JP2006233168A - 硬化性組成物、その硬化物及び積層体 - Google Patents
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Abstract
Description
また、フィルム型液晶素子、タッチパネル、プラスチック光学部品等の反射防止膜の用途においては、上記要請に加えて、高屈折率の硬化膜を形成し得る硬化性組成物が要請されている。
例えば、高屈折率を要しないハードコート用途には、屈折率が1.45程度であるコロイダルシリカの表面をメタクリロキシシランで修飾した粒子とアクリレートとの組成物を、放射線(光)硬化型のコーティング材料として用いる技術が提案されている(特許文献1)。この種の放射線硬化型の組成物は、優れた塗工性を有すること等から、最近多用されるようになって来ている(特許文献2〜7)。
特に、TACフィルムを基材とするフィルムにおいては、ハードコート積層後、TACフィルムのケン化処理(親水化処理)のためにアルカリ温水に浸漬する処理した場合のカールを低減することはできなかった。
[1]溶剤を除く組成物全量に対して、下記成分
(A)重合性不飽和基を有する有機化合物を結合させてなる屈折率1.50以上の金属酸化物粒子 5〜70質量%、及び
(B)下記式(1)
[2]前記(B)成分が、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレートである上記[1]に記載の硬化性組成物;
[3]前記(A)成分における有機化合物が、重合性不飽和基に加えて、下記式(2)に示す基を有することを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の硬化性組成物
[4]前記(A)成分における有機化合物が、分子内にシラノール基を有する化合物又は加水分解によってシラノール基を生成する化合物であることを特徴とする上記[3]に記載の硬化性組成物。
[5]溶剤を除く組成物全量に対して、下記成分
(C)前記(A)及び(B)成分以外の多官能(メタ)アクリレート化合物 5〜20質量%をさらに含有することを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載の硬化性組成物;
[6]前記(B)成分を、組成物中の(A)成分以外の全(メタ)アクリレート成分100質量%に対して20質量%以上含有することを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の硬化性組成物;
[7]上記[1]〜[6]のいずれかに記載の硬化性組成物を硬化させてなることを特徴とする硬化膜;及び
[8]上記[7]に記載の硬化膜を含む積層体。
本発明の硬化性組成物は、(A)重合性不飽和基を有する有機化合物を結合させてなる屈折率1.50以上の金属酸化物粒子、及び(B)上記式(1)で示される化合物を含有することを特徴とするものである。
1.重合性不飽和基を有する有機化合物を結合させてなる屈折率1.50以上の金属酸化物粒子(A)
本発明に用いられる(A)成分は、屈折率が1.50以上の金属酸化物粒子(Aa)と、重合性不飽和基を含む有機化合物(Ab)とを結合させてなる粒子である(以下、「反応性粒子」という)。ここで、結合とは、共有結合であってもよいし、物理吸着等の非共有結合であってもよい。
本発明に用いられる金属酸化物粒子(Aa)は、屈折率1.50以上の高屈折率及び得られる硬化性組成物の硬化被膜の硬度と無色性の観点から、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン及びセリウムよりなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の金属酸化物粒子であることが好ましい。これらの金属酸化物粒子に対して、例えば、ケイ素を主成分とするシリカ粒子では、その屈折率は約1.45であるため高屈折率が得られず、本発明には好ましくない。
本発明に用いられる有機化合物(Ab)は、重合性不飽和基を有する化合物であり、さらに、下記式(2)に示す基を含む有機化合物であることが好ましい。また、[−O−C(=O)−NH−]基を含み、さらに、[−O−C(=S)−NH−]基及び[−S−C(=O)−NH−]基の少なくとも1を含むものであることが好ましい。また、この有機化合物(Ab)は、分子内にシラノール基を有する化合物又は加水分解によってシラノール基を生成する化合物であることが好ましい。
