JP2006273969A - 硬化可能な組成物およびその用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】
窒化アルミニウムの有する高い熱伝導率を有効に活用し、高い熱伝導率を有する硬化可能な樹脂組成物、および、その各種用途を提供する。
【解決手段】
形態が球状であり、平均粒子径が0.001〜500μmであり、かつ、気孔率が0.3%以下である窒化アルミニウム粉(A)と、合成樹脂(B)とを含有する、硬化可能な組成物。
上記の硬化可能な組成物を応用した、接着剤、積層体、コイル絶縁用ワニス、コイル、およびモータ用インシュレータ。
【選択図】 なし

Description

本発明は、熱伝導性に優れる硬化可能な組成物、および、そのような組成物を含んでなる接着剤、ならびにそれらの用途に関する。
硬化可能な組成物は、接着剤、封止材、充填材、成型体用原料、積層体用原料、ワニス等の用途に広く用いられている。これらの用途の中には、硬化可能な組成物に熱伝導性を要求するものが少なくない。しかし、硬化可能な組成物自体の熱伝導性は、用途との関係で必ずしも十分ではない場合がある。そこで、硬化可能な組成物に高熱伝導性を持つ無機物質を添加することが、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
高熱伝導性を持つ無機物質として、窒化アルミニウム(AlN)が特に好ましいことが知られている。樹脂組成物の充填材料として使用する無機物質の粉末は、化学的安定性、充填性、流動性および放熱性などの観点から、無凝集で丸みをおびた大粒径(例えば3μm以上)の単粒子であることが好ましい。そこで、窒化アルミニウム粉末を含む樹脂組成物であって、窒化アルミニウム粉末の平均粒径が一定値以上である高熱伝導性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
特開平08−319466号公報 特開平07−252377号公報
しかし、平均粒径の大きな窒化アルミニウム粒子を用いた場合にも、得られた樹脂組成物の熱伝導率が、窒化アルミニウムの有する高い熱伝導率から期待されるレベルには達していなかった。
本発明の目的は、上記の課題を解決し、窒化アルミニウムの有する高い熱伝導率を有効に活用し、高い熱伝導率を有する硬化可能な樹脂組成物、および、その各種用途を提供することにある。
発明者らは、鋭意検討の結果、球状で、平均粒子径が一定範囲にある窒化アルミニウム粉の気孔率を一定値以下とすることで、そのような窒化アルミニウム分を含有する樹脂組成物の熱伝導率が、顕著に向上することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、
(1) 形態が球状であり、平均粒子径が0.001〜500μmであり、かつ、気孔率が0.3%以下である窒化アルミニウム粉(A)と、合成樹脂(B)とを含有する、硬化可能な組成物、に関する。
以下、(2)から(9)は、それぞれ本発明の好ましい実施態様の1つである。
(2)上記窒化アルミニウム粉(A)の含有量が5〜95重量%である、上記(1)に記載の硬化可能な組成物。
(3)上記合成樹脂(B)が、ポリアミド酸樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、およびポリエーテルサルホン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種類の樹脂を含有する、上記(1)に記載の硬化可能な組成物。
(4)上記(1)から(3)のいずれか1項に記載の硬化可能な組成物を含んでなる接着剤。
(5)上記(1)から(3)のいずれか1項に記載の硬化可能な組成物と、金属板とを用いて得られた、積層体。
(6)上記(5)に記載の積層体を有する、コイル。
(7)上記(1)から(3)のいずれか1項に記載の硬化可能な組成物を含んでなる、コイル絶縁用ワニス。
(8)上記(7)に記載のコイル絶縁用ワニスを用いて得られたコイル。
(9)上記(1)から(3)のいずれか1項に記載の硬化可能な組成物を用いて得られたモータ用インシュレータ。
本発明によれば、従来と比較して高い熱伝導率を有する硬化可能な組成物が実現できる。このような硬化可能な組成物は、高い熱伝導率を有するうえに、樹脂の種類を適切に選択することにより、硬化特性、機械的特性、絶縁性等の所望の物性を付与することができるので、各種の応用において高い実用的価値を有し、特に電気電子製品等の分野において、好ましく用いることができる。
本発明の硬化可能な組成物は、接着剤、積層体、コイル絶縁用ワニス、コイル、およびモータ用インシュレータ等の用途において、特に有用である。
本発明は、形態が球状であり、平均粒子径が0.001〜500μmであり、かつ、気孔率が0.3%以下である窒化アルミニウム粉(A)と、合成樹脂(B)とを含有する硬化可能な組成物、に関する。
(窒化アルミニウム粉(A))
本発明において用いられる窒化アルミニウム粉(A)は、AlNからなり、球状の形態を持ち、その平均粒子径が0.001〜500μm、好ましくは30〜200μmであり、気孔率が0.3%以下、好ましくは0.2%以下である。さらに、安息角θが45°以下であることが好ましい。
本発明において、球状とは、断面が略円形または略楕円形であり、その短径aと長径bの比a/bの平均値(以下、「真球度」という。)が0.5以上1以下のものを指す。従って、厳密な真球状、楕円球状などの、断面が数学的に厳密な円または楕円になる様な立体形状を、要求するものではない。本発明において用いられる窒化アルミニウム粉(A)の真球度は、0.6〜1.0であることが好ましく、0.8〜1.0であることが特に好ましい。
本発明において、窒化アルミニウム粉(A)の平均粒子径は0.001μm以上なので、フィラー材として樹脂に添加した際に高熱伝導性を発揮することができる。一方、平均粒子径が500μm以下なので、樹脂との馴染みが良く、シート化した際の強度が高いので好ましい。
また本発明において、気孔率における気孔とは、窒化アルミニウム粉(A)表面の凹んだ穴の部分を意味する。気孔は、窒化アルミニウム粉(A)を
