で、特に好ましい。
上記一般式(2)及び(4)で示される構造において、Z1〜Z6は互いに独立に置換または未置換の芳香族基であり、好ましくは置換基を有してもよいアリール基あるいは置換基を有してもよいアリーレン基である。また、Z1及び/またはZ2、Z4及び/またはZ5は、各々メチル基よりもバルキーな置換基を有する芳香族基であることが好ましく、環構造を含む置換基を有する芳香族基であることがより好ましい。さらに、Z3及びZ6は置換または未置換の1,4−フェニレン基であることが好ましく、さらに好ましくは無置換の1,4−フェニレン基である。
なお、Z1〜Z3及びL’、あるいはZ4〜Z6及びL”は、各々任意のいずれかが互いに連結して環構造を形成してもよい。また、m、nは0または1であり、これらが0のときは一般式(2)及び(4)におけるトリアリールアミンが前記四角酸誘導体構造に直結することとなる。
本発明において好適に用いられる機能性有機化合物の具体例としては、下記のものが例示できる。なお、下記構造式は簡単化のため平面的に、かつ構造異性に関しては一つのケースで標記しているが、実際には立体的な構造を有し、かつ構造異性に関してはとり得るいずれの構造でも構わない。
前記一般式(1)及び(3)で示される化合物の合成方法としては、任意の如何なる方法も利用可能である。例えば、一般式(1)及び(3)におけるL部(L1、L2)が単独2重結合を含む場合、この形成には下記に示すような、対応するホルミル化合物と対応する電子吸引性基(Aと標記する)に隣接したメチル基を有する化合物とを、塩基の存在下にて脱水縮合させる方法が有用である。対応するホルミル化合物の合成方法としては、Vilsmeier法等のホルミル化法等が利用できる。また、前記電子吸引性基に隣接したメチル基を有する化合物の合成方法としては、前述の「Chemistry of Materials、1991年、3巻、709〜714頁」、「米国特許第4968811号明細書」等に記載の方法が利用できる。
一方、L部がない場合には、例えば下記に示すような、四角酸(1,2−ジヒドロキシ−シクロブテン−3,4−ジオン)の塩化物あるいはアルコキシ誘導体と芳香族化合物とを、Friedel−Crafts反応類似条件で反応させることによって合成が可能である。なお、下記においてXはハロゲン原子、Arは芳香族基を表す。
また、一般式(1)及び(3)におけるD部(D1、D2)の形成反応としては、Ulmannカップリング反応、Suzuki反応、Heck反応、Wittig反応等、既知の反応を用いることができる。
さらに、一般式(3)で示される化合物は、相当する一般式(1)で示される化合物とマロノニトリルとの縮合反応により合成することができる。
さらに、一般式(3)で示される化合物は、相当する一般式(1)で示される化合物とマロノニトリルとの縮合反応により合成することができる。
以上述べた本発明に用いられる有機機能性化合物の昇華温度は、120℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
また、本発明に用いられる有機機能性化合物としては、前述のように、有機機能性材料を作製する際の塗布液の溶剤に対する溶解性に優れることが必要とされる。該溶解性としては、例えば、テトラヒドロフラン、シクロペンタノン、クロロホルム、N,N−ジメチルアセトアミド等のような溶剤に対し、室温で1質量%以上溶解することが好ましく、10質量%以上溶解することがより好ましい。
さらに、本発明における有機機能性化合物を非線形光学活性化合物として用いる場合、その電気光学定数は、1pm/V以上であることが好ましく、10pm/V以上であることがより好ましい。
なお、上記電気光学定数は、通常のATR法やエリプソ反射法等の測定方法により測定することができる。
なお、上記電気光学定数は、通常のATR法やエリプソ反射法等の測定方法により測定することができる。
本発明の有機機能性材料は、上記の有機機能性化合物を含有することを特徴とし、有機機能性化合物単独の単結晶、多結晶、アモルファス固体として利用してもよいが、一般に素子化するに当っての成膜性や機械的強度等の要請から、前記有機機能性化合物を高分子バインダーに分散または結合した複合材料として用いることが好ましい。
(高分子バインダー)
本発明に用いる高分子バインダーは、光学品質ならびに成膜性に優れるものであれば如何なるものでも構わないが、ガラス転移温度が100℃以上であるものが好ましい。特に好ましくは、ガラス転移温度が140℃以上で、かつ機械的強度の高いものであり、具体的にはポリイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリ環状オレフィン等が挙げられる。
