JP2006219133A - 電気制御ブレーキシステム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】主制御装置300には、コンピュータを主体とする3つのCPU302,304,306が含まれる。3つのCPU302,304,306には、それぞれ、バッテリ312,314,316が接続される。また、3つのCPU302,304,306から各車輪のブレーキ10〜16に設けられた電動アクチュエータ制御装置44〜50に、それぞれ、要求制動力を表す情報が出力される。その結果、バッテリ312〜316の1つあるいは2つに異常が生じても、主制御装置300によるブレーキ作動力の制御が可能となる。
【選択図】図8
Description
上述の電気制御ブレーキシステムにおいて、設けられた電源は1つであり、その電源から電磁弁へ電気エネルギが供給されるようにされていた。そのため、電源の出力が低下した場合や電磁弁と電源とを接続する電気回路が外れてしまった場合等には、電磁弁が作動不能となってしまうという問題があった。
本項に記載の電気制御ブレーキシステムにおいては、3つ以上の電源のうちの少なくとも1つが正常であれば、残りの電源に異常が生じても、正常な電源に対応する制御部は作動可能であり、ブレーキの作動状態を制御することができる。
また、1つの制御部に対して複数の電源を設けることもできる。それら複数の電源の少なくとも1つが正常である限り、制御部は作動可能であり、ブレーキの作動状態を制御することができる。例えば、1つの制御部に複数の電源が並列に接続された電気回路を設ければ、複数の電源から独立に電気エネルギが供給可能となる。
前記ブレーキ制御装置が、コンピュータを主体とする3つ以上の制御部を含み、前記3つ以上の制御部の各々に対応して前記電源が1つずつ以上、合計3つ以上設けられたことを特徴とする電気制御ブレーキシステム(請求項1)。
(2)前記電源が、前記制御部のうちの1つに独立に電気エネルギを供給可能に複数設けられた(1)項に記載の電気制御ブレーキシステム。
(3)当該電気制御ブレーキシステムが、前後左右の各輪を含む車両に搭載され、前記ブレーキが、前記前後左右の各輪毎に設けられ、車輪とともに回転するブレーキ回転体にそれぞれ摩擦部材を押し付ける電動アクチュエータを含み、前記3つ以上の電源のうちの2つが、それぞれ、左前輪の電動アクチュエータと右前輪の電動アクチュエータとに、それぞれ、別個独立に接続され、前記3つ以上の電源から前記2つの電源を除いた電源のうちの1つが、前記左後輪の電動アクチュエータと右後輪の電動アクチュエータとの両方に接続された(1)項または(2)項に記載の電気制御ブレーキシステム(請求項2)。
左右前輪電動アクチュエータにそれぞれ電源が設けられている。したがって、少なくとも1つの電源が正常であれば、前輪ブレーキを作動させることができる。
前輪電動アクチュエータと後輪電動アクチュエータとには、それぞれ、別個の電源から電気エネルギが供給される。したがって、前輪電動アクチュエータと後輪電動アクチュエータとが共に作動不能となる事態が発生する恐れが、従来に比較して大幅に低減する。
(4)当該電気制御ブレーキシステムが、電動アクチュエータにより作動させられるパーキングブレーキを含み、前記左右後輪のブレーキの電動アクチュエータに接続された前記1つの電源に、さらに、前記パーキングブレーキ用の電動アクチュエータが接続された(3)項に記載の電気制御ブレーキシステム(請求項3)。
(5)前記ブレーキが、左,右後輪とともに回転するブレーキ回転体に摩擦部材をそれぞれ押し付ける後輪電動アクチュエータを2つ含み、前記電源が、前記2つの後輪電動アクチュエータの各々に対応して1つずつ設けられた(1)項または(2)項に記載の電気制御ブレーキシステム。
後輪電動アクチュエータの各々に対応して電源が設けられる。これら電源は、前輪電動アクチュエータへの電気エネルギを供給する前輪アクチュエータ用電源としても、前輪アクチュエータ用電源とは別の電源としてもよい。
(6)前記ブレーキが、左右前輪の回転をそれぞれ抑制する左,右前輪ブレーキと、左右後輪の回転をそれぞれ抑制する左,右後輪ブレーキとを含み、前記ブレーキ制御装置が、前記左,右前輪ブレーキの作動状態を制御する左,右前輪ブレーキ制御部と前記左,右後輪ブレーキの作動状態を制御する左,右後輪ブレーキ制御部とを含み、かつ、前記電源が、前記左,右前輪ブレーキ制御部各々に独立に電気エネルギを供給可能な左前輪制御用電源および右前輪制御用電源と、左,右後輪ブレーキ制御部の両方に電気エネルギを供給可能な後輪制御用共通電源とを含む(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の電気制御ブレーキシステム(請求項4)。
前輪ブレーキ制御部には、複数の電源から独立に電気エネルギが供給され得る。したがって、複数の電源のうちの少なくとも1つの電源が正常であれば、前輪ブレーキ制御部は前輪ブレーキを制御することができる。一部の電源に出力が低下する等の異常が生じても、前輪ブレーキ制御部を正常に作動させることができるのである。
車両の制動においては、前輪ブレーキの方が後輪ブレーキより重要である。そのため、前輪ブレーキ制御部に、複数の電源から独立に電気エネルギが供給され得るようにすることは、後輪ブレーキ制御部に、供給され得るようにすることより有効である。
ブレーキが電動アクチュエータを含み、ブレーキ制御装置が、電動アクチュエータへの供給電気エネルギを制御する電動アクチュエータ制御装置と、その電動アクチュエータ制御装置に供給電気エネルギの値や要求ブレーキ力を表す情報等を供給する主制御装置との両方を含む電気制御ブレーキシステムにおいては、前輪ブレーキ制御部,後輪ブレーキ制御部は、主制御装置に含まれるものであっても、電動アクチュエータ制御装置に含まれるものであってもよい。
