JP4345461B2 - プレス成形性およびプレス成形後の落下強度に優れたシャドウマスク用鋼板およびその製造方法 - Google Patents

プレス成形性およびプレス成形後の落下強度に優れたシャドウマスク用鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明はカラー受像管に用いられるシャドウマスクに使用するプレス成形性およびプレス成形後の落下強度に優れたシャドウマスク用鋼板およびその製造方法に関する。
一般に、カラーブラウン管は3本の電子ビームを放射する電子銃と、この電子銃から放射された電子ビームを受けて3原色を発光する蛍光体と、各電子ビームのうちの必要な方向の電子ビームだけを選択的に透過させて不要な方向の電子ビームを遮断するマスクから構成されている。マスクは曲面形状を有するプレスタイプのシャドウマスクや一方向あるいは二方向に張力を負荷するタイプのテンションマスクがある。これらのうちプレスタイプのシャドウマスクは、素材メーカーで製品厚まで圧延された冷延鋼板を素材とし、これをエッチングメーカーでフォトエッチング法により穿孔し、ブラウン管メーカーで軟質化を目的とした650℃〜850℃程度の短時間焼鈍(以下、プレス前焼鈍)を行い、その後所望の曲面形状にプレス成形され、黒化処理し、ブラウン管に組み込まれる。
シャドウマスクの品質に対しては、エッチング性、プレス成形性、黒化処理性、磁気特性等が要求される。近年、ブラウン管の大型化や高品位化に伴い、画像の高精細化や高品位化がより強く求められている。このようなブラウン管に対する要求特性の向上に伴って、当然ながらシャドウマスクに対する要求特性、例えば、プレス成形時に生じる不均一変形の防止や形状凍結性の向上、さらにプレス成形後のハンドリング時の落下強度の向上などより厳しく求められる。
従来、プレス成形時に生じる不均一変形の防止や形状凍結性の向上、および落下強度の向上を目的として、降伏点伸びの原因となる鋼中の固溶Nを固定させる方法がいくつか提案されている。
例えば、特許文献1は、鋼中のホウ素量を窒素の当量以上とすることにより、降伏点伸びの原因となる鋼中の固溶窒素を窒化物BNとして固定させる方法を開示している。
また、特許文献2は、鋼中の酸可溶性アルミニウム(Sol.Al)と窒素とをある関係を満足するように添加し、降伏点伸びの原因となる鋼中の固溶Nを粗大なAlNとして固定する方法を開示している。
特開昭55−138027号公報 特公昭59−43974号公報
しかしながら、特許文献1に記載されているホウ素Bを添加する従来技術は、ホウ素Bが黒化処理膜の密着性を劣化させるために好ましくない。
また、特許文献1および特許文献2に記載されているいずれの方法も、微細なAlNの析出を防止しており、これらの鋼は粒成長性がよいため、ブラウン管メーカーでのプレス前焼鈍時に炉内の温度分布等により焼むらを生じるという問題があり、また、高温でプレス前焼鈍を行うと結晶粒が粗大化するので、プレス成形時に不均一変形を生じたり、降伏応力が低いために落下強度が低下するという問題があった。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の知見を得た。第1に適量のバナジウムVを添加することで粒成長性を制御し、プレス前焼鈍時において炉内の温度分布等により生じる焼むらが防止できること、第2にプレス前焼鈍後の粒径を10μm以上25μm未満とすることで結晶粒粗大化に起因したプレス成形時に生じる不均一変形の防止や形状凍結性が向上すること、第3にプレス成形後のハンドリング時の落下強度を向上した高性能マスク材が得られること、を見出した。
本発明は上記のような知見に基いてなされたものであり、以下のような構成を有する。
第1の発明は、質量%で、C:0.002%以下、Si:0.03%以下、P:0.04%以下、Mn:0.1%以上0.5%以下、S:0.02%以下、sol.Al:0.01%以上0.08%以下、N:0.01%以下、V:0.001%以上0.006%以下、残部Feおよび不可避不純物からなり、プレス前焼鈍後の結晶粒径が10μm以上25μm未満であり、プレス前焼鈍後において100MPa以上125MPa以下の降伏応力YPを有することを特徴とするプレス成形性およびプレス成形後の落下強度に優れたシャドウマスク用鋼板に関するものである。