前記一般式(1)及び(3)で示される有機機能性化合物は、これらの高分子バインダーと高い相溶性を示す。
本発明に用いる高分子バインダーは、光学品質ならびに成膜性に優れるものであれば如何なるものでも構わないが、ガラス転移温度が100℃以上であるものが好ましい。特に好ましくは、ガラス転移温度が140℃以上で、かつ機械的強度の高いものであり、具体的にはポリイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリ環状オレフィン等が挙げられる。
前記一般式(1)及び(3)で示される有機機能性化合物は、これらの高分子バインダーと高い相溶性を示す。
なお、本発明において、前記高分子バインダー及び後述する有機機能性材料のガラス転移温度の測定には、示差走査熱量計(DSC)を用い、室温から毎分10℃の昇温速度で測定を行った時の、ガラス転移に伴う吸熱過程の立ち上がり部分の勾配とベースラインとの交点に相当する温度をガラス転移温度とした。
前記本発明における有機機能性化合物は、高分子バインダー中に微結晶状態または分子状態にて分散された状態にて有機機能性材料として供されるが、光に関する機能を活用する素子に応用するに当たっては分子状態にて分散することが、透明性等の光学品質の点で好ましい。また、上記の有機機能性化合物を高分子バインダーの側鎖または主鎖中に化学的に連結させてもよい。
本発明の有機機能性材料の形態は、如何なるものでも構わないが、非線形光学素子への応用に当っては薄膜の形態にて利用されることが一般的である。本発明の有機機能性材料を含有する薄膜の作製方法としては、射出成形法、プレス成形法、ソフトリソグラフ法、湿式塗布法等の公知の手法が利用可能であるが、製造装置の簡便性、量産性、膜品質(膜厚の均一性、気泡等の欠陥の少なさ等)等の観点から、少なくとも前記の有機機能性材料と高分子バインダーとを有機溶剤に溶解させた溶液を、スピンコート法、ブレードコート法、浸漬塗布法、インクジェット法、スプレー法等の手法により適当な基板上に塗布することによって成膜する湿式塗布法が好ましい。
上記湿式塗布法において用いる有機溶剤は、用いる有機機能性化合物と高分子バインダーとを溶解し得るものであれば如何なるものでも構わないが、その沸点が100〜200℃の範囲内にあるものが好ましい。沸点が100℃未満の有機溶剤を用いると、塗布溶液の保管時に溶剤揮発が起こり塗布溶液の粘度が変化(上昇)してしまったり、塗布時に溶剤の揮発速度が早過ぎ結露が発生してしまったりする等の問題が顕著となる傾向にある。一方、沸点が200℃を超える有機溶剤を用いると、塗布後の溶剤除去が困難になり残存した有機溶剤が高分子バインダーの可塑剤として働きガラス転移温度の低下を齎す等の問題が発生する場合がある。
好ましい有機溶剤の例としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、トルエン、クロロベンゼン、キシレン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。なお、これらの有機溶剤は単独で用いても、複数を混合して用いてもよい。また、これらの好ましい有機溶剤に沸点が100℃未満のテトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルエチルケトン、イソプロパノール等の有機溶剤を添加した混合溶剤も利用可能である。
本発明の有機機能性材料において、有機機能性化合物の含有量は、用いる有機機能性化合物の種類、要求される機能性能や機械的強度等によって異なるため一概には規定できないが、一般的に、有機非線形光学材料全重量に占める割合として、1〜90質量%の範囲内であることが好ましい。その理由は、1質量%未満では、十分な機能性能が得られない場合が多く、また90質量%を超えると、十分な機械的強度が得られない等の問題が発生する傾向にあるためである。有機機能性化合物の含有量のより好ましい範囲は10〜75質量%の範囲であり、さらに好ましくは25〜60質量%の範囲である。
本発明の有機機能性材料には、前記の有機機能性化合物及び高分子バインダーの他に、必要に応じ種々の添加物を加えることができる。例えば、有機機能性化合物及び/または高分子バインダーの酸化劣化を抑制する目的で2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ヒドロキノン等の公知の酸化防止剤を、有機機能性化合物及び/または高分子バインダーの紫外線劣化を抑制する目的で2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等の公知の紫外線吸収剤を用いることができる。
