JP2006228937A - 希土類焼結磁石の製造方法、磁場中成形装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 小型、薄型の磁石を形成する場合であっても、クラックや欠けの発生を有効に抑制することができ、高い磁気特性を得ることのできる希土類焼結磁石の製造方法、磁場中成形装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 下パンチ30の外周側に強磁性体からなるヨーク60を設けることで、微粉砕粉100の供給時には、金型キャビティCの部分において、磁束を中央部に集中することなく均一化して、合金粉末を金型キャビティCに均一に充填する。また、金型キャビティC内の微粉砕粉100に磁場を印加して配向させるときにも、金型キャビティCに印加される磁界の強度の均一化を図る。
【選択図】図1
【解決手段】 下パンチ30の外周側に強磁性体からなるヨーク60を設けることで、微粉砕粉100の供給時には、金型キャビティCの部分において、磁束を中央部に集中することなく均一化して、合金粉末を金型キャビティCに均一に充填する。また、金型キャビティC内の微粉砕粉100に磁場を印加して配向させるときにも、金型キャビティCに印加される磁界の強度の均一化を図る。
【選択図】図1
Description
本発明は、希土類焼結磁石の製造方法、磁場中成形装置に関する。
モータ等をはじめとする各種電気部品の小型化の要求、およびこれに対応した磁石の特性向上に伴い、磁石の小型化、磁石厚み寸法の肉薄化が進行している。例えばHDD(Hard Disc Drive)のヘッド駆動用のVCM(Voice Coil Motor)用の磁石は、外形寸法5〜40mm程度で、厚さ0.8〜3.0mm程度の薄いものが主流となっている。また、IPM(Interior Permanent Magnet:内部磁石埋め込み)方式のモータに使用される磁石も、断面積が広いが、厚みは2mm前後と薄くなる傾向となっている。
一般に、板状、ブロック状の磁石は、所定組成を有する合金粉末を金型キャビティに充填した後に、印加磁界中で加圧成形して成形体を得た後、この成形体を焼結、熱処理後、厚さ方向に対向する2面を平面研削するか、又は厚さ方向に平行にスライスして製造されている。しかし、大きな焼結ブロックから製品形状に切り出したのでは、成形性は比較的良好であるものの、スライスコストが割高となるという欠点がある。
そこで、金型キャビティを製品形状に対応したものとし、はじめから製品形状を有した成形品を単品で得ることが行われている。
そこで、金型キャビティを製品形状に対応したものとし、はじめから製品形状を有した成形品を単品で得ることが行われている。
この場合、金型キャビティに合金粉末を充填したり、金型キャビティ中の合金粉末を配向させるために、金型キャビティに充填した合金粉末に磁場を印加すると、磁束が金型キャビティの外周部に比較し中央部に集中するため、これに起因して以下のような問題が生じる。
すなわち、金型キャビティに合金粉末を供給する際に磁場を印加し、その磁力によって金型キャビティに合金粉末を導く、いわゆる磁場吸引法を用いる場合、磁束が金型キャビティの外周部に比較し中央部に集中すると、金型キャビティを構成する臼の内壁面に近い部分には合金粉末が密に入らず、得られた成形体において合金粉末の密度が外周面に近い部分で低くなるという問題が生じる。特に、磁石厚さが薄くなるとこの傾向は顕著になり、金型キャビティに薄く均一に粉を充填することが困難となる。このようにして、金型キャビティに対し合金粉末が均一に充填されないと、成形体の密度が不均一になり、特に、密度が低い部分でクラックや欠けが生じやすくなる。
これらの問題に対し、磁石が厚い場合は、加圧する過程で、金型キャビティ中央部の合金粉末が、加圧によって外周部に移動する余地があるが、磁石が薄型になるほどこの移動は生じにくくなるため、上記傾向は、磁石の断面積に対し、厚さが薄くなるほど顕著となる。
すなわち、金型キャビティに合金粉末を供給する際に磁場を印加し、その磁力によって金型キャビティに合金粉末を導く、いわゆる磁場吸引法を用いる場合、磁束が金型キャビティの外周部に比較し中央部に集中すると、金型キャビティを構成する臼の内壁面に近い部分には合金粉末が密に入らず、得られた成形体において合金粉末の密度が外周面に近い部分で低くなるという問題が生じる。特に、磁石厚さが薄くなるとこの傾向は顕著になり、金型キャビティに薄く均一に粉を充填することが困難となる。このようにして、金型キャビティに対し合金粉末が均一に充填されないと、成形体の密度が不均一になり、特に、密度が低い部分でクラックや欠けが生じやすくなる。
これらの問題に対し、磁石が厚い場合は、加圧する過程で、金型キャビティ中央部の合金粉末が、加圧によって外周部に移動する余地があるが、磁石が薄型になるほどこの移動は生じにくくなるため、上記傾向は、磁石の断面積に対し、厚さが薄くなるほど顕著となる。
クラックや欠けが生じる場合、製品形状よりも厚い成形体を形成し、加工工程にて焼結体を厚さ方向に研削し、製品寸法とすることもできるが、研削する量が増えると、材料歩留まりが低下し、また研削に要する時間が増えることになる。特に、希土類磁石の原料は高価なため、希土類磁石を製造する場合には、加工工程での研削代(しろ)は最低限にすることが必要である。
このような問題に対し、合金粉末を収容した容器に撃力を与え、網の開口部を通して金型キャビティに合金粉末を供給することで、合金粉末供給の均一化を図る手法(例えば、特許文献1参照。)や、加圧に用いる上下パンチの間隔を小さくすることで磁力線がほぼ平行となるように磁場を印加する手法(例えば、特許文献2参照。)等が提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載されたような手法は、外形寸法が45mm以上といった大きいものには有効であるものや、厚さ10mm以上のブロック状の磁石に対しては有効なものの、外形寸法が40mm以下の小型の磁石、厚さ3mm等といった薄型磁石においては、上記問題の有効な解決手段とは言い切れず、改善の余地がある。特に、小型の磁石の場合、磁場中成形工程にて金型キャビティに印加される磁界の強度が低くなるため、残留磁束密度Brが小さくなるという問題もある。
