JP2006241519A - 磁気シールド材用鋼板の製造方法 - Google Patents

磁気シールド材用鋼板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 必要な磁気シールド特性を得、また、連々鋳を可能にして生産性の向上を図る。
【解決手段】 鋼の化学組成が、質量%で、[C]≦0.005%、[Si]<0.05%、[Mn]=0.10〜0.50%、[P]≦0.020%、[S]≦0.010%、sol[Al]≦0.003%、[N]≦0.003%、T.[O]≦0.018%、残部がFe及び不可避的不純物からなる磁気シールド材用鋼板を製造する方法である。RH処理後の溶存酸素濃度を60ppm以下、望ましくはRH処理後の溶存酸素濃度を40ppm以下にする。
【効果】 磁気シールド特性、加工性、黒化処理性に優れた磁気シールド材用鋼板を製造できる。また、RH処理後の溶存酸素濃度を40ppm以下にすれば、生産性の向上も図れる。
【選択図】 図5

Description

本発明は、優れた磁気シールド特性と共に、優れた加工性と黒化処理性を備えた磁気シールド材用鋼板の製造方法に関するものである。
例えば、CRT(Cathode Ray Tube)の内部には、電子ビームに対する地磁気や、その他の外部磁気の影響を避けるため、インナーシールドと呼ばれる磁気シールド材が組み込まれている。
この種の磁気シールド材には、地磁気(約0.35Oe)のような低磁場における高い透磁率、帯電した磁気を容易に消磁できる小さい保磁力などの優れた磁気シールド特性、各種の加工に耐え得る高加工性、また、防錆性と熱放射性向上のために表面に黒色の酸化皮膜を生成させる黒化処理性が要求される。また、このような特性を維持しながら製造コストの低減も求められている。
そこで、介在物組成を一定の組成に制御することで、安価で、磁気シールド特性に優れた磁気シールド材用鋼板を製造する技術が、特許文献1で提案されている。
特開2003−89856号公報
前記特許文献1で提案された製造方法は、真空脱ガス処理時における昇熱の際の酸素吹き込み量を規定するだけで、真空脱ガス処理後の溶存酸素濃度については考慮されていなかった。
しかしながら、真空脱ガス処理後の溶存酸素濃度が高い場合には、必要な磁気シールド特性が得られないうえ、成形加工にも悪い影響がある。また、連続鋳造時のプレート溶損が激しくなるので、続けてタンディッシュに溶鋼を供給して連続鋳造を継続すること(以下、「連々鋳」という。)が行えず、生産性の向上が図れないという問題もある。
本発明が解決しようとする問題点は、従来の製造方法では、必要な磁気シールド特性が得られない場合があり、また、連々鋳が行えず、生産性の向上が図れないと言う点である。
本発明の磁気シールド材用鋼板の製造方法は、
優れた磁気シールド特性を得られるようにするため、
鋼の化学組成が、質量%で(以下、化学組成を表す%表示は、質量%を意味する)、[C]≦0.005%、[Si]<0.05%、[Mn]=0.10〜0.50%、[P]≦0.020%、[S]≦0.010%、sol[Al]≦0.003%、[N]≦0.003%、T.[O]≦0.018%、残部がFe及び不可避的不純物からなる磁気シールド材用鋼板を製造する方法において、
RH処理後の溶存酸素濃度を60ppm以下にすることを最も主要な特徴としている。
また、前記の本発明の磁気シールド材用鋼板の製造方法において、RH処理後の溶存酸素濃度を40ppm以下にすれば、連々鋳が可能になって生産性の向上も図れるようになる。
本発明によれば、磁気シールド特性、加工性、黒化処理性に優れた磁気シールド材用鋼板を製造ができるようになる。また、RH処理後の溶存酸素濃度を40ppm以下にすれば、生産性の向上も図れることになる。
磁気シールド材用鋼板では、前記の特許文献1にも記載されているように、磁気シールド特性については、0.35Oe磁場における比透磁率μ0.35が750以上、保磁力Hcが1.25Oe以下である場合に、磁気シールド特性に優れているといえる。
この保磁力Hcと鉄損値との関係を図1に、また、比透磁率μ0.35と鉄損値との関係を図2に示す。図1及び図2より明らかなように、これら保磁力と鉄損値、及び、比透磁率と鉄損値には相関関係があり、製品としての磁気シールド特性を満足させるには、鉄損値を6.9以下となすことが必要である。なお、図1及び図2に示した鉄損値は、50Hz、1.5Tでの磁束正弦波励磁時の鉄損値(W15/50)を示している。
