JP4455512B2 - 無線通信方法及び無線基地局 - Google Patents

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本発明は、同一の周波数チャネルを用い、異なる複数の送信アンテナより独立な信号系列を空間多重して送信し、複数の受信アンテナを用いて信号を受信し、各送受信アンテナ間の伝達関数行列をもとに受信局側でデータの復調を行うMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)通信を実現する高速無線アクセスシステムにおいて、ひとつの無線局と他の複数の無線局が、同時にかつ同一周波数チャネル上で空間多重して通信を行うマルチユーザMIMO通信技術を用いた無線通信方法及び無線基地局に関する。
近年、2.4GHz帯または5GHz帯を用いた高速無線アクセスシステムとして、IEEE802.11g規格、IEEE802.11a規格などに対応したシステムの普及が目覚しい。これらのシステムにおいては、マルチパスフェージング環境での特性を安定化させるための技術である直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式を用い、最大で54Mbpsの伝送速度を実現している。ただし、ここでの伝送速度とは物理レイヤ上での伝送速度であり、実際にはMAC(Medium Access Control )レイヤでの伝送効率が50〜70%程度であるため、実際のスループットの上限値は30Mbps程度である。
一方で、有線LAN(Local Area Network)の世界ではEthernet(登録商標)の100Base-Tインタフェースをはじめ、各家庭にも光ファイバを用いたFTTH(Fiber to the home)の普及から、100Mbpsの高速回線の提供が普及しており、無線LANの世界においても更なる伝送速度の高速化が求められている。
そのための技術としては、MIMO技術が有力である。このMIMO技術とは、送信局側において複数の送信アンテナから同一チャネル上で異なる独立な信号を送信し、受信局側において同じく複数のアンテナを用いて信号を受信し、各送信アンテナ/受信アンテナ間の伝達関数行列を求め、この行列を用いて送信局側の各アンテナから送信した独立な信号を受信側で推定し、データを再生するものである。
ここで、N本の送信アンテナを用いてN系統の信号を送信し、M本のアンテナを用いて信号を受信する場合を考える。まず、送受信局の各アンテナ間にはM×N個の伝送のパスが存在し、第i送信アンテナから送信され第j受信アンテナで受信される場合の伝達関数をhj,iとし、これを第(j,i)成分とするM行N列の行列をHと表記する。さらに、第i送信アンテナからの送信信号をtiとし(t1,t2,t3,・・・ tN)を成分とする列ベクトルをTx、第j受信アンテナでの受信信号をrjとし(r1,r2,r3,・・・rM)を成分とする列ベクトルをRx、第j受信アンテナの熱雑音をnjとし(n1,n2,n3,・・・nM)を成分とする列ベクトルをnと表記する。
上述した条件の場合、以下(1)式の関係式が成り立つ。
Rx=H・Tx+n …(1)
したがって、受信局側で受信した信号Rxをもとに、送信信号Txを推定する技術が求められている。
このMIMO通信においては、信号の伝搬路の情報を利用して、その伝搬路に対して最適な状況にて信号を送信することにより、最も効率的な通信を行うことができる。
例えば、特許文献1の「無線通信方法、並びに該方法を用いた無線通信システム」等に記載された固有モードSDM(Space Division Multiplexing)方式を用いたMIMO伝送においては、信号の伝送方向のMIMOチャネルの伝達関数行列Hを送信局側で取得できた場合に、この伝達関数行列に対応した送信信号の最適化を行う。具体的には、伝達関数行列Hとそのエルミート共役な行列H(右肩の「H」の記号はエルミート共役を表す)の積を、対角化することが可能なユニタリー行列Uを取得し、このユニタリ行列により送信信号を変換して信号を送信する(各アンテナから発信する)。
このユニタリ変換行列Uと伝達関数行列Hとの間には以下の(2)式の関係式が成り立つ。
H・HH ・H・U=Λ …(2)
上記(2)式において、右辺の行列Λは対角成分のみが値を持ち、その他の成分がゼロである対角行列である。この様な特徴を持つユニタリ行列Uを列ベクトルTxに作用させて信号を送信することにより、(1)式は以下の(3)式の様に変換される。
Rx=H・(U・Tx)+n …(3)
この変換により、送信信号はMIMOチャネル毎に直交化され、受信側での処理において簡易なZF(Zero Forcing)方式を用いた場合であっても、各送信信号をMIMOチャネル毎のSNR特性が良好になるように調整される。また、このユニタリ行列の各列ベクトルは、送信信号である列ベクトルTxを各送信アンテナに分配する際の各アンテナに乗算する係数(以降、「送信ウエイト」と呼ぶ)で構成される。また、送信ウエイトで構成される列ベクトルを送信ウエイトベクトルと呼ぶ。この送信ウエイトベクトルを用いることで、各MIMOチャネル毎に直交したビーム形成を行い、それぞれのビーム(固有ビーム)に相当するチャネルの利得がその固有ベクトルの固有値となる。したがって、全MIMOチャネルのチャネル容量Cの上限は以下の(4)式で与えられる。
Figure 0004455512
上記(4)式において、Bは帯域幅、Piは第i番のMIMOチャネルの総送信電力、λは第i固有値であり、σ2は雑音電力の分散値を意味する。この(4)式から求まるチャネル容量Cから、どの程度の伝送レートの伝送モード(ここではQPSK, 64QAM等の変調方式と誤り訂正の符号化率の組み合わせにより規定されるモードを「伝送モード」と定義する)を適用可能か、またさらにどの程度の数のMIMOチャネルを多重化できるかが推定できる。
ちなみに、上記(4)式の中の送信電力Piは全てのMIMOチャネルに共通の値である必要はなく、また各MIMOチャネル毎に伝送モードを変更しても構わない。
一般に、注水定理と呼ばれる手法を用いることにより、この総送信電力Piの値を最適化することが可能である。このMIMOチャネルの中において、総送信電力Pi=0となるMIMOチャネルが存在した場合、そのMIMOチャネルを実際の伝搬に用いず、このMIMOチャネルの電力を、他のMIMOチャネルに対して配分した方が効率的な伝送が行えることを意味している。つまり、MIMOチャネルの多重数を、元々の多重可能な上限値よりも少なく設定することになる。この様にして、多重化するMIMOチャネルの最適値を判断することも可能である。
以上の固有モードSDM技術は、送信側で指向性を持った送信ビームを形成し、空間上で多重化する信号を受信側において効率的に信号分離できるようにするものである。ここで、通常のMIMO通信、すなわち、ひとつの送信局とひとつの受信局との間で通信を行う通信形態をシングルユーザMIMOと呼ぶ。ここで、無線LANや携帯電話等を例に見れば、基地局はサイズ的に比較的大きく、端末局側はポータブルな端末としてサイズは基地局よりも大幅に小さい。この様な小型で携帯可能な端末の中に、MIMO通信のための複数のアンテナを実装したとしても、実装したアンテナ間の距離が短く、アンテナ相関が非常に大きくなってしまう。この場合、(4)式における固有値λiの値は小さくなる傾向にあり、実際に通信に利用できるMIMOチャネル数はそれほど多くはない。
上述した様なケースにおいて、ひとつひとつの端末(個々の端末)との間においては空間多重するMIMOチャネル数を少なくする一方、複数の異なる端末と同時に同一周波数チャネルで通信するマルチユーザMIMO通信が有効である。図8に、このマルチユーザMIMOシステムの構成例を示す。図8において、101は基地局、102〜104は端末局#1〜#3を示す。実際にひとつの基地局が収容する端末局数は多数であるが、その中の数局(図8においては端末局#1〜#3:102〜104)を選び出して通信を行う。各端末局は基地局と比較して送受信アンテナ数が一般的に少ない。
例えば、基地局から端末局方向への通信(ダウンリンク)を行う場合を考える。基地局101は、多数のアンテナを用いて、複数の指向性ビームを形成する。例えば、各端末102〜104に対して、それぞれ3つのMIMOチャネルを割り当て、全体としては9系統の信号系列を送信する場合を考える。
その際、端末局#1(102)に対して送信する信号は、端末局#2(103)および端末局#3(104)方向には指向性利得が極端に低くなるように調整する。この結果として端末局#2(103)および端末局#3(104)への干渉を抑制することができる。同様に、端末局#2(103)に対して送信する信号は、端末局#1(102)および端末局#3(104)方向には指向性利得が極端に低くなるように調整する。同様の処理を端末局#3(104)にも施す。
この様に指向性制御を行う理由は、例えば端末局#1(102)においては、端末局#2(103)および端末局#3(104)で受信した信号の情報を知る術がないため、端末間での協調的な受信処理ができない。つまり、3本しかアンテナのない端末局#1(102)のみの受信処理において、9系統の全ての信号系列を信号分離することは非常に厳しい。そこで、各端末局に対して他の端末局宛の信号が受信されないように、送信側の基地局において干渉分離を事前に行う。
以上の説明が既存のマルチユーザMIMOシステムの概要に対する説明である。
次に、指向性ビームの形成方法について、以下に説明を加える。例えば、図8において、端末局#1(102)の第1受信アンテナと基地局(101)の第jアンテナとの間の伝達関数をh1jと表記することにする。基地局(101)のj=1〜9の全てのアンテナに関する伝達関数を用い、行ベクトルh1を(h11,h12,h13,…,h18,h19)と表記する。同様に端末局#1(102)の第2受信アンテナ、第3受信アンテナと基地局101の伝達関数をh2jおよびh3jとし、対応する行ベクトルh2およびh3を(h21,h22,h23,…,h28,h29)、(h31,h32,h33,…,h38,h39)とする。