また、湿式塗布法を用いる場合には、その塗布液に、塗布膜の表面平滑性を改善する目的でシリコーンオイル等の公知のレベリング剤を、あるいは架橋硬化性官能基を有する有機機能性化合物及び/または高分子バインダーを用いる場合には、その架橋硬化を促進させる目的で公知の硬化触媒や硬化助剤を添加してもよい。
本発明の有機機能性材料は、以上のようにして作製した塗布液等を用い、例えば前述のスピンコート法などによって薄膜として形成することによって作製される。前記のように、本発明においては高分子バインダーとしてガラス転移温度が比較的高いものを用いるが、作製された有機機能性化合物を含む有機機能性材料としても、耐熱性等の観点からガラス転移温度が高いことが望ましい。
よって、上記有機機能性材料のガラス転移温度としては、100℃以上とすることが好ましく、150℃以上とすることがより好ましい。
よって、上記有機機能性材料のガラス転移温度としては、100℃以上とすることが好ましく、150℃以上とすることがより好ましい。
有機機能性化合物として非線形光学活性を有する有機化合物を用いた高分子系の有機非線形光学材料において、2次の非線形光学活性を生起させるには、前述のように、非線形光学活性を有する有機化合物を配向させる必要がある。このための配向法としては、高分子系の有機非線形光学材料を表面に配向膜を有する基板上に塗布し、該配向膜の配向性により、高分子系の有機非線形光学材料中の非線形光学活性を有する有機化合物の配向を誘起する方法がある。また、光ポーリング法、光アシスト電界ポーリング法、電界ポーリング法等の公知のポーリング法も有効に利用できる。これらの中でも、電界ポーリング法は、装置の簡便性、得られる配向度合いの高さ等の点で特に好ましい。
上記電界ポーリング法は、非線形光学材料を一対の電極で挟み電界を印加するコンタクトポーリング法と、基板電極上の非線形光学材料の表面にコロナ放電を施し、帯電電界を印加するコロナポーリング法に大別される。電界ポーリング法は、非線形光学活性化合物の双極子モーメントと印加電界とのクーロン力によって、非線形光学活性化合物を印加電界方向に配向(ポーリング)させる配向法である。
電界ポーリング法においては、一般的に、電界を印加した状態で、非線形光学材料のガラス転移温度付近の温度に加熱することによって非線形光学活性化合物の電界方向への配向移動を促進させ十分な配向が誘起された後、電界を印加した状態のまま室温まで冷却し該配向状態を凍結した上で、印加電界を除去する。しかしながら、この配向状態は基本的に熱力学的非平衡状態であるため、ガラス転移温度以下の温度であっても経時にて徐々にランダム化し、非線形光学性能が低下してしまうという根本的な問題を抱えている。
上記経時による配向状態のランダム化は、非線形光学材料の置かれる環境温度とガラス転移温度の差が大きい程、緩やかに進行するため、ガラス転移温度の高いバインダー樹脂を用いることによって実際の使用においては実質的にこの問題を解決することができる。
なお、ポーリングされたかどうかを確認する指標として、どれだけの非線形光学分子(一般に二色性を有する)が電界方向に配向したかを表す数値(オーダーパラメータ:φ)がある。具体的には、分子の向きがランダムになっている時の吸光度をA0、電界方向(膜厚方向)に配向させたときの吸光度をAtとした場合、φは1−(At/A0)で計算できるものである。
上記オーダーパラメータは、全ての分子が完全に配向した理想的な状態では1、完全にランダムなときは0となる数値であり、値が大きいほど全体としての分子の配向度が高いことを表わす。この値を測定することにより、どれだけ効率よくポーリングできたかが判断でき、また、その安定性なども評価できる。
<有機機能性素子>
本発明の有機機能性素子は、本発明の有機機能性材料の持つ機能を活用することを特徴とし、その具体例としては、電荷輸送機能及び/または電荷発生機能を活用する有機電子写真感光体;電荷輸送機能及び/またはエレクトロルミネッセンス機能を活用する電界発光素子;フォトルミネッセンス機能を活用するレーザー素子または光増幅素子;高調波発生機能、電気光学機能、フォトリフラクティブ機能等の非線形光学機能を活用する非線形光学素子等が挙げられる。
