小型でリニア駆動が可能なレンズ装置及び、そのレンズ装置を備えた撮像装置を、簡単な構成によって実現した。
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。図1〜図10は、本発明のレンズ装置及び撮像装置の実施の形態の例を説明するものである。即ち、図1はレンズ鏡筒の第1の実施例を示す分解斜視図、図2はレンズ装置の第1の実施例を示す分解斜視図、図3は直動転がり案内装置の第1の実施例を示す分解斜視図、図4は直動転がり案内装置の第2の実施例を示す分解斜視図、図5は直動転がり案内装置の第3の実施例を示す分解斜視図、図6は撮像装置の第1の実施例を示す斜視図、図7は撮像装置の可動鏡筒が繰出した斜視図、図8は撮像装置の断面図、図9は図8のX−X線断面図、図10A,Bは可動鏡筒が繰出した断面図、図11はレンズ装置の第2の実施例を示す斜視図である。
まず、本発明のレンズ装置に用いられる直動転がり案内装置について説明する。図3は、直動転がり案内装置の第1の実施例を示す分解斜視図である。この直動転がり案内装置1は、第1の案内溝7を有する案内部材2と、第2の案内溝8を有する可動部材3と、案内部材2を保持する固定部材4と、第1の案内溝7と第2の案内溝8との間に転動自在に介在された転動体ユニット5と、予圧部材の一実施例を示す一対の板ばね6A,6Bとを備えて構成されている。
案内部材2は、平面形状が長方形をなすと共に、その長手方向と直交する方向に断面した形状がT字形をなす板状の部材からなる。案内部材2の平面側の略中央部には長手方向に連続して一端から他端まで達する第1の案内溝7が設けられている。第1の案内溝7の長手方向と直交する方向の断面形状はV字形とされており、その底部には、転動体との接触を避けるための逃げ溝が設けられている。第1の案内溝7の両側の傾斜面は、それぞれ略45°に設定されている。この案内部材2の第1の案内溝7が設けられた面と反対側の面の略中央部に、長手方向に連続して一端から他端まで達する突条部9が設けられており、この突条部9の両側の凹部が庇部9a,9bとされている。
一対の庇部9a,9bには、それぞれ位置決め孔10と2つの嵌合孔11,11が設けられている。各ばね受け部9a,9bにおいて、位置決め孔10は長手方向の略中央部に設定され、2つの嵌合孔11,11は、位置決め孔10を中心として長手方向の両側に略等間隔に設定されている。2つの嵌合孔11は、第1の案内溝7が延在する方向と直交する方向に長くした長孔とされている。
可動部材3は、案内部材2と略同様の形状を有しており、形状がT字形をなす板状の部材からなる。案内部材2の底面側の略中央部には長手方向に連続して一端から他端まで達する第2の案内溝8が設けられている。第2の案内溝8の長手方向と直交する方向の断面形状は逆V字形とされており、その頂部には、転動体との接触を避けるための逃げ溝が設けられている。第2の案内溝8の両側の傾斜面は、それぞれ略45°に設定されている。この可動部材3の第2の案内溝8が設けられた面と反対側の面の略中央部に、長手方向に連続して一端から他端まで達する突条部12が設けられており、この突条部12の両側に庇部12a,12bが設定されている。
可動部材3の幅方向の寸法は案内部材2の幅方向の寸法と略同一とされているが、長手方向の寸法は、可動部材3の方が案内部材2よりも長く形成されている。これは、案内部材2が所定位置に固定され、その案内部材2に対して可動部材3が案内溝の延在する方向へ相対的に移動するものだからである。なお、第1の案内溝7と第2の案内溝8は、略同一の大きさに設定されている。
転動体ユニット5は、転動体の第1の実施例を示す複数個(この実施例では4個)の円筒ころ14と、これら円筒ころ14を転動自在に保持する保持器15とから構成されている。円筒ころ14が転動体として好適であるが、その他の転動体、例えば、球面ころや球等を用いることもできる。保持器15には、円筒ころ14を収容するための保持穴16が転動体の数と同数である4箇所に設けられている。保持器15の4箇所の保持穴16は、同一直線上に直列に配置されており、それらの保持穴16に4個の円筒ころ14が、その傾斜方向を1つおきに変えて45°傾けた状態で転動自在に保持されている。
固定部材4は、案内部材2を収納できる凹部17を有する長方形の枠状をなす部材からなる。固定部材4の底面の幅方向の略中央部には、長手方向に延在された長穴18が設けられており、この長穴18の幅方向の両側に底面部19A,19Bが形成されている。各底面部19A,19Bには、上方に突出する位置決めピン21と、同じく上方に突出する2つの嵌合ピン22,22が設けられている。
位置決めピン21は、各底面部19A,19Bにおいて、それぞれ長手方向の略中央部に設定されている。また、2つの嵌合ピン22,22は、それぞれ位置決めピン21を中心として長手方向の両側に所定の間隔をあけて配置されている。これら位置決めピン21及び嵌合ピン22,22は、案内部材2の位置決め孔10及び嵌合孔11,11に対応されており、組立時において互いに嵌合するように構成されている。
固定部材4の左右対称をなす底面部19A,19Bに、一対の板ばね6A,6Bが個別に装着されている。各板ばね6A,6Bは、底面部19A,19Bと略同程度の大きさを有する長尺状のばね材からなり、長手方向の中央部には支持部6aが設定されている。更に、各板ばね6A,6Bの長手方向の両端部には圧接部6b,6bが設定されており、これら圧接部6b,6bと支持部6aとの間に、圧接部6b,6bにばね力を付与する弾性部6c,6cが設定されている。
