JP2006227609A - 露光方法、凹凸状パターンの形成方法、及び光学素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】安価で安定性のある個体レーザやガスレーザを露光光源として使用し、g線用、i線用のフォトレジストを使用して、簡便にサブミクロンサイズの線幅の露光パターンを形成する。
【解決手段】基板Wの表面に形成された所定厚さの感光性材料の層の所定箇所にビーム強度と走査速度を制御しながらレーザビームを照射することにより感光性材料の反応時定数を局所的に制御しながら露光を行う。
【選択図】 図1
【解決手段】基板Wの表面に形成された所定厚さの感光性材料の層の所定箇所にビーム強度と走査速度を制御しながらレーザビームを照射することにより感光性材料の反応時定数を局所的に制御しながら露光を行う。
【選択図】 図1
Description
本発明は、露光方法、凹凸状パターンの形成方法、及び光学素子の製造方法に係り、特に、反射防止フイルム等の用途に使用される凹凸状パターンを有する光学素子や、凹凸状パターンを有する他の部材の製造に好適な露光方法、この露光方法を使用した凹凸状パターンの形成方法、及び光学素子の製造方法に関する。
従来より、感光性フォトレジストを使用したフォトファブリケーションは、各種の分野に適用されている。たとえば、比較的要求精度の低い技術分野として、プリント基板への適用が挙げられ、比較的要求精度の高い技術分野として、LSI等の半導体への適用が挙げられる。
このフォトファブリケーションに使用される光源(ビーム源)として、水銀燈、レーザビーム、電子ビーム等の荷電粒子ビーム等が採用されており、パターニング方法も、フォトマスク等のマスクパターンにより露光パターンを形成するマスク露光と、ビームをパターン形状に走査して露光パターンを形成する直接描画が採用されている。
このうち、レーザビームによる直接描画は、パターニングの自由度が大きく、多品種少量生産の生産形態に適しており、半導体回路形成用のフォトマスクの製造(露光パターン形成)等に適用されている(たとえば、特許文献1参照。)。
この特許文献1の提案は、単位パターンの露光を繰り返して多面付けするレーザビームの補正方法に関するもので、複数のレーザビームを使用して各ビームの寸法変動要因に補正を行うレーザビームの補正方法である。
特開2004−144885号公報
ところで、近年、半導体回路のデザインルール微細化に伴い、半導体回路の線幅の細線化の要求は非常に強い。これに対応すべく、レーザビームのビーム幅の細線化の要求も、また非常に強い。
しかしながら、レーザビームのビーム幅は、レーザビームのエアリーディスクに相当し、回折限界のため、レーザ光源の波長と同等レベルまでしか絞り込むことができない。図7は、この現象を説明する概念図である。
光束径が2nのレーザビームは、レンズ2で集光されるが、スポットサイズは回折によって制限され、1次エアリーディスク3となる。ところが、フォトレジストを感光させるスポットサイズは、2次エアリーディスク4まで及ぶ。したがって、一般的なレーザ光源(半導体レーザ、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ等)では、1μm以下の細線化の要求に答えられないのが現状である。
一方、サブミクロンのパターンの形成には、ArFレーザ、KrFレーザ等の紫外線レーザ光源や、電子ビーム等の荷電粒子ビームを使用して描画が行われている。ところが、紫外線レーザ光源は高額なうえ、安定性を維持する管理が困難であり、更に、非常に高額のレジストを使用するという問題点を有する。
また、電子ビーム露光装置は、真空チャンバや、電子銃、偏向装置等が必要であり、装置が複雑かつ高額となり、更に、描画面積が小さい上に描画速度が遅いという問題点を有する。