端末局#2(103)、端末局#3(104)の受信アンテナにも同様の連番をふり、行ベクトルh4〜h9を(h41,h42,h43,…,h48,h49)〜(h91,h92,h93,…,h98,h99)とする。加えて、基地局101が送信する9系統の信号をt1〜t9と表記し、これを成分とする列ベクトルをTx[all]=(t1,t2,t3,…,t8,t9Tと表記する。ここで、右肩のTの文字はベクトル行列の転置を表す。また、同様に、端末局#1〜#3(102〜104)の9本のアンテナでの受信信号をr1〜r9と表記し、これを成分とする列ベクトルをRx[all]=(r1,r2,r3,…,r8,,r9Tと表記する。最後に、行ベクトルh1〜h9を第1から第9行成分とする行列を、全体伝達関数行列H[all]と表記する。
この様に表記した場合、システム全体としては以下の(5)式の関係式が成り立つ。
Rx[all]=H[all]・Tx[all]+n …(5)
この(5)式はシングルユーザMIMOにおける(1)式に対応する。同様に、(3)式に示すような送信指向性制御を行うため、9行9列の送信ウエイト行列Wを導入し、(3)式を以下の(6)式のように書き換える。
Rx[all]=H[all]・W・Tx[all]+n …(6)
さらに、送信ウエイト行列Wを列ベクトルw1〜w9に分解し、W=(w,w,w,…,w,w)と表記すると、以下の(7)式の様に表せる。
Figure 0004455512
上記(7)式において、例えば6つの行ベクトルh4〜h9と3つの列ベクトルw1〜w3の乗算(各成分の乗算したものの総和、複素ベクトルの場合は内積とは異なる)が全てゼロになるように、列ベクトルw1〜w3を選択することとする。同様に、行ベクトルh1〜h3および行ベクトルh7〜h9と列ベクトルw4〜w6の積、行ベクトルh1〜h6と列ベクトルw7〜w9の積の全てがゼロになるように選択することとする。すると、(7)式に示す9行9列の行列は、3行3列の9個の部分行列を用いて表記すると以下のように表すことができる。
Figure 0004455512
上記(8)式において、部分行列H[1]、H[2]、H[3] は3行3列の行列であり、他の部分行列Oは成分が全てゼロの3行3列の行列である。この様な条件を満たす変換行列Wを選択することにより、(8)式は以下に示す(9)式〜(11)式により表される3つの関係式に分解することができる。
Rx[1]=H[1]・Tx[1]+n …(9)
Rx[2]=H[2]・Tx[2]+n …(10)
Rx[3]=H[3]・Tx[3]+n …(11)
上記(9)式から(11)式において、Tx[1]=(t,t,t、Tx[2]=(t,t,t、Tx[3]=(t,t,t、Rx[1]=(r,r,r、Rx[2]=(r,r,r、Rx[3]=(r,r,rとした。この様に、全体伝達関数行列H[all]を、部分行列H[1]、H[2]、H[3] に分解することにより、基地局と3つの端末局とにおける各々の通信を、3つのシングルユーザMIMO通信とみなすことができるようになる。
次に、送信ウエイトベクトルw〜wの決定方法の例を以下に説明する。手順としては、端末局#1(102)に対する送信ウエイトベクトルw〜wを決定し、順次、端末局#2(103)に対する送信ウエイトベクトルw〜w、端末局#3(104)に対する送信ウエイトベクトルw〜wを決定する。
そして、まず、第1ステップとして、端末局#2及び#3に対応する6つの行ベクトルh〜hが張る6次元部分空間における6つの基底ベクトルe〜eを求める。この基底ベクトルを求める方法としては、グラムシュミットの直交化法の他、様々な方法があるが、ここでは例としてグラムシュミットの直交化法を例に説明する。
まず、ひとつのベクトル、例えば行ベクトルhに着目し、この方向で絶対値が1のベクトルを基底ベクトルeとする。この基底ベクトルeを下記の(12)式で表す。
=(h・h −1/2・h …(12)
上記(12)式において、(h・h )は同一ベクトルの絶対値の2乗を意味するスカラー量であり、この平方根の逆数の乗算は行ベクトルhを規格化することを意味する。
次に、行ベクトルhに着目し、この行ベクトルhの中から、上記(12)式により求めた基底ベクトルe方向の成分をキャンセルした行ベクトルh’を、下記の(13)式により求めた後、さらに、この行ベクトルh’を、(14)式により規格化する。
’=h−(h・e )e …(13)
=(h’・h−1/2’ …(14)
上記(13)式において、(h・e )はベクトルhの基底ベクトルe方向への射影を意味する。
同様の基底ベクトルの算出処理を、各ベクトルに対して、以下の(15)式及び(16)式を用いて行う。
’=h−Σ(i)(h・e )・e …(15)
=(h’・h−1/2・h’ …(16)
上記(15)式におけるΣ(i)は、4≦i≦j−1(jは4〜9の整数)の整数iに対する総和を意味する。つまり、既に確定した基底ベクトル方向の成分をキャンセルすることを意味している。上述した基底ベクトルの算出処理により、6つの基底ベクトルe〜eを求めることができる。
次に、第2ステップとして、端末局#1(102)に対する送信ウエイトベクトルw〜wを求める。
まず、行ベクトルh〜hから、基底ベクトルe〜eが張る6次元部分空間の成分をキャンセルする。具体的には以下の(17)式により表せる。
’=h−Σ(i)(h・e )・e …(17)
上記(17)式において、jは1〜3の整数であり、Σ(i)は、4≦i≦9の整数iに対する総和を意味する。
この(17)式を用いて求めた行ベクトルh’〜h’に対し、適当な直交化処理を行う。簡単のためにここではグラムシュミットの直交化を例として用いるが、その他の方法を用いても良い。
グラムシュミットの直交化法は、既に(12)〜(16)式において説明しているので詳細な説明は省略するが、3次元空間の3つの基底ベクトルe〜e各々を、下記の(18)式から(22)式により求めることができる。
=(h’・h−1/2・h’ …(18)
”=h’−(h’・e )・e …(19)
=(h”・h−1/2・h” …(20)
”=h’−(h’・e )・e−(h’・e )・e …(21)
=(h”・h−1/2・h” …(22)
さらに、上記基底ベクトルe〜e各々に対応する複素共役ベクトルの転置ベクトル、すなわちエルミート共役なベクトルを求めることにより、各基底ベクトルに対応するベクトルw=e 、w=e 、w=e として送信ウエイトベクトル(列ベクトル)が求まる。
上記(12)式から(22)式までの処理により、端末局#1(102)に対する送信ウエイトベクトルw〜wを決定することができる。
次に、第3ステップとして、第2のステップと同様の送信ウェイトベクトルの算出処理を、端末局#2(103)および端末局#3(104)に対しても施し、その結果として全ての送信ウエイトベクトルw〜wが求まる。
上述した第1ステップから第3のステップが従来方式における送信ウエイト行列の求める処理方法である。ここで、図9に、従来技術における送信ウエイト行列Wの算出のフローチャートを示す。以下に、図9のフローチャートを簡単に説明する。
まず、送信ウエイト行列の算出にあたり、全端末への伝達関数行列Hを取得する(S102)。宛先とする端末局に通し番号を付与し、その通し番号をkと表記した場合、まず通し番号kを初期化する(S103)。さらに、通し番号kをカウントアップし(S104)、着目しているk=1に対応した端末局#1(102)に対する部分伝達関数(ここでは便宜上、Hmainと表記)の抽出(S105)と、それ以外の宛先の端末局の部分伝達関数行列(ここでは便宜上、Hsubと表記)とを抽出(S106)する。
さらに、Hsubの各行ベクトルが張る部分空間の直交基底ベクトルを算出し、この基底ベクトルを{e}とおく(S107)。次に、上記(17)式に相当する処理として、着目している端末局#1(102)に対する部分伝達関数Hmainの各行ベクトルから、上記ステップS107で求めた基底ベクトル{e}に関する成分をキャンセルし、これを行列Hmain’とする(S108)。さらに、(18)〜(22)式に対応する処理として、上記行列Hmain’の行ベクトルが張る部分空間の直交基底ベクトルを算出し、これを{e}とおく(S109)。
次に、直交基底ベクトル{e}の各ベクトルのエルミート共役ベクトル(列ベクトル)として、端末局#1(102)宛の信号に関する送信ウエイトベクトル{w}を決定する。ここで、全ての宛先の端末局の送信ウエイトベクトルを決定済みか否かを判断し(S111)、残りの端末局があれば、ステップS104からステップS110の処理を繰り返す。また、上記ステップS111において、もし全ての宛先の端末局の送信ウエイトベクトルを決定済みであれば、送信ウエイトベクトル{w}を各列ベクトルとする行列として送信ウエイト行列Wを決定し(S112)、処理を完了する(S113)。
なお、ステップS101〜ステップS113における説明は全てシングルキャリアのシステムを仮定し、送信ウエイト行列をひとつだけ求めれば良かった。
現在、MIMO技術は無線LAN等で注目を集めているが、IEEE802.11a、IEEE802.11g等の標準規格の無線LANにおいては、マルチキャリアを用いたOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式を採用している。このOFDM変調方式を用いるマルチユーザMIMOシステムの場合には、以上の処理を全てのサブキャリアにおいて個別に実施する必要がある。
以上、説明を行った各種処理を実現するための従来技術における送信局側の構成例(シングルキャリアの場合)を図10に示す。
この図10において、111aはデータ分割回路、112a−1〜112a−Lはプリアンブル付与回路、、113a−1〜113a−Lは変調回路、114aは送信信号変換回路、115a−1〜115a−Mは無線部、116a−1〜116a−Mは送受信アンテナ、117aは伝達関数行列取得回路、118aは送信ウエイト算出回路、119aは空間多重条件判断回路を表す。
なお、ここでは空間多重する信号系列の総数をL(L>2、Lは整数)とし、無線部(115a−1〜115a−M)及び送受信アンテナ(116a−1〜116a−M)の系統数をMとした。さらに、装置として備える変調回路(113a−1〜113a−L)の数も同じくLであるとする。
