JP2006272889A - プレス打抜き性に優れた電子部品用銅基素材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 炭化物の標準生成自由エネルギーが、25℃で−42kJ/mol以下である元素を0.1〜5.0mass%含有する銅基合金基材に、S以外の成分合計≦500ppm, 0.5≦S≦50ppm、純度Cu≧99.90%、厚さ:0.05〜2.0μmのCu層を被着した電子部品用素材。
【選択図】 図1.b
Description
本発明は本来の銅基合金の持つ性質を損なうことなく、プレス打抜き性に優れる銅基合金を提供することである。
以下は、プレス加工のうち、打抜き(剪断)加工を例にて本発明の金型磨耗抑制効果を説明する。
一般に銅基合金においては、強度の向上をもたらす効果が大きい添加元素ほど、プレス加工した際、金型を磨耗させる効果も大きい傾向にあるといえ、その典型的な例がチタン銅やベリリウム銅である。
一般的にプレス加工における磨耗の形態には、
a.被加工材中に内在する硬質の非金属介在物等によって工具表面を物理的に削り取るアブレッシブ磨耗
b.接触面近傍での凝着磨耗
の2種類があるとされているが、チタン銅のプレス加工で金型に生じているのは、主としてb.凝着磨耗であることが研究観察を重ねた末に明らかとなった。
銅基合金の表面を被覆する成分としてCuを選定したのは、素地との整合性が高いからである。整合性が悪いと、プレス加工中、素地の変形に表面被覆層が追随できず、界面から剥離してしまう。界面の整合性が悪い限り、たとえ熱処理をしても拡散層が脆弱となり、剥離し易い状態を改善することは出来ない。一方、Cuを90%以上含有している銅基合金とCu層との界面は、極めて整合性が高く、過酷な変形を伴うプレス加工を施しても、決して界面から剥離することはない。
Cu層はプレス加工中に工具表面と素地との隔絶を安全に維持するだけの厚さがあればよく、その厚さは一般に0.05〜2.00μmの範囲であり、厚さが0.05μm未満ではプレス打抜き性向上に効果がなく、2.00μmを超えると材料全体の強度の低下が無視できなくなる。そして、より好ましくは、0.3〜1.0μmとするのがよい。Cu被覆は電解めっき、無電解めっきが一般的であるが、スパッタリングなどによっても形成することができる。
更に、Cu層は素地に比べて柔らかいので、プレス加工において薄膜金属潤滑の効果を発揮する。ここで、薄膜金属潤滑とは、表面に柔らかい層が形成されている場合に、潤滑性が良くなる現象である。すなわち接触摩擦は、接触面をミクロで見た場合に、実際にパンチ又はダイと接触している微小な凸部が塑性変形することによって生じる。そのときの変形抵抗が摩擦抵抗となるので、表面に柔らかい表面層があると、そこの凸部に変形が集中して、摩擦抵抗が小さくなり、潤滑性が向上するのである。よって、表面のCu層は柔らかいほど、潤滑性がよいので、Cu層の硬度を上げる不純物元素は極力無い方がよい。このことからもCu層の純度は高い方が良いといえる。
ここで、Cu層の微量成分としては
Fe,Co,Ni,Si,Al,P,As,Se,Te,Sb,Bi,Au,Ag,Ti,Nb,V,Ta,W,Mo,Cr等が具体的に挙げられる。
特許文献13によると、Cuめっき又はPVD処理後の銅基合金条材を圧延して表面のCuを0.5μm以上の厚さとするリードフレーム用銅基合金が示されているが、ボンディング性、めっき性、はんだ付け性、及びレジンモールドとの密着性の改善がその目的であり、薄膜金属潤滑を利用してプレス打抜き性を改善するものではない。
