近年、2.4GHz帯または5GHz帯を用いた高速無線アクセスシステムとして、IEEE802.11g規格、IEEE802.11a規格などの普及が目覚しい。これらのシステムでは、最大で54Mppsの伝送速度を実現しているが、無線LANの普及に伴い更なる伝送速度の高速化が求められている。
そのための技術としては、MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)技術が有力である。このMIMO技術とは、送信局側において複数の送信アンテナから同一チャネル上で異なる独立な信号を送信し、受信局側において同じく複数のアンテナを用いて信号を受信し、各送信アンテナ/受信アンテナ間の伝達関数行列を求め、この行列を用いて送信局側で各アンテナから送信した独立な信号を推定し、データを再生するものである。
ここで、N本の送信アンテナを用いてN系統の信号を送信し、M本のアンテナを用いて信号を受信する場合を考える。まず、送受信局の各アンテナ間にはM×N個の伝送のパスが存在し、第i送信アンテナから送信され、第j受信アンテナで受信される場合の伝達関数をhj,iとし、これを第(j,i)成分とするM行N列の行列をHと表記する。さらに、第i送信アンテナからの送信信号をtiとし、(t1,t2,t3,…,tN)を成分とする列ベクトルをT、第j受信アンテナでの受信信号をrjとし、(rl,r2,r3,…,rM)を成分とする列ベクトルをR、第j受信アンテナの熱雑音をnjとし(n1,n2,n3,…,nM)を成分とする列ベクトルをnと表記する。
この場合、以下の関係式が成り立つ。
したがって、受信局側で受信した信号Rを基に、送信信号Tを推定する技術が求められている。このMIMO技術の最も基本的なものとしては、一般にZF(Zero Forcing)法と呼ばれる方法が挙げられる(例えば非特許文献1参照)。
ここでは、上記数式(1)に対し、伝達関数行列の逆行列H−1を求め、これを式の両辺の左から掛け合わせる処理を行う。この結果、以下の式が得られる。
つまり、各受信アンテナで受信した信号を合成し、所望の送信アンテナ以外からの信号による干渉を除去する処理を行うと、実際の送信信号ベクトルTに微小な熱雑音項H−1×nが加わった信号点が得られることになる。ここで、送信信号として、BPSK、QPSK、16QAM、64QAM等の多値変調を施した信号を用いる場合には、送信信号として取りうる信号点は不連続である。したがって、H−1×Rとユークリッド距離が最も近い点を送信コンスタレーション上で検索する硬判定処理を行い、真の送信信号を推定する。
上述したZF法においては、熱雑音項H−1×nが十分に小さく、かつ送信アンテナ毎の成分が均等であると仮定できる場合には良好な特性が期待できる。しかし、一般には、この仮定は成り立たず、ある伝達関数行列に対して送信アンテナ毎の熱雑音H−1×nの絶対値の期待値は異なる。さらには、もし伝達関数行列Hが逆行列を持たない行列(ないしはその行列式が非常に小さい)の場合には、送信信号の推定が非常に不安定になる。このような状況においては、受信特性が大幅に劣化する可能性がある。このような問題点を解決するための方法として、最も特性的に優れた方法がMLD(Most Likelihood Detection)法と呼ばれる方式である(例えば非特許文献2参照)。
まず、各アンテナからの送信信号の変調方式が決まると、1つのアンテナから送信される信号が取り得る信号点の数(以降、Nmaxと呼ぶ)が決まる。N本のアンテナ全体で送信される信号ベクトルのバリエーションはNmax N種類となる。MLD法では、送信信号としてTxの取り得る全ての候補(全部でNmax N種)に対して、その信号が送信された場合の受信信号の予測を行い、それらの中で最も実際の受信信号に近いものを推定精度の最も高い信号点として選択する。つまり、Nmax N個中の第k番目の送信信号候補をT[k]で表したとすると、次の数式(3)で定義されるユークリッド距離Eを最小にするkの値を選択する。
なお、行列Mに対してMHは、行列Mのエルミート共役である行列を指す。以上の処理により、如何なる行列Hに対しても、安定した受信処理が可能であり、ZF法に対して特性が大幅に改善する。
ここで、図7は、従来技術における送信局の構成を示すブロック図である。図において、100はデータ分割回路、101−1〜101−4はプリアンブル付与回路、102−1〜102−4は変調回路、103−1〜103−4は無線部、104−1〜104−4は送信アンテナ、105は変調部を示す。なお、一例として、送信局が4本の送信アンテナを用いて4系統のデータを送信する場合を例にとって説明する。
データが入力されると、データ分割回路100はデータを4系統に分離する。例えば、第1系統のデータはプリアンブル付与回路101−1に入力され、プリアンブル信号が付与された状態で変調回路(Ch1)102−1に入力される。変調回路(Ch1)102−1では所定の変調を実施し、変調された信号は無線部103−1にて無線周波数に変換され、送信アンテナ104−1より送信される。同様に、第2系統のデータは変調回路(Ch2)101−2〜送信アンテナ104−2、第3系統のデータは変調回路(Ch3)101−3〜送信アンテナ104−3、第4系統のデータは変調回路(Ch4)101−4〜送信アンテナ104−4を経由して、それぞれ個別に送信される。なお、後の説明のためにプリアンブル付与回路101−1〜101−4、変調回路102−1〜102−4を含む点線で囲った領域を変調部と呼ぶ。
図8は、従来技術におけるMLD法を用いた受信局の構成を示すブロック図である。図において、111−1〜111−4は受信アンテナ、112−1〜112−4は無線部、113はチャネル推定回路、114は受信信号管理回路、115は伝達関数行列管理回路、116はレプリカ信号生成回路、117は送信信号生成回路、118は、幾何学的距離演算回路、119は選択回路、120はデータ合成回路、121は変調部を示す。なお、一例として、受信局が4本の受信アンテナを用いて4系統のデータを受信する場合を例にとって説明する。
第1の受信アンテナ111−1から第4の受信アンテナ111−4は、それぞれ個別に受信信号を受信する。無線部112−1〜112−4を経由して、受信した信号はチャネル推定回路113に入力される。送信側で付与して所定のプリアンブル信号の受信状況から、チャネル推定回路113にて各送信アンテナと受信アンテナ間の伝達関数を取得する。取得された各伝達関数の情報hj,iは、伝達関数行列管理回路115にて伝達関数行列Hとして管理される。
プリアンブル信号に後続するデータ信号は、1シンボル分ずつ受信信号管理回路114に入力される。受信信号管理回路114では、各アンテナの受信信号(r1,r2,r3,r4)を成分とした受信信号ベクトルRxとして一旦管理する。一方、送信信号生成回路117では、送信アンテナから出力され得る全ての信号パターンとして、Nmax N種類の送信信号の候補{T[k]}(1≦k≦Nmax N)を生成する。
レプリカ信号生成回路116では、送信信号生成回路117から入力される信号T[k]と伝達関数行列管理回路115で管理された伝達関数行列Hとの積、H×T[k]を求め、幾何学的距離演算回路118にて、この結果と受信信号管理回路114で管理された受信信号ベクトルRxとのユークリッド距離を算出する。該ユークリッド距離演算処理は、全てのkの値に対して実施(合計Nmax N回)される。選択回路119では、これらの中でユークリッド距離が最短のものを選択し、最も推定精度の高い送信信号と判定する。
これらのデータは、複数シンボルに渡って連続的に処理されるが、一連のデータを受信後、データ合成回路120にてデータとして再構成されて出力される。なお、図7と同様、後の説明のためにチャネル推定回路113、受信信号管理回路114、伝達関数行列管理回路115、レプリカ信号生成回路116、送信信号生成回路117、幾何学的距離演算回路118、選択回路119を含む点線で囲った領域を復調部121と呼ぶ。
次に、図9は、従来技術におけるOFDM変調方式を用いた送信局の構成を示すブロック図である。図において、200はデータ分割回路、103−1〜103−4は無線部、104−1〜104−4は送信アンテナ、201−1〜201−Kは変調部、202−1〜202−3はIFFT回路、203−1〜203−3はGI挿入回路を示す。なお、一例として、送信局が4本の送信アンテナを用いて4系統のデータを送信する場合を例にとって説明する。
図7においては、シングルキャリアの場合を想定して説明を行ったため、変調部105は単一であったが、OFDM変調を行う場合には、サブキャリア毎に変調部105に相当するものを備えることになる。例えば、K本のサブキャリアを用いてデータ伝送を行う場合には、#1から#KまでのK面の変調部201−1〜201−Kを備えることになる。
データが入力されると、データ分割回路200は、データを4×K系統に分離する。つまり、サブキャリア毎に4系統のデータ系列に分割する。これらは、サブキャリア毎に変調部201−1〜201−Kに入力され、図7に示した処理を各変調部201−1〜201−K内で行う。出力される変調信号は、信号系列毎にIFFT回路202−1〜202−4に入力される。ここでは、周波数軸上の信号を時間軸上の信号に変換する。変換された信号は、GI挿入回路203−1〜203−4にて1シンボル長の信号の一部(末尾)をコピーし、ガードインターバルとしてOFDMシンボルの先頭に付与する。付与された信号は、信号系列毎に無線部103−1〜103−4にて無線周波数に変換され、送信アンテナ104−1〜104−4より送信される。
次に、図10は、従来技術におけるOFDM変調方式を用いた受信局の構成を示すブロック図である。図において、111−1〜111−4は受信アンテナ、112−1〜112−4は無線部、210−1〜210−4はGI除去回路、211−1〜211−4はFFT回路、212−1〜212−Kは復調部、213はデータ合成回路を示す。なお、一の例として、受信局が4本の受信アンテナを用いて4系統のデータを受信する場合を例にとって説明する。
図8においては、シングルキャリアの場合を想定して説明を行ったため、復調部121は単一であったが、OFDM変調を行う場合には、サブキャリア毎に変調部121に相当するものを備えることになる。例えば、K本のサブキャリアを用いてデータ伝送を行う場合には、#1から♯KまでのK面の変調部212−1〜212−Kを備えることになる。
第1の受信アンテナ111−1から第4の受信アンテナ111−4は、それぞれ個別に受信信号を受信する。無線部112−1〜112−4を経由して、受信した信号は、系列毎にGI除去回路210−1〜210−4に入力され、OFDMシンボル毎にガードインターバルが除去される。除去された信号は、FFT回路211−1〜211−4にて、時間軸上の信号から周波数軸上の信号に変換される。ここで、サブキャリア毎に分離された信号は、サブキャリア毎に復調部212−1〜212−Kにて、図8に示した処理が行われる。ここで、OFDMシンボル単位、かつサブキャリア単位で取得された送信信号の推定結果は、データ合成回路213にて合成され、データとして再構成されて出力される。なお、実際の回路においては、各サブキャリアにまたがって畳み込み符号化・ビタビ復号が実装されるなど、複数サブキャリアにまたがった誤り訂正処理などが行われる場合もあるが、基本的な構成に変わりはない。
