JP4225188B2 - シャドウマスク用鋼板およびその製造方法 - Google Patents

シャドウマスク用鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明はカラー受像管に用いられるシャドウマスクに使用するシャドウマスク用鋼板およびその製造方法に関する。
一般に、カラーブラウン管は3本の電子ビームを放射する電子銃と、この電子銃から放射された電子ビームを受けて3原色を発光する蛍光体と、各電子ビームのうちの必要な方向の電子ビームだけを選択的に透過させて不要な方向の電子ビームを遮断するマスクから構成されている。マスクは曲面形状を有するプレスタイプのシャドウマスクや一方向あるいは二方向に張力を負荷するタイプのテンションマスクがある。これらのうちプレスタイプのシャドウマスクは、素材メーカーで製品厚まで圧延された冷延鋼板を素材とし、これをエッチングメーカーでフォトエッチング法により穿孔し、ブラウン管メーカーで軟質化を目的とした650℃〜800℃程度の短時間焼鈍(以下、プレス前焼鈍)を行い、その後所望の曲面形状にプレス成形され、黒化処理し、ブラウン管に組み込まれる。
シャドウマスクの品質に対しては、エッチング性、プレス成形性、黒化処理性等が要求されるが、近年、ブラウン管の大型化、高品質高精細化に伴って、優れた地磁気シールド性を有することが求められている。シャドウマスクは、電子ビームの軌道が地磁気などの外部磁場により偏向を受けるのを防止するために、磁気シールドの役割も果たしているからである。これは、ブラウン管内において地磁気により電子ビーム軌道が偏向し、蛍光面上の電子ビーム照射点と蛍光面の発光体の位置関係がずれることに起因する画質の劣化(「色ずれ」)や輝度の低下を防止するためである。
また、シャドウマスクは、TV本体の向きを変えた場合に外部磁場からの影響を受けて外部磁場と同じ方向に磁化されるため、消磁特性に優れることも求められる。これらの要求特性(地磁気シールド性、消磁特性など)を満足するためには、シャドウマスクの保磁力Hcは小さいことが望ましい。
従来、電子ビームのずれに起因する画質の劣化(「色ずれ」)や輝度低下の防止、および消磁特性の向上を目的として、プレス前焼鈍後の保磁力Hcを低減する方法がいくつか提案されている。
例えば、特許文献1は、Mn%/S%≧7(sol.Al%−0.003)/N%≧6を満足するように規定した鋼を真空脱ガス装置により脱炭を行い、熱延段階でカーバイドをなくし、熱間圧延時およびその後の製造工程時の粒成長性を高め、保磁力Hcを低減する方法を開示している。
また、特許文献2は、ホウ素を窒素との重量比B/Nで0.5〜1.0含有した鋼を用い、熱間圧延前のスラブ加熱を低温加熱とし、粒成長性を高め、保磁力Hcを低減する方法を開示している。
また、特許文献3は、鋼中の硫黄含有量と窒素含有量とを規定し、粒成長性を高め、保磁力Hcを低減する方法を開示している。
また、特許文献4は、鋼中のホウ素含有量と窒素含有量とを規定し、熱延工程の仕上温度をAr3点の0〜30℃以下、巻取り温度を650℃〜700℃とし、さらに、最終圧延を30〜45%以下とすることで保磁力Hcを低減する方法を開示している。
特開昭61−30627号公報 特開昭61−91332号公報 特開昭61−174330号公報 特開2002−161335号公報
しかしながら、特許文献2および特許文献4に記載されているホウ素Bを添加する従来技術は、ホウ素Bが黒化処理膜の密着性を劣化させるため好ましくない。
また、特許文献1〜4に記載されているいずれの方法も、鋼の純度を向上させ、窒化物や硫化物の析出を抑制することにより粒成長性を高め、粒径粗大化により保磁カを低減するというものである。したがって、これらの鋼はいずれも粒成長性が良いために、ブラウン管メーカーでのプレス前焼鈍時に炉内の温度分布等により焼むらを生じるという問題があり、また、高温でプレス前焼鈍を行うと粒径が粗大化し、非履歴透磁率μanが低下するという問題があった。
