以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。先ず、本発明に係る画像形成装置の第1実施形態ついて図1を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体概略構成図である。
この画像形成装置は、ベルト状感光体からなる像担持体1と、この像担持体1の周回方向(矢示方向)に沿って上流側から下流側に配置した、イエローの像を形成するために像担持体1を一様に帯電させる帯電装置2Y、像担持体1上に書込み装置3によって形成された潜像にイエローのトナーを付着させて現像する現像装置4Y、現像装置4Yでイエローの現像が終了した像担持体1上を除電するための除電装置20Yと、マゼンタの像を形成するために像担持体1を一様に帯電させる帯電装置2M、像担持体1上に書込み装置3によって形成された潜像にマゼンタのトナーを付着させて現像する現像装置4M、現像装置4Mでマゼンタの現像が終了した像担持体1上を除電するための除電装置20Mと、シアンの像を形成するために像担持体1を一様に帯電させる帯電装置2C、像担持体1上に書込み装置3によって形成された潜像にシアンのトナーを付着させて現像する現像装置4C、現像装置4Cでシアンの現像が終了した像担持体1上を除電するための除電装置20Yと、ブラックの像を形成するために像担持体1を一様に帯電させる帯電装置2K、像担持体1上に書込み装置3によって形成された潜像にブラックのトナーを付着させて現像する現像装置4Kと、像担持体1上に各色のトナー像が重ね合わされて形成されたフルカラートナー像を転写する転写装置5と、定着装置6と、転写材7を収容する給紙装置8などとを備えている。
ここで、像担持体1は、搬送ローラ11、従動ローラ12、転写装置5を構成する転写対向ローラ5B、現像装置4Y、4M、4Cに対向する対向ローラ13Y、13M、13Cの間に架け渡され、搬送ローラ11の回転により矢示方向に周回移動する。帯電装置2Y、2M、2C、2K(以下、区別しないときは「帯電装置2」という。なお、その他の部材及び手段についても同様である。)は、スコロトロンチャージャを使用し、像担持体1表面を均一に負帯電する。なお、帯電手段として非接触式帯電手段を備えていることによって、先行する画像形成によって像担持体上に形成されたトナー像を乱すことなく帯電を行なうことができて、良好な画像を得ることができるようになる。
書込み装置3は、画像情報に従って帯電装置2によって帯電された像担持体1に対して潜像を書き込むものであり、レーザーを用いた光走査装置やLEDアレイ等、種々のものを使用することができる。現像装置4の詳細については後述する。帯電装置2Y、2M、2C、2Kは、除電コロトロンチャージャで構成している。転写装置5は、転写ローラ5Aと転写対向ローラ5Bとを備えている。定着装置6は、加熱ローラ6A及びこれに対向する加圧ローラ6Bを備えている。
そして、この画像形成装置においては、複写機として機能するときには、図示しないスキャナから読み込まれた画像情報がA/D変換、MTF補正、階調処理等の種々の画像処理を施されて書込みデータに変換される。また、プリンタとして機能するときには、コンピュータ等から転送されるページ記述言語やビットマップ等の形式の画像情報に対して画像処理が施され書込みデータに変換される。
そして、画像形成に先駆けて、像担持体1は表面の移動速度が所定の速度となるように、図1の矢印方向に周回移動を開始する。このとき、所定のタイミングで、帯電装置2Yによって像担持体1が均一に帯電され、帯電させられた像担持体1に対し、書込み装置3は、先ずイエロー画像の書込みデータに応じてレーザー光3aを照射して露光を行なう。すなわち、光照射によって画像部の電位を変化させることで光照射されなかった非画像部の電位との差を発生させ、この電位コントラストによる静電潜像を形成する。その後、現像装置4Yによってイエローのトナーが像担持体1上に形成された静電潜像の画像部に付着されて、イエローのトナー像が像担持体1上に形成される。そして、イエローのトナー像が形成された領域を含めて、除電装置20Yによって像担持体1上を除電する。
次に、イエローのトナー像が形成された領域を含めて、帯電装置2Mによって像担持体1が均一に帯電され、帯電させられた像担持体1に対し、書込み装置3は、マゼンタ画像の書込みデータに応じてレーザー光3aを照射して露光を行ない、マゼンタ画像の静電潜像を形成する。そして、現像装置4Mによってマゼンタのトナーが像担持体1上に形成された静電潜像の画像部に付着されて、イエローのトナー像にマゼンタのトナー像が重ね合わされたトナー像が像担持体1上に形成される。その後、イエロー及びマゼンタのトナー像が形成された領域を含めて、除電装置20Mによって像担持体1上を除電する。
以下、同様にして、帯電、露光(書込み)、現像が行なわれて、イエローとマゼンタのトナー像にシアンのトナー像が重ね合わされたトナー像が像担持体1上に形成され、これら3色が重ね合わされたトナー像にブラックのトナー像が重ね合わされたトナー像が像担持体1上に形成される。なお、ブラックのトナー像形成後の除電は行なわない。
つまり、この画像形成装置において、除電装置20は、2色目以降の画像形成を行なう前に像担持体1上を除電する位置に配置している。
一方、所定のタイミングで給紙装置8から転写材7が給紙されて搬送路9を介して搬送され、転写装置5によって像担持体1上の色重ねされたトナー像が転写材7に転写され、定着装置6で定着処理された後、フルカラー画像が形成された転写材7が排紙部10に排紙される。
そこで、現像装置4の詳細について図2を参照して説明する。なお、図2は同現像装置の詳細を説明する説明図である。
この現像装置4は、現像手段として、ケーシング21内に、像担持体1と対向する領域(対向域)にトナーを移相電界によって搬送するローラ状に形成したトナー搬送部材22と、このトナー搬送部材22に対向し、トナー搬送部材22に対してトナーを供給するトナー供給手段である現像剤担持体23と、この現像剤担持体23で供給するトナー及び磁性キャリアからなる2成分現像剤(又はトナーからなる一成分現像剤とすることもできる。)を収容する現像剤収容部24とを備えている。
ここで、トナー搬送部材22は像担持体1及び現像剤担持体23に対して径方向の反対側の領域で対向している配置としている。また、このトナー搬送部材22と像担持体1は、50〜1000μm、好ましくは150〜400μmの間隙をあけて非接触で対向している。また、トナー搬送部材22は回転せず、外周面をトナーが矢示方向に搬送電界(移相電界)で搬送される。一方、現像剤担持体23は矢示方向に回転する。
現像剤担持体23は、内部に、固定された磁石が配置されおり、現像剤担持体23の回転と磁力及び攪拌スクリュー25によって現像剤収容部24内の現像剤が現像剤担持体3表面に供給される。また、現像剤担持体23の外周側に対向して現像剤層規制部材27を設け、現像剤担持体23上の現像剤を一定量の現像剤層厚に規制している。この現像剤担持体23に供給された現像剤は現像剤担持体23の回転に伴ってトナー搬送部材22と対向する領域まで搬送される。
