JP2006231234A - 耐火塗料の外部向け構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】 耐火塗料はその主成分とするところに、水可溶性の成分をかなりの割合において含んでいるため、一般的に耐水性が良くない。水可溶性の成分そのものに耐水性を付加する手段も取られているが十分ではない。
【解決手段】 主成分に多価アルコールあるいは難燃性発泡剤、含窒素発泡剤のいずれかを含む耐火塗料層、耐火塗料層と合わせてJIS A6909に規定される透水性試験B法の試験値が0.5ml以下となる上塗り塗料層を塗重ねる。あるいは、耐火塗料層と上塗り塗料層の間に耐火塗料の表面補強層を設ける。
【選択図】図1
【解決手段】 主成分に多価アルコールあるいは難燃性発泡剤、含窒素発泡剤のいずれかを含む耐火塗料層、耐火塗料層と合わせてJIS A6909に規定される透水性試験B法の試験値が0.5ml以下となる上塗り塗料層を塗重ねる。あるいは、耐火塗料層と上塗り塗料層の間に耐火塗料の表面補強層を設ける。
【選択図】図1
Description
この発明は、発泡耐火塗料を一部ないし全部が外部に露出されて使用される場合の建築物の構造に関する。
建築基準法では耐火構造とすべき建築物について、その主要構造部である壁、柱、床、梁、屋根、階段、や階数に応じて耐火性能の基準を定めている。通常、壁あるいは床に用いられる建築材料は所定の耐火性能を有したものが用いられている。また、RC造では鉄筋に対しコンクリートを所定の被覆厚とすることにより、耐火性能を確保している。しかしながら、S造ではロックウール、耐火モルタル、耐火塗料、成形板による被覆が必要となっている。
一般に、主要構造部は建築物の内側に位置するために、耐水性、耐降雨性を必要とするものでは無い。しかし、建築物の部分においては、浴室、プールの柱・梁部分、では水がかかる事があり、ピィロティー、モニュメントなどの構造において、壁を一部ないし全部無くした構造では、柱部分が外部に露出する形となる。上記した、S造に利用される耐火被覆材料の殆どは、耐水性を問題にすることなく、雨係りが有る部位においても、利用されている。ところが、耐火塗料はその主成分とするところに、水可溶性の成分をかなりの割合において含んでいるため、そのままでは雨係りが有る部位には利用できない。何故なら、その主成分が溶解して、流失し、所期の性能を保持できなくなることがある。
また、耐火塗料は塗料層となったとき吸湿の大きな塗膜を作り易く、水あるいは水蒸気に曝されたときには、水に対して脆弱な塗膜構造を形成する可能性が大きいものとなった。
このような耐火塗料そのものあるいは耐火塗料からなる耐火塗料層に耐水性を付与するために、耐火塗料成分である難燃性発泡剤の一つであるポリリン酸アンモニウムをメラミン被覆としたり、更にメラミン被覆層に架橋構造を形成させたりした。特許文献1として、特開平8−253710号公報を例示し、その特許請求の範囲および、発明の詳細な説明の段落0002から0011を示す。
特開平8−253710号公報
耐火塗料の主要な成分であるポリリン酸アンモニウムに耐水性を付与したものであっても、他の塗料成分にも水可溶成分が存在すること、あるいは、水可溶成分をマイクロカプセル化した場合であっても、塗料を使用する前の混合、撹拌時における外部からの物理的な力が加わることにより、所期の耐水性を満足するものでは無くなったりした。
この発明の請求項1に記載する耐火塗料の外部向け構造では、主成分に多価アルコールあるいは難燃性発泡剤、含窒素発泡剤のいずれかを含む耐火塗料層、耐火塗料層と合わせてJIS A6909に規定される透水性試験B法の試験値が0.5ml以下となる上塗り塗料層を塗重ねたことを要旨としている。
請求項2に記載する耐火塗料の外部向け構造では、請求項1の発明に加え、耐火塗料層と上塗り塗料層の間に耐火塗料の表面補強層を設けたことを要旨としている。
