JP2006267916A - ベルトニップ定着装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 従来のベルトニップ方式の定着装置を超える更なる高速化を実現する極めてワイドニップの定着装置を提供すること。
【解決手段】 定着ベルト11および加圧ベルト12を、その外周同士を接触させ重ね合わせて、未定着トナー画像Tが表面に形成された記録シートPが挿通されるニップを形成し、前記ニップが、前記両ベルト11,12の回転方向に順に、定着ロール1とリードロール2とが当接する入口ロールニップ領域と、前記両ベルト11,12が定着ロール1に第1固定パッド5により面で付勢される第1パッドニップ領域と、定着ロール1と加圧ロール3とが当接する中間ロールニップ領域と、前記両ベルト11,12が加圧ロール3に第2固定パッド6により面で付勢される第2パッドニップ領域と、エンドロール4と加圧ロール3とが当接する出口ロールニップ領域と、の各領域からなることを特徴とする定着装置である。
【選択図】 図1

Description

この発明は、複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真方式を利用した画像形成装置において未定着トナー像を加熱定着する定着装置に関し、特に被記録材を高速で熱定着することが可能なベルトニップ方式の定着装置に関する。
従来の定着装置としては、図7に模式断面図で示されように、一対の加熱されたロール間の圧接領域に未定着トナー像を有する被記録材を通過させることにより定着を行ういわゆる加熱加圧ロール型定着装置が多用されている(以下これをロールニップ方式と言う)。図7において、101は定着ロール、102は加圧ロールである。定着ロール101は、アルミニウム等の熱伝導率の高い金属の中空ロール103の表面に耐熱性と離型性を有するテフロン(登録商標)の被覆層104が形成されたものであり、中空ロール103の内部には加熱源としてハロゲンランプ105が配置されている。
定着ロール101表面に設けた温度センサ106の信号により、図示しない温度制御回路においてハロゲンランプ105をオン・オフ制御して、定着ロール101表面がある一定温度になるように調整されている。また、定着時に記録紙(被記録材)107表面に形成された未定着トナー108の一部が定着ロール101に転移する(以下、かかる現象を「オフセット」と言う。)のを防止するために、一定量のシリコーンオイルを定着ロール101表面に供給するオイル供給装置109が設けられている。
一方、加圧ロール102は、芯金ロール110にシリコーンゴム等の比較的厚い耐熱弾性体111が被覆されたものである。この耐熱弾性体111の弾性変形によって定着ロール101、加圧ロール102の圧接部が形成される(以下、これを「ニップ」と言う。)。このニップ領域に未定着トナー像を通過させ、圧力と熱エネルギーの作用により定着するものである。ニップを通過した記録シート107は、トナーの粘着性のため定着ロール101に巻きついてくるので、それを剥がすための剥離爪112が設けられている。
しかし、前記定着方式を用いてより高速に定着しようとした場合、トナーと紙に低速の場合と同じだけの熱エネルギーと圧力を与えなければならない。そのためにはニップ幅を定着速度に比例して広くする必要がある。ニップ幅を広くするのに、両ロール間の荷重を大きくする方法、弾性体の厚さを厚くする方法と、ロール径を大きくする方法等がある。
荷重を大きくする方法や弾性体の厚さを大きくする方法では、ロールの撓みに起因するニップ幅の形状がロール軸に沿って不均一になったり、定着むらや紙しわが発生するため、荷重と弾性体厚みには自ずと限界がある。また、ロール径を大きくする方法は、前記のような品質上の問題点はないが、装置が大型になり、またロールを室温から定着可能温度まで上昇させるまでの時間(以下、「ウォームアップタイム」と言う。)が長くなってしまうという問題点を有する。
これらの問題点を解決し、より高速化に対応できるようにするため、この発明の出願人が提案し、特許文献1に開示された画像定着装置の模式断面図を図8に示す。図8において、符号121は回転可能に配置された定着ロールを示す。この定着ロール121は、アルミニウムなどの熱伝導率の高い金属で形成された円筒状のコア123を有し、その表面に弾性体からなる被覆層124を形成したものである。被覆層124は、コア123の表面に直接被覆されたHTV(High Temperature Vulcanization)シリコーンゴムからなる下地層140と、その外側に被覆されたRTV(Room Temperature Vulcanization)シリコーンゴムからなるトップコート層141とを積層したものである。
コア123の内部には、加熱源としてハロゲンランプ125が配置されている。また、定着ロール121の表面には温度センサ126が配置され、この表面の温度を計測する。そして、温度センサ126の計測信号により、図示しない温度コントローラが作動されハロゲンランプ125の点滅が制御されて、定着ロール121の表面が所定の温度に調節されるようになっている。また、定着ロール121の表面には、オイル供給装置129によって離型剤であるシリコーンオイルが供給されており、これにより記録シート127に未定着トナー128の像を定着する際に、トナー128の一部が定着ロール121にオフセットするのを防止するようになっている。
さらにこの定着装置においては、圧力ロール145が、圧縮コイルスプリング146によって定着ロール121に対して押圧されている。また、定着ロール121に向けて圧力補助ロール149が押圧されている。そして、圧力ロール145および圧力補助ロール149の周囲には、ロール142,143,144が配置されており、ロール142,143,144、圧力ロール145、圧力補助ロール149にはエンドレスベルト135が巻回されている。
圧力ロール145および圧力補助ロール149が定着ロール121に対して圧接させられていることによって、エンドレスベルト135は定着ロール121に接触して、定着ロール121とエンドレスベルト135との間が、記録シート127を通過させるためのニップ(ベルトニップ)となる。そして定着ロール121およびエンドレスベルト135が、矢印に示される方向に回転すると共に、回転する定着ロール121とエンドレスベルト135との間のニップに記録シート127が搬送され、この記録シート127がニップを通過する際に、ニップに作用する圧力とハロゲンランプ125から定着ロール121を通じて与えられる熱により未定着トナー128が記録シート127表面に定着されるようになっている。
このようなベルトニップ方式の構成を採用することにより、記録シート127がニップの幅(図8の例では圧力ロール145と圧力補助ロール149とで押さえられているエンドレスベルト135の長さ)に対応する時間加熱されるようになるので、定着ロールと圧力ロールのみを圧接させてエンドレスベルト115を使用しない、通常のロールニップ方式の場合に比べると、記録シート127の搬送速度を大きくしても十分な定着時間を確保することが可能になるという利点がある。また、同じ搬送速度であれば、ベルトニップ方式の方が、エンドレスベルト135を使用しない方式よりも加熱時間が長くなり、トナーにより多量の熱を与えることができるため、ベルトニップ方式は特に多層のトナーを所望の色に発色させる高速対応のカラー複写機の定着に適している。
また、この画像定着装置においては、定着ロール121の表面に弾性体であるシリコーンゴムからなる被覆層124が形成されており、この被覆層124が圧力ロール145の圧接力を受けて当該圧接領域において局所的に歪むようになっている。すなわち、被覆層124の表面速度が局所的に大きくなるため、圧力ロール145の圧接領域においてシートと被覆層124との間に微小なズレが生じる。また、高温状態の未定着トナー128は被覆層124へ付着しようとする傾向があるが、このときのズレによってトナー128と被覆層124との界面に微小なスリップが生じ、その付着が防止されていると考えられる。
これによって、記録シート127は、未定着トナー128と定着ロール121との付着力に抗して定着ロール121から剥離される。溶融された未定着トナー128と定着ロール121との表面の付着力は両者の界面化学的な材料物性値にも左右されるので、記録シート127が剥離する挙動はトナーの種類や被覆層124の材質に応じて異なるが、この画像定着装置によると、剥離爪などの剥離手段を使用しなくても、記録シート127を定着ロール121から剥離することができる(以下、これを「セルフストリッピング」と言う。)。このため、腰が弱くて剥離しにくい薄紙や、多量のトナーが付着した用紙でも、セルフストリッピングさせることができる。
その他、ベルトニップ方式を採用した画像定着装置については、特許文献2〜特許文献12に記載されたものがある。なお、従来のベルトニップ方式の定着装置を「BNF」と省略して呼称する。
しかしながら、近年の印刷機に匹敵するような高速化要求に応えていくためには、ベルトニップ方式よりさらにニップ幅を広くする技術が必要であり、ニップ幅を広くするのに、大幅の効果が望めない両ロール間の荷重を大きくする方法や弾性体の厚さを厚くする方法、大型化するロール径を大きくする方法以外で実現することが望まれる。