ここで、現像剤担持体23には図示しない電圧印加手段によって供給バイアスが印加されている。また、トナー搬送部材22には後述する電圧印加手段(駆動回路)によって電極に搬送電界を形成する電圧が印加されている。
これにより、現像剤担持体23とトナー搬送ローラが対向する領域においてはトナー搬送部材22と現像剤担持体3との間に電界が生じている。その電界からの静電気力を受け、トナーはキャリアから解離し、トナー搬送部材22表面に移動する。そして、トナー搬送部材22表面に達したトナーは、電極に印加される電圧によって形成される搬送電界(移相電界)によって、トナー搬送部材22表面上をホッピングしながら搬送される(移動する)。
次いで、像担持体1と対向する領域まで搬送電界によって搬送されたトナーは、トナー搬送部材22と像担持体1上の画像部との間の現像電界によって、像担持体1上に移動して像担持体1上の潜像を可視像化(現像)する。
次に、現像手段を構成しているトナー搬送部材22の詳細について図3を参照して詳細に説明する。なお、図3は同トナー搬送部材22の一部を拡大した断面説明図である。
このトナー搬送部材22は、支持基板101上に複数の電極102、102、102……を、n本を1セットとして、トナー移動方向に沿って所要の間隔で配置し、この上に静電搬送面103aを形成する絶縁性の静電搬送面形成部材となり、電極102の表面を覆う保護膜となる、無機又は有機の絶縁性材料で形成した表面保護層103を積層したものである。
支持基板101としては、ガラス基板、樹脂基板或いはセラミックス基板等の絶縁性材料からなる基板、或いは、SUSなどの導電性材料からなる基板にSiO2等の絶縁膜を成膜したもの、ポリイミドフィルムなどのフレキシブルに変形可能な材料からなる基板などを用いることができる。
電極102は、支持基板101上に、Al、Ni−Cr等の導電性材料を0.1〜10μm厚、好ましくは0.5〜2.0μmで成膜し、これをフォトリソ技術等を用いて所要の電極形状にパターン化して形成している。これらの複数の電極102のトナー搬送方向における幅(電極幅)aは移動させる粉体の平均粒径の1倍以上20倍以下とし、かつ、電極102、102のピッチpも移動させるトナーの平均粒径の1倍以上20倍以下としている(図4参照)。
表面保護層103としては、例えばSiO2、TiO2、TiO4、SiON、BN、TiN、Ta2O5などを厚さ0.5〜10μm、好ましくは厚さ0.5〜3μmで成膜して形成している。また、無機ナイトライド化合物、例えばSiN、Bn、Wなどを用いることができる。特に、表面水酸基が増えると帯電トナーの帯電量が搬送途中で下がる傾向にあるので、表面水酸基(SiOH、シラトール基)が少ない無機ナイトライド化合物が好ましい。
図3において、各電極102から伸びる線は各電極102に電圧を印加するための導電線をあらわしており、各線の重なる部分のうち黒丸で示した部分だけが電気的に接続されており、他の部分は電気的に絶縁状態である。各電極102に対しては、本体側の電圧印加手段(駆動回路)104からn相の異なる駆動電圧V11〜V13、V21〜V23が印加される。なお、本実施形態では3相の駆動電圧が印加される場合(n=3)について説明するが、本発明はトナーが搬送される限りにおいて、多相(n相)がn>2を満たす任意の自然数nについて適用可能である。
また、トナー搬送部材22の各電極102は現像装置4側の接点S11、S12、S13,S21、S22、S23のいずれかに接続されており、各接点S11、S12、S13,S21、S22、S23は、現像装置4が画像形成装置本体に装着された状態においては、それぞれ駆動波形V11、V12、V13、V21、V22、V23を与える本体側の電圧印加手段104と接続される。
トナー搬送部材22は、トナーを像担持体1近傍まで移送し、また現像領域通過後の現像に寄与しなかったトナーを回収するための搬送領域(回収領域を含む)、像担持体1の潜像にトナーを付着させてトナー像を形成するための現像領域とに分けられる。
現像領域は、像担持体1に近接した領域のみに存在し、搬送領域はトナー搬送部材22の周上、現像領域以外の全域に存在する。本発明では、トナーが移相電界によって移動可能な領域を「静電搬送面」という。本実施形態の場合、トナー搬送部材22の周表面全体が静電搬送面である。
搬送領域では電圧印加手段104によって各電極102に駆動波形V11、V12、V13が印加され、現像領域では電圧印加手段104によって各電極102に駆動波形V21、V22、V23が印加される。
そこで、トナー搬送部材22におけるトナーの静電搬送の原理について説明する。トナー搬送部材22の複数の電極102に対してn相のパルス状電圧を印加することにより、複数の電極102によって移相電界(進行波電界)が発生し、トナー搬送部材22上の帯電したトナーは反発力及び/又は吸引力を受けて移送方向に移動する。
例えば、トナー搬送部材22の複数の電極102に対して図5に示すように、グランドG(0V)と正の電圧+との間で変化するA相、B相、C相の3相のパルス状駆動波形(電圧)を、タイミングをずらして印加する。
このとき、図6に示すように、トナー搬送部材22上に負帯電トナーTがあり、トナー搬送部材22の連続した複数の電極102にそれぞれ「G」、「G」、「+」、「G」、「G」が印加された(同図(a))とすると、負帯電トナーTは「+」の電極102上に位置する。次のタイミングで複数の電極102にはそれぞれ「+」、「G」、「G」、「+」、「G」が印加され(同図(b))、負帯電トナーTには左側の「G」の電極102との間で反発力が、右側の「+」の電極102との間で吸引力がそれぞれ作用するので、負帯電トナーTは「+」の電極102側に移動する。さらに、次のタイミングで複数の電極102には、同図(c)に示すように、それぞれ「G」、「+」、「G」、「G」、「+」が印加され、負帯電トナーTには同様に反発力と吸引力がそれぞれ作用するので、負帯電トナーTは更に「+」の電極102側に移動する。
これについて図7を参照して具体的に説明すると、同図(a)に示すように、トナー搬送部材22の電極A〜Fがいずれも0V(G)で、トナー搬送部材2上に負帯電トナーTが載っている状態から、同図(b)に示すように電極A、Dに「+」が印加されると、負帯電トナーTは電極A及び電極Dに吸引されて電極A、D上に移る。次のタイミングで、同図(c)に示すように、電極A、Dがいずれも「0」になり、電極B、Eに「+」が印加されると、電極A、D上のトナーTは反発力を受けるとともに、電極B、Eの吸引力を受けることになって、負帯電トナーTは電極B及び電極Eに移送される。さらに、次のタイミングで、同図(d)に示すように、電極B、Eがいずれも「0」になり、電極C、Fに「+」が印加されると、電極B、E上のトナーTは反発力を受けるとともに、電極C、Fの吸引力を受けることになって、負帯電トナーTは電極C及び電極Fに移送される。このように進行波電界によって負帯電トナーは順次図において右方向に移送されることになる。
