以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の空燃比制御方法の実施に直接使用するエンジンの空燃比制御装置の概略構成を示している。
図1において、1はエンジン本体で、その吸気通路7には吸気絞り弁8の下流に位置して燃料噴射弁(図示しない)が設けられ、エンジンコントローラ6からの噴射信号により運転条件に応じて所定の空燃比となるように、吸気中に燃料を噴射供給する。
エンジンコントローラ6にはクランクシャフトポジションセンサ21からの信号、カムシャフトポジションセンサ22からの信号、エアフローメータ9からの吸入空気量の信号、水温センサ10からのエンジン冷却水温の信号等が入力され、これらに基づいて基本噴射パルス幅TPを算出し、このパルス幅TPに応じた燃料噴射量を燃料噴射弁を介してエンジンに供給する。
エンジンの冷間始動時には三元触媒3の早期暖機を行うため排気の空燃比を理論空燃比に対してリッチ側とリーン側に所定の振れ幅で交互に振るパータベーション(perturbation)操作を行う。このパータベーション操作によりリッチ燃焼とリーン燃焼を繰り返し、リッチ燃焼により一酸化炭素COを、リーン燃焼により酸素O2を多く生じさせ、両者の酸化反応により発生する熱で排気の温度を上昇させ、この昇温した排気を三元触媒3に導いて三元触媒3の活性化を促進する。
ここで、空燃比のパータベーション操作を実行する方法としては、空燃比フィードバック補正係数ALPを用いる。これは、空燃比フィードバック補正係数ALPを算出する際に用いる比例分PR、PLや積分分IR、ILがフロントO2センサ出力に基づく空燃比フィードバック制御における空燃比の振れ幅を定める値であり、この同じ比例分PR、PLや積分分IR、ILを用いて、空燃比のパータベーション操作における空燃比の振れ幅を定めることができるためである。空燃比のパータベーション操作を実行する方法には様々なタイプのものが公知であり(例えば特開平9−22010号公報参照)、本実施形態における空燃比のパータベーション操作を実行する方法に限定されるものでない。
さて、三元触媒3が活性状態となった後には、この活性状態となっている三元触媒3による転化率を高めるため空燃比のパータベーション操作を続けて行うのであるが、三元触媒3が活性状態となった後の空燃比のパータベーション操作中に、アクセルペダルを踏み込んで加速を行うなど排気のガスボリューム(エンジン負荷相当量)が大きくなると、三元触媒3による排気浄化効率が低下することが知られている。これを図2(B)を参照して説明すると、図2(B)は横軸に理論空燃比を中心とする空燃比を、縦軸に三元触媒によるCO、NOxの各転化率を採っている。いま仮に破線で示す水平な位置に三元触媒によるCO、NOxの転化率要求値があるとすると、排気のガスボリュームが小さい場合にCO、NOxの各転化率が転化率要求値を下回らないように空燃比パータベーション操作を行わせるには、図示の触媒ウィンドウ幅Aと一致するようにパータベーション操作における空燃比の振れ幅を設定してやればよい。ところが、この状態からアクセルペダルを踏み込んでの加速を行う等して排気のガスボリュームが大きくなったときには、CO、NOxの各転化率の特性が、排気のガスボリュームが小さい場合より全体的に下方に移行することから、排気のガスボリュームが大きくなった後にも排気のガスボリュームが小さかった場合と同じ転化率要求値を下回らないようにするための触媒ウィンドウ幅はAより小さなBでなければならない。このため、空燃比パータベーション操作におけるこうしたガスボリュームの変動による触媒ウィンドウ幅の変化を考慮することなく、空燃比パータベーション操作における空燃比の振れ幅をガスボリュームが小さい場合の触媒ウィンドウ幅Aに設定しているままでは、排気のガスボリュームが大きくなった後に、パータベーション操作における空燃比の振れ幅がそのときの触媒ウィンドウ幅Bをはみ出してしまい、転化率要求値よりも低い転化率しか得られなくなり、三元触媒3による排気浄化性能が低下する。