(7)当該電気制御ブレーキシステムが、電動アクチュエータにより作動させられるパーキングブレーキを含み、前記後輪制御用共通電源に、さらに、前記パーキングブレーキ用の電動アクチュエータを制御するパーキングブレーキ制御部に接続された(6)項に記載の電気制御ブレーキシステム。
(8)前記ブレーキが、2つの第1,第2後輪ブレーキを含み、前記ブレーキ制御装置が、前記第1後輪ブレーキを制御する第1後輪ブレーキ制御部と前記第2後輪ブレーキを制御する第2後輪ブレーキ制御部とを含み、前記第1後輪ブレーキ制御部が前記複数の電源のうちの1つに接続され、第2後輪ブレーキ制御部が、前記複数の電源のうちの前記第1後輪ブレーキ制御部に接続された電源とは異なる電源に接続された(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の電気制御ブレーキシステム。
第1後輪ブレーキ制御部と第2後輪ブレーキ制御部とは、それぞれ別の電源に接続される。これら電源は、前記前輪ブレーキ制御部に接続された複数の電源のうちの2つである。
(9)前記3つ以上の制御部の各々が、互いに代替え可能なものである(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載の電気制御ブレーキシステム(請求項5)。
制御部の各々から出力された指令に基づいて供給電気エネルギが制御された結果、ブレーキの作動状態がほぼ同じになれば、制御部がほぼ同じものであると考えることができる。ブレーキの制御に対して、ほぼ同じ制御指令が出力されるものなのである。具体的には、複数の制御部の各々に、同じ情報が入力された場合に出力される情報がほぼ同じである場合には、ブレーキの作動状態がほぼ同じになる。制御部において実行されるプログラム(記憶されているプログラム)が同じである場合、ハード回路が同じである場合等が該当する。また、入力情報が同じでなくても、出力情報がほぼ同じになる場合もある。多種類の入力情報に基づいて出力された情報と、少種類の入力情報に基づく出力情報とがほぼ同じになる場合もあるのである。多種類の入力情報に基づけば、細やかなブレーキ制御が行われ、少種類の入力情報に基づけば概略的なブレーキ制御が行われることになるが、いずれのブレーキ制御が行われても、ブレーキの作動状態が大きく異なることはない。
(10)当該電気制御ブレーキシステムが、複数の車輪を含む車両に搭載され、前記ブレーキが、前記複数の車輪にそれぞれ設けられるとともに、各輪とともに回転するブレーキ回転体にそれぞれ摩擦部材を押し付ける電動アクチュエータをそれぞれ含み、前記ブレーキ制御装置が、(a)前記複数の車輪のブレーキに対応してそれぞれ設けられ、前記電動アクチュエータをそれぞれ制御する電動アクチュエータ制御装置と、(b)前記複数の車輪の各々に対する要求ブレーキ力に関連する要求ブレーキ力関連量を決定し、その要求ブレーキ力関連量を表す要求情報を、前記複数の電動アクチュエータ制御装置の各々に出力する前記制御部としての3つの主制御装置とを含む(1)項ないし(9)項のいずれか1つに記載の電気制御ブレーキシステム(請求項6)。
3つ以上の制御部すべてがそれぞれ別々の電源に接続されるとは限らず、3つ以上の制御部のうちの2つ以上の制御部が共通の電源に接続されてもよい。
(11)前記電動アクチュエータ制御装置の各々が、前記3つの主制御装置の各々から供給された要求ブレーキ関連量に基づき、多数決により妥当であると決まる要求値に対応する実ブレーキ力が得られるように、それに対応する前記電動アクチュエータを制御するアクチュエータ制御部を含む(10)項に記載の電気制御ブレーキシステム(請求項7)。
(12)前記3つの主制御装置の各々が、前記複数の電動アクチュエータ制御装置の各々の異常を検出する異常検出部を含み、前記ブレーキ制御装置が、前記3つの主制御装置のうちの2つにおいて異常であるとされた場合に、その電動アクチュエータ制御装置が異常であるとする回路を含む(10)項または(11)項に記載の電気制御ブレーキシステム(請求項8)。
(13)前記ブレーキ制御装置が、前記3つ以上の制御部のうちの少なくとも1つに異常が生じたことを検出する制御部異常検出装置を含む(1)項ないし(12)項のいずれか1つに記載の電気制御ブレーキシステム。
制御部異常検出装置は、(1)項ないし(12)項に記載の制御部とは別個に設けられた異常検出のためのコンピュータを含むものであっても、(1)項ないし(12)項に記載の制御部のうちの少なくとも1つに含まれるものであってもよい。(1)項ないし(12)項の制御部各々を、互いに異常か否かを監視するもの、すなわち、相互監視機能付きの制御部とすれば、コンピュータの数を増やす必要がなくなる。
複数の制御部が互いに実質的に同じものであれば、これら制御部各々から出力される出力情報はほぼ同じになるはずである。そのため、これらの出力情報がほぼ同じであれば、各制御部は正常であるとすることができる。それに対して、これらの出力情報が大きく異なる場合には、少なくとも1つの制御部が異常であるとすることができる。また、出力情報が互いに異なる制御部のうち出力情報が適正範囲外の大きさであるものを、異常であるとすることができる。さらに、入力情報に基づいて異常を検出することもできる。例えば、複数の制御部が同じ検出装置からの検出信号に基づいて入力情報を取得する場合には、取得された入力情報の値に基づいて制御部が正常であるか否かを検出することができるのである。複数の制御部が互いに異なるものである場合には、それぞれの出力情報が予め定められた関係を保つか否かに基づいて異常を検出することができる。