第2の発明は、質量%で、C:0.04%以下、Si:0.03%以下、P:0.04%以下、Mn:0.1%以上0.5%以下、S:0.02%以下、sol.Al:0.01%以上0.08%以下、N:0.01%以下、V:0.001%以上0.006%以下、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼を熱間圧延し、その熱延鋼板を脱炭焼鈍した後、一次冷間圧延し、次いで再結晶焼鈍を行った後、圧延率40%以上70%未満で二次冷間圧延し、所望板厚とした鋼板のプレス前焼鈍後の結晶粒径を10μm以上25μm未満とし、プレス前焼鈍後における降伏応力YPを100MPa以上125MPa以下とすることを特徴とするプレス成形性およびプレス成形後の落下強度に優れたシャドウマスク用鋼板の製造方法に関するものである。
第3の発明は、質量%で、C:0.04%以下、Si:0.03%以下、P:0.04%以下、Mn:0.1%以上0.5%以下、S:0.02%以下、sol.Al:0.01%以上0.08%以下、N:0.01%以下、V:0.001%以上0.006%以下、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼を熱間圧延し、その熱延鋼板を一次冷間圧延し、次いで脱炭焼鈍を行った後、圧延率40%以上で二次冷間圧延し、所望板厚とした鋼板のプレス前焼鈍後の結晶粒径を10μm以上25μm未満とし、プレス前焼鈍後における降伏応力YPを100MPa以上125MPa以下とすることを特徴とするプレス成形性およびプレス成形後の落下強度に優れたシャドウマスク用鋼板の製造方法に関するものである。
第4の発明は、質量%で、C:0.002%以下、Si:0.03%以下、P:0.04%以下、Mn:0.1%以上0.5%以下、S:0.02%以下、sol.Al:0.01%以上0.08%以下、N:0.01%以下、V:0.001%以上0.006%以下、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼を熱間圧延し、その熱延鋼板を一次冷間圧延し、次いで再結晶焼鈍を行った後、圧延率40%以上70%未満で二次冷間圧延し、所望板厚とした鋼板のプレス前焼鈍後の結晶粒径を10μm以上25μm未満とし、プレス前焼鈍後における降伏応力YPを100MPa以上125MPa以下とすることを特徴とするプレス成形性およびプレス成形後の落下強度に優れたシャドウマスク用鋼板の製造方法に関するものである。
本発明によれば、プレス前焼鈍後の結晶粒径を10μm以上25μm未満とすることにより、プレス前焼鈍後の降伏応力が100MPa以上125MPa以下を満足する優れたプレス成形性およびプレス成形後の落下強度を併せもった高性能シャドウマスク用素材を得ることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
まず、本発明においては、プレス成形性およびプレス成形後の落下強度を向上させるために、プレス前焼鈍後の降伏応力が100MPa以上125MPa以下を満足する鋼板を製造する。プレス前焼鈍後の降伏応力が100MPa未満では、プレス成形後の落下強度が劣位となり、また、125MPa超えでは、プレス成形性が劣位となり、形状精度が劣化する。これらの理由から、プレス成形性およびプレス成形後の落下強度の両者を満足するため、プレス前焼鈍後の降伏応力を100MPa以上125MPa以下とし、この降伏応力は、プレス前焼鈍後の結晶粒径を10μm以上25μm未満とすることで得られることが判明した。
本発明者等が検討した結果、Vの適量添加により粒成長性を制御し、かつ、最終冷圧率を40%以上とすることで、プレス前焼鈍時に炉内の温度分布により生じる焼むらの問題や高温でプレス前焼鈍を施した場合の粒径粗大化に起因した落下強度の低下の問題等を解消した、前記規定値を安定的に満足するシャドウマスク用鋼板が製造できることを見出した。
次に、成分の限定理由について説明する。
(1)C:0.002%以下
炭素は含有量が多くなると、炭化物の生成が多くなり、フォトエッチング時の穿孔性を悪くする。さらに降伏応力および降伏点伸びが上昇し、プレス時の孔の形状不良を生じやすくなるため、脱炭焼鈍をしない場合にはスラブ中のC量として0.002質量%以下(極低炭素鋼)、脱炭焼鈍する場合にはスラブ中のC量として0.04質量%以下(低炭素鋼)である。これは、脱炭焼鈍する場合、C量が多い場合には十分な脱炭に時間がかかるため、C量は0.04質量%以下、好ましくは0.03質量%以下とする。また、脱炭焼鈍をしない場合および脱炭焼鈍した場合のC量はプレス成形性の観点から、その含有量は0.002質量%以下とし、好ましくは0.001質量%以下、より好ましくは0.0005質量%以下とする。
(2)Si:0.03%以下
シリコンは非金属介在物を形成してエッチング性を劣化させるため、その含有量は0.03質量%以下好ましくは0.01質量%以下とする.