そこで、排気のガスボリュームが大きくなった場合には、パータベーション操作における空燃比の振れ幅が、狭くなったBの触媒ウィンドウ幅と一致するように空燃比パータベーション操作を行わせることが考えられるのであるが、パータベーション操作における空燃比の振れ幅が、狭い触媒ウィンドウ幅Bに精度良く収まるように空燃比パータベーション操作を行わせることはなかなか難しい。
そこで本発明では、リアO2センサ5が活性状態となるまでの間において、排気のガスボリュームが大きくなった場合には排気のガスボリュームが小さい場合よりもパータベーション操作における空燃比の振れ幅を拡大し(パータベーションを大きくし)、これにより触媒ウィンドウ幅を排気のガスボリュームが小さかった場合より広げることで、三元触媒3による排気浄化効率の低下を防止する。
これを図2(A)を参照して説明すると、図2(A)は横軸に理論空燃比を中心とする空燃比を、縦軸に三元触媒3によるCO、NOxの各転化率を採っており、同じ排気のボリュームにおいてパータベーション操作における空燃比の振れ幅が小さい場合(図では「パータベーションが小さい場合」と記載している)と、パータベーション操作における空燃比の振れ幅を大きくした場合(図では「パータベーションを大きくした場合」と記載している)との違いを示している。パータベーション操作における空燃比の振れ幅が小さい場合には、図2(A)破線で示したように理論空燃比付近のCO、NOxの各転化率のピークは高く、理論空燃比より大きくなる側に外れるにつれて急激にNOxの転化率が低下してゼロとなり、また理論空燃比より小さくなる側に外れるにつれて急激にCOの転化率が低下してゼロとなっている。
これに対して、同じ排気のボリュームでありながら、パータベーション操作における空燃比の振れ幅を大きくした場合には、図2(A)実線で示したように理論空燃比付近のCO、NOxの各転化率のピークは若干低下するものの、理論空燃比より大きくなる側(図で右側)に外れた領域においてNOxの転化率がゆっくりとしか低下してゆかず、また理論空燃比より小さくなる側(図で左側)に外れた領域においてCOの転化率がゆっくりとしか低下してゆかないので、全体としてはパータベーションが小さい場合より却ってCO、NOxの各転化率が良くなっている。
そこで、図2(B)で示したように、三元触媒3に流れ込む排気のガスボリュームの増大によって触媒ウィンドウ幅AよりBへと狭くなった場合に、図2(B)の特性を利用してパータベーション操作における空燃比の振れ幅を大きくする。例えば、図2(A)においてパータベーション操作における空燃比の振れ幅が小さい場合にガスボリュームが大きくなったときの触媒ウィンドウ幅がCであったとして、このときパータベーション操作における空燃比の振れ幅を、触媒ウィンドウ幅Dと一致するまで拡大してやることにより、理論空燃比付近の転化率のピーク高さは下がるものの、理論空燃比を外れた領域でのCO、NOxの各転化率が上昇し、全体として排気浄化効率が向上するのである。
エンジンコントローラ6で実行されるこの空燃比フィードバック制御方法の内容を、以下のフローチャートにしたがって説明する。
図3は触媒ウィンドウ幅変更許可フラグを設定するためのもので、所定時間毎(例えば10msec毎)に実行する。
ステップ1では水温センサ10により検出される冷却水温TWN、エンジン回転速度NE、基本噴射パルス幅TP(エンジン負荷相当量)、リアO2センサ出力RO2を読み込む。ここで、エンジン回転速度NEは、後述するようにクランクシャフトポジションセンサ21からの信号とカムシャフトポジションセンサ22からの信号とから算出される。基本噴射パルス幅TPは後述する図6のステップ42におけると同様にバックグランドジョブにより算出されている。