各板ばね6A,6Bの支持部6aの略中央部には、丸孔からなる位置決め孔23をそれぞれ設けている。各位置決め孔23には、固定部材4に設けた位置決めピン21が嵌合される。この位置決め孔23の直径は、位置決めピン21の軸径よりも大きく形成されており、位置決めピン21との間に適当な大きさの隙間を設定することによって嵌合ピン22との精度誤差を吸収できるようにしている。また、各板ばね6A,6Bの弾性部6cの圧接部6bの近傍には、長孔からなる逃げ孔24,24をそれぞれ設けている。各逃げ孔24,24には、固定部材4に設けた嵌合ピン22,22がそれぞれ嵌合される。この逃げ孔24は、板ばね6A,6Bの弾性部6c,6cの弾性変形を許容するために長手方向に延在した長孔として形成されている。
案内部材2、可動部材3、固定部材4及び保持器15の材質としては、例えば、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)等のエンジニアリングプラスチックが好適であるが、アルミニウム合金その他の金属を用いることもできる。板ばね6A,6Bとしては、ばね鋼等の金属が好適であるが、ABS樹脂等のエンジニアリングプラスチックを用いることもできる。また、円筒ころ14としては、ステンレス鋼、構造用炭素鋼、超硬合金、エンジニアリングプラスチック等の各種の材料を用いることができる。
このような構成を有する直動転がり案内装置1は、例えば、次のようにして簡単に組み立てることができる。まず、固定部材4の左右の底面部19A,19Bに、一対の板ばね6A,6Bを個別に装着する。このとき、各板ばね6A,6Bは、支持部6aの位置決め孔23に各底面部19A,19Bの位置決めピン21を嵌合すると共に、両側の嵌合孔11,11に嵌合ピン22,22をそれぞれ嵌合する。次に、案内部材2を、一対の板ばね6A,6Bの上から固定部材4の凹部17内に挿入する。そして、位置決めピン21を位置決め孔10に嵌合すると共に、両側の嵌合ピン22,22を嵌合孔11,11にそれぞれ嵌合する。
この際、嵌合孔11が長孔とされていて、その長手方向が第1の案内溝7と直交する方向に設定されているため、この長孔によって位置決めピン21に対する嵌合ピン22の精度上の誤差を吸収することができ、案内部材2の取付作業を簡単且つ迅速に行うことができる。
次に、4個の円筒ころ14を保持した転動体ユニット5を、案内部材2の第1の案内溝7に嵌め込む。その後、可動部材3を案内部材2の上に重ね合わせ、次に、第2の案内溝8を転動体ユニット5には嵌め合わせる。これにより、組立作業が完了して直動転がり案内装置1が得られる。
このような構成を有する直動転がり案内装置1によれば、固定部材4の位置決めピン21と嵌合ピン22とで板バネ6A,6Bと案内部材2の位置決めを行うことができる。しかも、案内部材2と固定部材4との間に2枚の板バネ6A,6Bを介在させ、そのばね力で案内部材2を可動部材3側に付勢する構成としたため、2枚の板バネ6A,6Bのばね力で決定される所定の予圧を常に転動体ユニット5に付与することができる。その結果、転動体ユニット5の移動方向の位置によらず、その転動体ユニット5及び案内部材2の可動方向に対する傾きを軽減することが可能となり、安定した動作を得ることができる。
図4には、本発明のレンズ装置に係る直動転がり案内装置の第2の実施例を示している。この第2の実施例に係る直動転がり案内装置31は、前記第1の実施例における2枚で一対の板ばね6A,6Bに替えて、一対の永久磁石を2組用い、2組の板状永久磁石32A,32Bによって予圧部材の第2の実施例を構成したものである。この第2の実施例が前記第1の実施例と異なるところは2組の板状永久磁石32A,32Bのみであるため、ここでは板状永久磁石32A,32Bについて説明し、その他の構成については同一の符号を付して重複した説明を省略する。
即ち、直動転がり案内装置31は、第1の案内溝7を有する案内部材2と、第2の案内溝8を有する可動部材3と、案内部材2を保持する固定部材4と、第1の案内溝7と第2の案内溝8との間に転動自在に介在された転動体ユニット5と、予圧部材の第2の実施例を示す2組の板状永久磁石32A,32Bとを備えて構成されている。
板状永久磁石32A,32Bは、それぞれ第1の磁石板33と第2の磁石板34とによって構成されている。第1の磁石板33と第2の磁石板34は同一のものであり、従って、この実施例では4個の同一の磁石板を用いることによって2組の板状永久磁石32A,32Bが構成されている。各磁石板33,34は、固定部材4の底面部19A,19Bと略同程度の大きさを有する長尺状の磁石からなり、その一面側の全面にN極が設定され、他面側の全面にS極が設定されている。
更に、各磁石板33,34の長手方向の略中央部には、丸孔からなる位置決め孔35が設けられている。各位置決め孔35には、固定部材4に設けた位置決めピン21が嵌合される。この位置決め孔35の直径は、前記実施例の位置決め孔23と同様に、位置決めピン21の軸径よりも大きく形成されており、位置決めピン21との間に適当な大きさの隙間を設定し、これにより嵌合ピン22との位置精度の誤差を吸収できるようにしている。また、各磁石板33,34の両端部には、長孔からなる嵌合孔36,36が設けられている。各嵌合孔36,36には、固定部材4に設けた嵌合ピン22,22がそれぞれ嵌合される。この嵌合孔36は、案内部材2の嵌合孔11と同様に、第1の案内溝7が延在する方向と直交する方向に長くした長孔として形成されている。