また、送信局側の構成としたが、一般には基地局及び端末局は送信機能および受信機能の双方を備えており、ここで示した図9はその中の送信に関する機能のみを抜粋したものとなっている。
したがって、受信のための機能はここには明記していない。また、ここではダウンリンクでのマルチユーザMIMOを想定し、送信局側とは基地局を暗に想定しているが、必ずしも基地局である必要はない。
図10における無線部115a−1〜115a−M及び送受信アンテナ116a−1〜116a−Mにおいては、逐次信号の受信を個別に行う。例えば、送受信アンテナ116a−1にて受信された信号は、無線部115a−1にて周波数変換を施され、所定の処理の後、伝達関数行列取得回路117aにおいて各受信局の伝達関数情報を収集する。ここで、伝達関数情報の収集方法については、受信局側から伝達関数情報を制御チャネルを用いてフィードバックする方法、伝搬チャネル推定用のプリアンブル信号を送受双方向で適宜交換する方法など、様々な方法が選択可能であり、如何なる方法を用いても構わない。
この様にして取得した各受信局毎の伝達関数行列の情報は、伝達関数行列取得回路117a内において記録・管理しておく。空間多重条件判断回路119aは、信号を送信する際にどの受信局を同時に空間多重するか、及びその多重度をどの様に設定するかを管理する。ここで、空間多重する受信局と多重度が規定されると、送信ウエイト算出回路118aにおいては、先に示した条件に対応する送信ウエイト列ベクトル(w,w,w,…,wL−1,w)を算出する。また、送信ウエイト算出回路118aは、これらの情報を送信信号変換回路114aに入力する。
一方、データ分割回路111aは、送信すべきデータが入力されると、空間多重条件判断回路119aが判断した空間多重する受信局と多重度(全受信局でL多重とする)との条件に合わせて、データをL系統に分割する。
上記L系統に分割されたそれぞれの信号は、プリアンブル付与回路112a−1〜112a−Lに入力され、所定のチャネル推定用プリアンブルが付与され、変調回路113a−1〜113a−Lに入力される。
変調回路113a−1〜113a−Lにおいては、所定の変調処理が行われ、この変調処理された出力信号が送信信号変換回路114aに入力される。
この送信信号変換回路114aは、送信ウエイト算出回路118aが算出したベクトル群をもとに、変調回路113a−1〜113a−Lからの出力信号を成分とする送信信号ベクトルに対し、変換行列W=(w,w,w,…,wL−1,w)を乗算する。この乗算により変換されたM系統の信号は、無線部115a−1〜115a−Mにて周波数変換され、各々対応する送受信アンテナ116a−1〜116a−Mを介して送信される。
以上がシングルキャリアの無線システムの例である。OFDM変調方式を用いるマルチユーザMIMOシステムの場合には、図11に示すように、サブキャリア毎に同様の処理を行うことになる。
この図11に示すMIMOシステムと、図10に示す送信局側の構成例との差分として、各信号系列はデータ分割回路111bにてサブキャリア毎に分割され、各サブキャリアで同様の処理が行われる。また、各サブキャリアにおいて、プリアンブル付与回路112a−1〜112a−L、変調回路113a−1〜113a−L、送信信号変換回路114aに相当する処理を並列的に実施する。その後、逆フーリエ変換処理をIFFT回路120a−1〜120a−Mにおいて実施し、無線部115b−1〜115b−M、送受信アンテナ116b−1〜116b−Mを介して送信される。
次に、図12に、従来技術における受信局の構成例を示す。この図12においては端末局が受信局となるダウンリンクを想定し説明を行う。この場合、マルチユーザMIMOシステムの場合においても、送信局側での送信指向性制御により、他の受信局宛の信号が干渉とならないように制御しているため、受信局は通常のシングルユーザMIMOと同様に受信処理を行えばよい。ここではひとつの例として、3つのアンテナを備える場合を例にとり説明する。
図12において、121−1〜121−3は受信アンテナ、122−1〜122−3は無線部、123はチャネル推定回路、124は受信信号管理回路、125は伝達関数行列管理回路、126は行列演算回路#1、127は行列演算回路#2、128は硬判定回路、129はデータ合成回路、130はMIMO受信処理を示す。
まず、第1の受信アンテナ121−1から第3の受信アンテナ121−3は、それぞれ個別に受信信号を受信する。無線部122−1〜122−3を経由して、受信した信号はチャネル推定回路123に入力される。チャネル推定回路123は、送信側で付与された所定のプリアンブル信号の受信状況から、第i送信アンテナと第j受信アンテナとの間の伝達関数を取得する。
この様にして取得された伝達関数行列は、伝達関数行列管理回路125にて伝達関数行列Hとして管理される。行列演算回路#1(126)では、伝達関数行列管理回路125で管理された伝達関数行列Hをもとに、H、H・H、(H・H)−1、(H・H)−1を順次、演算により求める。
一方、プリアンブル信号に後続するデータ信号は、1シンボル分づつ受信信号管理回路124に入力される。受信信号管理回路124においては、各アンテナの受信信号(r, r, r)を成分とした受信信号ベクトルRxが一旦管理される。この受信信号ベクトルRxは、行列演算回路#2(127)において、行列演算回路#1(126)にて求められた(H・H)−1・Hと乗算される。この乗算結果により得られた信号は、送信信号ベクトルTxにノイズが乗った信号であるため、硬判定回路128にて信号判定がされ、各シンボル毎および各系統の信号はデータ合成回路129で合成され、もとのユーザデータが再生され出力される。
なお、上述した説明においては簡単のため、行列演算回路#1(126)および行列演算回路#2(127)における処理は、ZF(Zero Forcing)法と呼ばれる簡単なMIMO信号検出法を仮定して説明したが、MMSE(Minimum Mean Square Error)法や、MLD(Maximum Likelihood Detection)法などを用いても構わない。また、ZF法の説明として正方行列以外の伝達関数行列Hを想定し、擬似逆行列(H・H)−1・Hを用いる場合について説明したが、伝達関数行列Hが正方行列であれば簡易に伝達関数行列Hの逆行列を用いても構わない。
さらに、硬判定回路128においては硬判定を行うことを仮定していたが、誤り訂正を組み合わせ、軟判定を用いることも可能である。
上述した各場合には、図12における行列演算回路126(#1),行列演算回路127(#2)及び硬判定回路128の構成の詳細が変更になるのであるが、以降の説明においてはその具体例に依存しないので、ここではその詳細は省略する。また、以上はシングルキャリアを前提とした説明であったが、OFDM変調方式を用いる場合には、サブキャリア毎に同様の処理を行うことになる。
WO 2005/055484 A1
以上説明した様に、従来技術によりマルチユーザMIMO通信が実現可能であるが、この方法ではシングルユーザMIMOにおける固有モードSDM方式の様に、送信指向性が完全に最適化されたとは言えない。マルチユーザMIMOにおいて、上記(8)式に示すような直交化を完全に行うと、本来信号を送信したい方向に対し効率的に送信できない可能性がある。
例えば、図8に示した従来技術の例においては、まず9次元のベクトル空間に対し6つの行ベクトルh〜hが張る6次元部分空間を求め、この空間に直交した3次元部分空間の3つの基底ベクトルe〜eを求める。
また、送信ウエイトベクトルw〜wは、上記基底ベクトルe〜eの複素共役ベクトル、ないしはこの基底ベクトルe〜eの複素共役ベクトルに対し、3次元空間内で適当な回転処理を施した後のベクトルとして与えられる。ここで、(8)式における部分行列H[1]の成分は、行ベクトルh〜hと送信ウエイトベクトルw〜wの各成分の乗算値の総和、すなわち行ベクトルh〜hと、送信ウエイトベクトルの複素共役ベクトルw 〜w (ベクトルの右上の「」の記号は複素共役ベクトルを意味する)との内積によって与えられる。つまり、行ベクトルh〜hが張る3次元部分空間と、上記複素共役ベクトルw 〜w が張る3次元部分空間との重なりが大きければ効率的な伝送が可能である。一方、重なりが小さい(相互の射影が小さい)場合には、送信した信号の電力はロスとなり、送信された信号は受信局において適切に受信されずに無駄になる。
そもそも上述した3次元部分空間の状況は、9次元空間から3次元空間へ、送信指向性を絞り込んだためであり、部分空間の次元が小さければ小さいほど、その射影は小さくなる傾向にある。
以上の説明においては、9次元空間から3次元空間への送信指向性絞り込みを行っていたが、実際の行ベクトルh〜hが張る6次元部分空間の中でも、あまり送信に用いられていない方向があるのなら、その方向に関しては、送信ウエイトベクトルw〜wの選択条件からその程度に応じて直交化条件を緩和することが好ましい。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、マルチユーザMIMO通信を行う際の送信指向性制御において、各無線端末局に関する部分伝達関数行列から行う干渉成分除去処理の範囲を、必要最低限に限定して行うことが可能な無線通信方法及び無線基地局を提供することを目的とする。