従来、シャドウマスクの地磁気シールド性はその材料の透磁率μおよび保磁力Hcで評価されていたが、近年、これらの特性に加えて、非履歴透磁率μanが注目されている。ブラウン管は電源投入時などに消磁コイルに電流を流し、ブラウン管内の材料を消磁する機構を有している。ところが、この消磁は地磁気などの外部磁場中で行われるため、シャドウマスクは完全に消磁された状態とはならず、内部に残留磁化を生じた状態となる。この残留磁化を外部磁界で除した値が非履歴透磁率μanである。シャドウマスクの非履歴透磁率μanが高いほど、地磁気などの外部磁場の磁束をシャドウマスク中に通しやすく、電子銃とシャドウマスクの間の地磁気シールド性は良好となる。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の知見を得た。第1に適量のバナジウムVを添加することで粒成長性を制御し、プレス前焼鈍時において炉内の温度分布等に起因する焼むらが防止できること、第2にブラウン管メーカーが重視している保磁力Hcを低くすることに加えて非履歴透磁率μanを高めることにより、地磁気シールド性が著しく向上すること、第3にプレス前焼鈍後の粒径を25μm以上60μm未満に制御することにより低保磁力・高非履歴透磁率材が得られること、を見出した。
本発明は上記の知見に基づいてなされたものであり、以下のような構成を有する。第1の発明は、質量%でC:0.002%以下、Si:0.03%以下、P:0.04%以下、Mn:0.1%以上0.5%以下、S:0.02%以下、sol. Al:0.01%以上0.08%以下、N:0.01%以下、V:0.001%以上0.006%以下、残部Feおよび不可避不純物からなり、プレス前焼鈍後の結晶粒径が25μm以上60μm未満であり、プレス前焼鈍後において95A/m以下の保磁力Hcおよび25000以上の非履歴透磁率μanを有することを特徴とするシャドウマスク用鋼板に関するものである。
第2の発明は、質量%でC:0.04%以下、Si:0.03%以下、P:0.04%以下、Mn:0.1%以上0.5%以下、S:0.02%以下、sol. Al:0.01%以上0.08%以下、N:0.01%以下、V:0.001%以上0.006%以下、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼を熱間圧延し、その熱延鋼板を脱炭焼鈍した後、一次冷間圧延し、次いで再結晶焼鈍を行った後、圧延率15%以上40%未満で二次冷間圧延し、二次冷間圧延により所望板厚とした鋼板のプレス前焼鈍後の結晶粒径が25μm以上60μm未満であり、プレス前焼鈍後において95A/m以下の保磁力Hcおよび25000以上の非履歴透磁率μanを有することを特徴とするシャドウマスク用鋼板の製造方法に関するものである。
第3の発明は、質量%で、C:0.04%以下、Si:0.03%以下、P:0.04%以下、Mn:0.1%以上0.5%以下、S:0.02%以下、sol. Al:0.01%以上0.08%以下、N:0.01%以下、V:0.001%以上0.006%以下、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼を熱間圧延し、その熱延鋼板を一次冷間圧延し、次いで脱炭焼鈍を行った後、圧延率15%以上40%未満で二次冷間圧延し、所望板厚とした鋼板のプレス前焼鈍後の結晶粒径が25μm以上60μm未満であり、プレス前焼鈍後において95A/m以下の保磁力Hcおよび25000以上の非履歴透磁率μanを有することを特徴とするシャドウマスク用鋼板の製造方法に関するものである。
