JP2006217844A - Dkk1の遺伝子、蛋白質及び抗体を用いた癌の診断・モニター方法及び治療方法 - Google Patents

Dkk1の遺伝子、蛋白質及び抗体を用いた癌の診断・モニター方法及び治療方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 癌に関連するDKK1遺伝子、蛋白質及び抗体を用いた癌の診断・モニター手段および治療手段の提供。
【解決手段】 生体試料中の、配列番号1に記載される塩基配列を有するDKK1遺伝子、この遺伝子によりコードされるDKK1蛋白質、及びこの蛋白質を認識する抗体によりDKK1蛋白質又はそのフラグメントを検出することを特徴とする癌の診断・モニター方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、癌に関連するDKK1遺伝子、この遺伝子によりコードされるDKK1蛋白質、及びこの蛋白質を認識する抗体に関する。本発明の遺伝子、蛋白質および抗体は、癌の診断および治療、ならびに癌の治療薬の開発において用いることができる。
日本における死亡率の推移を死因別にみると、感染症疾患は第二次世界大戦後急速に減少し、替わって癌、心臓病および脳血管疾患等の生活習慣病による死亡が上位を占めるようになった。癌は昭和56年から死因の第1位を占め、平成14年には死亡数304,286人となり、総死亡の31.0%となっている。癌による死亡を、部位別にみると男性では肺癌が最も多く、平成13年では癌死亡の22.0%を占め、次いで胃癌、肝臓癌の順になっている。一方、女性では、胃癌が最も多く、次いで肺癌、結腸癌の順になっている。
癌における初回入院患者の入院暦年別5年生存率の推移をみると、近年全ての癌において生存率が改善されている。特に、従来多かった胃癌、子宮癌、さらには昭和58年から急速に生存率の改善された前立腺癌において顕著である。この現象は、癌検診等による早期発見による癌進行度初期の早期癌の割合が増加したこと、患者の臨床病期にあわせた適正な治療が提供できるようになったこと、そして治療技術が進歩したことなどの複数の要因が寄与していると思われる。
一方で、5年生存率の低い癌もいまだ存在する。すなわち、膵癌をはじめとし、肝臓、胆嚢、食道、気管・肺、卵巣癌等である。これら癌においても早期発見により生存率の改善が期待されている。
近年、ヒト遺伝子の解析が終了し、生体における重要な役割を演じている蛋白質が明らかにされつつある。特に、疾患との関わりのある蛋白質が、正常者と患者組織を用いたgene chip解析により明らかにされてきた。癌においても同様であり、細胞の癌化と関連してその発現量が変化する遺伝子が多数見出された。しかし、特定の癌を特異的に検出または治療することは依然として困難である。したがって、当該技術分野においては、癌の診断および治療に用いることができる、癌関連遺伝子および蛋白質を同定することが求められている。
Dickkopf (DKK)は胎児期の発生を規定するWNTファミリーによるシグナル伝達を阻害する分子の1つであり、German for 'big head'または'stubborn'とも呼ばれる。Fedi等により、DKK1のcDNAは1999年にクローニングされ、臓器分布は腎臓に多く、次いで肝臓と脳に発現されているが、胎盤と前立腺には発現されていないことが明らかにされた(非特許文献1)。さらに、DKK1蛋白質の構造解析はKrupnik,V.E等(非特許文献2)により、抗DKK-1抗体はGlinka A等(非特許文献3)により記載されている。
DKK1についての疾患に関わる研究として、ミエローマ、乳癌、前立腺癌(特許文献1)ならびにインスリンの関与する糖尿病(インスリン抵抗性、高および低インスリン血漿)、肥満、筋萎縮症(特許文献2)について検討がなされている。さらにはHeLa細胞(非特許文献4)、osteoblast細胞(非特許文献5)colonおよびsmall intestine細胞(非特許文献6)の細胞増殖抑制効果が示されているが、上記以外の癌との関わりについての検討は無い。
国際公開第2004/53063号パンフレット 国際公開第2002/66509号パンフレット J.Biol.Chem.274:19465-19472,1999 Gene 238:301-313,1999 Nature. 391(6665):357-62,1998 Carcinogenesis.2004 Jan;25(1):47-59. Biochem. Biophys. Res. Commun. 2004 May 21;318(1):259-64 Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2004 Jan 6;101(1):266-71
本発明の目的は、DKK1の遺伝子、蛋白質および抗体を用いた癌の診断・モニター手段および治療手段を提供するものである。
本発明者らは、DKK1遺伝子が各種癌組織において高発現していることを、gene chip解析により明らかにした。次いで、DKK1のcDNAをクローニングし、DKK1蛋白質の産生・精製およびその抗体を作製し、遺伝子学的手法および免疫学的手法による癌組織および血清におけるDKK1の測定を可能にした。
Gene chip解析から、DKK1を発現していることが確認できた肺癌、肝癌、肝芽腫、大腸癌、膵癌および胃癌患者組織ならびにそれら癌由来の細胞株について遺伝子発現量を確認した。その結果、それら癌患者組織および癌由来の細胞株においてDKK1遺伝子発現が亢進していることが認められた。肝芽腫については、RT-PCRにより定量的にも遺伝子発現亢進が確認できた。さらに、各種癌由来細胞株細胞抽出液および培養液中DKK1蛋白質の存在の有無を、抗DKK1抗体を用いたウエスタンブロッティングにて検討した結果、肺癌、膵癌、大腸癌、肝癌、前立腺癌、乳癌について陽性バンドが確認できた。一方、ELISAによるDKK1蛋白質測定法を確立し、各種癌由来細胞株培養上清中DKK1蛋白質濃度を測定したところ、ほぼウエスタンブロッティングと同様な結果が得られた。さらに、各種癌の中で5年生存率の低い膵癌患者血清を用い、DKK1蛋白質濃度を測定した結果、健常者47名の測定値は0.92から5.97ng/mL、平均で1.58 ng/mLであるのに対し、25名の膵癌患者血清では5.05から21.72 ng/mL、平均で8.96 ng/mLであった。また、肝癌、胆嚢癌、胆管癌、大腸癌および胃癌患者についても膵癌と同様に、健常者に比し高い血清中DKK1蛋白質濃度を示した。これらのことから、DKK1はそれらの癌のマーカーとして有用であることが明らかとなった。