また、特許文献2に記載されたような手法は、磁場中成形時の磁場の影響によって合金粉末が金型キャビティの中央部に集中するという現象に対してはある程度有効なものの、金型キャビティに合金粉末を供給する際に、臼の内壁面に近い部分には合金粉末が密に入らず、得られた成形体において合金粉末の密度が外周面に近い部分で低くなるという現象に対しては有効な解決手段となっておらず、この現象に起因するクラックや欠けの発生を有効に抑制するに至ってはいないのが現状である。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、小型、薄型の磁石を形成する場合であっても、クラックや欠けの発生を有効に抑制することができ、高い磁気特性を得ることのできる希土類焼結磁石の製造方法、磁場中成形装置を提供することを目的とする。
また、特許文献2に記載されたような手法は、磁場中成形時の磁場の影響によって合金粉末が金型キャビティの中央部に集中するという現象に対してはある程度有効なものの、金型キャビティに合金粉末を供給する際に、臼の内壁面に近い部分には合金粉末が密に入らず、得られた成形体において合金粉末の密度が外周面に近い部分で低くなるという現象に対しては有効な解決手段となっておらず、この現象に起因するクラックや欠けの発生を有効に抑制するに至ってはいないのが現状である。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、小型、薄型の磁石を形成する場合であっても、クラックや欠けの発生を有効に抑制することができ、高い磁気特性を得ることのできる希土類焼結磁石の製造方法、磁場中成形装置を提供することを目的とする。
かかる目的のもとになされた本発明の希土類焼結磁石の製造方法は、弱磁性材または非磁性材からなる臼型と強磁性材からなる下パンチによって形成される金型キャビティに磁性粉末を充填する工程と、金型キャビティ内の磁性粉末を、加圧方向に平行な磁場を印加しつつ加圧することで成形体を形成する工程と、を含む。そして、磁性粉末を充填する工程では、金型キャビティの底面を形成する強磁性材からなる下パンチの外周部に、強磁性材からなるヨークを配置した状態で、金型キャビティに磁場を印加して金型キャビティに磁性粉末を充填することを特徴とする。
このようにして、下パンチの外周部に強磁性材からなるヨークを配置した状態で、金型キャビティに磁場を印加すると、磁束は下パンチだけでなくその周囲のヨークを通るため、金型キャビティの部分において磁束の平行度が高まり、磁界強度が均一化される。これによって、磁性粉末が金型キャビティに均一に充填される。
このとき、磁性粉末を充填する工程では、下パンチの上面とヨークの上面が略同じ高さとなるように配置するのが好ましい。これにより、磁界強度の均一性が高まる。
また、成形体を形成する工程では、下パンチの外周部にヨークを配置した状態で、金型キャビティに磁場を印加しても良い。このようにすると、磁場による金型キャビティ中の磁性粉末の配向性についても、均一性を高めることができる。
このようにして、下パンチの外周部に強磁性材からなるヨークを配置した状態で、金型キャビティに磁場を印加すると、磁束は下パンチだけでなくその周囲のヨークを通るため、金型キャビティの部分において磁束の平行度が高まり、磁界強度が均一化される。これによって、磁性粉末が金型キャビティに均一に充填される。
このとき、磁性粉末を充填する工程では、下パンチの上面とヨークの上面が略同じ高さとなるように配置するのが好ましい。これにより、磁界強度の均一性が高まる。
また、成形体を形成する工程では、下パンチの外周部にヨークを配置した状態で、金型キャビティに磁場を印加しても良い。このようにすると、磁場による金型キャビティ中の磁性粉末の配向性についても、均一性を高めることができる。
本発明の希土類焼結磁石の製造方法は、弱磁性材または非磁性材からなる臼型によって形成される金型キャビティに磁性粉末を充填する工程と、金型キャビティ内の磁性粉末を、加圧方向に平行な磁場を印加しつつ加圧することで成形体を形成する工程と、を含み、成形体を形成する工程では、金型キャビティの底面を形成する強磁性材からなる下パンチの外周部に、強磁性材からなり金型キャビティの断面積に対し4〜100倍の面積を有したヨークを配置した状態で、金型キャビティに磁場を印加することを特徴とすることもできる。
このようなヨークを配することで、磁場による金型キャビティ中の磁性粉末の配向性の均一化を図ることができ、特に、小型、薄型の希土類焼結磁石(成形体)を形成する場合に、磁気特性を向上させることができる。すなわち、本発明の希土類焼結磁石の製造方法は、金型キャビティの断面積が10cm2以下であるような場合に特に有効となる。なお、2個取り以上の多数個取りの場合は、前記断面積は1個あたりの断面積とする。
このようなヨークを配することで、磁場による金型キャビティ中の磁性粉末の配向性の均一化を図ることができ、特に、小型、薄型の希土類焼結磁石(成形体)を形成する場合に、磁気特性を向上させることができる。すなわち、本発明の希土類焼結磁石の製造方法は、金型キャビティの断面積が10cm2以下であるような場合に特に有効となる。なお、2個取り以上の多数個取りの場合は、前記断面積は1個あたりの断面積とする。
本発明は、成形すべき成形体の形状に応じた孔を有し、弱磁性材または非磁性材からなる臼型と、臼型の孔内に位置し、強磁性材からなる下パンチと、臼型の孔に上側から挿入され、孔内で下パンチと対向するよう昇降可能に設けられた上パンチと、下パンチの外周部に設けられ、強磁性材からなり、孔の面積に対し4〜100倍の面積を有するヨークと、ヨークの外周側に設けられ、下パンチおよびヨークを通る磁場を印加するコイルと、を備えることを特徴とする磁場中成形装置とすることもできる。
このような磁場中成形装置は、上記したような本発明の希土類焼結磁石の製造方法を実現できる。
磁界強度の均一性をさらに高めるには、下パンチの上面とヨークの上面を略同じ高さとするのが好ましい。その場合、下パンチの先端部に、孔内に位置する先端部材を設けるのであれば、この先端部材を弱磁性材または非磁性材で形成するのが好ましい。
また、上パンチの外周部に設けられ、強磁性材からなる上部ヨークをさらに備えることもできる。この場合も、上パンチが、上パンチのストローク下端に位置した状態で、上パンチの下面と上部ヨークの下面を略同じ高さとするのが好ましい。
このような磁場中成形装置は、上記したような本発明の希土類焼結磁石の製造方法を実現できる。
磁界強度の均一性をさらに高めるには、下パンチの上面とヨークの上面を略同じ高さとするのが好ましい。その場合、下パンチの先端部に、孔内に位置する先端部材を設けるのであれば、この先端部材を弱磁性材または非磁性材で形成するのが好ましい。