このような構成を有する直動転がり案内装置31は、例えば、次のようにして簡単に組み立てることができる。まず、固定部材4の左右の底面部19A,19Bに、それぞれ第2の磁石板34,34を装着する。このとき、第2の磁石板34,34は、それぞれ同じ極(例えば、N極)を上にして、中央の位置決め孔35に各底面部19A,19Bの位置決めピン21を嵌合すると共に、両側の嵌合孔36,36に嵌合ピン22,22をそれぞれ嵌合する。このとき、第2の磁石板34,34は、接着剤等の固着手段を用いて底面部19A,19Bに固定することが好ましいが、本実施例のように永久磁石の反発力を利用する場合には、固着手段を用いることなく、単に位置決め孔35に位置決めピン21を嵌合するのみであってもよい。
次に、予め一対の第1の磁石板33,33が固着されている案内部材2を一対の第2の磁石板34,34の上に重ね合わせる。このとき、一対の第1の磁石板33,33は、一対の第2の磁石板34,34との関係で互いに反発しあうように、N極を対向させて配置する(これとは逆に、S極同士を対向させてもよい。)。一対の第1の磁石板33,33は、案内部材2の左右の庇部9a,9bの第1の案内溝7と反対側の面である突条部9のある面の当該突条部9の両側に、接着剤等の固着手段によって固定されている。
このとき、第1の磁石板33の位置決め孔35は各庇部9a,9bの位置決め孔10と合致させ、両側の嵌合孔36,36は各庇部9a,9bの嵌合孔11,11と合致させるようにする。このように一対の第1の磁石板33,33が一体化された案内部材2を、一対の第1の磁石板33,33の上から固定部材4の凹部17内に挿入する。そして、位置決めピン21を位置決め孔35,10に嵌合すると共に、両側の嵌合ピン22,22を嵌合孔36,11にそれぞれ嵌合する。
この際、互いに合致された嵌合孔36及び嵌合孔11が共に長孔とされていて、その長手方向が第1の案内溝7と直交する方向に設定されているため、この長孔によって位置決めピン21に対する嵌合ピン22の位置精度の誤差を吸収することができ、案内部材2の取付作業を簡単且つ迅速に行うことができる。
その後、前記実施例と同様に、4個の円筒ころ14を保持した転動体ユニット5を、案内部材2の第1の案内溝7に嵌め込む。そして、可動部材3を案内部材2の上に重ね合わせ、第2の案内溝8を転動体ユニット5に嵌め合わせる。これにより、組立作業が完了して直動転がり案内装置31が得られる。なお、永久磁石に替えて、電磁石、誘磁コイル等の磁性部材を用いることも可能である。
このような構成を有する直動転がり案内装置31によれば、固定部材4と案内部材2との間に介在された2組の板状永久磁石32A,32Bにおいて、それぞれが対をなす第1の磁石板33と第2の磁石板34とが互いに反発しあうように配置されているため、前記板ばね6A,6Bと同様に、一対の永久磁石の反発力を利用して転動体ユニット5に適当な強さの予圧を与えることができる。そのため、前記実施例と同様に、転動体ユニット5の沈み込みを回避することができ、転動体ユニット5に加わる予圧が大きく変化するのを防止して、可動部材3のスムースな移動を確保することができる。
図5には、本発明のレンズ装置に係る直動転がり案内装置の第3の実施例を示している。この第3の実施例に係る直動転がり案内装置41は、前記第2の実施例における直動転がり案内装置31の2組の板状永久磁石32A,32Bの一方の要素を構成する一対の第2の磁石板34,34を可動部材3に固定する構成としたものである。
この第3の実施例に係る直動転がり案内装置41が前記第2の実施例に係る直動転がり案内装置31と異なるところは、一対の第2の磁石板44,44を可動部材46に設けると共に、それに対応して案内部材45の形状を一部変更した点である。よって、ここでは2組の板状永久磁石32A,32B(それぞれ第1の磁石板33と第2の磁石板44とからなる。)と案内部材45及び可動部材46との構成について説明し、その他の構成については同一の符号を付して重複した説明を省略する。
即ち、直動転がり案内装置41は、第1の案内溝7を有する案内部材45と、第2の案内溝8を有する可動部材46と、案内部材45を保持する固定部材4と、第1の案内溝7と第2の案内溝8との間に転動自在に介在された転動体ユニット5と、予圧部材をなす2組の板状永久磁石32A,32B(第1の磁石板33と第2の磁石板44)とを備えて構成されている。
案内部材45は、その形状は前記実施例における案内部材2と略同様であるが、異なるところは、庇部9a,9bの第1の案内溝7側に第1の磁石板33を収納するための凹部をそれぞれ設け、それらの凹部に2枚の第1の磁石板33を装着して一体的に構成した点である。2枚の第1の磁石板33は、接着剤等の固着手段を用いて固定する。このとき、第1の磁石板33の位置決め孔35は庇部9a(又は9b)の位置決め孔10と一致させ、両側の嵌合孔36,36は庇部9a(又は9b)の嵌合孔11と一致させるようにする。
可動部材46は、その形状は前記実施例における可動部材3と略同様であるが、異なるところは、庇部12a,12bの第2の案内溝8側に第2の磁石板44を収納するための凹部をそれぞれ設け、それらの凹部に2枚の第2の磁石板44を装着して一体的に構成した点である。この場合、第1の磁石板33の極性と第2の磁石板44の極性は、互いに引き合うように設定してもよく、また、互いに反発し合うように設定してもよい。その理由は、第1及び第2の案内溝7,8を挟んで左右対称に2組の板状永久磁石32A,32Bを配置しているため、上記極性の組み合わせのどちらを採用しても、左右方向のバランスを取ることができるからである。
