JP2006265436A - 土質などの安定化用注入薬液組成物およびそれを用いた安定強化止水工法 - Google Patents

土質などの安定化用注入薬液組成物およびそれを用いた安定強化止水工法 Download PDF

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Abstract

【課題】ケイ酸塩水溶液および水酸基含有ポリエーテルを含まないポリイソシアネートの2成分の相溶性確保と排水汚染の抑制とを両立させ、かつ発泡硬化性、強度等の物性、安全性、作業性および経済性に優れた注入薬液組成物およびそれを用いた安定強化止水工法を提供する。
【解決手段】ケイ酸塩水溶液を含む(A)成分150〜300重量部とイソシアネート化合物を含む(B)成分100重量部からなる土質の安定化用注入薬液組成物において、(A)成分が、固形分濃度が35〜50%であり、Na2Oに対するSiO2のモル比が2〜3であるケイ酸ナトリウム水溶液(A1)およびポリオール(A2)を含有し、(B)成分が、イソシアネート化合物(B1)を40〜80重量%、イソシアネート化合物(B2)を10〜30重量%およびイソシアネート化合物(B3)を10〜30重量%含有する土質の安定化用注入薬液組成物である。
【選択図】なし

Description

本発明は、土質などの安定化用注入薬液組成物およびそれを用いた安定強化工法に関するものである。さらに詳細には、経済性、相溶性および作業性に優れ、しかも混合・注入された薬液が硬化する前に地下水等に接触しても排水汚染を引き起こす可能性の少ない、不安定地盤や岩盤などの安定化用注入薬液組成物、およびそれを用いた破砕帯を有する岩盤や不安定軟弱地盤の固結安定化または封止工法、および漏水、湧水のある岩盤または地盤の止水または空洞充填工法などの安定強化工法に関するものである。
不安定地盤や岩盤などの強化方法として、土壌安定化のために無機−有機複合系の薬液が用いられる。このような薬液としては、ケイ酸ナトリウム水溶液などのケイ酸塩水溶液とポリイソシアネートとの組み合わせが広く用いられているが、一般にケイ酸塩水溶液とポリイソシアネートとは、それぞれ無機物と有機物との組み合わせであるため、本質的に相溶性不良の問題がある。2成分の相溶性がわるい場合、均一な発泡体が得られず、安定した強度を発現しにくい傾向にある。
特許文献1には、ケイ酸ソーダ水溶液を主成分とするA成分とポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を主成分とするB成分とを組み合わせた二成分型地山固結用薬液組成物であって、上記イソシアネート全量の45〜65重量%が2核体であり、特に5〜35重量%が2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートであり、かつ3核体以上のポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートが10〜45重量%である地山固結用薬液が記載されている。
また特許文献2には、ケイ酸ソーダ水溶液を主成分とするA成分とポリメリックMDIを主成分とするB成分とを組み合わせた二成分型地山固結用薬液組成物であって、上記イソシアネート全量の43〜70重量%が2核体であり、かつ3核体以上のポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートが8重量%以上45重量%未満である地山固結用薬液が記載されている。
これらの薬液においては、ポリイソシアネート成分中の組成比を調整することにより、2成分の反応性を改良している。しかしそれだけでは、ケイ酸ソーダ水溶液を主成分とするA成分とポリイソシアネートを主成分とするB成分との相溶性を十分確保できないという問題がある。
また特許文献3および4には、以下に示すA液およびB液からなる土壌固結用注入薬液組成物の記載がある。
A液:ケイ酸塩水溶液を含有する無機系液状物。
B液:以下に示す(a)〜(c)を反応させたイソシアネート基末端プレポリマーであって、(a)と(b)の組成比が、(a)/(b)=20/80〜70/30(重量比)であるポリイソシアネートに、(c)を反応させたイソシアネート基末端プレポリマーを含有する有機系液状物。
(a)2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを合計10〜55重量%、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを90〜45重量%からなる、ジフェニルメタンジイソシアネート。