ステップ2では、冷却水温TWNと所定値TWNCOLDを比較する。冷却水温TWNが所定値TWNCOLD以下であるときにはエンジンの冷間始動時であると判断し、ステップ3に進む。
ステップ3では、リアO2センサ出力RO2をみる。リアO2センサ5(下流側センサ)が未活性状態であるときにはステップ4に進む。ここで、リアO2センサ5が未活性状態であるか否かを判定する方法は公知であり、例えばリアO2センサ出力RO2と所定の判定値との比較によりリアO2センサ5が未活性状態であるのかそれとも活性状態にあるのかを判定する。
ステップ4、5は三元触媒3に流入する排気のガスボリュームが大きい所定の運転領域にあるか否かをみる部分である。ここで、所定の運転領域とは、アイドル状態を除いた運転領域である。従って、例えばアクセルペダルを少し踏んでいる低負荷状態やアクセルペダルを踏み込んでの加速時あるいはアイドル時の回転速度を超える回転速度域が該当する。具体的にはステップ4でエンジン回転速度NEと所定値NEACCを、ステップ5で基本噴射パルス幅TP(エンジン負荷相当量)と所定値TPACCをそれぞれ比較する。ここで、所定値NEACCとしてはアイドル時の回転速度を少し超える値を設定する。また、所定値TPACCとしては、無負荷状態より少し大きい負荷状態の値を設定する。エンジン回転速度NEが所定値NEACC以上でありかつ基本噴射パルス幅TPが所定値TPACC以上であるときには、排気のガスボリュームが大きい所定の運転領域にあると判断し、ステップ6に進んで触媒ウィンドウ幅変更許可フラグFCTPT(始動時にゼロに初期設定)=1として図3のフローを終了する。
ここで、ステップ4またはステップ5のいずれかの条件がYesとなったときに、触媒ウィンドウ幅変更許可フラグFCTPT=1としてもかまわない。
一方、ステップ4、5でエンジン回転速度NEが所定値NEACC未満であるときや基本噴射パルス幅TPが所定値TPACC未満であるときにはアイドル時のように排気のガスボリュームが小さい運転領域にあると判断しステップ7に進んで触媒ウィンドウ幅変更許可フラグFCTPT=0として図3のフローを終了する。
このようにして設定される触媒ウィンドウ幅変更許可フラグFCTPTにより、FCTPT=0であるとき、つまりリアO2センサ5が未活性状態において排気のガスボリュームが小さい場合には触媒ウィンドウ幅の変更が許可されないが、FCTPT=1つまりリアO2センサ5が未活性状態において排気のガスボリュームが大きくなったときには、触媒ウィンドウ幅の変更が許可される。
このようにして設定した触媒ウィンドウ幅変更許可フラグFCTPTの値はエンジンコントローラ6内のメモリに記憶しておく。
また、ステップ2、3で冷却水温TWNが所定値TWNCOLDを超えているときやリアO2センサ5が活性状態となっているときにはそのまま図3のフローを終了する。
ここで、リアO2センサ5は三元触媒3の下流側に設けられているので、三元触媒3が活性化した後に少し遅れてリアO2センサ5が活性状態となる。本実施形態では三元触媒3が活性状態となった後もリアO2センサ5が未活性状態であればパータベーション操作を継続して実行する。これは、リアO2センサ5が活性状態となった後にはフロントO2センサ出力及びリアO2センサ出力に基づく空燃比のフィードバック制御に移行するのであるが、三元触媒3が活性状態となったタイミングでパータベーション操作をやめてしまうと、三元触媒3が活性状態となったタイミングよりリアO2センサ5が活性状態となるまでの期間で三元触媒3による排気浄化効率が低下するので、これを避けるためである。
図4は空燃比フィードバック補正係数ALPの算出に用いる比例分PR、PL、積分分IR、ILを設定するためのもので、所定時間毎(例えば10msec毎)に実行する。