また、制御部が3つ以上含まれる場合には、多数決の原理あるいは2つの出力情報の複数の比較結果等に基づいて、異常な制御部を特定することが可能であるが、制御部が2つの場合には、いずれの制御部が異常であるかを特定することが困難な場合がある。2つの制御部各々からの出力情報を比較した結果、いずれも適正範囲内にあり、かつ、これらの差が大きい場合が一例である。この場合には、例えば、主制御部と副制御部とを予め決めておき、副制御部が異常であるとされるようにすることもできる。
(14)前記制御部が複数のCPUを含み、前記制御部異常検出装置が、これら複数のCPUの少なくとも1つに異常が生じたことを検出するCPU異常検出装置を含む(13)項に記載の電気制御ブレーキシステム。
1つの制御部に含まれる複数のCPUのうちの少なくとも1つに異常が生じたことがCPU異常検出装置によって検出される。CPU異常検出装置は、前項に関して述べたように、これらCPUに含まれるものであっても、異常検出のための別個のコンピュータを含むものであってもよい。制御部が2つのCPUを含む場合には、2つのCPUのうちの一方をメインCPU,他方をサブCPUとすることができる。
ブレーキ制御装置が、制御部をn個含み、これら制御部の各々がm個ずつのCPUを含む場合には、ブレーキ制御装置には、合計n×m個のCPUが含まれることになる。これらn×m個のCPUをそれぞれ相互監視機能を有するものとし、これら相互監視結果に基づけば、n個の制御部各々が異常であるか否かを検出することができる。この場合、相互監視結果を、すべて同等に扱うこともできるが、優先順位に従って扱うこともできる。また、n×m個のCPUにおける2つずつのすべての組において、相互監視が行われるようにしても、選択的に決められた組においてのみ行われるようにしてもよい。
(15)前記ブレーキ制御装置が、前記複数の制御部のうちの予め定められた条件を満たすものが正常である場合に、当該電気制御ブレーキシステムの制御を継続し、正常でない場合に、当該電気制御ブレーキシステムの制御を停止する一部異常時制御継続装置を含む(1)項ないし(14)項のいずれか1つに記載の電気制御ブレーキシステム。
制御部が複数設けられているため、一部の制御部が異常となってもブレーキの作動状態の制御を継続して行うことができるが、予め定められた条件を満たすだけの制御部が正常でなくなった場合には、制御を停止する方がよく、あるいは停止せざるを得ない。「予め定められた条件」は、例えば、単純に正常な制御部の数とすることも、互いに代替可能である複数の制御部の1つあるいは設定数以上のものが正常であること等とすることもできる。互いに代替可能である複数の制御部のすべてが異常になれば、制御を停止せざるを得ないが、1つのみが正常であっても、制御を停止させる方がよい場合もある。1つが正常であれば制御を継続させることは可能なのであるが、フェールセーフ等の観点から制御を停止させる方がよい場合もあるのである。一部異常時制御継続装置は、例えば、後述するように、電源スイッチ装置を切断状態に切り換えたり、電源スイッチ装置を切断状態に切り換えたりするスイッチ制御装置を含むものとすることができる。ブレーキ制御装置や電気アクチュエータへ電気エネルギが供給されないようにすれば、当該電気制御ブレーキシステムの作動が中止させられる。
また、制御装置対応スイッチ装置を、上述の電源スイッチ装置と直列に電源と電動アクチュエータとの間あるいは電源とブレーキ制御装置との間に設け、複数の制御部のうちの予め定められた条件を満たすものが正常である場合には接続状態に保ち、正常でない場合には、切断状態に切り換えるスイッチ制御装置を含むものとすることもできる。
前記電源と前記ブレーキ制御装置との間に、ブレーキ操作部材の制動操作に伴って、切断状態から接続状態に切り換えられるスイッチ装置を設けたことを特徴とする電気制御ブレーキシステム。
電源とブレーキ制御装置との間に設けられたスイッチ装置は、ブレーキ操作部材の制動操作に伴って切断状態から接続状態に切り換えられ、それによって、ブレーキ制御装置が作動させられる。電気制御ブレーキシステムが作動させられるのである。したがって、従来の電気制御ブレーキシステムにおけるように、イグニッションスイッチのOFF状態でブレーキ操作部材が制動操作された場合には、マニュアルブレーキが作動するようにすることが不可欠ではなくなり、また、ブレーキ操作部材の制動操作状態におけるイグニッションスイッチの操作に伴ってブレーキ力が変化することを回避することができる。このスイッチ装置は、後述するアクチュエータ個別スイッチ装置,制御装置対応スイッチ装置に対して、電源スイッチ装置と考えることもできる。
なお、ブレーキ制御装置は、電気エネルギの制御によりブレーキの作動状態を制御するものであるが、作動状態は、電気エネルギ量の増減制御により制御されてもよく、電気エネルギが供給される状態と供給されない状態との切換えにより制御(ON─OFF制御)されてもよい。電気エネルギ量の制御には、電気エネルギ量を0とする制御、すなわち、電気エネルギの供給を停止させる制御も含まれる。
本項に記載の電気制御ブレーキシステムには、(1)項ないし(15)項に記載の技術的特徴を採用することができる。
(17)前記ブレーキが、車輪とともに回転するブレーキ回転体に摩擦部材を押し付ける電動モータを含み、前記ブレーキ制御装置が、その電動モータに電源から供給される電気エネルギを制御する電動モータ制御装置を含む(16)項に記載の電気制御ブレーキシステム。