次に、図11は、従来技術における送信局の送信処理を示すフローチャートである。データが入力されると(S100)、送信局では、N系統のデータ系列に分割され(S101)、これらの信号には、それぞれプリアンブル信号が付与され(S102)、これに系列毎に個別に変調処理が行われる(S103)。変調された信号は、無線部にて無線周波数に変換されて送信される(S104)。
次に、図12は、従来技術におけるMLD法を用いた受信局の受信処理を示すフローチャートである。受信局では、無線パケットを受信すると(S110)、プリアンブル信号を検出し(S111)、チャネル推定を実施する(S112)。ここでは、各送信アンテナおよび受信アンテナ間の伝達関数を全て取得する。プリアンブル信号に後続して受信される信号は、1シンボル毎に各受信アンテナでの受信信号rjを成分として持つ受信信号ベクトルRとして管理される(S113)。
これに対し、送信アンテナから出力され得る全ての信号パターンとして、Nmax N種類の送信信号の候補{T[k]}(1≦k≦Nmax N)を生成し、これと伝達関数行列Hとの積H×T[k]を計算し(S115)、受信信号Rとのユークリッド距離を計算する(S116)。この処理S114〜S116には、実際には、全体でNmax N回の処理を行うことを含めて記述した。つまり、処理S114〜S116をNmax N個並列的に処理したり、あるいはS114→S115→S116→S114→S115→S116→S114→S115→S116→…とNmax N回直列的に処理しても、あるいはその組み合わせであっても構わない。
上述したMLD法の最大の問題点は、ユークリッド距離を求める演算処理をNmax N回に渡って実施しなければならない点である。例えば、変調方式として64QAMを用いる場合、Nmax=64となる。この例を用いると、N=2の場合でユークリッド距離演算回数は642(=4096)回、N=3の場合で643(=262144)回、N=4の場合で644(=16777216)回と指数関数的に発散する。
これを回路として実現する際には、図12における処理S114〜S116を順次直列的に実施する方法と、並列的、つまり同時に処理する方法がある。しかし、直列的に行う場合には、1シンボルの送信データを確定するのに、Nmax N回のループ処理を行う必要があり、膨大な処理遅延がかかってしまう。一方、並列的に実施する場合でも、同様の回路をNmax N個も実装しなければならず、Nが3以上になると回路規模が爆発的に増大するため、LSIへの実装は全く不可能となる。その中間的な組み合わせも考えられるが、回路規模と演算時間との双方を両立することは困難である。全ての問題点は、演算の処理量がNmax Nに比例した値となることに起因し、この演算量を抑えることが課題となっている。
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、MIMO技術を用いた無線通信を行う際に、良好な特性を実現することができ、かつ現実的な回路規模および演算量にて容易に実現することができる無線通信装置および無線通信方法を提供することにある。
上述した課題を解決するために、M≧3となる整数M、N≧3となる整数N、1以上でかつM1+N2≦MおよびM2+N1≦Mおよび(N1+N2)=Nとなる整数N1、N2、M1、M2に対し、同一周波数チャネル上で複数の信号系列を空間上で多重化して送信するN本以上の送信アンテナを備えた送信局と、送信された無線信号を受信し、前記複数の信号系列に分離して受信処理を行うM本以上の受信アンテナを備えた受信局とにより構成され、前記送信局は、入力されたユーザデータをN系統に分割する手段と、前記のN系統に分割されたデータに個別の既知のパターンの信号を付与してN系統の第一の信号系列を生成する手段と、N本の前記送信アンテナを用いて同一周波数にて同時に前記信号系列を重畳して送信する手段とを備えた無線通信システムにおける前記受信局側で用いる無線通信装置であって、前記受信局は、M本の前記受信アンテナを用いて個別に無線信号を受信する受信手段と、受信信号に付与された既知のパターンの信号を参照信号として前記送信アンテナのうちの第iアンテナと前記受信アンテナのうちの第jアンテナとの間のM×N組の伝達関数hj,iを取得する第1の取得手段と、第i送信アンテナと第j受信アンテナとの間の伝達関数hj,iを第(j,i)成分とするM行N列の行列、すなわち伝達関数行列Hおよび第j受信アンテナの受信信号を第j成分とするM行の列ベクトルRおよびN個の成分を有するN行の列ベクトルTに対し、前記伝達関数行列Hと前記列ベクトルTとの積であるH・Tに対してR=H・TのTに対する解または近似解として1次推定列ベクトルTzfを取得する送信ベクトル第1次推定手段と、前記伝達関数行列Hの要素を元にM行(M1+M2)列の変換行列Zを生成する変換行列生成手段と、前記変換行列Zのエルミート共役の行列ZHに対して前記伝達関数行列Hの積、すなわち(M1+M2)行(N1+N2)列の行列ZH・Hを算出する算出手段と、該行列ZH・Hから1≦j≦M1かつ1≦i≦N1である第(j,i)成分より構成されるM1行N1列の第1部分行列H1と、M1+1≦j≦M1+M2かつN1+1≦i≦N1+N2である第(j,i)成分を抜き出して構成されるM2行N2列の第2部分行列H2とを取得する第2の取得手段と、M個の受信信号を成分とするM行の列ベクトルRと前記変換行列のエルミート共役の行列ZHとの積、すなわち(M1+M2)行の列ベクトルZH・Rを取得する第3の取得手段と、該列ベクトルZH・Rの第1成分から第M1成分までによって構成されるM1行の第1部分ベクトルをR1とし、かつ第M1+1成分から第M1+M2成分までを抜き出して構成されるM2行の第2部分ベクトルをR2としてR1およびR2を取得する第4の取得手段と、1系列当りの送信信号としてNmax種類(1<Nmax、Nmaxは整数)の信号点の選択肢の中からその全てないしはその一部として前記1次推定列ベクトルTzfの第k(1≦k≦N、kは整数)成分の近傍に位置するn[k]点(1≦n[k]≦Nmax、Nmaxは整数)の送信信号を第k成分の送信信号の候補として選択する選択手段と、第1から第N1番の各信号系列の送信信号を各成分として持つN1行の第1部分送信ベクトルをT1とした場合、該第1部分送信ベクトルT1の候補として、第1から第N1番の各信号系列の送信信号の各候補として選択された前記送信信号の候補をそれぞれN1個の各成分として持つ(n[1]×n[2]×…×n[N1])個のN1行の第1送信ベクトル候補群{T1 [k1]}(k1は識別番号)を取得する第5の取得手段と、第N1+1から第N番の各信号系列の送信信号を各成分として持つN2行の第2部分送信ベクトルをT2とした場合、該第2部分送信ベクトルT2の候補として、第N1+1から第N番の各信号系列の送信信号の各候補として選択された前記送信信号の候補をそれぞれN2個の各成分として持つ(n(N1+1)×n[N1+2]×…×n[N]個のN2行の第2送信ベクトル候補群{T2 [k2]}(k2は識別番号)を取得する第6の取得手段と、前記第1送信ベクトル候補群{T1 [k1]}のそれぞれに対し、R1とH1・T1 [k1]との幾何学的な距離を求める第1の幾何学的距離算出手段と、1≦K1<(n[1]×n[2]×…×n[N1])である整数K1に対し、前記第1送信ベクトル候補群の中で該幾何学的な距離がm1番目(1≦m1≦K1、m1は整数)に小さい候補をT’1 [m1]と表記した場合に前記第1送信ベクトル候補群の部分集合としてK1個のベクトルで構成される限定第1送信ベクトル候補群{T’1 [m1]}を取得する第7の取得手段と、前記第2送信ベクトル候補群{T2 [k2]}のそれぞれに対し、R2とH2・T2 [k2]との幾何学的な距離を求める第2の幾何学的距離算出手段と、1≦K2<(n[N1+1]×n[N1+2]×…×n[N])である整数K2に対し、前記第2送信ベクトル候補群の中で該幾何学的な距離がm2番目(1≦m2≦K2、m2は整数)に小さい候補をT’2 [m2]と表記した場合に前記第2送信ベクトル候補群の部分集合としてK2個のベクトルで構成される限定第2送信ベクトル候補群{T’2 [m2]}を取得する第8の取得手段と、前記限定第1送信ベクトル候補群{T’1 [m1]}の1つを第1から第N1番の各信号系列の送信信号を各成分として持ち、かつ前記限定第2送信ベクトル候補群{T’2 [m2]}の1つを第N1+1から第N番の各信号系列の送信信号を各成分として持つ合計K1×K2個のN行のベクトルを最終送信ベクトル候補群{Tfinal [k3]}(k3は識別番号)を取得する第9の取得手段と、前記最終送信ベクトル候補群{Tfinal [k3]}のそれぞれに対し、前記伝達関数行列Hおよび前記受信ベクトルRを用いてRとH・Tfinal [k3]との幾何学的な距離を求める第3の幾何学的距離算出手段と、該幾何学的な距離を最小とする送信ベクトルをTbestとして取得する第10の取得手段と、該送信ベクトルTbestの各成分を各信号系列の送信信号の推定値とし、これらを合成することにより前記送信局におけるユーザデータを再生する再生手段とを備えたことを特徴とする。
本発明は、上記の発明において、前記受信局は、前記伝達関数行列Hの第i列を抜き出して得られるM行の列ベクトルhiを用いて前記伝達関数行列Hを(h[1],h[2],…,h[N])と表記し、さらに前記変換行列Zの第i列を抜き出して得られるM行の列ベクトルziを用いてM行(M1+M2)列の行列Zを(z[1],z[2],…,z[M1+M2])と表記した場合、M次元の複素空間において、N2個の列ベクトル群h[N1+1],h[N1+2],…,h[N1+N2]の全てに対して直交する空間に属し、かつそれぞれが互いに直交すると共に、絶対値の等しいM1個の列ベクトル群z[1],z[2],…,z[M1]を取得する第11の取得手段と、N1個の列ベクトル群h[1],h[2],…,h[N1]の全てに対して直交する空間に属し、かつそれぞれが互いに直交すると共に、絶対値の等しいM2個の列ベクトル群z[M1+1],z[M1+2],…,z[M1+M2]を取得する第12の取得手段とを備えたことを特徴とする。