図4において、ステップ11では触媒温度センサ11により検出される触媒温度TCATに基づいて三元触媒3が活性状態にあるか否かをみる。例えば、三元触媒3の活性状態を判断する基準として三元触媒の転換効率が50%になる温度「T50」があるので、触媒温度TCATがこの温度T50未満であれば、三元触媒3が未活性状態にあると判断し、ステップ12、13に進んで比例分基本値PR0、PL0にそれぞれ比例分補正量PALPPT0を加算した値を比例分PR、PLとして設定するとともに、積分分基本値IR0、IL0にそれぞれ積分分補正量IALPPT0を加算した値を積分分IR、ILとして設定して図4のフローを終了する。
三元触媒3が未活性状態にあるときの制御は従来と同じである。つまり、ステップ12、13で設定している比例分PR、PLと積分分IR、ILとを用いた空燃比のパータベーション操作の実行により三元触媒3の早期活性化が促進されるように、比例分補正量PALPPT0と積分分補正量IALPPT0とを正の一定値で適合する。ここで、比例分基本値PR0、PL0と積分分基本値IR0、IL0とは、フロントO2センサ出力及びリアO2センサ出力に基づく空燃比のフィードバック制御に用いられる比例分と積分分(いずれも正の一定値)である。
ステップ11で触媒温度TCATが温度T50以上になると三元触媒3は活性状態にあると判断し、ステップ14に進んでリアO2センサ5が活性状態にあるか否かをみる。リアO2センサ5が未活性状態にあるときにはステップ15に進んで図3により設定されている触媒ウィンドウ幅変更許可フラグFCATTPをみる。ステップ15で触媒ウィンドウ幅変更許可フラグFCATTP=0である場合(つまり触媒3が活性状態かつリアO2センサ5が未活性状態において排気のガスボリュームが小さい場合)にはステップ18、19に進み、比例分基本値PR0、PL0にそれぞれ比例分補正量PALPPT1を加算した値を比例分PR、PLとして設定するとともに、積分分基本値IR0、IL0にそれぞれ積分分補正量IALPPT1を加算した値を積分分IR、ILとして設定して図4のフローを終了する。
ここで、ステップ18、19で設定している比例分PR、PLと積分分IR、ILとを用いた空燃比のパータベーション操作を行ったとき、触媒ウィンドウ幅は図2(B)に示したAになる。つまり、触媒3が活性状態かつリアO2センサ5が未活性状態において排気のガスボリュームが小さい場合に触媒ウィンドウ幅が図2(B)に示したAとなるように、比例分補正量PALPPT1と積分分補正量IALPPT1とを正の一定値で適合する。
これに対して、触媒ウィンドウ幅変更許可フラグFCATTP=1である場合(つまり触媒3が活性状態かつリアO2センサ5が未活性状態において排気のガスボリュームが大きい場合)にはステップ16、17に進み、比例分基本値PR0、PL0にそれぞれ比例分補正量PALPPT2を加算した値を比例分PR、PLとして設定するとともに、積分分基本値IR0、IL0にそれぞれ積分分補正量IALPPT2を加算した値を積分分IR、ILとして設定して図4のフローを終了する。
ここで、比例分補正量PALPPT2として、ステップ18で設定している比例分補正量PALPPT1よりも大きい値を、かつ積分分補正量IALPPT2として、ステップ19で設定している積分分補正量IALPPT1よりも大きい値をそれぞれ設定する。
空燃比のパータベーション操作において、比例分PR、PLや積分分IR、ILは空燃比の振れ幅を定める値であり、空燃比の振れ幅を変えると触媒ウィンドウ幅が変更されるので、三元触媒3が活性状態かつリアO2センサ5が未活性状態において排気のガスボリュームが大きい場合の比例分、積分分の各補正量(PALPPT2、IALPPT2)を、触媒3が活性状態かつリアO2センサ5が未活性状態において排気のガスボリュームが小さい場合の比例分、積分分の各補正量(PALPPT1、IALPPT1)より大きくすることにより空燃比の振れ幅を大きくする(パータベーションを大きくする)。