(3)Mn:0.1%以上0.5%以下
マンガンは製鋼時の脱酸材として、また、硫黄による熱間脆性を防止するのに有効であり、このためには0.1質量%以上含有する必要がある。一方、マンガンを0.5質量%以上含有すると鋼が硬化し、プレス成形性を劣化させるのでその含有量は0.5質量%以下、好ましくは0.4質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下とする。
(4)P:0.04%以下
燐は鋼を硬化し、プレス成形性を劣化させるとともに、偏析に起因するエッチングむらを生じやすい元素であるため、その含有量は少ない方が望ましく、0.04質量%以下、好ましくは0.03質量%以下とする。
(5)S:0.02%以下
硫黄は不可避的に鋼中に含有される元素であるが、0.02質量%以上含有すると硫化物系の介在物として存在し、エッチング性を劣化させるとともに、鋼材を脆化する元素であるので、その含有量は少ない方が望ましく、0.02質量%以下、好ましくは0.01質量%以下とする。
(6)sol.Al:0.01%以上
酸可溶性アルミニウムは、製鋼に際して脱酸材として転炉溶製後に添加され、鋼の清浄度を向上させる。さらに、sol.Alは鋼中のNと結合してAlNを生成し、窒素による不均一変形の発生を抑制する効果があるので、0.01質量%以上添加し、好ましくは0.02質量%以上とする。一方、sol.Alを必要以上に添加してもコストの増加を招くので、その含有量は0.08質量%以下、好ましくは0.06質量%以下とする。
(7)N:0.01%以下
窒素は含有量が多いと降伏点伸びの増大やAlNの増加にともないエッチング性を劣化させるため、その含有量は0.01質量%以下、好ましくは0.008質量%以下とする。
(8)V:0.001%以上0.006%以下
本発明においてバナジウムは最大のポイントとなる添加元素である。バナジウムはプレス前焼鈍時に残存している固溶Cおよび固溶Nを窒化物や炭窒化物として固定し、プレス成形性を向上させる。また、窒化物や炭窒化物は粒成長性を制御するため、ブラウン管メーカーでのプレス前焼鈍時に炉内の温度分布に起因した焼むらを防止する。この粒成長制御効果は0.001質量%未満では不十分であるため、0.001質量%以上、好ましくは0.002質量%以上とする。一方、0.006質量%以上添加すると、窒化物や炭窒化物の増大により鋼が硬化し、プレス成形性を劣化させるため、0.006質量%以下、好ましくは0.005質量%以下とする。
(9)不可避不純物
不可避不純物およびその他の元素は、シャドウマスクとしての基本特性(プレス成形性、エッチング性、黒化処理性、磁気特性など)および本発明の作用(結晶粒径制御、プレス前焼鈍後の降伏応力)を損なわない範囲で極微量の存在が許容される。
(10)結晶粒径:10μm以上25μm未満
本発明ではプレス前焼鈍後の結晶粒径を10μm以上25μm未満の範囲とする。プレス前焼鈍後の結晶粒径が25μmを超えると、粗粒化により所望の降伏応力YP(100MPa以上)を得ることができなくなり、プレス成形後の落下強度が低下するからである。一方、プレス前焼鈍後の結晶粒径が10μmを下回ると、細粒化により所望の降伏応力YP(125MPa以下)を得ることができなくなり、プレス成形性が低下するからである。なお、ここでいう「結晶粒径」とは、JIS G 0552に規定された切断法により測定した値の平均をいう。結晶粒径を測定する面は鋼板の圧延方向に平行な断面である。
次に製造方法について説明する。
炭素量以外は実質上前記した成分範囲の鋼を常法に従って、溶製、鋳造、熱間圧延を行い、熱延鋼板を得る。次いで熱延鋼板を脱炭焼鈍し、冷間圧延を施す。必要な場合は、中間焼鈍をはさんで複数回の冷間圧延を施す。あるいは、熱延鋼板を冷間圧延し、脱炭焼鈍を施す。必要な場合はさらに冷間圧延を施す。