上記問題を解決するために、本発明の無線通信方法は、一つの第1の無線局と複数の第2の無線局により構成され、該第1の無線局は複数本のアンテナで構成される第1のアンテナ群を備え、該第2の無線局は複数本のアンテナで構成される第2のアンテナ群を備え、前記第1の無線局の前記第1のアンテナ群および前記第2の無線局の全てないしはその一部の備える前記第2のアンテナ群により構成されるMIMO(Multiple Input Multiple Output)チャネルを介して複数の信号系統を同一周波数チャネルおよび同一時刻に空間多重してMIMO通信することが可能な無線通信システムにおける無線通信方法であって、前記第1の無線局における送信処理は、前記第1のアンテナ群と前記複数の第2のアンテナ群の間のMIMOチャネルの各伝達関数情報を取得する伝達関数行列取得ステップと、前記複数の第2の無線局の中からその全てないしはその一部の無線局を同時に空間多重する通信相手局として選択する空間多重条件判断ステップと、前記第1のアンテナ群と該選択された複数の第2の無線局の前記第2のアンテナ群との間の伝達関数情報の中から、前記第1のアンテナ群と着目する第2の無線局の前記第2のアンテナ群との間の伝達関数情報により構成される第1の部分伝達関数行列を抽出する第1の部分伝達関数抽出ステップと、前記第1のアンテナ群と該選択された複数の第2の無線局の前記第2のアンテナ群との間の伝達関数情報の中から、前記第1のアンテナ群と着目する第2の無線局以外のひとつまたは複数の第2の無線局の前記第2のアンテナ群との間の伝達関数情報により構成される第2の部分伝達関数行列を抽出する第2の部分伝達関数抽出ステップと、該第2の部分伝達関数行列を構成する行ベクトルが張る部分空間の基底ベクトルを算出する第2部分空間基底ベクトル算出ステップと、該基底ベクトル毎に、前記第2の部分伝達関数行列を構成する行ベクトルが張る部分空間から前記基底ベクトルへの射影量αを算出する射影量算出ステップと、算出された該射影量αを引数とし、該射影量に対し、単調増加関係をもつ物理量を与える係数f(α)(0≦f(α)≦1)を出力する係数算出ステップと、前記第1の部分伝達関数行列を構成する各行ベクトル毎に、該行ベクトルの前記基底ベクトル方向の各成分を前記係数f(α)を乗算してキャンセルする部分空間干渉成分部分除去ステップと、該キャンセル処理を行った前記第1の部分伝達関数行列を構成する各行ベクトルに対し、該行ベクトルが張る部分空間の基底ベクトルを算出する第1部分空間基底ベクトル算出ステップと、該基底ベクトルをもとに送信ウエイトベクトルを決定する送信ウエイトベクトル決定ステップと、該送信ウエイトベクトルにより構成される送信ウエイト行列を求める送信ウエイト行列生成ステップと、複数の信号系列の送信信号を各成分として構成される送信信号ベクトルに対して前記送信ウエイト行列を乗算する送信信号変換ステップと、該乗算後の結果を前記第1のアンテナ群を介して送信する送信ステップとを実施することを特徴とする。
従来技術とは、該第2の部分伝達関数行列を構成する行ベクトルが張る部分空間の該基底ベクトル毎に、前記第2の部分伝達関数行列を構成する行ベクトルが張る部分空間から前記基底ベクトルへの射影量αを算出する射影量算出ステップと、算出された該射影量αを引数とし、該射影量に対し、単調増加関係をもつ物理量を与える係数f(α)(0≦f(α)≦1)を出力する係数算出ステップと、前記第1の部分伝達関数行列を構成する各行ベクトル毎に、該行ベクトルの前記基底ベクトル方向の各成分を前記係数f(α)を乗算してキャンセルする部分空間干渉成分完全除去ステップとを実施する点で異なる。
これにより、本発明の無線通信方法は、第1の部分伝達関数行列を構成する各行ベクトル毎に、行ベクトルの基底ベクトル方向の各成分をキャンセルする処理において、干渉除去において意義のある範囲内にキャンセル量を制限するためのひとつの実現方法を与えるものであり、この結果として効率的な信号伝送が可能となる。
本発明の無線通信方法は、上記記載の無線通信方法であって、前記第1の無線局は、該第2の部分伝達関数行列を構成する行ベクトルが張る部分空間の基底ベクトルを算出する第2部分空間基底ベクトル算出ステップにおいて、第2の部分伝達関数行列ないしは該行列と該行列のエルミート共役である行列の積として与えられる行列に対し、その固有ベクトル及び固有値を求めるステップと、前記固有値の絶対値ないしは絶対値の近似値の大きいほうから、所定の数だけ固有ベクトルを選択することにより前記基底ベクトルを算出するステップとを実施することを特徴とする。
これにより、本発明の無線通信方法は、基底ベクトルへの射影量αが、基底ベクトル毎にメリハリがつくように設定するためのひとつの実現方法を与える。ここで、射影量αの値が非常に小さくなるような基底ベクトルを見つけることが出来れば、第1の部分伝達関数行列を構成する各行ベクトルからはその基底ベクトル方向の成分をキャンセルしなくても、干渉量としては低く抑えることが可能である。
本発明の無線通信方法は、上記記載の無線通信方法であって、前記射影量算出ステップは、前記射影量αに前記各固有ベクトルの固有値を代入することを特徴とする無線通信方法。
これは、本発明の無線通信方法において、射影量αを算出するためのひとつの具体的な方法を与えるものである。
本発明の無線通信方法は、上記記載の無線通信方法であって、前記第1の無線局は、該第2の部分伝達関数行列を構成する行ベクトルが張る部分空間の基底ベクトルを算出する第2部分空間基底ベクトル算出ステップにおいて、該第2の部分伝達関数行列から、第2の部分伝達関数行列を構成する行ベクトル群を抽出するステップと、該抽出するステップにより抽出された行ベクトル群の中で絶対値ないしは絶対値の近似値が最も大きい行ベクトルを選択するステップと、該該選択するステップにより選択された該最も大きい行ベクトルを規格化し、該規格化した行ベクトルを基底ベクトルの一つとして設定するステップと、全ての基底ベクトルの決定が完了したか否かを判定するステップと、該判定するステップで全ての基底ベクトルの決定が完了したと判定された場合、該第2部分空間基底ベクトル算出ステップを終了し、基底ベクトルを出力するステップと、全ての該行ベクトルが選択済みではないと該判定するステップで判定された場合、該行ベクトル群から、該規格化された該最も大きい行ベクトルを除外して、新たな行ベクトル群として生成するステップと、該新たな行ベクトル群として生成するステップが生成した該行ベクトル群の各行ベクトルから、最後に求めた該基底ベクトルの成分をキャンセルして行ベクトル群を更新するステップとを備え、該行ベクトル群を更新するステップにより得られた行ベクトル群を抽出された行ベクトル群に用いて、前記選択するステップから全ての基底ベクトルの決定が完了するまで繰り返すことを特徴とする。
これは、本発明の無線通信方法において、基底ベクトルを取得するための方法として、固有ベクトルを求めるよりも演算量が少ない簡易な方法を与えるものである。
本発明の無線通信方法は、上記記載の無線通信方法であって、前記第1の無線局は、前記基底ベクトル毎に求めた射影量αの大小関係を判断するステップと、該大小判断の結果としてαの大きさの順番に対応した所定の係数βを前記射影量α毎に定めるステップと、該射影量に対して単調増加関係をもつ物理量を与える前記係数f(α)を、係数βを乗算し、β×f(α)に置き換えるステップとを実施することを特徴とする。
これにより、本発明の無線通信方法は、送信するアンテナ数に対し、実際に空間多重を行う信号系列数が少ない場合には、その方向への信号送信が行われない基底ベクトルが存在しうるのに対し、第1の部分伝達関数行列を構成する各行ベクトルからはその基底ベクトル方向の成分をキャンセルしなくても、干渉量としては低く抑えることが可能であり、この効果を取り込むためのひとつの方法を与えることができる。
本発明の無線基地局は、一つの無線基地局と複数の無線端末局により構成され、該無線基地局は複数本のアンテナで構成される第1のアンテナ群を備え、該無線端末局は複数本のアンテナで構成される第2のアンテナ群を備え、前記無線基地局の前記第1のアンテナ群および前記無線端末局の全てないしはその一部の備える前記第2のアンテナ群により構成されるMIMOチャネルを介して複数の信号系統を同一周波数チャネルおよび同一時刻に空間多重してMIMO通信することが可能な無線通信システムにおける無線基地局であって、前記第1のアンテナ群と前記複数の第2のアンテナ群の間のMIMOチャネルの各伝達関数情報を取得する伝達関数行列手段と、前記複数の無線端末局の中からその全てないしはその一部の無線局を同時に空間多重する通信相手局として選択する空間多重条件判断手段と、前記第1のアンテナ群と該選択された複数の第2の無線局の前記第2のアンテナ群との間の伝達関数情報の中から、前記第1のアンテナ群と着目する第2の無線局の前記第2のアンテナ群との間の伝達関数情報により構成される第1の部分伝達関数行列を抽出する第1の部分伝達関数抽出手段と、前記第1のアンテナ群と該選択された複数の無線端末局の前記第2のアンテナ群との間の伝達関数情報の中から、前記第1のアンテナ群と着目する無線端末局以外のひとつまたは複数の無線端末局の前記第2のアンテナ群との間の伝達関数情報により構成される第2の部分伝達関数行列を抽出する第2の部分伝達関数抽出手段と、該第2の部分伝達関数行列を構成する行ベクトルが張る部分空間の基底ベクトルを算出する第2部分空間基底ベクトル算出手段と、該基底ベクトル毎に、前記第2の部分伝達関数行列を構成する行ベクトルが張る部分空間から前記基底ベクトルへの射影量αを算出する射影量算出手段と、求められた該射影量αを引数とし、該射影量に対し単調増加関係をもつ物理量を与える係数f(α)(0≦f(α)≦1)を出力する係数算出手段と、前記第1の部分伝達関数行列を構成する各行ベクトル毎に、該行ベクトルの前記基底ベクトル方向の各成分を前記係数f(α)を乗算してキャンセルする部分空間干渉成分部分除去手段と、該キャンセル処理を行った前記第1の部分伝達関数行列を構成する各行ベクトルに対し、該行ベクトルが張る部分空間の基底ベクトルを算出する第1部分空間基底ベクトル算出手段と、該基底ベクトルをもとに送信ウエイトベクトルを決定する送信ウエイトベクトル決定手段と、該送信ウエイトベクトルにより構成される送信ウエイト行列を求める送信ウエイト行列生成手段と、複数の信号系列の送信信号を各成分として構成される送信信号ベクトルに対して前記送信ウエイト行列を乗算する送信信号変換手段と、該乗算後の結果を前記第1のアンテナ群を介して送信する送信手段とを備えたことを特徴とする。
本発明の無線基地局は、上記記載の無線基地局であって、該第2の部分伝達関数行列を構成する行ベクトルが張る部分空間の基底ベクトルを算出する第2部分空間基底ベクトル算出手段は、第2の部分伝達関数行列ないしは該行列と該行列のエルミート共役である行列の積として与えられる行列に対し、その固有ベクトル及び固有値を求める手段と、前記固有値の絶対値ないしは絶対値の近似値が大きいほうから所定の数だけ固有ベクトルを選択することにより前記基底ベクトルを算出する手段とを備えたことを特徴とする。