すなわち、本発明は、生体試料中の、配列番号1に記載される塩基配列を有するDKK1遺伝子、蛋白質又はそのフラグメントを検出することを特徴とする癌の診断・モニター方法を提供するものである。
また、本発明は、DKK1の蛋白質又はそのフラグメントを認識する抗体又は抗原結合性フラグメント、又は配列番号1に記載される塩基配列からなるポリヌクレオチド、これに相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチド、又はこれらのポリヌクレオチドとストリンジエントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを含有する癌の診断・モニター薬を提供するものである。
また、本発明は、DKK1の蛋白質又はそのフラグメントを認識する抗体又は抗原結合性フラグメント、又は配列番号1に記載される塩基配列からなるポリヌクレオチド、これに相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチド、又はこれらのポリヌクレオチドとストリンジエントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを用いることを特徴とする癌の治療方法を提供するものである。
さらに、本発明は、DKK1の蛋白質又はそのフラグメントを認識する抗体又は抗原結合性フラグメント、又は配列番号1に記載される塩基配列からなるポリヌクレオチド、これに相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチド、又はこれらのポリヌクレオチドとストリンジエントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを含有する癌の治療薬及び癌の診断・モニター用キットを提供するものである。
本発明によれば、癌患者生存率の改善に繋がる癌の早期発見に寄与できる簡便な診断・モニター方法ならびに治療効果の判定に、簡便に対応することが可能なDKK1測定キットの提供であり、診断およびモニターが簡便な方法で実施できれば、早急に新たな治療計画の策定が可能となる。
さらに、DKK1は癌特異的に高発現される蛋白質であることから、抗体または抗原結合性フラグメントを用いることによる特異的な癌の治療方法となる。
以下、本発明について詳細に説明する。
第一の観点においては、本発明は、配列番号1に記載されるDKK1遺伝子によりコードされる蛋白質またはそのフラグメントを提供する。本発明の蛋白質またはそのフラグメントは、癌の診断、治療、抗体作製の際の抗原として有用である。
本発明のDKK1の蛋白質は、所望の免疫原性を有する限り、配列番号2記載のアミノ酸配列からなる蛋白質、又は配列番号2記載のアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸残基が欠失、置換または付加された変異体であってもよい。このような変異体は、好ましくは、上述のアミノ酸配列と、少なくとも80%、好ましくは90%またはそれ以上、より好ましくは95%またはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
アミノ酸配列の同一性は、比較すべき2つの配列において、同一である残基の数を残基の総数で割り、100を乗ずることにより表される。標準的なパラメータを用いて配列の同一性を決定するためのいくつかのコンピュータプログラム、例えば、Gapped BLASTまたはPSI-BLAST(Altschul,et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402),BLAST(Altschul,et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410)、およびスミス−ウォーターマン(Smith-Waterman)(Smith,et al.(1981)J.Mol.Biol.147:195-197)が利用可能である。
あるアミノ酸配列に対する1または複数個のアミノ酸残基の欠失、付加および/または他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を有する蛋白質がその生物学的活性を維持することはすでに知られている(Mark, D. F. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1984) 81, 5662-5666 、Zoller, M. J. & Smith, M. Nucleic Acids Research (1982) 10, 6487-6500 、Wang, A. et al., Science 224, 1431-1433 、Dalbadie-McFarland, G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1982) 79, 6409-6413)。
変異するアミノ酸残基においては、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に変異されることが望ましい。例えばアミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I、P)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)、カルボン酸およびアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ酸(R、K、H)、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H、F、Y、W)を挙げることができる(括弧内はいずれもアミノ酸の一文字標記を表す)。
当業者であれば公知の方法、例えば、部位特異的変異誘発法(Gotoh, T. et al. (1995) Gene 152, 271-275、Zoller, MJ, and Smith, M.(1983) Methods Enzymol. 100, 468-500、Kramer, W. et al. (1984) Nucleic Acids Res. 12, 9441-9456、Kramer W, and Fritz HJ(1987) Methods. Enzymol. 154, 350-367、Kunkel,TA(1985) Proc Natl Acad Sci USA. 82, 488-492、Kunkel (1988) Methods Enzymol. 85, 2763-2766)などを用いて、アミノ酸に適宜変異を導入することにより、該蛋白質と同等な蛋白質を調製することが可能である。
本発明の蛋白質は、後述する蛋白質を産生する細胞や宿主あるいは精製方法により、アミノ酸配列、分子量、等電点または糖鎖の有無や形態などが異なり得る。例えば、本発明の蛋白質を原核細胞、例えば大腸菌で発現させた場合、本来の蛋白質のアミノ酸配列のN末端にメチオニン残基が付加される。本発明の蛋白質はこのような蛋白質も包含する。
本発明の蛋白質は、当業者に公知の方法により、組み換え蛋白質として、また天然の蛋白質として調製することが可能である。組み換え蛋白質であれば、本発明の蛋白質をコードするDNAを、適当な発現ベクターに組み込み、これを適当な宿主細胞に導入して得た形質転換体を回収し、抽出物を得た後、イオン交換、逆相、ゲル濾過などのクロマトグラフィー、あるいは本発明の蛋白質に対する抗体をカラムに固定したアフィニティークロマトグラフィーにかけることにより、または、さらにこれらのカラムを複数組み合わせることにより精製し、調製することが可能である。また、原核生物や真核生物の抽出液などによって蛋白質を合成する無細胞蛋白質合成系も可能である。
また、本発明の蛋白質をグルタチオン S-トランスフェラーゼ蛋白質との融合として、あるいはヒスチジンを複数付加させた組み換え蛋白質として宿主細胞(例えば、動物細胞や大腸菌など)内で発現させた場合には、発現させた組み換え蛋白質はグルタチオンカラムあるいはニッケルカラムを用いて精製することができる。融合蛋白質の精製後、必要に応じて融合蛋白質のうち、目的の蛋白質以外の領域を、トロンビンまたはファクターXaなどにより切断し、除去することも可能である。
天然の蛋白質であれば、当業者に周知の方法、例えば、本発明の蛋白質を発現している組織や細胞の抽出物に対し、後述する本発明の蛋白質に結合する抗体が結合したアフィニティーカラムを作用させて精製することにより単離することができる。その抗体はポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。また、後述するイオン交換クロマトグラフィーを含むクロマトグラフィーによる精製も有効である。
本発明は、また、本発明の蛋白質のフラグメント(部分ペプチド)を包含する。本発明のフラグメントは、例えば、本発明の蛋白質に対する抗体の作製、本発明の蛋白質に結合する化合物のスクリーニングや、本発明の蛋白質の促進剤や阻害剤のスクリーニングに利用し得る。また、本発明の蛋白質のアンタゴニストや競合阻害剤になり得る。
本発明のフラグメントは、免疫原とする場合には、少なくとも7アミノ酸以上、好ましくは8アミノ酸以上、さらに好ましくは9アミノ酸以上のアミノ酸配列からなる。本発明の蛋白質の競合阻害剤として用いる場合には、少なくとも5アミノ酸以上、好ましくは10アミノ酸以上のアミノ酸配列を含む。
本発明のフラグメントは、遺伝子工学的手法、公知のペプチド合成法、あるいは本発明の蛋白質を適切なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。ペプチドの合成は、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによってもよい。また、アミノ末端および/またはカルボキシル末端はこのフラグメントの特性を維持するものであれば修飾されていても良い。
本発明の蛋白質を製造するためのベクターとしては、例えば、大腸菌を宿主とする場合には、ベクターを大腸菌(例えば、JM109、DH5α、HB101、XL1Blue)などで大量に増幅させ大量調製するために、大腸菌で増幅されるための「ori」をもち、さらに形質転換された大腸菌の選抜遺伝子(例えば、なんらかの薬剤(アンピシリンやテトラサイクリン、カナマイシン、クロラムフェニコール)により判別できるような薬剤耐性遺伝子)を有していることが好ましい。
ベクターの例としては、M13系ベクター、pUC系ベクター、pBR322、pBluescript、pCR-Scriptなどが挙げられる。また、cDNAのサブクローニング、切り出しを目的とした場合、上記ベクターの他に、例えば、pGEM-T、pDIRECT、pT7などが挙げられる。
本発明の蛋白質を生産する目的においてベクターを使用する場合には、特に、発現ベクターが有用である。この改良は、例えばプロテアーゼの欠損や遺伝子発現制御システムの導入である。発現ベクターとしては、例えば、大腸菌での発現を目的とした場合は、ベクターが大腸菌で増幅されるような上記特徴を持つほかに、宿主をJM109、DH5α、HB101、XL1-Blueなどの大腸菌とした場合においては、大腸菌で効率よく発現できるようなプロモーター、例えば、lacZプロモーター(Wardら, Nature (1989) 341, 544-546;FASEB J. (1992) 6, 2422-2427)、araBプロモーター(Betterら, Science (1988) 240, 1041-1043 )またはT7プロモーターなどを持っていることが好ましい。このようなベクターとしては、上記ベクターの他にpGEX-5X-1(ファルマシア社製)、「QIAexpress system」(キアゲン社製)、pEGFP、またはpET(この場合、宿主はT7 RNAポリメラーゼを発現しているBL21が好ましい)などが挙げられる。
また、ベクターには、蛋白質の収量をあげるためのタグをコードする配列が付加されていてもよい。例えば、蛋白質分泌のためのシグナル配列である。シグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei, S. P. et al J. Bacteriol. (1987) 169, 4379 )を使用すればよい。宿主細胞へのベクターの導入は、例えば塩化カルシウム法、エレクトロポレーション法を用いて行うことができる。また、可溶性を向上させるためのタグ、例えばグルタチオンーS−トランスフェラーゼやチオレドキシン、マルトース結合蛋白質をコードする配列が付加されていてもよい。また、精製を容易にすることを目的にした設計されたタグ、例えばポリヒスチジンタグ、Mycエピトープ、ヘマグルチニン(HA)エピトープ、T7エピトープ、XpressタグやFLAGペプチドタグ、その他の既知のタグ配列をコードする配列が付加されていてもよい。
