JP4345461B2 - プレス成形性およびプレス成形後の落下強度に優れたシャドウマスク用鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
炭素は含有量が多くなると、炭化物の生成が多くなり、フォトエッチング時の穿孔性を悪くする。さらに降伏応力および降伏点伸びが上昇し、プレス時の孔の形状不良を生じやすくなるため、脱炭焼鈍をしない場合にはスラブ中のC量として0.002質量%以下(極低炭素鋼)、脱炭焼鈍する場合にはスラブ中のC量として0.04質量%以下(低炭素鋼)である。これは、脱炭焼鈍する場合、C量が多い場合には十分な脱炭に時間がかかるため、C量は0.04質量%以下、好ましくは0.03質量%以下とする。また、脱炭焼鈍をしない場合および脱炭焼鈍した場合のC量はプレス成形性の観点から、その含有量は0.002質量%以下とし、好ましくは0.001質量%以下、より好ましくは0.0005質量%以下とする。
シリコンは非金属介在物を形成してエッチング性を劣化させるため、その含有量は0.03質量%以下好ましくは0.01質量%以下とする.
(3)Mn:0.1%以上0.5%以下
マンガンは製鋼時の脱酸材として、また、硫黄による熱間脆性を防止するのに有効であり、このためには0.1質量%以上含有する必要がある。一方、マンガンを0.5質量%以上含有すると鋼が硬化し、プレス成形性を劣化させるのでその含有量は0.5質量%以下、好ましくは0.4質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下とする。
燐は鋼を硬化し、プレス成形性を劣化させるとともに、偏析に起因するエッチングむらを生じやすい元素であるため、その含有量は少ない方が望ましく、0.04質量%以下、好ましくは0.03質量%以下とする。
硫黄は不可避的に鋼中に含有される元素であるが、0.02質量%以上含有すると硫化物系の介在物として存在し、エッチング性を劣化させるとともに、鋼材を脆化する元素であるので、その含有量は少ない方が望ましく、0.02質量%以下、好ましくは0.01質量%以下とする。
酸可溶性アルミニウムは、製鋼に際して脱酸材として転炉溶製後に添加され、鋼の清浄度を向上させる。さらに、sol.Alは鋼中のNと結合してAlNを生成し、窒素による不均一変形の発生を抑制する効果があるので、0.01質量%以上添加し、好ましくは0.02質量%以上とする。一方、sol.Alを必要以上に添加してもコストの増加を招くので、その含有量は0.08質量%以下、好ましくは0.06質量%以下とする。
窒素は含有量が多いと降伏点伸びの増大やAlNの増加にともないエッチング性を劣化させるため、その含有量は0.01質量%以下、好ましくは0.008質量%以下とする。
本発明においてバナジウムは最大のポイントとなる添加元素である。バナジウムはプレス前焼鈍時に残存している固溶Cおよび固溶Nを窒化物や炭窒化物として固定し、プレス成形性を向上させる。また、窒化物や炭窒化物は粒成長性を制御するため、ブラウン管メーカーでのプレス前焼鈍時に炉内の温度分布に起因した焼むらを防止する。この粒成長制御効果は0.001質量%未満では不十分であるため、0.001質量%以上、好ましくは0.002質量%以上とする。一方、0.006質量%以上添加すると、窒化物や炭窒化物の増大により鋼が硬化し、プレス成形性を劣化させるため、0.006質量%以下、好ましくは0.005質量%以下とする。
不可避不純物およびその他の元素は、シャドウマスクとしての基本特性(プレス成形性、エッチング性、黒化処理性、磁気特性など)および本発明の作用(結晶粒径制御、プレス前焼鈍後の降伏応力)を損なわない範囲で極微量の存在が許容される。
本発明ではプレス前焼鈍後の結晶粒径を10μm以上25μm未満の範囲とする。プレス前焼鈍後の結晶粒径が25μmを超えると、粗粒化により所望の降伏応力YP(100MPa以上)を得ることができなくなり、プレス成形後の落下強度が低下するからである。一方、プレス前焼鈍後の結晶粒径が10μmを下回ると、細粒化により所望の降伏応力YP(125MPa以下)を得ることができなくなり、プレス成形性が低下するからである。なお、ここでいう「結晶粒径」とは、JIS G 0552に規定された切断法により測定した値の平均をいう。結晶粒径を測定する面は鋼板の圧延方向に平行な断面である。
炭素量が多いとセメンタイトが析出し、エッチング性が悪くなるとともに降伏応力および降伏点伸びが上昇し、プレス成形性が悪くなる。脱炭焼鈍はC量を極力少なくするために行う。脱炭焼鈍条件は常法に従うことができ、例えば焼鈍雰囲気:水素と窒素の混合気体、焼鈍温度:650〜800℃、露点:10〜30℃で行う。焼鈍時間は、目標とする脱炭レベル、コイル重量、板厚等により適宜設定されるが、プレス前焼鈍時に脱炭されにくい場合を考慮すると、プレス成形性の観点から、C量が0.002質量%以下、好ましくは0.001質量%以下となるまで脱炭することが好ましい。なお、脱炭焼鈍の効果を確認するために、鋼板全厚についてサンプリングを行い、ガス分析により成分分析を行った。なお、脱炭焼鈍は熱延板で行ってもよく、一次冷圧板で行ってもよい。
酸洗および一次冷間圧延は通常行われる条件でよい。なお、一次冷間圧延は脱炭焼鈍後に行ってもよく、脱炭焼鈍前に行ってもよい。