具体的には、Ti:2.0〜4.0mass%を有するチタン銅、Be:0.20〜2.00mass%を有するベリリウム銅である。これらの合金に強度等の特性改善を目的としてFe、Cr、Nb、V、Zr、Co、Si、Ni、B、Pの中から1種または2種以上を0.01〜0.50mass%添加しても同様な効果が得られる。
さらに、本発明はチタン銅、ベリリウム銅のみならず、炭化物を形成しやすい元素を合金の構成元素とする銅合金が対象となる。
即ち、炭化物の標準生成自由エネルギーの値がマイナス側に大きい元素ほど、炭化物を形成しやすい元素であるので、これらを合金の構成元素とする銅合金が対象である。銅基合金において、炭化物の標準生成自由エネルギーの値が25℃で−42kJ/mol以下(絶対値42kJ/mol以上)である添加元素が合金化されている場合には、プレス加工において工具表面の炭化物と反応して、凝着摩耗を引き起こす傾向が強くなる。炭化物の標準生成自由エネルギーが25℃で−42kJ/mol以下(絶対値42kJ/mol以上)である元素としては、Fe、Cr、Nb、V、Zr、Ti、Beなどがあり、これらの元素を使った銅基合金としてチタン銅、ベリリウム銅、Cu-Cr系合金、Cu-Zr系合金、Cu-Cr-Zr系合金などが挙げられる。このような合金の表面にCu層を形成させた場合に本発明は有効に作用する。なお、炭化物の標準生成自由エネルギーは、鉄鋼便覧(丸善出版,日本鉄鋼協会編)等に記載されている値でよい。
これらの構成元素の含有量は、0.1〜5.0mass%とした。0.1 mass%未満では構成元素として含有する目的の効果が得られないからである。また、5.0mass%を超える場合には、曲げ加工性や導電率を悪くするなどの悪影響をもたらすからである。
Cuめっき前のチタン銅条の製造方法は、例えば、真空溶解・鋳造→熱延・水冷→面削→冷延→溶体化→酸洗→冷延→時効→酸洗である。その後、Cuめっきを施す。表面のCu層の状態は、めっき条件によって調整できる。例えばCu層の厚さは、電流値や通板速度で調整でき、Cu層の純度はアノードの純度やめっき液の純度によって調整できる。Cu層中のSの濃度は、めっき液である硫酸銅の濃度によって調整でき、電着粒の大きさは、電流密度によって調整できる。
まず、本発明について、チタン銅を例に説明する。
真空溶解炉で表1の成分のインゴットを溶製し、950℃に加熱して熱間圧延し板厚10mmの熱延板を得、更に950℃で十分な均質化焼鈍を行なった後水冷し、機械面削加工により酸化スケールを取り除いた後冷延して板厚0.2mmの冷延板を得た。その後大気中800〜850℃×30〜120sで溶体化処理を行い、酸洗後冷延して板厚を0.15mmとした。そして360〜400℃×3〜48hの時効処理を行い、酸洗後、最後にCuめっきを両面に施した。電着粒を図の3の写真に示す。めっき条件は次のとおりであった。
また、引張試験を行って、0.2%耐力を測定し、W曲げ試験を行って亀裂が発生しない最小曲げ半径MBR/tを測定した。なお、W曲げ試験荷重は5トンとし、試験片の板幅は10mmとした。
打抜き性は、金型磨耗性で評価した。実際に連続プレス機で一定回数の打抜きを行い、金型の磨耗状況によって変化する切断部のバリ高さと破断面比率を測定して評価をおこなった。ここで、バリ高さとは図1.bに示す突起部の高さであり、金型が磨耗するにしたがってバリが高くなってくる。また金型が磨耗するにしたがって、図1.bに示す剪断面の割合が多くなり、即ち破断面比率h2/(h1+h2)は小さくなる。打抜き性試験は、潤滑剤がない場合と有る場合の2種類行った。Cuめっきの効果を見るだけなら、前者のみでよいが、表面粗さの効果を見るために後者も行った。