未定着トナー像を担持した記録シート(主に用紙)を熱定着する上で、重要なニップの設計パラメータは、圧力(荷重)、ニップ幅および温度であるが、高速化に対して有効なパラメータはニップ幅である。ニップ幅を変えずに高速化(プロセススピードを高めて用紙の定着生産性の向上)しようとすれば、圧力または温度を高くする必要がある。
しかしながら、圧力、すなわち荷重を大きくしていくと、記録シートの伸びや、しわが発生して問題となり、温度を高くして使いこなそうとしても、部材自体の耐熱限界の問題や、記録シートへ高速かつ適切に熱供給することの困難さの問題があるため、それぞれ対応は困難となる。ニップ圧や温度を変えるよりもニップ幅をワイドにした方が、高速化に対する感度が高い。例えば単純に同じ温度と圧力の条件でニップ幅を2倍にすることができたとすれば、およそ2倍の高速化が実現できる。
ただし、単に各構成部材を大きくしてニップ幅を広く取ったのでは、省スペース化、小型化の要求を満足することができず、また、エネルギーの無駄にもなりかねない。したがって、スペース効率が良く、できる限り幅広のニップを形成することを可能とする定着装置が切望されている。
また、ワイドニップ化の問題には水蒸気問題がある。ここで言う水蒸気問題を図8に示される画像定着装置を用いて説明する。
画像定着装置の加熱の際には、暖まった記録シート127の繊維の間隙や未定着トナー128の粒子同士の間隙から空気が熱膨張したり水蒸気が蒸発したりする。このような空気や水蒸気は、記録シート127がニップ内で加熱されることにより発生し、記録シート127がニップを通過するまでニップ内、具体的には記録シート127と定着ロール121またはエンドレスベルト135との間に気泡となって介在し、記録シート127がニップを通過し終えると同時に外部に排出される。
図8に示される定着装置のニップ領域における圧力分布を、図9にグラフにて示す。図9に示されるグラフ中、圧力P0(Tn/T0−1)とは、ニップ領域において空気や水蒸気による体積膨張に打つ勝つために必要な圧力のことを指し、本発明において、当該圧力のことを「規定圧力」と称する。
図9に示されるように、圧力ロール125による押圧部と圧力補助ロール149による押圧部との間に、圧接力(圧力P)の小さい領域が広く存在しており、この領域に気泡が介在すると、定着ロール121とエンドレスベルト135との間にギャップが生じることがある。このようなギャップが生じると、ニップ内にある記録シート127表面の未定着トナー128の全てがまだ定着していない状態では、未定着トナー128が、気泡が動き回ることによって移動してしまうことがある。このため、画像のニジミやズレ、乱れなどが発生するという問題点がある。
これを解決する手段として、ベルトを介して幅広のパッドとロールとでニップを形成する技術が開示されている(例えば、特許文献12参照)。しかし、かかる技術を具備するBNFを更なる高速領域で使いこなそうとすると、画質の欠陥が生じるという新たな課題が明らかになった。すなわち、高速化により用紙などの未定着トナー像を形成した記録シートの単位長さあたり単位時間内に与える熱量が多くなり、パッドとロールと間の領域(ニップ)での押圧力の落ち込みの影響がよりセンシティブになり、用紙やトナー内の空気や水蒸気がベルト張力に打ち勝ちことができず、画質欠陥の原因を生み出すことがあることがわかった。
すなわち、ベルトの張力だけでニップを形成する領域があると、このような画質欠陥が生じる可能性が高く、これはベルトの張力だけでニップを形成する領域を少なくするだけでは解決することができない。
一方、仮にニップ幅を十分に広げることを可能とする定着装置があれば、単位時間内に記録シートとトナーに与える熱量が少なくなり、空気や水蒸気の発生を抑制することが可能になる。
特開平5−150679号公報 特開昭62−14675号公報 特開平2−222982号公報 特開平2−308287号公報 特開平4−50885号公報 特開平4−115279号公報 実開平2−30961号公報 実開平3−86374号公報 実開平3−92661号公報 実開平4−50864号公報 特開平9−34291号公報 特開平11−2979号公報
したがって、本発明は、上記課題を考慮してなされたもので、その目的は、従来のベルトニップ方式の定着装置を超える更なる高速化を実現する極めてワイドニップの定着装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、高速化時のニップ内気体発生による像乱れを解消することにあり、従来よりもワイドなニップを形成することで、空気の膨張や水蒸気の発生によるトナー像の乱れを防止しながら、高速でトナー像を定着させることができる定着装置を提供することである。
上記目的は、以下の本発明により達成される。すなわち本発明は、
<1> 加熱源を備えた大径の定着ロールと小径のエンドロールとを含む複数のロールに張架された、回転する無端状の定着ベルト、および、小径のリードロールと大径の加圧ロールとを含む複数のロールに張架された、前記定着ベルトに従動ないし連動して回転する無端状の加圧ベルト、の両ベルトを、その外周同士を接触させ重ね合わせて、未定着トナー画像が表面に形成された記録シートが挿通されるニップを形成してなるベルトニップ定着装置であって、前記ニップが、両ベルトの回転方向に順に、
前記定着ロールと前記リードロールとが前記両ベルトを介して当接し、前記ニップの入口部を構成する入口ロールニップ領域と、
前記両ベルトが前記定着ロールに所定角度巻き付いた状態で、かつ、前記加圧ベルトの内周から前記両ベルトが前記定着ロールに第1固定パッドにより面で付勢されて、前記入口ロールニップ領域に続く幅広のニップが形成される第1パッドニップ領域と、
前記定着ロールと前記加圧ロールとが前記両ベルトを介して当接し、前記第1パッドニップ領域に続くロール−ロールニップ様のニップ圧が付与される中間ロールニップ領域と、
前記両ベルトが前記加圧ロールに所定角度巻き付いた状態で、かつ、前記定着ベルトの内周から前記両ベルトが前記加圧ロールに第2固定パッドにより面で付勢されて、前記中間ロールニップ領域に続く幅広のニップが形成される第2パッドニップ領域と、
前記エンドロールと前記加圧ロールとが前記両ベルトを介して当接し、前記第2パッドニップ領域に続く前記ニップの出口部を構成する出口ロールニップ領域と、
の各領域からなることを特徴とする定着装置である。
<2> 前記ニップのニップ圧が、全領域にわたって下記条件を満たす規定圧力以上であることを特徴とする<1>に記載の画像定着装置である。
・規定圧力:前記ニップに前記両ベルトおよび前記記録シートが挿通される際同時に取り込まれた気体の温度上昇、並びに、前記記録シートが挿通された状態でニップ間に存在する水分由来の水蒸気、による体積膨張を抑制するに十分な圧力。
<3> 前記第2パッドニップ領域のニップ圧が、前記第1パッドニップ領域のニップ圧よりも大きいことを特徴とする<1>または<2>に記載の定着装置である。
<4> 前記加圧ロールが、その表面を加熱する加熱源を備えることを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載の定着装置である。
<5> 前記加圧ロール表面および/または前記第2固定パッドの押圧面を冷却する冷却手段を備えることを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載の定着装置である。
<6> 前記第2固定パッドの前記加圧ロール表面に対する押圧力を可変にしたことを特徴とする<1>〜<5>のいずれかに記載の定着装置である。
<7> 前記定着ベルトの道程のうち前記ニップ以外のいずれかの部位において、前記定着ベルトの内周面および/または外周面を加熱する定着ベルト加熱手段を含むことを特徴とする<1〜6のいずれかに記載の定着装置である。
<8> 前記加圧ベルトの道程のうち前記ニップ以外のいずれかの部位において、前記加圧ベルトの内周面および/または外周面を加熱する加圧ベルト加熱手段を含むことを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載の定着装置である。
なお、本発明において「当接」とは、ロール相互間あるいはロールとパッドとの間で、いずれかもしくは双方の押圧力により両者が押し付けられた状態を言い、そこには必ず接触して重ね合わさった定着ベルトおよび加圧ベルトの双方が間に介在している。したがって、本発明に言う「当接」には、原則として接触状態を含まない。
各ロールの径について規定する「大径」「小径」との語は、両者間において相対的な関係で大小を論ずるものであって、絶対的な大小を意味するものではない。また、大径のロール同士、小径のロール同士についても相互に同径であるか否かは無関係であり、「大径」と「小径」との間の相対的な大小関係を維持した上で、それぞれ適切な径を選択すればよい。スペース効率のみを考慮すると、小径のロールは大径のロールに比してできる限り小さい方が好ましいが、各ロールの機能や定着装置に要求する性能等に応じて、各ロールの径を選択すればよい。