このように複数の電極102に電圧の変化する多相(n相)の駆動波形(電圧)を印加することで、トナー搬送部材22上には進行波電界が発生し、負帯電トナーはこの進行波電界の進行方向に移動する。なお、正帯電トナーの場合には駆動波形の変化パターンを逆にすることで同様に同方向に移動する。
次に、電圧印加手段104の一例について図8を参照して説明する。
この電圧印加手段104は、パルス信号を生成出力するパスル信号発生回路105と、このパルス信号発生回路105からのパルス信号を入力して駆動波形であるパルス状電圧V11、V12、V13を生成出力する波形増幅器106a、106b、106cと、パルス信号発生回路105からのパルス信号を入力して駆動波形V21、V22、V23を生成出力する波形増幅器107a、107b、107cとを有する。
パルス信号発生回路105は、例えばロジックレベルの入力パルスを受けて、各120°に位相シフトした2組みパルスで、次段の波形増幅器106a〜106c、107a〜107cに含まれるスイッチング手段、例えばトランジスタを駆動して100Vのスイッチングを行なうことができるレベルの出力電圧10〜15Vのパルス信号を生成して出力する。
波形増幅器106a、106b、106cは、搬送領域の各電極102に対して、3相の駆動波形(駆動パルス)V11、V12、V13を印加し、波形増幅器107a、107b、107cは、現像領域の各電極102に対して、3相の駆動波形(駆動パルス)V21、v22、V23を印加する。
ここで、トナー搬送部材2の搬送領域では、各電極102に対して、図9に示すように、各相の+100Vの印加時間taを繰り返し周期tfの1/3である約33%に設定した(これを「搬送電圧パターン」という。)3相の駆動波形(駆動パルス)V11、V12、V13を印加する。この駆動波形は搬送領域においてトナーを高速搬送させるのに適した波形である。
また、現像領域では、各電極102に対して、図10又は図11に示すように、各相の+100V(又は−100V)の印加時間taを繰り返し周期tfの2/3である約67%に設定した(これを「ホッピング電圧(又は現像電圧)パターン」という)3相の駆動波形(駆動パルス)V21、V22、V23を印加する。現像領域ではトナー粒子を積極的に像担持体に向かって打ち上げることが好ましく、図10の駆動波形はトナー粒子を打ち上げるのに適している。
さらに、ホッピング電圧パターンとしては、図12に示すように、パルス状電圧と直流バイアスとを重畳した波形の電圧を用いることもできる。図12に示す波形は、−50VのDC電圧をバイアスし、−50V〜−150Vの駆動波形とした。なお、同図では相対的に+の時間が33%デューティの波形としている。
なお、現像電圧パターンの駆動波形を印加した場合でも、0V電極のセンターに位置したトナー以外は、横方向への力も受けるため、すべてのトナーがいっせいに高く打ち上げられるというものではなく、水平方向に移動するトナーもあり、逆に、搬送電圧パターンの駆動波形を印加した場合でも、トナーの位置によっては、大きな角度で斜めに打ち上げられて水平に移動するよりも上昇距離の方が大きいものがある。
したがって、搬送領域において各電極102に印加する駆動波形パターンは前述した図9に示す搬送電圧パターンに限られるものではなく、また、現像領域12の各電極102に印加する駆動波形パターンも前述した図10ないし図12に示す現像電圧パターンに限られるものではない。
なお、駆動波形は3相の場合について説明したが、これをn相に一般化すると、次のようになる。すなわち、各電極に対してn相(nは3以上の整数)のパルス状電圧(駆動波形)を印加して進行波電界を発生させる場合、1相あたりの電圧印加時間が{繰り返し周期時間×(n−1)/n}未満となる電圧印加デューティとすることによって、搬送、現像の効率を上げることができる。例えば、3相の駆動波形を用いる場合には、各相の電圧印加時間taを繰り返し周期時間tfの2/3である約67%未満に設定し、4相の駆動波形を用いる場合には、各相の電圧印加時間を繰り返し周期時間の3/4である75%未満に設定することが好ましい。
他方、電圧印加デューティは、{繰り返し周期時間/n}以上に設定することが好ましい。例えば、3相の駆動波形を用いる場合には、各相の電圧印加時間taを繰り返し周期時間tfの1/3である約33%以上に設定することが好ましい。
すなわち、注目電極に印加する電圧と進行方向上流側隣接電極及び下流側隣接電極に印加する各電圧との間には、上流側隣接電極が反発、下流側隣接電極が吸引という時間を設定することによって、効率を向上することができる。特に、駆動周波数が高い場合は、{繰り返し周期時間/n}以上で{繰り返し周期時間×(n−1)/n}未満の範囲内に設定することにより、注目電極上のトナーに対する初期速度が得られやすくなる。
なお、ET現象のうちのホッピング現象は、静電搬送基板を用いただけでは発生せず、トナー搬送部材22の電極102の電極幅aや電極間間隔R、電極に印加する駆動波形(電圧)との関係を設定することで発生するものである。この点については、特許文献2などに詳細に説明しているとおりである。
例えば、電極102の電極幅aについては、電極幅aをトナー径の1倍としたときは、最低1個のトナーを乗せて搬送、ホッピングするための幅寸法であり、これより狭いとトナーに作用する電界が少なくなり、搬送力、飛翔力が低下して実用上は十分でない。また、電極幅aが広くなるに従って、特に、電極上面中央付近で、電気力線が進行方向(水平方向)に傾斜し、垂直方向の電界の弱い領域が発生し、ホッピングの発生力が小さくなる。電極幅aがあまり広くなると、極端な場合、トナーの帯電電荷に応じた鏡像力、ファンデルワールス力、水分等による吸着力が勝り、トナーの堆積が発生することがある。
そして、搬送及びホッピングの効率から、電極の上にトナーが20個程度が載る幅であれば吸着が発生しにくく、100V程度の低電圧の駆動波形で効率良く搬送、ホッピングの動作が可能である。それ以上広いと部分的に吸着が発生する領域が生じる。例えば、トナーの平均粒径を5μPとすると、5μm〜100μmまでの範囲に相当する。
電極102の電極幅aのより好ましい範囲は、印加電圧が100V以下の低電圧でより効率的に駆動するため、トナーの平均粒径の2倍以上〜10倍以下である。電極幅aをこの範囲内とすることで、電極表面中央付近の電界強度の低下が1/3以下に抑えられ、ホッピングの効率低下は10%以下となって、効率の大幅な低下をきたすことがなくなる。これは、例えば、トナーの平均粒径を5μmとすると、10μm〜50μmの範囲に相当する。
さらに、より好ましくは、電極幅aは、トナーの平均粒径の2倍以上〜6倍以下の範囲である。これは、例えば、トナーの平均粒径を5μmとすると、10μm〜30μmに相当する範囲である。この範囲とすることによって非常に効率が良くなることが判明している。
また、トナーの搬送、ホッピングに作用する力を付与できる電界としては0.5V/μm以上、吸着の問題がない好ましい電界としては1V/μm以上、さらに十分な力を付与できるより好ましい電界としては2V/μm以上の範囲であることが分かっている。