他に、フォーカシングレンズとフォトレジストとの間に特殊な液体を充填し、ビームの拡がりを抑制して露光する方法や、近接場光を用いて微細構造を形成する方法、等の特殊な方法も提案されてはいるが、これらの方法も簡便な方法とは言い難く、安価で簡便に微細パターンを形成できるものではない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、安価で安定性のある個体レーザ(YAGレーザ等)やガスレーザ(Ar+ レーザ等)を露光光源として使用し、従来より使用されているg線用、i線用のフォトレジストを使用して、簡便にサブミクロンサイズの線幅の露光パターンを形成することができる露光方法、この露光方法を使用した凹凸状パターンの形成方法、及び光学素子の製造方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は、基板の表面に形成された所定厚さの感光性材料の層の上にレーザビームのビーム強度とビーム走査速度を制御しながらレーザビームを照射することにより該感光性材料の反応時定数を局所的に制御しながら露光を行うことを特徴とする露光方法を提供する。
本発明によれば、感光性材料の層にビーム強度とビーム走査速度を制御しながらレーザビームを照射することにより感光性材料の反応時定数を局所的に制御する露光を行うので、露光ビームのエアリーディスクよりも細い線幅で描画することができる。これにより、安価で安定性のある個体レーザ(YAGレーザ等)やガスレーザ(Ar+ レーザ等)を露光光源として使用し、従来より使用されているg線用、i線用のフォトレジストを使用して、簡便にサブミクロンサイズの線幅の露光パターンを形成することができる。
すなわち、本発明は、フォトレジスト等の感光性材料の露光において、通常の定常状態ではなく、過渡的応答状態における非線形特性を利用することによって、サブミクロンサイズの線幅の露光パターンを形成する方法である。この詳細の原理については後述する。
また、本発明は、基板の表面に形成された所定厚さの感光性材料の層の上にレーザビームのビーム強度とパルス幅を制御しながらレーザビームをパルス状に照射することにより該感光性材料の反応時定数を局所的に制御しながら露光を行うことを特徴とする露光方法を提供する。
本発明によれば、感光性材料の層にビーム強度とパルス幅を制御しながらレーザビームをパルス状に照射することにより感光性材料の反応時定数を局所的に制御する露光を行うので、露光ビームのエアリーディスクよりも細いサイズのホール及び/又はポストの描画をすることができる。これにより、安価で安定性のある個体レーザ(YAGレーザ等)やガスレーザ(Ar+ レーザ等)を露光光源として使用し、従来より使用されているg線用、i線用のフォトレジストを使用して、簡便にサブミクロンサイズの線幅、あるいはホール及び/又はポストの露光パターンを形成することができる。
本発明において、前記レーザビームが時間的、空間的にコヒーレントな光であることが好ましい。ビームが時間的、空間的にコヒーレントな光であれば、一層本発明の効果が得られる。
また、本発明は、基板の表面に所定厚さの感光性材料の層を形成し、該感光性材料の層の上にレーザビームのビーム強度とビーム走査速度を制御しながらレーザビームを照射することにより該感光性材料の反応時定数を局所的に制御する露光を行い、露光後の該感光性材料の層を現像処理し、該感光性材料の層に複数の微細な凹凸状パターンを形成することを特徴とする凹凸状パターンの形成方法を提供する。
本発明によれば、上記の露光方法を凹凸状パターンの形成に適用するので、高精度の凹凸状パターンを安価で安定的に製造することができる。
本発明において、前記凹凸状パターンの高さを0.1〜100μmとすることが好ましい。凹凸状パターンの高さをこのような範囲とすれば、反射防止機能等、要求される光学特性等を良好なものとでき、また、製造上からも便宜である。
また、本発明において、前記基板が円柱状体又は円筒状体であることが好ましい。基板が円柱状体又は円筒状体であれば、後述するような、凹凸状パターンを有する基板を使用して、更に凹凸状パターンを有する光学素子等を複製する際に、ロール加工が導入でき、生産性が大幅に向上し、コストダウン等の点でも多くの利点が得られる。