(11)脱炭焼鈍
炭素量が多いとセメンタイトが析出し、エッチング性が悪くなるとともに降伏応力および降伏点伸びが上昇し、プレス成形性が悪くなる。脱炭焼鈍はC量を極力少なくするために行う。脱炭焼鈍条件は常法に従うことができ、例えば焼鈍雰囲気:水素と窒素の混合気体、焼鈍温度:650〜800℃、露点:10〜30℃で行う。焼鈍時間は、目標とする脱炭レベル、コイル重量、板厚等により適宜設定されるが、プレス前焼鈍時に脱炭されにくい場合を考慮すると、プレス成形性の観点から、C量が0.002質量%以下、好ましくは0.001質量%以下となるまで脱炭することが好ましい。なお、脱炭焼鈍の効果を確認するために、鋼板全厚についてサンプリングを行い、ガス分析により成分分析を行った。なお、脱炭焼鈍は熱延板で行ってもよく、一次冷圧板で行ってもよい。
(12)酸洗、一次冷間圧延
酸洗および一次冷間圧延は通常行われる条件でよい。なお、一次冷間圧延は脱炭焼鈍後に行ってもよく、脱炭焼鈍前に行ってもよい。
(13)中間焼鈍、二次冷間圧延
本発明では降伏応力YPを100MPa以上125MPa以下にするため、中間焼鈍をはさんで、40%以上70%未満の圧下率で二次冷間圧延する。ここで、中間焼鈍は再結晶さえすればよく、箱焼鈍、連続焼鈍のいずれを用いてもよい。二次冷圧率が40%未満では降伏応力YPが100MPa未満となり、プレス成形後の落下強度が劣位となり、好ましくない。したがって、二次冷圧率の下限は40%以上とし、好ましくは50%以上とする。また、二次冷圧率が70%以上では、YPが125MPa超えとなり、プレス成形性が劣位となり、形状精度が劣化する。したがって、二次冷圧率の上限は、70%未満とする。
次に、本発明のいくつかの実施例について説明する。
[実施例1]
表1に示す化学組成を有する供試鋼を溶製後、加熱温度1200℃、仕上げ温度900℃、巻取り温度600℃で熱間圧延し、板厚3.0mmの熱延鋼板とした。その後、箱型焼鈍炉にて約750℃×5時間の条件で脱炭焼鈍を行った。脱炭後C量は、比較例鋼A:0.0010質量%、実施例鋼B:0.0005質量%、実施例鋼C:0.0014質量%、比較例鋼D:0.0010質量%であった。脱炭焼鈍後、酸洗し、圧延率85%で一次冷間圧延を行い、板厚0.45mmの冷圧板とした。次いで、連続焼鈍炉にて約730℃×60秒間の条件で再結晶焼鈍を行い、冷圧率49%で二次冷間圧延をし、板厚0.23mmのシャドウマスク用素材とした。
Figure 0004345461
以上より得られた供試鋼のプレス前焼鈍後の降伏応力YP(MPa)、降伏点伸びYpel(%)、粒径(μm)の測定結果を表2に示す。ここで、プレス前焼鈍は、焼鈍雰囲気:10質量%H2−90質量%N2、焼鈍温度:800℃、露点:10〜15℃、焼鈍時間120分間の条件で行った。また、機械特性はJIS5号試験片で引張試験を行い、降伏応力YPと降伏点伸びYpelを求め、降伏応力YPが100〜125MPaの場合に記号○、それ以外に記号×、降伏点伸びYpelが0.3%以下の場合を記号○、それ以外を×で表示した。結晶粒径の測定は、圧延方向に平行な鋼板断面での光顕組織から、JIS G 0552に規定された切断法により行い、10μm以上25μm未満の場合を記号○、それ以外を記号×でそれぞれ表示した。
Figure 0004345461
表2に示すように、本発明例である実施例鋼BとCは、それぞれの成分が本発明の範囲に入っており、V適量添加による粒成長性制御のため、800℃×20分間の高温条件でプレス前焼鈍を行った場合であっても、粒径が適正範囲となり、降伏応力YPと降伏点伸びYpelはともに優れた特性を示す。このように実施例鋼B,Cはプレス成形性およびプレス成形性後の落下強度ともに優れ、これをシャドウマスクに用いた場合に「色ずれ」等の画質の劣化が防止される。