電極間隔Rについては、間隔が広くなるほど搬送方向の電界強度は低下するため、上記電界強度の範囲に対応する値としても同様で、トナーの平均粒径の1倍以上〜20倍以下、好ましくは2倍以上〜10倍以下、さらにより好ましくは2倍以上〜6倍以下である。また、ホッピングの効率は電極間隔Rが広がると低下するが、トナーの平均粒径の20倍までは実用上のホッピング効率が得られる。トナー平均粒径の20倍を越えるとやはり多くのトナーの吸着力が無視できなくなり、ホッピングが全く発生しないトナーが発生するため、この点でも電極間隔Rはトナーの平均粒径の20倍以下とする必要がある。
また、上述した電極構成による搬送及びホッピングを効率的に行なうことがでるのは、トナーの平均粒径が2〜10μm、Q/mが負帯電の場合には−3〜−40μC/g、より好ましくは、−10〜−30μC/g、正帯電の場合には+3〜+40μC/g、より好ましくは、+10〜+30μC/gであることが分っている。
さらに、画像部電位Viと非画像部電位(地肌部電位)Vgとの差が300V以下である場合に、より良好な画像を形成することができる。また、トナー搬送部材22の電極102に印加する電圧は、トナーを引き付ける成分の電圧とトナーを反発する成分の電圧がトナー搬送部材22の隣り合う電極102、102間に印加されたときに形成されるトナー搬送方向の電界の最大値が2V/μm以上になる電圧とすることによって、トナーの搬送をより確実に行なうことができる。
ところで、ET現像では、トナー搬送部材22上でトナーをホッピングさせることによって、トナー搬送部材22のトナーに対する吸着力を0にすることで現像を行なうものであるが、単にトナー搬送部材22上でトナーをホッピングにさせるだけでは、ホッピングしたトナーが像担持体1側への進行性を有しているとしても、像担持体1の潜像に付着することの確実性が保証されない。特に、多色のトナーを像担持体上に重ねてトナー像を形成する場合、現像しようとしているトナー画像上での非画像部であっても、他の色のトナーの画像部となる場合も多く、この場合には色むら、混色として認識され、著しく画像品質を損ねることになる。
そこで、像担持体1の潜像の電位(表面電位)とトナー搬送部材22に印加する電位(発生させる電界)との関係を所定の関係に設定する、つまり、像担持体1の潜像の画像部に対してはトナーが像担持体1側に向かい、非画像部に対してはトナーが像担持体1側に向かわない電界を発生させる。これにより、潜像の画像部に対してはトナーが確実に付着し、非画像部に対してはトナーが像担持体1側に向わないので、トナー搬送部材22からホッピングしたトナーが効率的に現像に利用され、飛散を防止でき、低電圧駆動による、色ムラのない、高品質現像を可能にすることができる。
次に、このように構成した画像形成装置における色重ねによる画像形成について説明する。
まず、各色のトナーによって潜像を現像する現像装置4Y、4M、4C、4Kの各トナー搬送部材22の各電極102に対して電圧を印加する電圧印加手段104は、平均値電位が潜像の画像部電位と非画像部電位との間となる電圧を印加する。これによって、像担持体1の潜像の画像部に対してはトナーが像担持体1側に向かい、非画像部に対してはトナーが像担持体1側に向かわない電界が発生して、潜像の画像部に対してはトナーが確実に付着し、非画像部に対してトナーが付着しないので、トナー搬送部材22からホッピングしたトナーが効率的に現像に利用される。
ここで、トナー搬送部材22の電極102に印加する電位の平均値(平均値電位)とは、トナー搬送部材22上の時間的空間的平均値電位である。前述したように、トナー搬送部材22の各電極102に対しては、電圧印加手段104からパルス状電圧が印加されることで周期的に変化する電位が与えられているが、トナー搬送部材22からある程度の距離を置いた現像部の像担持体1表面では、平均的な電位となっている。
つまり、トナー搬送部材22の各電極102に印加する駆動電圧パターンのデューティが50%であれば、駆動電圧パターンのハイレベル電位とロ−レベル電位の平均の値となる。したがって、この平均値電位を像担持体1の潜像の画像部電位と非画像部電位の間に設定することで高品質の現像が可能となる。
また、本EH現像方式を用いた場合、カラー画像形成においても、効率的に、高画質の画像を得ることができる。すなわち、EH現像においては、トナーがホッピングしていることにより潜像の画像部に対してトナーが吸引されて付着し、非画像部ではトナーが付着されないので、感光体上の潜像電界に忠実なトナーの付着が行われる。このとき、既にホッピングしているトナーはトナー搬送部材22との間で吸着力が生じないため、トナー搬送部材22からトナーを引き剥がすための大きな力は不要となり、容易に像担持体1側に移送することができ、高い品質の現像が低電圧で可能となる。
そして、このように、トナー搬送部材22からトナーを引き剥がすための大きな力は不要であるから、色重ねでトナー像の上に更にトナー像を形成する場合に、すでに存在しているトナー像を乱すことなく、トナー像を重ねて形成することができる。
したがって、前述のように、2色目以降の場合においても、現像領域で、現像されようとしている色のトナーについて、トナーが潜像の画像部に対しては像担持体1側に向かい、非画像部に対してはトナーが像担持体1側に向わない方向の電界が形成されるように、電圧印加手段104によってトナー搬送部材22の電極102に電圧を印加することで、すでに像担持体1上に存在するトナーを乱さず、良好な現像が可能となる。
そこで、像担持体1上で多色のトナーを重ね合わせて画像を形成する場合について具体例で説明する。
1色目のトナーについては、単色の場合と同様に考えられる。すなわち、前述した図11に示すホッピング電圧パターンの電圧波形のように、0〜−100Vで遷移するパルス状電圧である場合、像担持体1上の非画像部電位が−100Vより低いときには、非画像部に対しては、トナーがトナー搬送部材22側に引き付けられることになる。一方、画像部電位を適当に設定することで、画像部に対しては、トナーが像担持体1側に向かうことになる。
実験によると、潜像の非画像部電位を−150Vや−170Vとした場合に、非画像部に対してはトナーが像担持体1側に向かわず、画像部電位を−20Vとした場合、画像部に対してはトナーが像担持体1方向に向かうことが確認できた。
次に、トナー像が形成された像担持体1上にさらに第2のトナー層を形成する。
2色目のトナーを搬送する現像装置のトナー搬送部材22の各電極102に対して印加するホッピング電圧パターンとして、−50〜−150Vで遷移するパルス状電圧波形(図12のパターン)を設定した。このとき、潜像の非画像部の電位を−150Vよりも小さく設定すれば、非画像部に対して、トナーは像担持体1側に向かわないはずである。潜像の非画像部電位を−200Vや−220Vとしたときに、非画像部に対してトナーは像担持体1側に向かわず、画像部に対して像担持体1へ向かうことを確認した。また、2色目の現像に対する潜像の画像部電位を−50Vとしたが、この場合、画像部ではトナーは像担持体1側に向かった。