第4の発明は、質量%で、C:0.002%以下、Si:0.03%以下、P:0.04%以下、Mn:0.1%以上0.5%以下、S:0.02%以下、sol. Al:0.01%以上0.08%以下、N:0.01%以下、V:0.001%以上0.006%以下、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼を熱間圧延し、その熱延鋼板を一次冷間圧延し、次いで再結晶焼鈍を行った後、圧延率15%以上40%未満で二次冷間圧延し、所望板厚とした鋼板のプレス前焼鈍後の結晶粒径が25μm以上60μm未満であり、プレス前焼鈍後において95A/m以下の保磁力Hcおよび25000以上の非履歴透磁率μanを有することを特徴とするシャドウマスク用鋼板の製造方法に関するものである。
本発明によれば、プレス前焼鈍後の粒径を適切に制御することで低保磁力、高非履歴透磁率材が得られ、地磁気シールド性に優れたシャドウマスク用素材を得ることができ、電子ビームのずれに起因する画質の劣化(「色ずれ」)や輝度の低下を解消したシャドウマスクを提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
まず、本発明においては、地磁気シールド性を向上させるために、低保磁力、高非履歴透磁率材を製造する。本発明者等は鋼板の保磁力および非履歴透磁率と「色ずれ」発生の関係を詳細に検討した結果、保磁力が95A/m以下、かつ非履歴透磁率が25000以上とすることで地磁気シールド性が著しく向上することを見出した。保磁力が95A/m超えでは、消磁が不十分なため、完全な非履歴状態とはならず地磁気シールド性は劣位となり、また、非履歴透磁率が2500未満では、地磁気などの外部磁場の磁束をシャドウマスクに通しにくく、すなわち、地磁気シールド性が劣位となり、電子ビームのずれに起因する「色ずれ」が生じる。一方、保磁力が95A/m以下では、消磁が十分に行われ、完全な非履歴状態となり地磁気シールド性は良好となり、また、非履歴透磁率が25000以上では、地磁気などの外部磁場の磁束をシャドウマスクに通し易く、すなわち、地磁気シールド性が良好となり、電子ビームのずれに起因する「色ずれ」を防止する。
さらに、上記規定の保磁力および非履歴透磁率は、プレス前焼鈍後の結晶粒径を25μm以上60μm未満とすることで満足することがわかった。結晶粒径が25μm未満では、保磁力が劣位となり、60μm以上では、非履歴透磁率が劣位となるため好ましくない。このように本発明者らの事前検討から、非履歴透磁率は結晶粒径がある範囲を超えると著しく低下し、粒成長性を高めることは必ずしも非履歴透磁率を高めることにならないことが判明した。
そこで、本発明者等が検討した結果、Vの適量添加により粒成長性を制御し、かつ、二次冷圧率を15%以上40%未満とすることで、ブラウン管メーカーでのプレス前焼鈍時に炉内の温度分布等により生じる焼むらの問題や高温でプレス前焼鈍を行う場合の粒径粗大化に起因した非履歴透磁率の低下を防止した。前記規定値を安定的に満足する地磁気シールド性に優れた鋼板が製造できることを見出した。
次に、成分の限定理由について説明する。
(1)C:0.002%以下
炭素は含有量が多くなると、炭化物の生成が多くなり、フォトエッチング時の穿孔性を悪くする。さらに降伏強度および降伏点伸びが上昇し、プレス時の孔の形状不良を生じやすくなるため、脱炭焼鈍をしない場合にはスラブ中のC量として0.002質量%以下(極低炭素鋼)、脱炭焼鈍する場合にはスラブ中のC量として0.04質量%以下(低炭素鋼)である。これは、脱炭焼鈍する場合、C量が多い場合には十分な脱炭に時間がかかるため、C量は0.04質量%以下、好ましくは0.03質量%以下とする。また、脱炭焼鈍をしない場合および脱炭焼鈍した場合のC量はプレス成形性の観点から、その含有量は0.002質量%以下とし、好ましくは0.001質量%以下、より好ましくは0.0005質量%以下とする。
(2)Si:0.03%以下
シリコンは非金属介在物を形成してエッチング性を劣化させるため、その含有量は0.03質量%以下、好ましくは0.01質量%以下とする。
(3)Mn:0.1%以上0.5%以下