前述したように、図2(A)においてパータベーション操作における空燃比の振れ幅が小さい場合にガスボリュームが大きくなったときの触媒ウィンドウ幅がCであったとして、このときパータベーション操作における空燃比の振れ幅を、触媒ウィンドウ幅Dと一致するまで拡大するように、比例分補正量PALPPT2と積分分補正量IALPPT2とを正の一定値で適合することにより、理論空燃比付近の転化率のピーク高さは下がるものの、理論空燃比を外れた領域でのCO、NOxの各転化率が上昇し、全体として排気浄化効率が向上する。実際に比例分、積分分の各補正量(PALPPT2、IALPPT2)をどのくらいの値にするのかは実験により適合する。
なお、図2(A)、図2(B)に示したCO、NOxの各転化率の特性は、主に三元触媒3の触媒容量に依存するので、2つの比例分補正量PALPPT1、PALPPT2、2つの積分分補正量IALPPT1、IALPPT2は、三元触媒3の触媒容量に応じて設定しなければならない。
本実施形態では、パータベーション操作における空燃比の振れ幅を、比例分PR、PLと積分分IR、ILの両方を大きくすることにより拡大しているが、比例分PR、PLと積分分IR、ILのいずれか一方のみを大きくすることによりパータベーション操作における空燃比の振れ幅を拡大するようにしてもかまわない。
一方、ステップ14でリアO2センサ5が活性状態になっている場合にはフロントO2センサ出力及びリアO2センサ出力に基づく空燃比のフィードバック制御に移行させるため、ステップ20〜22に進む。
リアO2センサ5が活性状態になっている場合に行うこのフロントO2センサ出力及びリアO2センサ出力に基づく空燃比のフィードバック制御としては、特開平9−222010号公報に記載されている公知の技術を流用する。
この公知の技術を簡単に説明すると、ステップ20、21では図7、図8に示したようにして比例分PR、PLをそれぞれ演算する。ここで、図7のフローはフロントO2センサ4(上流側センサ)からのフロントO2センサ出力がリッチ側へと反転するタイミング毎に、また、図8のフローはフロントO2センサ出力がリーン側へと反転するタイミング毎に実行する。
まず図7(図4のステップ20のサブルーチン)においてステップ51では比例分基本値PR0を読み込む。
ステップ52ではリアO2センサ出力RO2を読み込み、これをステップ53においてスライスレベルSLRと比較する。RO2>SLRのときには三元触媒3下流側の排気の空燃比が理論空燃比よりもリッチ側にあると判断してステップ54に進み、次の式により比例分の修正値(始動時のゼロに初期設定)PHOSを所定値DPHOS(正の一定値)の分だけ減量する。
PHOS←PHOS−DPHOS…(1)
ステップ56では比例分基本値PR0からこの比例分修正値PHOSを差し引いた値を比例分PRとおくことにより、空燃比をリーン側へと戻す。
一方、RO2≦SLRのときには三元触媒3下流側の排気の空燃比が理論空燃比よりもリーン側にあると判断してステップ55に進み、次の式により比例分修正値PHOSを所定値DPHOSの分だけ増量したあとステップ56の操作を実行することで空燃比をリッチ側へと戻す。
PHOS←PHOS+DPHOS…(2)
このようにして、比例分PRをリアO2センサ出力RO2に基づいて修正する。
同様にしてもう一つの比例分PLについても、図8(図4のステップ21のサブルーチン)に示したようにして比例分PLをリアO2センサ出力RO2に基づいて修正する(ステップ61〜66)。
図4に戻りステップ22では、積分分基本値IR0、IL0をそのまま積分分IR、ILとして設定して図4のフローを終了する。
このようにして図4において設定した2つの比例分PR、PLと2つの積分分IR、ILとはエンジンコントローラ6内のメモリに記憶しておく。