このような構成を有する直動転がり案内装置41は、例えば、次のようにして更に簡単に組み立てることができる。まず、固定部材4に案内部材45を装着する。このとき、案内部材45の一対の位置決め孔10,35に固定部材4の一対の位置決めピン21,21を嵌合すると共に、二対の嵌合孔11,36に二対の嵌合ピン22,22を嵌合する。次に、4個の円筒ころ14を保持した転動体ユニット5を、案内部材45の第1の案内溝7に嵌め込む。その後、可動部材46を案内部材45の上に重ね合わせ、第2の案内溝8を転動体ユニット5に嵌め合わせる。これにより、組立作業が完了し、直動転がり案内装置41が得られる。
このような構成を有する直動転がり案内装置41によれば、案内部材45と可動部材46の間に介在された2組の板状永久磁石32A,32Bにおいて、それぞれが対をなす第1の磁石板33と第2の磁石板44とが互いに反発し合うか又は互いに引き合うように配置されているため、前記板ばね6A,6B及び前記磁石板33,34を用いた場合と同様に、一対の永久磁石の反発力又は引張力を利用して転動体ユニット5に適当な強さの予圧を与えることができる。そのため、前記実施例と同様に、転動体ユニット5の沈み込みを回避することができ、転動体ユニット5に加わる予圧が大きく変化するのを防止して、可動部材46のスムースな移動を確保することができる。
図1は、本発明のレンズ装置の第1の実施例に係るレンズ鏡筒50の主要な構成部品を示すものである。レンズ鏡筒50は、固定鏡筒51と、この固定鏡筒51にスライド可能に保持された可動鏡筒52と、固定鏡筒51と可動鏡筒52との間に介在された3つの転動体ユニット53A,53B,53Cと、ヨークの働きをなすヨーク鏡筒の一具体例を示す外装鏡筒48と、2組の板ばね6A,6Bと、2つの案内部材2,2等から構成されている。
固定鏡筒51は、円形をなす筒体からなり、その軸方向の一端には、半径方向外側に展開されたフランジ部51aが設けられている。固定鏡筒51の外周面の3箇所には、所定の範囲内で平面とされた3つの平面部54a,54b,54cが設けられている。3つの平面部54a〜54cは、互いに等角度間隔に配置されており、第1の平面部54aには第1の案内溝である外周案内溝55が設けられ、また、第2及び第3の平面部54b,54cにはそれぞれ長方形をなす開口部56A,56Bが設けられている。外周案内溝55は、固定鏡筒51の軸方向と平行をなすよう直線状に延在されており、その断面形状はV字形とされていて、それぞれ両側に45°傾斜された案内面が設けられている。この外周案内溝55には、第1の転動体ユニット53Aの一面側が嵌め合わされている。
固定鏡筒51の2つの開口部56A,56Bの幅方向(円周方向)両側の縁部には、位置決めピン21と2つの嵌合ピン22,22とが軸方向に所定間隔あけて直列をなすようにそれぞれ設けられている。これらのピン21,22に位置決め孔23及び逃げ孔24を嵌合することにより、それぞれの開口部56A,56Bの縁部に、一対の板ばね6A,6Bがそれぞれ取り付けられている。これら一対の板ばね6A,6Bの上に、それぞれ第1の案内溝7を外側に向けた状態で案内部材2が重ね合わされている。各案内部材2の第1の案内溝7には、転動体ユニット53B及び53Cの一面側がそれぞれ嵌め合わされている。なお、3つの転動体ユニット53A〜53Cは、前記実施例で説明した転動体ユニット5と同様の形状及び構成を有するものである。
更に、固定鏡筒51の外周面における3箇所の平面部54a,54b,54cの間の3箇所の曲面部には、円弧状に湾曲形成された3個の永久磁石49が取り付けられている。3個の永久磁石49は同一の形状及び大きさを有する板状の磁石からなり、固定鏡筒51の周方向に等間隔に配置(3等配)され、接着剤等の固着手段によって一体的に固定されている。
可動鏡筒52は、固定鏡筒51よりも直径の大きな円形をなす筒体からなり、この可動鏡筒52の内側に所定の隙間をあけて固定鏡筒51が挿入されている。可動鏡筒52の内周面の3箇所には、半径方向内側に突出された突出部58a,58b,58cが設けられている。3つの突出部58a〜58cの一部は、可動鏡筒52の一端から軸方向外側に突出されている。3つの突出部58a〜58cは、周方向に等間隔に配置(3等配)されており、それぞれの内面の略中央部には、軸方向に連続された第2の案内溝59がそれぞれ設けられている。
第2の案内溝59は、可動鏡筒52の軸方向と平行をなすよう直線状に延在されており、その断面形状はV字形とされていて、それぞれ両側に45°傾斜された案内面が設けられている。この第2の案内溝59には、転動体ユニット53A,53B,53Cの他面側がそれぞれ嵌め合わされている。即ち、3箇所の第2の案内溝59は、固定鏡筒51の第1の案内溝55と、その固定鏡筒51に装着された2つの案内部材2,2の第1の案内溝7,7とにそれぞれ対向されており、これら内外の案内溝55,59及び7,59間に、3個の転動体ユニット53A,53B,53Cがそれぞれ転動自在に介在されている。
更に、可動鏡筒52には、固定鏡筒51に対して可動鏡筒52を軸方向へ進退動作させるためのコイル26が取り付けられている。コイル26は、可動鏡筒52と略同様の直径(内径及び外径の両方)となるように所定回数を巻回されていると共に、3つの突出部58a〜58cに嵌め合わされて、可動鏡筒52の一方の端部に一体的に固着されている。このコイル26には、給電用の配線板27が結線されている。そして、可動鏡筒52の外側に、所定の隙間をあけて円筒体からなる外装鏡筒48が装着されている。また、外装鏡筒48は、その軸方向の一端において固定鏡筒51のフランジ部51aと係合されて、位置決めされている。