マンガンは製鋼時の脱酸材として、また、硫黄による熱間脆性を防止するのに有効であり、このためには0.1重景%以上含有する必要がある。一方、マンガンを0.5質量%以上含有すると鋼が硬化し、プレス成形性を劣化させるのでその含有量は0.5質量%以下、好ましくは0.4質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下とする。
(4)P:0.04%以下
燐は鋼を硬化し、プレス成形性を劣化させるとともに、偏析に起因するエッチングむらを生じやすい元素であるため、その含有量は少ない方が望ましく、0.04質量%以下、好ましくは0.03質量%以下とする。
(5)S:0.02%以下
硫黄は不可避的に鋼中に含有される元素であるが、0.02質量%以上含有すると硫化物系の介在物として存在し、エッチング性を劣化させるとともに、鋼材を脆化する元素であるので、その含有量は少ない方が望ましく、0.02質量%以下、好ましくは0.01質量%以下とする。
(6)sol.Al:0.01%以上
酸可溶性アルミニウムは、製鋼に際して脱酸材として転炉溶製後に添加され、鋼の清浄度を向上させる。さらに、sol.Alは鋼中のNと結合してAlNを生成し、窒素による不均一変形の発生を抑制する効果があるので、0.01質量%以上添加し、好ましくは0.02質量%以上とする。一方、sol.Alを必要以上に添加してもコストの増加を招くので、その含有量は0.08質量%以下、好ましくは0.06質量%以下とする。
(7)N:0.01%以下
窒素は含有量が多いと降伏点伸びの増大やAlNの増加にともないエッチング性を劣化させるため、その含有量は0.01質量%以下、好ましくは0.008質量%以下とする。
(8)V:0.001%以上0.006%以下
本発明において、バナジウムは重要なポイントのひとつである。バナジウムはプレス前焼鈍時に残存している固溶Cおよび固溶Nを窒化物や炭窒化物として固定し、プレス成形性を向上させる。また、窒化物や炭窒化物は粒成長性を制御するため、ブラウン管メーカーでのプレス前焼鈍時に炉内の温度分布に起因した焼むらを防止し、さらにプレス前焼鈍後の粒径を非履歴透磁率の好適範囲に制御することが容易となる。この粒成長制御効果は0.001質量%未満のV添加では不十分であるため、0.001質量%以上、好ましくは0.002質量%以上とする。一方、0.006質量%以上のVを添加すると、窒化物や炭窒化物の増大により結晶粒径が細粒となり保磁力Hcを劣化させるため、0.006質量%以下、好ましくは0.005質量%以下とする。このように適正量のVを添加することにより、プレス前焼鈍後の結晶粒径を25μm以上60μm未満の範囲に制御することができる。なお、ここでいう「結晶粒径」とは、JIS G 0552に規定された切断法により測定した平均値をいう。結晶粒径を測定する面は鋼板の圧延方向に平行な断面である。
(9)不可避不純物
不可避不純物およびその他の元素は、シャドウマスクとしての基本特性(プレス成形性、エッチング性、黒化処理性など)および本発明の作用(結晶粒径制御、保磁力、非履歴透磁率)を損なわない範囲で極微量の存在が許容される。
次に製造方法について説明する。
炭素量以外の添加元素は上記の成分範囲の鋼を常法に従って、溶製、鋳造、熱間圧延を行い、熱延鋼板を得る。次いで熱延鋼板を脱炭焼鈍し、冷間圧延を施す。必要な場合は、中間焼鈍をはさんで複数回の冷間圧延を施す。あるいは、熱延鋼板を冷間圧延し、脱炭焼鈍を施す。必要な場合は、さらに冷間圧延を施す。
(10)脱炭焼鈍
炭素量が多いとセメンタイトが析出し、エッチング性が悪くなるとともに降伏強度および降伏点伸びが上昇し、プレス成形性が悪くなる。脱炭焼鈍は、C量0.04%以下の低炭素鋼スラブを原材料とする場合に、そのC量を極力少なくする(0.002%以下に低減する)ために行う。脱炭焼鈍条件は常法に従うことができ、例えば焼鈍雰囲気:水素と窒素の混合気体、焼鈍温度:650〜800℃、露点:10〜30℃で行う。焼鈍時間は、目標とする脱炭レベル、コイル重量、板厚等により適宜設定されるが、プレス前焼鈍時に脱炭され難い場合を考慮すると、プレス成形性の観点から、C量が0.002質量%以下、好ましくは0.001質量%以下となるまで脱炭することが好ましい。なお、脱炭焼鈍の効果を確認するために、鋼材全厚についてサンプリングを行いガス分析により成分分析を行った。なお、脱炭焼鈍は熱延板で行ってもよく、一次冷圧板で行ってもよい。