本発明では降伏応力YPを100MPa以上125MPa以下にするため、中間焼鈍をはさんで、40%以上70%未満の圧下率で二次冷間圧延する。ここで、中間焼鈍は再結晶さえすればよく、箱焼鈍、連続焼鈍のいずれを用いてもよい。二次冷圧率が40%未満では降伏応力YPが100MPa未満となり、プレス成形後の落下強度が劣位となり、好ましくない。したがって、二次冷圧率の下限は40%以上とし、好ましくは50%以上とする。また、二次冷圧率が70%以上では、YPが125MPa超えとなり、プレス成形性が劣位となり、形状精度が劣化する。したがって、二次冷圧率の上限は、70%未満とする。
表1に示す化学組成を有する供試鋼を溶製後、加熱温度1200℃、仕上げ温度900℃、巻取り温度600℃で熱間圧延し、板厚3.0mmの熱延鋼板とした。その後、箱型焼鈍炉にて約750℃×5時間の条件で脱炭焼鈍を行った。脱炭後C量は、比較例鋼A:0.0010質量%、実施例鋼B:0.0005質量%、実施例鋼C:0.0014質量%、比較例鋼D:0.0010質量%であった。脱炭焼鈍後、酸洗し、圧延率85%で一次冷間圧延を行い、板厚0.45mmの冷圧板とした。次いで、連続焼鈍炉にて約730℃×60秒間の条件で再結晶焼鈍を行い、冷圧率49%で二次冷間圧延をし、板厚0.23mmのシャドウマスク用素材とした。
表1に示す鋼Bを溶製後、加熱温度1200℃、仕上げ温度900℃、巻取り温度600℃で熱間圧延し、板厚3.0mmの熱延鋼板とした。その後、箱型焼鈍炉にて約750℃×5時間の条件で脱炭焼鈍を行った(脱炭後C量:0.0005質量%)。その後、酸洗し、表3に示す条件で一次冷間圧延−再結晶焼鈍−二次冷間圧延を行っていずれも板厚0.23mmのシャドウマスク用素材とした。以上より得られた供試鋼におけるプレス前焼鈍後の降伏応力YP、降伏点伸びYpel、粒径の測定結果を表4に示す。ここで、プレス前焼鈍条件および測定方法は実施例1と同じである。
表5に示す実施例鋼Xは転炉出鋼後の溶鋼を脱ガス装置で処理して、成分調整し(C量:0.0011質量%)、加熱温度1200℃、仕上げ温度900℃、巻取り温度600℃で熱間圧延し、板厚3.0mmの熱延鋼板とした。その後、酸洗し、表6に示す条件で一次冷間圧延−再結晶焼鈍−二次冷間圧延を行って板厚0.23mmのシャドウマスク用素材とした。
Claims (4)
- 質量%で、C:0.002%以下、Si:0.03%以下、P:0.04%以下、Mn:0.1%以上0.5%以下、S:0.02%以下、sol.Al:0.01%以上0.08%以下、N:0.01%以下、V:0.001%以上0.006%以下、残部Feおよび不可避不純物からなり、プレス前焼鈍後の結晶粒径が10μm以上25μm未満であり、プレス前焼鈍後において100MPa以上125MPa以下の降伏応力YPを有することを特徴とするプレス成形性およびプレス成形後の落下強度に優れたシャドウマスク用鋼板。
- 質量%で、C:0.04%以下、Si:0.03%以下、P:0.04%以下、Mn:0.1%以上0.5%以下、S:0.02%以下、sol.Al:0.01%以上0.08%以下、N:0.01%以下、V:0.001%以上0.006%以下、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼を熱間圧延し、その熱延鋼板を脱炭焼鈍した後、一次冷間圧延し、次いで再結晶焼鈍を行った後、圧延率40%以上70%未満で二次冷間圧延し、所望板厚とした鋼板のプレス前焼鈍後の結晶粒径を10μm以上25μm未満とし、プレス前焼鈍後における降伏応力YPを100MPa以上125MPa以下とすることを特徴とするプレス成形性およびプレス成形後の落下強度に優れたシャドウマスク用鋼板の製造方法。
- 質量%で、C:0.04%以下、Si:0.03%以下、P:0.04%以下、Mn:0.1%以上0.5%以下、S:0.02%以下、sol.Al:0.01%以上0.08%以下、N:0.01%以下、V:0.001%以上0.006%以下、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼を熱間圧延し、その熱延鋼板を一次冷間圧延し、次いで脱炭焼鈍を行った後、圧延率40%以上で二次冷間圧延し、所望板厚とした鋼板のプレス前焼鈍後の結晶粒径を10μm以上25μm未満とし、プレス前焼鈍後における降伏応力YPを100MPa以上125MPa以下とすることを特徴とするプレス成形性およびプレス成形後の落下強度に優れたシャドウマスク用鋼板の製造方法。
- 質量%で、C:0.002%以下、Si:0.03%以下、P:0.04%以下、Mn:0.1%以上0.5%以下、S:0.02%以下、sol.Al:0.01%以上0.08%以下、N:0.01%以下、V:0.001%以上0.006%以下、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼を熱間圧延し、その熱延鋼板を一次冷間圧延し、次いで再結晶焼鈍を行った後、圧延率40%以上70%未満で二次冷間圧延し、所望板厚とした鋼板のプレス前焼鈍後の結晶粒径を10μm以上25μm未満とし、プレス前焼鈍後における降伏応力YPを100MPa以上125MPa以下とすることを特徴とするプレス成形性およびプレス成形後の落下強度に優れたシャドウマスク用鋼板の製造方法。
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