(b)3核体以上のポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート。
(c)数平均分子量が200〜5000であり、かつ、エチレンオキサイドユニットを60〜100重量%含有する水酸基含有ポリエーテル。
これらの薬液においては、2成分の相溶性改良を目的として、エチレンオキサイドユニットを60〜100重量%含有する水酸基含有ポリエーテルを付加反応して得られるイソシアネート基末端プレポリマーを含有するポリイソシアネート成分を使用している。しかし、このイソシアネート基末端プレポリマーはエチレンオキサイドユニット含有量がかなり多いポリエーテルを用いて反応しているため、親水性が非常に強くなっている。そのため、これを用いた薬液は、硬化する前に地下水等の水と接触した場合、白濁を生じ、排水を汚染する危険性がある。
また、特許文献5、6および7には、ポリ(オキシプロピレン)ポリオールなどのプロピレンオキサイドユニットを5重量%以上含有する活性水素基含有化合物を付加反応して得られる、イソシアネート基末端プレポリマーを含有するポリイソシアネート成分を使用する薬液が記載されている。これにより、排水汚染性を抑制している。しかし実際には、プロピレンオキサイドユニット100重量%のポリオールを使用することしか意図していないため、2成分の相溶性が十分確保できないという問題がある。
さらに、従来、前述したようなケイ酸ナトリウム水溶液を主成分とするA成分とポリメリックMDIを主成分とするB成分とを組み合わせた2成分型注入薬液組成物において、2成分の相溶性、注入作業性、および固結物強度を確保するために、A成分とB成分との混合割合は、一般的にB成分100重量部に対してA成分が70〜130重量部である。しかし、一般的に、上記2成分型注入薬液組成物は、主成分がセメントや水ガラスなどから構成される無機系注入材に比べて、発泡硬化性、強度発現性、作業性等の性能は優れているものの高価であり、この混合割合では(B)成分の割合が多く、コストが高くなるという問題もあった。
特開平9−71778号公報 特開平8−157824号公報 特開平11−116955号公報 特開平11−116957号公報 特開2000−345158号公報 特開2000−345159号公報 特開2001−19959号公報
本発明は、ケイ酸ナトリウム水溶液などのケイ酸塩水溶液および水酸基含有ポリエーテルを含まないポリイソシアネートの2成分の相溶性確保と排水汚染の抑制とを両立させ、かつ発泡硬化性、強度等の物性、安全性、作業性および経済性に優れた注入薬液組成物およびそれを用いた安定強化止水工法を提供することを目的とする。
本発明は、ケイ酸塩水溶液を含む(A)成分およびイソシアネート化合物を含む(B)成分からなり、(A)成分と(B)成分との混合割合が、(B)成分100重量部に対して、(A)成分が150〜300重量部である土質の安定化用注入薬液組成物において、(A)成分が、固形分濃度が35〜50%であり、かつ、Na2Oに対するSiO2のモル比が2〜3であるケイ酸ナトリウム水溶液(A1)およびポリオール(A2)を含有し、(B)成分が、以下に示すイソシアネート化合物(B1)を40〜80重量%、イソシアネート化合物(B2)を10〜30重量%およびイソシアネート化合物(B3)を10〜30重量%含有することを特徴とする土質の安定化用注入薬液組成物に関する。
(B1)イソシアネート化合物:2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび/または2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート10〜50重量%、ならびに4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート90〜50重量%からなるジフェニルメタンジイソシアネート。
(B2)イソシアネート化合物:1分子中にベンゼン環およびイソシアネート基をそれぞれ3個有するポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート。
(B3)イソシアネート化合物:1分子中にベンゼン環およびイソシアネート基をそれぞれ4個以上有するポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート。
(A)成分がアミン触媒を含有し、(B)成分が反応性希釈剤およびシリコーン整泡剤を含有することが好ましい。
さらに本発明は、岩盤ないし地盤に所定間隔で複数個の孔を穿設する工程、前記孔内に中空のボルトを挿入する工程、ならびにボルトの開口部より前記注入薬液組成物を岩盤ないし地盤に注入し、固結させる工程からなる岩盤ないし地盤の安定強化止水工法に関する。