また、本発明は、上記の凹凸状パターンの形成方法を使用した光学素子の製造方法であって、前記基板の表面に形成された複数の凹凸状パターンを使用して、該複数の凹凸状パターンの表面形状を転写したスタンパを作製し、該スタンパを用いた成形加工により、樹脂材料の表面に前記複数の凹凸状パターンと略同一形状の複数の凹凸状パターンを複製することを特徴とする光学素子の製造方法を提供する。
本発明によれば、すでに製造した基板を使用して更に光学素子を複製する。すなわち、スタンパを作製し、このスタンパを用いた成形加工により、樹脂材料の表面に複数の微細な凹凸状パターンを形成する。これにより、生産性が大幅に向上し、コストダウン等の点でも多くの利点が得られる。
なお、スタンパとは、一般的には基型(マザー)の表面形状を転写した平板状体を意味するが、ここでは、円柱状体又は円筒状体等のように、曲面を有するものをも含む広い意味で使用するものとする。
以上説明したように、本発明の露光方法によれば、露光ビームのエアリーディスクよりも細い線幅、あるいはホール及び/又はポストで描画することができる。
また、本発明の凹凸状パターンの形成方法によれば、上記の露光方法を凹凸状パターンの形成に適用するので、高精度の凹凸状パターンを安価で安定的に製造することができる。
また、本発明の光学素子の製造方法によれば、スタンパを作製し、このスタンパを用いた成形加工により、樹脂材料の表面に複数の微細な凹凸状パターンを形成する。これにより、生産性が大幅に向上し、コストダウン等の点でも多くの利点が得られる。
以下、添付図面に従って、本発明に係る露光方法、凹凸状パターンの形成方法、及び光学素子の製造方法の好ましい実施の形態について詳説する。図1に、本発明に係る露光方法、凹凸状パターンの形成方法、及び光学素子の製造方法に使用される露光装置の概要を示す。
図1の露光装置10は、露光光源12と基板テーブル14とより構成される。このうち、露光光源12は、レーザ光源16とコリメータレンズ18より構成される。レーザ光源16より出射される所定径の光束の平行光であるレーザビームLは、コリメータレンズ18により集光されて、焦点距離において基板Wの表面に照射されるように調節可能となっている。
基板テーブル14は、ベース20とX軸移動ステージ22とY軸移動ステージ24等より構成される。X軸移動ステージ22はベース20に対して図示しない駆動手段によって、図示のx軸方向に相対移動可能となっている。また、Y軸移動ステージ24はX軸移動ステージ22に対して図示しない駆動手段によって、図示のy軸方向に相対移動可能となっている。
Y軸移動ステージ24の上面には、基板Wを吸着するための図示しないチャック(たとえば、静電チャック)が設けられており、基板Wを固定できるようになっている。
以上の構成になる露光装置10により、基板Wの表面に形成された感光性材料(フォトレジスト)が露光される。図2は、集光されたレーザビームにより基板Wの表面が描画(露光)される態様を示す概念図(平面図)である。図2において、コリメータレンズ18の焦点位置のレーザビームのスポットPが、図の破線のようにx軸方向及びy軸方向に走査され、基板Wの略全面を露光するように、X軸移動ステージ22及びY軸移動ステージ24が駆動される。
レーザ光源16としては、Nd:YAGレーザが採用できる。このレーザ光源16の第2高調波(SHG)の波長は、532nmである。レーザ光源16として、YAGレーザ以外に、たとえばアルゴンレーザが採用できる。なお、レーザ光源16としてビームが時間的、空間的にコヒーレントな光であれば、他の種類のレーザ光源でもよい。更に、短波長で安定なレーザ光源が入手できれば、このレーザ光源の使用が好ましい。
レーザ光源16による露光ビームの縦モード数は、3以下であることが好ましい。後述する自然遷移確率は、縦モード数に依存するからである。理想的には露光ビームの縦モード数が1(単一縦モード)のレーザ光を使用することが望ましい。