また、上パンチの外周部に設けられ、強磁性材からなる上部ヨークをさらに備えることもできる。この場合も、上パンチが、上パンチのストローク下端に位置した状態で、上パンチの下面と上部ヨークの下面を略同じ高さとするのが好ましい。
本発明によれば、下パンチの外周部にヨークを設けることで、金型キャビティに磁性粉末を磁場吸引して供給する過程や、磁性粉末を磁場中配向する過程で、金型キャビティの部分における磁界強度の均一性を従来より高めることができる。これにより、金型キャビティに磁性粉末を均一に充填し、配向性を高めることが可能となるので、小型、薄型の磁石を形成する場合であっても、クラックや欠けの発生を有効に抑制することができ、高い磁気特性を得ることが可能となる。
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における成形装置(磁場中成形装置)10の構成を説明するための図である。
この図1に示すように、成形装置10は、臼型20と下パンチ30とによって形成される金型キャビティC内に合金粉末(磁性粉末)を充填し、コイル50で磁場を印加しつつ、上パンチ40と下パンチ30で合金粉末を加圧することで磁場中成形を行い、成形体を形成するものである。
図1は、本実施の形態における成形装置(磁場中成形装置)10の構成を説明するための図である。
この図1に示すように、成形装置10は、臼型20と下パンチ30とによって形成される金型キャビティC内に合金粉末(磁性粉末)を充填し、コイル50で磁場を印加しつつ、上パンチ40と下パンチ30で合金粉末を加圧することで磁場中成形を行い、成形体を形成するものである。
臼型20は、中央部に開口11aを有した支持プレート11上に設置されている。また、この支持プレート11上には、臼型20の外周部側に、コイル50を構成する下部コイル50Aが設けられている。支持プレート11は、成形装置10のベース12に対し昇降駆動可能とされた下ラム13に、支柱14を介して支持されている。これにより、臼型20と下部コイル50Aは、下ラム13と一体に昇降可能となっている。
この臼型20には、その中央部に、成形すべき成形体の形状に対応した形状の孔21が形成されている。
この臼型20には、その中央部に、成形すべき成形体の形状に対応した形状の孔21が形成されている。
臼型20の下面には、支持プレート11との間に、ヨーク60が設けられている。このヨーク60は、臼型20と一体に設けられており、その中央部には、臼型20の孔21に連続して、同形状の孔61が形成されている。
このヨーク60は、金型キャビティCの断面積(加圧面積)に対し、4〜100倍、より好ましくは10〜60倍の断面積を有するものとするのが好ましい。ヨーク60の断面積が小さすぎると、ヨーク60による効果が低くなり、またヨーク60の断面積が大きすぎると、成形装置10のサイズが大きくなり、省スペース化の妨げとなる。なお、2個取り以上の多数個取りの場合は、前記断面積は1個あたりの断面積とする。
このヨーク60は、金型キャビティCの断面積(加圧面積)に対し、4〜100倍、より好ましくは10〜60倍の断面積を有するものとするのが好ましい。ヨーク60の断面積が小さすぎると、ヨーク60による効果が低くなり、またヨーク60の断面積が大きすぎると、成形装置10のサイズが大きくなり、省スペース化の妨げとなる。なお、2個取り以上の多数個取りの場合は、前記断面積は1個あたりの断面積とする。
下パンチ30は、臼型20およびヨーク60の下方から、孔61、21に挿入されるような形態で設けられている。下パンチ30は、支持プレート11上に、ベース台31を介して設けられている。この下パンチ30の上端部には、金型キャビティC内に充填される合金粉末を下部側で受ける先端部材32が取り付けられている。この先端部材32は、全体として孔21に対応した外周形状を有している。
そして、下パンチ30は、金型キャビティCへの合金粉末の供給時、および磁場中成形時に、その上面30aがヨーク60の上面60aと略同一レベルとなるように設けられている。
そして、下パンチ30は、金型キャビティCへの合金粉末の供給時、および磁場中成形時に、その上面30aがヨーク60の上面60aと略同一レベルとなるように設けられている。
一方、上パンチ40は、図示しない油圧または空圧の駆動シリンダまたはカムによって昇降可能に設けられた上ラム15の下面に設けられている。上パンチ40の下端部には、金型キャビティC内に充填される合金粉末を上方から押圧するための先端部材41が取り付けられている。
また、上ラム15の外周部には、コイル50を構成する上部コイル50Bを設けることもできる。
上パンチ40および上部コイル50Bは、駆動シリンダ(図示無し)またはカムを駆動させることで昇降し、上パンチ40の先端部材41が、臼型20および下パンチ30によって形成される金型キャビティCに、接近・離間できるようになっている。
また、上ラム15の外周部には、コイル50を構成する上部コイル50Bを設けることもできる。
上パンチ40および上部コイル50Bは、駆動シリンダ(図示無し)またはカムを駆動させることで昇降し、上パンチ40の先端部材41が、臼型20および下パンチ30によって形成される金型キャビティCに、接近・離間できるようになっている。
ここで、臼型20は、非磁性のステンレス等の鉄合金や超硬合金の組み合わせからなることが好ましいが、飽和磁化が0.5T以下の若干の磁性を有するものでも良い。以下臼型20が強磁性体であると、配向時に磁束が臼型20を流れ、成形すべき金型キャビティCでの配向磁界が減少するからである。
上パンチ40、下パンチ30、ヨーク60は、強磁性体である鉄やダイス鋼からなり、これらの磁化により、金型キャビティCにより多くの配向磁界を得る。上パンチ40、下パンチ30は、超硬合金、あるいは超硬合金と強磁性体である鉄やダイス鋼等との組み合わせによって形成することもできる。この場合、その超硬合金は、必要な強度の範囲で、なるべく磁性の強い材質が選ばれるのは言うまでもない。
下パンチ30の先端部材32、上パンチ40の先端部材41は、下パンチ30、上パンチ40と同材料で形成することもできるが、非磁性のステンレス等の鉄合金や超硬合金の組み合わせからなることが好ましい。あるいは、飽和磁化が0.5T以下の若干の磁性を有するものでも良い。
上パンチ40、下パンチ30、ヨーク60は、強磁性体である鉄やダイス鋼からなり、これらの磁化により、金型キャビティCにより多くの配向磁界を得る。上パンチ40、下パンチ30は、超硬合金、あるいは超硬合金と強磁性体である鉄やダイス鋼等との組み合わせによって形成することもできる。この場合、その超硬合金は、必要な強度の範囲で、なるべく磁性の強い材質が選ばれるのは言うまでもない。