本発明の注入薬液組成物は、ケイ酸塩水溶液を含む(A)成分とイソシアネート化合物(B)成分との混合割合が、(B)成分100重量部に対して、(A)成分が150〜300重量部であり、従来の薬液組成物に比べて(B)成分の混合割合が少ないため、安定強化止水工法に用いると、水酸基含有ポリエーテルを含まなくても、粘性が低く、不安定地域、クラックおよび破砕帯などへの浸透性がよく、広い範囲にわたって不安定岩盤や地盤などの安定化や止水を図ることができ、しかも経済的である。また、形成された硬化固結物は、高強度で耐久性を有するものであり、岩盤などへの付着、密着性にすぐれ、かつ難燃性を呈するものである。したがって、本発明の薬液組成物を用いた本発明の安定強化止水方法は、実用上有利な方法である。
本発明は、ケイ酸塩水溶液を含む(A)成分およびイソシアネート化合物を含む(B)成分からなり、(A)成分と(B)成分との混合割合が、(B)成分100重量部に対して、(A)成分が150〜300重量部である土質の安定化用注入薬液組成物において、(A)成分が、固形分濃度が35〜50%、Na2Oに対するSiO2のモル比が2〜3であるケイ酸ナトリウム水溶液(A1)およびポリオール(A2)を含有し、(B)成分が、以下に示すイソシアネート化合物(B1)を40〜80重量%、イソシアネート化合物(B2)を10〜30重量%およびイソシアネート化合物(B3)を10〜30重量%含有することを特徴とする土質の安定化用注入薬液組成物である。
(B1)イソシアネート化合物:2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび/または2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート10〜50重量%、ならびに4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート90〜50重量%からなるジフェニルメタンジイソシアネート。
(B2)イソシアネート化合物:1分子中にベンゼン環およびイソシアネート基をそれぞれ3個有するポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート。
(B3)イソシアネート化合物:1分子中にベンゼン環およびイソシアネート基をそれぞれ4個以上有するポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート。
ケイ酸ナトリウム水溶液(A1)としては、通常市販されているケイ酸ナトリウムの水溶液を主成分として用いることができる。このケイ酸ナトリウムは一般式:Na2O・xSiO2・nH2Oで表わされる。ここでxは、SiO2(二酸化ケイ素)とNa2O(酸化ナトリウム)とのモル比を表し、本発明においては2〜3、好ましくは2.2〜2.8である。xが2より小さいと、発泡硬化反応における無水ケイ酸ゲル化反応の割合が減少するため、2成分混合時の硬化性が悪くなり、3をこえると、ケイ酸ナトリウム水溶液の粘度が高くなるため、(B)成分との混合性および使用時の作業性が低下する。
ケイ酸ナトリウム水溶液(A1)の固形分濃度は、35〜50重量%、好ましくは40〜45重量%である。ケイ酸塩水溶液の固形分が高過ぎる場合は、水で希釈して調整することもできる。固形分濃度が35重量%未満では、(A)成分と(B)成分とを混合した場合の混合液中における水分の含有量が多くなるため、2成分の相溶性が低下する傾向があり、50重量%をこえると(A)成分の粘度が高くなり過ぎるため(B)成分との混合性および使用時の作業性が低下する傾向がある。
(A)成分には、アミン触媒を配合することもできる。アミン触媒としては、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N’,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N’,N’−トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ビス−(ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N’,N’−トリス(3−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、2−メチルトリエチレンジアミン、N,N−ジメチルアミノエチルモルホリン、ジメチルアミノプロピルイミダゾール、