基板Wとしては、板ガラス、シリコンウェーハ、セラミックス基板等が採用できる。基板Wの表面には、感光性材料としてフォトレジストの層が形成される。フォトレジストとしては、公知の各種のものが採用できる。レーザ光源16としてYAGレーザや、アルゴンイオンレーザを使用する場合には、従来より使用されているg線用、i線用のフォトレジストが好ましく採用できる。
このようなフォトレジストとしては、たとえばアーチ社製のもの(製品名:OIR−907)が採用できる。基板Wの表面にフォトレジストの層を形成する方法としては、公知の各種方法、たとえば、スピンコート、ダイコート、ロールコート、ディップコート、スクリーン印刷等の各種塗布方法等が採用できる。
次に、本発明に係る露光方法の原理について説明する。本発明においては、フォトレジストの層にレーザ光源16よりビーム強度を制御しながらレーザビームを照射するとともに、基板テーブル14のx軸方向及びy軸方向の移動速度(走査速度)を制御する。
すなわち、フォトレジストの反応時定数を局所的に制御する露光を行う。これにより、露光ビームのエアリーディスクよりも細い線幅で描画することができる。言い換えると、フォトレジストの露光において、通常の定常状態ではなく、過渡的応答状態における非線形特性を利用することによって、サブミクロンサイズの線幅の露光パターンを形成する。
その際、既述のフォトレジストとレーザ光源16の特性として、以下の組み合わせが採用される。図3は、フォトレジストの各波長(λ)における吸光度(Abs)特性を示すグラフである。
図3において、フォトレジストの吸光度(Abs)が高い波長(たとえば、λ1)特性のレーザ光源が使用されるのが一般的であるが、本発明においては、フォトレジストの吸光度(Abs)が低い波長(たとえば、λ2)領域の特性のレーザ光源が使用されている。
すなわち、フォトレジストの吸光度(Abs)が、図3の矢印R1で示される、高い波長の共鳴領域(Resonance Region)ではなく、矢印R2で示される、吸光度(Abs)が低い波長の非共鳴領域(Non-Resonance Region)が使用される。
この点について、本発明者は鋭意検討した結果、感光性材料(フォトレジスト等)の光反応励起状態における吸収断面積が大きく、且つその状態からの誘導遷移確率が大きく、自然遷移確率が小さい条件下では、感光性材料(フォトレジスト等)の反応時定数τが感光性材料への入射フォトン数、すなわち光強度Iと光周波数に大きく依存するτ(I)の形であることを発見した。
図4は、フォトレジストのエネルギーダイアグラムを示す概念図である。図4において、ΦA は自然遷移確率であり、ΦB は誘導遷移確率であり、Kは熱速度定数であり、σは吸収(誘導)断面積である。
図4のエネルギーダイアグラムにおいて、各準位の原子数をそれぞれ、N(1)、N(2)、N(3)とする。本発明では、レベル3の準位を介してエネルギー移動が生じる一般の反応系について考える。本発明では、フォトレジストのコヒーレント相互作用を利用するため、フォトンモードでの反応に比べて、ヒートモードでの反応が十分に小さい物として考え、また、時間が充分に経過した時の反応ではなく、露光ビームを走査するときの露光現象を利用するため、フォトレジストの過渡的応答領域でのレート方程式を考える。
エネルギーダイアグラムにおいて、レベル2の寿命はレベル3の寿命に比べて充分に短く、結果的にN(3)の時間変化はN(2)の時間変化に比べて非常にゆっくりとしているものと考えられる。レベル3からエネルギー移動を経たフォトレジストの反応時定数は、上記フォトンモードでの反応時定数に比べて、オーダーが大きく異なると判断できるため、N(3)の時間変化にはフォトンモード反応のみが寄与すると解釈される。
そして、本発明に係る露光方法において、露光ビームの照射時間とビーム強度を制御することにより、上記の各パラメータを制御することができ、感光性材料の反応速度を意図的に操作できることを見出した。なお、露光ビームの照射時間の制御は、基板Wの走査速度の制御による。