有機化合物(Ab)に含まれる重合性不飽和基としては特に制限はないが、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニル基、シンナモイル基、マレエート基、アクリルアミド基を好適例として挙げることができる。
この重合性不飽和基は、活性ラジカル種により付加重合をする構成単位である。
有機化合物に含まれる前記式(2)に示す基[−U−C(=V)−NH−]は、具体的には、[−O−C(=O)−NH−]、[−O−C(=S)−NH−]、[−S−C(=O)−NH−]、[−NH−C(=O)−NH−]、[−NH−C(=S)−NH−]、及び[−S−C(=S)−NH−]の6種である。これらの基は、1種単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。中でも、熱安定性の観点から、[−O−C(=O)−NH−]基と、[−O−C(=S)−NH−]基及び[−S−C(=O)−NH−]基の少なくとも1つとを併用することが好ましい。
前記式(2)に示す基[−U−C(=V)−NH−]は、分子間において水素結合による適度の凝集力を発生させ、硬化物にした場合、優れた機械的強度、基材や高屈折率層等の隣接層との密着性及び耐熱性等の特性を付与せしめるものと考えられる。
有機化合物(Ab)は、分子内にシラノール基を有する化合物又は加水分解によってシラノール基を生成する化合物であることが好ましい。このようなシラノール基を生成する化合物としては、ケイ素原子にアルコキシ基、アリールオキシ基、アセトキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等が結合した化合物を挙げることができるが、ケイ素原子にアルコキシ基又はアリールオキシ基が結合した化合物、即ち、アルコキシシリル基含有化合物又はアリールオキシシリル基含有化合物が好ましい。
シラノール基又はシラノール基を生成する化合物のシラノール基生成部位は、縮合反応又は加水分解に続いて生じる縮合反応によって、酸化物粒子(Aa)と結合する構成単位である。
有機化合物(Ab)の好ましい具体例としては、例えば、下記式(3)に示す化合物を挙げることができる。
R6は、炭素数1〜12の脂肪族又は芳香族構造を有する2価の有機基であり、鎖状、分岐状又は環状の構造を含んでいてもよい。具体例として、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキサメチレン、シクロヘキシレン、フェニレン、キシリレン、ドデカメチレン等を挙げることができる。
R7は、2価の有機基であり、通常、分子量14から1万、好ましくは、分子量76から500の2価の有機基の中から選ばれる。具体例として、ヘキサメチレン、オクタメチレン、ドデカメチレン等の鎖状ポリアルキレン基;シクロヘキシレン、ノルボルニレン等の脂環式又は多環式の2価の有機基;フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、ポリフェニレン等の2価の芳香族基;及びこれらのアルキル基置換体、アリール基置換体を挙げることができる。また、これら2価の有機基は炭素及び水素原子以外の元素を含む原子団を含んでいてもよく、ポリエーテル結合、ポリエステル結合、ポリアミド結合、ポリカーボネート結合を含むこともできる。
R8は、(k+1)価の有機基であり、好ましくは、鎖状、分岐状又は環状の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基の中から選ばれる。
Zは、活性ラジカル種の存在下、分子間架橋反応をする重合性不飽和基を分子中に有する1価の有機基を示す。また、kは、好ましくは、1〜20の整数であり、さらに好ましくは、1〜10の整数、特に好ましくは、1〜5の整数である。
シラノール基又は加水分解によってシラノール基を生成する基を有する有機化合物(Ab)を金属酸化物粒子(A)と混合し、加水分解させ、両者を結合させる。得られる反応性粒子(A)中の有機重合体成分すなわち加水分解性シランの加水分解物及び縮合物の割合は、通常、乾燥粉体を空気中で完全に燃焼させた場合の質量減少%の恒量値として、例えば空気中で室温から通常800℃までの熱質量分析により求めることができる。
本発明に用いられる(B)成分は、硬化物の硬度を維持しつつカールを低減すると共に屈曲性を付与する機能を有する。また、特定の低屈折率層との積層体において耐スチールウール性を向上させる機能を有する。