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ヘキサメチルトリプロピレンテトラミン、N,N,N−トリス(3−ジメチルアミノプロピル)アミン、N−メチル−N,N−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)アミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N−ジメチルアミノヘキサノール、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N’−ヒドロキシエチルピペラジン等が挙げられ、これらは単独でまたは混合して用いることができる。なかでも作業環境の観点から臭気や皮膚刺激性の弱いN,N−ジメチルアミノヘキサノール、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミンが特に好ましい。
アミン触媒の含有率は、ケイ酸塩水溶液(A)中に0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。含有率が0.1重量%より小さいと、発泡硬化反応をコントロールすることが難しくなる傾向にあり、10重量%をこえると経済的に高価となる傾向がある。
また(A)成分には、ポリオールを配合することが好ましい。これによって、混合物の反応硬化性を調節することができる。ポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのポリオール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジグリセリン、ソルビトール、ショ糖などの他に、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール等も使用することができる。前記ポリエーテルポリオールは、活性水素化合物にアルキレンオキサイドを公知の方法で付加重合して得られる。活性水素化合物としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのポリオール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジグリセリン、ソルビトール、ショ糖などのその他のアルコール類があげられる。これらの活性水素化合物は単独で、または2種以上を混合して使用してもよい。また前記アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイドなどが挙げられる。さらに、これらのポリオールは単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
これらの中でも(A)成分において安定性が良く、比較的低分子量であるエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン等がポリオールとして特に好ましい。また、汎用性、経済性の点で、ポリエーテルポリオールが好ましい。
ポリオールの添加量は、(A)成分中に0.1〜50重量%であることが好ましく、1〜30重量%であることがより好ましい。添加量が0.1重量%より少ないと、ウレタン結合による架橋構造が少なくなるため硬化物が脆くなりやすい傾向にあり、50重量%をこえると硬化物中の無機成分が少なくなるため硬化物の難燃性が低下する傾向にある。
本発明の注入薬液組成物に使用される(B)成分は、イソシアネート化合物(B1)、イソシアネート化合物(B2)およびイソシアネート化合物(B3)からなるポリイソシアネート化合物を含有する。この(B)成分は液状であって取扱い環境温度下での揮発性が極めて小さく、安全衛生面に優れており、しかも経済性の伴ったものである。
イソシアネート化合物(B1)は、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下2,2’−MDIと略称する)および/または2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下2,4’−MDIと略称する)10〜50重量%、および4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下4,4’−MDIと略称する)90〜50重量%からなるジフェニルメタンジイソシアネートである。