そして、図4のフォトレジストのエネルギーダイアグラムにおける過渡的応答時のレート方程式を解くことによって、反応時定数τが以下の式1で表すことができることを見出した。
また、τ(I)は、感光性材料が光化学反応を開始するまでの時間遅れが光強度に依存する非線型定数であることを示す。なお、通常のインコヒーレント光による露光下では、感光性材料(フォトレジスト等)の反応時定数は一定である。
具体的な方法としては、たとえば、露光ビームの照射時間の制御のもとで、入射光強度Iの大きい領域では、フォトレジストの反応時定数τ(I大)を小さくして反応を速く進行させ、かつ、入射光強度Iの小さな領域では、フォトレジストの反応時定数τ(I小)を大きくして反応を遅く進行させることが可能となることにより、露光ビームの光強度分布内で、光強度の小さい領域での光化学反応を抑制することが可能になり、露光ビームのエアリーディスクよりも細い線幅で描画することが可能となる。
これにより、安価でシンプルな装置で、簡便にサブミクロンサイズの線幅の露光パターンを形成することができ、その結果、様様な微細凹凸状パターンを形成することができる。
なお、露光ビームの波長は、フォトレジストの最大吸収率の1/2以下となる領域の範囲で、吸収波長共鳴中心からシフトさせる方が好ましい。露光ビームの波長が吸収波長共鳴中心であると、式1中のレベル1での吸収断面積σ1 が大きくなり、また、式1中のレベル1からレベル2への誘導遷移確率Φ1Bも大きくなる。更に、式1中のレベル2からレベル3への熱速度定数(熱自然放出確率)K1 も大きくなるため、露光ビーム強度Iの依存性が小さくなってしまい、フォトレジストの反応時定数τの制御性が低下してしまうためである。
ただし、パルス露光のように、照射時間を非常に短くできる場合は、この限りではない(吸収波長共鳴中心帯でも可能)。
次に、図1の露光装置10を使用した露光、その後の現像処理等による微細な凹凸状パターンの形成について説明する。図5は、基板Wの処理工程を示す概略断面図である。
図5(A)において、基板Wの表面にフォトレジストが塗布され(既述の方法、たとえば、スピンコートによる)、フォトレジストの層30が形成される。そして、図示しないクリーンオーブンによりプレベーク処理される。
次いで、図5(B)において、露光光源12よりコリメータレンズ18により集光されたレーザビームLが、基板Wの表面に照射されるとともに、図2に平面図で示されるように、基板テーブル14上の基板Wが走査され、集光されたレーザビームにより基板Wの表面が描画(露光)される。図5(B)において、30A、30A…は、露光済みのフォトレジストの部分を示す。
露光が終了した後に、現像液による現像処理、次いで純水によるリンス処理、図示しないクリーンオーブンによるポストベーク処理を経て、基板Wの表面に図5(C)に示される断面形状の微細な凹凸状パターンが形成される。
このような断面形状の基板Wは、各種の光学素子、たとえば回折格子としてそのまま使用できる。また、このような基板Wは、表面に凹凸状パターンが規則的に配列されており、量子効果による光閉じ込め現象により、反射防止機能を有することとなる。したがって、光学素子等の用途に好適に使用できる。
また、このような断面形状の基板Wを原盤(マザー)として後述するような工程により、多数の同一断面形状の複製品を製造することもできる。
次に、本発明に係る凹凸状パターンの形成方法、及び光学素子の製造方法の他の実施形態について詳説する。本実施形態は、基板Wの表面に複数の微細な凹凸状パターンが形成された後に、この複数の微細な凹凸状パターンを使用して更に同様の凹凸状パターンを複製して光学素子を製造する方法である。
すなわち、完成した基板W(マザー)の表面に形成された複数の微細な凹凸状パターンを使用して、この複数の微細な凹凸状パターンを転写するためのスタンパを作製し、作製したスタンパを用いた成形加工により、樹脂材料の表面に複数の微細な凹凸状パターンと略同一形状の複数の微細な凹凸状パターンを形成し、多数個の光学素子を複製するという光学素子の製造方法である。