また、本発明で規定する「前記両ベルトが前記定着ロールに所定角度巻き付いた状態」あるいは「前記両ベルトが前記加圧ロールに所定角度巻き付いた状態」と言う場合の「所定角度」とは、求める定着装置の諸元やレイアウト等により適宜設定すればよく、そのように設定された角度を意味する。
ただし、各部材の配置を極めて効率的なものとし、かつ、十分なニップ幅を確保する目的に照らすと、当該「所定角度」としては、10゜以上180゜以下の範囲が好ましく、20゜以上120゜以下の範囲がより好ましく、30゜以上90゜以下の範囲がさらに好ましく、40゜以上60゜以下の範囲が特に好ましい。
本発明によれば、各部材が極めて効率的な配置であるため、従来のロールニップ方式の定着装置に比べて、それ程ないしは殆んど大型化することなく、しかも従来のBNFと比べても極めて幅広のニップが形成された定着装置を提供することができる。そのため、本発明の定着装置は、今までの定着装置に比べて、定着速度をこれまで実現困難であった程度にまで高速化することができる。
また、本発明の定着装置によれば、高速化を実現することで、問題となっていたニップでの気体の発生に起因する画像乱れを、ワイドニップ化による定着温度の低温度化の効果や、複数の押圧部材でニップ域に作用する圧力を連続的に規定圧力以上に形成することで抑制することができる。
以下、本発明を好ましい実施形態を挙げて、図面に基づき詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の例示的一態様である第1の実施形態の定着装置の模式断面図である。本実施形態の定着装置は、図1に示されるように、定着ベルト11のモジュールである定着ベルトモジュール10と、加圧ベルト12のモジュールである加圧ベルトモジュール20と、剥離案内板7および図示しない排紙機構とで構成されている。
定着ベルトモジュール10は、主として、矢印A方向に回転する定着ロール1と、内部に加熱源としてのハロゲンランプ14が配されたエンドロール4と、定着ロール1およびエンドロール4に張架されて矢印A方向に回転する定着ベルト11と、から構成される。
定着ロール1は、アルミニウム製で厚さ5mmのコアの表面に、厚さ1.5mmの弾性層が被覆されてなり、内部に加熱源としてハロゲンランプ8が配されている。本実施形態では、弾性層としてゴム硬度25〜45°のシリコーンLSR(Liquid Silicone Rubber)ゴムが用いられている。また、本実施形態において、定着ロール1は、外径70mmφ、長さ350mmのソフトロールである。
なお、弾性層の材質としては、シリコーンゴムに限定されず、従来公知の各種材質のものを採用することができ、例えば、フッ素ゴムを用いることができ、シリコーンゴムおよびフッ素ゴムからなる複数層積層された弾性層を用いてもよい。また、定着ロール1としては、弾性層のない、いわゆるハードロールを用いてもよい。定着ロール1は、毎秒400mmの表面速度で矢印A方向に回転する。定着ロール1の内部には1000Wのハロゲンランプ8が配され、不図示の温度センサと温度コントロールとによって、定着ロール1の表面が160℃になるようにコントロールされる。
定着ベルト11は、内部加熱された定着ロール1およびエンドロール4に張力10kgで張り渡されている。また、定着ベルト11は、後述する加圧ロール3に対し所定の角度巻き付けられるように、加圧ロール3に巻き付けられた(ラッピングした)加圧ベルト12の外周面に接触し重ね合わさって、ニップ領域(中間ロールニップ領域〜第2パッドニップ領域〜出口ロールニップ領域)を形成している。
本実施形態において、この定着ベルト11の加圧ロール3に対する巻き付け角度(ラップ角度)は、およそ50°(定着ベルトモジュール10と加圧ロール3との間で形成されるニップ幅はおよそ22mm※a)となっている。
定着ベルトモジュール10には、さらに、定着ベルト11および加圧ベルト12を介して、加圧ロール3に付勢される状態で圧力パッド(第2固定パッド)6が配されている。
定着ベルト11は周長330mm、幅340mmのフレキシブルなエンドレスベルトである。定着ベルト11は、厚さ75μmのポリイミド製のベース層の表面(外周面側)に、厚さ200μmのシリコーンゴムからなる弾性体層、さらにその上に厚さ30μmのテトラフルオロエチレン/ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)の表面層が被覆された多層構造のベルトである。前記弾性体層のシリコーンゴムは、ゴム硬度20度(JIS−A)であり、特にカラー画像での画質向上のために設けられている。勿論本発明において、定着ベルト11の構成は、上記のものに限定されるものではなく、材質・厚さ・硬度等の条件は、使用目的や使用条件等、装置設計に応じて適宜選択すればよい。
エンドロール4は、直径23mm、肉厚2mm、長さ350mmのステンレスパイプロールを基体として、その表面に、厚さ20μmのPFAが被覆されており、ベルトしわの防止や内部のごみなどの付着防止のために設けているが、設けなくても上記問題が発生しない場合にはこれに限るものではない。
エンドロール4の内部には、加熱源として800Wのハロゲンランプ14が配されており、図示しない温度センサと温度コントロール装置とによって、表面温度が200℃にコントロールされる。したがって、エンドロール4は、定着側における加圧ロールとしての機能とともに、定着ベルト11の加熱手段としての機能をも併せ持っている。
加圧ベルトモジュール20は、スポンジロールの軟質弾性層を有するリードロール2と、加圧ロール3と、これら両ロールにより張架された加圧ベルト12と、加圧ベルト12および定着ベルト11を介して定着ロール1に押圧される圧力パッド(押圧部材)5と、で主要部が構成されている。
リードロール2は、直径25mm、肉厚3mm、長さ350mmのステンレスパイプロールを基体として、その表面に、厚さ10mmのスポンジロールの軟質弾性層が形成されている。リードロール2の内部には、加熱源として800Wのハロゲンランプ9が配されており、図示しない温度センサと温度コントロール装置とによって、表面温度が120℃にコントロールされる。
加圧ロール3は、直径50mm、肉厚5mm、長さ350mmのステンレスパイプロールを基体として、その表面に、定着ロール1とのニップ形成を目的とする厚さ8mmの弾性層が形成されてなる。該弾性層の材料としては、本実施形態では、LSRシリコーンゴムを採用しているが、本発明においては特に限定されず、LSRシリコーンゴムのほか、HTVシリコーンゴム、RTVシリコーンゴム等従来公知の材料を採用することができる。また、加圧ロール3の内部には、加熱源として800Wのハロゲンランプ13が配されており、図示しない温度センサと温度コントロール装置とによって、表面温度が120℃にコントロールされる。
加圧ベルト12は、ベース層とその表面(定着ベルト11と接する面、または両面)に被覆された離型層とから構成されることが好ましい。ベース層はポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等から選ばれ、その厚さは、好ましくは50〜125μm程度、より好ましくは75〜100μm程度である。ベース層の表面に形成される離型層としては、前述の如きフッ素樹脂、例えばPFA等が5〜20μmの厚さでコーティングされたものが好ましい。本実施形態においては、加圧ベルト12として、厚み75μm、幅300mm、周長288mmのポイリミドフィルムのベース層のみで構成されるものを用いた。
加圧ベルト12は、定着ロール1に対し所定の角度巻き付けられるように、定着ロール1に巻き付けられた(ラッピングした)定着ベルト11の外周面に接触し重ね合わさって、ニップ領域(入口ロールニップ領域〜第1パッドニップ領域〜中間ロールニップ領域)を形成している。該ニップ領域は、定着ベルト11が定着ロール1に巻き付けられた領域に形成されているため、未定着トナーTが載った用紙(記録シート)Pがニップ部を通過する際には、あたかも定着ベルト11が外周に巻き付いた定着ロール1によってロール定着されているのと同様の状態となっている。
本実施形態において、この加圧ベルト12の定着ロール1に対する巻き付け角度(ラップ角度)は、およそ60゜(加圧ベルトモジュール20と定着ロール1との間で形成されるニップ幅はおよそ37mm※b)となっている。
結果、入口ロールニップ領域(定着ロール1とリードロール2との当接部)から出口ロールニップ領域(加圧ロール3とエンドロール4との当接部)までの合計の全ニップ幅は、およそ51mmであった(前記※aと※bとの合計になっていないのは、中間ロールニップ領域が共通するため。)。
加圧ベルト12は、ステンレス製のロール、すなわちリードロール2および加圧ロール3により、10kgの張力で張架されている。
圧力パッド(第1固定パッド)5は、定着ロール1とリードロール2との当接によって形成される入口ロールニップ領域と、定着ロール1と加圧ロール3との当接によって形成される中間ロールニップ領域との間に配されて、第1パッドニップ領域を形成している。当該第1パッドニップ領域の全域にわたって、圧力パッド5が定着ロール1表面に付勢され、当該領域が規定圧力未満にならないように押圧している。