本項に係る電気制御ブレーキシステムは、本発明の望ましい一実施態様である。この電気制御ブレーキシステムは、電動ブレーキシステムと考えることができる。ブレーキが液圧で作動するものである場合には、電気制御ブレーキシステムが不作動の場合に、マニュアルブレーキが作動するようにすること、あるいはマニュアルブレーキが作動する状態と電気制御ブレーキが作動する状態との切換えが比較的容易であるが、電動ブレーキシステムでは比較的面倒であるため、本発明は電動ブレーキシステムに適用して特に効果的なものである。
(18)前記ブレーキが、車輪とともに回転するブレーキ回転体に摩擦部材を押し付ける電動アクチュエータを含み、当該電気制御ブレーキシステムが、電源と電動アクチュエータとの間に設けられ、前記ブレーキ操作部材の制動操作に伴って切断状態から接続状態に切り換えられるスイッチ装置を含む(16)項または(17)項に記載の電気制御ブレーキシステム。
本項に記載のスイッチ装置は、前記電源スイッチ装置と共通のものとしても、別個のものとしてもよい。共通のものとする場合には、電源に対して電動モータ制御装置と電動アクチュエータとが並列に設けられた電気回路において、これらの接続部より電源側にスイッチ装置が設けられることになる。
(19)前記スイッチ装置が、直列に配設された複数のスイッチを含むことを特徴とする(16)項ないし(18)項のいずれか1つに記載の電気制御ブレーキシステム。
複数のスイッチが直列に設けられているため、少なくとも1つのスイッチが接続状態から切断状態に切り換えられれば、切断状態に切り換え不能なスイッチがあっても、スイッチ装置を切断状態に切り換えることができる。そのため、ブレーキ制御装置や電動アクチュエータに、無用な電気エネルギが供給され続けることを回避することができる。
本項に記載の技術的特徴は、ブレーキ操作部材の制動操作に伴って切断状態から接続状態に切り換えられるスイッチ装置のみならず、イグニッションスイッチのON操作に伴って切断状態から接続状態に切り換えられるスイッチ装置に採用したり、後述する電源とブレーキ制御装置との間の電源スイッチ装置や、電源と電動アクチュエータとの間の電源スイッチ装置のみならず、複数の電動モータ各々に対応して設けられるアクチュエータ個別スイッチ装置,ブレーキ制御装置が正常であるか異常であるかに基づいて切り換えられる制御装置対応スイッチ装置等に採用したりすることができ、いずれの場合においても、同様の効果を享受することができる。
(20)当該電気制御ブレーキシステムが、複数の車輪を含む車両に搭載された場合において、前記ブレーキが、複数の車輪毎に設けられ、車輪とともに回転するブレーキ回転体に摩擦部材をそれぞれ押し付ける電動モータを複数含み、当該電気制御ブレーキシステムが、前記複数の電動モータ各々と前記電源との間に、それぞれ、これらの間を接続状態と切断状態とに切り換え可能なアクチュエータ個別スイッチ装置を複数含む(1)項ないし(19)項のいずれか1つに記載の電気制御ブレーキシステム。
アクチュエータ個別スイッチ装置が電動モータ毎に設けられているため、電動モータ毎に、電源との間を接続状態にしたり切断状態にしたりすることができる。例えば、アクチュエータ個別スイッチ装置は、電動モータに異常が生じた場合に切断状態に切り換えられるようにすることができる。異常な電動モータに対応するアクチュエータ個別スイッチ装置を切断状態とし、正常な電動モータに対応するアクチュエータ個別スイッチ装置を接続状態に保てば、異常な電動モータのみを非作動状態とし、正常な電動モータを作動状態に保つことができ、正常な電動モータによりブレーキを作動させることができる。一部の電動モータの異常に起因して、すべての電動モータを非作動状態にする必要がなくなるのである。アクチュエータ個別スイッチ装置は、電動モータへの供給電気エネルギを制御する電動モータ制御装置や駆動回路に異常が生じた場合に切断状態に切り換えられるようにすることもできる。
なお、複数の電動モータが電源に対して互いに並列に接続されている場合には、アクチュエータ個別スイッチ装置は、各々の電動モータに対応する電動モータ個別回路に設けられることになる。
(21)前記アクチュエータ個別スイッチ装置が、直列に設けられた2つのスイッチを含み、一方のスイッチが、当該アクチュエータ個別スイッチ装置に対応する電動モータの異常時に切断状態に切り換えられ、他方のスイッチが、前記電動モータを制御する電動モータ制御装置の異常時に切断状態に切り換えられる(20)項に記載の電気制御ブレーキシステム。
アクチュエータ個別スイッチ装置は、電動モータと電動モータ制御装置とのいずれか一方の異常時に切断状態に切り換えられることになる。
(22)前記ブレーキが、車輪とともに回転するブレーキ回転体に摩擦部材を押し付ける電動アクチュエータを含み、前記ブレーキ制御装置が、前記車輪の要求ブレーキ力に関連する要求ブレーキ力関連量を決定し、その要求ブレーキ力関連量を表す要求情報を出力する主制御装置と、その主制御装置から出力された要求情報に基づいて前記電動アクチュエータを制御するとともに、実際に得られたブレーキ力に関連する実ブレーキ力関連量を表す実情報を出力する電動アクチュエータ制御装置とを含む(1)項ないし(21)項のいずれか1つに記載の電気制御ブレーキシステム。
主制御装置と電動アクチュエータ制御装置との間においては、通信が行われる。主制御装置から電動アクチュエータ制御装置へは要求ブレーキ力関連量を表す要求情報が出力され、電動アクチュエータ制御装置から主制御装置へは実ブレーキ力関連量を表す実情報が出力される。要求ブレーキ力関連量は、要求ブレーキ力自体としたり、電動アクチュエータへの供給電気エネルギ量としたりすることができる。実ブレーキ力関連量としては、実際に得られたブレーキ力、摩擦パッドがブレーキ回転体を押す押す押圧力、電動アクチュエータに加わる負荷を表す量(実際に流れる電流量)等が該当する。