下パンチ30の先端部材32、上パンチ40の先端部材41は、下パンチ30、上パンチ40と同材料で形成することもできるが、非磁性のステンレス等の鉄合金や超硬合金の組み合わせからなることが好ましい。あるいは、飽和磁化が0.5T以下の若干の磁性を有するものでも良い。
このような成形装置10は、さらに、金型キャビティCに合金粉末を供給する原料供給機構を備える。原料供給機構では、金型キャビティCに、所定量の合金粉末を供給する。その供給量管理には、供給する合金粉末の重量を用いることもできるが、金型キャビティCへの合金粉末の供給高さ(レベル)を用いるのが好ましい。そして、合金粉末を金型キャビティCに供給し、原料供給機構に備えたすり切り機構により、供給した合金粉末を臼型20の上面レベルですり切るようにするのが好ましい。
成形装置10において、前記の臼型20、下パンチ30、上パンチ40によって、所定形状の成形体を形成するための金型が構成される。この金型は、形成する成形体の形状に応じ、適宜交換して成形装置10に取り付けることができる。
次に、上記したような構成を有する成形装置10を用いた、希土類焼結磁石の製造方法について説明する。
ここでまず、本発明の適用対象の磁石について説明する。
本発明はR−T−B(Rは希土類元素の1種又は2種以上、TはFe又はFe及びCo)で示されるネオジム系焼結磁石について適用することが望ましい。
R−T−B系焼結磁石は、希土類元素(R)を25〜37wt%含有する。ここで、RはYを含む概念を有しており、したがってY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuの1種又は2種以上から選択される。Rの量が25wt%未満であると、R−T−B系焼結磁石の主相となるR2T14B相の生成が十分ではなく軟磁性を持つα−Feなどが析出し、保磁力が著しく低下する。一方、Rが37wt%を超えると主相であるR2T14B相の体積比率が低下し、残留磁束密度が低下する。またRが酸素と反応し、含有する酸素量が増え、これに伴い保磁力発生に有効なRリッチ相が減少し、保磁力の低下を招く。したがって、Rの量は25〜37wt%とする。望ましいRの量は28〜35wt%である。
ここでまず、本発明の適用対象の磁石について説明する。
本発明はR−T−B(Rは希土類元素の1種又は2種以上、TはFe又はFe及びCo)で示されるネオジム系焼結磁石について適用することが望ましい。
R−T−B系焼結磁石は、希土類元素(R)を25〜37wt%含有する。ここで、RはYを含む概念を有しており、したがってY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuの1種又は2種以上から選択される。Rの量が25wt%未満であると、R−T−B系焼結磁石の主相となるR2T14B相の生成が十分ではなく軟磁性を持つα−Feなどが析出し、保磁力が著しく低下する。一方、Rが37wt%を超えると主相であるR2T14B相の体積比率が低下し、残留磁束密度が低下する。またRが酸素と反応し、含有する酸素量が増え、これに伴い保磁力発生に有効なRリッチ相が減少し、保磁力の低下を招く。したがって、Rの量は25〜37wt%とする。望ましいRの量は28〜35wt%である。
また、本発明が適用されるR−T−B系焼結磁石は、ホウ素(B)を0.5〜4.5wt%含有する。Bが0.5wt%未満の場合には高い保磁力を得ることができない。一方で、Bが4.5wt%を超えると残留磁束密度が低下する傾向がある。したがって、Bの上限を4.5wt%とする。望ましいBの量は0.5〜1.5wt%、さらに望ましいBの量は0.8〜1.2wt%である。
本発明が適用されるR−T−B系焼結磁石は、Coを5.0wt%以下(0を含まず)、望ましくは0.1〜3.0wt%含有することができる。CoはFeと同様の相を形成するが、キュリー温度の向上、粒界相の耐食性向上などに効果がある。
本発明が適用されるR−T−B系焼結磁石は、Coを5.0wt%以下(0を含まず)、望ましくは0.1〜3.0wt%含有することができる。CoはFeと同様の相を形成するが、キュリー温度の向上、粒界相の耐食性向上などに効果がある。
本発明が適用されるR−T−B系焼結磁石は、他の元素の含有を許容する。例えば、Al、Cu、Zr、Ti、Bi、Sn、Ga、Nb、Ta、Si、V、Ag、Ge等の元素を適宜含有させることができる。一方で、酸素、窒素、炭素等の不純物元素を極力低減することが望ましい。特に磁気特性を害する酸素は、その量を7000ppm以下、さらには5000ppm以下とすることが望ましい。酸素量が多いと非磁性成分である希土類酸化物相が増大して、磁気特性を低下させるからである。
このようなR−T−B系焼結磁石は、以下のような工程を経ることで製造される。
以下、各工程の内容を説明する。なお、以下では希土類焼結磁石としてネオジム系焼結磁石であるR−T−B系焼結磁石を例にして説明するが、本発明はこれ以外のSmCo系の希土類焼結磁石に適用できることは言うまでもない。
<原料合金調整>
R−T−B系焼結磁石の原料合金は、真空又は不活性ガス、望ましくはAr雰囲気中でストリップキャスト法、その他公知の溶解法により作製することができる。ストリップキャスト法は、原料金属をArガス雰囲気などの非酸化性雰囲気中で溶解して得た溶湯を回転するロールの表面に噴出させる。ロールで急冷された溶湯は、薄板または薄片(鱗片)状に急冷凝固される。この急冷凝固された合金は、結晶粒径が1〜50μmの均質な組織を有している。原料合金は、ストリップキャスト法に限らず、高周波誘導溶解等の溶解法によって得ることができる。なお、溶解後の偏析を防止するため、例えば水冷銅板に傾注して凝固させることができる。また、還元拡散法によって得られた合金を原料合金として用いることもできる。
以下、各工程の内容を説明する。なお、以下では希土類焼結磁石としてネオジム系焼結磁石であるR−T−B系焼結磁石を例にして説明するが、本発明はこれ以外のSmCo系の希土類焼結磁石に適用できることは言うまでもない。
<原料合金調整>