圧力パッド5の両端角部は、リードロール2または加圧ロール3の各ロールと加圧ベルト12とのそれぞれの間に向けた突出形状をしており、当該空隙を略埋めるように配され、各領域の境界においても規定圧力未満にならないように、加圧ベルト12が定着ベルト11側に押圧されるように構成されている。
一方、圧力パッド(第2固定パッド)6は、上記中間ロールニップ領域と、加圧ロール3とエンドロール4との当接によって形成される中間ロールニップ領域との間に配されて、第2パッドニップ領域を形成している。当該第2パッドニップ領域の全域にわたって、圧力パッド6が加圧ロール3表面に付勢され、当該領域が規定圧力未満にならないように押圧している。
圧力パッド6の両端角部は、定着ロール1またはエンドロール4の各ロールと定着ベルト11とのそれぞれの間に向けた突出形状をしており、当該空隙を略埋めるように配され、各領域の境界においても規定圧力未満にならないように、定着ベルト11が加圧ベルト12側に押圧されるように構成されている。
押圧部材としての圧力パッド5および6は、例えば、幅の広いニップ領域を確保するための弾性体部材と、該弾性体部材の加圧ベルト12あるいは定着ベルト11の内周面へ接触する面に形成される低摩擦層とからなり、金属製等のホルダーに保持されている。低摩擦層を表面に有する弾性体部材は、ほぼ定着ロール1の外周面に倣う凹形になっており、定着ロール1あるいは加圧ロール3に対して面で押圧することで、第1パッドニップ領域あるいは第2パッドニップ領域を形成している。
圧力パッド5および6における弾性体部材としては、シリコーンゴム、フッ素ゴム等耐熱性の高い弾性体や、板バネ等を用いることができる。弾性体部材表面に形成される低摩擦層は、加圧ベルト12あるいは定着ベルト11の内周面と圧力パッド5あるいは6との摺動抵抗を小さくするために設けられ、摩擦係数が小さく、耐摩耗性のあるものを選択することが望ましい。具体的には例えば、テフロン(登録商標)を含浸させたガラス繊維シート、フッ素樹脂シート、フッ素樹脂塗膜等を用いることができる。
加圧ロール3は、定着ロール1と当接して中間ロールニップ領域を形成すると共に、エンドロール4にも当接して出口ロールニップ領域を形成する。特に、後者の出口ロールニップ領域では、加圧手段としての圧縮コイルスプリング(不図示)によって、加圧ベルト12および定着ベルト11を介してエンドロール4の中心に向かって付勢されており、当該領域におけるエンドロール4および定着ベルト11に一定の歪み量を生じさせている。すなわち、エンドロール4表面の弾性層および定着ベルト11の弾性体層が弾性変形し、その表面に歪みが与えられる。このエンドロール4の歪みを低荷重で効率良く与えるために、加圧ロール3は、その表面は硬質であることが望ましい。したがって、出口ロールニップ領域では、このエンドロール4および定着ベルト11の歪みにより、用紙Pの剥離性(いわゆる「セルフストリッピング性」)が確保される。
加圧ベルト12は、定着ロール1の矢印A方向の回転により張架回転される定着ベルト11に従動して矢印B方向に回転(周動回転)する。その進行速度は、定着ロール1の表面速度と同じ400mm/secである。
当該定着装置のニップよりも定着ベルト11の回転方向Aにおける下流側には、定着ベルト11表面近傍に、一辺が近接し、かつ、定着ベルト11の回転方向Aに寝かせられた状態で剥離案内板7が配されている。
本実施形態の定着装置による用紙Pの具体的な定着の様子について説明する。
未定着トナー画像Tが表面に形成された用紙Pは、図1における左側からニップの入口に向けて、矢印C方向に搬送されてくる。ニップの入口に挿通させられた用紙Pは、まず、定着ロール1とリードロール2とが前記両ベルトを介して当接する入口ロールニップ領域にて、熱およびニップ圧が与えられる。用紙Pが進行すると、圧力パッド5により前記両ベルトが定着ロール1に付勢されて形成される幅広の第1パッドニップ領域にて、熱およびニップ圧が長道程かつ長時間与えられる。
次いで、用紙Pは、定着ロール1と加圧ロール3とが前記両ベルトを介して当接し、ロール−ロールニップ様のニップ圧が付与される中間ロールニップ領域に進行し、ここでも熱およびニップ圧が与えられる。さらに用紙Pが進行すると、圧力パッド6により前記両ベルトが加圧ロール3に付勢されて形成される幅広の第2パッドニップ領域にて、熱およびニップ圧が長道程かつ長時間与えられる。
最後に、エンドロール4と加圧ロール3とが前記両ベルトを介して当接する出口ロールニップ領域に用紙Pが達し、既述の如きエンドロール4および定着ベルト11の歪みによるセルフストリッピング性と、剥離案内板7による用紙剥離作用とにより、用紙Pが定着ベルト11から剥離され、図示しない排紙機構により装置外に排出される。
以上のように、本実施形態の定着装置により未定着トナー画像Tが表面に形成された用紙Pを定着すると、その表面の未定着トナー画像Tは、入口ロールニップ領域から出口ロールニップ領域までの極めて長道程のニップに作用する圧力と熱とにより定着させられる。すなわち、本実施形態の定着装置により定着を行えば、ニップを広く取ることができるため、安定した定着性能を確保することができ、また高速定着を行ったときにも十分な熱および圧力を未定着トナー画像Tに与えることができ、高速定着を実現することもできる。
このときニップに作用する熱、すなわち定着ベルト11に与えられる熱は、従来と同様のハロゲンランプ8によって定着ロール1を通じて与えられる熱と、それとは別に、ハロゲンランプ14により加熱されたエンドロール4によって定着ベルト11に直接与えられる熱と、の2通りがあり、前者のみでは賄い切れないエネルギー供給を後者により適切かつ速やかに補給することができる。
本実施形態の定着装置においては、プロセススピードが毎秒400mmと高速であるため、用紙Pが次々にニップに挿通される連続定着が行われると、用紙Pおよび未定着トナー画像Tに熱が奪われ(さらには加圧ベルトモジュールから放熱が進み)、定着ベルト11が単に定着ロール1に巻き付いただけの構成であれば、その表面の温度が低下しやすい。ハロゲンランプ8による定着ロール1内部からの熱供給のみでは、定着ロール1自身厚みを有することから、その表面にまで熱を到達させるには、制約が大きい。
すなわち、定着ベルト11の表面温度を必要な温度に保つためには、より以上の高温で内部から加熱する必要が生じ、エネルギー損失が大きく、装置設計上の負荷が大きく、また、連続定着終了後に必要以上に表面温度が高温になることによる、その後の定着不良の懸念もある。ニップが幅広になった本実施形態の定着装置においては、上記エンドロール4によって定着ベルト11に直接与えられる熱があってもなお、高速定着時に定着ベルト11表面の温度を適切に維持するのは困難となる。
その点、本実施形態の定着装置では、リードロール2および加圧ロール3に、それぞれハロゲンランプ9および13が配されており、加圧ベルト12を介して間接的に定着ベルト11表面に熱を与えている。そのため、通常は放熱に寄与してしまう加圧ベルトモジュール20側からの熱の放散が無いばかりか、定着ベルト11表面側に対して積極的かつ補助的に熱が供給され、ニップ全長にわたって定着に必要な熱が維持されるようになっている。
以上説明したように、本実施形態の定着装置によれば、極めて長大なニップ幅を確保することができるので、高速定着が可能となり、補助的な加熱源を各種配しているため、ニップ全域における熱不足が解消され、安定した定着品質を実現することができる。
また、極めて長大なニップ幅を有する本実施形態の定着装置は、従来からのベルトニップ方式の定着装置に懸念される、ニップでの気体の発生に起因する画像乱れの抑制効果をもそうするものとなる。以下にその作用・効果について説明する。
ニップ内で発生する空気圧や水蒸気圧に打ち勝つようにするためには、外力によって定着ベルト11ないし加圧ベルト12を定着ロール1や加圧ロール3に押え付け、ニップ内の圧力Pnを上昇させて、ニップ内の圧力Pnを上昇させて、空気ないし水蒸気の体積の増大を抑止そればよい。この圧力Pnは、具体的には式(1)に示すように設定することにより実現できると考えられる。
n≧Po(Tn/To−1) ・・・(1)
ここで、Tnは定着ベルト11の温度、Toは定着装置から十分離れた位置における空気の温度(環境温度とする)、Poは大気圧である。
式(1)は、次のように導かれる。
まず、理想気体の状態方程式(2)は次の通りである。
PV=nRT ・・・(2)
これより以下の式(3)(4)が導かれる。
(Po+Pn)Vn=nRTn ・・・(3)
oo=nRTo ・・・(4)
ここで、Vnはニップ内の空気の体積、Voはニップ外の空気の体積である。ベルトニップ内の空気の膨張を抑制するには、Vn≦Voでなければならない。
このことから、下記式(5)が導かれる。
n/(Po+Pn)≦To/Po ・・・(5)
上記式(5)を変形することで、既述の式(1)が導かれる。
例えば、記録シートPと未定着トナーTとの間の界面温度Tnを150℃とし、環境温度Toを20℃とすると、上記式(1)より圧力Pnを43Pa(0.44kgf/cm2)以上にすることが必要となる。すなわちこの場合には、規定圧力Po(Tn/To−1)は43Paとなる。