そのまま走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより確認できる。また、エポキシ樹脂に窒化アルミニウム粉(A)を添加し、硬化後にこれを切断し、その断面を走査型電子顕微鏡で観察することによっても確認できる。
窒化アルミニウム粉(A)を合成樹脂と混合して放熱性材料を製造する場合、該焼結粉の真球度、密度などの他に、表面の凹凸が得られる放熱性材料の特性に大きな影響を及ぼす。すなわち、合成樹脂は溶融状態でも粘度の高い物質であり、窒化アルミニウム粉(A)表面の気孔は微細な穴であるため、気孔の部分に合成樹脂が入り込まず、空気層が残ってしまう。この空気層が、得られる放熱性材料の熱伝導率を低下させる原因になる。空気層が多くなる程、放熱性材料の熱伝導性が低下する。
窒化アルミニウム粉表面(A)の凹凸の程度を表わす指標になるのが、気孔率である。気孔率とは、窒化アルミニウム粉表面における気孔の占める割合を意味する。気孔率は、たとえば、カンタクローム社製のオートソーブ3を用いて求めることができる。セル内に窒化アルミニウム粉を入れ、前処理として100℃での真空脱気を行った後、液体窒素下(77K)における窒素ガス吸着法により、全細孔容積(BJH法)を測定する。試料重量をw(g)、見かけ密度をρa(g/cm3)、真密度をρt(g/cm3)、測定によって得られた全細孔容積(開気孔に相当)をv・w(cm3)とする。
物質の密度は、本来ならば、ρt=w/V(V:空孔の無い状態での体積)であるが、空孔の存在により、ρa=w/(V+v・w)となる。この値をもとにして、下式(1)によって気孔率を求めることができる。
気孔率(%)=(1-ρa/ρt)×100 …(1)
本発明では、窒化アルミニウム粉(A)の気孔率は0.3%以下であり、0.2%以下がさらに好ましい。気孔率が0.3%以下なので、合成樹脂との混合物中における空気層の含有率が低減され、該混合物の熱伝導性ひいては放熱性が高くなり好ましい。
また、窒化アルミニウム粉(A)は球状でその表面がより平滑であると、良好な流動性が得られるので、安息角θを測定することでも、その特性を評価することができる。安息角θは、たとえば、直径80mmφの円形テーブルの中央部に、ガラス製漏斗の下端を円形テーブルから80mmの高さに設置し、円形テーブルから窒化アルミニウム粉(A)が落ちる状態になるまで漏斗から窒化アルミニウム粉(A)を落下させ、窒化アルミニウム粉(A)が円錐型を成したところで、頂点に向けての傾き角度(安息角θ)を測定することにより求める。
本発明では窒化アルミニウム粉(A)の安息角θは、45°以下であることが好ましい。放熱性樹脂のフィラーとして使用する場合、流動性のよいもの程、マトリックス樹脂への分散性がよくなり、放熱性能もよくなるので好ましい。
安息角θが45°以下だと、マトリックス樹脂への分散性が不充分になる程度に形状が不均一な粒子の存在がまれなので好ましい。具体的には、このとき、たとえば、複数個の焼結粉の粒子が融着したもの、表面の凹凸が著しい気孔の多い焼結粉などの存在はまれである。
なお、本発明の窒化アルミニウム粉(A)は、焼結助剤、焼成時の雰囲気などに由来する元素、該元素を含む化合物などを不純物して含有することがある。
(窒化アルミニウム粉(A)の製造方法)
本発明の窒化アルミニウム粉(A)は、たとえば、1次粒子径0.1〜0.8μmの粉末を全量の10重量%以上含むAlN粉末と焼結助剤とを含むスラリーを噴霧乾燥し、さらに1400〜1800℃で焼成することによって製造できる。
ここで、原料として好ましく用いられるAlN粉末は、1次粒子径0.1〜0.8μmの粉末を、全量の10重量%以上含有するものである。このような範囲の粒径を持つ粒子が含まれることによって、最密化が図られ、得られる焼結粉表面の気孔を減少させることができる。
1次粒子径が0.1μm以上だと、焼成時の雰囲気中に微量に存在する酸素による酸化が抑制され、その結果得られる窒化アルミニウム粉の熱伝導性の低下が有効に防止されるので好ましい。また、1次粒子径が0.8μm以下だと、形状が所望の形状でないか、または粒子径および/または気孔率が所望の範囲にない窒化アルミニウム粉の生成を抑制できるので好ましい
。さらに、1次粒子径0.1〜0.8μmの粉末を10重量%以上含有すると、得られる焼結粉表面の気孔の割合が小さく、合成樹脂と混合した際の熱伝導率が高く、放熱性が良くなるので好ましい。
この好ましい製造方法において、原料として用いられるAlN粉末は、たとえば、アルキルアルミニウムとアンモニアとを気相中で反応させる公知の気相合成法に基づいて製造できる。
原料であるAlN粉末に添加される焼結助剤として、アルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類金属から選ばれる1種または2種以上の金属および/または該金属を含む化合物の1種または2種以上を使用することができる。これらの中でも、リチウム、カリウムなどのアルカリ金属、カルシウム、ストロンチウムなどのアルカリ土類金属、イットリウム、ランタンなどの希土類金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩などが好ましい。その具体例としては、たとえば、酸化リチウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化イットリウム、水酸化ランタン、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸イットリウム、炭酸ランタンなどが挙げられる。さらにアルミン酸カルシウムなどの複合酸化物も好適に使用でき、酸化リチウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、アルミン酸カルシウムなどが特に好適である。
焼結助剤の粒子径は特に制限されず、AlN粉末との混合性、作業性などを考慮して適宜決定すればよいが、AlN粉末との混合性のみを考慮すると、出来るだけ微細な粒子を用いるのが好ましい。