図6は、スタンパ46の作製工程を説明する概念図である。同図(A)において、完成した光学素子である基板Wの断面形状が示される。
先ず、図6(B)に示されるように、この基板Wの表面の全面に導電層40を形成する。この導電層40は、次工程において無電解メッキを行う際にコンタクト層となる。したがって、所定の抵抗値が得られる範囲において、膜厚は最小限度とするのが形状転写精度の点より好ましい。
導電層40の材質としては、銅、銀等が採用でき、導電層40の膜厚としては、たとえば0.1μmが採用でき、導電層40の形成方法としては、真空蒸着、スパッタリング、無電解メッキ等が採用できる。
次いで、図6(C)に示されるように、この基板W表面の導電層40上に無電解メッキによりニッケル層42を形成する電鋳を行う。ニッケル層42の厚さは、ハンドリングや次工程であるNiマザー44の転写の際に変形しない程度であればよい。なお、ここで無電解メッキにより形成されたニッケル層42は、完成した光学素子である基板Wの反転形状であり、反転マザーとなる。この反転マザー42は、基板Wより剥離される。
次いで、図6(D)に示されるように、この反転マザー42上に無電解メッキによりニッケル層44を形成する電鋳を行う。ニッケル層44の厚さは、ハンドリングや次工程であるスタンパー46の転写の際に変形しない程度であればよい。なお、ここで無電解メッキにより形成されたニッケル層44は、完成した光学素子である基板Wと同一形状であり、Niマザーとなる。電鋳の終了後に、反転マザー42とNiマザー44とは剥離される。
次いで、図6(E)に示されるように、このNiマザー44上に無電解メッキによりニッケル層46を形成する電鋳を行う。ニッケル層46はスタンパーとして使用される。ニッケル層46の厚さは、スタンパーとしての使用条件に耐え得る程度とすることが求められる。なお、ここで無電解メッキにより形成されたニッケル層46は、完成した光学素子である基板Wの反転形状である。
図6(E)に示されるように、本工程においては、1のNiマザー44より複数のスタンパー46を複製することができる。したがって、たとえば多段熱プレス加工により同時に多数枚の光学素子を製造する場合には便宜である。電鋳の終了後に、Niマザー44とニッケル層(スタンパー)46とは剥離される。
スタンパー46を用いた成形加工により、樹脂材料の表面に完成した光学素子(マザー)の凹凸状パターンと略同一形状の複数の微細な凹凸状パターンを形成することにより光学素子を複製する製造方法としては、公知の各種成型法が採用できる。たとえば、射出成型、熱プレス成型、UV硬化樹脂に転写成型、EB硬化樹脂に転写成型、溶液流延乾燥硬化成型等が採用できる。この各種成型方法において、平板状のスタンパーのみならず、ロール状のスタンパーを使用したロール成形(たとえば、溶液流延乾燥硬化成型)をも適用できる。
以上、本発明に係る露光方法、凹凸状パターンの形成方法、及び光学素子の製造方法の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
たとえば、本実施形態では、図2において、レーザビームのスポットPが、基板Wの略全面を露光するように、X軸移動ステージ22及びY軸移動ステージ24が駆動されているが、基板Wを移動させずに、たとえばポリゴンミラーにより、レーザビームを走査させて基板Wの略全面を露光する構成も採用できる。
また、光学素子の製造において、図6に示されるように、完成した光学素子である基板Wの反転形状のものがスタンパー46として採用されているが、完成した光学素子である基板Wと同一形状であるNiマザー44をスタンパーとして使用することもできる。この場合、成形加工により形成された樹脂材料の表面は基板Wの反転形状となる。このような樹脂材料であっても光学素子として有効に機能する場合もあるからである。