また、製造した製品コイルのT.[O]濃度と鉄損値(W15/50)の関係を調査した結果、製品コイルのT.[O]濃度が高くなるとフェライト結晶粒の成長が阻害され、磁気シールド特性が確保できないうえ、成形加工にも悪い影響を及ぼすことが判明した。
以上より、優れた磁気シールド特性を得るには、製品コイルのT.[O]濃度の制御が重要であることが判った。製品コイルのT.[O]濃度と鉄損値(W15/50)の関係を図3に示すが、鉄損値を6.9以下にするためには、製品コイルのT.[O]濃度を180ppm以下にしなければならないことが判明した。
ところで、製品コイルのT.[O]濃度は、RH処理後の溶存酸素濃度、および、溶鋼中酸化物濃度が強く影響する。従って、RH処理後の溶存酸素濃度をできる限り低い値に調整すること、および、RH処理での還流時間を確保することにより、介在物の浮上除去を図って酸化物を低減することが、製品コイルのT.[O]濃度を低減するためには重要である。
また、RH処理後の溶存酸素濃度の低減は、製鋼工程における生産性の向上の点からも重要である。RH処理後の溶存酸素濃度が高い場合、連続鋳造において、アルミナ−カーボン質の上プレートが鋼中の酸素によって溶損され、漏鋼が発生する比率が高くなり、連々鋳が行えず、生産性があがらないからである。よって、生産性の向上を図るためにも、RH処理後の溶損酸素濃度を低減することが必要である。
本発明の磁気シールド材用鋼板の製造方法は、以上の知見に基づいてなされたものであり、
鋼の化学組成が、[C]≦0.005%、[Si]<0.05%、[Mn]=0.10〜0.50%、[P]≦0.020%、[S]≦0.010%、sol[Al]≦0.003%、[N]≦0.003%、T.[O]≦0.018%、残部がFe及び不可避的不純物からなる磁気シールド材用鋼板を製造する方法において、
RH処理後の溶存酸素濃度を60ppm以下にすること、
さらに望ましくは、RH処理後の溶存酸素濃度を40ppm以下にすることを主要な特徴としている。
本発明の磁気シールド材用鋼板の製造方法で製造する鋼板の化学組成を限定する理由は次の通りである。
C:Cは焼鈍時に結晶粒の粗大化を阻害し、磁気シールド特性を損なう。そこで、これを避けるためにC含有量は0.005%以下とする。
Si:Siは含有量が高くなると鋼板の加工性が損なわれるうえ、黒色の酸化皮膜の生成むらや密着性不良が生じる。そこで、これを避けるためにSi含有量は0.05%以下とする。
Mn:MnはSと結合して微細に析出するとフェライト結晶粒の粗大化を阻害し、磁気シールド特性を損なう。MnS析出物を粗大にして無害化するには、Mnをある程度含有させておくのが有効である。しかし、過剰に含有させると磁気シールド特性が損なわれるので、Mn含有量は0.10%以上、0.50%以下とする。
P:Pは鋼板の加工性を阻害する作用があるので、これを避けるためにP含有量は0.020%以下とする。
S:Sは微細なMnSとして析出すると結晶粒成長性が阻害されて磁気シールド特性が向上しない。よって、S含有量は0.010%以下とする。
Sol.Al:Sol.AlはNと結合して、微細に析出するとフェライト結晶粒の成長が阻害され磁気シールド特性が向上しない。よって、Sol.Al含有量は0.003%以下とする。
N:NはSol.Alと結合してAlNを形成し、フェライト結晶粒の成長を阻害する。よって、N含有量は0.003%以下とする。
O:本発明方法により製造する鋼は弱脱酸鋼であるため、従来のキルド鋼と比較するとO含有量は高くなる。しかし、O含有量が過度に高いとフェライト結晶粒の成長が阻害され、必要とする磁気シールド特性が得られない。よって、O含有量は0.018%以下とする。
次に、本発明の磁気シールド材用鋼板の製造方法の特徴を詳細に説明する。
RH処理後の溶存酸素濃度と製品コイルのT.[O]濃度の関係を図4に示す。
図4より判るように、製品コイルのT.[O]濃度を180ppm以下にするためには、RH処理後の溶存酸素濃度を60ppm以下にする必要がある。
また、溶存酸素濃度を調整した後の還流時間を増加することで、鋼中介在物の浮上除去が促進されるため、RH処理後の溶存酸素濃度が同一であっても、製品コイルのT.[O]濃度は低位に安定する。
しかし、還流時間をむやみに増加した場合は、RHでの処理時間の延長に伴う温度補償のためのAl昇熱量の増加等により、製鋼コストが増加するため、全溶鋼を3〜7分の時間還流することが望ましい。
このような本発明の処理により、図5に示すように、1チャージ当たり210トンの取鍋内溶鋼を平均で3チャージ連続して鋳造することが可能になった。