焼結助剤の使用量は特に制限されず、焼結助剤の種類、原料のAlN粉末の粒度分布、設定される焼成温度および焼成時間、焼成炉の構造、得られる窒化アルミニウム粉(A)の用途などの各種の条件に応じて広い範囲から適宜選択できるが、通常は原料AlN粉末100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは1〜5重量部である。
焼結助剤の使用量が0.1重量部以上だと、焼結助剤としての効能が十分発揮され、焼成しても焼結が充分で、1次粒子への分散が抑制されるので好ましい。また10重量部以下だと、焼結は充分で、かつ、AlNが本来有する熱伝達性能が維持されるので好ましい。
原料AlN粉末と焼結助剤とを含むスラリーは、たとえば、原料AlN粉末および焼結助剤をスラリー溶媒に分散させることによって調製できる。スラリー溶媒としては、原料AlN粉末および焼結助剤を分散させ得るものであれば特に制限なく使用できるが、有機溶媒または燐酸水溶液が好ましい。
有機溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、モノグライム、ジオキサンなどのエーテル類などを好適に使用できる。有機溶媒を用いる場合のスラリー中の固形分濃度(以後特に断らない限り単に「スラリー濃度」という)は特に制限されないが、好ましくはスラリー全量の30〜60重量%、さらに好ましくは40〜50重量%である。
燐酸水溶液は、有機溶媒使用時の機器、設備などを必要としないので、有機溶媒よりも好ましく使用できる。燐酸水溶液はAlN粉末表面のアルミニウムと反応して燐酸アルミニウム結合(Al-O-P結合)を形成し、AlNの加水分解を抑制する効果を有する。尚、燐酸分は、焼結時の焼結温度範囲でガス化して窒化アルミニウム粉から除去される。
燐酸水溶液に含まれる燐酸化合物としては、オルソ燐酸、メタ燐酸、ピロ燐酸、ポリ燐酸、燐酸アンモニウム塩などの無機燐酸化合物、燐酸メチル、燐酸エステルなどの有機燐酸化合物などが挙げられる。燐酸化合物は1種または2種以上を使用できる。燐酸化合物は、原料AlN粉末100重量部に対しP換算で0.3〜5重量部の範囲で使用するのが好ましい。
スラリー溶媒として燐酸水溶液を用いる場合において、スラリー濃度は、AlN粉末や焼結助剤によって最適濃度は異なるが、通常スラリー全量の30〜50重量%となるように調整を行う。スラリー濃度が高すぎると、焼結粉の内部に気孔が残る場合があるので、注意する必要がある。また、スラリー濃度が低すぎると、作業性が低下するとともに、後の噴霧乾燥の際に、所望の粒子範囲を有する顆粒が得られない可能性がある。スラリーの濃度は、下式(2)により求められる。
スラリー濃度(%)=[A/(A+B)]×100 …(2)
〔式中、Aは原料AlN粉末と焼結助剤との合計量を示す。Bは燐酸水溶液の量を示す。いずれの量も重量である。〕
スラリーには、必要に応じて、バインダ成分を添加することができる。バインダ成分としては、水溶性のものが好ましく使用できる。水溶性のバインダ成分としては、たとえば、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、デンプンなどが挙げられる。バインダ成分の使用量は特に制限されず、最終的に得られる窒化アルミニウム粉の物性、粒径などに影響を与えない範囲の中から適宜選択できるが、通常はAlN粉末100重量部に対し0.03〜0.5重量部程度とすればよい。
スラリーは、所定量の原料原料AlN粉末および焼結助剤を予め機械的に混合し、得られる混合物をスラリー溶媒に分散させることにより調製してもよい。また、所定量の原料AlN粉末および焼結助剤をそれぞれ別個にスラリー溶媒に混合して分散させても良い。好ましくは、撹拌下にあるスラリー溶媒に所定量の原料AlN粉末を添加して均一に分散させ、さらに所定量の焼結助剤を添加して分散させるのがよい。
このようにして得られるスラリーは、長時間放置すると、AlNが徐々に加水分解を起こすので、短時間のうちに次の噴霧乾燥に供するのが好ましい。具体的には、スラリー化後3時間以内に噴霧乾燥に供給することが望ましい。
スラリーの噴霧乾燥はスプレードライヤーを用いて実施することが好ましい。スプレードライヤーとしては、円筒形の管体の側面から熱風を送り、上部からスラリーを噴霧器で霧状にして、気相部で水分を蒸発させて、凝集体を形成せしめ、管体の下部に堆積し、水分を含む熱風はサイクロン、バグフィルターを経て外部に放出する構造を有するものを使用できる。このスプレードライヤーの上部より、スラリーを噴霧することにより、気相部で水分の蒸発とともに微細なAlN粉末の凝集体である球状顆粒が形成され、管体の下部に落下する。
このスプレードライヤーにおいて、スラリーを霧状に噴霧する噴霧器としては特に制限されず、たとえば、スラリーをポンプで高圧状態にし、高圧用分散ノズルで噴霧するもの、アトマイザーと言われる低圧用ノズルを高速で回転する噴霧器などが挙げられる。
このスプレードライヤーにおいて、管体の側面から送風する熱風の温度は150〜400℃の範囲が好ましく、200〜300℃の範囲がさらに好ましい。熱風の温度が150℃以上だと、水分が十分に蒸発し、また、熱風の温度が400℃以下だと、顆粒の粒子径が均一となり好ましい。
このスプレードライヤーにおいて、原料AlN粉末の粒度分布、焼結助剤の種類と使用量、スラリー溶媒の種類などに応じて、スラリーの噴霧速度、管体の側面から送風する熱風の温度、熱風の供給速度などを適宜選択することによって、得られる球状顆粒の粒径を調整できる。この球状顆粒は後の焼成により球状の形態を維持したまま、粒径が15〜50%程度縮小する。したがって、焼成による縮小を踏まえて球状顆粒の粒径を適宜調整することにより、所望の粒径を有する窒化アルミニウム粉を得ることができる。特に本発明の好ましい態様の1つであるフィルムまたはシートのフィラーとして使用する焼結粉は、球状で直径0.001〜500μmの顆粒とすることが望ましい。
窒化アルミニウム粉(A)を得るためには、スラリーの噴霧乾燥により得られる顆粒(2次粒子)を1400〜1800℃、好ましくは1500〜1650℃の温度下に焼成することが好ましい。1400℃以上だと、充分な焼結がなされ、得られる焼結粉が1次粒子に分散してしまう現象を有効に抑制することができる。また、顆粒を、1800℃以下の温度で焼成すると、高周波炉、カーボン炉といった、高価で、エネルギー損失が大きい炉を必要としない。