本発明は、上記の発明において、前記受信局は、前記伝達関数行列Hを元に受信される信号系列毎の信号対雑音比または信号対干渉雑音比を推定する推定手段を備え、さらに、前記第1の取得手段は、前記推定手段で取得した受信される信号系列毎の信号対雑音比または信号対干渉雑音比に応じて前記伝達関数における送信アンテナ番号の番号付け順序を変更する第1のアンテナ番号変換手段を備え、さらに、前記第10の取得手段は、取得される送信ベクトルTbestの送信アンテナ番号の番号付けを、第1のアンテナ番号変換手段にて実施した入れ替え処理の逆処理により、元々のアンテナ番号に戻す第2のアンテナ番号変換手段を備えたことを特徴とする。
本発明は、上記の発明において、前記受信局は、前記伝達関数行列Hを元に受信される信号系列毎の総受信電力、信号対雑音比または信号対干渉雑音比のいずれかを推定する推定手段と、前記n[1],n[2],n[3],…,n[N]の値を信号系列毎の総受信電力または信号対雑音比または信号対干渉雑音比の推定値に応じて決定する決定手段とを備えたことを特徴とする。
本発明は、上記の発明において、前記第1の幾何学的距離算出手段は、前記幾何学的な距離としてユークリッド距離を用いることを特徴とする。
本発明は、上記の発明において、前記第1の幾何学的距離算出手段は、幾何学的な距離として、各成分の実部の絶対値および虚数部の絶対値の和を全ての信号系列に対して加算した値を用いることを特徴とする。
本発明は、上記の発明において、前記送信ベクトル第1次推定手段は、前記伝達関数行列Hと前記列ベクトルTとの積であるH・Tに対してR=H・TのTに対する解または近似解として前記1次推定列ベクトルTzfを取得するために、前記第1部分行列H1および第1部分ベクトルR1および第1送信ベクトルT1に対するR1=H1・T1の解または近似解として前記1次推定列ベクトルTzfの第1から第N1成分を取得する第16の取得手段と、前記第2部分行列H2および第2部分ベクトルR2および第2送信ベクトルT2に対するR2=H2・T2の解または近似解として前記1次推定列ベクトルTzfの第N1+1から第N成分を取得する第17の取得手段とを備えたことを特徴とする。
本発明は、上記の発明において、前記送信ベクトル第1次推定手段は、前記伝達関数行列Hと前記列ベクトルTとの積であるH・Tに対してR=H・TのTに対する解または近似解として前記1次推定列ベクトルTzfを取得するために、前記伝達関数行列Hの逆行列H−1を前記列ベクトルRに作用させたベクトル積、すなわちH−1・Rにより取得する第18の取得手段を備えたことを特徴とする。
本発明は、上記の発明において、前記送信ベクトル第1次推定手段は、前記伝達関数行列Hと前記列ベクトルTとの積であるH・Tに対してR=H・TのTに対する解または近似解として前記1次推定列ベクトルTzfを取得するために、前記伝達関数行列Hのエルミート共役行列HHおよび該伝達関数行列Hのベクトル積に対する逆行列、すなわち(HH・H)−1と、前記行列HHおよび前記列ベクトルRのベクトル積、すなわち(HH・H)−1・HH・Rにより取得する第19の取得手段を備えたことを特徴とする。
本発明は、上記の発明において、前記N系統の既知のパターンの信号の第i信号系列における第ks(ksは1以上の整数)シンボルの送信信号をP(i,ks)および第j受信アンテナで受信される第ksシンボルの受信信号をr(j,ks)とし、かつP(i,ks)を第i成分として持つN行の列ベクトルをP(ks)、r(j、ks)を第j成分として持つM行の列ベクトルをr(ks)と表現した場合において、前記送信ベクトル第1次推定手段は、前記既知のパターンの信号を受信した際に、前記既知のパターンの信号の領域においてM行N列の行列Fに関して、ベクトルF×r(ks)−P(ks)および該ベクトルのエルミート共役のベクトル(F×r(ks)−P(ks))Hのベクトル積、すなわち(F×r(ks)−P(ks))H×(F×r(ks)−P(ks))で与えられる物理量を最小とするように前記行列Fを算出する算出手段と、該行列Fと前記列ベクトルRのベクトル積、すなわちF・Rにより前記1次推定列ベクトルTzfを取得する第20の取得手段とを備えたことを特徴とする。
本発明は、上記の発明において、前記送信局および受信局は、直交周波数分割多重変調方式を用いて無線通信を行い、サブキャリア毎に分離後の受信信号に対して、個別に請求項1ないし請求項10に記載の処理を実施することを特徴とする。
上述した課題を解決するために、本発明は、M≧3となる整数M、N≧3となる整数N、1以上でかつM1+N2≦MおよびM2+N1≦Mおよび(N1+N2)=Nとなる整数N1、N2、M1、M2に対し、同一周波数チャネル上で複数の信号系列を空間上で多重化して送信するN本以上の送信アンテナを備えた送信局と、送信された無線信号を受信し、前記複数の信号系列に分離して受信処理を行うM本以上の受信アンテナを備えた受信局とにより構成され、前記送信局は、入力されたユーザデータをN系統に分割するステップと、前記のN系統に分割されたデータに個別の既知のパターンの信号を付与してN系統の第一の信号系列を生成するステップと、N本の前記送信アンテナを用いて同一周波数にて同時に前記信号系列を重畳して送信するステップとを実施する無線通信システムにおける前記受信局側で用いる無線通信方法であって、前記受信局は、M本の前記受信アンテナを用いて個別に無線信号を受信するステップと、受信信号に付与された既知のパターンの信号を参照信号として前記送信アンテナのうちの第iアンテナと前記受信アンテナのうちの第jアンテナとの間のM×N組の伝達関数hj,iを取得するステップと、第i送信アンテナと第j受信アンテナとの間の伝達関数hj,iを第(j,i)成分とするM行N列の行列、すなわち伝達関数行列Hおよび第j受信アンテナの受信信号を第j成分とするM行の列ベクトルRおよびN個の成分を有するN行の列ベクトルTに対し、前記伝達関数行列Hと前記列ベクトルTとの積であるH・Tに対してR=H・TのTに対する解または近似解として1次推定列ベクトルTzfを取得する送信ベクトル第1次推定ステップと、前記伝達関数行列Hの要素を元にM行(M1+M2)列の変換行列Zを生成するステップと、前記変換行列Zのエルミート共役の行列ZHに対して前記伝達関数行列Hの積、すなわち(M1+M2)行(N1+N2)列の行列ZH・Hを算出するステップと、該行列ZH・Hから1≦j≦M1かつ1≦i≦N1である第(j,i)成分より構成されるM1行N1列の第1部分行列H1と、M1+1≦j≦M1+M2かつN1+1≦i≦N1+N2である第(j,i)成分を抜き出して構成されるM2行N2列の第2部分行列H2とを取得するステップと、M個の受信信号を成分とするM行の列ベクトルRと前記変換行列のエルミート共役の行列ZHとの積、すなわち(M1+M2)行の列ベクトルZH・Rを取得するステップと、該列ベクトルZH・Rの第1成分から第M1成分までによって構成されるM1行の第1部分ベクトルをR1とし、かつ第M1+1成分から第M1+M2成分までを抜き出して構成されるM2行の第2部分ベクトルをR2としてR1およびR2を取得するステップと、1系列当りの送信信号としてNmax種類(1<Nmax、Nmaxは整数)の信号点の選択肢の中からその全てないしはその一部として前記1次推定列ベクトルTzfの第k(1≦k≦N、kは整数)成分の近傍に位置するn[k]点(1≦n[k]≦Nmax、Nmaxは整数)の送信信号を第k成分の送信信号の候補として選択するステップと、第1から第N1番の各信号系列の送信信号を各成分として持つN1行の第1部分送信ベクトルをT1とした場合、該第1部分送信ベクトルT1の候補として、第1から第N1番の各信号系列の送信信号の各候補として選択された前記送信信号の候補をそれぞれN1個の各成分として持つ(n[1]×n[2]×…×n[N1])個のN1行の第1送信ベクトル候補群{T1 [k1]}(k1は識別番号)を取得するステップと、第N1+1から第N番の各信号系列の送信信号を各成分として持つN2行の第2部分送信ベクトルをT2とした場合、該第2部分送信ベクトルT2の候補として、第N1+1から第N番の各信号系列の送信信号の各候補として選択された前記送信信号の候補をそれぞれN2個の各成分として持つ(n(N1+1)×n[N1+2]×…×n[N]個のN2行の第2送信ベクトル候補群{T2 [k2]}(k2は識別番号)を取得するステップと、前記第1送信ベクトル候補群{T1 [k1]}のそれぞれに対し、R1とH1・T1 [k1]との幾何学的な距離を求めるステップと、1≦K1<(n[1]×n[2]×…×n[N1])である整数K1に対し、前記第1送信ベクトル候補群の中で該幾何学的な距離がm1番目(1≦m1≦K1、m1は整数)に小さい候補をT’1 [m1]と表記した場合に前記第1送信ベクトル候補群の部分集合としてK1個のベクトルで構成される限定第1送信ベクトル候補群{T’1 [m1]}を取得するステップと、前記第2送信ベクトル候補群{T2 [k2]}のそれぞれに対し、R2とH2・T2 [k2]との幾何学的な距離を求めるステップと、1≦K2<(n[N1+1]×n[N1+2]×…×n[N])である整数K2に対し、前記第2送信ベクトル候補群の中で該幾何学的な距離がm2番目(1≦m2≦K2、m2は整数)に小さい候補をT’2 [m2]と表記した場合に前記第2送信ベクトル候補群の部分集合としてK2個のベクトルで構成される限定第2送信ベクトル候補群{T’2 [m2]}を取得するステップと、前記限定第1送信ベクトル候補群{T’1 [m1]}の1つを第1から第N1番の各信号系列の送信信号を各成分として持ち、かつ前記限定第2送信ベクトル候補群{T’2 [m2]}の1つを第N1+1から第N番の各信号系列の送信信号を各成分として持つ合計K1×K2個のN行のベクトルを最終送信ベクトル候補群{Tfinal [k3]}(k3は識別番号)を取得するステップと、前記最終送信ベクトル候補群{Tfinal [k3]}のそれぞれに対し、前記伝達関数行列Hおよび前記受信ベクトルRを用いてRとH・Tfinal [k3]との幾何学的な距離を求めるステップと、該幾何学的な距離を最小とする送信ベクトルをTbestとして取得するステップと、該送信ベクトルTbestの各成分を各信号系列の送信信号の推定値とし、これらを合成することにより前記送信局におけるユーザデータを再生するステップとを有することを特徴とする。
本発明は、上記の発明において、前記伝達関数行列Hの第i列を抜き出して得られるM行の列ベクトルhiを用いて前記伝達関数行列Hを(h[1],h[2],…,h[N])と表記し、さらに前記変換行列Zの第i列を抜き出して得られるM行の列ベクトルziを用いてM行(M1+M2)列の行列Zを(z[1],z[2],…,z[M1+M2])と表記した場合、M次元の複素空間において、N2個の列ベクトル群h[N1+1],h[N1+2],…,h[N1+N2]の全てに対して直交する空間に属し、かつそれぞれが互いに直交すると共に、絶対値の等しいM1個の列ベクトル群z[1],z[2],…,z[M1]を取得するステップと、N1個の列ベクトル群h[1],h[2],…,h[N1]の全てに対して直交する空間に属し、かつそれぞれが互いに直交すると共に、絶対値の等しいM2個の列ベクトル群z[M1+1],z[M1+2],…,z[M1+M2]を取得するステップとをさらに有することを特徴とする。