本発明の有機機能性素子は、本発明の有機機能性材料の持つ機能を活用することを特徴とし、その具体例としては、電荷輸送機能及び/または電荷発生機能を活用する有機電子写真感光体;電荷輸送機能及び/またはエレクトロルミネッセンス機能を活用する電界発光素子;フォトルミネッセンス機能を活用するレーザー素子または光増幅素子;高調波発生機能、電気光学機能、フォトリフラクティブ機能等の非線形光学機能を活用する非線形光学素子等が挙げられる。
本発明の有機機能性材料は特に優れた非線形光学性能を有することから、本発明の有機機能性素子としては、非線形光学機能を有する本発明の有機機能性材料を用いた有機非線形光学素子が特に好ましい。
有機非線形光学素子としては、非線形光学効果に基き動作するものであれば如何なるものでもよく、その具体例としては、例えば、高調波発生素子、波長変換素子、フォトリフラクティブ素子、電気光学素子等が挙げられる。特に好ましくは、電気光学素効果に基き動作する光スイッチ、光変調器、位相シフト器等の電気光学素子である。
上記電気光学素子としては、例えば非線形光学材料を基板上に導波路構造として形成し、入力電気シグナル用の電極対で挟み込む構成とした素子として利用することが好ましい。
このような基板を構成する材料としては、アルミニウム、金、鉄、ニッケル、クロム、チタン等の金属;シリコン、ガリウム−ヒ素、インジウム−燐、酸化チタン、酸化亜鉛等の半導体;ガラス等のセラミックス;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエーテルケトン、ポリイミド等のプラスチック;等を用いることができる。
このような基板を構成する材料としては、アルミニウム、金、鉄、ニッケル、クロム、チタン等の金属;シリコン、ガリウム−ヒ素、インジウム−燐、酸化チタン、酸化亜鉛等の半導体;ガラス等のセラミックス;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエーテルケトン、ポリイミド等のプラスチック;等を用いることができる。
これらの基板材料の表面には、導電性膜が形成されていてもよく、該導電性膜の材料としては、アルミニウム、金、ニッケル、クロム、チタン等の金属;酸化スズ、酸化インジウム、ITO(酸化スズ−酸化インジウム複合酸化物)等の導電性酸化物;ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリアセチレン等の導電性高分子等が用いられる。これらの導電性膜は、蒸着、スパッタリング等の公知の乾式成膜法や、スプレー塗布法、浸漬塗布法、電解析出法等の公知の湿式成膜法を利用して形成され、必要に応じてパターンが形成されていてもよい。なお、導電性基板、あるいは、上記基板上に形成された導電性膜は、ポーリング時や素子としての動作時の電極(以下、「下部電極」と略す)として利用される。
基板上にはさらに、必要に応じて、その上に形成される膜と基板との接着性を向上させるための接着層、基板表面の凹凸を平滑化するためのレベリング層、あるいはこれらの機能を一括して提供する何らかの中間層が形成されていてもよい。このような膜を形成する材料としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、アミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ビニルアルコール樹脂、アセタール樹脂等およびそれらの共重合物;ジルコニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、シランカップリング剤等の架橋物およびそれらの共架橋物;等の公知のものを用いることができる。
本発明の有機機能性素子である電気光学素子は、導波路構造を含むものとして形成することが好ましく、本発明の有機機能性材料を、導波路のコア層に含有させることが特に好ましい。
本発明の有機機能性材料を含有するコア層と基板との間には、クラッド層(以下、「下部クラッド層」と略す)が形成されていてもよい。この下部クラッド層としては、コア層よりも屈折率が低く、コア層形成の際に侵されないものであれば如何なるものでもよい。このようなものとして、アクリル系、エポキシ系、シリコーン系等のUV硬化性あるいは熱硬化性の樹脂;ポリイミド;SiO2等が好ましく使用される。
本発明の有機機能性材料によるコア層を形成した後、さらにその上部にクラッド層(以下、「上部クラッド層」と略す)を下部クラッド層と同様にして形成してもよい。これにより、基板/下部クラッド層/コア層/上部クラッド層、という構成のスラブ型導波路が形成される。