R−T−B系焼結磁石の原料合金は、真空又は不活性ガス、望ましくはAr雰囲気中でストリップキャスト法、その他公知の溶解法により作製することができる。ストリップキャスト法は、原料金属をArガス雰囲気などの非酸化性雰囲気中で溶解して得た溶湯を回転するロールの表面に噴出させる。ロールで急冷された溶湯は、薄板または薄片(鱗片)状に急冷凝固される。この急冷凝固された合金は、結晶粒径が1〜50μmの均質な組織を有している。原料合金は、ストリップキャスト法に限らず、高周波誘導溶解等の溶解法によって得ることができる。なお、溶解後の偏析を防止するため、例えば水冷銅板に傾注して凝固させることができる。また、還元拡散法によって得られた合金を原料合金として用いることもできる。
<粉砕>
原料合金は粉砕工程に供される。粉砕工程には、粗粉砕工程と微粉砕工程とがある。まず、原料合金を、粒径数百μm程度になるまで粗粉砕する。粗粉砕は、スタンプミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル等を用い、不活性ガス雰囲気中にて行うことが望ましい。粗粉砕に先立って、原料合金に水素を吸蔵させた後に放出させることにより粉砕を行うことが効果的である。水素放出処理は、希土類焼結磁石として不純物となる水素を減少させることを目的として行われる。水素放出のための加熱保持の温度は、200℃以上、望ましくは350℃以上とする。保持時間は、保持温度との関係、原料合金の厚さ等によって変わるが、少なくとも30分以上、望ましくは1時間以上とする。水素放出処理は、真空中又はArガスフローにて行う。なお、水素吸蔵処理、水素放出処理は必須の処理ではない。この水素粉砕を粗粉砕と位置付けて、機械的な粗粉砕を省略することもできる。
原料合金は粉砕工程に供される。粉砕工程には、粗粉砕工程と微粉砕工程とがある。まず、原料合金を、粒径数百μm程度になるまで粗粉砕する。粗粉砕は、スタンプミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル等を用い、不活性ガス雰囲気中にて行うことが望ましい。粗粉砕に先立って、原料合金に水素を吸蔵させた後に放出させることにより粉砕を行うことが効果的である。水素放出処理は、希土類焼結磁石として不純物となる水素を減少させることを目的として行われる。水素放出のための加熱保持の温度は、200℃以上、望ましくは350℃以上とする。保持時間は、保持温度との関係、原料合金の厚さ等によって変わるが、少なくとも30分以上、望ましくは1時間以上とする。水素放出処理は、真空中又はArガスフローにて行う。なお、水素吸蔵処理、水素放出処理は必須の処理ではない。この水素粉砕を粗粉砕と位置付けて、機械的な粗粉砕を省略することもできる。
粗粉砕工程後、微粉砕工程に移る。微粉砕には主にジェットミルが用いられ、粒径数百μm程度の粗粉砕粉末を、平均粒径2.5〜6μm、望ましくは3〜5μmとする。ジェットミルは、高圧の不活性ガスを狭いノズルより開放して高速のガス流を発生させ、この高速のガス流により粗粉砕粉末を加速し、粗粉砕粉末同士の衝突やターゲットあるいは容器壁との衝突を発生させて粉砕する方法である。微粉砕前の粗紛末に潤滑剤を添加混合しても良く、微粉砕後あるいはその両方で潤滑剤を添加混合しても良い。
<磁場中成形>
以上のようにして得られた微粉砕粉(磁性材料)を、磁場中成形し、成形体を得る。本実施の形態では、加圧方向と印加する磁界の方向が平行な成形法である平行磁界成形法を用いる。
磁場中成形における成形圧力は30〜300MPa(0.3〜3ton/cm2)の範囲とすればよい。成形圧力が低いほど配向性は良好となるが、成形圧力が低すぎると成形体の強度が不足して成形体の加工時に問題が生じるので、この点を考慮して上記範囲から成形圧力を選択する。磁場中成形で得られる成形体の最終的な相対密度は、50〜65%が好ましい。
本発明において印加する磁場は、800〜1600kA/m(10〜20kOe)程度とすればよい。印加する磁場は静磁界に限定されず、パルス状の磁界とすることもできる。また、静磁界とパルス状磁界を併用することもできる。パルス状の磁界を用いる場合は、2400kA/m(30kOe)程度の高い磁界を使用することが可能である。
以上のようにして得られた微粉砕粉(磁性材料)を、磁場中成形し、成形体を得る。本実施の形態では、加圧方向と印加する磁界の方向が平行な成形法である平行磁界成形法を用いる。
磁場中成形における成形圧力は30〜300MPa(0.3〜3ton/cm2)の範囲とすればよい。成形圧力が低いほど配向性は良好となるが、成形圧力が低すぎると成形体の強度が不足して成形体の加工時に問題が生じるので、この点を考慮して上記範囲から成形圧力を選択する。磁場中成形で得られる成形体の最終的な相対密度は、50〜65%が好ましい。
本発明において印加する磁場は、800〜1600kA/m(10〜20kOe)程度とすればよい。印加する磁場は静磁界に限定されず、パルス状の磁界とすることもできる。また、静磁界とパルス状磁界を併用することもできる。パルス状の磁界を用いる場合は、2400kA/m(30kOe)程度の高い磁界を使用することが可能である。
<焼結>
磁場中成形によって得られた成形体を真空又は不活性ガス雰囲気中で焼結し、R−T−B系焼結磁石を得る。焼結温度は、組成、粉砕方法、平均粒径と粒度分布の違い等、諸条件により調整する必要があるが、1000〜1200℃で1〜10時間程度焼結すればよい。
焼結後、得られた焼結体に時効処理を施すことができる。この工程は、保磁力を制御する重要な工程である。時効処理を2段に分けて行う場合には、800℃近傍、600℃近傍での所定時間の保持が有効である。800℃近傍での熱処理を焼結後に行うと、保磁力が増大するため特に有効である。また、600℃近傍の熱処理で保磁力が大きく増加するため、時効処理を1段で行う場合には、600℃近傍の時効処理を施すとよい。
磁場中成形によって得られた成形体を真空又は不活性ガス雰囲気中で焼結し、R−T−B系焼結磁石を得る。焼結温度は、組成、粉砕方法、平均粒径と粒度分布の違い等、諸条件により調整する必要があるが、1000〜1200℃で1〜10時間程度焼結すればよい。
焼結後、得られた焼結体に時効処理を施すことができる。この工程は、保磁力を制御する重要な工程である。時効処理を2段に分けて行う場合には、800℃近傍、600℃近傍での所定時間の保持が有効である。800℃近傍での熱処理を焼結後に行うと、保磁力が増大するため特に有効である。また、600℃近傍の熱処理で保磁力が大きく増加するため、時効処理を1段で行う場合には、600℃近傍の時効処理を施すとよい。
<保護膜形成>
以上のようにして得られた希土類焼結磁石、特にR−T−B系焼結磁石は、その表面に電解めっきによる保護膜を形成することができる。保護膜の材質としては、Ni、Ni−P、Cu、Zn、Cr、Sn、Alのいずれかを用いることができるし、他の材質を用いることもできる。また、これらの材質を複層として被覆することもできる。