本発明は、上記の発明において、前記伝達関数行列Hを元に受信される信号系列毎の信号対雑音比または信号対干渉雑音比を推定するステップと、推定した受信される信号系列毎の信号対雑音比または信号対干渉雑音比に応じて前記伝達関数における送信アンテナ番号の番号付け順序を変更する第1のアンテナ番号変換ステップと、取得される送信ベクトルTbestの送信アンテナ番号の番号付けを、第1のアンテナ番号変換ステップにて実施した入れ替え処理の逆処理により、元々のアンテナ番号に戻す第2のアンテナ番号変換ステップと、をさらに有することを特徴とする。
本発明は、上記の発明において、前記伝達関数行列Hを元に受信される信号系列毎の総受信電力、信号対雑音比または信号対干渉雑音比のいずれかを推定するステップと、前記n[1],n[2],n[3],…,n[N]の値を信号系列毎の総受信電力または信号対雑音比または信号対干渉雑音比の推定値に応じて決定するステップとをさらに有することを特徴とする。
本発明は、上記の発明において、前記幾何学的距離は、ユークリッド距離であることを特徴とする。
本発明は、上記の発明において、前記幾何学的距離は、各成分の実部の絶対値及び虚数部の絶対値の和を全ての信号系列に対して加算した値であることを特徴とする。
本発明は、上記の発明において、前記送信ベクトル第1次推定ステップは、前記伝達関数行列Hと前記列ベクトルTとの積であるH・Tに対してR=H・TのTに対する解または近似解として前記1次推定列ベクトルTzfを取得するために、前記第1部分行列H1および第1部分ベクトルR1および第1送信ベクトルT1に対するR1=H1・T1の解または近似解として前記1次推定列ベクトルTzfの第1から第N1成分を取得するステップと、前記第2部分行列H2および第2部分ベクトルR2および第2送信ベクトルT2に対するR2=H2・T2の解または近似解として前記1次推定列ベクトルTzfの第N1+1から第N成分を取得するステップとをさらに有することを特徴とする。
本発明は、上記の発明において、前記送信ベクトル第1次推定ステップは、前記伝達関数行列Hと前記列ベクトルTとの積であるH・Tに対してR=H・TのTに対する解または近似解として前記1次推定列ベクトルTzfを取得するために、前記伝達関数行列Hの逆行列H−1を前記列ベクトルRに作用させたベクトル積、すなわちH−1・Rにより取得するステップをさらに有することを特徴とする。
本発明は、上記の発明において、前記送信ベクトル第1次推定ステップは、前記伝達関数行列Hと前記列ベクトルTとの積であるH・Tに対してR=H・TのTに対する解または近似解として前記1次推定列ベクトルTzfを取得するために、前記伝達関数行列Hのエルミート共役行列HHおよび該伝達関数行列Hのベクトル積に対する逆行列、すなわち(HH・H)−1と、前記行列HHおよび前記列ベクトルRのベクトル積、すなわち(HH・H)−1・HH・Rにより取得するステップとを実施することを特徴とする。
本発明は、上記の発明において、前記N系統の既知のパターンの信号の第i信号系列における第ks(ksは1以上の整数)シンボルの送信信号をP(i,ks)および第j受信アンテナで受信される第ksシンボルの受信信号をr(j,ks)とし、かつP(i,ks)を第i成分として持つN行の列ベクトルをP(ks)、r(j、ks)を第j成分として持つM行の列ベクトルをr(ks)と表現した場合において、前記送信ベクトル第1次推定ステップは、前記既知のパターンの信号を受信した際に、前記既知のパターンの信号の領域においてM行N列の行列Fに関して、ベクトルF×r(ks)−P(ks)および該ベクトルのエルミート共役のベクトル(F×r(ks)−P(ks))Hのベクトル積、すなわち(F×r(ks)−P(ks))H×(F×r(ks)−P(ks))で与えられる物理量を最小とするように前記行列Fを算出するステップと、該行列Fと前記列ベクトルRのベクトル積、すなわちF・Rにより前記1次推定列ベクトルTzfを取得するステップとをさらに有することを特徴とする。
本発明は、上記の発明において、前記送信局および受信局は、直交周波数分割多重変調方式を用いて無線通信を行い、サブキャリア毎に分離後の受信信号に対して個別に請求項12ないし請求項21に記載の処理を実施することを特徴とする。
この発明によれば、前記受信局において、受信手段により、M本の前記受信アンテナを用いて個別に無線信号を受信し、第1の取得手段により、受信信号に付与された既知のパターンの信号を参照信号として前記送信アンテナのうちの第iアンテナと前記受信アンテナのうちの第jアンテナとの間のM×N組の伝達関数hj,iを取得し、送信ベクトル第1次推定手段により、第i送信アンテナと第j受信アンテナとの間の伝達関数hj,iを第(j,i)成分とするM行N列の行列、すなわち伝達関数行列Hおよび第j受信アンテナの受信信号を第j成分とするM行の列ベクトルRおよびN個の成分を有するN行の列ベクトルTに対し、前記伝達関数行列Hと前記列ベクトルTとの積であるH・Tに対してR=H・TのTに対する解または近似解として1次推定列ベクトルTzfを取得し、算出手段により、前記伝達関数行列Hの要素を元にM行(M1+M2)列の変換行列Zを生成する変換行列生成手段と、前記変換行列Zのエルミート共役の行列ZHに対して前記伝達関数行列Hの積、すなわち(M1+M2)行(N1+N2)列の行列ZH・Hを算出し、第2の取得手段により、該行列ZH・Hから1≦j≦M1かつ1≦i≦N1である第(j,i)成分より構成されるM1行N1列の第1部分行列H1と、M1+1≦j≦M1+M2かつN1+1≦i≦N1+N2である第(j,i)成分を抜き出して構成されるM2行N2列の第2部分行列H2とを取得し、第3の取得手段により、M個の受信信号を成分とするM行の列ベクトルRと前記変換行列のエルミート共役の行列ZHとの積、すなわち(M1+M2)行の列ベクトルZH・Rを取得し、第4の取得手段により、該列ベクトルZH・Rの第1成分から第M1成分までによって構成されるM1行の第1部分ベクトルをR1とし、かつ第M1+1成分から第M1+M2成分までを抜き出して構成されるM2行の第2部分ベクトルをR2としてR1およびR2を取得し、選択手段により、1系列当りの送信信号としてNmax種類(1<Nmax、Nmaxは整数)の信号点の選択肢の中からその全てないしはその一部として前記1次推定列ベクトルTzfの第k(1≦k≦N、kは整数)成分の近傍に位置するn[k]点(1≦n[k]≦Nmax、Nmaxは整数)の送信信号を第k成分の送信信号の候補として選択し、第5の取得手段により、第1から第N1番の各信号系列の送信信号を各成分として持つN1行の第1部分送信ベクトルをT1とした場合、該第1部分送信ベクトルT1の候補として、第1から第N1番の各信号系列の送信信号の各候補として選択された前記送信信号の候補をそれぞれN1個の各成分として持つ(n[1]×n[2]×…×n[N1])個のN1行の第1送信ベクトル候補群{T1 [k1]}(k1は識別番号)を取得し、第6の取得手段により、第N1+1から第N番の各信号系列の送信信号を各成分として持つN2行の第2部分送信ベクトルをT2とした場合、該第2部分送信ベクトルT2の候補として、第N1+1から第N番の各信号系列の送信信号の各候補として選択された前記送信信号の候補をそれぞれN2個の各成分として持つ(n(N1+1)×n[N1+2]×…×n[N]個のN2行の第2送信ベクトル候補群{T2 [k2]}(k2は識別番号)を取得し、第1の幾何学的距離算出手段により、前記第1送信ベクトル候補群{T1 [k1]}のそれぞれに対し、R1とH1・T1 [k1]との幾何学的な距離を求め、第7の取得手段により、1≦K1<(n[1]×n[2]×…×n[N1])である整数K1に対し、前記第1送信ベクトル候補群の中で該幾何学的な距離がm1番目(1≦m1≦K1、m1は整数)に小さい候補をT’1 [m1]と表記した場合に前記第1送信ベクトル候補群の部分集合としてK1個のベクトルで構成される限定第1送信ベクトル候補群{T’1 [m1]}を取得し、第2の幾何学的距離算出手段により、前記第2送信ベクトル候補群{T2 [k2]}のそれぞれに対し、R2とH2・T2 [k2]との幾何学的な距離を求め、第8の取得手段により、1≦K2<(n[N1+1]×n[N1+2]×…×n[N])である整数K2に対し、前記第2送信ベクトル候補群の中で該幾何学的な距離がm2番目(1≦m2≦K2、m2は整数)に小さい候補をT’2 [m2]と表記した場合に前記第2送信ベクトル候補群の部分集合としてK2個のベクトルで構成される限定第2送信ベクトル候補群{T’2 [m2]}を取得し、第9の取得手段により、前記限定第1送信ベクトル候補群{T’1 [m1]}の1つを第1から第N1番の各信号系列の送信信号を各成分として持ち、かつ前記限定第2送信ベクトル候補群{T’2 [m2]}の1つを第N1+1から第N番の各信号系列の送信信号を各成分として持つ合計K1×K2個のN行のベクトルを最終送信ベクトル候補群{Tfinal [k3]}(k3は識別番号)を取得し、第3の幾何学的距離算出手段により、前記最終送信ベクトル候補群{Tfinal [k3]}のそれぞれに対し、前記伝達関数行列Hおよび前記受信ベクトルRを用いてRとH・Tfinal [k3]との幾何学的な距離を求め、再生手段により、該幾何学的な距離を最小とする送信ベクトルをTbestとして取得する第10の取得手段と、該送信ベクトルTbestの各成分を各信号系列の送信信号の推定値とし、これらを合成することにより前記送信局におけるユーザデータを再生する。したがって、N系統の信号系列を送信側で多重化し、受信側で各信号系列毎に信号を分離して復調するためにMLD法を用いる場合、各信号系列で取り得る信号点の数NmaxのN乗個の信号に対しレプリカ信号の生成、ユークリッド距離の比較等の処理を実施しなければならなかったのに対し、処理を2段階に分け、かつ、信号系列毎の候補の数をNmax以下のn[k]個に絞り込むことで、第1段階における処理の数をNmax N回からn[1]×n[2]×…×n[N1]+n[N1+1]×n[N1+2]×…×n[N]回に減少させ、その後に第2段階としてK1×K2回の処理を行っている。これはあたかも、送信信号の1次推定結果として得られたTzfの近傍に候補を限定する予選と、2回戦の決勝トーナメントで段階的に候補を絞り込む処理を行うことに相当し、この結果として、全体としての処理量を画期的に圧縮することができる。すなわち、MIMO技術を用いた高能率な無線通信を行う際に、MLD法のもつ良好な特性を実現しながらも、従来のMLD法に比べて大幅に回路規模及び演算量を削減可能という効果を得ることが可能である。この結果、受信回路を1チップのLSI内に実装することが可能となる。また、演算量の削減は、直接、消費電力を削減するという副次的な効果も期待できる。