また、上記実施形態の例では、スタンパーを板状部材として説明したが、これをロール状部材とすることもできる。その際、ロール状スタンパーの製造方法としては、シート状のNiマザー44を円柱状体に巻き付けて、これより反転型を電鋳により形成する構成、シート状のNiマザー44を、微細な凹凸状パターンの面を内周側に位置するようにして円筒状に変形させ、これより反転型を電鋳により形成する構成も採用できる。
また、たとえば、基板Wを円柱状体又は円筒状体として、この円柱状体の表面又は円筒状体の内周面に複数の微細な凹凸状パターンを形成し、これをマザーとして電鋳によりロール状スタンパーを形成する構成も採用できる。
更に、基板Wを円柱状体又は円筒状体として、この円柱状体の表面又は円筒状体の内周面に複数の微細な凹凸状パターンを形成し、この微細な凹凸状パターンの表面に所定厚さの電鋳を施して所定硬度の表面とし、これをそのままロール状スタンパーとして使用する構成も採用できる。
また、図6に示されるような凹凸状パターンの断面形状の、山部分と谷部分の幅の比率にしても、図示のような1対1の比率以外にも、露光条件を制御することにより異ならせることができる。
更に、微細な凹凸状パターンを転写するためのスタンパの作製方法も本実施形態の例に限られない。図8は、スタンパの他の作製工程を説明する概念図であり、既述の図6に対応する。
図8(A)において、完成した光学素子である基板Wの断面形状が示される。ここでは、図6(A)の基板W表面の微細な凹凸状パターンに代えて、図5(C)に示される断面形状と同様のフォトレジスト30の微細な凹凸状パターンが使用される。
すなわち、基板Wの表面に形成されたフォトレジスト30の微細な凹凸状パターンを使用して、この複数の微細な凹凸状パターンを転写するためのスタンパを作製し、作製したスタンパを用いた成形加工により、樹脂材料の表面に複数の微細な凹凸状パターンと略同一形状の複数の微細な凹凸状パターンを形成し、複数個の光学素子を複製するという光学素子の製造方法である。
そして、図8(B)に示されるように、この基板Wの表面の全面に導電層40を形成する。この工程は、図6(B)と略同一である。導電層40は、次工程において無電解メッキを行う際にコンタクト層となる。
次いで、図8(C)に示されるように、この基板W表面の導電層40上に無電解メッキによりニッケル層42を形成する電鋳を行う。この工程は、図6(C)と略同一である。形成された反転マザー42は、基板Wより剥離される。
次いで、図8(D)に示されるように、この反転マザー42上に無電解メッキによりニッケル層44を形成する電鋳を行う。この工程は、図6(D)と略同一である。電鋳の終了後に、反転マザー42とNiマザー44とは剥離される。
次いで、図8(E)に示されるように、このNiマザー44上に無電解メッキによりニッケル層46を形成する電鋳を行う。この工程は、図6(E)と略同一である。ニッケル層46はスタンパーとして使用される。
図8(E)に示されるように、本工程においては、1のNiマザー44より複数のスタンパー46を複製することができる。スタンパー46を用いた成形加工は、図6の場合と同様である。
図1に示される露光装置10を使用して基板Wの露光を行い、基板Wの表面に複数の微細な凹凸状パターンを形成した。
露光光源12のレーザ光源16としてNd:YAGレーザ(SHG波長532nm)を使用した。露光に先立って、レーザ光源16より出射され、コリメータレンズ18により集光されたレーザビームの1次エアリーディスク3(図7参照)の径及び2次エアリーディスクの径を測定した。
測定のために、基板Wの表面にフォトレジストを塗布形成し、フォトレジストの推奨条件によりレーザビームを照射し、現像後に照射部分をAFMによりプロファイル測定した。更に、照射レーザビームを直接レーザビームプロファイラー(Gentec社製、商品名:Beam Map)でも測定した。
その結果、1次エアリーディスク3の径は、焦点位置において722nmであった。また、2次エアリーディスクの径は1.2μmであった。
基板Wとして、ソーダライムガラス(フロートガラス)で板厚5mmのものを使用した。基板Wを洗浄、乾燥させた後、フォトレジスト(g線ポジ型フォトレジスト)を基板Wの表面に、乾燥後の膜厚が2μmになるように塗布形成した。このフォトレジストとして、アーチ社製のもの(製品名:OIR−907)を使用した。