(11)酸洗、一次冷間圧延
酸洗および一次冷間圧延は通常行われる条件でよい。なお、一次冷間圧延は脱炭焼鈍後に行ってもよく、脱炭焼鈍前に行ってもよい。
(12)中間焼鈍、二次冷間圧延
本発明では保磁力Hcを95A/m以下にするため、中間焼鈍をはさんで、15%以上40%未満の圧下率で二次冷間圧延する。ここで、中間焼鈍は再結晶さえすればよく、箱焼鈍または連続焼鈍のいずれを用いてもよい。二次冷圧率の下限はエッチングメーカーでの通板性を考慮し、機械特性の観点から15%以上とした。また、二次冷圧率の上限は、保磁力Hcが95A/m以下となるプレス前焼鈍後の粒径を考慮して、40%未満とした。本発明では、粒成長性の制御を目的とし、Vを添加しているのでプレス前焼鈍時の粒成長は望めない。そこで、保磁力Hcを95A/m以下とするには、二次冷圧率を40%未満とし、好ましくは30%未満、より好ましくは25%未満とする。
次に、本発明のいくつかの実施例について説明する。
[実施例1]
表1に示す化学組成を有する4種の供試鋼を溶製後、加熱温度1200℃、仕上げ温度900℃、巻取り温度600℃で熱間圧延し、板厚2.8mmの熱延板とした。その後、箱型焼鈍炉にて約750℃×5時間の条件で脱炭焼鈍を行った。脱炭後C量は、比較例鋼A:0.0011質量%、実施例鋼B:0.0004質量%、実施例鋼C:0.0015質量%、比較例鋼D:0.0008質量%であった。脱炭焼鈍後、酸洗し、圧延率90%で一次冷間圧延を行い、板厚0.28mmの冷圧板とした。次いで、連続焼鈍炉にて約700℃×60秒の条件で再結晶焼鈍を行い、冷圧率約29%で二次冷間圧延をし、板厚0.20mmのシャドウマスク用素材とした。
Figure 0004225188
以上より得られた供試鋼A〜Dにおけるプレス前焼鈍後の保磁力Hc(A/m)、非履歴透磁率μan、粒径(μm)の測定結果を表2にそれぞれ示す。ここで、プレス前焼鈍は、焼鈍雰囲気:10質量%H2−90質量%N2、焼鈍温度:800℃、露点10〜15℃、焼鈍時間:20分の条件で行った。
また、磁気特性は外径:45mm、内径:33mmのリング試験片を用い、JIS C 2531の規定に準じて測定し、保磁力Hcおよび非履歴透磁率μanを求め、保磁力Hcが95A/m以下の場合を記号○、それ以外を記号×、非履歴透磁率μanが25000以上の場合を記号○、それ以外を記号×で表示した。
次に、非履歴透磁率μanの詳細な測定方法を以下に示す。
(i)励磁コイルに減衰する交流電流を流して試験片を完全消磁する。
(ii)直流バイアス磁界用コイルに直流電流を流して、0.35エルステッド(0e)の直流バイアス磁界を発生させた状態で、再度励磁コイルに減衰する交流電流を流して試験片を消磁する。
(iii)励磁ロイルに直流電流を流して試験片を励磁し、発生した磁束を検出コイルで検出してB−H曲線を測定する。
(iV)B−H曲線より非履歴透磁率μanを算出する。
さらに、結晶粒径の測定は、圧延方向に平行な鋼板断面での光顕組織から、JIS G 0552に規定された切断法を用いて行い、25μm以上60μ未満の場合を記号○、それ以外を記号×で表示した。
表2に示すように、本発明例である実施例鋼BとCは、それぞれの成分が本発明の範囲に入っており、V適量添加による粒成長性制御のため、800℃×20分間の高温条件でプレス前焼鈍を行った場合であっても、粒径が適正範囲となり、保磁力Hcおよび非履歴透磁率μanはともに優れた特性を示す。このように実施例鋼B,Cは地磁気シールド性に優れ、これをシャドウマスクに用いた場合に「色ずれ」等の画質の劣化が防止される。