請求項3に記載する耐火塗料の外部向け構造では、請求項2の発明に加え、耐火塗料層と表面補強層による塗重ね時において、JIS A6909に規定される透水性試験A法の試験値が20ml以下となることを要旨としている。
以下に、この発明の構成要素を順に説明する。
この発明に言う耐火塗料は、火災時に建築物の主要構造部の鉄骨を火炎の高熱から所定時間保護することのできるものであり、通常は外部からの熱供給に対して、熱分解して分解ガスを発生し、炭化層を形成する成分、吸熱反応を起こしながら、発泡して断熱層を形成するもの、常温における塗膜を形成するものを含んでいる。
この発明に言う耐火塗料は、火災時に建築物の主要構造部の鉄骨を火炎の高熱から所定時間保護することのできるものであり、通常は外部からの熱供給に対して、熱分解して分解ガスを発生し、炭化層を形成する成分、吸熱反応を起こしながら、発泡して断熱層を形成するもの、常温における塗膜を形成するものを含んでいる。
多価アルコールは、炭化剤の一つであり、加熱により炭化し、後述する難燃性発泡剤と脱水縮合によって、炭化層となり、難燃性発泡剤及び含窒素発泡剤の分解ガスによって断熱性に優れた多孔質の炭化層を形成する。
多価アルコールの例として、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンがあり、これらの中から任意に選択されるもの1種類あるいは組み合わせた複数種が使用される。
難燃性発泡剤には、リン酸アンモニウム(発泡温度230〜270℃)、ポリリン酸アンモニウムが例示される。なお、表面をメラミンなどでマイクロカプセル被覆した物も同様に使用可能である。これらの難燃性発泡剤は、加熱によって、両者とも275℃において分解し、アンモニアガスを発生させると同時に、吸熱反応によって材料温度を引き下げる。この明細書中において、発泡温度とは、耐火試験において実際に耐火塗料の発泡が観察される温度であり、分解温度とは、文献上それぞれの単一物質が分解する温度と記載されている温度のことを言う。
含窒素発泡剤には、例えばジシアンジアミド(発泡温度、150〜320℃、以下カッコ内の温度は発泡温度)、アゾジカルボンアミド(139〜208℃)、メラミンおよびその誘導体、N,N´−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(123〜207℃)、4,4´−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(156〜159℃)、尿素(112〜230℃)、グアニジン、アセトアニリド(105〜230℃)、ジエタノールアミン(110〜230℃)、炭酸水素アンモニウム(100〜230℃)、硫酸アルミニウムアンモニウム(100〜230℃)、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンなどから任意に使用できる。
JIS A6909に規定される透水性試験B法とは、JIS A6909では建築用仕上塗材の品質を規定するものであるが、それらの製品のうち防水形外装薄塗材、あるいは複層仕上塗材では単一の塗膜あるいは複数の塗料を塗重ねた塗膜系において、防水性能を測る試験である。
試験方法そのものは、厚さ4mmのフレキシブル板に対して、試験に供する塗料を塗り付け、養生室にて2週間静置した後、漏斗にメスピペットを繋ぎ合わせた試験器具を試験塗膜の上にシリコーンシーリング材にて止め付け、25cmの水頭位置まで水を充填し、24時間後における水頭位置との差を求めるものである。このJIS試験では、規定値として0.5ml以下としている。
JIS A6909に規定される透水性試験A法とは、上記した同試験B法が一定の防水性を要求するものであるのに対して、有る範囲の透水を認める製品についての試験方法である。同JISでは、通称アクリルリシン、弾性リシンに対して適用される。