また、コア層を形成した後、反応性イオンエッチング(RIE)、フォトリソグラフィー、電子線リソグラフィー等の半導体プロセス技術を用いた公知の方法によりコア層をパターニングし、チャネル型導波路あるいはリッジ型導波路を形成することもできる。あるいは、コア層の一部にUV光、電子線等をパターン化して照射することにより、照射部分の屈折率を変化させてチャネル型またはリッジ型導波路を形成することもできる。
前記上部クラッド層の表面に入力電気シグナルを印加するための電極(以下、「上部電極」と略す)を、前記上部クラッド層の所望の領域に形成することで基本的な電気光学素子を形成することができる。
上記のようにしてチャネル型導波路やリッジ型導波路を形成する際、コア層のパターンとしては、直線型、Y分岐型、方向性結合器型、Mach−Zehnder型等の公知のデバイス構造を構成することができ、光スイッチ、光変調器、位相シフト器等の公知の光情報通信用デバイスへの適用が可能である。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はそれらによって制限されるものではない。なお、下記実施例、比較例においては、有機機能性材料、有機機能性素子としての有機非線形光学材料、有機非線形光学素子の評価を行った。
<実施例1>
(有機非線形光学材料の作製)
表面に金製の平行電極対(電極間距離:20μm)が備えられたガラス基板(2cm×2cm)上に、前記一般式(1)で示される化合物の1種である下記構造式の非線形光学活性を有する有機化合物(昇華性を示さない)3質量部と、ポリカーボネートの1種であるPoly[Bisphenol A carbonate-co-4,4'-(3,3,5-trimethylcyclohexylidene)diphenol carbonate](Aldrich社製、ガラス転移温度:200℃)7質量部とを、シクロペンタノン(沸点:130℃)90質量部に溶解させた溶液をスピンコート法により塗布し、120℃にて1時間乾燥させ、膜厚が0.1μmの薄膜1を得た。
薄膜1は非常にクリアであり、前記非線形光学活性を有する有機化合物が均質に分散されていた。また、薄膜1のガラス転移温度は128℃であった。
(有機非線形光学材料の作製)
表面に金製の平行電極対(電極間距離:20μm)が備えられたガラス基板(2cm×2cm)上に、前記一般式(1)で示される化合物の1種である下記構造式の非線形光学活性を有する有機化合物(昇華性を示さない)3質量部と、ポリカーボネートの1種であるPoly[Bisphenol A carbonate-co-4,4'-(3,3,5-trimethylcyclohexylidene)diphenol carbonate](Aldrich社製、ガラス転移温度:200℃)7質量部とを、シクロペンタノン(沸点:130℃)90質量部に溶解させた溶液をスピンコート法により塗布し、120℃にて1時間乾燥させ、膜厚が0.1μmの薄膜1を得た。
薄膜1は非常にクリアであり、前記非線形光学活性を有する有機化合物が均質に分散されていた。また、薄膜1のガラス転移温度は128℃であった。
次に、前記平行電極対間に50V/μmの電界を印加した状態で、前記薄膜1を170℃に15分間保持し、その状態から電界を印加したまま室温まで冷却した後、電界を除去した。薄膜1のポーリングの経時劣化については、作製直後のオーダーパラメーターと、65℃の高温環境に10日間暗所に保管した後のオーダーパラメーターとが、どちらとも0.41であり配向緩和が全く起こっていないことが確認された。
なお、上記オーダーパラメーターは、ポーリング処理を行なわず、非線形光学活性化合物がランダムに配向している薄膜A、及びポーリング処理により非線形光学活性化合物が膜厚方向に配向している薄膜Bの両方に対して、薄膜A及び薄膜Bの作製直後に、可視域での吸収スペクトルを分光光度計(日立、U−3000)で測定し、薄膜A及び薄膜Bの吸収が最大になる波長λmaxから、下記式(1)によりオーダーパラメータを算出した。
φ=1−At/A0 ・・・ 式(1)
(但し、式(1)中、φは、オーダーパラメーターを表し、Atは、ポーリング処理した薄膜Bの波長λmaxでの吸光度を表し、A0は、ポーリング処理を施さなかった薄膜Aの波長λmaxでの吸光度を表す。)
(但し、式(1)中、φは、オーダーパラメーターを表し、Atは、ポーリング処理した薄膜Bの波長λmaxでの吸光度を表し、A0は、ポーリング処理を施さなかった薄膜Aの波長λmaxでの吸光度を表す。)
(有機非線形光学材料の評価)