電解めっきによる保護膜は本発明の典型的な形態であるが、他の手法による保護膜を設けることもできる。他の手法による保護膜としては、無電解めっき、クロメート処理をはじめとする化成処理及び樹脂塗装膜のいずれか又は組み合せが実用的である。特に清浄性の要求から、VCM用磁石は、表面硬度の高いNiめっきが好んで用いられる。
保護膜の厚さは、磁石素体のサイズ、要求される耐食性のレベル等によって変動させる必要があるが、1〜100μmの範囲で適宜設定すればよい。望ましい保護膜の厚さは1〜50μmである。
以上のようにして得られた希土類焼結磁石、特にR−T−B系焼結磁石は、その表面に電解めっきによる保護膜を形成することができる。保護膜の材質としては、Ni、Ni−P、Cu、Zn、Cr、Sn、Alのいずれかを用いることができるし、他の材質を用いることもできる。また、これらの材質を複層として被覆することもできる。
電解めっきによる保護膜は本発明の典型的な形態であるが、他の手法による保護膜を設けることもできる。他の手法による保護膜としては、無電解めっき、クロメート処理をはじめとする化成処理及び樹脂塗装膜のいずれか又は組み合せが実用的である。特に清浄性の要求から、VCM用磁石は、表面硬度の高いNiめっきが好んで用いられる。
保護膜の厚さは、磁石素体のサイズ、要求される耐食性のレベル等によって変動させる必要があるが、1〜100μmの範囲で適宜設定すればよい。望ましい保護膜の厚さは1〜50μmである。
さて、上記したような工程を経ることで、R−T−B系焼結磁石が製造されるわけであるが、ここで、磁場中成形工程について詳述する。
磁場中成形工程では、図1に示した成形装置10を用いる。
まず、図1に示したように、上パンチ40を上昇させて下パンチ30から離した状態で、臼型20と下パンチ30とによって形成される金型キャビティCに、図示しない原料供給機構により、微粉砕粉100を供給する。このとき、下パンチ30の上面30aがヨーク60の上面60aと略同一レベルとなるような状態とし、下部コイル50Aで所定強度の磁界を発生して金型キャビティC内に微粉砕粉100を磁力により吸引する。
磁場中成形工程では、図1に示した成形装置10を用いる。
まず、図1に示したように、上パンチ40を上昇させて下パンチ30から離した状態で、臼型20と下パンチ30とによって形成される金型キャビティCに、図示しない原料供給機構により、微粉砕粉100を供給する。このとき、下パンチ30の上面30aがヨーク60の上面60aと略同一レベルとなるような状態とし、下部コイル50Aで所定強度の磁界を発生して金型キャビティC内に微粉砕粉100を磁力により吸引する。
このようにして微粉砕粉100を所定量供給した後、供給を停止する。そして、原料供給機構に備えたすり切り機構により、金型キャビティCに供給した微粉砕粉100を臼型20の上面レベルですり切る。
微粉砕粉100の供給後、図2に示すように、下部コイル50Aおよび上部コイル50Bでは所定強度の磁界を発生し、金型キャビティC内の微粉砕粉100に対し磁場を印加し、微粉砕粉100を所定の方向に配向させながら、上パンチ40を下降させて金型キャビティC内の微粉砕粉100を下パンチ30との間で挟み込み、所定の加圧力で加圧する。
微粉砕粉100の供給後、図2に示すように、下部コイル50Aおよび上部コイル50Bでは所定強度の磁界を発生し、金型キャビティC内の微粉砕粉100に対し磁場を印加し、微粉砕粉100を所定の方向に配向させながら、上パンチ40を下降させて金型キャビティC内の微粉砕粉100を下パンチ30との間で挟み込み、所定の加圧力で加圧する。
このようにして金型キャビティC内の微粉砕粉100に対し磁場を印加しつつ加圧することで、所定形状、サイズを有した成形体が形成される。
加圧の完了後、下ラム13を下げて、臼型20および下部コイル50Aを下パンチ30の上面30aと略同レベルまで下降させるとともに、上パンチ40を上昇させて退避させ、成形体を取り出す。
加圧の完了後、下ラム13を下げて、臼型20および下部コイル50Aを下パンチ30の上面30aと略同レベルまで下降させるとともに、上パンチ40を上昇させて退避させ、成形体を取り出す。
上述したようにして、下パンチ30の外周側に強磁性体からなるヨーク60を設けることで、微粉砕粉100の供給時には、発生した磁場を金型キャビティCの領域だけでなく、より広い範囲に印加することができる。これにより、金型キャビティCの部分において、磁束が中央部に集中することなく均一化され、合金粉末が金型キャビティCに均一に充填される。その結果、得られる成形体において合金粉末の密度が均等になり、クラックや欠けの発生を低減できる。
さらに、金型キャビティC内の微粉砕粉100に磁場を印加して配向させるときにも、より広い範囲に磁場を印加することで、金型キャビティCに印加される磁界の強度の均一化を図ることができ、これによって、特に金型キャビティCの外周部に印加される磁界の強度を従来よりも高くすることができ、最終的に得られる希土類焼結磁石の残留磁束密度Brを高くすることが可能となる。
さらに、金型キャビティC内の微粉砕粉100に磁場を印加して配向させるときにも、より広い範囲に磁場を印加することで、金型キャビティCに印加される磁界の強度の均一化を図ることができ、これによって、特に金型キャビティCの外周部に印加される磁界の強度を従来よりも高くすることができ、最終的に得られる希土類焼結磁石の残留磁束密度Brを高くすることが可能となる。
上記したような効果は、扁平率の高い希土類焼結磁石に対して特に顕著となる。
さて、上記実施の形態においては、下パンチ30の外周側にのみヨーク60を設けたが、図3に示すように、上パンチ40の外周側にも、ヨーク(上部ヨーク)70を設ける構成とすることができる。この場合、磁場中成形工程にて、上パンチ40を、そのストローク下端まで下降させて金型キャビティC内の合金粉末を加圧する状態で、上パンチ40の下面40aが、ヨーク70の下面70aと略同一レベルとなるようにするのが好ましい。
このようにすることで、特に磁場中成形時に、金型キャビティCに印加される磁界の磁束の分布の均一性、磁束の向きの平行度を高めることができ、上記効果は一層顕著なものとなる。
このヨーク70は、上パンチ40の外周側に、着脱可能に設けるのが好ましい。金型のセット換え等の作業性が低下するのを防ぐためである。