また、本発明によれば、第11の取得手段により、前記伝達関数行列Hの第i列を抜き出して得られるM行の列ベクトルhiを用いて前記伝達関数行列Hを(h[1],h[2],…,h[N])と表記し、さらに前記変換行列Zの第i列を抜き出して得られるM行の列ベクトルziを用いてM行(M1+M2)列の行列Zを(z[1],z[2],…,z[M1+M2])と表記した場合、M次元の複素空間において、N2個の列ベクトル群h[N1+1],h[N1+2],…,h[N1+N2]の全てに対して直交する空間に属し、かつそれぞれが互いに直交すると共に、絶対値の等しいM1個の列ベクトル群z[1],z[2],…,z[M1]を取得し、第12の取得手段により、N1個の列ベクトル群h[1],h[2],…,h[N1]の全てに対して直交する空間に属し、かつそれぞれが互いに直交すると共に、絶対値の等しいM2個の列ベクトル群z[M1+1],z[M1+2],…,z[M1+M2]を取得する。したがって、N系統の信号系列を2分する変換行列Hとして、2分されたグループ毎のMLD処理結果と全体でのMLDの処理結果との誤差を最小化し、最も効果的にグループ分けするための変換行列Hを容易に取得することができる。
また、本発明によれば、推定手段により、前記伝達関数行列Hを元に受信される信号系列毎の信号対雑音比または信号対干渉雑音比を推定し、推定した受信される信号系列毎の信号対雑音比または信号対干渉雑音比に応じて伝達関数における送信アンテナ番号の番号付け順序を変更する第1のアンテナ番号変換手段を具備する。また、取得される送信ベクトルTbestの送信アンテナ番号の番号付けを、第1のアンテナ番号変換手段にて実施した入れ替え処理の逆処理により、元々のアンテナ番号に戻す第2のアンテナ番号変換手段を具備する構成とした。したがって、N系統の信号系列を2分するグループ化の際に、各信号系列の受信状態に応じて最適な条件で容易に2分することができる。
また、本発明によれば、推定手段により、前記伝達関数行列Hを元に受信される信号系列毎の総受信電力、信号対雑音比または信号対干渉雑音比のいずれかを推定し、決定手段により、前記n[1],n[2],n[3],…,n[N]の値を信号系列毎の総受信電力または信号対雑音比または信号対干渉雑音比の推定値に応じて決定する。したがって、N系統の信号系列の信号点の候補の絞込みに際し、各信号系列の受信状態に応じて最適な条件で容易に絞込みを行うことができる。
また、本発明によれば、前記第1の幾何学的距離算出手段により、前記幾何学的な距離としてユークリッド距離を用いる。したがって、幾何学的な距離の具体的な例を規定することができる。
また、本発明によれば、前記第1の幾何学的距離算出手段により、幾何学的な距離として、各成分の実部の絶対値および虚数部の絶対値の和を全ての信号系列に対して加算した値を用いる。したがって、幾何学的な距離の具体的な例を規定することができる。
また、本発明によれば、前記送信ベクトル第1次推定手段において、第16の取得手段により、前記伝達関数行列Hと前記列ベクトルTとの積であるH・Tに対してR=H・TのTに対する解または近似解として前記1次推定列ベクトルTzfを取得するために、前記第1部分行列H1および第1部分ベクトルR1および第1送信ベクトルT1に対するR1=H1・T1の解または近似解として前記1次推定列ベクトルTzfの第1から第N1成分を取得し、第17の取得手段により、前記第2部分行列H2および第2部分ベクトルR2および第2送信ベクトルT2に対するR2=H2・T2の解または近似解として前記1次推定列ベクトルTzfの第N1+1から第N成分を取得する。したがって、MLD処理を行う前段の処理として、送信信号ベクトルの候補を絞り込むための送信ベクトルの1次推定を容易に行うことができる。
また、本発明によれば、前記送信ベクトル第1次推定手段において、第18の取得手段により、前記伝達関数行列Hと前記列ベクトルTとの積であるH・Tに対してR=H・TのTに対する解または近似解として前記1次推定列ベクトルTzfを取得するために、前記伝達関数行列Hの逆行列H−1を前記列ベクトルRに作用させたベクトル積、すなわちH−1・Rにより取得する。したがって、MLD処理を行う前段の処理として、送信信号ベクトルの候補を絞り込むための送信ベクトルの1次推定を容易に行うことができる。
また、本発明によれば、前記送信ベクトル第1次推定手段において、第19の取得手段により、前記伝達関数行列Hと前記列ベクトルTとの積であるH・Tに対してR=H・TのTに対する解または近似解として前記1次推定列ベクトルTzfを取得するために、前記伝達関数行列Hのエルミート共役行列HHおよび該伝達関数行列Hのベクトル積に対する逆行列、すなわち(HH・H)−1と、前記行列HHおよび前記列ベクトルRのベクトル積、すなわち(HH・H)−1・HH・Rにより取得する。したがって、MLD処理を行う前段の処理として、送信信号ベクトルの候補を絞り込むための送信ベクトルの1次推定を容易に行うことができる。
また、本発明によれば、前記N系統の既知のパターンの信号の第i信号系列における第ks(ksは1以上の整数)シンボルの送信信号をP(i,ks)および第j受信アンテナで受信される第ksシンボルの受信信号をr(j,ks)とし、かつP(i,ks)を第i成分として持つN行の列ベクトルをP(ks)、r(j、ks)を第j成分として持つM行の列ベクトルをr(ks)と表現した場合において、算出手段により、前記送信ベクトル第1次推定手段は、前記既知のパターンの信号を受信した際に、前記既知のパターンの信号の領域においてM行N列の行列Fに関して、ベクトルF×r(ks)−P(ks)および該ベクトルのエルミート共役のベクトル(F×r(ks)−P(ks))Hのベクトル積、すなわち(F×r(ks)−P(ks))H×(F×r(ks)−P(ks))で与えられる物理量を最小とするように前記行列Fを算出し、第20の取得手段により、該行列Fと前記列ベクトルRのベクトル積、すなわちF・Rにより前記1次推定列ベクトルTzfを取得する。したがって、MLD処理を行う前段の処理として、送信信号ベクトルの候補を絞り込むための送信ベクトルの1次推定を容易に行うことができる。
また、本発明によれば、前記送信局および受信局においては、直交周波数分割多重変調方式を用いて無線通信を行い、サブキャリア毎に分離後の受信信号に対して、個別に請求項1ないし請求項10に記載の処理を実施する。したがって、現在、高速無線アクセスシステムないしは高速無線LANシステムとして普及が目覚しいシステムにおいて、本発明を適用するための実現手段を与えるものとなる。MIMO技術は、多様な散乱波が存在するマルチパス環境に適しているが、そのマルチパス環境でのフェージングへの対応として、OFDM技術との併用は安定した特性を実現するうえで有効である。
また、この発明によれば、前記受信局は、M本の前記受信アンテナを用いて個別に無線信号を受信し、受信信号に付与された既知のパターンの信号を参照信号として前記送信アンテナのうちの第iアンテナと前記受信アンテナのうちの第jアンテナとの間のM×N組の伝達関数hj,iを取得し、第i送信アンテナと第j受信アンテナとの間の伝達関数hj,iを第(j,i)成分とするM行N列の行列、すなわち伝達関数行列Hおよび第j受信アンテナの受信信号を第j成分とするM行の列ベクトルRおよびN個の成分を有するN行の列ベクトルTに対し、前記伝達関数行列Hと前記列ベクトルTとの積であるH・Tに対してR=H・TのTに対する解または近似解として1次推定列ベクトルTzfを取得し、前記伝達関数行列Hの要素を元にM行(M1+M2)列の変換行列Zを生成し、前記変換行列Zのエルミート共役の行列ZHに対して前記伝達関数行列Hの積、すなわち(M1+M2)行(N1+N2)列の行列ZH・Hを算出し、該行列ZH・Hから1≦j≦M1かつ1≦i≦N1である第(j,i)成分より構成されるM1行N1列の第1部分行列H1と、M1+1≦j≦M1+M2かつN1+1≦i≦N1+N2である第(j,i)成分を抜き出して構成されるM2行N2列の第2部分行列H2とを取得し、M個の受信信号を成分とするM行の列ベクトルRと前記変換行列のエルミート共役の行列ZHとの積、すなわち(M1+M2)行の列ベクトルZH・Rを取得し、該列ベクトルZH・Rの第1成分から第M1成分までによって構成されるM1行の第1部分ベクトルをR1とし、かつ第M1+1成分から第M1+M2成分までを抜き出して構成されるM2行の第2部分ベクトルをR2としてR1およびR2を取得し、1系列当りの送信信号としてNmax種類(1<Nmax、Nmaxは整数)の信号点の選択肢の中からその全てないしはその一部として前記1次推定列ベクトルTzfの第k(1≦k≦N、kは整数)成分の近傍に位置するn[k]点(1≦n[k]≦Nmax、Nmaxは整数)の送信信号を第k成分の送信信号の候補として選択し、第1から第N1番の各信号系列の送信信号を各成分として持つN1行の第1部分送信ベクトルをT1とした場合、該第1部分送信ベクトルT1の候補として、第1から第N1番の各信号系列の送信信号の各候補として選択された前記送信信号の候補をそれぞれN1個の各成分として持つ(n[1]×n[2]×…×n[N1])個のN1行の第1送信ベクトル候補群{T1 [k1]}(k1は識別番号)を取得し、第N1+1から第N番の各信号系列の送信信号を各成分として持つN2行の第2部分送信ベクトルをT2とした場合、該第2部分送信ベクトルT2の候補として、第N1+1から第N番の各信号系列の送信信号の各候補として選択された前記送信信号の候補をそれぞれN2個の各成分として持つ(n(N1+1)×n[N1+2]×…×n[N]個のN2行の第2送信ベクトル候補群{T2 [k2]}(k2は識別番号)を取得し、前記第1送信ベクトル候補群{T1 [k1]}のそれぞれに対し、R1とH1・T1 [k1]との幾何学的な距離を求め、1≦K1<(n[1]×n[2]×…×n[N1])である整数K1に対し、前記第1送信ベクトル候補群の中で該幾何学的な距離がm1番目(1≦m1≦K1、m1は整数)に小さい候補をT’1 [m1]と表記した場合に前記第1送信ベクトル候補群の部分集合としてK1個のベクトルで構成される限定第1送信ベクトル候補群{T’1 [m1]}を取得し、前記第2送信ベクトル候補群{T2 [k2]}のそれぞれに対し、R2とH2・T2 [k2]との幾何学的な距離を求め、1≦K2<(n[N1+1]×n[N1+2]×…×n[N])である整数K2に対し、前記第2送信ベクトル候補群の中で該幾何学的な距離がm2番目(1≦m2≦K2、m2は整数)に小さい候補をT’2 [m2]と表記した場合に前記第2送信ベクトル候補群の部分集合としてK2個のベクトルで構成される限定第2送信ベクトル候補群{T’2 [m2]}を取得し、前記限定第1送信ベクトル候補群{T’1 [m1]}の1つを第1から第N1番の各信号系列の送信信号を各成分として持ち、かつ前記限定第2送信ベクトル候補群{T’2 [m2]}の1つを第N1+1から第N番の各信号系列の送信信号を各成分として持つ合計K1×K2個のN行のベクトルを最終送信ベクトル候補群{Tfinal [k3]}(k3は識別番号)を取得し、前記最終送信ベクトル候補群{Tfinal [k3]}のそれぞれに対し、前記伝達関数行列Hおよび前記受信ベクトルRを用いてRとH・Tfinal [k3]との幾何学的な距離を求め、該幾何学的な距離を最小とする送信ベクトルをTbestとして取得し、該送信ベクトルTbestの各成分を各信号系列の送信信号の推定値とし、これらを合成することにより前記送信局におけるユーザデータを再生する。