一色のみの現像時と同様に、画像部電位と非画像部電位の間の値にホッピング電圧の平均値電位を設定することで、画像部に対して選択的にトナーを像担持体に向かわせることが可能であり、トナーの飛散も防止でき良好な画像が得られる。
このように、トナー搬送部材を含む現像手段と、各現像手段のトナー搬送部材の電極に対し、平均値電位が潜像の画像部電位と非画像部電位との間となる電圧を印加する電圧印加手段とを備えることで、異なる色のトナー像を重ね合わせて画像を形成するときに、画像部にはトナーを確実に付着させ、非画像部へのトナー付着を低減させ、画像の乱れのない良好な画像を得ることができる。
ところで、2色目以降の現像については、現像しようとする画像部に、先行する色の現像によってトナーが付着している部分が含まれる場合がある。この場合、トナーの有する電荷で低下した画像部電位と非画像部電位との間の値にホッピング電圧の平均値電位を設定する。これにより、トナーを画像部では像担持体側へ向かわせ、非画像部ではトナーを像担持体に向かわせないことができる。
例えば、現像しようとする画像部が先の現像によってトナーが付着している部分を含むとき、すでに像担持体上に付着しているトナーの持つ電荷の極性がマイナスであれば、その分画像部の電位は低下する。したがって、この場合には、この低下した画像部電位と非画像部電位との間の値にホッピング電圧の平均値を設定することで、トナーを画像部では像担持体側へ向かわせることができる。
同様に、すでに像担持体上に付着しているトナーが、該トナーの現像時から保持している電荷を持っている場合、トナーの電荷の極性がマイナスであれば、その分画像部の電位は低下している。したがって、この場合も、低下した画像部電位と非画像部電位との間の値に、ホッピング電圧の平均値を設定すれば、画像部に選択的にトナーを像担持体へ向かわせることができる。
さらに、すでに像担持体上に付着しているトナーが、像担持体に付着した以降の、帯電又は露光により与えられた電荷を持っていた場合、トナーの電荷の極性がマイナスであれば、その分画像部の電位は低下している。したがって、この場合も、低下した画像部電位と非画像部電位との間の値にホッピング電圧平均値を設定すれば、画像部に選択的にトナーを像担持体へ向かわせることができる。
これらの現像しようとする画像部がすでに像担持体上にトナーが付着している部分である場合の、トナー層上の画像部電位について図13を参照して説明する。なお、図13はトナーが付着した感光体(像担持体)上の電位を示す説明図である。
同図において、非画像部の電位が−Vdであり、潜像の画像部の電位がVsである。同図(a)に示すように、画像部にトナーTが付着した後の電位がVtであるとすると、電位Vtには潜像の電位Vsと、トナーT自体が持っている電位Vpが含まれている。
次に、二色目のトナーを付着させるために、潜像形成をするとき、トナー層上に帯電装置2によって帯電させ、書込み装置3で露光を行った場合、同図(b)に示すように、トナー層の電位Vtは、潜像の画像部の電位Vs2とトナー層が保持していた電位Vpと帯電によりトナーが付与された電位Vp2を含む電位となる。
なお、第二のトナー層の現像に先駆けて、帯電を行わないプロセスでは、帯電により加味される電位Vp2は作用せず、また、二色目の潜像形成の前に感光体上のトナーを除電するプロセスでは、二色目の現像時には、電位Vpは無視できる。
このように、EH現像においては、他の現像方式と比較して低電圧で高品質の現像が実現でき、さらに一方向現像であるために、像担持体上に多色のトナーを重ね合わせるプロセスを、混色を生じることなく、実現することが容易になる。具体的には、像担持体1上の画像部と非画像部の電位差として300V以下での現像が可能である。
すなわち、1つの像担持体と、像担持体を各色毎に帯電させる帯電手段と、所定の間隔で並べて配置された複数の電極に多相の電圧が印加されることで形成される搬送電界によって像担持体との対向域にトナーを搬送するトナー搬送部材を備え、各トナー搬送部材の電極に対し、平均値電位が潜像の画像部電位と非画像部電位との間となる電圧を印加する電圧印加手段、又は、パルス状波形を含み、このパルス状波形のうちトナー搬送部材からトナーを反発飛翔させる電位が潜像の画像部電位と非画像部電位との間となる電圧を印加することで、異なる色のトナー像を重ね合わせて画像を形成するときに、画像部にはトナーを確実に付着させ、非画像部へのトナー付着を低減させ、画像の乱れのない良好な画像を得ることができる。
ところで、上述したように、ET現像方式は、現像電位差に対し感度のよい現像方式であるために、像担持体上の電位に異なる部分がある場合、トナーの付着量が変化しやすくなるという新たな問題があることが判明した。すなわち、ある色のトナーで現像しようとしたとき、すでに像担持体上に存在するトナー層が電位を持っている場合、次のトナーの現像が影響を受けやすいということである。
そこで、この画像形成装置においては、すでに像担持体上に存在するトナー層の影響を軽減する構成として、トナー層が形成された像担持体を除電する構成、露光エネルギーを変化させる構成のいずれか、又は両者を採用している。
まず、すでに像担持体上に存在するトナー層の影響を軽減するために、トナー層が形成された像担持体を除電する構成について、以下に説明する。
この画像形成装置では、すでに像担持体1上に存在するトナー層の影響を軽減するために、2色目以降については、除電装置20を備え、図14に示すように、除電装置20に対して除電電圧印加手段201によって除電電圧を印加することで、トナー像を形成した後除電を行なうようにしている。除電とは、像担持体上のトナー或いは像担持体の持つ電荷に対して、逆極性の電荷の付与を含む放電か、電荷が移動する経路を作ることによって電荷を漏洩させるものとする。除電を行なうことによって、具体的には前述した図13に示す電位Vpを除去することになる。
このとき使用する除電装置20としては、像担持体1上に既に形成されているトナー像を乱さない点で、非接触除電手段ないし非接触除電方法であることが好ましい。
この除電装置20及び除電電圧印加手段201の詳細について以下に説明する。
除電装置20としてはコロナ帯電のチャージャを使用し、除電電圧印加手段201から交流バイアスを印加して除電することができる。つまり、前述したように、除電には像担持体1又は像担持体1上のトナーと逆極性の電荷の十分な付与が必要である。更に、交流バイアスを印加して除電を行なうことにより、両極性のチャージが付与されることで、電位の均一化が容易になる。
この電位の均一化効果のためにはプラス、マイナス両側で放電開始電圧を超える値を印加する必要がある。チャージャの形状等にもよるが、振幅7KVpp以上が好ましい。除電が十分に行われるためには、除電される部分がチャージャ下部を通過する間に、十分な逆極性の電荷の付与を受ける必要があるため、必要周波数は像担持体線速度との関係で決定される。
ここで、トナー層電位を除電した後の電位の変化の一例を図15に示している。これは、トナー層の非画像部電位との電位差をトナー層電位として、除電を評価したものである。同図の横軸の「N」は、放電量を示す指標で、像担持体線速度をv、除電チャージャの開口幅をd、交流周波数をfとしたとき、N=d/v*fで表わされる値である。