焼成時間は、焼成温度、焼結助剤の種類、焼結助剤の使用量などに応じて広い範囲から適宜選択できるが、所定の温度に達成してから、その所定温度を通常1〜30時間程度保持して焼成すればよい。
焼成時には酸素との接触を避けるのが好ましいので、焼成雰囲気は不活性ガス雰囲気が好ましい。不活性ガス雰囲気としては公知のものを使用でき、たとえば、ヘリウム、アルゴン、窒素などが挙げられる。
焼成炉としては、無機材料の焼成に用いられる一般的な炉を使用でき、たとえば、シリコニット発熱体を用いた電気炉などが挙げられる。勿論、高周波炉、カーボン炉などを用いて、焼成することもできる。
窒化アルミニウム粉は、用いる目的に応じて、粉砕や分級工程を経て所望の粒度分布に制御することができる。
(合成樹脂(B))
本発明に用いられる合成樹脂(B)には特に制限はなく、使用目的に応じた硬化特性およびその他の諸物性を具備するものであれば適宜使用することができる。シリコーン系合成樹脂および非シリコーン系合成樹脂のいずれであってもよく、また、両者を組み合わせて使用しても良い。
シリコーン系合成樹脂は、熱安定性等の安定性、ハンドリング性等に優れることから、本発明を構成する合成樹脂(B)として、特に好ましく使用される。シリコーン系合成樹脂は、その骨格にシロキサン結合を有するものであれば特に制限はなく、使用目的に応じた硬化特性およびその他の諸物性を具備するものを、適宜選択して使用することができる。
本発明で使用することができるシリコーン系合成樹脂としては、シリコーンオイル、シリコーンレジン、シリコーンレジン中間体などがあり、それぞれ、シリコーンの架橋体からなるシロキサン結合を主鎖とし側鎖に炭化水素基を含有しているもの、シリコーンの架橋体と有機樹脂とのブロック共重合体のもの、あるいは末端や側鎖をアミノ基、エポキシ基、アルキル基、フッ素で変性したものなどがある。
これら各種のシリコーン系合成樹脂の中でも、とりわけ、シリコーンレジンが好ましい。シリコーンレジンは3次元構造を有しているため、1次元構造のシリコーンオイルなどと異なり耐熱性の向上が容易である。耐熱性が高いと、モールド材、封止材等として使用する場合、圧力と温度により本発明の組成物が溶けだし、接着力、絶縁性等の特性が低下してしまう等の現象を有効に抑制できる。
シリコーンレジンの中でも、シリコーン架橋体と有機樹脂とのブロック共重合体であるものが好ましい。ブロック共重合体となる有機樹脂としては、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂などが挙げられるが、接着剤組成の相溶性の向上の点からエポキシ樹脂が好ましい。相溶性が高くなると、例えば本発明の好ましい実施態様である接着剤が透明になり、リードフレーム用接着テープ等に加工する場合における加工性が向上する。また、相溶性は、分子量にも影響されるものであり、高分子量になると相溶性が低くなるため、50%溶剤希釈品で粘度が300cp以下のものが好ましく、200cp以下のものがより好ましい。
シリコーン系合成樹脂は単独でも使用し得るが、接着性、耐薬品性、耐熱性などの特性を好ましい範囲に設定するため他の樹脂と混合して使用しても良い。混合可能な樹脂としては、アクリロニトリルアクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル系樹脂、アクリロニトリルブタジエン共重合体、可溶性ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、可溶性ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、アルキド樹脂などが挙げられるが、総合的な性能を発揮するには、アクリロニトリルブタジエン共重合体および/またはポリアミド樹脂が特に好ましい。
本発明において合成樹脂(B)として使用可能な非シリコーン系合成樹脂には特に制限はなく、各種の高分子を適宜使用することができるが、好ましく用いられるのは、ポリアミド酸樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、およびポリエーテルサルホン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種類の樹脂である。なお、非シリコーン系合成樹脂は、熱可塑性であっても、熱硬化性であっても良い。
非シリコーン系合成樹脂は、1種類を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、非シリコーン系合成樹脂(B)以外他の成分と組み合わせて使用しても良い。他の成分の例としては、他の樹脂(シリコーン系合成樹脂を含む)、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、充填剤、顔料、染料、帯電防止剤、抗菌剤、防黴剤、難燃剤、カップリング剤、及び分散剤等を挙げることができる。
非シリコーン系合成樹脂として特に好ましいのは、ポリイミド樹脂、およびエポキシ樹脂である。
本発明で用いられる好ましいポリイミドの一例として、熱融着性の芳香族ポリイミドが挙げられる。前記の熱融着性の芳香族ポリイミドに使用することができるテトラカルボン酸二無水物類(酸、酸二無水物、酸エステル)としては3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、および、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物類が最も好ましいが、2,2−ビス(3、4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エ−テル二無水物、これらの酸、酸エステルが挙げられる。これらの酸の一部をピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、等によって置き換えられてもよい。