一方、バナジウム量が本発明範囲より少ない比較例鋼Aにおいては、粒成長性が高いため、高温でプレス前焼鈍を施した場合、粒径が粗粒化し、本発明範囲から外れるため、降伏応力YPが低下する。したがって、比較例鋼Aはプレス後の落下強度の観点から好ましくない。また、バナジウム量が本発明範囲より多い比較例鋼Dにおいては、粒成長性が低いため、粒径が細粒化し、本発明範囲から外れるため、降伏応力YPが上昇する。したがって、比較例鋼Dはプレス成形性の観点から好ましくない。
このようにバナジウムを本発明範囲内に制御することにより、結晶粒径が10μm以上25μm未満を満足し、プレス前焼鈍後の降伏応力が100MPa以上125MPa以下を有するプレス成形性およびプレス成形後の落下強度に優れたシャドウマスク用鋼板が得られる。
[実施例2]
表1に示す鋼Bを溶製後、加熱温度1200℃、仕上げ温度900℃、巻取り温度600℃で熱間圧延し、板厚3.0mmの熱延鋼板とした。その後、箱型焼鈍炉にて約750℃×5時間の条件で脱炭焼鈍を行った(脱炭後C量:0.0005質量%)。その後、酸洗し、表3に示す条件で一次冷間圧延−再結晶焼鈍−二次冷間圧延を行っていずれも板厚0.23mmのシャドウマスク用素材とした。以上より得られた供試鋼におけるプレス前焼鈍後の降伏応力YP、降伏点伸びYpel、粒径の測定結果を表4に示す。ここで、プレス前焼鈍条件および測定方法は実施例1と同じである。
表4に示すように、二次冷圧率が本発明範囲内である鋼B−2、B−3は、プレス前焼鈍後の粒径が適正範囲となり、降伏応力YPと降伏点伸びYpelはともに優れた特性を示す。このようにしてプレス成形性およびプレス成形後の落下強度に優れたシャドウマスク用鋼板が得られる。
一方、二次冷圧率が本発明範囲より低い比較例鋼B−1においては、プレス前焼鈍後の粒径が粗大となり、本発明範囲から外れるため、降伏応力YPが低下し、プレス成形後の落下強度の観点から好ましくない。
また、二次冷圧率が本発明範囲より高い比較例鋼B−4においては、プレス前焼鈍後の粒径が細粒となり、本発明範囲から外れるため、降伏応力YPが上昇し、プレス成形性の観点から好ましくない。
これらのようにバナジウムを本発明範囲内に制御することにより、結晶粒径が10μm以上25μm未満を満足し、プレス前焼鈍後の降伏応力が100MPa以上125MPa以下を有するプレス成形性およびプレス成形後の落下強度に優れたシャドウマスク用鋼板が得られる。
Figure 0004345461
Figure 0004345461
[実施例3]
表5に示す実施例鋼Xは転炉出鋼後の溶鋼を脱ガス装置で処理して、成分調整し(C量:0.0011質量%)、加熱温度1200℃、仕上げ温度900℃、巻取り温度600℃で熱間圧延し、板厚3.0mmの熱延鋼板とした。その後、酸洗し、表6に示す条件で一次冷間圧延−再結晶焼鈍−二次冷間圧延を行って板厚0.23mmのシャドウマスク用素材とした。
一方、表5に示す実施例鋼Yは、溶製後、加熱温度1200℃、仕上げ温度900℃、巻取り温度600℃で熱間圧延し、板厚3.0mmの熱延鋼板とした。その後、箱型焼鈍炉にて約750℃×5時間の条件で脱炭焼鈍を行い(脱炭後C量:0.0005質量%)、酸洗し、表6に示す条件で一次冷間圧延−再結晶焼鈍−二次冷間圧延を行い、板厚0.23mmのシャドウマスク用素材とした。
Figure 0004345461
Figure 0004345461
以上より得られた供試鋼におけるプレス前焼鈍後の降伏応力YP、降伏点伸びYpel、粒径の測定結果を表7に示す。なお、プレス前焼鈍条件および測定方法は実施例1と実質的に同じである。
