JP2006238738A - 焼酎蒸留残液からの飲料の製造法 - Google Patents
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Abstract
【課題】効率よく、且つ、安価に焼酎蒸留残液から美味なクエン酸飲料を提供すること。
【解決手段】焼酎の蒸留過程での蒸留残液を出発原料とし、この蒸留残液をろ過して得たろ過液に焼酎の製造に使用した麹を添加する。必要に応じて蒸煮した米及び糖化酵素剤を添加する。その後、麹菌の増殖温度以上に保持して、クエン酸の含有量を増量した処理液をろ過して飲料の原液とする。クエン酸含有量は、使用した麹の量、クエン酸抽出のための時間と温度によって調整する。糖分の含有量は、蒸煮した米を添加することによって調整する。
【選択図】図1
【解決手段】焼酎の蒸留過程での蒸留残液を出発原料とし、この蒸留残液をろ過して得たろ過液に焼酎の製造に使用した麹を添加する。必要に応じて蒸煮した米及び糖化酵素剤を添加する。その後、麹菌の増殖温度以上に保持して、クエン酸の含有量を増量した処理液をろ過して飲料の原液とする。クエン酸含有量は、使用した麹の量、クエン酸抽出のための時間と温度によって調整する。糖分の含有量は、蒸煮した米を添加することによって調整する。
【選択図】図1
Description
本発明は、通常は廃棄処分されている焼酎蒸留残液から、その中に含まれるクエン酸を利用して、市販の「紅酢」と同等の健康飲料を製造する方法に関する。
米、麦、甘しょ等を原料として焼酎を製造する際、最終段階でもろみを蒸留した後、残液が必然的に残る。
これまで、焼酎蒸留残液は主に海洋投棄により処分されていた。廃棄物の海洋投棄は国際条約のロンドンダンピング条約で原則禁止となっているが、焼酎蒸留残液については安全な天然物であるとの事情で特例として海洋投棄が許可されていた。
しかし、最近の地球環境保全意識の高まりから、海洋投棄は実質上困難な情勢であり、効率的な陸上処理法の確立が望まれている。
これまでにも、焼酎蒸留残液の利用については、畑地還元、肥料化、飼料化、繰り返し仕込み法、各種微生物の培地としての利用等が考案されている。
しかし、焼酎蒸留残液には、発酵液中の繊維類、非発酵性糖類、蛋白質、脂肪、無機塩類その他の原料成分の一部と、麹菌、酵母等の菌体、有機酸、ビタミン類及びポリフェノール等の発酵生産物等が含まれていることから、近年、この焼酎蒸留残液中の各種成分を利用して、各種の健康食品、健康飲料を製造することが試みられている。
その一例として、沖縄の泡盛蒸留残液を利用したもろみ酢に見られるように、焼酎蒸留残液をろ過し、ろ過液に黒糖などの糖類や果物の搾汁液を加えて飲みやすくされたクエン酸飲料がある。しかし、これは飲みやすくするために黒糖や果物の果汁を添加したもので、添加物表示に糖類、果物の名称等を記載しなければならず、無添加の天然クエン酸飲料とはいえない。
また、特許文献1には、ミネラル分やクエン酸及びポリフェノール等を豊富に含む甘しょ焼酎蒸留粕を原料として、健康食品素材と健康飲料を製造する方法が開示されている。この方法は、甘しょ焼酎蒸留残留粕に、セルラーゼ系酵素を添加して可溶化処理を行った後、固液分離を行い、固形分は乾燥して健康食品素材とし、液体部分はろ過して健康飲料とするものである。しかしながら、この甘しょ焼酎の蒸留粕は、元来、粘性が非常に高く高価なセルラーゼ系酵素による可溶化処理の適用は、非能率的でコストと手間を要し、実用的ではない。
また、非特許文献1には、焼酎蒸留残液の有効利用として、醤油様の減塩調味料の製造方法が記載されている。この方法は、米又は麦焼酎蒸留残液に小麦グルテン及び醤油麹、食塩を加えて、2ヶ月ほど熟成させてろ過し減塩調味料を製造するものである。しかしながら、この方法は醤油様の調味料の製造に関するものであり、焼酎蒸留残液の有効利用としては製造までに長期間必要でコストと手間を要し実用的でない。
特開2004−121221号公報
日本醸造協会雑誌第97巻第3号 204−209