このようにして得られた本発明の電界ポーリングを施した有機非線形光学材料からなる薄膜1に1550nmの発振波長を持つ半導体レーザー光を照射したところ、775nmの2次高調波の発生が観測でき、非線形光学材料として有効に機能することが確認できた。さらに、この有機非線形光学材料を65℃の高温環境に10日間保持した後に、再度、レーザー光を照射したところ、初期と同等の強度を有する2次高調波の発生が確認できた。
このようにして得られた本発明の電界ポーリングを施した有機非線形光学材料からなる薄膜1に1550nmの発振波長を持つ半導体レーザー光を照射したところ、775nmの2次高調波の発生が観測でき、非線形光学材料として有効に機能することが確認できた。さらに、この有機非線形光学材料を65℃の高温環境に10日間保持した後に、再度、レーザー光を照射したところ、初期と同等の強度を有する2次高調波の発生が確認できた。
また、前記高温環境保持後の薄膜を光学顕微鏡にて観察したところ、非常にクリアであり、前記非線形光学活性を有する有機化合物がポリカーボネート中に均質かつ安定に分子分散されていることが確認できた。
以上より、本発明の有機非線形光学材料が高い経時安定性を有することがわかった。
以上より、本発明の有機非線形光学材料が高い経時安定性を有することがわかった。
<比較例1>
実施例1の有機非線形光学材料の作製において、非線形光学活性を有する有機化合物を、「Chemstry of Materials、2001年、13巻、3043〜3050頁」に記載されている下記構造の化合物に変更した以外は実施例1と同様にして、有機非線形光学材料の薄膜を作製したところ、下記化合物の微結晶が析出してしまった。したがって、この化合物については非ハロゲン系有機溶剤を用いた場合にはクリアな膜を得ることができないことがわかった。
実施例1の有機非線形光学材料の作製において、非線形光学活性を有する有機化合物を、「Chemstry of Materials、2001年、13巻、3043〜3050頁」に記載されている下記構造の化合物に変更した以外は実施例1と同様にして、有機非線形光学材料の薄膜を作製したところ、下記化合物の微結晶が析出してしまった。したがって、この化合物については非ハロゲン系有機溶剤を用いた場合にはクリアな膜を得ることができないことがわかった。
実施例1と比較例1とを比較することによって、本発明によれば、高い非線形光学性能を示すことが確認されている「Chemstry of Materials、2001年、13巻、3043〜3050頁」に開示の有機非線形光学材料とほぼ同等の優れた非線形光学材料が、塗布溶剤として100℃以上の沸点を持つ非ハロゲン系有機溶剤を用い特別な注意を払うこともなく簡便に得られることが確認できた。
<実施例2>
(有機非線形光学材料の作製)
実施例1の有機非線形光学材料の作製における高分子バインダーとして、ポリカーボネートの代わりに下記構造式で示されるポリ環状オレフィン(JSR社製、商品名:Arton、ガラス転移温度:170℃)を用い、かつポーリング温度を140℃に変更した以外は実施例1と同様にして、電界ポーリングを施した有機非線形光学材料の薄膜2を作製した。
薄膜2は非常にクリアであり、前記非線形光学活性を有する有機化合物が均質に分散されていた。また、薄膜2のガラス転移温度は130℃であった。
(有機非線形光学材料の作製)
実施例1の有機非線形光学材料の作製における高分子バインダーとして、ポリカーボネートの代わりに下記構造式で示されるポリ環状オレフィン(JSR社製、商品名:Arton、ガラス転移温度:170℃)を用い、かつポーリング温度を140℃に変更した以外は実施例1と同様にして、電界ポーリングを施した有機非線形光学材料の薄膜2を作製した。
薄膜2は非常にクリアであり、前記非線形光学活性を有する有機化合物が均質に分散されていた。また、薄膜2のガラス転移温度は130℃であった。
また、薄膜2のポーリングの経時劣化については、作製直後のオーダーパラメーターと、65℃で10日間暗所に保管した後のオーダーパラメーターとが、どちらとも0.29であり配向緩和が全く起こっていないことが確認された。
(有機非線形光学材料の評価)
得られた薄膜2を実施例1と同様にして評価したところ、実施例1と同等の強度を有する2次高調波の発生が観測でき、非線形光学材料として有効に機能することが確認できた。さらに、65℃の高温環境に10日間保持後においても、初期と同等の強度を有する2次高調波の発生が確認でき、また、高温環境保持後の薄膜2を光学顕微鏡にて観察したところ、非常にクリアであり、前記化合物がポリ環状オレフィン中に均質かつ安定に分子分散されていることが確認できた。
以上より、この有機非線形光学材料が優れた非線形光学性能と、高い耐熱性ならびに経時安定性を有することが確認できた。