したがって、N系統の信号系列を送信側で多重化し、受信側で各信号系列毎に信号を分離して復調するためにMLD法を用いる場合、各信号系列で取り得る信号点の数NmaxのN乗個の信号に対しレプリカ信号の生成、ユークリッド距離の比較等の処理を実施しなければならなかったのに対し、処理を2段階に分け、かつ、信号系列毎の候補の数をNmax以下のn[k]個に絞り込むことで、第1段階における処理の数をNmax N回からn[1]×n[2]×…×n[N1]+n[N1+1]×n[N1+2]×…×n[N]回に減少させ、その後に第2段階としてK1×K2回の処理を行っている。これはあたかも、送信信号の1次推定結果として得られたTzfの近傍に候補を限定する予選と、2回戦の決勝トーナメントで段階的に候補を絞り込む処理を行うことに相当し、この結果として、全体としての処理量を画期的に圧縮することができる。すなわち、MIMO技術を用いた高能率な無線通信を行う際に、MLD法のもつ良好な特性を実現しながらも、従来のMLD法に比べて大幅に回路規模及び演算量を削減可能という効果を得ることが可能である。この結果、受信回路を1チップのLSI内に実装することが可能となる。また、演算量の削減は、直接、消費電力を削減するという副次的な効果も期待できる。
以下、本発明の種々の実施形態について、図を参照して説明する。本発明に関する無線通信システムでは、送信局機能と受信局機能の両方の機能を実装した無線通信装置が一般的であるが、必ずしも双方の機能を実装する必然性はなく、以下の説明では送信局および受信局が実装する機能および方法に関して個別に説明を行うものとする。また、本発明の特徴は、受信局側の機能を規定するものであり、送信局側の機能および処理内容は、図7および図11に示したものと基本的に変わりはない。したがって、以下では、受信局に関して詳細に説明する。
A.第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態による受信局の構成を示すブロック図である。ここでは、1つの例として、受信アンテナ数M1=2、M2=2、M=4、送信アンテナ数N1=2、N2=2、N=4の場合について説明する。なお、受信アンテナの本数Mは、本図に示すようにM=M1+M2である必然性はなく、M≧N1+M2およびM≧M1+N2であれば、受信ダイバーシチ利得を積極的に稼ぐためにより多くのアンテナを用いることが効果的である。
図1において、1−1〜1−4は受信アンテナ、2−1〜2−4は無線部、3はチャネル推定回路、4は受信信号管理回路、5は擬似受信信号管理回路、6−aは伝達関数行列管理回路、7は変換行列生成回路、8は伝達関数行列変換回路、9−aは送信ベクトル1次推定回路、10−1、10−2および15は幾何学的距離演算回路、11は送信信号生成回路、12−1、12−2および13はレプリカ生成回路、14−1、14−2および16−aは選択回路、17はデータ合成回路、20は変調部を示す。
受信アンテナ1−1〜1−4は、それぞれ個別に受信信号を受信する。無線部2−1〜2−4を経由して、受信した信号はチャネル推定回路3に入力される。送信側で付与した所定のプリアンブル信号の受信状況から、チャネル推定回路3にて各送信アンテナと受信アンテナ間の伝達関数を取得する。取得された各伝達関数の情報は、伝達関数行列管理回路6−aにて伝達関数行列Hとして管理される。この伝達関数行列Hは、変換行列生成回路7に入力される。ここでは、伝達関数行列Hをもとに、変換行列Zを生成する。この変換行列Zの生成の仕方については後述する。
この生成された変換行列Zは、伝達関数行列変換回路8に入力され、伝達関数行列管理回路6で管理されている行列との積としてZH・Hを演算により求める。また、伝達関数行列変換回路8では、ここで得られた行列から1≦j≦M1、かつ1≦i≦N1である第(j,i)成分より構成されるM1行N1列の第1部分行列H1と、M1+1≦j≦M1+M2、かつN1+1≦i≦N1+N2である第(j,i)成分を抜き出して構成されるM2行N2列の第2部分行列H2とを抜き出し、それぞれをレプリカ生成回路12−1および12−2に入力する。
一方、プリアンブル信号に後続して多重化された信号が受信された際には、受信アンテナ1−1〜1−4、無線部2−1〜2−4、チャネル推定回路3を経由した各系統の受信信号は、1シンボル単位で、受信信号管理回路4にて受信信号ベクトルRとして管理される。擬似受信信号管理回路5では、受信信号管理回路4から受信信号ベクトルRを、変換行列生成回路7から変換行列Zが入力され、この行列のエルミート共役である行列ZHと受信ベクトルRの積としてZH・Rを演算により求め、これを擬似受信信号R’として管理する。
一方、送信ベクトル1次推定回路9−aでは、チャネル推定回路3で取得した伝達関数行列Hと受信信号管理回路4で管理された受信信号Rから、送信信号ベクトルとして予想される信号を簡易な方法で取得する。この1次推定方法については後述する。ここで求めた送信ベクトルの1次推定値は、送信信号生成回路11に入力される。送信信号生成回路11では、送信ベクトル1次推定回路9−aから入力された送信信号ベクトルの推定値をもとに、その近傍の信号ベクトルを実際の送信信号に対する候補として生成する。例えば、64QAMであれば、信号系列毎に64種類の信号点を取り得るわけで、全体としては644個の候補が存在する。送信信号生成回路11では、その中から送信ベクトル1次推定回路9−aから入力された送信信号ベクトルの推定値に近いものだけに候補を限定して選ぶことになる。この限定の仕方については後述する。
ここで、送信信号ベクトルの候補は、ベクトルの第1成分から第N1成分までを抜き出したものと第N1+1成分から第N成分までを抜き出したものに分類され、前者をレプリカ生成回路12−1に、後者をレプリカ生成回路12−2に入力する。レプリカ生成回路12−1では、入力されたN1個の成分からなる各ベクトルに対して、M1行N1列の第1部分行列H1をかけた信号を、第1から第M1受信アンテナで受信される信号ベクトルのレプリカ信号として幾何学的距離演算回路10−1に入力する。幾何学的距離演算回路10−1では、擬似受信信号管理回路5で管理している擬似受信信号R’の第1成分から第M1成分までを抜き出し、このベクトルと先ほどのレプリカ信号との差分を幾何学的距離として取得する。選択回路14−1では、ここでの幾何学的距離を比較し、幾何学的距離が小さい方からK1個を選択し、その元となったK1個の送信信号ベクトルの候補をレプリカ生成回路13に入力する。
以上の処理は、送信信号ベクトルの第N1+1成分から第N成分までを抜き出したものの候補についても同様に行う。具体的には、まず、第N1+1成分から第N成分までを抜き出した送信信号ベクトルの候補をレプリカ生成回路12−2に入力する。レプリカ生成回路12−2では、入力されたN2個の成分からなる各ベクトルに対して、M2行N2列の第2部分行列H2をかけた信号を、第M1+1から第M受信アンテナで受信される信号ベクトルのレプリカ信号として幾何学的距離演算回路10−2に入力する。
幾何学的距離演算回路10−2では、擬似受信信号管理回路5で管理している擬似受信信号R’の第M1+1成分から第M成分までを抜き出し、このベクトルと先ほどのレプリカ信号との差分を幾何学的距離として取得する。選択回路14−2では、ここでの幾何学的距離を比較し、幾何学的距離が小さい方からK2個を選択し、その元となったK2個の送信信号ベクトルの候補をレプリカ生成回路13に入力する。
レプリカ生成回路13では、選択回路14−1から入力されたN1個の成分を持つベクトル(合計K1個)と、選択回路14−2から入力されたN2個の成分を持つベクトル(合計K2個)とを組み合わせて、N個(N=N1+N2)の成分を持つ合計K1×K2個のベクトルを生成し、これらのベクトルに伝達関数行列管理回路6−aで管理している伝達関数行列Hを乗算し、この信号をM本の受信アンテナで受信される信号ベクトルのレプリカ信号として幾何学的距離演算回路15に入力する。
幾何学的距離演算回路15では、受信信号管理回路4で管理している受信信号Rと先ほどのレプリカ信号との差分を幾何学的距離として取得する。選択回路16−aでは、ここでの幾何学的距離を比較し、幾何学的距離が最も小さいものを選択し、その元となった送信信号ベクトルの候補を送信信号として確定する。これらのデータは、複数シンボルに渡って連続的に処理されるが、一連のデータを受信後、データ合成回路17にてデータとして再構成されて出力される。
上述した第1実施形態では、送信信号ベクトルの1次推定を行う際に、チャネル推定回路3から入力される伝達関数行列Hと、受信信号管理回路4で管理される受信信号ベクトルRから、第1次推定を行っている。このための最も簡単な方法はZF法であり、伝達関数行列Hの逆行列H−1、あるいはそのエルミート共役行列も用いた擬似逆行列(HH・H)−1・HHを受信信号ベクトルRに左から乗算し、H−1・Rまたは(HH・H)−1・HH・Rとして求めるものである。この他にも、MMSE法やQR分解法など、いかなる方法で1次推定を行っても構わない。
B.第2実施形態
図2は、本発明の第2実施形態による受信局の構成を示すブロック図である。なお、図1に対応する部分には同一の符号を付けて説明を省略する。本第2実施形態では、図2に示すように、上述した第1実施形態の送信ベクトル1次推定回路9−aに代えて、送信ベクトル1次推定回路9−bを備えている点で異なる。
N行N列の伝達関数行列Hをもとに行う演算は、例えば逆行列を求める場合を例にとれば、Nが増加するにつれて急激にその演算量が増加し、回路規模的にも増加することになる。これを軽減するためには、行列の次数を下げて処理を行うことが効果的である。そのような場合には、伝達関数行列変換回路8で取得した2つの部分行列H1およびH2を用いることも可能である。
図2に示す構成例では、M1=M2=N1=N2=2であり、部分行列H1およびH2は共に2×2の行列である。この場合には、簡単な演算で逆行列を求めることができる。これらの逆行列H1 −1およびH2 −1(あるいは擬似逆行列(H1 H・H1)−1・H1 Hおよび(H2 H・H2)−1・H2 H)に、擬似受信信号管理回路5で管理している擬似受信信号R’の第1〜第2成分で表されるベクトルR’1、およびR’の第3〜第4成分で表されるベクトルR’2を乗算し、H1 −1・R’1、H2 −1・R’2(あるいは(H1 H・H1)−1・H1 H・R’1、(H2 H・H2)−1・H2 H・R’2)で与えられるベクトルを1次推定結果として用いることも可能である。