なお、Tnについては、便宜上「定着ベルト11の温度」と規定しているが、上記式(1)が理想的に成り立つのは、対象となる体積膨張を来たす気体ごとに、それぞれその存在する場所の温度をTnとした場合である。それぞれの気体の存在箇所を考慮して規定圧力を計算するのは実際的ではなく、また近似的に求めるのであれば、代表される1点に絞って規定するのが便宜なので、上記規定としている。
ニップにおける定着ベルト11の温度と、それぞれの気体の存在箇所との間には、熱伝導のタイムラグ等の理由から開きがある。そのため、定着ベルト11の温度をそのまま代入するのではなく、適宜補正した値としてから代入することが好ましい。
ここで、速度aという高速化が達成可能なニップ幅がbの定着装置Aがあり、ニップ幅が2bでニップ内温度・圧力が定着装置Aと同じである定着装置Bが存在したとする。定着装置Bは、速度aの高速化が達成できる定着に必要なエネルギーをニップ幅bで与えることができるので、2倍のニップ幅を有する定着装置Bは、ニップを通過するまでにおよそ2倍のエネルギーを供給することができ、同じ速度aの高速化達成するにしても定着装置Bは定着装置Aより(1)式のTnを小さくすることができる。これにより、ベルトニップ内の圧力Pnを小さくできるので、空気や水蒸気の膨張を抑制することが容易になる。
このようにワイドニップ化は、圧力(荷重)、温度を下げることをも可能にするため、画像ズレに対しても極めて望ましい定着装置の実現が可能となる。
図2に、本実施形態の定着装置のニップ領域における圧力分布をグラフにて示す。当該グラフ中には、本実施形態の定着装置におけるニップ領域を示す線分と、規定圧力Po(Tn/To−1)を示すラインを示してある。なお、当該グラフ中には、比較のため[背景技術]の項で説明した図8に示される従来例の定着装置についても、そのニップ領域を示す線分と、規定圧力Po(Tn/To−1)を示すラインを書き加えている。
図2のグラフを見てもわかるように、本実施形態の定着装置では、比較的幅広のニップであったベルトニップ方式の従来例の定着装置と比べても、十分に長いニップ領域が確保されている。また、ニップ幅が大幅に広がったため、それに応じて、既述のように規定圧力Po(Tn/To−1)の値も落とすことができ、各領域間のニップ圧の低下に対しても規定圧力Po(Tn/To−1)を下回ることが無く、画像ズレの懸念が解消されることがわかる。
なお、一般的なベルトニップ方式の定着装置では、ニップの最終段階の高圧部分(本実施形態においては、加圧ロール3によるエンドロール4への付勢部位)で、付勢される側のロール表面の歪みにより、挿通された用紙に伸びが生じてしまうことがあったが、本実施形態の定着装置では、ニップに挿通された用紙Pは、その両面が「伸び」を生じることがない2つのベルト(定着ベルト11および加圧ベルト12)に挟まれた状態で搬送されることから、伸びが生ずる懸念も払拭されるという効果もある。
その他本発明に特徴的な構成として、本実施形態では、加圧ベルトモジュール20の加圧ベルト12が、定着ロール1表面に定着ベルト11が巻き付けられた部位の範囲内でのみ、定着ベルト11の外周面に当接して、当該領域に定着用のニップを形成している。同様に、定着ベルトモジュール10の定着ベルト11が、加圧ロール3表面に加圧ベルト12が巻き付けられた部位の範囲内でのみ、加圧ベルト12の外周面に当接して、当該領域に定着用のニップ部を形成している。
すなわち、本実施形態の定着装置における定着用のニップにおいては、定着ベルト11の内周面側には定着ロール1、エンドロール4および圧力パッド6が常に位置し、同様に、加圧ベルト12の内周面側にはリードロール2、加圧ロール3および圧力パッド5が常に位置し、定着ベルト11と加圧ベルト12との当接は、これら部材により、表面にしっかりと支持された状態となっており、ベルト同士のみの当接のような不安定な状態とはなっている部位はない。
ニップにおいては、用紙Pや未定着トナー画像T中の水分が急激に加熱されることにより水蒸気となる。ベルト同士のみの当接で形成されるような不安定で比較的圧力(ニップ圧)の低い状態においては、前記水蒸気が攪乱状態となり、加熱溶融された未定着トナー画像T中のトナーを乱す画像欠陥(画像乱れ等)を引き起こす場合がある。それに対して、本実施形態では、ニップ部全域において、定着ベルト11および加圧ベルト12が定着ロール1を含む6つの部材表面にしっかりと支持された状態となっていることから、前記水蒸気の攪乱による画像欠陥(画像流れ等)を防止することができる。
特に、この問題を解決するために、本実施形態では、図1に示されるように、各ロール間に隙間なく圧力パッド5,6が配されており、図2に示すように規定圧力以上になるようにニップの圧力分布を実現している。
以上のように用紙Pおよび未定着トナー画像Tを定着ベルト11と加圧ベルト12とでしっかりと支持することができ、水蒸気の攪乱をより効果的に防止することができる。
<第2の実施形態>
図3は、本発明の例示的一態様である第2の実施形態の定着装置の模式断面図である。本実施形態の定着装置は、図3に示されるように、定着ベルト31のモジュールである定着ベルトモジュール30と、加圧ベルト32のモジュールである加圧ベルトモジュール40と、剥離案内板27,27’および図示しない排紙機構とで構成されている。
本実施形態の定着装置は、第1の実施形態の中で述べた、高速定着において定着ベルトの表面温度を必要な温度に保つ困難さを、より高いレベルで解消した例である。すなわち、定着ベルトの表面を別途加熱する外部加熱装置を、定着ロールとは全く別に採用している。また、加熱ベルトについても、これを張架する目的の張架ロールに外部加熱手段としての機能を持たせている。つまり、本実施形態の定着装置は、本発明の必須の構成要素である定着ロール、エンドロール、リードロールおよび加圧ロールの4つのロールとは別個に、定着ベルトおよび加圧ベルトを外部から補助的に加熱する手段が配された構成である。
定着ベルトモジュール30は、主として、矢印D方向に440mm/secの表面速度で回転する定着ロール21と、加熱源を有さないエンドロール24と、内部に加熱源としてのハロゲンランプ41が配された張架ロール35と、同様に内部に加熱源としてのハロゲンランプ42が配された張架ロール36と、定着ロール21およびエンドロール24に張架されて矢印G方向に回転する定着ベルト31と、から構成される。ハロゲンランプ41が配された張架ロール35およびハロゲンランプ42が配された張架ロール36は、定着ベルトの張架ロールとしての機能と共に、定着ベルトの外部加熱装置としての機能をも発揮する定着ベルト加熱手段ともなり得るものである。
定着ロール21は第1の実施形態における定着ロール1と、定着ベルト31は第1の実施形態における定着ベルト11と、それぞれ同一の機能を有する部材であるため、以下の説明において特に触れていない事項は、基本的に第1の実施形態と同様とする。
定着ベルト31は、内部加熱された定着ロール21、エンドロール24、張架ロール35および張架ロール36に張力10kgで張り渡されている。また、定着ベルト31は、後述する加圧ロール23に対し所定の角度巻き付けられるように、加圧ロール23に巻き付けられた(ラッピングした)加圧ベルト32の外周面に接触し重ね合わさって、ニップ領域(中間ロールニップ領域〜第2パッドニップ領域〜出口ロールニップ領域)を形成している。
本実施形態において、この定着ベルト31の加圧ロール23に対する巻き付け角度(ラップ角度)は、およそ60°(定着ベルトモジュール30と加圧ロール23との間で形成されるニップ幅はおよそ24mm※a’)となっている。
定着ベルト31は周長565mm、幅340mmのフレキシブルなエンドレスベルトであり、取り回しを除いては第1の実施形態における定着ベルト11と同様の構成である。
定着ベルトモジュール30には、さらに、定着ベルト31および加圧ベルト32を介して、加圧ロール23に付勢される状態で圧力パッド(第2固定パッド)26が配され、第2パッドニップ領域を形成している。この圧力パッド26も第1の実施形態における圧力パッド6と同一の機能を有する部材であるため、以下の説明において特に触れていない事項は、基本的に第1の実施形態と同様とする。
エンドロール24は、直径12mm、長さ350mmで、ステンレス製の中実ロールであり、曲率剥離を行うために、小径のローラ径としている。
エンドロール24は、内部に加熱源を有さず、第1の実施形態におけるエンドロール24と同様、セルフストリッピング性の発現に寄与する部材を構成する。
張架ロール35の内部には、加熱源としての800Wのハロゲンランプ41が配されており、図示しない温度センサと温度コントロール装置によってその表面が200℃にコントロールされる。したがって、張架ロール35は、定着側張架ロールとしての機能とともに、定着ベルト加熱手段としての機能をも併せ持っている。勿論、張架ロール36の内部にも加熱源としてのハロゲンランプ42が配されており、同様にその表面温度が同一温度に制御されている。すなわち本実施形態では、定着ベルト加熱手段として機能する部材を2つ有する構成となっている。そして、前者は定着ベルト31の内周面から、後者は定着ベルト31の外周面から、それぞれ加熱する。