図5は空燃比フィードバック補正係数ALPを算出するためのもので、Ref信号の入力毎に実行する。Ref信号は、クランクシャフトポジションセンサ21からの信号とカムシャフトポジションセンサ22からの信号とから算出されるクランク角の基準位置(例えば110°BTDC)の信号である。
ステップ31では空燃比フィードバック制御条件を満たしているかどうかをみる。例えば、フロントO2センサ4が未活性状態にあれば空燃比フィードバック制御条件を満たさないので、ステップ32に進んで空燃比フィードバック補正係数ALPを1.0に固定(クランプ)する。
フロントO2センサ4が活性状態にあればステップ31よりステップ33に進んでフロントO2センサ出力FO2を読み込み、これをステップ34においてスライスレベルSLFと比較する。FO2>SLFのときは三元触媒3上流側の排気の空燃比が理論空燃比よりもリッチ側にあると判断してステップ35に進み、前回は三元触媒3上流側の排気の空燃比がリッチ側であったかどうかをみる。この結果、前回リーン側で今回リッチ側のときにはステップ37に進んで、空燃比フィードバック補正係数ALPから図4で設定している比例分PRだけ減量した値を改めて空燃比フィードバック補正係数ALPとして更新する。
ステップ34、35で前回、今回ともリッチ側であるときにはステップ38に進んで空燃比フィードバック補正係数ALPから図4で設定している積分分IRだけ減量した値を改めて空燃比フィードバック補正係数ALPとして更新する。
一方、ステップ34でFO2≦SLFのときにはステップ36に進み、前回は三元触媒3上流側の排気の空燃比がリッチ側であったかどうかをみる。前回リッチ側で今回リーン側のときは、ステップ39に進んで空燃比フィードバック補正係数ALPを図4で設定している比例分PLだけ増量した値を改めて空燃比フィードバック補正係数ALPとして更新する。
ステップ34、36で前回、今回ともリーン側であるときにはステップ40に進んで空燃比フィードバック補正係数ALPを図4で設定している積分分ILだけ増量した値を改めて空燃比フィードバック補正係数ALPとして更新する。
このようにして図5において算出した空燃比フィードバック補正係数ALPはエンジンコントローラ6内のメモリに記憶しておく。
空燃比フィードバック補正係数ALPは1.0を中心にして周期的に振れ、この周期的な振れによってリアO2センサ5が活性状態となる前にはパータベーション操作が実行され、これに対してリアO2センサ5が活性状態となった後にはフロントO2センサ出力及びリアO2センサ出力に基づく空燃比のフィードバック制御が実行される。2つのO2センサ出力に基づく空燃比フィードバック制御は、フロントO2センサ4(上流側センサ)が高温の排気に晒されるのに対して、リアO2センサ5にはそうしたことがないためそのぶん空燃比の検出精度が良く、そこでリアO2センサ出力を用いて空燃比の制御精度を高めようとするものである。フロントO2センサ出力及びリアO2センサ出力に基づく空燃比フィードバック制御を実行する方法には様々なタイプのものが公知であり、本実施形態におけるフロントO2センサ出力及びリアO2センサ出力とに基づく空燃比フィードバック制御を実行する方法に限定されるものでない。
図6は、各気筒の燃料噴射弁に与える燃料噴射パルス幅Tiを算出するためのもので、Ref信号の入力毎に実行する。
ステップ41では、エアフローメータ9により検出される吸入空気量Qaと、エンジン回転速度NEとを読み込む。エンジン回転速度NEは、クランクシャフトポジションセンサ21からの信号とカムシャフトポジションセンサ22からの信号とから算出される。
ステップ42ではこれらQaとNEから次式によりほぼ理論空燃比の混合気が得られる基本噴射パルス幅TPを演算する。
TP=(Qa/NE)×K…(3)
ただし、K:定数、