本発明の無線基地局は、上記記載の無線基地局であって、該第2の部分伝達関数行列を構成する行ベクトルが張る部分空間の基底ベクトルを算出する第2部分空間基底ベクトル算出手段は、該第2の部分伝達関数行列から、第2の部分伝達関数行列を構成する行ベクトル群を抽出する手段と、該抽出する手段により抽出された行ベクトル群の中で絶対値ないしは絶対値の近似値が最も大きい行ベクトルを選択する手段と、該選択する手段により選択された該最も大きい行ベクトルを規格化し、該規格化した行ベクトルを基底ベクトルの一つとして設定する手段と、全ての基底ベクトルの決定が完了したか否かを判定する手段と、該判定する手段で全ての基底ベクトルの決定が完了したと判定された場合、該第2部分空間基底ベクトル算出手段を終了し、基底ベクトルを出力する手段と、全ての該行ベクトルが選択済みではないと該判定する手段で判定された場合、全ての基底ベクトルの決定が完了するまで、該行ベクトル群から、該規格かされた該最も大きい行ベクトルを除外して、新たな行ベクトル群として生成する手段と、該新たな行ベクトル群として生成する手段が生成した該行ベクトル群の各行ベクトルから、最後に求めた該基底ベクトルの成分をキャンセルして行ベクトル群を更新する手段とを備え、該行ベクトル群を更新する手段により得られた行ベクトル群を抽出された行ベクトル群に用いて、前記選択する手段から全ての基底ベクトルの決定が完了するまで繰り返すことを特徴とする。
本発明の無線基地局は、上記記載の無線基地局であって、前記基底ベクトル毎に求めた射影量αの大小関係を判断する手段と、該大小判断の結果としてαの大きさの順番に対応した所定の係数βを前記射影量α毎に定める手段と、該射影量に対し単調増加関係をもつ物理量を与える前期係数f(α)をβ×f(α)に置き換える手段とを備えたことを特徴とする。
以上説明したように、本発明によれば、マルチユーザMIMO通信を行う際、無線基地局から各無線端末局への送信指向性制御において、無線基地局にて各無線端末局に関する部分伝達関数行列から行う干渉成分除去処理を、必要最低限の干渉除去に範囲を限定的に行うことで部分伝達関数行列の各行ベクトルが縮小するのを防ぎ、その結果として効率的に伝送を行うことが可能となる。
本発明の無線通信システムの構成を説明する前に、本発明における無線基地局におけるデータの送受信処理の動作原理を説明する。
上述した従来技術の説明において、無線端末局#1に対する送信ウエイトベクトルw〜wは、基底ベクトルe〜eに完全に直交していた。
しかしながら、上記(17)式を、以下に示す(23)式の様に変形することにより、完全な直交よりも条件を緩和する。
’=h−Σ(i){f(α)・( h・e )・e} …(23)
上記(23)式において、関数f(α)は、他の端末局宛の伝達関数行列を構成する行ベクトルh〜hの張る部分空間に対する基底ベクトルeからの射影に相当する物理量αiを引数とする単調増加関数であり、0≦f(αi) ≦1の範囲の実数値をとる。
上記(23)式の意図することは以下の通りである。この(17)式においては、行ベクトルhから、行ベクトルh〜hの張る部分空間の成分(射影分)をキャンセルしたベクトルh’を求め、上記(18)式〜(22)式にて、これらの行ベクトルが張る部分空間内に基底ベクトルを設定していた。
したがって、行ベクトルh(j=1〜3)と基底ベクトルe(i=1〜3)との内積、すなわち内積h・e は、その性質上、内積h’・e と一致する。
さらに、基底ベクトルe は、送信ウエイトベクトルwであり、Pji=h・w(=h’・e )は「e方向の送信ビームで送信した信号が、受信アンテナjにて受信される受信電力」に相当する物理量(以降、換算伝達関数と呼ぶ)である。
上記(17)式の右辺第2項の効果によって、ベクトルh’の大きさ(絶対値)がベクトルhの大きさよりも小さくなることから、換算伝達関数Pjiが大きな値を維持するようにするためには、ベクトルh(j=1〜3)の大きさをなるべく維持した状態で、i=1〜3の基底ベクトルを求めることが好ましい。そこで、i=4〜9の基底ベクトルe方向の成分をベクトルhから完全にキャンセルせず、部分的なキャンセルにとどめることが好ましい。
ところで、この「ベクトルhにおける基底ベクトルe方向の成分をキャンセルする」ことの意味は、基底ベクトルe方向に信号を送信した際に、他のユーザ(無線端末局)に対して干渉波となる成分を事前に除去する送信指向性制御を行うことを意味する。つまり、i=1〜3及びj=4〜9に対する換算伝達関数Pjiは、端末局#1から端末局#2または#3への干渉としての漏れこみを意味し、上記(17)式をそのまま用いた場合、換算伝達関数Pjiは常にゼロになることが保証される。一方において、(23)式を用いた場合、換算伝達関数Pjiは一般にはゼロとはならない。
しかし、行ベクトルh〜hは、お互いに直交しているとは限らず、場合によっては行ベクトルh〜hが張る部分空間の基底ベクトルのうちのいずれか一つ、例えば基底ベクトルeと行ベクトルh〜hとが、殆ど直交関係にある様な場合も考えられる。
この様な場合には、基底ベクトルe方向に信号を送信しても、端末局#2および端末局#3に対しては殆ど干渉とならない。このため、上述した場合、(23)式における係数f(α)はゼロとして扱っても実効上は問題がない。
もちろん、完全に直交していなくても、行ベクトルh〜hと基底ベクトルeとの内積が十分に小さい値を持つのであれば、許容可能な干渉として扱うことが可能であり、その場合には係数f(α)はその直交の度合いに応じてゼロに近い値を設定すれば良い。もし、逆に行ベクトルh〜hと基底ベクトルeとの内積が比較的大きな値を持つ場合には、係数f(α)は1に近い値を設定すれば良い。
上記αなる物理量の例としては、例えば、(24)式に示す行ベクトルh〜hと基底ベクトルeとの内積の絶対値の総和、または(25)式に示す行ベクトルと基底ベクトルとの内積の絶対値のべき乗の総和など(またはそれぞれの近似値)が考えられる。
Figure 0004455512
Figure 0004455512
上述した(24)式及び(25)式以外のさらなるバリエーションとして、複素数の絶対値に対する演算の近似として、内積の実数部の絶対値と虚数部の絶対値との総和、あるいは、内積における実数部の絶対値のべき乗と虚数部の絶対値のべき乗との総和を用いる方法なども考えられる。
さて次に、行ベクトルh〜hにより構成される部分伝達関数行列をH2&3と表記し、さらに基底ベクトルe〜eを、行列H2&3 ・H2&3の非ゼロの固有値に対する固有ベクトルu〜u(列ベクトル)のエルミート共役ベクトルとなるように選んだ場合を考える(すなわち、e =uの場合)。この場合、(25)式の右辺はu ・H2&3 ・H2&3・uに一致し、これは行列H2&3 ・H2&3の固有ベクトルuに対する固有値λを与える。
すなわち、端末局#2および端末局#3に対する指向性として、u 方向の利得(固有値)が大きい場合には、干渉が大きくなるのでf(α)を1に近く設定し、小さい場合にはゼロに近づける。この関数型の具体的な例としては、例えば、以下の(26)式または(27)式ようなものが考えられる。
f(α)= min(1, C/α) …(26)
f(α)= min(1, Log[C/α]) …(27)
上記(26)式及び(28)式において、Cは定数を表す。
また、この様な関数型以外にも、シミュレーションや実伝搬測定等の経験的なノウハウとして、物理量αと係数f(α)との対応関係を示すデータテーブル(物理量αに対応して係数f(α)が設定されたルックアップテーブル)を作成し、これにより、物理量αに対応したテーブル検索の結果として、この物理量αに対応する係数f(α)を与えることも可能である。
さらには、(26)式及び(27)式等で一旦求めた各iに対するf(α)に対し、αの大小のランキングに応じた係数βをかけても構わない。
特に、今回の例においては、端末局#2および端末局#3に対する空間多重数の和が6としていたが、この和が5以下の場合であれば、最も小さな物理量αに対する係数f(α)に1>β≧0となる係数を乗算し、係数f(α)をβ・f(α)と置き換えても良い。なお、係数βは物理量αの大きさの順番に小さな値をとる(小さな物理量αほど小さな係数βとなる)。
以上の原理にもとづき、上記(23)により求めた行ベクトルh’(i=1〜3)から、従来方式と同様に、従来例に記載した(18)式〜(22)式により直交する基底ベクトルを求める。ただし、(18)式〜(22)式の代わりに、行ベクトルh’、h’、h’を各行ベクトル成分とする行列Hに対し、H ・Hの非ゼロの固有値に対する固有ベクトルu〜u(列ベクトル)のエルミート共役ベクトルを基底ベクトルe〜eとして選んでも構わない。
これは、(9)式〜(11)式の様に各端末毎に分解した式に対し、(3)式において説明した固有モードSDMを適用することに相当する。特に、例えば端末局#1に対して空間多重する信号系統数が「3」より小さい場合、固有値の大きな方の固有ビームから順番に利用することで、より効率的に伝送を行うことが可能となる。
なお、以上の説明の中において、グラムシュミットの直交化法による基底ベクトルの算出、ないしは特異値分解等による固有ベクトルの算出を例として説明した。
本発明においては、特に小さな物理量αiに対し、係数f(αi)を小さくすることにより、部分的な干渉の除去効果を高めることができる。基底ベクトルが固有ベクトルとなるように選んだ場合、固有値は固有ベクトル毎に大きなばらつきを有している。すなわち、特に小さな物理量αiを効率的に選択することが可能である。
しかし、一般に行列の次元が大きくなると固有ベクトルの算出は困難になる。一方で、単純にグラムシュミットの直交化法を用いる場合には、(24)式及び(25)式等で与えられる物理量αiは、基底ベクトル毎に大きさの大小の差がつきにくい。
上述した様な場合、グラムシュミットの直交化法を行う際の基底ベクトルの選び方に工夫を加えることで対処が可能である。以下に、そのための手法の例を示す。
まず、第1の基底ベクトルeを決めるため、行ベクトルh〜hの中において、最も絶対値が大きい行ベクトルを選択する。
そして、その選択された行ベクトルに対して、規格化処理を行うこと、すなわち(12)式に相当する処理を行うことにより、基底ベクトルeを設定める。
次に、ここで選択して用いた行ベクトルを除く全ての行ベクトルh〜h(この時点でベクトルの数は5個)に対し、(13)式に示した基底ベクトルe方向の成分のキャンセル処理を行い、行ベクトルh’〜h’を求める。