得られた薄膜2を実施例1と同様にして評価したところ、実施例1と同等の強度を有する2次高調波の発生が観測でき、非線形光学材料として有効に機能することが確認できた。さらに、65℃の高温環境に10日間保持後においても、初期と同等の強度を有する2次高調波の発生が確認でき、また、高温環境保持後の薄膜2を光学顕微鏡にて観察したところ、非常にクリアであり、前記化合物がポリ環状オレフィン中に均質かつ安定に分子分散されていることが確認できた。
以上より、この有機非線形光学材料が優れた非線形光学性能と、高い耐熱性ならびに経時安定性を有することが確認できた。
<実施例3>
(有機非線形光学素子の作製)
以下のようにして、断面が図1に示す構成の有機非線形光学素子を作製した。
まず、表面に下部電極12としての金薄膜をスパッタリング法により形成したガラス基板11(2cm×2cm)上に、UV硬化型アクリル樹脂(Norland社製、商品名:NOA72)をスピンコート法により塗布し、100mW/cm2の紫外光(ウシオ電機社製高圧水銀灯)を30秒間照射した後、120℃で30分間の加熱処理を行い、膜厚2μmの下部クラッド層13を形成した。
(有機非線形光学素子の作製)
以下のようにして、断面が図1に示す構成の有機非線形光学素子を作製した。
まず、表面に下部電極12としての金薄膜をスパッタリング法により形成したガラス基板11(2cm×2cm)上に、UV硬化型アクリル樹脂(Norland社製、商品名:NOA72)をスピンコート法により塗布し、100mW/cm2の紫外光(ウシオ電機社製高圧水銀灯)を30秒間照射した後、120℃で30分間の加熱処理を行い、膜厚2μmの下部クラッド層13を形成した。
次に、前記下部クラッド層13の表面に、実施例2で用いた非線形光学活性を有する有機化合物2質量部とポリ環状オレフィン8質量部とをシクロペンタノン90質量部に溶解させた溶液をスピンコート法により塗布し、120℃にて1時間乾燥させ、膜厚2μmのコア層14を形成した。さらに、該コア層14の表面に、下部クラッド層13と同じUV硬化型アクリル樹脂を下部クラッド層13と同様にして成膜して、膜厚が2μmの上部クラッド層15を形成し、基板/下部クラッド層/コア層/上部クラッド層という構成のスラブ型導波路を作製した。
次いで、前記上部クラッド層15の表面に、ストライプ状の金薄膜(ストライプ幅:20μm、ストライプ間隔:30μm)を、通常のフォトリソグラフ法ならびにスパッタリング法を用いて形成し、上部電極16とした。
以上のようにして得られたサンプルを、ダイサー(Disco社製)によって、幅5mmのチップに切断し、該切断面をサンドペーパーにて研摩し有機非線形光学素子を作製した。
(有機非線形光学素子の評価)
次に、上記有機非線形光学素子の上部電極16と下部電極12との間に150V/μmの電界を印加し、170℃で15分間電界ポーリング処理を施した。
電界ポーリング処理を施した有機非線形光学素子が電気光学素子として機能することを確認するため、図2に示した評価系により電気光学特性評価を行った。
次に、上記有機非線形光学素子の上部電極16と下部電極12との間に150V/μmの電界を印加し、170℃で15分間電界ポーリング処理を施した。
電界ポーリング処理を施した有機非線形光学素子が電気光学素子として機能することを確認するため、図2に示した評価系により電気光学特性評価を行った。
図2に示す評価系は、光源21から半波長板及び偏光子23aを通したレーザー光(富士ゼロックス社製VCSEL、発振波長:850nm)を、電気光学素子28の一方の端面(図における左側)から入射し、電気光学素子28中のコア層を伝播させ、他方の端面(図における右側)から出射した光を、ピンホール26及び偏光子23aと偏光面を揃えた偏光子23bを通した後に光検出器27によって検出するように構成されている。なお、図における24はレンズである。
電気光学素子28として前記のように作製した有機非線形光学素子を設置し、この上下部電極間に、電源25により電界を印加し、電界強度を0Vから5Vまで変化させたところ、電界強度の増加に伴い検出光強度が減少する挙動が確認できた。これは、前記非線形光学素子が電気光学効果を有し、電界印加に応じ検出光強度が減少することによるものであり、この非線形光学素子が光変調器として有効に機能することを示すものである。さらに、この非線形光学素子を、65℃、85%RHの高温高湿環境に10日間保持した後に、再度、同様の評価を行ったところ、初期と同等の光変調特性が確認でき、本非線形光学素子が高い耐熱性及び経時安定性を有することが確認できた。
<比較例3>