(23)前記電動アクチュエータ制御装置を、前記主制御装置と別体のものとするとともに、ばね上の電動アクチュエータ近傍部に設け、かつ、前記主制御装置と電動アクチュエータ制御装置との間の通信を、CAN(Car Area Network) を利用して行われるようにした(22)項に記載の電気制御ブレーキシステム。
主制御装置と電動アクチュエータ制御装置とを一体的に設ければ、これらの間の通信を速やかに、確実に行うことができる。しかし、これらを一体的に構成すると、記憶容量を大きくしたり、入出力ポートを大きくしたりしなければならなず、ブレーキ制御装置のコストが高くなる。
主制御装置と電動アクチュエータ制御装置とを別体とし、遠く離して設けると、これらの間の通信に長時間を要し、制御遅れが生じる。また、電動アクチュエータが電動アクチュエータ制御装置からの指令に基づいて制御されることを考慮すると、これらを一体的に設けることが望ましいが、ばね下に設けられる電動アクチュエータに合わせて電動アクチュエータ制御装置もばね下に設けると電動アクチュエータ制御装置に加わる振動等が大きく望ましくない。そこで、電動アクチュエータ制御装置をばね上の、電動アクチュエータ近傍部に設け、電動アクチュエータ制御装置と主制御装置との間の通信がCANを利用して行われるようにしたのである。CANを利用して通信を行えば、多重通信が可能となるため、短時間に多くの情報を送信することが可能となる。その結果、主制御装置と電動アクチュエータ制御装置との間の通信を速やかに行うことが可能となり、制御遅れが生じることを回避することができる。また、これらは両方ともばね上に設けられているため、これらの間の通信においてノイズが問題となることは少ない。さらに、電動アクチュエータ制御装置がばね上に設けられるため、大きな振動が加えられることを回避することができる。なお、CANはLAN(Local Area Network) の一種である。
(24)前記主制御装置が、前記電動アクチュエータ制御装置から供給された実情報に基づいて前記電動アクチュエータ制御装置の異常を検出する異常検出装置を含む(22)項または(23)項のいずれか1つに記載の電気制御ブレーキシステム。
実情報に対応する実ブレーキ力関連量が、適正範囲外の大きさである場合には、その実情報を出力した電動アクチュエータ制御装置は異常であるとすることができる。また、主制御装置において決定された要求ブレーキ力関連量と実ブレーキ力関連量とに基づいて異常を検出することもできる。これらの不一致の程度が設定程度以上である場合、例えば、要求ブレーキ力と実ブレーキ力との差が設定差以上である場合には、異常であるとすることができるのである。異常検出装置は、前述のアクチュエータ個別スイッチ装置とともに設けると有効である。
(25)前記ブレーキが、車輪とともに回転するブレーキ回転体にそれぞれ摩擦部材を押し付ける電動アクチュエータを含み、当該電気制御ブレーキシステムが、前記電源に対して前記電動アクチュエータと前記ブレーキ制御装置とが互いに並列に接続された電気回路を含み、かつ、その電気回路の電源と電動アクチュエータとを接続する部分と電源とブレーキ制御装置とを接続する部分との共通部分に前記スイッチ装置が設けられた(1)項ないし(24)項のいずれか1つに記載の電気制御ブレーキシステム。
(26)当該電気制御ブレーキシステムが、前記電気回路の、前記電動アクチュエータに専用部分である電動アクチュエータ専用回路の途中に設けられ、前記ブレーキ制御装置の異常時に切断状態に切り換えられる制御装置対応スイッチ装置を含む(25)項に記載の電気制御ブレーキシステム。
本項に記載の電気制御ブレーキシステムにおいては、電源,電源スイッチ装置,制御装置対応スイッチ装置,電動アクチュエータが直列に配設されることになる。電源スイッチ装置が接続状態にあっても、制御装置対応スイッチ装置が切断状態にあれば、電源から電動アクチュエータへ電気エネルギが供給されることはない。
電動アクチュエータが複数設けられている場合には、電源に対して、複数の電動アクチュエータを含む電動アクチュエータ群と前記ブレーキ制御装置とが互いに並列に設けられ、その電動アクチュエータ群と電源とを接続する電動アクチュエータ専用回路において、各電動アクチュエータが電動アクチュエータ個別回路によって互いに並列に接続されることになる。この制御装置対応スイッチ装置は、電動アクチュエータ専用回路の電動アクチュエータ個別回路への分岐点より電源側に設けられ、アクチュエータ個別スイッチ装置が、電動アクチュエータ個別回路に設けられることになる。
(27)前記制御装置対応スイッチ装置が、互いに並列に配設された複数のスイッチを含むとともに、前記ブレーキ制御装置が、前記複数のスイッチの各々に対応するコンピュータを主体とする複数の制御部と、それら複数の制御部のうちの1つが異常である場合に、前記複数のスイッチのうちで異常な制御部に対応するものを切断状態に切り換えるスイッチ制御装置とを含む(26)項に記載の電気制御ブレーキシステム。
例えば、制御装置対応スイッチ装置に含まれるスイッチも、ブレーキ制御装置に含まれる制御部も、ともに2個である場合に、一方の制御部の異常時に一方のスイッチが切断状態に切り換えられ、他方の制御部の異常時に他方のスイッチが切断状態に切り換えられるようにする。制御装置対応スイッチ装置は、少なくとも一つの制御部が正常である間接続状態に保たれ、すべての制御部が異常になると切断状態に切り換えられる。