また、化合物(B)の含有量は、本発明の組成物中の(A)成分以外の全(メタ)アクリレート成分100質量%に対して20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であればさらに好ましく、60質量%以上であれば特に好ましい。20質量%以上であることにより、硬化膜の反りを効果的に低減することができる。ここで、(A)成分以外の全(メタ)アクリレート成分とは、不溶性の粒子である(A)成分を除いた全可溶性成分中に含まれる(メタ)アクリレート成分をいう。具体的には、(B)成分と、後述する(C)成分の合計量を意味する。
化合物(C)は特に硬化膜の屈曲性を上げるために好適に用いられる。
多官能(メタ)アクリレート化合物の市販品としては、KAYARAD DPHA、PET−30(日本化薬(株)製)、アロニックス M−305、M−400、M−402、M−404(東亞合成化学工業(株)製)、NKエステル A−TMM−3LM−N(新中村化学工業(株)製)等を挙げることができる。
本発明の組成物においては、必要に応じて、(D)ラジカル重合開始剤を配合することができる。
このようなラジカル重合開始剤(D)としては、例えば、熱的に活性ラジカル種を発生させる化合物等(熱重合開始剤)、及び放射線(光)照射により活性ラジカル種を発生させる化合物等(放射線(光)重合開始剤)を挙げることができる。
好ましい熱重合開始剤としては、例えば、過酸化物、アゾ化合物を挙げることができ、具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチル−パーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができる。
本発明の組成物は、塗膜の厚さを調節するために、(E)有機溶剤で希釈して用いることができる。例えば、反射防止膜や被覆材として用いる場合の粘度は、通常0.1〜50,000mPa・秒/25℃であり、好ましくは、0.5〜10,000mPa・秒/25℃である。
本発明の硬化性組成物には、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて、光増感剤、重合禁止剤、重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、無機充填剤、顔料、染料等を適宜配合できる。
本発明の組成物は、次のようにして製造する。
反応性粒子分散液((A)成分)、放射線(光)重合開始剤((D)成分)、式(1)で示される化合物((B)成分)、多官能(メタ)アクリレート((C)成分)、ウレタン(メタ)アクリレート((C)成分)を攪拌機付きの反応容器に入れ35℃〜45℃で2時間攪拌し本発明の組成物とする。
溶剤を最初の反応性粒子分散液に使用した溶剤(A)と異なる種類の溶剤(B)に置換する場合は、反応性粒子分散液の溶剤(A)質量に対して1.3倍の溶剤(B)も加え同様の条件で攪拌する。次にこの組成液をロータリーエバポレーターを用いて溶剤(B)を加える前の質量まで減圧濃縮し本発明の組成物とする。
本発明の硬化性組成物はハードコート、反射防止膜や被覆材の用途に好適であり、反射防止や被覆の対象となる基材としては、例えば、プラスチック(ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ、メラミン、トリアセチルセルロース、ABS、AS、ノルボルネン系樹脂等)、金属、木材、紙、ガラス、スレート等を挙げることができる。これら基材の形状は板状、フィルム状又は3次元成形体でもよく、コーティング方法は、通常のコーティング方法、例えばディッピングコート、スプレーコート、フローコート、シャワーコート、ロールコート、スピンコート、刷毛塗り等を挙げることができる。これらコーティングにおける塗膜の厚さは、乾燥、硬化後、通常0.1〜400μmであり、好ましくは、1〜200μmである。
本発明の硬化性組成物は、熱及び/又は放射線(光)によって硬化させることができる。熱による場合、その熱源としては、例えば、電気ヒーター、赤外線ランプ、熱風等を用いることができる。放射線(光)による場合、その線源としては、組成物をコーティング後短時間で硬化させることができるものである限り特に制限はないが、例えば、赤外線の線源として、ランプ、抵抗加熱板、レーザー等を、また可視光線の線源として、日光、ランプ、蛍光灯、レーザー等を、また紫外線の線源として、水銀ランプ、ハライドランプ、レーザー等を、また電子線の線源として、市販されているタングステンフィラメントから発生する熱電子を利用する方式、金属に高電圧パルスを通じて発生させる冷陰極方式及びイオン化したガス状分子と金属電極との衝突により発生する2次電子を利用する2次電子方式を挙げることができる。また、アルファ線、ベータ線及びガンマ線の線源として、例えば、60Co等の核分裂物質を挙げることができ、ガンマ線については加速電子を陽極へ衝突させる真空管等を利用することができる。これら放射線は1種単独で又は2種以上を同時に又は一定期間をおいて照射することができる。