大腸菌以外にも、哺乳動物由来の発現ベクター(例えば、pcDNA3(インビトロゲン社製)や、pEGF-BOS(Nucleic Acids. Res.1990, 18(17),p5322)、pEF、pCDM8)、昆虫細胞由来の発現ベクター(例えば「Bac-to-BAC baculovairus expression system」(ギブコBRL社製)、pBacPAK8)、植物由来の発現ベクター(例えばpMH1、pMH2)、動物ウィルス由来の発現ベクター(例えば、pHSV、pMV、pAdexLcw)、レトロウィルス由来の発現ベクター(例えば、pZIPneo)、酵母由来の発現ベクター(例えば、「Pichia Expression Kit」(インビトロゲン社製)、pNV11 、SP-Q01)、枯草菌由来の発現ベクター(例えば、pPL608、pKTH50)が挙げられる。
CHO細胞、COS細胞、NIH3T3細胞等の動物細胞での発現を目的とした場合には、細胞内で発現させるために必要なプロモーター、例えばSV40プロモーター(Mulliganら, Nature (1979) 277, 108)、MMLV-LTRプロモーター、EF1αプロモーター(Mizushimaら, Nucleic Acids Res. (1990) 18, 5322)、CMVプロモーターなどを持っていることが不可欠であり、細胞への形質転換を選抜するための遺伝子(例えば、薬剤(ネオマイシン、G418など)により判別できるような薬剤耐性遺伝子)を有すればさらに好ましい。このような特性を有するベクターとしては、例えば、pMAM、pDR2、pBK-RSV、pBK-CMV、pOPRSV、pOP13などが挙げられる。
これらの動物細胞による蛋白質発現において、蛋白質発現を目的に導入したベクターが宿主のゲノムに組み込まれるいわゆる安定発現株を利用してもよいし、一過性に蛋白質が発現し、精製を行ってもよい。また、蛋白質の発現を誘導するシステム、例えばテトラサイクリンで誘導される蛋白質発現系も蛋白質の合成に有効である。この場合、宿主の細胞がテトラサイクリン耐性になっている必要があり、導入するベクターもテトラサイクリンによって発現がオンまたはオフされるように設計されている必要がある。この蛋白質の発現制御システムは、他にもイソプロピル チオ−β−ガラクトシドなどが知られている。蛋白質の収量を向上させることを目的に、細胞内での遺伝子のコピー数の増幅を行う方法として、安定発現株では、核酸合成経路を欠損したCHO細胞にそれを相補するDHFR遺伝子を有するベクター(例えば、pCHOIなど)を導入し、メトトレキセート(MTX)により増幅させる方法が挙げられる。また、遺伝子の一過性の発現を目的とする場合には、SV40 T抗原を発現する遺伝子を染色体上に持つCOS細胞を用いてSV40の複製起点を持つベクター(pcDなど)で形質転換する方法が挙げられる。複製開始点としては、また、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス(BPV)等の由来のものを用いることもできる。さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは選択マーカーとして、アミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。
ベクターが導入される宿主細胞としては特に制限はなく、原核生物および真核生物のいずれでもよい。例えば、大腸菌や種々の動物細胞などを用いることが可能である。本発明の宿主細胞は、例えば、本発明の蛋白質の製造や発現のための産生系として使用することができる。蛋白質製造のための産生系は、in vitroおよびin vivo の産生系がある。in vitroの産生系としては、真核細胞を使用する産生系や原核細胞を使用する産生系が挙げられる。
真核細胞を使用する場合、例えば、動物細胞、植物細胞、真菌細胞を宿主に用いることができる。動物細胞としては、哺乳類細胞、例えば、CHO(J. Exp. Med. (1995) 108, 945)、COS、3T3、ミエローマ、BHK(baby hamster kidney)、HeLa、Vero、両生類細胞、例えばアフリカツメガエル卵母細胞(Valle, et al., Nature (1981) 291, 358-340)、あるいは昆虫細胞、例えば、Sf9、Sf21、Tn5が知られている。CHO細胞としては、特に、DHFR遺伝子を欠損したCHO細胞であるdhfr-CHO(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1980) 77, 4216-4220)やCHO K-1(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1968) 60, 1275)を好適に使用することができる。動物細胞において、大量発現を目的とする場合には特にCHO細胞が好ましい。宿主細胞へのベクターの導入は、例えば、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、カチオニックリボソームDOTAP(ベーリンガーマンハイム社製)を用いた方法、エレクトロポーレーション法、リポフェクションなどの方法で行うことが可能である。
植物細胞としては、例えば、ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)由来の細胞が蛋白質生産系として知られており、これをカルス培養すればよい。真菌細胞としては、酵母、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌、例えば、アスペルギルス(Aspergillus)属、例えば、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)が知られている。
原核細胞を使用する場合、細菌細胞を用いる産生系がある。細菌細胞としては、大腸菌(E. coli)、例えば、JM109、DH5α、HB101等が挙げられ、その他、枯草菌が知られている。
これらの細胞を目的とするDNAにより形質転換し、形質転換された細胞をin vitroで培養することにより蛋白質が得られる。培養は、公知の方法に従い行うことができる。例えば、動物細胞の培養液として、例えば、DMEM、MEM、RPMI1640、IMDMを使用することができる。その際、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできるし、無血清培養してもよい。培養時のpHは、約6〜8であるのが好ましい。培養は、通常、約30〜40℃で約15〜200時間行い、必要に応じて培地の交換、通気、攪拌を加える。また、細胞の増殖を促進するための成長因子の添加を行ってもよい。