この図15の線Aは、交流バイアスで除電したときの変化を示すものであり、トナー層の初期電位が−50Vであるとき、除電後のトナー層電位は、値Nの増加とともに除電後トナー層電位は減少し、ある値以上でほぼ0となる。
このように、潜像担持体表面に沿って配置された潜像担持体上を除電する複数の除電手段を備えることで、現像電位差が小さい場合であっても、すでに潜像担持体上に付着しているトナーの影響を軽減し、2色目以降の良好な現像を行なうことができる。そして、除電手段に交流バイアスを供給する電圧印加手段を備えることをで、簡単な構成で除電を行なうことができる。
次に、除電電圧印加手段201から除電装置20に印加する除電電圧としては、交流バイアスの直流バイアスを重畳した電圧とする、つまり、除電の効率を上げるために、交流バイアスに対し直流バイアスのオフセットを行った電圧とすることができる。
例えば、像担持体1上の帯電極性がマイナスである場合、これを除電するためには、プラスの直流バイアスをオフセットすることで、プラス側電荷の付与を増加させることが可能であり、除電効率が向上する。また、トナー層の帯電極性がマイナスである場合、これを除電するためにはプラスの直流バイアスを交流にオフセットすることが有効であり、逆に、トナー層がプラスである場合、マイナスの直流バイアスをオフセットすることが有効である。
図15中の線Bは、線Aと同じ交流条件に+300Vの直流バイアスをオフセットした場合の除電後のトナー層電位を示している。トナー層電位が0になるのに必要な値Nは小さくなり、除電効率がアップしていることが分かる。
このように、除電手段に直流を重畳した交流バイアスを供給する電圧印加手段を備え、重畳する直流バイアスは除電前の像担持体の持つ電位と逆極性とすることで、効率的な像担持体上の除電を行なうことができる。また、除電手段に直流を重畳した交流バイアスを供給する電圧印加手段を備え、重畳する直流バイアスは除電前の像担持体上の画像(トナー像)の持つ電位と逆極性とすることで、効率的に像担持体上のトナー像の除電を行なうことができる。
次に、除電電圧印加手段201から除電装置20に対して印加する除電電圧として、像担持体1の帯電極性と同極性の直流バイアスと交流バイアスとを重畳した電圧とすることができる。つまり、除電後の像担持体1上の電位を作像時に像担持体1を帯電する極性と同極性にすることができる。
このように構成することで、作像に必要な帯電を除電とともに行なうことができ、次色の作像に先駆けて行なう帯電を低電流にするか、或いは、帯電を行なわない構成とすることができ、作像プロセス工程の単純化、装置の簡素化が可能になる。
次に、具体的な実験例について説明する。
〔実験例1〕
図1に示した画像形成装置を用いて、図16に示すようなカラーパターンを出力した。パターンはY(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),R(レッド),G(グリーン),B(ブルー)の6つの部分となっており、像担持体1上に付着されるトナーの色順は、Y,M,Cである。RはY+M、GはY+C、BはM+Cであり、各色同じ単色の部分と2次色の部分とで同じ露光エネルギーで書込みを行なった。
ここで、トナー像形成後の除電を行わない場合と、除電を行った場合の実験を行い、用紙に転写後の画像を評価した。実験条件は図19に示している。また、除電条件は、8.5kVpp、2kHzの交流バイアスを印加した。
先ず、除電を行なわない場合には、Rは非常にYに近い色合いになっており、BはほとんどMに近い色合いであり、Gはほとんど黄緑色であった。これらは、一色目のトナーの持つ電荷のために、二色目のトナーの一色目のトナー上へ現像が困難であったためと考えられる。
これに対し、除電を行った場合の画像は、各色とも十分な濃度の画像が得られ良好であった。
〔実験例2〕
実験例1と同様の実験を、除電チャージャに印加するDCオフセット分を変化させて行った。トナーの極性及び像担持体の帯電極性はマイナスであるので、逆極性であるプラス側にDCを+250V以上オフセットすることで、除電に必要な周波数は1/3程度となった。除電後の像担持体1の表面電位は、プラス電位となるが、次の色の作像のためマイナス側に均一に帯電するため、作像上の問題は生じなかった。
〔実験例3〕
実験例1と同様の実験を、除電チャージャに印加するDCオフセット分を変化させて行った。次色の作像に必要な帯電極性はマイナスであるので、DCをー250Vオフセットして実験を行った。除電効率は著しく低下するため、本装置を用いた場合、像担持体線速を1/2とすることで、除電が可能であった。また、別の装置を用いた実験では、より大型な開口幅が広く大電流を流せるチャージャを用いることで、通常の像担持体線速での除電が可能であった。除電後の感光体表面電位は、ほぼ−250Vとなり、次色の作像前に帯電を施さず露光現像をすることで、良好な画像を得ることが可能であった。
なお、以上の各実験では、使用した書き込み装置3のLD露光パワーの設定は、使用した像担持体1の初期帯電電位を−300Vとし、NDフィルタを挿入してエネルギーを37%カットして露光したときとカットしない場合との露光後電位差が5V以内である露光パワーを使用した。同様の実験をNDフィルタで50%カットして行ったところ、除電工程を持たない場合の二次色はまったく再現されないことが確認された。
次に、すでに像担持体上に存在するトナー層の影響を軽減する構成として、露光する像担持体上のトナー層の有無によって露光エネルギーを変化させる構成について説明する。
現像しようとしている画像部が、すでに像担持体1上にトナーが付着している部分である場合の、トナー層上の画像部電位について図18を参照して説明する。図18は、像担持体(感光体)の露光エネルギーに対する露光後表面電位を示したものであり、感光体上にトナー層が付着しているとき、トナー層を通して感光体を露光した場合の画像部(露光された部分)の電位(トナーあり)と、トナー層がない場合の画像部の電位(トナーなし)を示している。なお、このときのトナー層の付着量は一定で、露光前の帯電電位は−300Vとした場合の測定結果である。
この図18から分かるように、トナー層の付着により露光後の電位は低くなる。例えば、画像形成時、露光エネルギーPのレーザーで書き込んだ場合(露光した場合)、トナーのない画像部は−100Vとなり、トナーのある画像部は−140Vとなる。ここで、EH現像条件として搬送バイアス平均値を破線Dで示すと、トナーのない部分とある部分の現像電位差はVdt、Vdnである。EH現像では、この現像電位差に対応したトナーの付着量が得られるため、|Vdt−Vdn|の偏差によって、すでにトナーの付着していた部分かトナーの付着していなかった部分かによって、画像部内で濃度差が生じてしまうことになる。
そこで、この画像形成装置においては、この濃度差を軽減するために、露光エネルギーを変化させる。例えば、図18において、トナーがすでに付着している部分の露光エネルギーを大きくし、露光エネルギーP1とすることで、|Vdt−Vdn|を少なくするか、トナーが付着していない部分の露光エネルギーを小さくし、露光エネルギーP2とすることで、上記の電位差の差|Vdt−Vdn|を小さくすることができる。