本発明の第1の課題は、焼酎蒸留残液の効率的な陸上処理法を確立することにある。
第2の課題は、上記従来の焼酎蒸留残液の利用法の欠点を解消して、効率よく、且つ、安価に焼酎蒸留残液から美味なクエン酸飲料を提供することにある。
また、他の課題は、焼酎蒸留残液中の特定成分を使用して、市販の特定成分を含有する一般クエン酸飲料と同等あるいは、それ以上の特定成分を有する栄養飲料を提供することにある。
さらに、他の課題は、焼酎蒸留残液中のクエン酸を利用して、飲みやすいクエン酸飲料を提供することにある。
本発明は、焼酎の蒸留過程での蒸留残液の陸上処理法に関するものであり、具体的には蒸留残液中のクエン酸を利用してクエン酸含有飲料とする方法であって、蒸留残液をろ過して得たろ過液に焼酎の製造に使用した麹を添加し、麹菌の増殖温度以上に保持して、クエン酸の含有量を増量した処理液をろ過して飲料の原液とすることを特徴とする。
この焼酎蒸留残液からのクエン酸飲料の製造法は、焼酎の製造素材の如何に関わらず、焼酎の製造に使用した麹菌をそのまま利用して、焼酎蒸留残液中のクエン酸の含有量を調整するものであるので、格別の麹を準備するという手間が必要なく安価となる。
目標とする飲料中のクエン酸の含有量は、使用した麹の量、クエン酸抽出のための時間と温度を調整するだけで簡単に得られる。
さらに飲料中の糖分の含有量は、蒸煮した米を添加することによって簡単に調整することができる。糖分含有量調整のため、必要に応じて糖化酵素剤を添加してもよい。
また、赤紫蘇の葉の添加量を調整することにより、風味、色調は消費者の好みに合わせることができる。
本発明によって、焼酎蒸留残液を有効利用して、クエン酸含有飲料を安価に、且つ、簡単に得ることができる。
また、使用する麹の量、クエン酸抽出のための時間と温度を調整するだけで、クエン酸含有量を自由に簡単に調整することができる。
さらに、蒸煮した米の添加量を調整すれば、クエン酸含有量と共に糖分含有量を自由に簡単に調整することができる。
加えて、赤紫蘇の葉の添加量を調整することにより、焼酎蒸留残液のもつ発酵臭を除去し、製品の風味と色調を独特のものとすることができる。
以上のとおり、本発明によって、焼酎蒸留残液の有効な陸上処理法を提供することができる。
図1は、本発明に係る焼酎蒸留残液からの飲料の製造法を示すフローチャートである。
本発明では、焼酎の蒸留過程での蒸留残液を出発原料とし、この蒸留残液をろ過したろ過液を使用する。蒸留残液としては、焼酎の製造素材の如何に関わらず、各種焼酎の蒸留残液を使用することができ、代表的には米焼酎又は麦焼酎の蒸留残液を使用する。
次に、蒸留残液をろ過したろ過液に、焼酎の製造に使用した麹を添加する。また、必要に応じて蒸煮した米及び糖化酵素剤を添加する。添加可能な糖化酵素剤としては、グルコアミラーゼ(グルクSG)、α−アミラーゼ(グルク100、コクゲンL)等が挙げられる。
ろ過液に麹等を添加したら、その麹菌の増殖温度以上に所定時間保持して、クエン酸の抽出及び糖化処理を行う。処理温度及び処理時間は、麹菌の種類あるいは所望のクエン酸含有量及び糖分含有量により設定するが、処理温度については45〜65℃程度、好ましくは60℃とする。
クエン酸の抽出及び糖化処理を終えたら、固液分離して液体部分を取り出し、殺菌処理を施してクエン酸飲料の原液を得る。その後、原液に必要に応じて赤紫蘇の葉を添加し、クエン酸飲料を得る。赤紫蘇の葉を添加することで、焼酎蒸留残液のもつ発酵臭を除去して、その風味と色調を調整することができる。赤紫蘇の葉の添加量は、消費者が好む風味色調に合わせて調整する。
出発原料として、鳴滝酒造株式会社の米焼酎の蒸留残液を使用した。この蒸留残液を清酒用のろ過袋に入れ、自然に出てきた液をろ過液とした。このろ過液は、やや黄色に着色した透明な液体であった。ろ過液の成分は、クエン酸:7180mg/L、リンゴ酸:745mg/L、コハク酸:1371mg/L、乳酸:1741mg/L、酢酸:78mg/L、ブドウ糖:不検出、であった。実施例では、このろ過液をさらに遠心分離して透明なろ過液とした。この段階のろ過液は、通常のクエン酸飲料とするには、クエン酸が不足し、甘味はほとんどないものであった。