上述の様にして求めた全ての行ベクトルの中から、先ほどと同様に絶対値が大きい行ベクトルを選択する。
次に、この行ベクトルに対して規格化処理を行い、すなわち(14)式に相当する処理により、基底ベクトルeを定める。
さらに続けて、行ベクトルにおいて、基底ベクトルを求めるためにまだ用いていない残りの全ての行ベクトルh〜h(この時点でベクトルの数は4個)に対し、(13)式に示したe方向の成分のキャンセル処理を行い、行ベクトルh”〜h”を求める。この様に、順次、決定済みの基底ベクトル方向の成分をキャンセルし、キャンセル後のベクトルの絶対値が大きい方から順番に基底ベクトルを決定する。この様な処理により基底ベクトルを設定することにより、後になって選ばれる基底ベクトルの方向ほど、干渉を与える程度が低くなる。この結果として、(24)式及び(25)式等で与えられる物理量αは、値として大きなばらつきを持つようになる。以上の説明が、本発明の動作原理の説明である。
上述した本発明の通信方法の送信ウエイトの作成における動作原理を利用して通信を行うための本発明の実施の形態を、以下に図を用いて説明する。
ここで、本発明の一実施形態における無線基地局および無線端末局による無線通信システムの構成に関する説明を行う。本発明の第1の無線局の送信部の構成、および第2の無線局の受信部の構成は、基本的に図10〜図12に示した従来方式と同一であるが、唯一、無線基地局の送信部における送信ウエイト算出回路(図1における118aおよび118b)の構成が異なる。図1を参照して、本発明の一実施形態における送信ウエイト算出回路を説明する。図1は本発明の一実施形態における送信ウエイト回路の構成例を示すブロック図である。図1の送信ウエイト回路を、図2に示す従来技術における送信ウエイト算出回路(図10における1118aまたは図11における1118b)の構成とを、比較しつつ説明する。
まず、図2に示した従来技術について説明する。
まず、図2の従来方式における送信ウエイト送信回路(図10における118aまたは図11における118b)に対して、伝達関数行列取得回路(図10における117aまたは図11における117b)からは全無線端末局の伝達関数情報が、空間多重条件管理回路(図10における119aまたは図11における119b)からは無線端末局毎の空間多重する信号系統数がそれぞれ入力され、最終的に算出した送信ウエイトベクトルに関する情報を送信信号変換回路(図10における114aまたは図11における114b)に出力する。
ここで、まず伝達関数行列取得回路(図10における117aまたは図11における117b)から伝達関数行列管理回路132に全端末局の伝達関数情報が入力されると、一旦、ここで伝達関数に関する情報を記録保存する。
また、空間多重条件管理回路(図10における119aまたは図11における119b)から端末局毎の空間多重する信号系統数が入力されると、空間多重管理回路131は、送信ウエイトベクトルを順次求めるために、伝達関数行列管理回路132に対して、送信ウエイトベクトルを算出する対象の端末局との伝達関数情報を、Hmain抽出回路133およびHsub抽出回路134に出力させる指示を出す。
例えば、空間多重管理回路131は、無線端末局#1宛の送信ウエイトベクトルを求める際に、伝達関数行列管理回路132に対して、無線端末局#1との間の伝達関数情報を出力するよう指示する。上記指示により、伝達関数行列管理回路132は、Hmain抽出回路133およびHsub抽出回路134に、それぞれ伝達関数情報を出力する。
main抽出回路133およびHsub抽出回路134各々は伝達関数情報を伝達関数行列管理回路132から入力し、無線端末局#1に対応するこの伝達関数情報から、Hmain抽出回路(133)では部分伝達関数Hmainを、Hsub抽出回路(134)では無線端末局#2及び#3に関する部分伝達関数Hsubを抽出する。
sub部分空間基底ベクトル算出回路136においては、Hsub抽出回路134から入力される部分伝達関数Hsubを構成する行ベクトルに対し、何らかの直交化処理を行い、これらの行ベクトルが張る部分空間の基底ベクトルを求める。
main部分空間干渉成分完全除去回路135においては、Hsub部分空間基底ベクトル算出回路136から基底ベクトルが、またHmain抽出回路(133)から部分伝達関数行列Hmainが入力される。また、Hmain部分空間干渉成分完全除去回路135は、部分伝達関数行列Hmainの各行ベクトルから、Hsub部分空間基底ベクトル算出回路136から入力された基底ベクトルの成分を、上記(17)式に従って完全にキャンセルする。
その後、Hmain部分空間基底ベクトル算出回路137は、(18)式〜(22)式の手順等により、何らかの手段で干渉除去されて求めた部分空間に対する基底ベクトルを算出する。
送信ウエイトベクトル決定回路138は、上記部分空間に対する基底ベクトルを入力し、この基底ベクトルを送信ウエイトベクトルに変換し、送信信号変換回路114aまたは114bに出力する。
なお、ここまでの説明では特定の無線端末局宛の信号に着目して説明したが、空間多重管理回路131においては、全ての無線端末局宛の信号の空間多重を管理し、以上説明した処理を全無線端末局宛の信号として実施できるよう、並列的、ないしは直列的に処理を実施できるようにしている。つまり、無線端末局#1に関する伝達関数をHmainとし、無線端末局#2及び#3に関する伝達関数をHsabとして処理した内容を端末局を入れ替えて同様の処理を行う。この結果として、送信ウエイトベクトル決定回路138は、送信信号変換回路114aまたは114bへの出力として、送信する全ての信号系列に対する送信ウエイトベクトルを全て含む送信ウエイト行列Wを形成する。
上述した図6に示す従来方式においては、Hmain部分空間干渉成分完全除去回路135にて、無線基地局間の干渉成分を完全に除去していた。この干渉成分の除去処理は、(17)式による処理であるためである。
一方、図1に示す本実施形態においては、この干渉成分の除去を、(23)式に対応して行うように変更した。この計算式の変更に合わせて、図5におけるHmain部分空間干渉成分完全除去回路135を、図1に示すように、Hmain部分空間部分成分部分除去回路3に置き換え、さらに、Hsub部分空間射影量α算出回路1及びf(α)算出回路2の構成を追加した。
上記Hsub部分空間射影量α算出回路1は、Hsub部分空間における各行ベクトルと、Hsub部分空間基底ベクトル算出回路136の求めた基底ベクトルとの間の射影量(物理量)αを求める。
f(α)算出回路2は、上記射影量αiに対応した係数f(α)を算出する。
main部分空間部分成分部分除去回路3は、算出された上記f(α)の値及びHsub部分空間基底ベクトル算出回路136の求めた基底ベクトルが入力されると、(23)式に従って部分的に干渉成分をキャンセルする。
なお、本発明の実施形態においては、Hmain部分空間基底ベクトル算出回路137においては、通常のベクトル直交化以外に、固有ベクトルを使用したり、後に述べる図6に示したフローチャートに従って基底ベクトルを算出しても構わない。
次に、図3を参照して、本発明の一実施形態における送信ウエイト行列Wの算出処理を説明する。図3は、本実施形態における送信ウエイト行列Wの算出動作を示すフローチャートである。
図3に示すフローチャートは、基本的に図9に示す従来技術のフローチャートと同様であり、差分としてはステップ(処理)S108の代わりに、ステップS8,S9及びS10が行われる。
ステップS8において、Hsub部分空間射影量α算出回路1は、ステップS7にてHsub部分空間基底ベクトル算出回路136が求めた基底ベクトル{e}に対し、(24)式及び(25)式等に記載した演算により、基底ベクトルe毎に、行列Hsubの行ベクトルが張る部分空間への射影に相当する物理量αiを算出する。
次に、ステップS9において、f(α)算出回路2は、上記物理量αiに対する係数f(αi)を求める。ここで、従来技術においては、この係数f(αi)が全て「1」であるという条件により、Hsub部分空間射影量α算出回路1は、(17)式によりステップS108の処理を行っていた。しかしながら、本発明によれば係数f(αi)は「0」から「1」の範囲の実数値を取ることとなる。
このため、ステップS10において、Hmain部分空間部分成分部分除去回路3は、上記(23)式に相当する処理を実施する。
上述した差分以外、図3に示すフローチャートと、図9に示す従来技術のフローチャートとは同様の処理が行われる。
なお、図3に示すフローチャートにおいて、ステップS3からステップS13までの処理は、順番(シリアル)に処理を行うとしているが、無線端末局#kに対する処理の結果が無線端末局#k+1に対する処理の結果に影響しないため、各無線端末局に対する干渉除去の処理を並列的に行っても構わない。
次に、本発明の一実施形態における直交基底ベクトルの算出処理を説明する。図4は、本実施形態のHsub部分空間基底ベクトル算出回路136における直交基底ベクトルの算出動作を示すフローチャートである。
上記図3の説明においては、ステップS7における直交基底ベクトルの算出方法について言及がなかったが、例えばグラムシュミットの直交化法やQR分解法、特異値分解による固有ベクトル算出など、様々な方法が考えられる。図4においては、この様々な方法の中から固有ベクトルを用いる場合について具体的に説明している。
図3のステップS6が終了した後(S21)、ベクトル(Hsub・Hsubの固有ベクトル及び固有値を求める(S22)。
例えば、図8で示した無線通信システムようなケースにおいては、行列Hsubは6行9列であり、(Hsub・Hsubの固有ベクトルは9個存在する。しかし、そのうちの少なくとも3個は固有値がゼロである。これは、部分伝達関数行列Hsubの行ベクトルが張る部分空間が6次元以下の空間であるからである。
ここで、意味のある固有ベクトルは非ゼロの固有値の固有ベクトルであり、固有値の大きさ順に固有ベクトルを抽出する(S23)。そして、図3のフローチャートにおけるステップS8としては、物理量αに各固有ベクトルの固有値λを代入することにより、Hsub部分空間射影量α算出回路1は物理量αの算出処理を実現する(S24)。以上の処理後、ステップS9に戻り処理を続ける。