なお、張架ロール36は、定着ベルト31全体が張力10kgとなるように荷重を印加する押圧ロールとしての機能をも有している。
加圧ベルトモジュール40は、リードロール22と、加圧ロール23と、第1張架ロール(加圧側張架ロール)37と、第2張架ロール(加圧側張架ロール)38と、これら4本のロールにより張架された加圧ベルト32と、これを介して定着ロール21に押圧される圧力パッド(第1固定パッド)25とで主要部が構成されている。
リードロール22は、直径25mm、肉厚2mm、長さ350mmのステンレスパイプロールを基体として、その表面に、厚さ5mmのスポンジロールの軟質弾性層が形成されている。リードロール22には、第1の実施形態とは異なり加熱源は無い。
加圧ロール23は、第1の実施形態における加圧ロール3と同一の機能を有する部材であるため、以下の説明において特に触れていない事項は、基本的に第1の実施形態と同様とする。
加圧ベルト32は、定着ロール21に対し所定の角度巻き付けられるように、定着ロール21に巻き付けられた(ラッピングした)定着ベルト31の外周面に接触し重ね合わさって、ニップ領域(入口ロールニップ領域〜第1パッドニップ領域〜中間ロールニップ領域)を形成している。該ニップ領域は、定着ベルト31が定着ロール21に巻き付けられた領域に形成されているため、未定着トナーT’が載った用紙(記録シート)P’がニップ部を通過する際には、あたかも定着ベルト31が外周に巻き付いた定着ロール21によってロール定着されているのと同様の状態となっている。
第1張架ロール(加圧側張架ロール)37の内部には、加熱源としての300Wのハロゲンランプ43が配されており、図示しない温度センサと温度コントロール装置によってその表面が120℃にコントロールされる。したがって、第1張架ロール37は、加圧側張架ロールとしての機能とともに、加圧ベルト加熱手段としての機能をも併せ持っている。勿論、第2張架ロール38の内部にも加熱源としてのハロゲンランプ44が配されており、同様にその表面温度が同一温度に制御されている。すなわち本実施形態では、加圧ベルト加熱手段として機能する部材を2つ有する構成となっている。
本実施形態において、加圧ベルト32の定着ロール21に対する巻き付け角度(ラップ角度)は、およそ60゜(加圧ベルトモジュール40と定着ロール21との間で形成されるニップ幅はおよそ37mm※b’)となっている。
結果、入口ロールニップ領域(定着ロール21とリードロール22との当接部)から出口ロールニップ領域(加圧ロール23とエンドロール24との当接部)までの合計の全ニップ幅は、およそ51mmであった(前記※a’と※b’との合計になっていないのは、中間ロールニップ領域が共通するため。)。
加圧ベルト32は、リードロール22、加圧ロール23、第1張架ロール37および第2張架ロール37により、10kgの張力で張架されている。
圧力パッド(第1固定パッド)25は、第1パッドニップ領域を形成している。この圧力パッド25も第1の実施形態における圧力パッド5と同一の機能を有する部材であるため、以下の説明において特に触れていない事項は、基本的に第1の実施形態と同様とする。後者の出口ロールニップ領域で、
加圧ロール33は、定着ロール21と当接して中間ロールニップ領域を形成すると共に、エンドロール24にも当接して出口ロールニップ領域を形成する。後者の出口ロールニップ領域で定着ベルト31およびエンドロール24に歪みを生じさせて、セルフストリッピング性を付与している点についても、第1の実施形態と同様である。
加圧ベルト32は、矢印G方向に従動回転する定着ベルト31に従動して矢印E方向に回転(周動回転)する。その進行速度は、定着ロール21の表面速度と同じ440mm/secである。
当該定着装置のニップよりも定着ベルト31の回転方向Gにおける下流側には、定着ベルト31表面近傍に、一辺が近接し、かつ、定着ベルト31の回転方向Gに寝かせられた状態で剥離案内板27が、また加圧ベルト32表面近傍に、一辺が近接し、かつ、加圧ベルト32の回転方向Eに寝かせられた状態で剥離案内板27’が、それぞれ配されている。
本実施形態の定着装置による用紙P’の具体的な定着の様子について説明する。
未定着トナー画像T’が表面に形成された用紙P’は、図3における左側からニップの入口に向けて、矢印F方向に搬送されてくる。ニップの入口に挿通させられた用紙P’は、まず、定着ロール21とリードロール22とが前記両ベルトを介して当接する入口ロールニップ領域にて、熱およびニップ圧が与えられる。このとき、用紙P’を挟み込むようにして定着ロール21とリードロール22との間に挿通される定着ベルト31および加圧ベルト32は、事前に張架ロール35ないし張架ロール36の定着ベルト加熱手段、および、第1張架ロール37ないし第2張架ロール38の加圧ベルト加熱手段により、それぞれ適切な温度に調節されている。
用紙P’が進行すると、圧力パッド25により前記両ベルトが定着ロール21に付勢されて形成される幅広の第1パッドニップ領域にて、熱およびニップ圧が長道程かつ長時間与えられる。
次いで、用紙P’は、定着ロール21と加圧ロール23とが前記両ベルトを介して当接し、ロール−ロールニップ様のニップ圧が付与される中間ロールニップ領域に進行し、ここでも熱およびニップ圧が与えられる。さらに用紙P’が進行すると、圧力パッド26により前記両ベルトが加圧ロール23に付勢されて形成される幅広の第2パッドニップ領域にて、熱およびニップ圧が長道程かつ長時間与えられる。
最後に、エンドロール24と加圧ロール23とが前記両ベルトを介して当接する出口ロールニップ領域に用紙P’が達し、既述の如きエンドロール24および定着ベルト31の歪みによるセルフストリッピング性と、剥離案内板27,27’による用紙剥離作用とにより、用紙P’が定着ベルト31から剥離され、図示しない排紙機構により装置外に排出される。
以上のように、本実施形態の定着装置により未定着トナー画像T’が表面に形成された用紙P’を定着すると、その表面の未定着トナー画像T’は、入口ロールニップ領域から出口ロールニップ領域までの極めて長道程のニップに作用する圧力と熱とにより定着させられる。すなわち、本実施形態の定着装置により定着を行えば、ニップを広く取ることができるため、安定した定着性能を確保することができ、また高速定着を行ったときにも十分な熱および圧力を未定着トナー画像T’に与えることができ、高速定着を実現することもできる。
定着ベルト31は、一般的なベルトニップ方式の定着装置における定着ロール全体に比較して、非常に小熱容量となる。これまでの定着ロールのみで構成される場合の当該定着ロールの表面層に当たる部分が、別途定着ベルト31を構成して、残りの定着ロール21とは別に独立に加熱されるため、加熱に必要な時間を確保しやすく、また効率的かつ速やかに定着ベルト31のみを所望の温度まで加熱することができ、高い高速安定性を実現することができる。よって、高速定着時の大きな課題であった温度ドループの問題が解決される。その他、定着温度を途中で切り替えたい(定着温度アップおよびダウンの双方を含む)場合にも、熱容量の小さな定着ベルト31の温度のみを張架ロール35ないし張架ロール36の定着ベルト加熱手段で調整すればよいので、所望の温度に切り替えることが容易であり、かつ速やかであると言った利点も有する。
張架ロール35ないし36の外周面を定着ベルト31の内周面ないし外周面と広くラッピングさせることができることから、張架ロール35ないし36の内部に加熱源としてのハロゲンランプ41ないし42を配することで、加熱された張架ロール35ないし36から定着ベルト31に熱エネルギーを伝達する時間を十分に確保することができ、効率的に定着ベルト31を加熱することが可能となる。
このとき、すなわち定着ベルト31に与えられる熱は、ハロゲンランプ28によって定着ロール21を通じて与えられる従来と同様の熱と、それとは別に、ハロゲンランプ41あるいは42により加熱された定着ベルト加熱手段としての張架ロール35ないし36によって定着ベルト31に直接与えられる熱と、の2通りがあり、前者のみでは賄い切れないエネルギー供給を後者により適切かつ速やかに補給することができる。
特に後者の定着ベルト加熱手段としての上記各ロールでは、定着ベルト31の内周面に当接している張架ロール35が定着ベルト31の当該内周面側から定着ベルト31を加熱するとともに、定着ベルト31の外周面に当接している張架ロール36が定着ベルト31の当該外周面側から定着ベルト31を加熱する。このように定着ベルト31は、外周面と内周面の双方から加熱されるので、一段と多くの熱量が安定的に供給される。したがって、極めて有効に温度ドループの発生が抑制されるため、高速化に対する許容量もさらに高まり、より一層の高速定着が可能となる。
さらに、本実施形態の定着装置では、第1の実施形態と同様、ニップに挿通された用紙P’は、その両面が「伸び」を生じることがない2つのベルト(定着ベルト31および加圧ベルト32)に挟まれた状態で搬送されることから、伸びが生ずる懸念も払拭される。