そこで、得られたろ過液に対して以下の処理を行い、市販のクエン酸飲料と同等の飲料を製造した。
(実施例1−1)
ろ過液100質量部に対して焼酎用麹菌を使った米麹50質量部を加え、60℃で3時間保持したのち、布によってろ過し遠心分離を行ってクエン酸飲料の原液を得た。
ろ過液100質量部に対して焼酎用麹菌を使った米麹50質量部を加え、60℃で3時間保持したのち、布によってろ過し遠心分離を行ってクエン酸飲料の原液を得た。
この原液は透明であり、クエン酸含有量は3.1質量%と増加し、糖分含有量は18.7質量%であった。この原液から、やや酸味が強く、ほどよい甘味の透明なクエン酸飲料が得られた。
(実施例1−2)
ろ過液100質量部に対して焼酎用麹菌を使った米麹38質量部を加え、60℃で3時間保持したのち、布によってろ過し遠心分離を行ってクエン酸飲料の原液を得た。
ろ過液100質量部に対して焼酎用麹菌を使った米麹38質量部を加え、60℃で3時間保持したのち、布によってろ過し遠心分離を行ってクエン酸飲料の原液を得た。
この原液は透明であり、クエン酸含有量は1.7質量%と増加し、糖分含有量は17.8質量%であった。この原液から、ほどよい酸味で、やや甘味のある透明なクエン酸飲料が得られた。
(実施例1−3)
ろ過液100質量部に対して焼酎用麹菌を使った米麹37.5質量部、蒸煮した米12.5質量部を加え、60℃で一夜(15時間程度)保持したのち、布によってろ過し遠心分離を行ってクエン酸飲料の原液を得た。
ろ過液100質量部に対して焼酎用麹菌を使った米麹37.5質量部、蒸煮した米12.5質量部を加え、60℃で一夜(15時間程度)保持したのち、布によってろ過し遠心分離を行ってクエン酸飲料の原液を得た。
この原液は透明であり、クエン酸含有量は1.6質量%と増加し、糖分含有量は24.9質量%であった。この原液から、ほどよい酸味で、甘口の透明なクエン酸飲料が得られた。
(実施例1−4)
ろ過液100質量部に対して焼酎用麹菌を使った米麹30質量部、蒸煮した米20質量部を加え、60℃で一夜保持したのち、布によってろ過し遠心分離を行ってクエン酸飲料の原液を得た。
ろ過液100質量部に対して焼酎用麹菌を使った米麹30質量部、蒸煮した米20質量部を加え、60℃で一夜保持したのち、布によってろ過し遠心分離を行ってクエン酸飲料の原液を得た。
この原液は透明であり、クエン酸含有量は1.4質量%と増加し、糖分含有量は26.7質量%であった。この原液から、ほどよい酸味で、甘口の透明なクエン酸飲料が得られた。
(実施例1−5)
ろ過液100質量部に対して焼酎用麹菌を使った米麹30質量部、蒸煮した米20質量部を加え、さらに、糖化酵素剤としてグルクSG0.03質量部を加え、60℃で一夜保持したのち、布によってろ過し遠心分離を行ってクエン酸飲料の原液を得た。
ろ過液100質量部に対して焼酎用麹菌を使った米麹30質量部、蒸煮した米20質量部を加え、さらに、糖化酵素剤としてグルクSG0.03質量部を加え、60℃で一夜保持したのち、布によってろ過し遠心分離を行ってクエン酸飲料の原液を得た。
この原液は透明であり、クエン酸含有量は1.5質量%と増加し、糖分含有量は31.6質量%であった。この原液から、ほどよい酸味であるが、非常に甘い透明なクエン酸飲料が得られた。
出発原料として、宗政酒造株式会社の米焼酎の蒸留残液を使用した。この蒸留残液を冷却し、上澄液を清酒用のろ過袋に入れ、圧搾ろ過を行い出てきた液をろ過液とした。このろ過液は、やや黄色に着色した透明な液体であった。ろ過液の成分は、クエン酸:16070mg/L、リンゴ酸:1025mg/L、コハク酸:2224mg/L、乳酸:776mg/L、酢酸:136mg/L、ブドウ糖:0.05質量%であった。実施例では、このろ過液をさらに遠心分離して透明なろ過液とした。この段階のろ過液は、通常のクエン酸飲料とするには、クエン酸は十分含まれているが、甘味はほとんどないものであった。