一方、in vivoで蛋白質を産生させる系としては、例えば、動物を使用する産生系や植物を使用する産生系が挙げられる。これらの動物または植物に目的とするDNAを導入し、動物または植物の体内で蛋白質を産生させ、回収する。本発明における「宿主」とは、これらの動物、植物を包含する。
動物を使用する場合、哺乳類動物、鳥類、昆虫を用いる産生系がある。哺乳類動物としては、ヤギ、ブタ、ヒツジ、マウス、ウシを用いることができる(Vicki Glaser, SPECTRUM Biotechnology Applications, 1993)。また、哺乳類動物を用いる場合、トランスジェニック動物を用いることができる。
例えば、目的とするDNAを、ヤギβカゼインのような乳汁中に固有に産生される蛋白質をコードする遺伝子との融合遺伝子として調製する。次いで、この融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ移植する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギまたはその子孫が産生する乳汁から、目的の蛋白質を得ることができる。トランスジェニックヤギから産生される蛋白質を含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい(Ebert, K.M. et al., Bio/Technology (1994) 12, 699-702)。
また、昆虫としては、例えばカイコを用いることができる。カイコを用いる場合、目的の蛋白質をコードするDNAを挿入したバキュロウィルスをカイコに感染させることにより、このカイコの体液から目的の蛋白質を得ることができる(Susumu, M. et al., Nature (1985) 315, 592-594)。
さらに、植物を使用する場合、例えばタバコを用いることができる。タバコを用いる場合、目的とする蛋白質をコードするDNAを植物発現用ベクター、例えばpMON 530に挿入し、このベクターをアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のようなバクテリアに導入する。このバクテリアをタバコ、例えば、ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)に感染させ、本タバコの葉より所望の蛋白質を得ることができる(Julian K.-C. Ma et al., Eur. J. Immunol. (1994) 24, 131-138)。
これにより得られた本発明の蛋白質は、宿主細胞内または細胞外(培地など)から単離し、実質的に純粋で均一な蛋白質として精製することができる。蛋白質の分離、精製は、通常の蛋白質の精製で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、クロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、溶媒沈殿、溶媒抽出、蒸留、免疫沈降、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動法、透析、再結晶等を適宜選択、組み合わせれば蛋白質を分離、精製することができる。
クロマトグラフィーとしては、例えばアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等が挙げられる(Strategies for Protein Purification and Characterization: A Laboratory Course Manual. Ed Daniel R. Marshak et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1996)。これらのクロマトグラフィーは、液相クロマトグラフィー、例えばHPLC、FPLC等の液相クロマトグラフィーを用いて行うことができる。本発明は、これらの精製方法を用い、高度に精製された蛋白質も包含する。
なお、蛋白質を精製前または精製後に適当な蛋白質修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、部分的にペプチドを除去することもできる。蛋白質修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、リシルエンドペプチダーゼなどのプロテアーゼ、プロテインキナーゼ、フォスファターゼ、糖鎖やアセチル基などのトランスフェラーゼ、グルコシダーゼなどが用いられる。
後述の実施例において示されるように、配列番号1のDKK1遺伝子配列を元にPCRプライマーを設計し、ヒトの正常および癌組織から得たcDNAを用いて、定量PCRによりヒト組織におけるDKK1の発現量の定量化を行ったところ、本発明のDKK1遺伝子は特定のヒト癌組織において正常部よりその発現が亢進されていることが見出された。
また、配列番号1に記載されるDKK1遺伝子によりコードされる蛋白質またはそのフラグメントは、癌に対するワクチンとして用いることができる。上述の蛋白質またはその免疫原性フラグメントを、適当なアジュバントとともに、あるいは他の適当なポリペプチドとの融合蛋白質として、対象となるヒトまたはその他の動物に投与することにより、そのヒトまたは動物の体内で免疫応答を生じさせることができる。あるいは、上述のDKK1遺伝子またはそのフラグメントを発現する細胞の形で投与してもよい。
また、本発明では、被検者が配列番号1に記載されるDKK1遺伝子によりコードされる蛋白質に対する抗体を有するか否かを測定することにより、癌に罹患しているか否かを診断することができる。すなわち、本発明ではDKK1蛋白質を認識する抗体を被験者の血中から検出する診断法が可能である。
別の観点においては、本発明は、配列番号1に記載されるヌクレオチド配列を有するDKK1遺伝子によりコードされる蛋白質またはそのフラグメントを認識する抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供する。これらの抗体または抗原結合性フラグメントは、癌の診断、治療に用いることができる。また、このような抗体を産生する細胞を提供する。
認識するとは、抗体が、特定の条件下において、DKK1遺伝子によりコードされる蛋白質またはそのフラグメントに対して、他のポリペプチドに結合するより高い親和性をもって結合することを意味する。