つまり、像担持体上に潜像を形成する場合、すでにトナーの付着している部分に潜像を形成するときの露光エネルギーPt、トナーの付着していない部分に潜像を形成するときの露光エネルギーをPnとすると、Pt=Pn×α(α>1)とする、言い換えれば、すでにトナーの付着している部分に潜像を形成するときの露光エネルギーPtをトナーの付着していない部分に潜像を形成するときの露光エネルギーPnよりも相対的に大きくすることにより、トナーが付着している部分へ形成した潜像の画像部電位を、トナーがない部分の潜像の画像部電位に近づけられる。以下では「α」を露光エネルギー調整係数という。
この露光エネルギーの調整量(変化量)の決定処理について図19を参照して説明する。この決定処理は、ある画素の画像形成において、ある色のトナー画像を形成のための露光時、像担持体1上にすでに付着しているトナーの量に相当する値を推定し、ある色のトナー画像形成時の露光量を決定する処理である。
ここでは、ある画素(注目画素)について注目画素の濃さを示すデータとその色の作像時のプロセス条件との情報に基づいて、注目画素一色のトナー付着量を算出し、この算出を各色について行い、注目画素の各色のトナー付着量を合計し、この合計値からトナー層による光減衰率を算出し、この算出結果に基づいて、露光エネルギー調整係数αを算出する。そして、算出した調整係数αを用いて、すでにトナーの付着している部分に潜像を形成するときの露光エネルギーPtを、Pt=Pn×α(α>1)の演算をして算出する。
なお、プロセス条件は、例えば現像装置4のトナー搬送部材22の電極102に印加されるバイアスの平均値等である。プロセスコントロールによって、画像データに対する付着量の特性が保証されている場合、画像データからのみ判断することもできる。
ここで、トナーの付着量と像担持体上表面電位との関係の一例を図20に示している。図20中、白抜きの三角のマークは、露光後の像担持体表面電位を示し、塗りつぶした三角のマークは、露光前の像担持体表面電位である。白抜き三角のマークの実線と破線は、それぞれ同じレーザーパワーで書き込んだときのトナー付着量が異なる場合の結果である。付着量によって、露光後の電位は図20に示されるように異なり、計算された付着量での値を参照することで、表面電位の減衰程度を推定することができる。
そして、ある色の画像形成のための露光時、複数色のトナーがすでに像担持体上に付着している場合、光の減衰率を合計することで、トータルの露光効率を求めることができる。この場合、トナー付着量に対する、像担持体表面電位の減衰の程度は、トナーの種類、像担持体である感光体の種類、書き込み光波長等で異なるがほぼ同じと推定される場合には、上述したように、各色の付着量を算出して、各色の付着量を合計して全トナーの付着量を求め、この付着量の合計に基づいてトナー層による光減衰率を算出する方が容易である。
このように露光エネルギーを変化させる書込み装置3について図21の機能ブロック図を参照して説明する。
書込み装置3は、各画素の濃さを示すデータを形成するデータ形成部301と、現像条件を記憶した現像条件記憶部302と、一色目(Y)、二色目(M)、三色目(C)、四色目(K)の各露光エネルギーを決定するY、M、C、K露光エネルギー決定部311Y、311M、311C、311Kと、現像条件記憶部302からの現像条件とY露光エネルギー決定部311Yからの情報に基づいてYトナーの付着トナー量を推定する付着トナー量推定部321Yと、同様にMトナーの付着トナー量を推定する付着トナー量推定部321Mと、同様にCトナーの付着トナー量を推定する付着トナー量推定部321Cと、各露光エネルギー決定部311で決定された露光エネルギーでレーザー光を発生するLD等を駆動する書込みドライバ315とを備えている。
ここで、二色目以降のM、C、K露光エネルギー決定部311Y、311M、311C、311Kは、データ形成部301で形成されたデータと、前段の色の付着トナー量推定部321で推定された付着トナー量に基づいて露光エネルギー調整係数αを算出して当該色の露光エネルギーを決定し、書込みドライバ315に出力する。
また、書き込み装置3におけるレーザーの露光エネルギー調整は、例えばレーザーの発光強度自体を変化させるパワー変調と、レーザーの発光時間を変化させるパルス幅変調のいずれでも良い。いずれの変調方法であっても、各画素に照射されたエネルギーの積分値と像担持体表面電位との間には、ほぼ同様の関係が成り立つ。信号のレベルとしては、各画素256程度の変調が可能であるが、露光エネルギー調整として有効な範囲の値をあらかじめ決定しておき調整に使用する。
パルス幅変調は、一画素をいくつかのレベルで露光する多値書き込みにおいて、一般的に用いられているもので、汎用の変調回路が使用でき安価である。一方、パワー変調は、パルス幅変調が点灯時間を調整するのに対して、書き込み時のパワーの強弱をつけるもので、位置画素の大きさ、ビーム径等の関係に寄らず確実に、どの部分でも露光エネルギーを調節することが可能である。なお、パルス幅変調、パワー変調を組み合わせた変調も可能である。
上述したように、すでに像担持体に付着しているトナーの画像データと画像形成時の作像条件(プロセス条件)に基づいてトナー付着量に相当する値を得て、このトナー付着量に相当する値から調整係数αを算出し、露光エネルギーを変化させることで、正確な露光エネルギーの調整を行なうことができる。
これに限らず、例えば、各色のトナー付着の有無よってのみ場合分けし、この色数をトナー付着量に相当する値とすることもできる。
具体的に説明すると、この画像形成装置とは逆順で、像担持体上に付着させるトナーの色順をK,C,M,Yとし、最後のY画像作成時の露光について説明する。Y画像作成のための露光時、各画素に対応する像担持体上は、BK,C,Mが一色のみ付着している場合、KとM,KとC,CとMのいずれか二色が付着している場合、いずれの色も付着していない場合の7通りがある。三色が付着している上に四色目を重ねることは、実際の画像形成装置にあってはUCR等付着量を制限するアルゴリズムを用いることから、発生しにくいとして、ここでは除外する。
この場合、画像の中間調処理が完全に面積階調で行われるとすれば、前記7通りの付着(付着した色数と色の種類)に対応する露光エネルギー調整係数αの値をあらかじめ用意しておけば、露光エネルギーの調整を容易に行なうことができる。
さらに、色による付着量の違いが大きくない場合、露光しようとする画素にすでに付着しているトナーの色数で、露光エネルギー調整係数αを定めることもでき、これによれば、露光エネルギー調整係数αの算出が簡単になり、露光エネルギーの調整を容易に行なうことができる。
ところで、トナー層上から露光する場合の露光エネルギーとトナー層上画像部電位の関係は、図20に示したように、露光エネルギーを増加させていっても、トナー層が存在しない場合の感光体画像部電位ほどにはならず、十分大きい露光エネルギーで露光した場合でも画像部電位はVtrとなる。