固定鏡筒51及び外装鏡筒48の材質としては、高透磁率の磁性材料{例えば、純鉄、パーマロイ(Ni−Fe合金)等}が好適である。しかしながら、固定鏡筒51の材質としては、例えば、全体を樹脂製の筒体として、必要な箇所に高透磁率の磁性材料を配置する構成とすることもできる。この場合には、固定鏡筒51に設けるべき第1の案内溝55や、高い寸法精度や高い面精度が要求される箇所を樹脂成形品として形成することができる。更に、アルミニウム合金やマグネシウム合金等を用いたダイキャストモールド品、或いはダイキャストモールド品と樹脂とで複合成形した複合材料品として形成することもできる。このように、固定鏡筒51を樹脂成形品等で形成する場合には、より高い量産性が見込まれるものとなる。
また、可動鏡筒52の材質としては、樹脂成形品であってもよいことは勿論のこと、固定鏡筒51と同様に、アルミニウム合金やマグネシウム合金等を用いたダイキャストモールド品、或いはダイキャストモールド品と樹脂とで複合成形した複合材料品として形成することもできる。
前述したコイル26と3個の永久磁石49と固定鏡筒51と外装鏡筒48とによってリニアモータ駆動手段が構成されている。この場合、固定鏡筒51が、永久磁石49を配設した接地側ヨークとして構成され、外装鏡筒48が、接地側ヨークからの磁束を受ける対向側ヨークとして構成されている。これにより、コイル26を固着した可動鏡筒52が一定磁束の中に存在するため、そのコイル26に結線された配線板27の接続端子間に電圧をかけることで、リニアモータ駆動が可能となる。
この場合、固定鏡筒51に対して可動鏡筒52が、3つの転動体ユニット53A〜53Cを介してスライド自在に支持され、しかも、2組の板ばね6A,6Bの付勢力によって予圧を受けているため、支持部全体としてガタを生じることがなく、更にレンズの光軸に対するズレのない光軸方向の移動動作を実現することができ、安定した高精度な光軸方向の移動動作が可能となる。また、3つの永久磁石49は、3つの転動体ユニット53A〜53Cが配置される部分を除いて、それ以外の全ての面を占有できるため、磁石の占有面積を可及的に大きく設定することができると共に、コイル26が3つの永久磁石49と一定の隙間をあけて円周上に存在することから、磁気回路の効率を最大限に生かすことが可能である。
図2は、図1に示したレンズ鏡筒50を含むレンズ装置200のすべての構成部品を表した分解斜視図である。このレンズ装置200は、大きく分けて3つのレンズ群で構成された3レンズ群構成の光学系からなるものである。また、図6及び図7は、図2に示したレンズ装置200が内蔵された撮像装置の一実施例を示す電子スチルカメラ150の外観斜視図である。図8は、電子スチルカメラ150のレンズ装置200部分を縦方向に断面した図、図9は図8のX−X線断面図、図10はレンズ装置200の可動鏡筒52が繰出した状態の説明図である。
図2に示すように、レンズ装置200は、外装鏡筒48と、第1及び第2の固定鏡筒51,201と、第1及び第2の可動鏡筒52及び202と、1群レンズ211と、2群レンズ212と、3群レンズ213と、撮像手段の一具体例を示すCCD(固体撮像素子)214等を備えて構成されている。第1の固定鏡筒51と第2の固定鏡筒201は、その背面側において電子スチルカメラ150のカメラ本体(撮像装置本体)151にそれぞれ固定されている。また、第1の固定鏡筒51の外周面には3つの第1の永久磁石49が等間隔に配置されて固着されている。第2の固定鏡筒201の外周面には2つの第2の永久磁石204が等間隔に配置されて固着されている。
1群レンズ211は、リング状をなす1群レンズ保持枠216の中央の穴に保持されている。この1群レンズ保持枠216は、第1の可動鏡筒52の前側端面部に固定されている。2群レンズ212は、リング状をなす2群レンズ保持枠217の中央の穴に保持されている。この2群レンズ保持枠217は、円筒状をなす第2の可動鏡筒202と一体に設けられている。3群レンズ213は、リング状をなす3群レンズ保持枠218の中央の穴に保持されている。この3群レンズ保持枠218は、円筒状をなす第2の可動鏡筒202と一体的に設けられている。3つの群レンズ211,212,213は、それぞれの光軸を同一軸上に一致させて配置されており、その光軸上であって3群レンズ213の後方にCCD214が配置されている。CCD214はプリント配線基板215の所定の配線回路上に実装されており、その状態でカメラ本体151に取り付けられている。
第2の可動鏡筒202は、半径方向内側に所定の隙間をあけて第2の固定鏡筒201の外側に嵌合されている。第2の可動鏡筒202には、半径方向外側に所定の隙間をあけて第1の固定鏡筒51が嵌合されている。第1の固定鏡筒51には、半径方向外側に所定の隙間をあけて第1の可動鏡筒52が嵌合されている。更に、第1の可動鏡筒52には、半径方向外側に所定の隙間をあけて外装鏡筒48が嵌合されている。そして、図8及び図9等に示すように、第1の可動鏡筒52と第1の固定鏡筒51との間に3組の第1の転動体ユニット53A,53B,53Cが配置され、第1の固定鏡筒51と第2の可動鏡筒202との間に3組の第2の転動体ユニット65A,65B,65Cが配置されている。
3組の第1の転動体ユニット53A〜53C及び3組の第2の転動体ユニット65A〜65Cは、それぞれ周方向に等間隔(120°)に配置されている。そして、第1の転動体ユニット53A〜53Cと第2の転動体ユニット65A〜65Cとは、それぞれ60°回転偏倚した位置に配置されている。