以上は、直交基底ベクトルとして固有ベクトルを用いる場合の例であるが、一般に次元が大きくなると固有ベクトルの算出には膨大な演算を要する。
そこで、その他の直交化手法の中で、物理量αiに大きなばらつきが現れやすいように、Hsubの各行ベクトルが張る部分空間から、なるべく基底ベクトル方向の成分が大きい方から順番に基底ベクトルを決める方法を考える。
図5は、本発明の一実施形態におけるHsub部分空間基底ベクトル算出回路136における他の直交基底ベクトルの算出動作を示すフローチャートである。
図3のフローチャートにおけるステップS6の処理後(S31)、部分伝達関数行列Hsubの各行ベクトルを抽出し、これを行ベクトル群{h}とする(S32)。
次に、行ベクトル群{h}の各ベクトルの大きさ(ないしはその近似値)を求める(S33)。この各ベクトルの大きさとしては、絶対値、絶対値の2乗の他に、ベクトルの各成分の実数部の絶対値および虚数部の絶対値の和を近似値として用いても構わない。
上記近似操作は、回路を構成する際に乗算回路を用いずに、加算回路のみで構成することを可能としており、通常の絶対値をユークリット距離、近似値をマンハッタン距離と呼ぶことがある。
この様にして求めたベクトルの大きさに対し、行ベクトル群{h}の中において、大きさが最も大きいベクトルを選択し(S34)、この最も大きいベクトルhを規格化することにより基底ベクトルeを一つ決定する(S35)。
次に、全ての基底ベクトルの決定が完了したか否かを判断し(S36)、未決定の基底ベクトルがある場合(Noに対応)には、行ベクトル群{h}の中から、今、求めた行ベクトルhを除外し、残りのベクトルを新しい行ベクトル群{h}として管理する(S37)。
さらに、更新した行ベクトル群{h}の各々から、最後に求めた基底ベクトルe方向の成分をキャンセルし、再度、行ベクトル群{h}として管理し(S38)、処理S33に戻る。
一方、処理S36において、未決定の基底ベクトルがない場合(Yesに対応)には、処理S8を実施する(S39)。
図6は、本発明の一実施形態におけるHmain部分空間基底ベクトル算出回路137におけるの直交基底ベクトルの算出動作を示すフローチャートである。
図3の説明では、ステップS11での直交基底ベクトルの算出方法について言及がなったが、例えばグラムシュミットの直交化法やQR分解法、特異値分解による固有ベクトル算出など、様々な方法が考えられる。
また、図1のステップS12において、送信ウエイトベクトルを決定する際に、着目する無線端末局宛に空間多重する信号系列数(Nsmと表記する)が部分伝達関数行列Hmainの行数よりも少ないという場合もある。この場合、実質的には送信ウエイトベクトルおよび直交基底ベクトルはNsm個求めればよい。
図6においては、ステップS11における直交基底ベクトルの算出方法として、固有ベクトルを用いる場合を説明し、さらにNsmが行列Hmainの行数よりも小さい場合も含めて説明を行っている。
具体的には、図3のフローチャートにおけるステップS10を実施後(S41)、(Hmain・Hmainの固有ベクトルおよび固有値を求め(S42)、着目する無線端末局の空間多重数を取得し(S43)、固有値の絶対値の大きい方から順番にNsm個のベクトルを抽出し、これを基底ベクトル群{e}とし、次のステップS12を実施する(S46)。
図7に、本発明の一実施形態における図3に示す、f(α)算出回路2が実施するステップS9の処理を拡張した拡張フローチャートを示す。
先の動作原理でも説明したが、着目している無線端末局以外の部分伝達関数行列Hsubの行数(Nsubと表記する)に対し、実際にこれらの端末局に対して空間多重する信号系統数が少ない場合、これらの無線端末局宛の信号はNsub次元空間よりも次元が小さな部分空間に信号が送信されることになる。
すなわち、残された次元の基底ベクトルの方向は、着目している無線端末局の信号送信において用いることが許容できる。
まず、図3のフローチャートにおけるステップS8を実施した後(S51)、Hsub部分空間射影量αi算出回路1が求めた、基底ベクトルに対する物理量αの値の大小関係を比較し、大きい方から順番に並べる(S52)。
次に、αの大きさの順番に係数βを決定し(S53)、さらに、(26)式及び(27)式等の所定の基準により、一旦、係数f(α)を算出する(S54)。
そして、この係数f(α)に対して、上記係数βを乗算し、この乗算結果、すなわちβ・f(α)により、係数f(α)を更新する(S55)。
以上の処理の後、ステップS10に戻る(S56)。
以上の実施形態を説明するための図中においては、アンテナの本数など、各種パラメータを特定の条件(例えばアンテナの本数を送信側9本、受信側各3本としたり、空間多重を行う信号系統数を各3系統、合計9系統とした)に仮定して説明を行ったが、当然ながらその他の一般的なパラメータによって実施可能である。また、従来方式の場合の拡張と同様に、全ての処理を各サブキャリア毎に実施することにより、OFDM変調方式との併用も可能である。またさらに、複数の端末局の中で、同時に空間多重を行う端末局が固定的な場合であっても、ないしは時間と共に適応的に一部のユーザを選択してマルチユーザMIMO通信を行う場合であっても、すなわち、以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することが出来る。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
なお、図1及び図4における送信局側の受信部における図2,3,5,6のフローチャートに示す受信処理(本実施形態に対応する処理)の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより受信処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
本発明の一実施形態における無線基地局の送信部における送信ウエイト回路の構成例を示すブロック図である。 従来例における無線基地局の送信部における送信ウエイト回路の構成例を示すブロック図である。 本発明の一実施形態における送信ウエイト行列Wの算出の動作を説明するフローチャートである。 本発明の一実施形態における直交基底ベクトルの算出の動作を説明するフローチャートである。 本発明の一実施形態における別の直交基底ベクトルの算出の動作を説明するフローチャートである。 本発明の一実施形態におけるおけるHmainの直交基底ベクトル算出の動作を説明するフローチャートである。 本発明の一実施形態における図3のステップS9の拡張フローのフローチャートである。 マルチユーザMIMOシステムの構成例を示す概念図である。 従来技術における送信ウエイト行列Wの算出の動作を示すフローチャートである。 従来技術における送信局側の構成例(シングルキャリアの場合)を示すブロック図である。 従来技術における送信局側の構成例(OFDMの場合)を示すブロック図である。 従来技術における受信局の構成例を示すブロック図である。
符号の説明
1…Hsub部分空間射影量α算出回路
2…f(α)算出回路
3…Hmain部分空間干渉成分部分除去回路
101…基地局
102,103,104…無線端末局#1〜#3
111a,111b…データ分割回路
112a−1,112a−2,112a−L…プリアンブル付与回路
112b−1,112b−2,112b−L…プリアンブル付与回路
113a−1,113a−2,113a−L…変調回路
113b−1,113b−2,113b−L…変調回路
114a,114b…送信信号変換回路
115a−1,115a−2,115a−M…無線部
115b−1,115b−2,115b−M…無線部
116a−1,116a−2,116a−M…送受信アンテナ
116b−1,116b−2,116b−M…送受信アンテナ
117a,117b…伝達関数行列取得回路
118a,118b…送信ウエイト算出回路
119a,119b…空間多重条件判断回路
120a−1,120a−2,120a−L…IFFT回路
120b−1,120b−2,120b−L…IFFT回路
121−1,121−2,121−3…受信アンテナ
122−1,121−2,122−3…無線部
123…チャネル推定回路 124…受信信号管理回路
125…伝達関数行列管理回路 126…行列演算回路#1
127…行列演算回路#2 128…硬判定回路
129…データ合成回路 130…MIMO受信処理部
131…空間多重管理回路 132…伝達関数行列管理回路
133…Hmain抽出回路 134…Hsub抽出回路
135…Hmain部分空間干渉成分完全除去回路
136…Hsub部分空間基底ベクトル算出回路
137…Hmain部分空間基底ベクトル算出回路
138…送信ウエイトベクトル決定回路

Claims (9)

  1. 一つの第1の無線局と複数の第2の無線局により構成され、該第1の無線局は複数本のアンテナで構成される第1のアンテナ群を備え、該第2の無線局は複数本のアンテナで構成される第2のアンテナ群を備え、前記第1の無線局の前記第1のアンテナ群および前記第2の無線局の全てないしはその一部の備える前記第2のアンテナ群により構成されるMIMO(Multiple Input Multiple Output)チャネルを介して複数の信号系統を同一周波数チャネルおよび同一時刻に空間多重してMIMO通信することが可能な無線通信システムにおける無線通信方法であって、
    前記第1の無線局における送信処理は、
    前記第1のアンテナ群と前記複数の第2のアンテナ群の間のMIMOチャネルの各伝達関数情報を取得する伝達関数行列取得ステップと、
    前記複数の第2の無線局の中からその全てないしはその一部の無線局を同時に空間多重する通信相手局として選択する空間多重条件判断ステップと、
    前記第1のアンテナ群と該選択された複数の第2の無線局の前記第2のアンテナ群との間の伝達関数情報の中から、前記第1のアンテナ群と着目する第2の無線局の前記第2のアンテナ群との間の伝達関数情報により構成される第1の部分伝達関数行列を抽出する第1の部分伝達関数抽出ステップと、