このようにすることで、特に磁場中成形時に、金型キャビティCに印加される磁界の磁束の分布の均一性、磁束の向きの平行度を高めることができ、上記効果は一層顕著なものとなる。
このヨーク70は、上パンチ40の外周側に、着脱可能に設けるのが好ましい。金型のセット換え等の作業性が低下するのを防ぐためである。
さて、ここで、上記構成を有する成形装置10を用いることによる効果を確認したので、その結果を以下に示す。
29.5wt%Nd−3.0wt%Dy−1.0wt%B−0.5wt%Co−残部Feの組成の合金をストリップキャスト法で作製し、水素吸排出により粗粉化させた後、ジェットミルで窒素ガスを用いて粉砕して平均粒径4μmの原料合金粉を得た。
この原料合金粉を、図1に示したような構成の成形装置10を用い、成形体を作製した。このとき、金型キャビティCは、表1に示す内径の円形断面を有するものとし、この金型キャビティCに供給した原料合金粉を加圧成形することで、表1に示す厚さの成形体を得た。
このとき、金型キャビティCに原料合金粉を供給するに際しては、下部コイル50A、上部コイル50Bにて700kA/mの磁場を印加し、その磁力により原料合金粉を金型キャビティCに吸引するようにした。また、その後の磁場中成形時には、下部コイル50A、上部コイル50Bに1000Aの電流を通電して発生した磁場中で150MPaの圧力で原料合金粉を加圧成形した。
ここで、実施条件1〜5では表1に示す外径のヨーク60を設け、比較条件1〜3ではヨーク60を設けずに、原料合金粉の供給、および磁場中成形を行った。また、比較条件1〜3、実施条件1〜4では、下パンチ30の先端部材32、上パンチ40の先端部材41を非磁性材で形成したのに対し、実施条件5では、下パンチ30の先端部材32、上パンチ40の先端部材41を強磁性材で形成した。
29.5wt%Nd−3.0wt%Dy−1.0wt%B−0.5wt%Co−残部Feの組成の合金をストリップキャスト法で作製し、水素吸排出により粗粉化させた後、ジェットミルで窒素ガスを用いて粉砕して平均粒径4μmの原料合金粉を得た。
この原料合金粉を、図1に示したような構成の成形装置10を用い、成形体を作製した。このとき、金型キャビティCは、表1に示す内径の円形断面を有するものとし、この金型キャビティCに供給した原料合金粉を加圧成形することで、表1に示す厚さの成形体を得た。
このとき、金型キャビティCに原料合金粉を供給するに際しては、下部コイル50A、上部コイル50Bにて700kA/mの磁場を印加し、その磁力により原料合金粉を金型キャビティCに吸引するようにした。また、その後の磁場中成形時には、下部コイル50A、上部コイル50Bに1000Aの電流を通電して発生した磁場中で150MPaの圧力で原料合金粉を加圧成形した。
ここで、実施条件1〜5では表1に示す外径のヨーク60を設け、比較条件1〜3ではヨーク60を設けずに、原料合金粉の供給、および磁場中成形を行った。また、比較条件1〜3、実施条件1〜4では、下パンチ30の先端部材32、上パンチ40の先端部材41を非磁性材で形成したのに対し、実施条件5では、下パンチ30の先端部材32、上パンチ40の先端部材41を強磁性材で形成した。
得られた成形体について、クラックや欠けの発生を目視にて確認した。表1に、クラックや欠けの有無を示す。
この表1に示すように、成形体の厚さを20mmとした比較条件1、2では、金型キャビティCの内径に関わらず、クラックの発生は認められなかった。これに対し、金型キャビティCの内径をφ25mm、成形体の厚さを3mmと、小型、薄型とした比較条件3では、クラックの発生が認められた。
一方、ヨーク60を設けた実施条件1〜4においては、ヨーク60の外径が45mm(金型キャビティCの内径に対し2.2倍)の実施条件1では、クラックの発生が認められたものの、比較条件3に較べれば発生率は大幅に低下しており、さらに、ヨーク60の外径を60mm以上とした実施条件2〜4では、クラックの発生がほとんど認められなかった。また、下パンチ30の先端部材32、上パンチ40の先端部材41を強磁性材で形成した実施条件5においても、ヨーク60が同径の実施条件3と同様、クラックの発生は認められなかった。
これにより、適切なサイズのヨーク60を設けることで、金型キャビティCへの原料合金粉の供給が均一化され、クラックの発生を抑制できることが確認された。
この表1に示すように、成形体の厚さを20mmとした比較条件1、2では、金型キャビティCの内径に関わらず、クラックの発生は認められなかった。これに対し、金型キャビティCの内径をφ25mm、成形体の厚さを3mmと、小型、薄型とした比較条件3では、クラックの発生が認められた。
一方、ヨーク60を設けた実施条件1〜4においては、ヨーク60の外径が45mm(金型キャビティCの内径に対し2.2倍)の実施条件1では、クラックの発生が認められたものの、比較条件3に較べれば発生率は大幅に低下しており、さらに、ヨーク60の外径を60mm以上とした実施条件2〜4では、クラックの発生がほとんど認められなかった。また、下パンチ30の先端部材32、上パンチ40の先端部材41を強磁性材で形成した実施条件5においても、ヨーク60が同径の実施条件3と同様、クラックの発生は認められなかった。
これにより、適切なサイズのヨーク60を設けることで、金型キャビティCへの原料合金粉の供給が均一化され、クラックの発生を抑制できることが確認された。
さらに、得られた成形体を、1100℃×2時間の条件で焼結を行った後、800℃および600℃の時効処理を各1時間行い、R−T−B系焼結磁石を得た。
そして、得られたR−T−B系焼結磁石について、残留磁束密度Brを測定した。その結果を表1に示す。
そして、得られたR−T−B系焼結磁石について、残留磁束密度Brを測定した。その結果を表1に示す。
この表1に示すように、外径寸法が80mmである比較条件1のR−T−B系焼結磁石に対し、外径寸法が25mmと小さな比較条件2、3のR−T−B系焼結磁石では、例え同じ厚さ(比較条件2)であっても、残留磁束密度Brの低下が認められる。
これに対し、ヨーク60を設けた実施条件1〜5のR−T−B系焼結磁石においては、いずれにおいても残留磁束密度Brが向上している。特にヨーク60の外径を60mm以上(金型キャビティCの径に対し4倍以上)とした実施条件2〜5、さらに100mm以上(金型キャビティCの径に対し10倍以上)とした実施条件3〜5のR−T−B系焼結磁石においては、外径寸法が80mmである比較条件1のR−T−B系焼結磁石と同等の残留磁束密度Brが得られている。