2,2’−MDIおよび/または2,4’−MDIは、10〜50重量%、好ましくは10〜40重量%含有されている。4,4’−MDIは、90〜50重量%、好ましくは90〜60重量%含有されている。2,2’−MDIおよび/または2,4’−MDIが10重量%より少ないと、低温時においてMDIが結晶化するため、ポリイソシアネート化合物(B)が不均一になる。50重量%をこえるとケイ酸塩水溶液(A)との反応性が低下する。
イソシアネート化合物(B1)は、イソシアネート化合物(B1)〜(B3)中に40〜80重量%、好ましくは50〜70重量%含有されている。含有率が40重量%より少ないと、ポリイソシアネート化合物(B)の粘性が高くなり作業性が低下し、80重量%をこえると低温時においてMDIが結晶化しやすくなるため、ポリイソシアネート化合物(B)が不均一になりやすい。
イソシアネート化合物(B2)は、1分子中にベンゼン環およびイソシアネート基をそれぞれ3個有するポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートである。
イソシアネート化合物(B2)は、イソシアネート化合物(B1)〜(B3)中に10〜30重量%、好ましくは15〜25重量%含有されている。含有率が10重量%より少ないと、発泡倍率が低下しやすくなり、30重量%をこえるとポリイソシアネート化合物(B)の粘性が高くなる。
イソシアネート化合物(B3)は、1分子中にベンゼン環およびイソシアネート基をそれぞれ4個以上有するポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートである。
イソシアネート化合物(B3)は、イソシアネート化合物(B1)〜(B3)中に10〜30重量%、好ましくは15〜25重量%含有されている。含有率が10重量%より少ないと、発泡倍率が低下しやすくなり、30重量%をこえるとポリイソシアネート化合物(B)の粘性が高くなる。
また、(B)成分には、水酸基含有ポリエーテルを配合し、イソシアネート基末端プレポリマーとしてもよい。イソシアネート基末端プレポリマーは、イソシアネート化合物(B1)〜(B3)からなるポリイソシアネートと水酸基含有ポリエーテルとを、NCO基とOH基との当量比(NCO基/OH基)が2.0〜200、好ましくは10〜100の範囲となるように公知の方法で反応させて得られるものである。当量比が2.0より小さいとポリイソシアネート化合物(B)の粘性が高くなり作業性が低下する傾向にあり、200をこえると変性効果が得られにくい傾向にある。
水酸基含有ポリエーテルの数平均分子量は、200〜10000、好ましくは300〜5000である。数平均分子量が200より小さいと、架橋密度が高くなり硬化物が脆くなる傾向にあり、10000をこえると、逆に架橋密度が低くなり硬化物の強度が低下する傾向にある。
また、水酸基含有ポリエーテルは、エチレンオキサイドユニットを5〜50重量%含有することが好ましく、5〜40重量%含有することがより好ましい。エチレンオキサイドユニット含有量が5重量%より少ないと、ポリイソシアネート化合物(B)の親水性が不足して、ケイ酸塩水溶液(A)との相溶性が悪くなる傾向にあり、50重量%をこえると、逆にポリイソシアネート化合物(B)の親水性が強くなりすぎて、2成分混合液が硬化する前に地下水等の水と接触した場合、白濁を生じ排水を汚染しやすくなる傾向にある。
水酸基含有ポリエーテルとしては、全体としてこの条件を満たすものが好ましく、以下のポリエーテルモノオールおよびポリエーテルポリオールの単品および混合物などが挙げられる。
前記ポリエーテルモノオールおよびポリエーテルポリオールは、活性水素化合物にアルキレンオキサイドを公知の方法で付加重合して得られる。活性水素化合物としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノール、ラウリルアルコールなどのモノオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのポリオール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジグリセリン、ソルビトール、ショ糖などのその他のアルコール類が挙げられる。これらの活性水素化合物は単独で、または2種以上を混合して使用してもよい。また前記アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイドなどが挙げられる。なかでも汎用性、経済性の点で、ポリエーテルポリオールが好ましい。
さらに水酸基含有ポリエーテルの平均官能基数は1〜5が好ましく、1〜3がより好ましい。水酸基が5個をこえると、ポリイソシアネート化合物(B)の粘性が高くなる傾向にある。