このような構成を実現するため、第1の固定鏡筒51には、軸方向に連続された内外2つの案内溝66,67と、2つの案内部材2,2を保持するための2つの開口部68,68と、2つの案内板69,69を保持するための2つの凹陥部71,71とが設けられている。内案内溝66は第1の固定鏡筒51の内周面に設けられ、外案内溝67は第1の固定鏡筒51の外周面に設けられており、それらは互いに180°回転偏倚した位置に設定されている。外案内溝67が、第1の固定鏡筒51と第1の可動鏡筒52との間の相対的な位置を決定するための基準部とされ、内案内溝66が、第1の固定鏡筒51と第2の可動鏡筒202との間の相対的な位置を決定するための基準部とされている。
また、第1の固定鏡筒51において、外案内溝67を中心として両側へ60°回転偏倚した位置の内周面に2つの凹陥部71,71が設定され、更に両側へ60°回転偏倚した位置の外周面に2つの開口部68,68が開口されている。この第1の固定鏡筒51に対応して、第2の可動鏡筒202の外周面の3箇所には、軸方向に連続された3つの案内溝72,73,74が設けられている。3つの案内溝72〜74は、周方向に等間隔に配置されており、第1の案内溝72の断面形状はV字形であるが、他の2つである第2及び第3の案内溝73,74の断面形状は半円形とされている。
第1の案内溝72は第1の固定鏡筒51の内案内溝66に対向されており、これらの案内溝66,72間には第2の転動体ユニット65Aが転動自在に介在されている。第2及び第3の案内溝73,74は第1の固定鏡筒51の2つの凹陥部71,71に対向されており、これら凹陥部71に保持されている案内板69との間に第2の転動体ユニット65B,65Cが個別に転動自在に介在されている。
2つの第2の転動体ユニット65B,65Cの転動体は、この実施例では球体とされている。しかしながら、他の転動体ユニットと同様に、転動体として円筒ころとすることができ、また、全ての転動体を球体とすることもできる。更に、転動体としては、この実施例で示した円筒ころ及び球体に限定されるものではなく、例えば、球面ころ(たる形ころ)その他の形状のものを用いることができることは勿論のこと、転動体として用いることができる形状であれば任意の形状の転動体を組み合わせて用いることもできる。
また、第1の固定鏡筒51に対応して、第1の可動鏡筒52の内周面の3箇所には、半径方向の内側に突出する突出部63が設けられている。この3箇所の突出部63の内面には、軸方向に連続された3つの案内溝59,59,59が設けられている。3つの案内溝59は、周方向に等間隔に配置されており、それらの断面形状はV字形とされている。第1の案内溝59は第1の固定鏡筒51の外案内溝67に対向されており、これらの案内溝59,67間には第1の転動体ユニット53Aが転動自在に介在されている。
第2及び第3の案内溝59,59は第1の固定鏡筒51の2つの開口部68,68に対向されており、これら開口部68に保持されている案内部材2との間に2つの第1の転動体ユニット53B,53Cがそれぞれ転動自在に介在されている。更に、2つの案内部材2,2とこれを支持する第1の固定鏡筒51の開口部68の縁部である支持部との間には、予圧部材である一対の板ばね6A,6Bがそれぞれ介在されている。これら2組の板ばね6A,6Bで2つの案内部材2,2を半径方向外側にそれぞれ付勢することにより、3個の第1の転動体ユニット53A〜53Cと3個の第2の転動体ユニット65A〜65Cとの合計6個の転動体ユニット53A〜53C及び65A〜65Cに対して、略均一となる所定の大きさの予圧を付与することができる。
このように構成することにより、2方向から作用する板ばね6A,6Bのばね力で6箇所に配置した転動体ユニット53A〜53C及び65A〜65Cに対して略均一な予圧を働かせることができる。そのため、転動体ユニット53A〜53C,65A〜65Cが移動方向のどの位置にある場合にも、その転動体ユニットの沈み込みを回避することができ、その転動体ユニット53A〜53C,65A〜65Cに加わる予圧が大きく変化するのを防止して、内外の可動鏡筒62,63をスムースにしかも精度良く移動することができる。
即ち、この実施例によれば、第1の可動鏡筒52が周方向の3箇所において第1の固定鏡筒51に対して転動体ユニット53A〜53Cで転動自在に支持されていると共に、第2の可動鏡筒202も周方向の3箇所において第1の固定鏡筒51に対して転動体ユニット65A〜65Cで転動自在に支持されている。そして、3つの第1の転動体ユニット53A〜53Cのうち、2箇所に案内部材2と予圧部材である板ばね6A,6Bをそれぞれ配置し、その板ばね6A,6Bのばね力で2つの案内部材2を2つの転動体ユニット53B,53Cに付勢する構成とした。
これにより、1箇所の第1の転動体ユニット53Aで第1の固定鏡筒51に対して第1の可動鏡筒52を位置決めできると共に、1箇所の第2の転動体ユニット65Aで第1の固定鏡筒51に対して第2の可動鏡筒202を位置決めすることができる。そして、第1の固定鏡筒51と第1の可動鏡筒52との間の2箇所において、案内部材2と板ばね6A,6Bとで2つの第1の転動体ユニット53B,53Cにばね力を付与する構成としたため、これら2つの第1の転動体ユニット53B,53Cを含む6箇所の転動体ユニット53A〜53C及び65A〜65Cの全てに対して、略等しい大きさの予圧を加えることができ、構造体全体の圧力バランスを取ることができる。