露光装置10による露光では、フォトレジストの反応時定数を局所的に制御しながら露光を行えるように、レーザビームのビーム強度と走査速度(実際は、基板Wの移動速度)を制御しながら露光を行った。具体的には、レーザビームのビーム強度I=535μWとし、基板Wのx軸方向の移動速度V=500μm/秒とした。基板Wのy軸方向のライン走査幅は1μmとした。
露光後に、現像液による現像処理、純水によるリンス処理、ポストベーク処理を行い、形成されたパターンを測定したところ、パターン線幅が約700nmで、パターン深さが約2μm(フォトレジストの膜厚相当)のパターンであった。
次に、比較例として、フォトレジストの反応時定数を局所的に制御しないで露光を行った。具体的には、レーザビームのビーム強度I=45μWとし、基板Wのx軸方向の移動速度V=200μm/秒とした。基板Wのy軸方向のライン走査幅は1μmとした。
露光後に、現像液による現像処理、純水によるリンス処理、ポストベーク処理を行い、形成されたパターンを測定したところ、パターン線幅が約750nmで、パターン深さが約100nmのパターンであった。
更に、他の比較例として、フォトレジストの反応時定数を局所的に制御しないで露光を行った。具体的には、レーザビームのビーム強度I=535μWとし、基板Wのx軸方向の移動速度V=100μm/秒とした。基板Wのy軸方向のライン走査幅は1μmとした。
露光後に、現像液による現像処理、純水によるリンス処理、ポストベーク処理を行い、形成されたパターンを測定したところ、全面露光となっており、パターンは形成されていなかった。
10…露光装置、12…露光光源、14…基板テーブル、16…レーザ光源、18…コリメータレンズ、20…ベース、22…X軸移動ステージ、24…Y軸移動ステージ、30…フォトレジストの層、40…導電層、42…ニッケル層(反転マザー)、44…ニッケル層(Niマザー)、46…ニッケル層(スタンパー)、W…試料(基板)
Claims (8)
- 基板の表面に形成された所定厚さの感光性材料の層の上にレーザビームのビーム強度とビーム走査速度を制御しながらレーザビームを照射することにより該感光性材料の反応時定数を局所的に制御しながら露光を行うことを特徴とする露光方法。
- 基板の表面に形成された所定厚さの感光性材料の層の上にレーザビームのビーム強度とパルス幅を制御しながらレーザビームをパルス状に照射することにより該感光性材料の反応時定数を局所的に制御しながら露光を行うことを特徴とする露光方法。
- 所望の露光幅は前記レーザビームのエアリーディスクの径より小さい請求項1又は2に記載の露光方法。
- 前記レーザビームが時間的、空間的にコヒーレントな光である請求項1、2又は3に記載の露光方法。
- 基板の表面に所定厚さの感光性材料の層を形成し、
該感光性材料の層の上にレーザビームのビーム強度とビーム走査速度を制御しながらレーザビームを照射することにより該感光性材料の反応時定数を局所的に制御する露光を行い、
露光後の該感光性材料の層を現像処理し、
該感光性材料の層に複数の微細な凹凸状パターンを形成することを特徴とする凹凸状パターンの形成方法。 - 前記凹凸状パターンの高さを0.1〜100μmとする請求項5に記載の凹凸状パターンの形成方法。
- 前記基板が円柱状体又は円筒状体である請求項5又は6に記載の凹凸状パターンの形成方法。
- 請求項5〜7のいずれか1項に記載の凹凸状パターンの形成方法を使用した光学素子の製造方法であって、
前記基板の表面に形成された複数の凹凸状パターンを使用して、該複数の凹凸状パターンの表面形状を転写したスタンパを作製し、
該スタンパを用いた成形加工により、樹脂材料の表面に前記複数の凹凸状パターンと略同一形状の複数の凹凸状パターンを複製することを特徴とする光学素子の製造方法。
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