次に、RH処理後の溶存酸素濃度と、連続鋳造時の上プレートからの漏鋼発生の関係については、溶存酸素濃度が40ppmより大きくなると、アルミナ−カーボン質の上プレートが鋼中の酸素により溶損され、図6に示すように、漏鋼が発生する。そのため、図5に示すように、連々鋳が行えず、能率が上がらない。
よって、磁気シールド特性を確保しつつ製鋼工程の生産性をあげるには、RH処理後の溶存酸素量を40ppm以下にすることが望ましいことが判る。
以下、本発明方法の効果を確認するために行った、実験結果について説明する。
本例では転炉で吹錬した溶鋼を未脱酸のまま、真空脱ガス処理槽に移して、真空脱ガス処理により脱炭を行い、その後Alを投入し、所定の温度までAl昇熱を実施した。
その後、溶存酸素測定用プローブを用いて溶存酸素濃度を測定した。測定した値をもとに所定の酸素濃度になるようにAlを投入する、あるいは酸素ガスを供給した後、規定時間の還流を施した後、処理を終了した。
得られた溶鋼は連続鋳造法によりスラブとした。この時の連続鋳造条件は、鋳込み速度を1.1〜1.3m/分とした。また、プレート等の材質は、アルミナ−カーボン製のものを使用した。
その後、熱間圧延して、1.6mmの熱間圧延鋼板とし、酸洗した後、厚さが0.4mmになるまで冷間圧延し、これを690℃で箱焼鈍し、さらに最終の冷間圧延を行って厚さが0.15mmの冷間圧延鋼板を得た。
上記冷間圧延鋼板から内径が33mm、外径が45mmのリング状試験片を打ち抜き加工により採取し、炭酸ガス12%、残部が窒素ガスからなる雰囲気中で570℃に加熱し、10分間保持する黒化処理を施した。
これらの試験片のフェライト結晶粒度と0.35Oeの磁場における比透磁率μ0.35及び保磁力(Hc)を測定した。
比透磁率が750以上で、保磁力が1.25Oe以下である場合を、磁気シールド特性が良好と判断した。
また、鋼板の加工性は、前記黒化処理後の鋼板に箱型インナーシールド構体の曲げ加工で規定される曲率半径を0.5mmとする曲げ加工を施し、そのような曲げ加工性を有した場合を加工性が良好と判断した。
また、黒色の酸化皮膜の着色状態の均一性は、目視により2段階で判定した。
下記表1に各種成分を、下記表2にRHの処理条件と諸性能測定結果を示す。
Figure 2006241519
Figure 2006241519
表1及び表2からわかるように、本発明で規定する条件を満足するのが製造番号1〜3である。本発明で規定する条件を満足する製造番号1〜3では、シールド特性、加工性、黒化処理性、全てが優れた磁気シールド材用鋼板が得られた。
一方、製造番号4は[C]が、製造番号6は[Mn]が、製造番号8は[S]が、製造番号9はsol[Al]が、製造番号10は[N]が、それぞれ所定の化学組成から外れているため、良好な磁気シールド特性が得られなかった。
また、製造番号5は[Si]が高いため、黒色の酸化皮膜の均一性が得られなかった。また、製造番号7は[P]が高いため、加工性が悪かった。また、製造番号11〜14はRH処理後の溶存酸素濃度が高かったため、連続鋳造時に漏鋼が発生した。
本発明は、上記の実施例に示したものに限られるものではなく、本発明方法によって製造する磁気シールド材用鋼板の化学組成を満足するものであれば、RH処理後の溶存酸素濃度さえ充足すれば、その他の要件は適宜変更しても良いことはいうまでもない。
保磁力Hcと鉄損値との関係を示した図である。 比透磁率μ0.35と鉄損値との関係を示した図である。 製品コイルのT.[O]濃度と鉄損値の関係を示した図である。 RH処理後の溶存酸素濃度と製品コイルのT.[O]濃度の関係を示した図である。 RH処理後の溶存酸素濃度と、連々鋳の関係を示した図である。 RH処理後の溶存酸素濃度と、連続鋳造時の上プレートからの漏鋼発生の関係を示した図である。

Claims (2)

  1. 鋼の化学組成が、質量%で、[C]≦0.005%、[Si]<0.05%、[Mn]=0.10〜0.50%、[P]≦0.020%、[S]≦0.010%、sol[Al]≦0.003%、[N]≦0.003%、T.[O]≦0.018%、残部がFe及び不可避的不純物からなる磁気シールド用鋼板を製造する方法において、
    RH処理後の溶存酸素濃度を60ppm以下にすることを特徴とする磁気シールド材用鋼板の製造方法。
  2. RH処理後の溶存酸素濃度を40ppm以下にすることを特徴とする請求項1に記載の磁気シールド材用鋼板の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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