C.第3実施形態
図3は、本発明の第3実施形態による受信局の構成を示すブロック図である。なお、図1に対応する部分には同一の符号を付けて説明を省略する。本第3実施形態では、図3に示すように、上述した第1実施形態の構成に加えて、信号入替え回路18を備えている点で異なる。
信号入替え回路18は、チャネル推定回路3からの伝達関数行列の情報を受け、信号系列毎の信号強度、信号対雑音比または信号対干渉雑音比を求め、その結果に応じて信号系列の入れ替えを行う変換行列Aを求め、これを伝達関数行列管理回路6−b、および選択回路16−bに入力する。伝達関数行列管理回路6−bでは、チャネル推定回路3から入力された伝達関数行列に対し、信号入替え回路18からの変換行列Aを乗算し、行列HをH・Aに置き換えて管理すると共に、変換行列生成回路7、伝達関数行列変換回路8およびレプリカ生成回路#3(13)に入力する。さらに、処理の最後においてこの入れ替え処理を元に戻すため、選択回路16−bでは、最終的に得られた送信信号の推定結果に対し、変換行列であるAを乗算し、信号系列の対応を図る。
なお、ここで用いる信号系列毎の送受信電力、信号対雑音比、信号対干渉雑音比等の指標は、入れ替え処理の他にも、各信号系列の送信信号の候補を絞り込む際の系列毎の候補の個数、すなわちn[1]、n[2]、n[3]、…、n[N]の値を決定する際にも用いるが、詳細は後述する。さらに、入れ替えのルールについても後述する。
また、上述した受信局の構成において、図1から図3までの図中の点線で囲まれた領域が従来技術における図8の復調部121に相当する。したがって、OFDM変調方式を用いる場合には、図10に示すように、図10のサブキャリア毎の復調部212−1〜212−K)が図1における復調部20、図2における復調部21、および図3における復調部22に置き換えられることになる。
次に、変換行列Zの求め方について、例としてN1=N2=M1=M2=2の場合について説明する。まず、伝達関数行列Hの各列をh[1]、h[2]、h[3]、h[4]と表記し、これを横に並べて、伝達関数行列Hを(h[1]、h[2]、h[3]、h[4])と表わす。同様に、変換行列Zの各列をz[1]、z[2]、z[3]、z[4]と表記し、それぞれを横に並べて、変換行列Zを(z[1]、z[2]、z[3]、z[4])と表わす。これを用いてZH・Hを表記すると以下のようになる。
ここで、h[1]とz[3]、h[1]とz[4]、h[2]とz[3]、h[2]とz[4]、z[3]とz[4]が直交し、かつh[3]とz[1]、h[3]とz[2]、h[4]とz[1]、h[4]とz[2]、z[1]とz[2]が直交し、さらにz[1]、z[2]、z[3]、z[4]の絶対値が一致するように(すなわち、同一ベクトルの内積が全て等しくなるように)、ベクトルz[1]、z[2]、z[3]、z[4]を決定し、変換行列Zを生成する。この結果、行列の(1,3)、(1,4)、(2,3)、(2,4)、(3,1)、(3,2)、(4,1)、(4,2)成分は、上記条件より値がゼロとなっている。そこで、(1,1)、(1,2)、(2,1)、(2,2)成分で構成される2×2の行列H1と、(3,3)、(3,4)、(4,3)、(4,4)成分で構成される2×2の行列H2とを抜き出し、これらを用いて以降の処理を行うことができる。
なお、これらのベクトルを演算により求める手法は如何なるものを用いても構わないが、一例として以下の方法を示す。一般に、N次元ベクトルにおいて、それぞれが1次独立なN−1個のベクトルに対し、全てに直交するベクトルを生成するために「ベクトル積」(または「外積」)と呼ばれる幾何学演算手法がある。N−1個のベクトルをν1、ν2、…νN−1とし、これらのベクトルに対するベクトル積をOuter(ν1、ν2、ν3)と表記したとする。
ここで、本発明の第1ないし第3実施形態のように、h[1]、h[2]、h[3]、h[4]およびz[1]、z[2]、z[3]、z[4]が4次元ベクトルであれば、例えばh[1]をν1に、h[2]をν2に、任意のベクトルの例として(1,0,0,0)をν3に対応させたとする。これに対してOuter(ν1、ν2、ν3)を求めると、h[1]、h[2]に直交したz[1]を取得することができる。この後、ν3とz[3]を入れ替えて、同様の計算でZ[4]が求まる。同様にしてz[1]、z[2]も求め、最後に規格化を行い、それぞれのベクトルの大きさを揃える。以上により、z[1]、z[2]、z[3]、z[4]を求めることができる。なお、この他にもグラム・シュミットの正規直交化法等を用いても構わない。
次に、信号系列毎の送受信電力、信号対雑音比、信号対干渉雑音比等の指標について具体例を示す。例えば、ある信号系列(第i送信アンテナからの信号を仮定)に対し、複数本のアンテナで受信された信号の信号対雑音比Wiは、以下の数式(5)で表わせる。
ここで、hj,iは、第i送信アンテナと第j受信アンテナとの間の伝達関数、njは、第j受信アンテナで付加される熱雑音を表わす。通常、njの大きさを推定することは困難なうえ、njの大きさの期待値は、全受信アンテナで等しいので、分母の項を省略し、第i信号系列の送受信電力として以下のような数式(6)で代用するのが簡単である。
同様に、信号対干渉雑音比についても、数式(7)または数式(8)にて求めることができる。
この他、N=Mの場合に例をとれば、第i送信アンテナに対応した信号の信号対雑音比の推定値は以下の数式(9)で代用することもできる。
ここで、gj,iは、伝達関数行列Hの逆行列の第j,i成分を表す。この他にも、伝達関数行列Hに対してHH・Hの固有値を求め、第i固有値をWiとして代用しても良い。
基本的に、上記指標Wiの値が大きな第i系列の信号ほど信号推定の信頼性が高く、先に推定した送信信号の1次推定結果の近傍に、真の送信信号があるものと期待される。このため、送信信号の候補を選ぶ際に、系統毎の候補の数の絞込み数、すなわちn[1]、n[2]、n[3]、…、n[N]の値は、信頼性が高いものほど小さくて良いと予想される。具体的な例として、W1>W2>W3>W4であったとする。この場合、1次推定結果の信頼性は、第1系統が最も高く、第2、第3、第4系統という順番となる。このような場合には、例えばn[1]の値としては4、n[2]の値としては9、n[3]の値としては25、n[4]の値としては64というように、n[1]≦n[2]≦n[3]≦n[4]となるように値を選ぶ。
次に、送信信号ベクトルの推定値に近いものだけに候補を限定して選ぶ際の限定の仕方について説明する。基本的な考え方は、第i信号系列においては、1次推定した送信信号ベクトルの第i成分に対し、その信号点に近い方からn[i]点を選ぶことが好ましい。例として64AQM等の変調方式を仮定すると、n[i]=4の場合、各コンスタレーション上の格子に対し、1次推定結果を含む四角い格子の4隅の点が第1〜第4近接の点となる。
これに対して、選択を簡易に実現するためには、一旦、信号点に対する硬判定を行い、その点を中心に第1近接の点、第2近接の点と範囲を広げていくことも可能である。例えば、n[i]=5の場合、1次推定結果の信号点に対して一旦硬判定を行い、第1近接の信号点を格子点上に求める。その後、その格子点の上下左右の点(硬判定点の第1近接点)を求め、これら5点を選べばよい。同様に、n[i]=9の場合、n[i]=5の時に求めた5点に加え、硬判定点からの第2近接点の4点を追加した9点を選べばよい。同様の処理は、その他のn[i]の値についても可能である。
また、図3で示した入れ替え処理については、例えば以下のような方法で行えばよい。図3に示すように、N1=N2=2であれば、Wiの値が1番のものと4番のものをペアにし、2番と3番をペアにすると、グループ毎の信頼度が平均化される。あるいは、この場合、グループ毎の候補の総数は、n[1]×n[4]とn[2]×n[3]となるが、この候補数の値が平均化され、結果的に全体の候補数が最小化されるようにグループ分けを行えばよい。
例えば、W1>W2>W3>W4の場合、の入れ替え処理は、第1系列はそのまま、第2系列⇒第3系列、第3系列⇒第4系列、第4系列⇒第2系列と入れ替えることになる。これを行列で示すと、変換行列Aは以下のようになる。
この変換行列Aの特徴は、単位行列の行(または列)を適宜入れ替えたものとなっており、全ての行および列において、要素の1つが1、それ以外が0となっている。
ところで、上述した第1実施形態においては、式(1)に対し、式(4)で示すように両辺の左側から変換行列ZHを作用させ、式(1)を以下の式に変換して処理を行っていた。
これに対し、第3実施形態では、この変換行列Aを用い、式(12)を以下の式(13)、(14)、(15)ように変換する。
つまりH×Aで与えられる行列を元々の伝達関数行列Hに置き換えて処理を行う。この結果、変換行列Z自体も、Hに対する変換行列とは異なる行列になる。また、さらに最終的に求まった送信信号の推定結果ベクトルTbestも、式(15)のT’に相当するベクトルであるために、求めるべきベクトルは式(15)の両辺左からAを作用させ、行の入れ替え処理を施した以下の式(16)で求めることになる。
以上のH×Aの処理、及びA×Tbestの処理は、行列Hの列の入れ替え及びベクトルTbestの行の入れ替えに相当するが、これはつまり、送信アンテナの番号付けの順序を入れ替えることに他ならない。したがって、上述した第1のアンテナ番号変換手段及び第2のアンテナ番号変換手段の具体的な実現方法としては、式(10)及び式(11)に示した変換行列を用いて上述した第3実施形態における処理を行えばよい。
なお、図3に示す第3実施形態では、図1に示す第1実施形態に対して入れ替え処理を追加した例を示したが、同様に図2に示す第2実施形態に入れ替え処理を追加することも当然ながら可能である。
上述した結果として、従来方式では、4(正確にはN1+N2)系列の信号系列に合わせて4次元のベクトルT[k]=(t1 [k],t2 [k],t3 [k],t4 [k])として送信信号ベクトルの候補を選んでいたが、これらが2系統に分割されたため、2次元ベクトルT1 [k]=(t1 [k],t2 [k])とT2 [k]=(t3 [k],t4 [k])として選ばれる。例えば、n[1]=4、n[2]=64、n[3]=9、n[2]=25とすると、1つ目のグループが4×64=256通り、2つ目のグループが9×25=225通り、合計で481通りの候補に減らすことができる。さらに、これらのベクトルに対してレプリカ信号を生成する場合には、2×2の行列演算で済むために、個々の演算の処理量も減らせることになる。