本発明の抗体には、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、ならびに抗原決定基に特異的に結合する能力を保持している抗体およびT−細胞レセプターフラグメント等の、抗体の変種および誘導体が含まれる。
又、本発明の抗体の種類は特に制限されず、マウス抗体、ヒト抗体、ラット抗体、ウサギ抗体、ヒツジ抗体、ラクダ抗体、トリ抗体等や、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、等を適宜用いることができる。遺伝子組換え型抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。キメラ抗体は、ヒト以外の哺乳動物、例えば、マウス抗体の重鎖、軽鎖の可変領域とヒト抗体の重鎖、軽鎖の定常領域からなる抗体であり、マウス抗体の可変領域をコードするDNAをヒト抗体の定常領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得ることができる。ヒト化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、ヒト以外の哺乳動物、たとえばマウス抗体の相補性決定領域(CDR; complementarity determining region)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている。具体的には、マウス抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(framework region;FR)を連結するように設計したDNA配列を、末端部にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドからPCR法により合成する。得られたDNAをヒト抗体定常領域をコードするDNAと連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP 239400 、国際特許出願公開番号WO 96/02576参照)。CDRを介して連結されるヒト抗体のFRは、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように抗体の可変領域のフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato, K.et al., Cancer Res, 1993, 53, 851-856.)。
また、ヒト抗体の取得方法も知られている。例えば、ヒトリンパ球をin vitroで所望の抗原または所望の抗原を発現する細胞で感作し、感作リンパ球をヒトミエローマ細胞、例えばU266と融合させ、抗原への結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1-59878参照)。また、ヒト抗体遺伝子の全てのレパートリーを有するトランスジェニック動物を所望の抗原で免疫することで所望のヒト抗体を取得することができる(WO93/12227, WO92/03918,WO94/02602, WO94/25585,WO96/34096, WO96/33735参照)。さらに、ヒト抗体ライブラリーを用いて、パンニングによりヒト抗体を取得する技術も知られている。例えば、ヒト抗体の可変領域を一本鎖抗体(scFv)としてファージディスプレイ法によりファージの表面に発現させ、抗原に結合するファージを選択することができる。選択されたファージの遺伝子を解析すれば、抗原に結合するヒト抗体の可変領域をコードするDNA配列を決定することができる。抗原に結合するscFvのDNA配列が明らかになれば、当該配列を適当な発現ベクターを作製し、ヒト抗体を取得することができる。これらの方法は既に周知であり、WO92/01047, WO92/20791, WO93/06213, WO93/11236, WO93/19172, WO95/01438, WO95/15388を参考にすることができる。
また、これらの抗体は、DKK1遺伝子によってコードされる蛋白質の全長または一部を認識する特性を失わない限り、抗体断片(フラグメント)等の低分子化抗体や抗体の修飾物などであってもよい。抗体断片の具体例としては、例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、Diabodyなどを挙げることができる。このような抗体断片を得るには、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させればよい(例えば、Co, M. S. et al., J. Immunol. (1994) 152, 2968-2976 ; Better, M. and Horwitz, A. H., Methods Enzymol. (1989) 178, 476-496 ; Pluckthun, A. and Skerra, A., Methods Enzymol. (1989) 178, 497-515 ; Lamoyi, E., Methods Enzymol. (1986) 121, 652-663 ; Rousseaux, J. et al., Methods Enzymol. (1986) 121, 663-669 ; Bird, R. E. and Walker, B. W., Trends Biotechnol. (1991) 9, 132-137参照)。
抗体の修飾物として、ポリエチレングリコール(PEG)等の各種分子と結合した抗体を使用することもできる。又、抗体に放射性同位元素、化学療法剤、細菌由来トキシン等の細胞傷害性物質などを結合することも可能であり、特に放射性標識抗体は有用である。このような抗体修飾物は、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。なお、抗体の修飾方法はこの分野においてすでに確立されている。
又、本発明においては、細胞傷害活性を増強する目的などで、糖鎖を改変した抗体などを用いることも可能である。抗体の糖鎖改変技術は既に知られている(例えば、WO00/61739、WO02/31140など)。
又、本発明においては、2種以上の異なる抗原に対して特異性を有する多特異性抗体も含まれる。通常このような分子は2個の抗原を結合するものであるが(即ち、二重特異性抗体)、本発明における「多特異性抗体」は、それ以上(例えば、3種類の)抗原に対して特異性を有する抗体を包含するものである。多特異性抗体は全長からなる抗体、またはそのような抗体の断片(例えば、F(ab')2二特異性抗体)であり得る。