本発明の組成物の硬化反応は、空気雰囲気下においても窒素等の嫌気的条件下においても行うことができ、嫌気的条件下で硬化せしめた場合においても、その硬化物は優れた耐擦傷性を有する。
本発明の硬化膜は、前記硬化性組成物を種々の基材、例えば、プラスチック基材にコーティングして硬化させることにより得ることができる。具体的には、組成物をコーティングし、好ましくは、0〜200℃で揮発成分を乾燥させた後、上述の、熱及び/又は放射線で硬化処理を行うことにより被覆成形体として得ることができる。熱による場合の好ましい硬化条件は20〜150℃であり、10秒〜24時間の範囲内で行われる。放射線による場合、紫外線又は電子線を用いることが好ましい。そのような場合、好ましい紫外線の照射光量は0.01〜10J/cm2であり、より好ましくは、0.1〜2J/cm2である。また、好ましい電子線の照射条件は、加圧電圧は10〜300KV、電子密度は0.02〜0.30mA/cm2であり、電子線照射量は1〜10Mradである。
本発明の硬化膜は、通常、ハードコート層として基材上に積層されて用いられるものであり、さらにその上に高屈折率層、低屈折率層を積層することにより、反射防止膜として好適な積層体を形成することができる。反射防止膜は、これら以外の層をさらに有していてもよく、例えば、高屈折率膜と低屈折率膜の組み合わせを複数個設けて広い波長範囲の光に対して比較的均一な反射率特性を有するいわゆるワイドバンドの反射防止膜としてもよく、帯電防止層を設けてもよい。
基材としては特に制限はないが、反射防止膜として用いる場合には、例えば前述の、プラスチック(ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ノルボルネン系樹脂等)等を挙げることができる。
本発明に用いられる高屈折率の膜としては、例えば、屈折率が1.65〜2.20のジルコニア粒子等の金属酸化物粒子を含有するコート材硬化膜等を挙げることができる。
本発明に用いられる低屈折率の膜としては、例えば、屈折率が1.38〜1.45のフッ化マグネシウム、二酸化ケイ素等の金属酸化物膜、フッ素系コート材硬化膜等を挙げることができる。フッ素系コート材硬化膜を用いる場合には、耐擦傷性を改善するため、高硬度の微粒子を配合してもよい。高硬度の微粒子としては、低屈折率層の屈折率を増大させないようシリカ粒子等が好ましい。このシリカ粒子の形状は特に限定されないが、中空状又は多孔質状等の粒子内部に空隙の多い構造とすることにより、屈折率をより低く抑えることができる。
本発明の積層体又は硬化膜のカールが小さい理由は、(B)前記式(1)で示される化合物(重合性不飽和基を有するイソシアヌル酸誘導体)は、(C)(A)及び(B)成分以外の多官能(メタ)アクリレート化合物よりも反応速度及び重合転化率が低く、反応速度、重合転化率が低いと内部応力が小さいため、カールが小さくなるものと推測される。また、(B)成分(重合性不飽和基を有するイソシアヌル酸誘導体)は環構造を有し、かつ結晶性であるため、硬度が低下しないものと推測される。
さらに、(B)成分(重合性不飽和基を有するイソシアヌル酸誘導体)を配合することにより、低屈折率層との密着性が向上し、耐スチールウール性が向上するものと推測される。
このように前記高屈折率の硬化膜と低屈折率の膜とを基材上に積層することによって、基材表面における光の反射を有効に防止することができる。
本発明の積層体は、耐擦傷性に優れ、低反射率を有するとともに耐薬品性に優れるため、フィルム型液晶素子、タッチパネル、プラスチック光学部品等の反射防止膜として特に好適に用いられる。
球状ジルコニア微粉末(第一稀元素化学工業(株)製、UEP−100、一次粒径10〜30nm)300部をトルエン700部に添加し、ガラスビーズにて168時間分散を行い、ガラスビーズを除去してトルエンジルコニアゾル(Aa)950部を得た。分散ゾルをアルミ皿に2g秤量後、120℃のホットプレート上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ30%であった。