即ち、2方向から作用する板ばね6A,6Bのばね力により、6箇所の転動体ユニット53A〜53C及び65A〜65Cに略均一な予圧を働かせることができる。そのため、転動体ユニット53A〜53C,65A〜65Cが移動方向のどの位置にある場合にも、その転動体ユニット53A〜53C及び65A〜65Cの沈み込みを回避することができ、その転動体ユニット53A〜53C及び65A〜65Cに加わる予圧が大きく変化するのを防止して、第1の可動鏡筒52及び第2の可動鏡筒202の双方を、それぞれ個別にスムースにしかも精度良く移動させることができる。
なお、固定鏡筒51及び可動鏡筒52の形状としては、前述した実施例で説明した円筒形のものに限定されるものではなく、四角形の筒体、小判型の筒体その他各種形状の筒体を用いることができることは勿論である。また、支持部の数も、前記実施例における3点支持又は6点支持に限定されるものではなく、少なくとも3点を支持するものであればよく、4点以上の支持部を設けてもよいことは勿論である。
図6及び図7は、前述したような構成を有するレンズ装置200を用いた撮像装置の一具体例を示す電子スチルカメラ150の図である。図6及び図7に示した電子スチルカメラ150は、撮像装置本体の一具体例を示すカメラ本体151を備えており、そのカメラ本体151に沈胴式のレンズ装置200が内蔵されている。
カメラ本体151は、内部に空間が設けられた横長の筐体からなり、そのカメラ本体151の長手方向である横方向の一側(本実施例では、カメラに向かって右側)にレンズ装置200が配置されている。カメラ本体151の内部空間には、図示しないが、各種の電子部品が実装された配線基板、バッテリー電源、記憶装置、その他各種の電子部品や機械部品、装置等が収納されている。
カメラ本体151の上面には、被写体を撮影するためのシャッタボタン153が設けられている。更に、カメラ本体151には、図示しないが、電源ボタン、モード選択ダイヤル、そのモード選択ダイヤルで選択された各種モードや被写体等の表示を行うための液晶ディスプレイ(LCD)等からなる平面表示パネル、電子ビューファインダ等が設けられている。図6は、沈胴式レンズ装置200が沈み込んでカメラ本体151内に収納された状態を示し、図7はレンズ装置200が繰出された状態を示している。
このような構成を有する電子スチルカメラ150に本願発明の直動式転がり案内装置を有するレンズ装置200を適用することにより、レンズ装置200の沈胴動作をスムースに、しかも確実に行うことができるカメラを得ることができる。
図11は、第1の可動鏡筒52の位置を検出する位置検出手段を設けたレンズ装置230の実施例を示すものである。この実施例が前記実施例と異なるところは位置検出手段である位置検出センサ231の有無のみであるため、ここでは位置検出センサ231について説明し、その他の構成で同一のものについては同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
図11において、符号232は外装鏡筒であり、この外装鏡筒232の内側に第1の可動鏡筒52や図に表れない第1の固定鏡筒等が収納されている。外装鏡筒232には取付フランジ233が設けられており、この取付フランジ233を介してレンズ装置230がカメラ本体に取り付けられる。この外装鏡筒232の側面部に位置検出センサ231が取り付けられている。そのため、外装鏡筒232の側面部には、光軸方向と平行に延在された長穴234が設けられている。この長穴234の幅方向の両側には、位置検出センサ231を取り付けるための平面部232a,232aが設けられている。
外装鏡筒232の平面部232a,232aには位置決め用の2つのピン235,235がそれぞれ所定間隔あけて立設されている。これらのピン235,235により位置決めされてセンサ保持枠236が、一対のスペーサ237,237を介して外装鏡筒232の側面に固定されている。一対のスペーサ237,237は、各平面部232a,232aに接触され、その上にセンサ保持枠236が、長穴234を横断するように架け渡されている。そのため、センサ保持枠236には4つのピン235が嵌合される4つの穴236aが設けられ、一対のスペーサ237,237には2つのピン235が挿通される穴237aが設けられている。
位置検出センサ231は、MRマグネット(磁気スケール)238とMRセンサ(磁気感知センサ)239とを備えて構成されている。MRマグネット238は、N極とS極とを交互に且つ微細ピッチで着磁した細長い棒状の磁性材料からなり、その長手方向をレンズの光軸と平行にして第1の可動鏡筒52の外周面に接着剤等の固着手段によって固定されている。MRマグネット237は、外装鏡筒232の長穴234内に収納されており、センサ保持枠236の内面と接触することのない高さに設定されている。
この場合の高さ設定としては、例えば、次のような手段を用いることができる。
その1は、MRマグネット238の厚さを十分に薄くする。即ち、MRマグネット238の肉厚を外装鏡筒232の平面部232aの肉厚よりも薄くし、MRマグネット238を第1の可動鏡筒52の外周面に貼り付けたときにも、その表面とセンサ保持枠236の内面との間に適当な隙間が設定され、MRマグネット238がセンサ保持枠236と接触することがないようにする。
その2は、MRマグネット238の肉厚を上記1のように薄くできない場合に好適なもので、第1の可動鏡筒52に凹部を設け、MRマグネット238の一部を第1の可動鏡筒52に埋め込むようにする。
その3は、MRマグネット238の肉厚を第1の可動鏡筒52の肉厚よりも薄くできない場合に好適なもので、第1の可動鏡筒52の平面部232aを肉盛りし、第1の可動鏡筒52の肉厚よりも高い位置でセンサ保持枠236を支持するようにする。