当分野において多特異性抗体の製造法は公知である。全長の二特異性抗体の産生は、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖の共発現を含むものである(Millstein et al., Nature 305:537-539 (1983))。免疫グロブリンの重鎖および軽鎖はランダムに取り合わされるので、共発現を行う得られた複数のハイブリドーマ(クワドローマ)は、各々異なる抗体分子を発現するハイブリドーマの混合物であり、このうち正しい二特異性抗体を産生するものを選択する必要がある。選択はアフィニティークロマトグラフィー等の方法により行うことができる。また、別な方法では所望の結合特異性を有する抗体の可変領域を免疫グロブリンの定常ドメイン配列に融合する。該定常ドメイン配列は、好ましくは免疫グロブリンの重鎖の定常領域の内、ヒンジ、CH2およびCH3領域の一部を少なくとも含むものである。好ましくは、さらに軽鎖との結合に必要な重鎖のCH1領域が含まれる。免疫グロブリン重鎖融合体をコードするDNA、および、所望により免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAをそれぞれ別々の発現ベクターに挿入し、適当な宿主生物に形質転換する。別々の発現ベクターに各遺伝子を挿入することにより、それぞれの鎖の存在割合が同じでない方が、得られる抗体の収量が上がる場合に、各鎖の発現割合の調節が可能となり都合が良いが、当然ながら、複数の鎖をコードする遺伝子を一つのベクターに挿入して用いることも可能である。
好ましい態様においては、第一の結合特性を有する重鎖がハイブリッド免疫グロブリンの一方の腕として存在し、別の結合特性の重鎖-軽鎖複合体がもう一方の腕として存在する二重特異性抗体が望ましい。このように一方の腕のみに軽鎖を存在させることにより、二重特異性抗体の他の免疫グロブリンからの分離を容易に行うことができる(WO94/04690参照)。二重特異性抗体の作成方法については、さらに、Sureshら(Methods in Enzymology 121:210 (1986))の方法を参照することができる。組換細胞培養物から得られる最終産物中のホモダイマーを減らしヘテロダイマーの割合を増加させる方法として、抗体の定常ドメインのCH3を含み、一方の抗体分子において、他方の分子と結合する表面の1若しくは複数の小さな側鎖のアミノ酸を大きな側鎖のアミノ酸(例えば、チロシンやトリプトファン)に変え、他方の抗体分子の対応する部分の大きさ側鎖のアミノ酸を小さなもの(例えば、アラニンやスレオニン)に変えて第一の抗体分子の大きな側鎖に対応する空洞を設ける方法も知られている(WO96/27011)。
二重特異性抗体には、例えば、一方の抗体がアビジンに結合され、他方がビオチン等に結合されたようなヘテロ共役抗体が含まれる(米国特許第4,676,980号;WO91/00360;WO92/00373;EP03089)。このようなヘテロ共役抗体の作製に利用される架橋剤は周知であり、例えば、米国特許第4,676,980号にもそのような例が記載されている。
また、抗体断片より二特異性抗体を製造する方法も報告されている。例えば、化学結合を利用して製造することができる。例えば、まずF(ab')2断片を作成し、同一分子内でのジスルフィド形成を防ぐため断片をジチオール錯化剤アルサニルナトリウムの存在化で還元する。次にF(ab')2断片をチオニトロ安息香酸塩(TNB)誘導体に変換する。メルカプトエチルアミンを用いて一方のF(ab')2-TNB誘導体をFab'-チオールに再還元した後、F(ab')2-TNB誘導体およびFab'-チオールを等量混合し二特異性抗体を製造する。
組換細胞培養物から直接、二重特異性抗体を製造し、単離する方法も種々、報告されている。例えば、ロイシンジッパーを利用した二重特異性抗体の製造方法が報告されている(Kostelny et al., J,Immunol. 148(5):1547-1553 (1992))。まず、FosおよびJun蛋白質のロイシンジッパーペプチドを、遺伝子融合により異なる抗体のFab'部分に連結させ、ホモダイマーの抗体をヒンジ領域においてモノマーを形成するように還元し、抗体へテロダイマーとなるように再酸化する。また、軽鎖可変ドメイン(VL)に重鎖可変ドメイン(VH)を、これら2つのドメイン間での対形成できない位に短いリンカーを介して連結し、相補的な別のVLおよびVHドメインと対を形成させ、それにより2つの抗原結合部位を形成させる方法もある(Hollinger et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448 (1993))。また、一本鎖Fv(sFV)を用いたダイマーについても報告されている(Gruger et al., J.Immunol. 152:5368 (1994))。さらに、二重特異性ではなく三重特異性の抗体についても報告されている(Tutt et al., J.Immunol. 147:60 (1991))。
本発明における「抗体」にはこれらの抗体も包含される。
本発明の抗体および抗体フラグメントは、任意の適当な方法、例えば、インビボ、培養細胞、インビトロ翻訳反応、および組換えDNA発現系により製造することができる。
モノクローナル抗体およびハイブリドーマを製造する手法は当該技術分野においてよく知られている(Campbell,"Monoclonal Antibody Technology:Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology"、Elsevier Science Publishers,Amsterdam,The Netherlands,1984;St.Groth et al.、J.Immunol.Methods 35:1−21,1980)。DKK1遺伝子によりコードされる蛋白質またはフラグメントを免疫原として用いて、抗体を生成することが知られている任意の動物(マウス、ウサギ等)に皮下または腹膜内注射することにより免疫することができる。免疫に際してアジュバントを用いてもよく、そのようなアジュバントは当該技術分野においてよく知られている。
ポリクローナル抗体は、免疫した動物から抗体を含有する抗血清を単離し、ELISAアッセイ、ウエスタンブロット分析、またはラジオイムノアッセイ等の当該技術分野においてよく知られる方法を用いて、所望の特異性を有する抗体の存在についてスクリーニングすることにより得ることができる。