乾燥空気中、メルカプトプロピルトリメトキシシラン221部、ジブチル錫ジラウレ−ト1部からなる溶液に対し、イソホロンジイソシアネート222部を攪拌しながら50℃で1時間かけて滴下後、70℃で3時間加熱攪拌した。これに新中村化学製NKエステルA−TMM−3LM−N(ペンタエリスリトールトリアクリレート60質量%とペンタエリスリトールテトラアクリレート40質量%とからなる。このうち、反応に関与するのは、水酸基を有するペンタエリスリトールトリアクリレートのみである。)549部を30℃で1時間かけて滴下後、60℃で10時間加熱攪拌することで重合性不飽和基を含む有機化合物(Ab)を得た。生成物中の残存イソシアネ−ト量をFT−IRで分析したところ0.1%以下であり、反応がほぼ定量的に終了したことを示した。生成物の赤外吸収スペクトルは原料中のメルカプト基に特徴的な2550カイザ−の吸収ピ−ク及び原料イソシアネ−ト化合物に特徴的な2260カイザ−の吸収ピ−クが消失し、新たにウレタン結合及びS(C=O)NH−基に特徴的な1660カイザ−のピ−ク及びアクリロキシ基に特徴的な1720カイザ−のピ−クが観察され、重合性不飽和基としてのアクリロキシ基と−S(C=O)NH−、ウレタン結合を共に有するアクリロキシ基修飾アルコキシシランが生成していることを示した。以上により、前記式(4−1)及び(4−2)で示される化合物(Ab)が合計で773部得られたほか、反応に関与しなかったペンタエリスリトールテトラアクリレート220部が混在している。
攪拌機付きの容器内のイソホロンジイソシアネート18.8部と、ジブチル錫ジラウレート0.2部とからなる溶液に対し、新中村化学製NKエステルA−TMM−3LM−N(反応に関与するのは、水酸基を有するペンタエリスリトールトリアクリレートのみである。)93部を、10℃、1時間の条件で滴下した後、60℃、6時間の条件で攪拌し、反応液(ウレタン(メタ)アクリレート(C−2))とした。
この反応液中の生成物、即ち、製造例2と同様にして残存イソシアネート量をFT−IRで測定したところ、0.1質量%以下であり、反応がほぼ定量的に行われたことを確認した。また、分子内に、ウレタン結合、及びアクリロイル基(重合性不飽和基)とを含むことを確認した。
以上により、前記式(5)で示される化合物が75部得られたほか、反応に関与しなかったペンタエリスリトールテトラアクリレート37部が混在している。
製造例2で製造した重合性不飽和基を含む有機化合物(Ab)とペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物1.16部、製造例1で調製したトルエンジルコニアゾル(Aa)(ジルコニア濃度30%)237部、イオン交換水0.1部、及びp−ヒドロキシフェニルモノメチルエーテル0.03部の混合液を、60℃、3時間撹拌後、オルト蟻酸メチルエステル1.0部を添加し、さらに1時間同一温度で加熱撹拌することで反応性粒子(分散液(A−1))を得た。この分散液(A−1)をアルミ皿に2g秤量後、120℃のホットプレート上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、31%であった。また、分散液(A−1)を磁性るつぼに2g秤量後、80℃のホットプレート上で30分予備乾燥し、750℃のマッフル炉中で1時間焼成した後の無機残渣より、固形分中の無機含量を求めたところ、93%であった。
(1)水酸基を有する含フッ素重合体の調製
内容積2.0リットルの電磁攪拌機付きステンレス製オートクレーブを窒素ガスで十分置換した後、溶剤の酢酸エチル500g、パーフロロ(プロピルビニルエーテル)43.2g、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル21.5g、エチルビニルエーテル41.2gと、過酸化ラウロイル1.3gと、シリコーン含有高分子アゾ開始剤(和光純薬工業(株)製、商品名:VPS1001)6.0gと、反応性乳化剤(旭電化工業(株)製、商品名:NE−30)40.5gとを仕込み、ドライアイス−メタノールで−50℃まで冷却した後、再度窒素ガスで系内の酸素を除去した。
(i)メタノール分散コロイダルシリカの調製