一方、バナジウム量が本発明範囲より少ない比較例鋼Aにおいては、粒成長性が高いため、高温でプレス前焼鈍を施した場合、粒径が粗大化し、本発明範囲から外れるため、非履歴透磁率μanが劣位となる。したがって、比較例鋼Aは地磁気シールド性の観点から好ましくない。
また、バナジウム量が本発明範囲より多い比較例鋼Dにおいては、粒成長性が低いため、粒径が細粒化し、本発明範囲から外れるため、保磁力Hcおよび非履歴透磁率μanはとも劣位となる。したがって、比較例鋼Dは地磁気シールド性の観点から好ましくない。
このようにバナジウムを本発明範囲内に制御することにより、本実施例では結晶粒径が25μm以上60μm未満を満足し、プレス前焼鈍後の保磁力が95A/m以下、非履歴透磁率が25000以上を有する磁気シールド性に優れたシャドウマスク用鋼板が得られ、「色ずれ」等の画質の劣化を防止できることを確認した。
Figure 0004225188
[実施例2]
表1に示す実施例鋼Bを溶製後、加熱温度1200℃、仕上げ温度900℃、巻取り温度600℃で熱間圧延し、板厚2.8mmの熱延板とした。その後、箱型焼鈍炉にて約750℃×5時間の条件で脱炭焼鈍を行った。脱炭後C量は0.0004質量%であった。脱炭焼鈍後、酸洗し、表3に示す条件で一次冷間圧延−再結晶焼鈍−二次冷間圧延を行って4つの供試鋼を作製した。供試鋼B−1〜B−4は、いずれも板厚0.20mmのシャドウマスク用素材とした。
以上より得られた供試鋼におけるプレス前焼鈍後の保磁力Hc(A/m)、非履歴透磁率μan、粒径(μm)の測定結果を表4にそれぞれ示す。なお、プレス前焼鈍条件および測定方法は、実施例1と同様である。
Figure 0004225188
表4に示すように、二次冷圧率が本発明範囲内である実施例鋼B−2、B−3は、プレス前焼鈍後の粒径が適正範囲となり、保磁力Hcと非履歴透磁率μanはともに優れていた。このように実施例鋼B−2、B−3では、地磁気シールド性に優れ、「色ずれ」等の画質の劣化を防止することを確認できた。
一方、二次冷圧率が本発明範囲より低い比較例鋼B−1は、プレス前焼鈍後の粒径が粗大となり、本発明範囲から外れるため、非履歴透磁率μanが劣位となった。したがって、比較例鋼B−1は、地磁気シールド性の観点から好ましくない。
また、二次冷圧率が本発明範囲より高い比較例鋼B−4は、プレス前焼鈍後の粒径が細粒となり、本発明範囲から外れるため、保磁力Hcおよび非履歴透磁率μanがともに劣位となった。したがって、比較例鋼B−1は、地磁気シールド性の観点から好ましくない。
このように二次冷圧率を本発明範囲内に制御することにより、本実施例では結晶粒径が25μm以上60μm未満を満足し、プレス前焼鈍後の保磁力が95A/m以下、非履歴透磁率μanが25000以上を有する磁気シールド性に優れたシャドウマスク用鋼板が得られ、「色ずれ」等の画質の劣化を防止できることを確認した。
Figure 0004225188
[実施例3]
表5に示す実施例鋼Xは、転炉出鋼後の溶鋼を脱ガス装置で処理して、成分調整し(C量:0.0011質量%)、加熱温度1200℃、仕上げ温度900℃、巻取り温度600℃で熱間圧延し、板厚2.8mmの熱延板とした鋼材である。熱延後、酸洗し、表6に示す条件で一次冷間圧延−再結晶焼鈍−二次冷間圧延を行って板厚0.20mmのシャドウマスク用素材とした。
一方、表5に示す実施例鋼Yは、溶製後、加熱温度1200℃、仕上げ温度900℃、巻取り温度600℃で熱間圧延し、板厚2.8mmの熱延板としたものである。熱延後、箱型焼鈍炉にて約750℃×5時間の条件で脱炭焼鈍を行い(脱炭後C量0.0004質量%)、酸洗し、表6に示す条件で一次冷間圧延−再結晶焼鈍−二次冷間圧延を行い板厚0.20mmのシャドウマスク用素材とした。
Figure 0004225188
Figure 0004225188