上述した図1から図3においては、このようにしてグループ毎に少数の候補を選び、それぞれに対してMLD処理を行う。例えば、送信信号生成回路11からは、レプリカ生成回路12−1および12−2に対して上記のT1 [k]とT2 [k]を出力し、ここで部分伝達関数行列H1およびH2を求める。各レプリカ信号は、H1・T1 [k]およびH2・T2 [k]で与えられ、これらと擬似受信信号管理回路5で管理する擬似受信信号R’の第1および第2成分を抜き出した2次元ベクトルR1と、擬似受信信号R’の第3および第4成分を抜き出した2次元ベクトルR2との間で幾何学的な距離を求める。その幾何学的な距離の小さいほうからK1個およびK2個選び出し、それぞれを組み合わせて4次元ベクトルとしての候補の送信信号ベクトルをK1×K2個選び出す。
このベクトルの組み合わせの操作は、具体的には、例えば1≦m1≦K1および1≦m2≦K2に対し、ユークリッド距離が小さい方からK1個およびK2個選び出したベクトルをT’1 [m1]=(t’1 [m1],t’2 [m1])およびT’2 [m2]=(t’3 [m2],t’4 [m2])とすると、組み合わせた最終的なベクトルは、次の数式(12)に示すようにして与えられる。
これらに対し、伝達関数行列管理回路6−aまたは6−bで管理されている伝達関数行列を乗算してレプリカ信号を生成し、該レプリカ信号と受信信号管理回路4で管理されている受信信号ベクトルRとを比較し、最も幾何学的な距離が小さいものを選択する。例として、K1=K2=8の場合を考えれば、最終的に処理を行う送信信号の候補の数は8×8=64通りに絞り込むことができる。
D.第1実施形態および第2実施形態の受信処理
次に、図4は、前述した第1実施形態および第2実施形態による受信局の受信処理を示すフローチャートである。受信局では無線パケットを受信すると(S1)、プリアンブル信号を検出し(S2)、チャネル推定を実施する(S3)。ここでは、各送信アンテナおよび受信アンテナ間の伝達関数を全て取得する。チャネル推定により得られた伝達関数行列に対し、変換行列Zを演算により求め(S4)、伝達関数行列に変換行列Zのエルミート共役である行列ZHを乗算する(S5)。この結果として得られるZH・Hから、1≦j≦M1かつ1≦i≦N1である第(j,i)成分より構成されるM1行N1列の第1部分行列H1と、M1+1≦j≦M1+M2かつN1+1≦i≦N1+N2である第(j,i)成分を抜き出して構成されるM2行N2列の第2部分行列H2とを抜き出す(S6)。以上を実際のユーザデータが収容されたペイロード部分を受信する前に実施しておく。
その後、ユーザデータが収用されたデータ部分の受信に対し、1シンボル毎に以下の処理を繰り返す。まず、第i受信アンテナで受信された信号をriとし、第i成分をriとする受信信号ベクトルをRとする(S7)。この受信信号ベクトルRに、先ほどの変換行列Zのエルミート共役である行列ZHを乗算し、擬似受信信号ベクトルR’を生成する(S8)。その後、送信信号ベクトルの1次推定を行い、ベクトルTzfを取得する(S9)。ここで、送信信号ベクトルの第1から第N1成分と、第N1+1成分から第N成分までを2つに分けて処理を行う。
まず、第1から第N1成分に関しては、1次推定したベクトルTzfの第1から第N1成分の各信号点に対し、それぞれその近傍のn[1]点、n[2]点、…、n[N1]点を選び出し、それぞれの組み合わせとしてn[1]×n[2]×…×n[N1]種類の第1部分送信ベクトルT1 [k]を生成する(S10a)。これらに、第1部分行列H1を乗算し、レプリカ信号H1・T1 [k]を生成する(S11a)。このレプリカ信号H1・T1 [k]と、処理S8で求めた擬似受信信号ベクトルR’の第1から第N1成分を抜き出した第1部分ベクトルR1とのユークリッド距離(一般的には幾何学的距離として、その他の物理量を用いて構わない)を求め(S12a)、これらの中からユークリッド距離の小さいものK1個の候補を選び出す(S13a)。
同様に、第N1+1成分から第N成分に関しては、1次推定したベクトル符の第N1+1から第N成分の各信号点に対し、それぞれその近傍のn[N1+1]点、n[N1+2]点、…、n[N]点を選び出し、それぞれの組み合わせとしてn[N1+1]×n[N1+2]×…×n[N]種類の第2部分送信ベクトルT2 [k]を生成する(S10b)。これらに、第2分行列H2を乗算し、レプリカ信号H2・T2 [k]を生成する(S11b)。このレプリカ信号と、処理S8で求めた擬似受信信号ベクトルR’の第Nl+1から第N成分を抜き出した第2部分ベクトルR2とのユークリッド距離(一般的には幾何学的距離として、その他の物理量を用いて構わない)を求め(S12b)、これらの中からユークリッド距離の小さいものK2個の候補を選び出す(S13b)。その後、それぞれの候補を組み合わせてN次元ベクトルである最終的な送信信号ベクトルの候補Tfinal [k]を生成する(S14)。これに対し、伝達関数行列Hを乗算し、レプリカ信号H・Tfinal [k]を生成する(S15)。
このレプリカ信号H・Tfinal [k]と、受信信号ベクトルRのユークリッド距離(一般的には幾何学的距離として、その他の物理量を用いて構わない)を求め(S16)、これらの中からユークリッド距離の最も小さいものTbestを選び出す(S17)。この各成分で与えられる信号を各系列の送信信号として確定し(S18)、引き続き受信データがあるかどうかの判定を行い(S19)、データがあれば処理S7に戻り、処理S7〜処理S19を繰り返す。データの受信が完了した場合には、受信したデータを合成し、送信データを再生して出力し(S20)、受信処理を終了する(S21)。
なお、上述した処理においては、処理S9の送信信号の1次推定の方法については言及していなかったが、第1実施形態においては、例えばZF法やMMSE法を用いる場合には、処理S3で伝連関数行列を取得後、処理S7までの間に各信号系列間の干渉キャンセルのための行列を演算により求めておく必要がある。例えば、伝達関数行列Hが正方行列であれば、伝達関数行列Hの逆行列H−1を求めておく。非正方行列であれば、擬似逆行列(HH・H)−1・HHを求めておく。また、MMSE法であれば、各信号系列の信号対雑音比を最大にする干渉キャンセル行列Fを求める。
このM行N列の行列Fは、プリアンブル信号の第i信号系列における第ks(ksは1以上の整数)シンボルの送信信号をP(i,ks)および第j受信アンテナで受信される第ksシンボルの受信信号をr(j,ks)とし、かつP(i,ks)を第i成分として持つN行の列ベクトルをP(ks)、r(j,ks)を第j成分として持つM行の列ベクトルをr(ks)と表現した場合、プリアンブル信号を受信した際に、(F×r(ks)−P(ks))H×(F×r(ks)−P(ks))で与えられる物理量を最小とするように行列Fを選ぶ。処理S9では、ここで求めた行列を受信信号ベクトルRに乗算し、例えばH−1・R、または(HH・H)−1・HH・R、またはF・Rのようにして1次推定を行う。
一方、第2実施形態の場合には、処理S6で求めた第1および第2部分行列H1、H2に対し、処理S6の後で、かつ処理S7の前までの間に、逆行列または擬似逆行列としてH1 −1または(H1 H・H1)−1・H1 H、およびH2 −1または(H2 H・H2)−1・H2 Hを取得しておく。処理S8で求めた擬似受信信号ベクトルの第1から第N1成分を抜き出した第1部分ベクトルR1と、第N1+1から第N成分を抜き出した第2部分ベクトルR2に対し、先に求めた行列を用いて、例えばH1 −1・R1、H2 −1・R2のようにして処理S9の送信信号の1次推定を行う。
E.第3実施形態の受信処理
次に、図5は、前述した第3実施形態による受信局の受信処理を示すフローチャートである。図4にて説明した第1および第2実施形態との差分は、処理S3と処理S4の間に処理S31〜処理S33が追加になった点、および処理S18の後で処理S34が加えられた点である。処理S3で取得した伝達関数行列をもとに、例えば各信号系列の送受信電力を数式(6)を用いて求め(S31)、各信号系列の送受信電力に対する順序に合わせて数式(11)で与えられるような入れ替えのための行列を選択する(S32)。この行列を用いて伝達関数行列HをH・Aのように変換する(S33)。以下の処理S4〜処理S18の処理は、あたかもH・Aが元々の伝達関数行列であるかのように処理を行う。受信信号が決定されると(S18)、信号の入れ替え処理をA・Tbestにより行い(S34)、これを用いて送信データの再生を行う(S20)。
F.第1および第2実施形態の受信処理(OFDM変調方式)
次に、図6は、本発明の第1および第2実施形態に対して、OFDM変調方式を用いた場合の受信処理を示すフローチャートである。図4に示した第1および第2実施形態との差分は、処理S2にてプリアンブルを検出後、プリアンブル信号に対してシンボル単位でガードインターバルを除去し(S41)、FFT処理を行ってサブキャリア毎に分離し(S42)、図4における処理S3から処理S6を全サブキャリアに対して行う点と、同様にデータ受信時も、処理S7に先行してシンボル単位でガードインターバルを除去し(S43)、FFT処理を行ってサブキャリア毎に分離し(S44)、図4における処理S7から処理S18を全サブキャリアに対して行う点と、データ受信完了後、データを合成して送信データを再生する際に、全サブキャリアおよび全信号系列に渡り合成を行う(S45)点である。点線で囲まれた領域(処理S3〜処理S6、および処理S7〜処理S18)がサブキャリア毎に並列的に行われる処理である。
上述した説明においては、一例として送受信アンテナ数としてN1=N2=M1=M2=2の場合を例に取り説明したが、M≧3、N≧3、M1≧1、M2≧1、N1≧1、N2≧1で、かつM1+N2≦MおよびM2+N1≦Mおよび(N1+N2)=Nであれば任意の整数の組(M,M1,M2,N,N1,N2)において適用可能である。
以上述べた実施形態は、全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は、他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等範囲によってのみ規定されるものである。
なお、上述した実施形態においては、各回路は、基本的にはハードウェア上に実装されるものであるが、コンピュータシステム内で実行されるものであっても構わない。この場合、上述した変換行列生成回路5による一連の処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。すなわち、変換行列生成回路5における、各処理手段、処理部は、CPU等の中央演算処理装置がROMやRAM等の主記憶装置に上記プログラムを読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、実現されるものであっても構わない。
ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。