透水性試験A法では、390×190×100mmの空洞コンクリートブロックの390×190mmの面に対して、330×130mmの範囲に試験とする塗料を塗り付け、養生後に、内径60mmのシリンダーと漏斗を組み合わせた透水試験装置を取り付け、シリンダーの200mmの目盛りまで水を入れ、60分間経過後の透水量を測るものである。このJIS試験では、規定値として20mm以下あるいは10mm以下としている。
この発明に於いては、耐火塗料と上塗り塗料層を塗重ねた状態あるいは、耐火塗料、表面補強層と上塗り塗料層を塗重ねた状態において透水性試験を行うこととなる。
上塗り塗料層を形成する上塗り塗料には、公知の合成樹脂エマルションペイント、アクリル樹脂エナメル、シリコーン樹脂エナメル、ウレタン樹脂エナメル、フッ素樹脂エナメルなどのうちから任意に選択され使用される。上塗り塗料は、固形分換算にて20〜300g/m2塗付する、塗り付け量では100〜500g/m2塗付することにより所定の透水性能を得ることができる。
耐火塗料層の上に上塗り塗料層を設けることにより、この複層の塗料層は、降雨等の水掛かりに対して、防水性を発揮し、耐火塗料層の性能劣化を防止することとなる。
表面補強層を形成するための表面補強剤には、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂等の溶解液、エマルション化した分散液が利用できる。中でも、透水性を小さくできる点からエポキシ樹脂が優れている。この表面補強剤は、耐水性が良いとは言えない耐火塗料層表面に浸透し、表面を固化し、耐火塗料層の吸水を小さくし、上塗り塗料を効率良く塗り付けることができる。表面補強剤は、刷毛、スプレー、ローラー等の公知の塗付手段により、塗り付け量が50〜300g/m2、好ましくは100〜250g/m2塗付することにより所定の補強効果を得ることができる。この時の固形分換算の塗布量としては、20〜150g/m2となる。
この出願の請求項1の発明によれば、防水性と呼べる性能を持つことにより、耐火塗料を降雨に曝される場所に用いても、水分が耐火塗料層へは浸透せず、水可溶成分が溶け出すこともなく、耐火性能の保持をなすことができる。
請求項2の発明では、表面補強層を持つことにより、耐火塗料層が外部からの衝撃に対して強いものとなる。また、耐火塗料層の表面の吸い込みを小さくすることができ、上塗り塗料との密着を良くすることにより、上塗り塗料の塗布量を小さくすることができ、且つ、耐候性に優れた塗膜構造とすることができる。
請求項3の発明では、耐火塗料層と表面補強層を塗重ねた状態において、透水量を制限したものとなり、上塗り塗料を効率良く塗付することができる。
以下にこの発明を具体化した実施形態を図と共に示し、説明する。図1、図2共に、この発明の外部向け構造の拡大断面図である。図中、符号1が耐火塗料層であり、符号2が上塗り塗料層、符号3が表面補強層である。上塗り塗料層あるいは表面補強層は耐火塗料層に一部浸透する形で付着している。
実施例1では、耐火塗料層形成に下記配合1の塗料を使用し、上塗り塗料層形成には下記配合2の塗料を使用し、試験体を作成した。試験体作成において、それぞれの塗付方法と塗布量は、耐火塗料層はスプレーにより、厚み1mm塗り付けた。上塗り塗料層は、スプレーにより固形分換算で194g/m2、塗り付け量では380g/m2の塗装を行った。
試験体を作成後は、下記に説明する各種の性能試験を行い、測定を行った。以下に記述する実施例、比較例でも同様である。
試験体を作成後は、下記に説明する各種の性能試験を行い、測定を行った。以下に記述する実施例、比較例でも同様である。
実施例2では、耐火塗料層形成に下記配合1の塗料を使用し、表面補強層に2液のエポキシ樹脂液を固形分換算で100g/m2スプレー塗装し、上塗り塗料層を形成した。
比較例では、耐火塗料層以外の上塗り塗料層の形成を行わなかったものを比較例とした。