その他本発明に特徴的な構成として、第1の実施形態と同様、定着用のニップにおいて、定着ベルト31の内周面側および加圧ベルト32の内周面側のそれぞれに両ベルトを当接(押圧)させるための部材が常に位置し、定着ベルト31と加圧ベルト32との当接は、これら部材により、表面にしっかりと支持された状態となっており、ベルト同士のみの当接のような不安定な状態とはなっている部位はない。
また、第1の実施形態と同様、定着ベルト31および加圧ベルト32が定着ロール21を含む6つの部材表面にしっかりと支持され、かつ、図3に示されるように、各ロール間に隙間なく圧力パッド(押圧部材)が配された状態となっていることから、前記水蒸気の攪乱による画像欠陥(画像流れ等)を防止することができる。したがって、水蒸気の攪乱をより効果的に防止することができる。
(本発明の効果確認試験)
−ニップ最低圧力確認試験−
本実施形態の画像定着装置および図4に示す従来例の定着装置を用い、実際に未定着トナーT’を担持した用紙P’を熱定着させて、高速化条件(プロセススピード)を変化させた場合の、ニップにおける最低圧力の関係を確認した。
具体的には、実際に記録シートである用紙表面に未定着トナー像を担持させて、これをサンプルとしてそれぞれの画像定着装置により熱定着させて、その定着性を官能評価を中心に像乱れとして評価した。熱定着の際には、定着速度(プロセススピード)を250mm/s〜450mm/sまで高速化させて、試験を行った。また、それぞれの高速化条件に対して、ニップにおける最低圧力(全ニップ領域において、最も荷重の小さな部分の値)を44Pa(0.45kgf/cm2)〜59Pa(0.6kgf/cm2)の間で変化させて評価した。
図4に示す従来例の定着装置について説明する。
図4は、本効果確認試験に供した、いわゆるベルトニップ方式の従来例の画像定着装置の模式断面図である。図4において、符号201は矢印H方向に回転可能に配置された定着ロールを示し、内部には、加熱手段として1100Wのハロゲンランプ211が配置されている。定着ロール201と当接してニップを形成するエンドレスベルト202は、張架ロール203,204および押圧ロール205に張架されており、定着ロール201の回転に応じて矢印I方向に従動回転するようになっている。また、押圧ロール205は、不図示の圧縮コイルスプリングによって定着ロール201に対して押圧されている。
さらに、エンドレスベルト202の内側であって、定着ロール201とのニップ領域には、エンドレスベルト202を介して定着ロール201を押圧する固定パッド209が配されている。したがって、未定着のトナーT”が形成された用紙P”が通過するニップの幅は、エンドレスベルト202における固定パッド209により押圧され始めている部位から、押圧ロール205で押圧されている部位までのニップが形成されている。
評価には、光沢度変化や像ずれ、ブリスター(微小な火脹れや噴火のような画像ディフェクト)等の発生の有無を総合して判断した。本効果確認試験の結果を下記表1に示す。なお、評価基準は以下の通りである。
○:問題なし
△:軽度の画像乱れあり(定着画像として許容限度範囲内)
×:画像乱れあり(定着画像として許容限度範囲を超える程度のもの)
Figure 2006267916
未定着のトナーT”が形成された用紙P”は、矢印J方向に搬送されると、前記ニップに挿通されて、表面のトナーT”が溶融し定着され、押圧ロール205の押圧力によるセルフストリッピング性と爪状の剥離部材206とにより定着ロール201表面から引き剥がされ、トナー画像が定着された状態で排紙される。
定着のニップ幅を一定として高速化する場合、用紙表面のトナー像を定着するためには、定着ロールの温度(定着温度)を高くする必要がある。例えば図4に示される上記従来例(ニップにおける最低圧力が44Pa(0.45kgf/cm2)の場合)においては、250mm/sから300mm/sに高速化した場合、定着ロールの温度を150℃から170℃にする必要がある。逆にニップ幅を長くすることができれば、定着温度を下げること可能となる。
上記従来例の定着装置のニップ幅はおよそ24mm(パッドの部分はおよそ14mm)で本実施形態の定着装置のニップ幅がおよそ51mmであるので、例えば、従来例の定着装置では300mm/sで170℃が必要であったが、本実施形態の定着装置(ニップにおける最低圧力が44Pa(0.45kgf/cm2)の場合)では、300mm/sでも150℃で定着することが可能であることが、上記表1の結果から読み取れる。従来例の定着装置では、その時のニップにおける最低圧力が54Pa(0.55kgf/cm2)以上必要であったにもかかわらず、本実施形態の定着装置では、最低圧力が44Pa(0.45kgf/cm2)でもあっても像乱れを起こしていない。
−温度ドループ確認試験−
本実施形態の定着装置と上記従来例の定着装置とを用いて、未定着トナー画像が形成された用紙を連続的に定着した場合の定着温度(本実施形態の定着装置では定着ベルト31表面の温度、従来例のベルトニップ方式の定着装置では定着ロール201表面の温度:単位はともに℃)の推移を確認した結果を、図6にグラフにて示す。横軸が連続コピー時間であり、縦軸が定着温度である。
なお、比較のための従来例のベルトニップ方式の定着装置としては、加熱源が定着ロール内のハロゲンランプのみのもの(図4に示す定着装置)と、さらに外部加熱を備えたもの(図5に示す定着装置)との2種類について確認した。図5の画像定着装置は、図4に示す従来例の定着装置に対して、その定着ロール201に接触して従動回転する2つの外部加熱ロール220を加えた構成のものである。外部加熱ロール220は、その内部に1000Wのハロゲンランプが配されている。
その他、装置や用紙の各種条件は、基本的に3つの定着装置について同一とした。
連続コピー時に一旦温度が低下しその後回復するという現象(温度ドループ)は、コピーの初めは定着ロール周囲の弾性層が熱抵抗として作用するために急激に熱が奪われ、その後内部からの熱が補給されて表面に出てくるので表面温度は回復してくるために起こるものである。
図6に示されるグラフを見てわかるように、従来のベルトニップ方式の定着装置では、連続コピー時間の増加とともに定着温度が低下して行き、設定された定着温度(190℃)から15〜22℃も低下する温度ドループが確認された。外部加熱を備えたものについては、温度ドループの程度がやや緩和されるものの、依然として高速定着性に影響を与え得る程度であった。
これに対して、本実施形態の定着装置では、連続コピー時間が増加しても定着温度はほとんど影響を受けず、温度ドループの発現がほとんど見られなかった。
以上のように、図5のグラフから、本実施形態によれば、高速定着時の大きな課題であった温度ドループの問題も解消されたことがわかる。
<その他の変形例>
本発明の画像定着装置について、2つの実施形態を挙げて説明したが、本発明には、さらに様々な変形例があり、しかもそれら変形例がいずれも極めて新規の効果ないし顕著な効果を奏するものであるため有用である。
以下、本発明のその他の有用な変形例について説明する。
(両面同時定着)
図1に示される第1の実施形態の定着装置、並びに、図3に示される第2の実施形態の定着装置は、加圧ベルトモジュール20,40側にも加熱部材を有するため、用紙(記録シート)の両面に未定着トナーを形成して、これを同時に定着する両面同時定着可能な定着装置として用いることができる。ただし、その場合には、加圧ベルトモジュール20,40側の温度条件と、定着ベルトモジュール10,30側の温度条件とをできるだけ揃えることが望ましい。そのためには、例えば図3に示される第2の実施形態の定着装置の場合には、ベルト(定着ベルト31、加圧ベルト32)の外部加熱手段の構成を同一のものに揃える等の方法が挙げられる。
また、定着ベルトモジュール10,30側と加圧ベルトモジュール20,40側の双方を定着面として定着できることから、両面同時定着の他、両面別々のタイミングで定着する場合でも、紙の向きを裏表させずにそのまま定着できるので、反転トレイやそれに付随する部材が不要となり、省スペース化および部品点数の少量化を実現することができ、装置の小型化並びに低コスト化を実現することができる。
かかる定着装置をカラー複写機などに適用すれば、複写生産性に優れた定着装置ないし画像形成装置を提供することが可能となる。
なお、加圧ベルトモジュール20,40側で定着される用紙の面は、セルフストリッピング性を確保することが困難なので、用紙剥離性改善のための方策、例えば、用紙の端部に圧搾気体を吐出して強制的に剥離する特開2004−212954号公報に開示された剥離装置等を採用することが望ましい。勿論、当該文献に開示された剥離装置は、両面同時定着を目的とする定着装置のみならず、本発明の範疇に含まれるあらゆる定着装置に対して、用紙剥離性向上を目的として採用することができる。
(グロスコントロール)
定着直後の溶融した状態のトナー画像に対して、平滑な面で圧を与えると画像のグロス(光沢度)が向上することが知られている。また、その圧の程度により、グロスの程度をある程度コントロールすることができることも知られている(以上、例えば特開2004−139039号公報を参照)。