固形分が20質量%、pHが2.7、BET法での比表面積が226m2/g、メチルレッド吸着法により求めたシリカ粒子上のシラノール濃度が4.1×10−5モル/g、原子吸光法で求めた溶媒中の金属含量が、Naとして4.6ppm、Caとして0.013ppm、Kとして0.011ppmの水分散コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製、商品名:スノーテックス−O)30kgをタンクに入れ、50℃に加熱し、循環流量50リットル/分、圧力1kg/cm2で、限外濾過膜モジュール((株)トライテック製)及びアルミナ製限外濾過膜(日本碍子(株)製、商品名:セラミックUFエレメント、仕様:4mmΦ、19穴、長さ1m、分画分子量=15万、膜面積=0.24m2)を用いて濃縮を行った。0.5時間後、10kgの濾液を排出したところ、固形分は30質量%となった。濃縮開始前の平均透過流速(限外濾過膜の単位面積、単位時間あたりの膜透過質量)は90kg/m2/時間であり、濃縮終了時は55kg/m2/時間であった。動的光散乱法で求めた数平均粒子径は11nmと濃縮前後で変化しなかった。
(i)で調製したメタノール分散コロイダルシリカ20kgに、トリメチルメトキシシラン(東レダウコーニング(株)製)0.6kgを加え、60℃で3時間加熱攪拌した。動的光散乱法で求めた数平均粒子径は11nmであり、処理前と変化は見られなかった。得られたメタノール分散疎水化コロイダルシリカのBET法での比表面積は240m2/g、メチルレッド吸着法により求めたシリカ粒子上のシラノール濃度は2.1×10−5モル/gであった。
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン3.7部、(ii)で製造したシリカ粒子ゾル93.2部(シリカ粒子として28部)、イオン交換水0.25部の混合液を、60℃、3時間攪拌後、オルト蟻酸メチルエステル2.9部を添加し、さらに1時間同一温度で加熱攪拌することでシランカップリング剤で処理されたシリカ粒子ゾルを得た。このゾルをアルミ皿に2g秤量後、175℃のホットプレート上で1時間乾燥、秤量して固形分を求めたところ、31質量%であった。
上記(2)(iii)で得られたシリカ粒子ゾル4.3g、上記(1)で得られた水酸基
を有するフッ素含有重合体2の5.6g、架橋性化合物のメトキシ化メチルメラミン「サイメル303」(三井サイテック株式会社製)1.7gと硬化触媒である、キャタリスト4050(三井サイテック(株)製、芳香族スルホン酸化合物)0.63gを、溶剤のメチルエチルケトン208g中に溶解し、塗布液Aを得た。塗布液Aの固形分濃度を(iii
)と同様の方法で求めたところ、4質量%であった。
(1)硬化性組成物の製造
紫外線を遮蔽した容器中において、製造例4で調製した反応性ジルコニア微粉末ゾル(分散液(A−1))123.1部(反応性ジルコニア35.9部)、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート(B−1)25部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(C−1)(日本化薬(株)製、商品名:KAYARAD DPは−2C)33.9部、ウレタン(メタ)アクリレート(C−2)1.3部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(C−3)0.9部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(D−1)1.9部、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1(D−1)1.1部、トルエン5.0部、メチルエチルケトン(MEK)18.5部を加え、30℃で2時間撹拌することで均一な溶液の組成物を得た。このうち、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(C−3)は、有機化合物(Ab)及びウレタン(メタ)アクリレート(C−2)に混在するペンタエリスリトールテトラアクリレートに由来する。この組成物を製造例4と同様に固形分含量を測定したところ、50%であった。
上記(1)で得られた組成物を、膜厚に応じたワイヤーバーコータ(#6)を装着したコータを用いて、TACフィルム上に塗工し、オーブン中、80℃、1分間の条件で乾燥し、塗膜を形成した。次いで、大気中、高圧水銀ランプを用いて、0.3J/cm2の光照射条件で塗膜を紫外線硬化させ、膜厚3μmの高屈折率膜付きのTACフィルムを得た。得られた硬化膜(高屈折率膜)のカール、ヘイズ、屈折率、耐擦傷性の評価を行った。得られた結果を下記表1に示す。