この発明において好ましく用いられる前記のポリイミドに使用することができる芳香族ジアミンとしては、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−ジアミノジフェニルエ−テル、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェニル)ジフェニルエ−テル、4,4’−ビス(3−アミノフェニル)ジフェニルメタン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルエ−テル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルメタン、2,2−ビス〔3−(アミノフェノキシ)フェニル〕プロパンなどの複数のベンゼン環とO、CH2、C(CH3 )2 、O(Bz)O(Bz:ベンゼン)、(Bz)O(Bz)などの基を分子主鎖中に有する柔軟な構造でジアミンがメタ位にある芳香族ジアミンが好適に使用される。
この発明において好ましく用いられるポリイミドは、前記の各成分を使用し、好適にはテトラカルボン酸二無水物を過剰の条件下、もしくはジカルボン酸無水物でジアミン末端を封止する条件下で有機溶媒中で反応させてポリアミック酸の溶液(均一な溶液状態が保たれていれば一部がイミド化されていてもよい)とする。ポリイミドのアミン末端を封止するためのジカルボン酸無水物、例えば、無水フタル酸およびその置換体、ヘキサヒドロ無水フタル酸およびその置換体、無水コハク酸およびその置換体などを使用してもよい。
この発明において好ましく用いられる前記のポリイミドを得るためには、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドなどの有機溶媒中、好適には20〜60℃の反応温度で、ジアミン(アミノ基のモル数として)の使用量が酸無水物の全モル数(テトラ酸二無水物とジカルボン酸無水物の酸無水物基としての総モルとして)に対する比として、好ましくは0.9〜1.0、特に0.98〜1.0、そのなかでも特に0.99〜1.0であり、末端ジアミンを封止するジカルボン酸無水物の使用量がテトラカルボン酸二無水物の酸無水物基モル量に対する比として、好ましくは0.05以下、特に0.0001〜0.02であるような割合の各成分を反応させることが好ましい。
前記のジアミンおよびジカルボン酸無水物の使用割合が前記の範囲内であると、得られるポリアミック酸、従ってポリイミドの分子量が適切であり、ポリイミド自体の強度や金属箔等との剥離強度も十分なものになる。また、特にジアミン成分過剰の条件を避けることで、ポリアミック酸の環化イミド化あるいは溶媒除去の際の劣化などが抑制され、剥離強度が十分なものになる。この発明において使用される熱融着性のポリイミドとしては、ηinh〔N−メチル−2−ピロリドン中0.5g/dl(30℃)〕が0.5以上、特に0.5〜3であるものが好ましい。
特に、この発明における熱融着性の芳香族ポリイミドとしては、芳香族テトラカルボン酸成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、酸のエステルまたは酸二無水物と、ジアミンとして主鎖中に少なくとも1つのエ−テル結合を有し且つエ−テル結合を介してフェニル基を少なくとも2つ有する芳香族ジアミンとから重合、イミド化されたポリイミドが好ましい。
本発明で用いられるポリイミドの好ましい例として、上記芳香族ポリイミドの他、ポリマレイミドを挙げることができる。ポリマレイミドは、1分子中に2個以上のマレイミド基を有するポリマレイミド化合物から得られる。これらポリマレイミド樹脂の多くは熱可塑性を示すため、形状の付与が容易であり、実用上好ましい。
ポリマレイミド化合物としては、例えば、N,N'- エチレンビスマレイミド、N,N'- ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N'-(1,3-フェニレン) ビスマレイミド、N,N'-[1,3-(2- メチルフェニレン)]ビスマレイミド、N,N'-(1,4-フェニレン) ビスマレイミド、ビス(4- マレイミドフェニル) メタン、ビス(3- メチル-4- マレイミドフェニル) メタン、ビス(4-マレイミドフェニル) エーテル、ビス(4- マレイミドフェニル) スルホン、ビス(4- マレイミドフェニル) スルフィド、ビス(4- マレイミドフェニル) ケトン、ビス(4- マレイミドシクロヘキシル) メタン、1,4-ビス(4- マレイミドフェニル) シクロヘキサン、1,4-ビス( マレイミドメチル) シクロヘキサン、1,4-ビス( マレイミドメチル) ベンゼン、1,3-ビス(4- マレイミドフェノキシ) ベンゼン、1,3-ビス(3- マレイミドフェノキシ) ベンゼン、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ) フェニル] メタン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ) フェニル] メタン、1,1-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ) フェニル] エタン、1,1-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ) フェニル] エタン、1,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ) フェニル] エタン、1,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ) フェニル] エタン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ) フェニル] プロパン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ) フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ) フェニル] ブタン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ) フェニル] ブタン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ) フェニ ル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ) フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、4,4'- ビス(3- マレイミドフェノキシ) ビフェニル、4,4'- ビス(4- マレイミドフェノキシ) ビフェニル、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ) フェニル] ケトン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ) フェニル] ケトン、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ) フェニル] スルフィド、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ) フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ) フェニル] スルホキシド、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ) フェニル] スルホキシド、ビス[4-(3- マレイミドフェノキシ) フェニル] スルホン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ) フェニル] スルホン、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ) フェニル] エーテル、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ) フェニル] エーテル、1,4-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-α, α- ジメチルベンジル] ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-α, α- ジメチルベンジル] ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-α, α- ジメチルベンジル] ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-α, α- ジメチルベンジル] ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル- α, α- ジメチルベンジル] ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル- α, α- ジメチルベンジル] ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル- α, α- ジメチルベンジル] ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル- α, α- ジメチルベンジル] ベンゼン等が挙げられる。これらのポリマレイミド化合物は、単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
非シリコーン系合成樹脂として好ましく用いられるエポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば、特に限定されない。その具体例としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール系ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリまたはテトラ(ヒドロキシフェニル)アルカンから誘導されるエポキシ化合物、ビスヒドロキシビフェニル系エポキシ樹脂、フェノールアラルキル樹脂のエポキシ化物等が挙げられる。これらのエポキシ 樹脂は単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
上記エポキシ樹脂と組み合わせて好ましく使用される硬化剤は、一般にエポキシ樹脂の硬化剤として用いられるものであれば特に限定されない。その具体例としては、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、t―ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ナフトール系ノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;ポリパラオキシスチレン;2、2‘―ジメトキシーp―キシレンとフェノールモノマーとの縮合重合化合物等のフェノールアラルキル樹脂;ジシクロペンタジエンーフェノール重合体;トリス(ヒドロキシフェニル)アルカン等の多官能フェノール樹脂;テルペン骨格を有するフェノール樹脂;無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸等の酸無水物が挙げられる。これらの中でも、フェノールノボラック樹脂やフェノールアラルキル樹脂が特に好ましく用いられる。なお、これらの硬化剤は単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
ここで、硬化剤の配合量は特に限定されないが、上記エポキシ樹脂のエポキシ基と上記硬化剤のフェノール性水酸基または酸無水物との当量比を0.5〜1.5の範囲にすることが望ましい。より好ましい範囲は0.8〜1.2である。この値が0.5以上だと硬化反応が十分に進行するので好ましく、1.5以下だと硬化物の特性、特に耐湿性が目的との関係で十分な値となり好ましい。
ここで、硬化剤に加えて更に硬化促進剤を配合することができる。硬化促進剤としては、一般に使用され得るものであれば特に限定されないが、例えば塩基性触媒が使用できる。