これにより、ヨーク60を設けることで、残留磁束密度Brが向上することが確認され、特にヨーク60の径方向サイズを、金型キャビティCの径に対し4倍以上としたときに効果的であり、残留磁束密度Brを大幅に向上できることが確認された。
これに対し、ヨーク60を設けた実施条件1〜5のR−T−B系焼結磁石においては、いずれにおいても残留磁束密度Brが向上している。特にヨーク60の外径を60mm以上(金型キャビティCの径に対し4倍以上)とした実施条件2〜5、さらに100mm以上(金型キャビティCの径に対し10倍以上)とした実施条件3〜5のR−T−B系焼結磁石においては、外径寸法が80mmである比較条件1のR−T−B系焼結磁石と同等の残留磁束密度Brが得られている。
これにより、ヨーク60を設けることで、残留磁束密度Brが向上することが確認され、特にヨーク60の径方向サイズを、金型キャビティCの径に対し4倍以上としたときに効果的であり、残留磁束密度Brを大幅に向上できることが確認された。
また、上記の比較条件3、実施条件1〜5において、金型キャビティCの中心から径方向における磁場中成形時、磁場吸引時の磁界強度の分布を、ガウスメータにより測定したのでその結果を図4〜図6に示す。
図4(a)に示すように、ヨーク60を設けない比較条件3に対し、図4(b)、図5、図6に示すように、ヨーク60を設けた実施条件1〜5においては、金型キャビティCの中心部における磁界強度が大幅に高く、特に、ヨーク60の径を大きくするほど、金型キャビティCから広い範囲にわたり、磁界強度が均等化される(磁界強度の勾配が小さくなる)ことが確認できた。
また、図5(b)と図6(b)を較べると、下パンチ30の先端部材32、上パンチ40の先端部材41を強磁性材で形成した実施条件5では、金型キャビティCの中心に近い領域の磁界強度が特に高くなっており、先端部材32、先端部材41による影響を受けていることがわかる。
これにより、ヨーク60を設けることで、金型キャビティCの部分において磁場の均等化が図られ、これによってクラックの発生の低減、残留磁束密度Brが向上するという上記結果が裏付けられる。
図4(a)に示すように、ヨーク60を設けない比較条件3に対し、図4(b)、図5、図6に示すように、ヨーク60を設けた実施条件1〜5においては、金型キャビティCの中心部における磁界強度が大幅に高く、特に、ヨーク60の径を大きくするほど、金型キャビティCから広い範囲にわたり、磁界強度が均等化される(磁界強度の勾配が小さくなる)ことが確認できた。
また、図5(b)と図6(b)を較べると、下パンチ30の先端部材32、上パンチ40の先端部材41を強磁性材で形成した実施条件5では、金型キャビティCの中心に近い領域の磁界強度が特に高くなっており、先端部材32、先端部材41による影響を受けていることがわかる。
これにより、ヨーク60を設けることで、金型キャビティCの部分において磁場の均等化が図られ、これによってクラックの発生の低減、残留磁束密度Brが向上するという上記結果が裏付けられる。
10…成形装置(磁場中成形装置)、20…臼型、21…孔、30…下パンチ、30a…上面、32…先端部材、40a…下面、40…上パンチ、41…先端部材、50…コイル、50A…下部コイル、50B…上部コイル、60…ヨーク、60a…上面、70…ヨーク(上部ヨーク)、70a…下面、100…微粉砕粉、C…金型キャビティ
Claims (10)
- 弱磁性材または非磁性材からなる臼型と強磁性材からなる下パンチによって形成される金型キャビティに磁性粉末を充填する工程と、
前記金型キャビティ内の前記磁性粉末を、加圧方向に平行な磁場を印加しつつ加圧することで成形体を形成する工程と、
を含み、
前記磁性粉末を充填する工程では、前記金型キャビティの底面を形成する前記下パンチの外周部に、強磁性材からなるヨークを配置した状態で、前記金型キャビティに磁場を印加して前記金型キャビティに前記磁性粉末を充填することを特徴とする希土類焼結磁石の製造方法。 - 前記磁性粉末を充填する工程では、前記下パンチの上面と前記ヨークの上面が略同じ高さとなるように配置することを特徴とする請求項1に記載の希土類焼結磁石の製造方法。
- 前記成形体を形成する工程では、前記下パンチの外周部に前記ヨークを配置した状態で、前記金型キャビティに磁場を印加することを特徴とする請求項1または2に記載の希土類焼結磁石の製造方法。
- 弱磁性材または非磁性材からなる臼型によって形成される金型キャビティに磁性粉末を充填する工程と、
前記金型キャビティ内の前記磁性粉末を、加圧方向に平行な磁場を印加しつつ加圧することで成形体を形成する工程と、
を含み、
前記成形体を形成する工程では、前記金型キャビティの底面を形成する強磁性材からなる下パンチの外周部に、強磁性材からなり前記金型キャビティの断面積に対し4〜100倍の面積を有したヨークを配置した状態で、前記金型キャビティに磁場を印加することを特徴とする希土類焼結磁石の製造方法。 - 前記金型キャビティの断面積が10cm2以下であることを特徴とする請求項4に記載の希土類焼結磁石の製造方法。
- 成形すべき成形体の形状に応じた孔を有し、弱磁性材または非磁性材からなる臼型と、
前記臼型の前記孔内に位置し、強磁性材からなる下パンチと、
前記臼型の前記孔に上側から挿入され、前記孔内で前記下パンチと対向するよう昇降可能に設けられた上パンチと、
前記下パンチの外周部に設けられ、強磁性材からなり、前記孔の面積に対し4〜100倍の面積を有するヨークと、
前記ヨークの外周側に設けられ、前記下パンチおよび前記ヨークを通る磁場を印加するコイルと、
を備えることを特徴とする磁場中成形装置。 - 前記下パンチの上面と前記ヨークの上面が略同じ高さとされていることを特徴とする請求項6に記載の磁場中成形装置。
- 前記下パンチの先端部に、弱磁性材または非磁性材からなり、前記孔内に位置する先端部材が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の磁場中成形装置。
- 前記上パンチの外周部に設けられ、強磁性材からなる上部ヨークをさらに備えることを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の磁場中成形装置。
- 前記上パンチが、前記上パンチのストローク下端に位置した状態で、前記上パンチの下面と前記上部ヨークの下面が略同じ高さとされることを特徴とする請求項9に記載の磁場中成形装置。
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