配合1
ペンタエリスリトール 100重量部
ポリリン酸アンモニウム 450重量部
メラミン 100重量部
酢ビ/アクリルエマルション(固形分) 350重量部
二酸化チタン 200重量部
合計 1200重量部
ペンタエリスリトール 100重量部
ポリリン酸アンモニウム 450重量部
メラミン 100重量部
酢ビ/アクリルエマルション(固形分) 350重量部
二酸化チタン 200重量部
合計 1200重量部
配合2
アクリルシリコン樹脂(固形分) 100重量部
酸化チタン 30重量部
顔料 2重量部
添加剤 15重量部
合計 147重量部
アクリルシリコン樹脂(固形分) 100重量部
酸化チタン 30重量部
顔料 2重量部
添加剤 15重量部
合計 147重量部
それぞれの試験は、透水性試験B法では厚さ4mmのフレキシブル板を用い、上述した試験方法により透水量を測定した。また、表面補強層を含む場合に行う、透水性試験A法の測定でも、上述した空洞コンクリートブロックを用いて透水量を測定した。これら透水性試験の結果は、下記表1に示す。
耐水性の試験では、鉄板の大きさを 7cm×15cm×厚さ1mmとし、変成エポキシ系の錆止め塗料を200g/m2刷毛塗りにより塗っておいたものの上に、耐火塗料層、上塗り塗料層の2層あるいは耐火塗料層、表面補強層、上塗り塗料層の3層を形成した。但し、比較例では耐火塗料層だけとした。そして、耐水性試験では、試験前に試験体の重量を測定した後、常温の水中に一週間浸漬させて、取り出し、20℃65%RHの恒温室にて一週間おいて恒量となった、耐水試験後の試験体重量を測定した。試験結果については、表2に記載した。なお、表中の数値の単位は、gである。
耐水性試験後の耐火試験では、7cm×15cm×厚み1mmの鉄板を利用し、前記耐水性試験と同じ、水への浸漬を行い、養生した後の試験体を耐火試験に供した。耐火試験の方法は、この試験体をJIS A 1304の標準加熱曲線に従って加熱試験を行い、K熱電対によって鉄板の裏面温度を測定した。評価は、鉄板の裏面温度が500℃に達した時間(分)と加熱終了後の試験体の発泡高さを測定することによって行った。耐火試験を行ったときの炉内温度及び試験体の裏面温度を、下記表3の測定値概要および表4のグラフにより示す。また、試験体の発泡高さについては下記表5に示す。
以上の試験結果より、上塗り塗料層あるいは表面補強層と上塗り塗料層を構成として持つことにより、直接的には防水性が発揮され、耐火塗料層の性能劣化を防ぐことが可能となる。耐火時間では表面補強層有りで約16%の性能劣化を防ぐこととなった。発泡高さの数値では、25%の性能劣化を防ぐことができた。今回の耐水性試験では、直接水中に浸漬させて、性能劣化の促進を図ったが、例えば結露が生じる場所では、連続でなくとも何度も何度も繰り返し塗膜が湿潤状態になることを考慮すると、同様な劣化が発生する可能性が有る。また、副次的に色の付いた上塗り塗料を表面に有することとなり、任意の色調の意匠を付与することが可能になる。
1…耐火塗料層
2…上塗り塗料層
3…表面補強層
2…上塗り塗料層
3…表面補強層
Claims (3)
- 主成分に多価アルコールあるいは難燃性発泡剤、含窒素発泡剤のいずれかを含む耐火塗料層、耐火塗料層と合わせてJIS A6909に規定される透水性試験B法の試験値が0.5ml以下となる上塗り塗料層を塗重ねたことを特徴とする耐火塗料の外部向け構造。
- 耐火塗料層と上塗り塗料層の間に耐火塗料の表面補強層を設けたことを特徴とする請求項1に記載の耐火塗料の外部向け構造。
- 耐火塗料層と表面補強層による塗重ね時において、JIS A6909に規定される透水性試験A法の試験値が20ml以下となることを特徴とする請求項2に記載の耐火塗料の外部向け構造。
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