さらに少量であるならば、ポリイソシアネートに以下のイソシアネート類を単独でまたは2種以上併用して使用することができる。
前記イソシアネート類としては、例えばカルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、クルードトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、トリメチレンキシリレンジイソシアネートなどのポリイソシアネートの単独または混合物が挙げられる。さらに前記ポリイソシアネートを水や低級モノアルコールもしくは多価アルコールで変性したアダクト体、ポリイソシアネートと各種ポリオールとを反応させた末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの単独または混合物、これらのプレポリマー類のアダクト体、プレポリマー類と前記各種ポリイソシアネートとの混合物、および前記ポリイソシアネートに触媒を加え2量体または3量体としたものなどが挙げられる。
また本発明における(B)成分のイソシアネート基含有量(以後NCO含量と略称する)は、好ましくは10〜35重量%、より好ましくは15〜30重量%である。NCO含量が10重量%未満では、無水ケイ酸−ウレタン複合反応および尿素結合などによる架橋構造が減少するため硬化物の強度が低下する傾向にあり、35重量%をこえると硬化物中の架橋点が極端に多くなるため硬化物が脆くなる傾向にある。
また(B)成分には、固結物からの溶出による環境汚染を抑制しつつ、減粘効果が得られる点で、反応性希釈剤を配合することが好ましい。前記反応性希釈剤とは、ケイ酸ナトリウム水溶液によりアルカリ加水分解されるものをいう。なお、前記加水分解とは、沸騰還流条件下で、アミン触媒存在下にケイ酸ナトリウムと混合したとき、2時間後の加水分解率が5〜100%であることをいう。とくには、沸騰還流下で、アミン触媒としてN,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミンを1%添加した1号ケイ酸ナトリウム(固形分:40%、SiO2/Na2O比:2.2)100重量部に対して、反応性希釈剤15重量部を混合したとき、2時間後の加水分解率が5〜100%であることをいう。具体的には、特許第2591540号公報に反応性希釈剤として挙げられている低分子量二塩基酸のジエステル類、モノまたは多価アルコール類の酢酸エステル類、アルキレンカーボネート類、エーテル類、環状エステル類、酸無水物、各種のアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルなどが使用できる。
前記反応性希釈剤の添加量は、(B)成分中に0.5〜30重量%、とくに1〜20重量%であることが好ましい。添加量が0.5重量%より少ないと、減粘効果が得られにくい傾向にあり、30重量%をこえると(B)成分中のイソシアネート基含有量が少なくなるため、硬化物の強度が低下する傾向にある。
また(B)成分には、発泡体を均質化し、発泡倍率を安定化させる点で、ジメチルポリシロキサンを主成分とするシリコーン整泡剤を配合することが好ましい。シリコーン整泡剤としては、(B)成分中において安定性がよく、活性水素基を含有しないものが好ましく、末端アルコキシ型ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンなどが挙げられる。
シリコーン整泡剤の添加量は、(B)成分中に0.01〜5重量%であることが好ましい。添加量が0.01重量%より少ないと、発泡体の整泡効果が小さくなるため発泡倍率のコントロールが難しくなる傾向にあり、5重量%をこえると、経済的に高価となり、本用途には不向きになる傾向がある。
(A)成分と(B)成分との混合割合は、(B)成分100重量部に対して、(A)成分が150〜300重量部、好ましくは150〜250重量部である。(A)成分が150重量部未満では2成分中の有機成分割合が多くなるため、経済性が低下する傾向にあり、300重量部をこえると混合液中のイソシアネート基含有量が少なくなるため、硬化物の強度が低下する傾向にある。
さらに本発明においては、必要に応じて、前述以外の界面活性剤や触媒、顔料、染料、充填剤、ゲル化防止剤、カップリング剤、発泡剤、分散剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐熱性付与剤等の各種添加剤を添加することもできる。
本発明の注入薬液組成物は、特殊な注入薬液であり、例えばトンネル掘削の際、切羽天端の崩落防止や緩みの拡大防止を目的として行われるウレタン系注入式フォアポーリング工法または注入式長尺先受工法(AGF工法)において、空隙やクラックの多い軟質ないし不安定な地盤、岩盤または破砕帯層に注入固結される。