したがって、グロスを向上させるには、第2パッドニップ領域のニップ圧が、第1パッドニップ領域のニップ圧よりも大きい状態とすることが有効である。すなわち、図1に示される第1の実施形態の定着装置、並びに、図3に示される第2の実施形態の定着装置で言えば、圧力パッド5,25による押圧力よりも圧力パッド6,26による押圧力の方を大きくすることで、画像のグロスを向上させることができる。
このとき、できれば、加圧ロール3,23およびエンドロール4,24は、加熱源による熱を小さくするないしは与えない、あるいは加熱源そのものを有しないことが望ましい。画像グロスの向上を企図するには、平滑面での押圧時に、トナーが溶融状態から半溶融状態ないし硬化状態に移行することが望ましいためである。
また、画像や用紙(記録シート)の種類に応じてグロスをコントロールしたい場合には、第2固定パッドの加圧ロール表面に対する押圧力を可変とする定着装置とすればよい。すなわち、図1に示される第1の実施形態の定着装置、並びに、図3に示される第2の実施形態の定着装置で言えば、圧力パッド6,26による押圧力を可変にすることで、当該押圧力を適宜選択することで、画像のグロスを所望の程度に調整することができる。
(冷却剥離)
溶融状態のトナーを剥離することは困難であるが、トナーを半溶融状態ないし硬化状態にすると、剥離性が向上することが知られている。したがって、加圧ロール表面および/または第2固定パッドの押圧面を冷却する冷却手段を備えることで、記録シート表面のトナー画像を冷却して、剥離性を向上させることができる。
すなわち、図1に示される第1の実施形態の定着装置、並びに、図3に示される第2の実施形態の定着装置で言えば、加圧ロール3,23の表面や、圧力パッド5,25の押圧面、あるいはこれら双方に、定着ロール1,21等の加熱源を有する部材からの熱を冷却するための冷却手段を設け、第2パッドニップ領域を通過する記録シート(用紙)表面のトナー画像を積極的に冷却させる(このとき、勿論ハロゲンランプ13,33は、電源を落としておく、ないしは、初めから設けない。)。このような構成とすることで、用紙剥離性を向上させることができる。
冷却手段としては、特に限定されないが、例えば、冷却ファンによる空冷法、冷却水を循環させる水冷法、その他積極的に冷却した冷媒を循環させる方法等が挙げられる。
以上、本発明の画像定着装置について、2つの実施形態およびその変形例を挙げて説明したが、本発明はこれら構成に限定されるものではない。本発明は、本発明における必須の構成要件を具備するものであれば問題なく、当業者は、公知の知見により種々の変更を加えることができる。
本発明の例示的一態様である第1の実施形態の定着装置の模式断面図である。 図1の定着装置のニップ領域における圧力分布を示すグラフである。 本発明の他の例示的一態様である第2の実施形態の定着装置の模式断面図である。 本発明の効果確認試験に供した、いわゆるベルトニップ方式の従来例の定着装置の模式断面図である。 本発明の効果確認試験に供した、いわゆるベルトニップ方式の従来例の定着装置であって、図4の定着装置に対して、その定着ロールに接触して従動回転する2つの外部加熱ロールを加えた構成のものである。 本発明の効果確認試験としての温度ドループ確認試験の結果を示すグラフである。 従来の加熱加圧ロール型定着装置を示す模式断面図である。 従来のベルトニップ型定着装置を示す模式断面図である。 図8に示される定着装置のニップ領域における圧力分布を示すグラフである。
符号の説明
1,21,101,121,201:定着ロール、 2,22,102:リードロール、 3,23:加圧ロール、 4,24:エンドロール、 5,25:圧力パッド(第1固定パッド)、 6,26:圧力パッド(第2固定パッド)、 7,27,27’:剥離案内板、 8,9,13,14,33,28,41,42,43,44,105,125,211:ハロゲンランプ(加熱源)、 10,30:定着ベルトモジュール、 11,31:定着ベルト、 12,32:加圧ベルト、 20,40:加圧ベルトモジュール、 35,36:張架ロール(定着ベルト加熱手段)、 37,38:張架ロール(加圧ベルト加熱手段)、 103:中空ロール、 104,124:被覆層、 106,126:温度センサ、 107,127,P,P’,P”:記録シート、 108,128,T,T’,T”:未定着トナー、 109,129:オイル供給装置、 110:芯金ロール、 111:耐熱弾性体、 112:剥離爪、 115,135,202:エンドレスベルト、 123:コア、 125,145:圧力ロール、 140:下地層、 141:トップコート層、 142,143,144:ロール、 146:圧縮コイルスプリング、 149:圧力補助ロール、 203,204:張架ロール、 205:押圧ロール、 206:剥離部材、 209:固定パッド、 220:外部加熱ロール

Claims (8)

  1. 加熱源を備えた大径の定着ロールと小径のエンドロールとを含む複数のロールに張架された、回転する無端状の定着ベルト、および、小径のリードロールと大径の加圧ロールとを含む複数のロールに張架された、前記定着ベルトに従動ないし連動して回転する無端状の加圧ベルト、の両ベルトを、その外周同士を接触させ重ね合わせて、未定着トナー画像が表面に形成された記録シートが挿通されるニップを形成してなるベルトニップ定着装置であって、前記ニップが、両ベルトの回転方向に順に、
    前記定着ロールと前記リードロールとが前記両ベルトを介して当接し、前記ニップの入口部を構成する入口ロールニップ領域と、
    前記両ベルトが前記定着ロールに所定角度巻き付いた状態で、かつ、前記加圧ベルトの内周から前記両ベルトが前記定着ロールに第1固定パッドにより面で付勢されて、前記入口ロールニップ領域に続く幅広のニップが形成される第1パッドニップ領域と、
    前記定着ロールと前記加圧ロールとが前記両ベルトを介して当接し、前記第1パッドニップ領域に続くロール−ロールニップ様のニップ圧が付与される中間ロールニップ領域と、
    前記両ベルトが前記加圧ロールに所定角度巻き付いた状態で、かつ、前記定着ベルトの内周から前記両ベルトが前記加圧ロールに第2固定パッドにより面で付勢されて、前記中間ロールニップ領域に続く幅広のニップが形成される第2パッドニップ領域と、
    前記エンドロールと前記加圧ロールとが前記両ベルトを介して当接し、前記第2パッドニップ領域に続く前記ニップの出口部を構成する出口ロールニップ領域と、
    の各領域からなることを特徴とする定着装置。
  2. 前記ニップのニップ圧が、全領域にわたって下記条件を満たす規定圧力以上であることを特徴とする請求項1に記載の画像定着装置。
    ・規定圧力:前記ニップに前記両ベルトおよび前記記録シートが挿通される際同時に取り込まれた気体の温度上昇、並びに、前記記録シートが挿通された状態でニップ間に存在する水分由来の水蒸気、による体積膨張を抑制するに十分な圧力。
  3. 前記第2パッドニップ領域のニップ圧が、前記第1パッドニップ領域のニップ圧よりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
  4. 前記加圧ロールが、その表面を加熱する加熱源を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の定着装置。
  5. 前記加圧ロール表面および/または前記第2固定パッドの押圧面を冷却する冷却手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の定着装置。
  6. 前記第2固定パッドの前記加圧ロール表面に対する押圧力を可変にしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の定着装置。
  7. 前記定着ベルトの道程のうち前記ニップ以外のいずれかの部位において、前記定着ベルトの内周面および/または外周面を加熱する定着ベルト加熱手段を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の定着装置。
  8. 前記加圧ベルトの道程のうち前記ニップ以外のいずれかの部位において、前記加圧ベルトの内周面および/または外周面を加熱する加圧ベルト加熱手段を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の定着装置。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008242439A (ja) * 2007-02-26 2008-10-09 Konica Minolta Business Technologies Inc 画像形成方法
JP2010191380A (ja) * 2009-02-20 2010-09-02 Ricoh Co Ltd 定着装置及びこれを搭載する画像形成装置
JP2013103474A (ja) * 2011-11-16 2013-05-30 Ricoh Co Ltd 転写装置及び画像形成装置

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