その他、第1の可動鏡筒52に固定されたMRマグネット238が外装鏡筒232に固定されたセンサ保持枠236と接触することなく、第1の可動鏡筒52の進退動作を許容できる構造であれば、各種の構造のものを適用できるものである。なお、位置検出センサ231が取り付けられた後の長穴234は、チリやホコリ等の侵入を防ぐために、カバー等で塞ぐようにする。そのカバーとしては、例えば、位置検出センサ231の周囲を覆うカバー部材を設けてもよく、また、センサ保持枠236の左右に長穴234の開口部を覆うカバー部を設ける構成としてもよい。
センサ保持枠236は、MRセンサ239が固定される四角形をなす保持部236bと、その保持部236bの対向する2辺に設けられた取付部236c,236cとからなり、両取付部236c,236cに穴236aがそれぞれ2つずつ設けられている。また、保持部236bの略中央部には、MRマグネット238の磁界を透過させるための貫通穴241が設けられている。この貫通穴241に感磁面を合わせるようにして、MRセンサ239が保持部236bの外面に接着剤等の固着手段によって固定されている。
MRセンサ239は、MRマグネット238から出力される磁界の強さを検出するものである。MRセンサ239は、センサ配線板242の電気回路の所定位置に実装され、その電気回路と電気的に接続されている。このMRセンサ239の感磁面をMRマグネット238の表面に対向させると共に、その表面に対して感磁面が平行となるように構成する。この際、一対のスペーサ237,237の厚さを調整することにより、MRセンサ239の取付位置を変えてMRマグネット238との間の隙間を調整することができる。
このような構成とすることにより、1群レンズ保持枠216を含む第1の可動鏡筒52の位置を、位置検出センサ231によって検出することができる。即ち、第1の可動鏡筒52が光軸方向に動作した際に、MRマグネット238の磁界の強さの変化をMRセンサ239で検出することにより、第1の可動鏡筒52が第1の固定鏡筒51に対して、即ち光軸方向のどの位置にあるかを知ることができる。このMRセンサ239の出力を得ることにより、第1の可動鏡筒52の動作を制御し、その位置制御を行うことができる。
以上説明したように、本願発明によれば、予圧部材を用いることにより、転動体に対して均一な予圧を付与することができ、転動体の移動位置のいかんに係わらず、案内部材及び転動体ユニットの移動方向の傾きを軽減することができ、可動部材のスムースな移動を確保することができる。このような構成を有する支持機構を少なくとも1箇所以上に設けて可動鏡筒を固定鏡筒に支持することにより、レンズ装置全体に略均一な予圧を与えることができ、より安定した直線動作を実現することができる。
また、リニアモータのヨークをレンズ装置の固定鏡筒で兼用し、レンズの外周側に環状のコイルを配置することで、駆動手段であるリニアモータを効率よく配置することが可能となり、突起部のない沈胴式レンズ装置の小型化を実現することができる。更に、軸受部を除いて固定鏡筒の外周面又は内周面に永久磁石を配置することができ、その永久磁石の周りにコイルを配置できるため、磁気回路上、永久磁石に対するコイルの有効長さを長くすることができ、磁力の強さを高めて駆動効率を向上させることができる。更に又、ヨーク部材を樹脂で一体成形し、案内溝やピン等を樹脂成形することにより、高い寸法精度や面精度が要求される部分を有する鏡筒等を安価に作成することができる。
更に、特性として非磁性であることが必要とされる部品の材質に、樹脂或いはアルミニウム合金やマグネシウム合金等の非磁性金属を用いることにより、次のような効果を得ることができる。その1は、永久磁石とヨークによって形成される磁場に干渉することがない。ぞの2は、案内溝やレンズ挿入部分等の寸法精度や面精度が保証可能となる。その3は、肉厚を薄くしてレンズ装置等の小型化が可能となる。
このように、レンズ鏡筒の部品材料と各部品の配置等を工夫することで、小型でリニア駆動が可能なリニア沈胴式レンズ装置を実現することができる。
以上説明したが、本願発明は前記実施例に限定されるものではなく、例えば、前記実施例においては撮像装置として電子スチルカメラ(デジタルカメラ)に適用した例について説明したが、他の形式の撮像装置、例えば、ビデオカメラ、カメラ付きパーソナルコンピュータ、PDA等にも適用できることは勿論である。このように、本願発明は、その要旨を変更しない範囲で各種の変更実施が可能である。
1,31,41‥直動転がり案内装置、 2,45‥案内部材、 3,46‥可動部材、 4‥固定部材、 5,53A,53B,53C,65A,65B,65C‥転動体ユニット、 6A,6B‥板ばね(予圧部材)、 7,55‥第1の案内溝、 8,59‥第2の案内溝、 14‥円筒ころ(転動体)、 15‥保持器、 18‥長孔、 21‥位置決めピン、 22‥嵌合ピン、 26,26A,26B‥コイル、 27‥配線板、 32A,32B‥板状永久磁石(予圧部材)、 48,232‥外装鏡筒(ヨーク鏡筒)、 49,204‥永久磁石、 50,200,230‥レンズ鏡筒、 51,201‥固定鏡筒、 52,202‥可動鏡筒、 56A,56B‥開口部、 66,67,72,73,74‥案内溝、 69‥案内板、 150‥電子スチルカメラ(撮像装置)、 151‥カメラ本体(撮像装置本体)、 211‥1群レンズ、 212‥2群レンズ、 213‥3群レンズ、 214‥CCD(撮像手段)、 216,217,218‥レンズ保持枠、 231‥位置検出センサ(位置検出手段)、 234‥長穴、 235‥ピン、 236‥センサ保持枠、 237‥スペーサ、 238‥MRマグネット(磁気スケール)、 239‥MRセンサ(磁気感知センサ)