この注入固結する方法については、とくに限定はなく、公知の方法を採用しうるが、岩盤ないし地盤に所定箇所で複数個の孔を穿設する工程、前記孔内に中空のボルトを挿入する工程、および、ボルトの開口部より前記注入薬液組成物を岩盤ないし地盤に注入し、固結する工程からなることが好ましい。
その一例をあげれば、例えば(A)成分および(B)成分の注入量、圧力および配合比などをコントロールしうる比較配合式ポンプを用いる方法などがある。この方法では、(A)成分と(B)成分とを別々のタンクに入れ、岩盤などの所定箇所(たとえば0.5〜3m程度の間隔で穿設された複数個の孔)に、あらかじめ固定されたスタティックミキサーや逆止弁などを内装した有孔のロックボルトや注入ロッドを通し、この中に前記タンク内の各成分を注入圧0.05〜5MPaで注入し、スタティックミキサーを通して、所定量の(A)成分と(B)成分を均一に混合させ、所定の不安定岩盤ないし地盤箇所に注入浸透、硬化させて固結安定化する。
なお、たとえばトンネルの天盤部に注入する場合には、注入に先立ち、たとえば約2mの所定の間隔で、たとえば42mmφビットのレッグオーガーを用いて削孔し、深さ2m、削孔角度10〜30°の注入孔を設け、この注入孔に、スタティックミキサーおよび逆止弁を内装した有孔の長さが3mである中空炭素鋼管製ロックボルトを挿入し、該ロックボルトの口元を、注入薬液の逆流を防ぐために、ウエスおよび発泡硬質ウレタン樹脂等を用いてシールし、薬液を前記の方法で注入することが好ましい。注入作業は、注入圧が急激に上昇した時点、または所定注入量よりもさらに約50%増量した時点で終了する。一般に、注入孔1個あたり薬液は30〜200kg注入することが好ましい。
実施例および比較例
<A液の調整>
表1に示すように、原料をそれぞれ添加・混合し、A液を調整した。A液の調整に用いた原料を以下にまとめて説明する。
(ケイ酸塩水溶液)
ケイ酸ナトリウム−1:SiO2/Na2O比2.6(モル比)、固形分41%)
ケイ酸ナトリウム−2:SiO2/Na2O比2.4(モル比)、固形分43%)
ケイ酸ナトリウム−3:SiO2/Na2O比1.8(モル比)、固形分36%)
ケイ酸ナトリウム−4:SiO2/Na2O比3.2(モル比)、固形分30%)
(アミン触媒)
TMAEEA:N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン
(ポリオール)
EG:エチレングリコール
GL:グリセリン
D−750:数平均分子量750、平均官能基数2、EOユニット/POユニット=0/100(重量比)
D−1300−10:数平均分子量1300、平均官能基数2、EOユニット/POユニット=10/90(重量比)
Figure 2006265436
<B液の調整>
表2に示すように、原料をそれぞれ添加・混合し、B液を調整した。B液の調整に用いた原料を以下にまとめて説明する。
(ポリイソシアネート)
P−MDI−1:(B1)/(B2)/(B3)=54/23/23(重量比)、(2,2’−MDIと2,4’−MDIの合計)/4,4’−MDI=13/87(重量比)、NCO含量31.8%
P−MDI−2:(B1)/(B2)/(B3)=50/25/25(重量比)、(2,2’−MDIと2,4’−MDIの合計)/4,4’−MDI=11/89(重量比)、NCO含量31.6%
P−MDI−3:(B1)/(B2)/(B3)=58/21/21(重量比)、(2,2’−MDIと2,4’−MDIの合計)/4,4’−MDI=14/86(重量比)、NCO含量32.0%
P−MDI−4:(B1)/(B2)/(B3)=100/0/0(重量比)、(2,2’−MDIと2,4’−MDIの合計)/4,4’−MDI=50/50(重量比)、NCO含量33.5%
P−MDI−5:(B1)/(B2)/(B3)=83/9/8(重量比)、(2,2’−MDIと2,4’−MDIの合計)/4,4’−MDI=33/67(重量比)、NCO含量32.4%
(ポリエーテル)
PE:数平均分子量1500、平均官能基数3、EOユニット/POユニット=30/70(重量比)
(反応性希釈剤)
PC:プロピレンカーボネート
DBEEA:アジピン酸とn−ブタノールのエチレンオキシド付加物とのジエステル、数平均分子量434
(シリコーン整泡剤)
SZ−1642:ジメチルポリシロキサン誘導体、日本ユニカー(株)製
Figure 2006265436