ステップ43では基本噴射パルス幅TPを図5により算出している空燃比フィードバック補正係数ALPにより補正した式、つまり次式によりシーケンシャル噴射方式(エンジン2回転ごとに1回、各気筒とも吸気弁の開く直前当たりを噴射タイミングとする方式)での燃料噴射パルス幅Tiを算出し、これをステップ44において出力レジスタに転送する。
Ti=Tp×ALP×2+Ts…(4)
ただし、Ts:バッテリー電圧に応じた無効パルス幅、
ここで、本実施形態の作用を説明する。
CO、NOxの転化率要求値を得るための触媒ウィンドウ幅は、三元触媒3に流入する排気のガスボリュームにより相違し、図2(B)に示されるように、ガスボリュームが小さい場合にCO、NOxの転化率要求値を得るための触媒ウィンドウ幅がAとなるのに対して、ガスボリュームが大きい場合にCO、NOxの転化率要求値を得るための触媒ウィンドウ幅はAよりBへと変化する。このように、ガスボリュームの変動によりCO、NOxの転化率要求値を得るための触媒ウィンドウ幅が変化するのに、パータベーション操作における空燃比の振れ幅を一律に設定しているのでは、例えばパータベーション操作における空燃比の振れ幅をガスボリュームが小さい場合の触媒ウィンドウ幅Aに適合しているとき、ガスボリュームが大きくなる側へと変動した場合に三元触媒3による排気浄化性能が低下し、この逆にパータベーション操作における空燃比の振れ幅をガスボリュームが大きい場合の触媒ウィンドウ幅Bに適合しているとき、ガスボリュームが小さくなる側へと変動した場合に三元触媒3による排気浄化性能が低下するのであるが、本実施形態(請求項1、2に記載の発明)によれば、三元触媒3に流れ込む排気のガスボリュームが変動する場合に、このガスボリュームの増大(変動)に対応してパータベーション操作における空燃比の振れ幅を拡大(変更)する手順を含んでいるので(図4のステップ15〜19参照)、そのときの排気のガスボリュームに対応した触媒ウィンドウ幅に常にパータベーション操作における空燃比の振れ幅を合わせることができ、これにより、空燃比のパータベーション操作中に排気のガスボリュームが小さい側から大きい側へと変動したり、その後に再び大きい側より小さい側へと変動した場合においても、三元触媒3による排気浄化性能を確保することができる。
三元触媒3が活性状態になるタイミングよりも、リアO2センサ5が活性状態になるタイミングが遅れることがあり、この場合に、三元触媒3が活性状態になったタイミングで空燃比のパータベーション操作をやめるとすれば、三元触媒3が活性状態になったタイミングよりリアO2センサ5が活性状態になるタイミングまでの期間は、空燃比のパータベーション操作も、フロントO2センサ出力及びリアO2センサ出力に基づく空燃比のフィードバック制御も共に行われないことになり、この期間において三元触媒3による排気浄化性能を高めることができないのであるが、本実施形態(請求項3に記載の発明)では排気のガスボリュームが増大する場合にパータベーション操作における空燃比の振れ幅を拡大する手順が、このリアO2センサ5が活性状態となるまでである(図3のステップ3、図4のステップ14参照)。つまり、本実施形態(請求項3に記載の発明)によれば、リアO2センサ5が活性状態となるまで空燃比のパータベーション操作を続けて実行するので(図4のステップ14〜19参照)、このとき活性状態にある三元触媒3が効率的に働いてCO、NOxを浄化することができる。
図9は第2実施形態で、第1実施形態の図4と置き換わるものである。図4と同一部分には同一のステップ番号をつけている。
三元触媒3が活性状態にありかつリアO2センサ5が未活性状態の場合において、第1実施形態では比例分補正量、積分分補正量を2値的に切換える(排気のガスボリュームが小さい側から大きい場合へと変化したときには比例分補正量はPALPPT1よりPALPPT2へと、また積分分補正量はIALPPT1よりIALPPT2へと切換わる)ものであったのに対して、第2実施形態は比例分補正量PALPPT、積分分補正量IALPPTを連続値で算出するようにしたものである。