    前記第1のアンテナ群と該選択された複数の第2の無線局の前記第2のアンテナ群との間の伝達関数情報の中から、前記第1のアンテナ群と着目する第2の無線局以外のひとつまたは複数の第2の無線局の前記第2のアンテナ群との間の伝達関数情報により構成される第2の部分伝達関数行列を抽出する第2の部分伝達関数抽出ステップと、
    該第2の部分伝達関数行列を構成する行ベクトルが張る部分空間の基底ベクトルを算出する第2部分空間基底ベクトル算出ステップと、
    該基底ベクトル毎に、前記第2の部分伝達関数行列を構成する行ベクトルが張る部分空間から前記基底ベクトルへの射影量αを算出する射影量算出ステップと、
    算出された該射影量αを引数とし、該射影量に対し、単調増加関係をもつ物理量を与える係数f(α)(0≦f(α)≦1)を出力する係数算出ステップと、
    前記第1の部分伝達関数行列を構成する各行ベクトル毎に、該行ベクトルの前記基底ベクトル方向の各成分を前記係数f(α)を乗算してキャンセルする部分空間干渉成分部分除去ステップと、
    該キャンセル処理を行った前記第1の部分伝達関数行列を構成する各行ベクトルに対し、該行ベクトルが張る部分空間の基底ベクトルを算出する第1部分空間基底ベクトル算出ステップと、
    該基底ベクトルをもとに送信ウエイトベクトルを決定する送信ウエイトベクトル決定ステップと、
    該送信ウエイトベクトルにより構成される送信ウエイト行列を求める送信ウエイト行列生成ステップと、
    複数の信号系列の送信信号を各成分として構成される送信信号ベクトルに対して前記送信ウエイト行列を乗算する送信信号変換ステップと、
    該乗算後の結果を前記第1のアンテナ群を介して送信する送信ステップと
    を実施することを特徴とする無線通信方法。
  2. 前記請求項1に記載の無線通信方法であって、
    前記第1の無線局は、該第2の部分伝達関数行列を構成する行ベクトルが張る部分空間の基底ベクトルを算出する第2部分空間基底ベクトル算出ステップにおいて、
    第2の部分伝達関数行列ないしは該行列と該行列のエルミート共役である行列の積として与えられる行列に対し、その固有ベクトル及び固有値を求めるステップと、
    前記固有値の絶対値ないしは絶対値の近似値の大きいほうから、所定の数だけ固有ベクトルを選択することにより前記基底ベクトルを算出するステップと
    を実施することを特徴とする無線通信方法。
  3. 前記請求項2に記載の無線通信方法であって、
    前記射影量算出ステップは、前記射影量αに前記各固有ベクトルの固有値を代入することを特徴とする無線通信方法。
  4. 前記請求項1に記載の無線通信方法であって、
    前記第1の無線局は、該第2の部分伝達関数行列を構成する行ベクトルが張る部分空間の基底ベクトルを算出する第2部分空間基底ベクトル算出ステップにおいて、
    該第2の部分伝達関数行列から、第2の部分伝達関数行列を構成する行ベクトル群を抽出するステップと、
    該抽出するステップにより抽出された行ベクトル群の中で絶対値ないしは絶対値の近似値が最も大きい行ベクトルを選択するステップと、
    選択するステップにより選択された該最も大きい行ベクトルを規格化し、該規格化した行ベクトルを基底ベクトルの一つとして設定するステップと、
    全ての基底ベクトルの決定が完了したか否かを判定するステップと、
    該判定するステップで全ての基底ベクトルの決定が完了したと判定された場合、該第2部分空間基底ベクトル算出ステップを終了し、基底ベクトルを出力するステップと、
    全ての該行ベクトルが選択済みではないと該判定するステップで判定された場合、該行ベクトル群から、該規格化された該最も大きい行ベクトルを除外して、新たな行ベクトル群として生成するステップと、
    該新たな行ベクトル群として生成するステップが生成した該行ベクトル群の各行ベクトルから、最後に求めた該基底ベクトルの成分をキャンセルして行ベクトル群を更新するステップと
    を備え、
    該行ベクトル群を更新するステップにより得られた行ベクトル群を抽出された行ベクトル群に用いて、前記選択するステップから全ての基底ベクトルの決定が完了するまで繰り返す
    ことを特徴とする無線通信方法。
  5. 前記請求項1に記載の無線通信方法であって、
    前記第1の無線局は、
    前記基底ベクトル毎に求めた射影量αの大小関係を判断するステップと、
    該大小判断の結果としてαの大きさの順番に対応した所定の係数βを前記射影量α毎に定めるステップと、
    該射影量に対して単調増加関係をもつ物理量を与える前記係数f(α)を、係数βを乗算し、β×f(α)に置き換えるステップと
    を実施することを特徴とする無線通信方法。
  6. 一つの無線基地局と複数の無線端末局により構成され、該無線基地局は複数本のアンテナで構成される第1のアンテナ群を備え、該無線端末局は複数本のアンテナで構成される第2のアンテナ群を備え、前記無線基地局の前記第1のアンテナ群および前記無線端末局の全てないしはその一部の備える前記第2のアンテナ群により構成されるMIMOチャネルを介して複数の信号系統を同一周波数チャネルおよび同一時刻に空間多重してMIMO通信することが可能な無線通信システムにおける無線基地局であって、
    前記第1のアンテナ群と前記複数の第2のアンテナ群の間のMIMOチャネルの各伝達関数情報を取得する伝達関数行列手段と、
    前記複数の無線端末局の中からその全てないしはその一部の無線局を同時に空間多重する通信相手局として選択する空間多重条件判断手段と、
    前記第1のアンテナ群と該選択された複数の第2の無線局の前記第2のアンテナ群との間の伝達関数情報の中から、前記第1のアンテナ群と着目する第2の無線局の前記第2のアンテナ群との間の伝達関数情報により構成される第1の部分伝達関数行列を抽出する第1の部分伝達関数抽出手段と、
    前記第1のアンテナ群と該選択された複数の無線端末局の前記第2のアンテナ群との間の伝達関数情報の中から、前記第1のアンテナ群と着目する無線端末局以外のひとつまたは複数の無線端末局の前記第2のアンテナ群との間の伝達関数情報により構成される第2の部分伝達関数行列を抽出する第2の部分伝達関数抽出手段と、
    該第2の部分伝達関数行列を構成する行ベクトルが張る部分空間の基底ベクトルを算出する第2部分空間基底ベクトル算出手段と、
    該基底ベクトル毎に、前記第2の部分伝達関数行列を構成する行ベクトルが張る部分空間から前記基底ベクトルへの射影量αを算出する射影量算出手段と、
    求められた該射影量αを引数とし、該射影量に対し単調増加関係をもつ物理量を与える係数f(α)(0≦f(α)≦1)を出力する係数算出手段と、
    前記第1の部分伝達関数行列を構成する各行ベクトル毎に、該行ベクトルの前記基底ベクトル方向の各成分を前記係数f(α)を乗算してキャンセルする部分空間干渉成分部分除去手段と、
    該キャンセル処理を行った前記第1の部分伝達関数行列を構成する各行ベクトルに対し、該行ベクトルが張る部分空間の基底ベクトルを算出する第1部分空間基底ベクトル算出手段と、
    該基底ベクトルをもとに送信ウエイトベクトルを決定する送信ウエイトベクトル決定手段と、
    該送信ウエイトベクトルにより構成される送信ウエイト行列を求める送信ウエイト行列生成手段と、
    複数の信号系列の送信信号を各成分として構成される送信信号ベクトルに対して前記送信ウエイト行列を乗算する送信信号変換手段と、
    該乗算後の結果を前記第1のアンテナ群を介して送信する送信手段と
    を備えたことを特徴とする無線基地局。
  7. 前記請求項6に記載の無線基地局であって、
    該第2の部分伝達関数行列を構成する行ベクトルが張る部分空間の基底ベクトルを算出する第2部分空間基底ベクトル算出手段は、
    第2の部分伝達関数行列ないしは該行列と該行列のエルミート共役である行列の積として与えられる行列に対し、その固有ベクトル及び固有値を求める手段と、
    前記固有値の絶対値ないしは絶対値の近似値が大きいほうから所定の数だけ固有ベクトルを選択することにより前記基底ベクトルを算出する手段と
    を備えたことを特徴とする無線基地局。
  8. 前記請求項6に記載の無線基地局であって、
    該第2の部分伝達関数行列を構成する行ベクトルが張る部分空間の基底ベクトルを算出する第2部分空間基底ベクトル算出手段は、
    該第2の部分伝達関数行列から、第2の部分伝達関数行列を構成する行ベクトル群を抽出する手段と、
    該抽出する手段により抽出された行ベクトル群の中で絶対値ないしは絶対値の近似値が最も大きい行ベクトルを選択する手段と、
    選択する手段により選択された該最も大きい行ベクトルを規格化し、該規格化した行ベクトルを基底ベクトルの一つとして設定する手段と、
    全ての基底ベクトルの決定が完了したか否かを判定する手段と、
    該判定する手段で全ての基底ベクトルの決定が完了したと判定された場合、該第2部分空間基底ベクトル算出手段を終了し、基底ベクトルを出力する手段と、
    全ての該行ベクトルが選択済みではないと該判定する手段で判定された場合、該行ベクトル群から、該規格かされた該最も大きい行ベクトルを除外して、新たな行ベクトル群として生成する手段と、
    該新たな行ベクトル群として生成する手段が生成した該行ベクトル群の各行ベクトルから、最後に求めた該基底ベクトルの成分をキャンセルして行ベクトル群を更新する手段と
    を備え、
    該行ベクトル群を更新する手段により得られた行ベクトル群を抽出された行ベクトル群に用いて、前記選択する手段から全ての基底ベクトルの決定が完了するまで繰り返す
    ことを特徴とする無線基地局。
  9. 前記請求項6に記載の無線基地局であって、
    前記基底ベクトル毎に求めた射影量αの大小関係を判断する手段と、
    該大小判断の結果としてαの大きさの順番に対応した所定の係数βを前記射影量α毎に定める手段と、
    該射影量に対し単調増加関係をもつ物理量を与える前期係数f(α)をβ×f(α)に置き換える手段と
    を備えたことを特徴とする無線基地局。
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