したがって、露光エネルギーの調整は画像部電位がVtrとなる以前の領域で行う必要がある。この画像部電位Vtrをさらに減衰させるためには、前述したように、トナー層の除電を行うことが有効である。
次に、具体的な実験例について説明する。
〔実験例4〕
図1に示した画像形成装置を用いて、図16に示すようなカラーパターンを出力した。パターンはY(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),R(レッド),G(グリーン),B(ブルー)の6つの部分となっており、像担持体1上に付着されるトナーの色順は、Y,M,Cである。RはY+M、GはY+C、BはM+Cであり、各色同じ単色の部分と2次色の部分とで同じ露光エネルギーで書込みを行なった。
実験条件は、初期帯電電位はすべて−250V、一色目のレーザー露光エネルギーをPnとしたときの、2色目、3色目の露光エネルギーをPt2、Pt3とし、Pt2=Pn×α2、Pt3=Pn×α3とし、調整係数α2、α3を図22に示している。
この結果について説明すると、条件1の下では、2次色はほとんど再現されておらず、RはほとんどY、Gは黄緑、Bは赤紫色であり、像担持体上のトナーの上へのトナーの付着がほとんど行われていないことが分かった。しかも、KはRを再現しようとした領域と同じ色味であった。
これに対し、条件2のように露光エネルギー調整を行い、トナー上からの露光時、露光エネルギーを強めて行ったところ7色の再現が可能であった。また、除電チャージャによって各色トナー層形成後にトナー層の除電を施した条件3の場合には、露光エネルギーの調整値α2、α3は、除電がない条件2の場合と比較し小さい値で十分な色再現が可能であった。
レーザーの露光エネルギー調整について、レーザーの発光強度自体を変化させるパワー変調と、レーザーの発光時間を変化させるパルス幅変調との両者を用い実現することができる。どちらの方法を使用した場合でも、各画素に照射されたエネルギーの積分値と感光体表面電位との間には、ほぼ同様の関係が成り立つ。信号のレベルとしては、各画素256程度の変調が可能であるが、露光エネルギー調整として有効な範囲の値をあらかじめ決定しておき調整に使用する。パルス幅変調は、一画素をいくつかのレベルで露光する多値書き込みにおいて、一般的に用いられているもので、汎用の変調回路が使用でき安価である。パワー変調は、パルス幅変調が点灯時間を調整するのに対して、書き込み時のパワーの強弱をつけるもので、位置画素の大きさ、ビーム径等の関係に寄らず確実に、どの部分でも露光エネルギーを調節することが可能である。パルス幅変調、パワー変調を組み合わせた変調も可能である。
このように、この画像形成装置においては、像担持体1が1回転するのみでカラー画像を形成でき、また像担持体上でトナー像を重ねるため中間転写体も不要であるので、装置の小型化が可能であるとともに、像担持体上のトナーが下流の現像によって乱されたり、下流の現像器に回収されたりすることがなくなり、混色がなく良好な画像が安定して得ることができる。また、出力された画像は、各色の現像後に除電を行なうことにより、あるいは、露光エネルギーを調整した露光を行なうことによって、すでにトナーが付着している部分とトナーが付着していない部分とでの濃度の差はなく、均一な画像を得られ、画像品質が向上する。
言い換えれば、1つの像担持体上に、1色毎に、帯電、露光、現像を行なって、像担持体の1回転の間に異なる色のトナー像を順次重ねて画像を形成するとき、所定の間隔で並べて配置された複数の電極に多相の電圧が印加されることで形成される搬送電界によって像担持体との対向域にトナーを搬送するトナー搬送部材の電極に対し、平均値電位が潜像の画像部電位と非画像部電位との間となる電圧を印加して、現像を行なう構成とすることにより、像担持体1が1回転するのみでカラー画像を形成でき、また像担持体上でトナー像を重ねるため中間転写体も不要であるので、装置の小型化が可能であるとともに、像担持体上のトナーが下流の現像によって乱されたり、下流の現像器に回収されたりすることがなくなり、混色がなく良好な画像が安定して得ることができる。また、出力された画像は、各色の現像後に除電を行なうことにより、3色目の画像中に、マゼンタ、イエローに付着がある部分とない部分とでの濃度の差はなく、均一な画像を得られ、画像品質が向上する。
次に、本発明に係る画像形成装置の第2実施形態について図23を参照して説明する。
この画像形成装置は、第1実施形態の画像形成装置における2色目以降の帯電装置2M、2C、2Kをなくし、1つの帯電手段である帯電装置2を備えた構成としたものである。この画像形成装置においては、前述したように、除電装置20に対して電圧印加手段201から印加する除電電圧として、像担持体1の帯電極性と同極性の直流バイアスと交流バイアスとを重畳した電圧とし、除電後の像担持体1上の電位を作像時に像担持体1を帯電する極性と同極性に帯電させる構成としている。なお、この画像形成装置においても、前述した書込み装置3による露光エネルギーを変化させる構成を採用し、除電と露光エネルギーの調整を併用している。
このように構成することで、作像に必要な帯電を除電とともに行なうことができ、作像プロセス工程の単純化、装置の簡素化が可能になる。
つまり、除電は像担持体を帯電させる帯電手段に、像担持体を帯電させる極性と同極性の直流バイアスと交流バイアスが重畳された電圧を印加して行ない、除電後の画像形成のための帯電を行なわなようにしたものであり、これによって、先行するトナー像の電荷の影響を低減して良好な画像を得ることができるとともに、作像に必要な帯電と除電を1つの除電装置(又は帯電装置)によって行なうことができ、作像プロセス工程の単純化、装置の簡素化が可能になる。
以上の実施形態においては、トナー搬送部材22の電極102に印加する電圧印加手段104の電圧の平均値電位を、画像部電位と非画像部電位の間とする例について説明しているが、電圧印加手段104から印加するパルス状電圧のうちのトナー搬送部材22からトナーが反発飛翔する電位を、画像部電位と非画像部電位の間とすることもできる。
すなわち、前述したように、図11に示すホッピング電圧パターンの電圧として、20V〜−80Vで遷移するパルス状電圧を用いた場合、画像部の電位を約0V、非画像部の電位を−110Vにしたとき、パルス状電圧のローレベルの電位(負帯電トナーを反発飛翔させる電位)が潜像の画像部電位と非画像部電位との間にあるので、同様に、画像部に対してはトナーが像担持体1側に向かい、非画像部に対してはトナーが像担持体1側に向わないことが実験によって確認された。
したがって、トナー搬送部材の電極に対して、パルス状波形を含み、パルス状電圧のうちのトナーを反発飛翔させる電位を、潜像の画像部の電位と非画像部の電位との間の電位にした電圧を印加することによっても、画像部にトナーを付着させ、非画像部へのトナーの付着を防止し、高品質の現像を行なうことができる。そして、前述した各実施形態で説明したように露光エネルギーをトナーが付着しているか否かによって変化させることで、より高い品質で画像を形成することができる。