以上より得られた供試鋼X,Yにおけるプレス前焼鈍後の保磁力Hc(A/m)、非履歴透磁率μan、粒径(μm)の測定結果を表7に示す。なお、プレス前焼鈍条件および測定方法は実施例1と同様である。
表7に示すように、供試鋼X,Yは、いずれもプレス前焼鈍後の粒径が適正範囲となり、保磁力Hcおよび非履歴透磁率μanがともに優れていた。このように本実施例では、地磁気シールド性に優れ、「色ずれ」等の画質の劣化を防止できることを確認した。
Figure 0004225188
以上のように、本発明によれば、結晶粒径を25μm以上60μm未満とすることにより、プレス前焼鈍後の保磁力が95A/m以下、非履歴透磁率が25000以上を満足する優れた地磁気シールド性を有する高性能シャドウマスク材を得られ、「色ずれ」等の画質の劣化を防止することができる。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.002%以下、Si:0.03%以下、P:0.04%以下、Mn:0.1%以上0.5%以下、S:0.02%以下、sol. Al:0.01%以上0.08%以下、N:0.01%以下、V:0.001%以上0.006%以下、残部Feおよび不可避不純物からなり、プレス前焼鈍後の結晶粒径が25μm以上60μm未満であり、プレス前焼鈍後において95A/m以下の保磁力Hcおよび25000以上の非履歴透磁率μanを有することを特徴とするシャドウマスク用鋼板
  2. 質量%で、C:0.04%以下、Si:0.03%以下、P:0.04%以下、Mn:0.1%以上0.5%以下、S:0.02%以下、sol. Al:0.01%以上0.08%以下、N:0.01%以下、V:0.001%以上0.006%以下、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼を熱間圧延し、その熱延鋼板を脱炭焼鈍した後、一次冷間圧延し、次いで再結晶焼鈍を行った後、圧延率15%以上40%未満で二次冷間圧延し、二次冷間圧延により所望板厚とした鋼板のプレス前焼鈍後の結晶粒径が25μm以上60μm未満であり、プレス前焼鈍後において95A/m以下の保磁力Hcおよび25000以上の非履歴透磁率μanを有することを特徴とするシャドウマスク用鋼板の製造方法
  3. 質量%で、C:0.04%以下、Si:0.03%以下、P:0.04%以下、Mn:0.1%以上0.5%以下、S:0.02%以下、sol. Al:0.01%以上0.08%以下、N:0.01%以下、V:0.001%以上0.006%以下、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼を熱間圧延し、その熱延鋼板を一次冷間圧延し、次いで脱炭焼鈍を行った後、圧延率15%以上40%未満で二次冷間圧延し、所望板厚とした鋼板のプレス前焼鈍後の結晶粒径が25μm以上60μm未満であり、プレス前焼鈍後において95A/m以下の保磁力Hcおよび25000以上の非履歴透磁率μanを有することを特徴とするシャドウマスク用鋼板の製造方法
  4. 質量%で、C:0.002%以下、Si:0.03%以下、P:0.04%以下、Mn:0.1%以上0.5%以下、S:0.02%以下、sol. Al:0.01%以上0.08%以下、N:0.01%以下、V:0.001%以上0.006%以下、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼を熱間圧延し、その熱延鋼板を一次冷間圧延し、次いで再結晶焼鈍を行った後、圧延率15%以上40%未満で二次冷間圧延し、所望板厚とした鋼板のプレス前焼鈍後の結晶粒径が25μm以上60μm未満であり、プレス前焼鈍後において95A/m以下の保磁力Hcおよび25000以上の非履歴透磁率μanを有することを特徴とするシャドウマスク用鋼板の製造方法
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