(硬化可能な組成物)
本発明の硬化可能な組成物は、その硬化のタイミングをある程度人為的に制御できる組成物であればよく、その種類および硬化のメカニズムには特に制限はない。すなわち、流動性を有する状態で一定期間保存可能であり、かつ、使用者が望むタイミング(ある程度の時間的幅を有していても良い。)で、硬化または流動性を低下せることができる組成物であれば良い。
本発明の硬化可能な組成物の好ましい硬化形式としては、湿分硬化型、付加型、光硬化型、紫外線硬化型、重合硬化型、乾燥硬化型、および、ホットメルト型接着剤のような、熱可塑性樹脂の熱溶融冷却硬化型等を挙げることができるが、これらに制限されない。また、一液式、二液式および多液式のいずれであっても良い。更に、常温硬化型、加熱硬化型のいずれであっても良い。これらの中でも特に好ましいのは、熱溶融冷却硬化型である。
本発明の樹脂組成物においては、窒化アルミニウム粉(A)の含有量が5〜95重量%の範囲内であることが望ましい。窒化アルミニウム粉(A)の含有量が上記範囲にあると、目的との関係において適切な熱伝導性と、十分な強度とを両立することができる。窒化アルミニウム粉(A)の含有量は、好ましくは10〜95重量%、更に好ましくは40〜90重量%である。
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲において、各種の添加物を加えることができる。例えば、窒化アルミニウム粉(A)以外の熱伝導性フィラー、他の樹脂(合成樹脂(B)以外の樹脂)、金属粉、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、充填剤、顔料、染料、帯電防止剤、抗菌剤、防黴剤、難燃剤、カップリング剤、及び分散剤等から選ばれる1種類または2種類以上の成分を添加することができる。
(接着剤)
本発明の組成物は、硬化可能であり、かつ、高い熱伝導性を有するので、接着剤、特に電気電子分野における接着剤として好ましく用いられる。本発明の好ましい実施態様である接着剤は、その全部が本発明の硬化可能な組成物で構成されていてもよいし、その一部が本発明の硬化可能な組成物で構成されていても良い。
本発明の好ましい実施態様である接着剤は、積層体の作製、パワートランジスタ、サイリスタ等の発熱性部品の固定、半導体素子の固定等の用途に、特に好適に用いられる。
(積層体)
本発明の硬化可能な組成物と金属板とを用いて得られた積層体は、本発明の好ましい実施態様の1つである。この様な積層体は、熱伝導性に優れ、かつ、金属が本来有する電気的、磁気的性質を活用できるので、好ましい。
金属板の種類には、特に制限はないが、優れた電気的、磁気的性質を有することができることから、電磁鋼板および/またはアモルファス金属薄帯が好ましく用いられる。本発明の硬化可能な組成物のうち積層体に特に好ましく用いられるのは、合成樹脂(B)として、ポリイミド系樹脂、スルホン系樹脂、アミドイミド系樹脂、ポリエーテル系等を用いたものである。
この様な積層体は、モータ、発電機等において用いられるコイル用のコアとして、好適に使用される。積層体の構成、作製方法、コイルの構成、作製方法、使用方法の詳細は、例えば、特開2004−048859号公報等に記載されている。
(コイル絶縁用ワニスおよびコイル)
本発明の硬化可能な組成物を含んでなるコイル絶縁用のワニスは、本発明の好ましい実施態様の1つである。この様なワニスは、絶縁性を有するとともに、高い熱伝導性を有するので、特に大出力のコイルにおいて発生した熱を除去する観点から、実用的に高い価値を有する。この様なワニスを用いて得られたコイル、およびそれを用いるモータ、発電機等の電気機器は、発熱を効率よく除去できるため、その性能に優れ、実用上高い価値を有する。
本実施態様において用いられる合成樹脂(B)としては、熱可塑性又は熱硬化性樹脂から得られ、少なくとも1種のアルコキシシランを含有するコポリマーが好ましい。特に、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエステルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)、ポリエステル(PE)、ポリウレ
タン(PU)、ポリビニルアセタール(PVA)及びこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種の樹脂から得られたコポリマーが好ましい。 コポリマーは、10重量%〜50重量%、好ましくは、20重量%〜40重量%のアルコキシシランを添加することによって得られ多ものであると、更に好ましい。当該アルコキシシランは、テトラエトキシシラン(TEOS)のようなテトラアルコキシシラン並びにトリメトキシシラン及びアミノプロピルトリメトキシシランのようなトリアルコキシシランから選択されることが、好ましい。
この様なワニスおよびコイルの構成の詳細については、例えば、特開2002−206060号公報に記載されている。
(モータ用インシュレータ)
本発明の硬化可能な組成物は、高い熱伝導率と、絶縁性とを具備し、更に所望の硬化特性を有しており形状付与が容易なので、モータ用インシュレータの材料として、好ましく用いられる。この際の本発明の硬化可能な組成物を構成する合成樹脂(B)には特に制限はないが、三井化学株式会社製のオーラム(登録商標)等の熱可塑性ポリイミド樹脂が、特に好ましく用いられる。モータ用インシュレータは、モータのコアと巻線とを絶縁ために用いられる部材で、その構成、使用方法等の詳細は、例えば、特開2001−095188号公報等に、詳細に説明されている。
[実施例]
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明する。本発明はいかなる意味においても、これらの実施例に限定されるものではない。
(平均粒子径および真球度の評価方法)