そこで、得られたろ過液100質量部に対して焼酎用麹菌を使った米麹30質量部及び糖化酵素剤としてグルクSG0.03質量部を加え、60℃で一夜保持したのち、布によってろ過し遠心分離を行ってクエン酸飲料の原液を得た。
この原液は透明であり、クエン酸含有量は2.0質量%と増加し、糖分含有量は18.4質量%であった。この原液から、ほどよい酸味と、ほどよい甘味の透明なクエン酸飲料が得られた。
上記実施例1−4で得られた原液100質量部に対して、焼酎蒸留残液のもつ発酵臭を除去し、さらに飲みやすくするため赤紫蘇の葉を5質量部添加し、一夜浸漬して赤紫蘇の色素であるアントシアニンを抽出させ、布でろ過を行った。
得られた原液のクエン酸含有量は1.4質量%、糖分含有量は26.7質量%で、赤紫蘇の風味が付与され、しかも、赤紫蘇の色素であり抗酸化能成分であるアントシアニンによる赤色のクエン酸飲料が得られた。
出発原料として、宗政酒造株式会社の麦焼酎の蒸留残液を使用した。この蒸留残液を冷却し、上澄液を清酒用のろ過袋に入れ、圧搾ろ過を行い出てきた液をろ過液とした。このろ過液は、茶色に着色した透明な液体であった。ろ過液の成分は、クエン酸:7700mg/L、リンゴ酸:671mg/L、コハク酸:2319mg/L、乳酸:1923mg/L、酢酸:128mg/L、ブドウ糖:0.05質量%であった。実施例では、このろ過液をさらに遠心分離して透明なろ過液とした。この段階のろ過液は、通常のクエン酸飲料とするには、クエン酸が不足し、甘味はほとんどないものであった。
次に、得られたろ過液100質量部に対して焼酎用麹菌を使った米麹30質量部、蒸煮した米10質量部及び糖化酵素剤としてグルクSG0.03質量部を加え、60℃で一夜保持したのち、布によってろ過し遠心分離を行ってクエン酸飲料の原液を得た。
この原液は透明であり、クエン酸含有量は1.66質量%と増加し、糖分含有量は18.0質量%であった。この原液から、ほどよい酸味と、ほどよい甘味の透明なクエン酸飲料が得られた。
本発明により、焼酎蒸留残液から、簡単にしかも安価で天然クエン酸を含む飲料が提供される。本発明で、効率的な陸上処理法の確立が望まれていた焼酎蒸留残液が有効利用され、天然クエン酸を含む飲料が提供される。クエン酸含有量、糖分含有量を自由に調整でき、クエン酸飲料としてそのまま飲料として用いることができる。
Claims (4)
- 焼酎の蒸留過程での蒸留残液中のクエン酸を利用してクエン酸含有飲料とする方法であって、蒸留残液をろ過して得たろ過液に焼酎の製造に使用した麹を添加し、麹菌の増殖温度以上に保持して、クエン酸の含有量を増量した処理液をろ過して飲料の原液とすることを特徴とする焼酎蒸留残液からの飲料の製造法。
- クエン酸の含有量を、使用した麹の量、クエン酸抽出のための時間と温度によって調整する請求項1に記載の焼酎蒸留残液からの飲料の製造法。
- 原液中の糖分の含有量を、蒸留残液をろ過して得たろ過液に蒸煮した米を添加することによって調整する請求項1又は2に記載の焼酎蒸留残液からの飲料の製造法。
- 原液に、赤紫蘇の葉を添加してその風味と色調を調整する請求項1〜3のいずれかに記載の焼酎蒸留残液からの飲料の製造法。
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JP2005056056A JP2006238738A (ja) | 2005-03-01 | 2005-03-01 | 焼酎蒸留残液からの飲料の製造法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN113150938A (zh) * | 2021-04-15 | 2021-07-23 | 贵州德霞珠酒业科技有限公司 | 一种用固态生物发酵型基酒蒸馏制作口服液和酒精饮料的方法 |
-
2005
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