上記(2)で作製した、膜厚3μmの高屈折率膜付きTACフィルムの高屈折率膜上に、上記製造例5で得られた低屈折率膜用硬化性組成物(塗布液A)を、ワイヤーバーコータ#3)を用いて塗工し、室温で5分間風乾し、さらにオーブン中、120℃、10分間の条件で硬化させ、膜厚100nmの低屈折率膜を形成し、反射防止膜積層体を得た。得られた積層体の耐擦傷性を評価し、その結果を下記表1に示す。
下記表1に示す組成とした以外は実施例1と同様の方法により、実施例2〜7及び比較例1、2の各硬化性組成物、硬化膜及び反射防止膜積層体を得た。得られた硬化膜及び反射防止膜積層体の特性を評価し、その結果を下記表1に示す。
(1)カール
得られた高屈折率膜付きのTACフィルムを10cm角の大きさに切り取り、水平に置き、四隅の水平面からの浮きの平均をカールの値(硬化直後)とした。
さらに、50℃の温水に3分間フィルムを浸漬し、同様の測定方法でカールの値(温水浸漬後)を測定した。
カラーヘイズメータ(スガ試験機(株)製)を用いて、JIS K7105に準拠して高屈折率膜付きのTACフィルムのヘイズ値を測定した。
(3)屈折率
未処理PET(東レ(株)製 ルミラー100T―60)上にバーコーターを用いて上記実施例1〜7及び比較例1、2で得られた硬化性組成物を塗布し、80℃で3分間乾燥させた。これに高圧水銀ランプを用い300mJ/cm2の紫外線を照射し、塗膜を硬化させた。硬化物を未処理PETから剥離し、硬化物の膜厚が40±10μmであることを測厚計で確認した。JIS K7105に準拠し、アッベ屈折率計を用いて硬化物の屈折率(nD 25)を測定した。
得られた、温水浸漬前及び温水浸漬後の高屈折率膜の表面を#0000スチールウールにより、荷重100g/cm2の条件で10回こすり、ついた傷の本数を測定した。
尚、ついた傷の本数が8本以下であれば実用上許容範囲であり、5本以下であれば実用上の耐久性が優れていることから好ましく、3本以下であれば、実用上の耐久性が著しく向上することから、さらに好ましいといえる。
表1中の略称の内容を下記に示す。
反応性ジルコニア粒子(A−1):製造例4で得られた反応性ジルコニア粒子
ジルコニア粒子(Aa):製造例1で得られたジルコニアゾル
イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート(B−1):東亜合成化学工業(株)製、製品名アロニックス M−315
ペンタエリスリトールトリアクリレート(C−1):日本化薬(株)製、製品名KAYARAD PET−30
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(D−1):チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、Irgacure184
2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1(D−2):チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、Irgacure907
MEK:メチルエチルケトン
実施例の反射防止膜積層体は、耐擦傷性に優れているのに対し、比較例の反射防止膜積層体では、耐擦傷性が劣っていることがわかる。
本発明の硬化性組成物、その硬化物は、特に、反射防止膜用高屈折率材料、レンズ材料等の高屈折率を必要とする光学材料として有用である。
Claims (8)
- 前記(B)成分が、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレートである請求項1に記載の硬化性組成物。
- 前記(A)成分における有機化合物が、分子内にシラノール基を有する化合物又は加水分解によってシラノール基を生成する化合物であることを特徴とする請求項3に記載の硬化性組成物。
- 溶剤を除く組成物全量に対して、下記成分
(C)前記(A)及び(B)成分以外の多官能(メタ)アクリレート化合物 5〜20質量%をさらに含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。 - 前記(B)成分を、組成物中の(A)成分以外の全(メタ)アクリレート成分100質量%に対して20質量%以上含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬化性組成物を硬化させてなることを特徴とする硬化膜。
- 請求項7に記載の硬化膜を含む積層体。
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