(28)当該電気制御ブレーキシステムが、複数の電源を備え、そのうちの1つの電源を含む前記電気回路において、前記スイッチ装置が、前記電気回路の前記共通部分に設けられた主スイッチと、その主スイッチを、励磁に応じて切断状態から接続状態に切り換える複数のコイルと、それら複数のコイルを前記複数の電源にそれぞれ接続する複数のコイル接続回路と、それら複数のコイル接続回路にそれぞれ設けられ、前記ブレーキ操作部材の制動操作に伴って切断状態から接続状態に切り換えられる複数のブレーキスイッチとを含む(25)項ないし(27)項のいずれか1つに記載の電気制御ブレーキシステム。
主スイッチは、複数のコイルのうちの少なくとも1つが励磁されると、接続状態に切り換えられる。また、複数のコイル各々は、互いに異なる電源に接続されている。したがって、複数の電源のうちの少なくとも1つが正常であれば、主スイッチを接続状態に切り換えることができる。主スイッチが接続状態に切り換え不能になる確率を小さくすることができるのである。
(29)当該電気制御ブレーキシステムが、複数の電源を含むとともに、これら複数の電源のうちの1つと、前記電動アクチュエータと、前記ブレーキ制御装置とを含む電気回路を複数含み、かつ、前記スイッチ装置が、前記複数の電気回路各々に設けられた主スイッチと、その主スイッチに対応して設けられ、励磁により主スイッチを切断状態から接続状態に切り換えるコイルと、そのコイルと当該電気回路に含まれる電源とをそれぞれ接続するコイル接続回路と、そのコイル接続回路に設けられ、前記ブレーキ操作部材の制動操作に伴って切断状態から接続状態に切り換えられるブレーキスイッチとを含む(25)項ないし(28)項のいずれか1つに記載の電気制御ブレーキシステム。
本項に記載の電気制御ブレーキシステムにおいては、電源を異にする複数の電気回路が備えられている。一の電気回路に含まれる電源に出力低下等の異常が生じた場合には、ブレーキ操作部材が制動操作されても、その電源に対応する主スイッチが接続状態に切り換えられることはないが、他の電気回路に含まれる電源が正常であれば、その電源が正常である電気回路の主スイッチは接続状態に切り換えられる。
(30)前記ブレーキ制御装置が、前記ブレーキ操作部材の制動操作に伴って作動させられる機械的ブレーキの作動をブレーキ操作部材に連携させる連携状態と、ブレーキ操作部材から分離する分離状態とに切り換え可能な切換装置と、その切換装置を、当該電気制御ブレーキシステムの異常時に、分離状態から連携状態に切り換える切換装置制御装置とを含む(1)項ないし(29)項のいずれか1つに記載の電気制御ブレーキシステム。
切換装置が分離状態にある間は、ブレーキ操作部材が制動操作されても機械的ブレーキは作動させられないが、連携状態にある間に制動操作されれば、機械的ブレーキが作動させられ、車輪の回転が抑制される。切換装置が、電源に異常が生じた場合、ブレーキ制御装置に異常が生じた場合等に分離状態から連携状態に切り換えられれば、異常時に正常時と同じブレーキ操作部材を操作することによってブレーキを作動させることができる。
本項の技術的特徴は、(1)項ないし(29)項に記載の特徴からも独立に採用可能である。
(31)前輪および後輪を含む車両において、前記前輪および後輪の回転を抑制するブレーキシステムであって、
前記前輪とともに回転するブレーキ回転体に摩擦部材を電動アクチュエータの駆動により押し付けることにより、前輪の回転を抑制する前輪電動ブレーキと、 前記前輪電動アクチュエータに独立に電気エネルギを供給可能な複数の電源と、
これら複数の電源の少なくとも1つから前記前輪電動アクチュエータに供給される電気エネルギを制御することによって、前記前輪電動ブレーキの作動状態を制御する電動ブレーキ制御装置と
を含むことを特徴とする電動ブレーキシステム。
(32)複数の車輪を含む車両において、複数の車輪各々の回転を、電動アクチュエータの駆動により抑制する電動ブレーキシステムに、
前記複数の電動アクチュエータの各々と1つの電源との間に、これらの間をそれぞれ接続状態と切断状態とに切り換え可能なアクチュエータ個別スイッチ装置をそれぞれ設けたことを特徴とする電動ブレーキシステム。
電気制御ブレーキシステムは、図1〜3に示すように、左右前・後輪各々に設けられた電動ブレーキ10,12,14,16と、これらブレーキの作動状態を制御するブレーキ制御装置18とを備えている。前輪側に設けられた電動ブレーキ10,12はディスクブレーキであり、左右前輪と共に回転するブレーキディスクに摩擦パッドが電動モータ22,24の駆動により押し付けられることにより回転が抑制される。後輪側に設けられた電動ブレーキ14,16はドラムブレーキであり、左右後輪と共に回転するドラムにシューに設けられたブレーキライニングが電動モータ30,32の駆動により押し付けられることにより回転が抑制される。左右後輪には、電動パーキングブレーキ33,34も設けられている。電動パーキングブレーキ33,34は、電動パーキングブレーキスイッチ35の操作によって駆動される電動モータ36によって作動させられるが、電気系統の異常時等には、ブレーキペダル38の操作に伴って作動させられる。