B液No.B−II〜B−V、B−VIII、B−IXについては、ポリイソシアネートP−MDI−1〜5とポリエーテルPEとを表2に示す重量比で、80℃にて3時間反応させてイソシアネート基末端プレポリマーを合成し、さらに反応性希釈剤およびシリコーン整泡剤を表2に示す重量部添加・混合して調整した。
また上記のとおり調整した各B液のNCO含量(重量%)を表2に示す。
実施例1〜8および比較例1〜4
容量1リットルのポリカップに、表3に示す組み合わせで、20℃に温度調節したA液100gおよびB液50gを計量し、ミキサーで500RPMの回転速度で10秒間混合・撹拌した。このときの性状について以下の評価を行った。結果を表3に示す。なお、比較例1〜4は、発泡倍率が低いために3倍発泡供試体を成型することができず、圧縮強度の測定が不可能であった。
(1)混合液の相溶性:A液、B液を前記の方法にて混合した液を目視にて確認し、均一に混合され反応硬化物も均一のものを○、混合液が不均一で反応硬化物もいびつなものを×とした。
(2)水汚染性:前記の方法にて混合した混合液約100gを、1リットルの蒸留水を入れたガラスビーカー中にすみやかに投入し、即座にガラスビーカー内の内容物(混合液および蒸留水)全体をガラス棒で約15秒間攪拌・混合した。このときガラスビーカー内の蒸留水が、無色透明であったものを○、白濁を生じたものを×とした。
(3)硬化時間:前記の方法にて混合した場合の混合液が反応硬化した時間を、ストップウォッチにて計測した。
(4)発泡倍率:前記の方法にて混合した場合の、反応硬化後の発泡体の容積をポリカップの目盛りから読み取り、反応硬化前の混合液容積で除した値を発泡倍率とした。
(5)圧縮強度:前記の方法にて混合した混合液約90gを、直径5cm、高さ10cmの円筒状モールドにすみやかに充填し、ふたをして内容物の漏れを防ぐことにより圧密して約3倍発泡固結体を成型した。常温で24時間静置後に得られた供試体の一軸圧縮強度をJIS K 7220(硬質発泡プラスチックの圧縮試験方法)に準じて測定した。
(6)総合評価:評価(1)〜(5)において、×が一つでもある場合を×、そうでない場合を○とした。
Figure 2006265436
本発明によると、破砕帯を有する岩盤や不安定軟弱地盤の固結安定化ないし封止工法、漏水、湧水のある岩盤ないし地盤の止水や空洞充填工法、ならびにそれに用いる安全性の高い安定化用注入薬液組成物を提供することができる。

Claims (3)

  1. ケイ酸塩水溶液を含む(A)成分およびイソシアネート化合物を含む(B)成分からなり、(A)成分と(B)成分との混合割合が、(B)成分100重量部に対して、(A)成分が150〜300重量部である土質の安定化用注入薬液組成物において、(A)成分が、固形分濃度が35〜50%、Na2Oに対するSiO2のモル比が2〜3であるケイ酸ナトリウム水溶液(A1)およびポリオール(A2)を含有し、(B)成分が、以下に示すイソシアネート化合物(B1)を40〜80重量%、イソシアネート化合物(B2)を10〜30重量%およびイソシアネート化合物(B3)を10〜30重量%含有することを特徴とする土質の安定化用注入薬液組成物。
    (B1)イソシアネート化合物:2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび/または2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート10〜50重量%、ならびに4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート90〜50重量%からなるジフェニルメタンジイソシアネート。
    (B2)イソシアネート化合物:1分子中にベンゼン環およびイソシアネート基をそれぞれ3個有するポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート。
    (B3)イソシアネート化合物:1分子中にベンゼン環およびイソシアネート基をそれぞれ4個以上有するポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート。
  2. (A)成分がアミン触媒を含有し、(B)成分が反応性希釈剤およびシリコーン整泡剤を含有することを特徴とする請求項1記載の土質の安定化用注入薬液組成物。
  3. 岩盤ないし地盤に所定間隔で複数個の孔を穿設する工程、前記孔内に中空のボルトを挿入する工程、ならびにボルトの開口部より請求項1または2記載の注入薬液組成物を岩盤ないし地盤に注入し、固結させる工程からなる岩盤ないし地盤の安定強化止水工法。
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