本発明において、窒化アルミニウム粉(A)の平均粒子径および真球度の評価は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて顕微鏡写真を撮影し、顕微鏡写真中の粒子100個を観察する方法で行った。平均粒子径は、粒子100個の直径の平均値から求めた。真球度については、粒子100個の短径と長径の比を測定し、その平均値から求めた。
(実施例1)
撹拌器、還流冷却器および窒素導入管を備えた容器にN−メチル−2−ピロリドン566gを装入し、平均粒子径15μm、気孔率0.1%、真球度0.96の窒化アルミニウム粉(三井化学(株)製)を226.4g仕込み、超音波を15分間照射することにより窒化アルミニウム粉を分散させた。さらに1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン29.2g(0.1モル)を装入し、室温窒素雰囲気下で撹拌を行い溶解させた。これに撹拌下3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物30.9g(0.0995モル)を加え、50℃に昇温したのち1時間撹拌した。その後、無水フタル酸0.4434g(0.003モル)を加えた後、50℃でさらに2時間撹拌をつづけ、窒化アルミニウム含有ポリアミド酸樹脂組成物を得た。
この樹脂組成物をガラス板上に塗布し、250℃の熱風条件下でイミド化した。ガラス板上で硬化したフィルムをガラス板から剥離することで、窒化アルミニウム含有ポリイミドフィルム(A)を得た。厚みは40μmであった。このフィルムの熱伝導率をホットデスク法により測定したところ、4.4W/m・Kであった。
(比較例1)
窒化アルミニウム粉として、平均粒子径15μm、気孔率0.1%、真球度0.96の窒化アルミニウム粉の代わりに、平均粒子径13μm、気孔率0.37%、真球度0.94の窒化アルミニウム粉を用いる以外は実施例1と同様の方法により、窒化アルミニウム含有ポリイミドフィルム(B)を得た。厚みは40μmであった。窒化アルミニウム含有ポリイミドフィルム(B)の熱伝導率をホットデスク法により測定したところ、4.0W/m・Kであった。
(実施例2)
窒化アルミニウム粉として、平均粒子径15μm、気孔率0.1%、真球度0.96の窒化アルミニウム粉(三井化学(株)製)の代わりに、平均粒子径2μm、気孔率0.1%、真球度0.96の窒化アルミニウム粉(三井化学(株)製)を用いる以外は実施例1と同様の方法により得られる窒化アルミニウム含有ポリアミド酸樹脂組成物を、厚み25μのFe系アモルファス合金薄帯(日立金属製METGLAS2605TCA)からなる電磁鋼板の表面に、グラビアコータにより塗布した。塗布後、250℃の熱風条件下でイミド化し、3.0μmの樹脂層厚とした。
この樹脂付き電磁鋼板を、40mm角にシャーリング加工により切断し、740枚重ねて積層し熱圧着した。熱圧着には、熱プレス機((株)東洋精機製作所製ミニテストプレスMP-S)を用い、常温にてプレス機にセット後、20kg/cm2 の圧力をかけ、設定温度370℃にて昇温を開始し、370℃に到達後60分間プレスを行い、窒化アルミニウム含有樹脂接着電磁鋼板の積層体が得られた。
窒化アルミニウム含有樹脂接着電磁鋼板の積層面に垂直な方向の熱伝導率をホットデスク法(京都電子製TPA501)により測定したところ、5W/m・Kであった。
(比較例2)
窒化アルミニウム粉として、平均粒子径2μm、気孔率0.1%、真球度0.96の窒化アルミニウム粉の代わりに、平均粒子径2μm、気孔率0.37%、真球度0.94の窒化アルミニウム粉を用いる以外は実施例2と同様の方法により、窒化アルミニウム含有樹脂接着電磁鋼板の積層体が得られた。
この窒化アルミニウム含有樹脂接着電磁鋼板の熱伝導率を実施例2と同様にホットデスク法により測定したところ、4.5W/m・Kであった。
(実施例3)
平均粒子径72μm、気孔率0.1%、真球度0.96の窒化アルミニウム粉(三井化学(株)製)803gと、熱可塑性ポリイミド樹脂( 三井化学( 株) 製、商品名オーラム(登録商標)PL450)750g とを2軸押出機にて400℃で溶融混練してペレットを得た。本ペレットを用いて60mm1軸押出機により410 ℃で溶融し、モータ用インシュレータを射出成形した。このモータ用インシュレータの熱伝導率をホットデスク法により測定したところ、4.4W/m・Kであった。
(比較例3)
窒化アルミニウム粉として、平均粒子径72μm、気孔率0.1%、真球度0.96の窒化アルミニウム粉の代わりに、平均粒子径70μm、気孔率0.37%、真球度0.94の窒化アルミニウム粉を用いる以外は実施例3と同様の方法により、窒化アルミニウムを含有したポリイミドのモータ用インシュレータを得た。
実施例3と同様の評価の結果、熱伝導率は4.2W/m・Kであった。


Claims (9)

  1. 形態が球状であり、平均粒子径が0.001〜500μmであり、かつ、気孔率が0.3%以下である窒化アルミニウム粉(A)と、合成樹脂(B)とを含有する、硬化可能な組成物。
  2. 上記窒化アルミニウム粉(A)の含有量が5〜95重量%である、請求項1に記載の硬化可能な組成物。
  3. 上記合成樹脂(B)が、ポリアミド酸樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、およびポリエーテルサルホン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種類の樹脂を含有する、請求項1に記載の硬化可能な組成物。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の硬化可能な組成物を含んでなる接着剤。
  5. 請求項1から3のいずれか1項に記載の硬化可能な組成物と、金属板とを用いて得られた、積層体。
  6. 請求項5に記載の積層体を有する、コイル。
  7. 請求項1から3のいずれか1項に記載の硬化可能な組成物を含んでなる、コイル絶縁用ワニス。
  8. 請求項7に記載のコイル絶縁用ワニスを用いて得られたコイル。
  9. 請求項1から3のいずれか1項に記載の硬化可能な組成物を用いて得られたモータ用インシュレータ
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