バッテリ64を含む電気回路73においては、バッテリ64に対して、制御装置群〔第1制御装置68,前輪用の電動モータ制御装置44,46、駆動回路54,56、左後輪用の電動モータ制御装置48,駆動回路58および電動パーキングブレーキ用の電動モータ制御装置52,駆動回路62〕と、12ボルト用電動モータ群〔左後輪用の電動モータ30,電動パーキングブレーキ用の電動モータ36〕と、36ボルト用電動モータ群〔前輪用の電動モータ22,24〕とが互いに並列に接続される。また、それぞれ制御装置群,12ボルト用電動モータ群,36ボルト用電動モータ群において、それぞれが並列に接続されている。したがって、第1制御装置68,前輪用電動モータ制御装置44,・・・電動モータ30,電動モータ22,24がバッテリ64に対してそれぞれ並列に接続されることになる。バッテリ64と36ボルト用電動モータ群との間には、DC/DCコンバータ75が設けられ、バッテリ64の電気エネルギが36ボルトに昇圧されて供給される。なお、上述の各制御装置には、バッテリ64の電気エネルギが電源回路75aを経て供給される。電源回路75aにおいて、CPU等に供給される電圧が予め定められた設定範囲内となるように調節される。また、電動モータには駆動部75bを経て供給される。駆動部75bは1つ以上のトランジスタ等を含むのであり、トランジスタの制御により制御された電流が供給される。
他のモータ個別スイッチ装置141,142,143,144についても同様に、それぞれリレー150b,152b、リレー150c,152c、リレー150d,152d、リレー150e,152eを含むものであり、対応する電動モータ制御装置46,48,50,52と電動モータ24,30,32,36との少なくとも一方に異常が生じた場合にOFF状態に切り換えられる。
また、OR回路186には、第2メインCPU170,第2サブCPU172,AND回路190が接続され、第2サブCPU172が異常である場合、第2メインCPU170が異常である場合、第2メイン,サブのCPU170,172の両方が異常である場合の3つのうちの少なくとも1つが満たされた場合に、前述のリレー110,114,130,134がOFF状態に切り換えられる。
これらの間においては、CAN(Car Area Network )によって通信が行われる。そのため、多くの情報を短時間に多量に送信することが可能となる。CAN通信においては、一方向に送信される複数の情報を重ねて送信したり、両方向に送信される情報を一度に送信したりすることができるのである。
電動モータ24には、ステータに対するロータの相対位置をホール素子を使用して検出するエンコーダ200,ステータのコイルに流れる電流を検出する電流センサ202,ステータのコイルの温度を検出する温度センサ204,モータの駆動に伴って摩擦パッドへ加えられる押圧力を検出する押圧力センサ206等が設けられている。押圧力センサ206は、ロータの回転に伴って前進・後退させられるロッドに加えられる押圧力(摩擦パッドに加えられる加圧力)を検出するものである。エンコーダ200によって検出された相対位置に基づいて供給電流が制御される。
このように、モータ個別スイッチ装置は、電動モータの都合により、電動モータ毎に切り換えられる。そのため、異常な電動モータのみが非作動状態とされるが、正常な電動モータは作動状態に保たれる。正常な電動モータによりブレーキを作動させることが可能となり、一部の電動モータに異常が生じたからといってすべての電動モータを非作動状態とする必要がなく、ブレーキを正常に作動させることができる。
他の電動モータ制御装置44,48,50,52についても同様である。
また、前輪用に設けられた電動モータ22,24が36ボルト用のものであり、後輪用に設けられた電動モータ30,32が12ボルト用のものである。その結果、前輪の方が後輪より大きな制動力を得ることができる。
そこで、電動モータ制御装置を、ばね上で、かつ、駆動回路に近い位置に設けたのである。この場合、電動モータ制御装置と主制御装置との間の距離は長くなるが、両方ともばね上に位置することになるため、ノイズがそれほど大きくなることはない。また、これらの間の通信が、CANを利用して行われるため、高速に多量の情報を送信することが可能となり、距離が長くても通信に要する時間がそれほど長くなることはないのである。電動モータ制御装置に大きな振動が加わることを回避し得る。なお、駆動回路もばね上に設けることもできる。
このストロークシミュレータ230,緊急ブレーキ装置250については、本願出願人によって先に出願された特願平10─319137号の明細書に詳述されているため、詳細な説明は省略する。
本実施例における電気制御ブレーキシステムにおいては、主制御装置300が、3つのCPU302,304,306、それぞれに対応するEEPROM308、A/D変換部309等を含んでいる。また、CPU302,304,306の各々には、図9に示すように、それぞれ、バッテリ312,314,316が接続されている。バッテリ312,314,316の各々にはオルタネータ317によって電気エネルギが蓄えられる。バッテリ312,314は、12ボルトの電気エネルギと36ボルトの電気エネルギとの両方を蓄え得るものであり、バッテリ316は、12ボルトの電気エネルギを蓄えるものである。バッテリ312,314においては、一方の端子から36ボルトの電気エネルギが供給され、中間端子から12ボルトの電気エネルギが供給されるようにされている。
本実施形態においては、イグニッションスイッチ332aがバッテリ312に接続され、イグニッションスイッチ332bがバッテリ314に接続され、ブレーキスイッチ334がバッテリ316に接続されている。そのため、バッテリ312,314のいずれか一方が正常である場合には、運転者のイグニッションスイッチのON操作に伴って、電源スイッチ装置330をON状態に切り換えることができる。同様に、バッテリ316が正常であれば、ブレーキペダル38の制動操作に伴ってON状態に切り換えることができる。