表7に示すように、鋼X、Yは、プレス前焼鈍後の粒径が適正範囲となり、降伏応力YPと降伏点伸びYpelはともに優れた特性を示した。このようにしてプレス成形性およびプレス成形後の落下強度に優れたシャドウマスク用鋼板が得られた。
Figure 0004345461
以上のように、本発明によれば、プレス前焼鈍後の結晶粒径を10μm以上25μm未満とすることにより、プレス前焼鈍後の降伏応力が100MPa以上125MPa以下を満足する優れたプレス成形性およびプレス成形後の落下強度を併せ持った高性能シャドウマスク材を得ることができる。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.002%以下、Si:0.03%以下、P:0.04%以下、Mn:0.1%以上0.5%以下、S:0.02%以下、sol.Al:0.01%以上0.08%以下、N:0.01%以下、V:0.001%以上0.006%以下、残部Feおよび不可避不純物からなり、プレス前焼鈍後の結晶粒径が10μm以上25μm未満であり、プレス前焼鈍後において100MPa以上125MPa以下の降伏応力YPを有することを特徴とするプレス成形性およびプレス成形後の落下強度に優れたシャドウマスク用鋼板。
  2. 質量%で、C:0.04%以下、Si:0.03%以下、P:0.04%以下、Mn:0.1%以上0.5%以下、S:0.02%以下、sol.Al:0.01%以上0.08%以下、N:0.01%以下、V:0.001%以上0.006%以下、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼を熱間圧延し、その熱延鋼板を脱炭焼鈍した後、一次冷間圧延し、次いで再結晶焼鈍を行った後、圧延率40%以上70%未満で二次冷間圧延し、所望板厚とした鋼板のプレス前焼鈍後の結晶粒径を10μm以上25μm未満とし、プレス前焼鈍後における降伏応力YPを100MPa以上125MPa以下とすることを特徴とするプレス成形性およびプレス成形後の落下強度に優れたシャドウマスク用鋼板の製造方法。
  3. 質量%で、C:0.04%以下、Si:0.03%以下、P:0.04%以下、Mn:0.1%以上0.5%以下、S:0.02%以下、sol.Al:0.01%以上0.08%以下、N:0.01%以下、V:0.001%以上0.006%以下、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼を熱間圧延し、その熱延鋼板を一次冷間圧延し、次いで脱炭焼鈍を行った後、圧延率40%以上で二次冷間圧延し、所望板厚とした鋼板のプレス前焼鈍後の結晶粒径を10μm以上25μm未満とし、プレス前焼鈍後における降伏応力YPを100MPa以上125MPa以下とすることを特徴とするプレス成形性およびプレス成形後の落下強度に優れたシャドウマスク用鋼板の製造方法。
  4. 質量%で、C:0.002%以下、Si:0.03%以下、P:0.04%以下、Mn:0.1%以上0.5%以下、S:0.02%以下、sol.Al:0.01%以上0.08%以下、N:0.01%以下、V:0.001%以上0.006%以下、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼を熱間圧延し、その熱延鋼板を一次冷間圧延し、次いで再結晶焼鈍を行った後、圧延率40%以上70%未満で二次冷間圧延し、所望板厚とした鋼板のプレス前焼鈍後の結晶粒径を10μm以上25μm未満とし、プレス前焼鈍後における降伏応力YPを100MPa以上125MPa以下とすることを特徴とするプレス成形性およびプレス成形後の落下強度に優れたシャドウマスク用鋼板の製造方法。
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