第1実施形態と相違する部分を主に説明すると、図9において三元触媒3が活性状態かつリアO2センサ5が未活性状態のときにステップ11、14よりステップ71、72に進み、基本噴射パルス幅TP(エンジン負荷相当量)から図10、図11を内容とするテーブルを検索することにより比例分補正量PALPPT、積分分補正量IALPPTをそれぞれ算出し、ステップ73、74で比例分基本値PR0、PL0にこの比例分補正量PALPPTを加算した値を比例分PR、PLとして、また積分分基本値IR0、IL0にこの積分分補正量IALPPTを加算した値を積分分IR、IPLとして算出する。
ここで、比例分補正量PALPPT、積分分補正量IALPPTは、図10、図11に示したように基本噴射パルス幅TPがアイドル時の基本噴射パルス幅TP0のときに最小のゼロとなり、基本噴射パルス幅TPがこのイドル時基本噴射パルス幅TP0を外れて大きくなるほど大きくなる値である。
第2実施形態では、比例分補正量PALPPT、積分分補正量IALPPTを基本噴射パルス幅TPのみをパラメータとして求めているが、これに限られるものでなく、エンジン回転速度NEをもパラメータとして、比例分補正量マップ、積分分補正量マップを予め作成しておき、基本噴射パルス幅TPとエンジン回転速度NEとから当該2つのマップを検索することにより、比例分補正量PALPPT、積分分補正量IALPPTを求めさせるように構成することもできる。
第2実施形態でも、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
実施形態では、リアO2センサが活性状態となったあとにフロントO2センサ出力及びリアO2センサ出力に基づく空燃比のフィードバック制御を行う場合で説明したが、リアO2センサが活性状態となったあとに三元触媒3の酸素ストレージ量を所定値に保つ制御を行う手順を有する空燃比制御方法に適用することができる。ただし、三元触媒3の酸素ストレージ量を所定値に保つ制御を行う手順を有する空燃比制御方法では、三元触媒3の上流側に設けられるセンサは、O2センサではなくいわゆる広域空燃比センサでなければならない。
実施形態では排気通路に1つの三元触媒を有する場合で説明したが、排気通路の上流側より直列に2つの三元触媒を有する場合にも本発明を適用できる。ただし、この場合には上流側の三元触媒に対して本発明を適用する。
実施形態では、排気のガスボリュームが増大した場合に排気のガスボリュームが小さい場合よりもパータベーション操作における空燃比の振れ幅を拡大する手順を含む場合で説明したが、排気のガスボリュームが減少した場合に排気のガスボリュームが大きい場合よりもパータベーション操作における空燃比の振れ幅を縮小する手順を含むようにすることもできる。
実施形態では、空燃比制御方法を説明したが、この空燃比制御方法の実施に直接使用するエンジンの空燃比制御装置としては、排気のガスボリュームが増大した場合に排気のガスボリュームが小さい場合よりもパータベーション操作における空燃比の振れ幅を拡大するか、または排気のガスボリュームが減少した場合に排気のガスボリュームが大きい場合よりもパータベーション操作における空燃比の振れ幅を縮小する空燃比振れ幅変更手段を備える空燃比制御装置が考えられる(請求項4に記載の発明)。
この空燃比制御装置では、排気のガスボリュームが増大した場合に排気のガスボリュームが小さい場合よりも空燃比の振れ幅を拡大する(請求項5に記載の発明)。排気のガスボリュームが増大した場合に空燃比の振れ幅を拡大するのは、このリアO2センサが活性状態となるまでである(請求項6に記載の発明)。
請求項1のガスボリュームの変動に対応してパータベーション操作における空燃比の振れ幅を変更する手順は、図4のステップ15〜19により果たされている。