各電動モータ制御装置からは、上記実施形態における場合と同様に、実制動力値が供給される。これにより、各電動モータ制御装置が正常であるか否かが各CPU302,304,306の各々において判定される。異常である場合には、異常信号がAND回路340,342,344のうちの2つに出力される。上記実施形態における場合と同様に、上記AND回路340,342,344は、それぞれ、電動モータ制御装置44,46,48,50,52に対応して、5つずつ(5系統)設けられている(AND回路340a,340b,340c,340d,340e、AND回路342a,342b,342c,342d,342e、AND回路344a,344b,344c,344d,344e)が、図には代表して1つだけ記載した。なお、OR回路346についても同様に5系統ずつ設けられている(346a,346b,346c,346d,346e)。
例えば、電動モータ制御装置44が異常であると第1,第2CPU302,304で検出された場合には、AND回路340a,342aに異常信号が供給されるとともに、AND回路340a,344aに異常信号が供給される。その結果、AND回路340aからOR回路346aに異常信号が供給され、リレー150aがOFF状態に切り換えられる。
本電気制御ブレーキシステムにおいては、通信がLAN(Local Area Network )によって行われるが、これは、上記実施形態におけるCANと同じ形態である。なお、図10においては、電動パーキングブレーキについての電動モータ制御装置52を省略したが、他の電動モータ制御装置と同様に通信が行われる。
このように、本実施形態においては、CPUが3つ設けられているため、多数決の原理により、異常か否かの判定を容易に行うことができる。また、CPUがそれぞれバッテリに接続されているため、すべてのバッテリが異常でない限り、ブレーキを制御することができる。
Claims (8)
- 車輪の回転を抑制するブレーキと、電源と、その電源から供給される電気エネルギを制御することによって前記ブレーキの作動状態を制御するブレーキ制御装置とを含む電気制御ブレーキシステムであって、
前記ブレーキ制御装置が、コンピュータを主体とする3つ以上の制御部を含み、前記3つ以上の制御部の各々に対応して前記電源が1つずつ以上、合計3つ以上設けられたことを特徴とする電気制御ブレーキシステム。 - 当該電気制御ブレーキシステムが、前後左右の各輪を含む車両に搭載され、前記ブレーキが、前記前後左右の各輪毎に設けられ、車輪とともに回転するブレーキ回転体にそれぞれ摩擦部材を押し付ける電動アクチュエータを含み、前記3つ以上の電源のうちの2つが、それぞれ、左前輪の電動アクチュエータと右前輪の電動アクチュエータとに、それぞれ、別個独立に接続され、前記3つ以上の電源から前記2つの電源を除いた電源のうちの1つが、前記左後輪の電動アクチュエータと右後輪の電動アクチュエータとの両方に接続された請求項1に記載の電気制御ブレーキシステム。
- 当該電気制御ブレーキシステムが、電動アクチュエータにより作動させられるパーキングブレーキを含み、前記左右後輪のブレーキの電動アクチュエータに接続された前記1つの電源に、さらに、前記パーキングブレーキ用の電動アクチュエータが接続された請求項2に記載の電気制御ブレーキシステム。
- 前記ブレーキが、左右前輪の回転をそれぞれ抑制する左,右前輪ブレーキと、左右後輪の回転をそれぞれ抑制する左,右後輪ブレーキとを含み、前記ブレーキ制御装置が、前記左,右前輪ブレーキの作動状態を制御する左,右前輪ブレーキ制御部と前記左,右後輪ブレーキの作動状態を制御する左,右後輪ブレーキ制御部とを含み、かつ、前記電源が、前記左,右前輪ブレーキ制御部各々に独立に電気エネルギを供給可能な左前輪制御用電源および右前輪制御用電源と、左,右後輪ブレーキ制御部の両方に電気エネルギを供給可能な後輪制御用共通電源とを含む請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電気制御ブレーキシステム。
- 前記3つ以上の制御部の各々が、互いに代替え可能なものである請求項1ないし4のいずれか1つに記載の電気制御ブレーキシステム。
- 当該電気制御ブレーキシステムが、複数の車輪を含む車両に搭載され、前記ブレーキが、前記複数の車輪にそれぞれ設けられるとともに、各輪とともに回転するブレーキ回転体にそれぞれ摩擦部材を押し付ける電動アクチュエータをそれぞれ含み、前記ブレーキ制御装置が、(a)前記複数の車輪のブレーキに対応してそれぞれ設けられ、前記電動アクチュエータをそれぞれ制御する電動アクチュエータ制御装置と、(b)前記複数の車輪の各々に対する要求ブレーキ力に関連する要求ブレーキ力関連量を決定し、その要求ブレーキ力関連量を表す要求情報を、前記複数の電動アクチュエータ制御装置の各々に出力する前記制御部としての3つの主制御装置とを含む請求項1ないし5のいずれか1つに記載の電気制御ブレーキシステム。
- 前記電動アクチュエータ制御装置の各々が、前記3つの主制御装置の各々から供給された要求ブレーキ関連量に基づき、多数決により妥当であると決まる要求値に対応する実ブレーキ力が得られるように、それに対応する前記電動アクチュエータを制御するアクチュエータ制御部を含む請求項6に記載の電気制御ブレーキシステム。
- 前記3つの主制御装置の各々が、前記複数の電動アクチュエータ制御装置の各々の異常を検出する異常検出部を含み、前記ブレーキ制御装置が、前記3つの主制御装置のうちの2つにおいて異常であるとされた場合に、その電動アクチュエータ制御装置が異常であるとする回路を含む請求項6または7に記載の電気制御ブレーキシステム。
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