金型工具材料:SKD11、クリアランス:10μm、ストローク:200rpm 図3に評価に用いた金型セット形状を示す。1辺約5mmの正方形で4つの角の曲率が異なっており、それぞれの曲率半径は、0.05mm、0.1mm、0.2mm、0.3mmである。曲率半径が小さい程、剪断加工時に応力集中が生じるので磨耗し易い。しかし、曲率半径が小さい程切断面形状がばらついて観察しにくくなる。また、プレス加工後の孔部と抜き落とし部とでは、抜き落とし側の方が観察し易い。以上を考慮し、今回の評価は抜き落とし側の曲率半径が0.1mmの角を観察した。
潤滑剤無しの場合は、十万回打ちぬいたときに素材間の差異が顕著となり、潤滑剤有りの場合は百万回打抜いたときに素材間の差異が顕著となったので、そのときの値を評価値として採用した。バリ高さはレーサ゛ー変位計で測定し、破断面比率は光学顕微鏡による断面観察で測定した。
Fe,Co,Ni,Si,Al,P,As,Se,Te,Sb,Bi,Au,Ag,Ti,Nb,V,Ta,W,Mo,Cr
本発明は、チタン銅のみならず、炭化物を形成しやすい元素を含有する合金系であれば、金型摩耗の低減効果が見込める。そこで、以下他の合金の例を示す。表6に示した合金の成分を基づいてそれぞれ溶解鋳造後熱延し、冷延、焼鈍を繰り返して、板圧厚0.15mmの冷延板を得、Cuめっきを施した。Cuめっき層の状態を表7に示す。そして実施例1と同じ条件で連続プレスを実施して、潤滑剤無しの場合と有りの場合でバリ高さ及び破断面比率を測定して、金型磨耗性を評価した。
Fe,Co,Ni,Si,Al,P,As,Se,Te,Sb,Bi,Au,Ag,Ti,Nb,V,Ta,W,Mo,Cr
一方比較例において、比較例No.6,7は発明例No.1、比較例No.8,9は発明例No.2、比較例No.10,11は発明例No.3、比較例No.12,13は発明例No.4、比較例No.14,15は発明例No.5と各々同一の組成の合金にCuめっきしたものである。ただし、比較例No.6,8,10,12,14はCu層中のSが請求の範囲より多い場合、比較例No.7,9,11,13,15はCu層中に含まれる第三元素の合計が請求の範囲より多い場合である。これら比較例を同一組成の発明例と比較すると、バリ高さ及び破断面比率について発明例より悪い結果となっている。
このように、鉄鋼中で炭化物を形成しやすい元素を含有する銅合金は、プレス加工において、金型が摩耗しやすいが、本発明で規定した表面処理をすることにより、金型摩耗が低減し、よって、精密プレスが可能になる。
Claims (4)
- 炭化物の標準生成自由エネルギーが、25℃で−42kJ/mol以下(絶対値42kJ/mol以上)である1種又は2種以上を必須添加成元素として、0.1〜5.0mass%含有し、残部が不可避的不純物及びCuである銅基合金からなる基材に,
Sを除く微量成分の合計≦500ppm,0.5≦S≦50ppmに制御され、
かつ 純度が、Cu≧99.90%に制御され厚さ:0.05〜2.0μmのCu層を被着したことを特徴とするプレス打抜き性に優れた電子部品用素材。 - 電気めっき電着粒によって形成されたCu層の表面粗さが、圧延平行方向について、
Ra:0.0030〜0.0100μm,Rz:0.0100〜0.0500μm,Sm:0.30〜1.00μmに制御されていることを特徴とする請求項1記載のプレス打抜き性に優れた電子部品用素材 - 必須添加成元素としてTi:2.0〜4.0mass%又は、Be:0.20〜2.00mass%を含有する請求項1又は2記載のプレス打抜き性に優れた電子部品用素材。
- 合金の必須添加成元素以外の添加元素としてFe、Cr、Nb、V、Zr、Co、Si、Ni、B、Pの中から1種または2種以上を0.01〜0.50mass%含有する請求項1から3までの何れか1項記載のプレス打抜き性に優れた電子部品用素材。
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