実施例3の有機非線形光学素子の作製において、コア層の非線形光学活性を有する有機化合物をDR1に変更した以外は、実施例3と同様にして電気光学素子を作製した。
実施例3の有機非線形光学素子の作製において、コア層の非線形光学活性を有する有機化合物をDR1に変更した以外は、実施例3と同様にして電気光学素子を作製した。
次に、実施例3の有機非線形光学素子の評価におけるポーリング温度を、DR1の昇華が顕著でない120℃に変更した以外は実施例3と同様にして電界ポーリング処理を行った。
次いで、電界ポーリング処理を施した有機非線形光学材料を、実施例3と同様にして評価したところ、電界強度を0Vから5Vまで変化させた時の光変調量は、実施例3における光変調量の十分の一以下と非常に低いものであった。さらに、65℃、85%RHの高温高湿環境下に10日間保持後では、DR1の結晶の析出が認められ、電気光学素子としての使用には耐えなくなっていた。
次いで、電界ポーリング処理を施した有機非線形光学材料を、実施例3と同様にして評価したところ、電界強度を0Vから5Vまで変化させた時の光変調量は、実施例3における光変調量の十分の一以下と非常に低いものであった。さらに、65℃、85%RHの高温高湿環境下に10日間保持後では、DR1の結晶の析出が認められ、電気光学素子としての使用には耐えなくなっていた。
以上の実施例3と比較例3との結果を比較することによって、本発明は、優れた機能性能(非線形光学性能)とその優れた安定性とを兼ね備えた電気光学素子(有機機能性素子)を提供するものであることが確認できた。
11 ガラス基板
12 下部電極
13 下部クラッド層
14 コア層
15 上部クラッド層
16 上部電極
21 レーザー光源
22 半波長板
23a、23b 偏光子(Glan-Thompsonプリズム)
24 レンズ
25 電源
26 ピンホール
27 光検出器
28 電気光学素子
12 下部電極
13 下部クラッド層
14 コア層
15 上部クラッド層
16 上部電極
21 レーザー光源
22 半波長板
23a、23b 偏光子(Glan-Thompsonプリズム)
24 レンズ
25 電源
26 ピンホール
27 光検出器
28 電気光学素子
Claims (10)
- 前記化合物におけるD1が3級アミノ基を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機機能性材料。
- 前記化合物におけるD2が3級アミノ基を含むことを特徴とする請求項4に記載の有機機能性材料。
- 少なくとも有機機能性化合物を高分子バインダーに分散または結合させてなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の有機機能性材料。
- 前記高分子バインダーとして、少なくとも、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリ環状オレフィンのいずれかを含有することを特徴とする請求項7に記載の有機機能性材料。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の有機機能性材料を用いたことを特徴とする有機機能性素子。
- 非線形光学機能に基づき動作することを特徴とする請求項9に記載の有機機能性素子。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004186555A JP2006010958A (ja) | 2004-06-24 | 2004-06-24 | 有機機能性材料及びそれを用いた有機機能性素子 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2004186555A JP2006010958A (ja) | 2004-06-24 | 2004-06-24 | 有機機能性材料及びそれを用いた有機機能性素子 |
Publications (1)
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CN114478393A (zh) * | 2020-10-26 | 2022-05-13 | 中国石油化工股份有限公司 | 一种高激子利用率有机发光材料及其制备方法与应用 |
CN114478393B (zh) * | 2020-10-26 | 2024-02-02 | 中国石油化工股份有限公司 | 一种高激子利用率有机发光材料及其制备方法与应用 |
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