モノクローナル抗体は、免疫した動物から脾臓細胞を切除し、ミエローマ細胞と融合させ、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞を作製することにより得ることができる。ELISAアッセイ、ウエスタンブロット分析、またはラジオイムノアッセイ等の当該技術分野においてよく知られる方法を用いて、目的とする蛋白質またはそのフラグメントを認識する抗体を産生するハイブリドーマ細胞を選択する。所望の抗体を分泌するハイブリドーマをクローニングし、適切な条件下で培養し、分泌された抗体を回収し、当該技術分野においてよく知られる方法、例えばイオン交換カラム、アフィニティークロマトグラフィー等を用いて精製することができる。あるいは、ゼノマウス株を用いてヒト型モノクローナル抗体を製造してもよい(Green,J.Immunol.Methods 231:11−23,1999;Wells,Eek,Chem Biol 2000 Aug;7(8):R185−6を参照)。また、免疫を行わないファージディスプレイに基づいたモノクローナル抗体の作製も現在行われており、本発明の抗体はこれらの方法のいずれで製造されてもかまわない。
モノクローナル抗体をコードするDNAは、慣用な方法(例えば、モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いて)により容易に単離、配列決定できる。ハイブリドーマ細胞はこのようなDNAの好ましい出発材料である。一度単離したならば、DNAを発現ベクターに挿入し、E.coli細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞または形質転換されなければ免疫グロブリンを産生しないミエローマ細胞等の宿主細胞へ組換え、組換え宿主細胞からモノクローナル抗体を産生させる。また別の態様として、McCaffertyら(Nature 348:552-554 (1990))により記載された技術を用いて製造された抗体ファージライブラリーより抗体、または抗体断片は単離することができる。
上述の抗体は、検出可能なように標識することができる。標識としては、放射性同位体、アフィニティー標識(例えばビオチン、アビジン等)、酵素標識(例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等)、蛍光標識(例えばFITCまたはローダミン等)、常磁性原子等が挙げられる。そのような標識を行う方法は当該技術分野においてよく知られている。上述の抗体は、固体支持体上に固定化してもよい。そのような固体支持体の例には、プラスチック、アガロース、セファロース、ポリアクリルアミドおよびラテックスビーズ等が含まれる。抗体をそのような固体支持体に結合させる技術は当該技術分野においてよく知られている。
後述の実施例において記載されるように、本発明のDKK1遺伝子は、特定の癌組織において亢進された発現を示すため、本発明の抗体は、癌診断マーカーとして有用である。本発明の抗体を、ウエスタンブロット法、ELISA法、組織染色法などの手法において用いて、組織または細胞における、DKK1遺伝子によりコードされる蛋白質の発現を検出することができる。被験者の組織に由来する試料(例えば、生検サンプル、血液サンプル等)と本発明の組成物とを免疫複合体が形成されるような条件下で接触させ、該試料に抗体が結合するか否かを判定することにより、該試料中のDKK1遺伝子によりコードされる蛋白質の存在または量を判定することができ、このことにより癌の診断、癌の進行または治癒のモニタリング、および予後の予測を行うことができる。
生体試料としては、(a)組織、(b)採取した組織の培養物、(c)組織抽出物、(d)癌患者の喀痰、(e)尿、又は(f)血液等が挙げられる。当該組織は、バイオプシーにより採取できる。採取した組織は、免疫組織染色をする場合には、パラフィン包埋又は凍結して用いることもできる。
また、本発明は、試料中で上述のDKK1遺伝子によりコードされる蛋白質の存在を検出するためのキットを提供することができる。このようなキットは、上述の抗体に加えて、洗浄試薬および結合した抗体の存在を検出しうる試薬、例えば、標識第2抗体、標識された抗体と反応しうる発色団、酵素、または抗体結合試薬、ならびに使用の指針を含むことができる。
さらに、本発明のDKK1遺伝子によりコードされる蛋白質に対する抗体は、特定の癌細胞に対する特異性を有するため癌の治療薬として、あるいは癌組織に特異的にターゲティングさせるミサイル療法において用いることができる。好ましくは、本発明の組成物は、膵臓癌、肝癌、肝芽腫、胆嚢癌、胆管癌、肺癌、大腸癌、および胃癌の診断および治療において用いられる。
本発明の治療薬は、当該技術分野においてよく知られる薬学的に許容しうる担体とともに、混合、溶解、顆粒化、錠剤化、乳化、カプセル封入、凍結乾燥等により、製剤化することができる。
経口投与用には、本発明の治療剤を、薬学的に許容しうる溶媒、賦形剤、結合剤、安定化剤、分散剤等とともに、錠剤、丸薬、糖衣剤、軟カプセル、硬カプセル、溶液、懸濁液、乳剤、ゲル、シロップ、スラリー等の剤形に製剤化することができる。
非経口投与用には、本発明の治療剤を、薬学的に許容しうる溶媒、賦形剤、結合剤、安定化剤、分散剤等とともに、注射用溶液、懸濁液、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、吸入剤、座剤等の剤形に製剤化することができる。注射用の処方においては、本発明の治療剤を水性溶液、好ましくはハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理的食塩緩衝液等の生理学的に適合性の緩衝液中に溶解することができる。さらに、組成物は、油性または水性のベヒクル中で、懸濁液、溶液、または乳濁液等の形状をとることができる。あるいは、治療剤を粉体の形態で製造し、使用前に滅菌水等を用いて水溶液または懸濁液を調製してもよい。吸入による投与用には、本発明の治療剤を粉末化し、ラクトースまたはデンプン等の適当な基剤とともに粉末混合物とすることができる。座剤処方は、本発明の治療剤をカカオバター等の慣用の坐剤基剤と混合することにより製造することができる。さらに、本発明の治療剤は、ポリマーマトリクス等に封入して、持続放出用製剤として処方することができる。
投与量および投与回数は、剤形および投与経路、ならびに患者の症状、年齢、体重によって異なるが、一般に、本発明の治療剤は、1日あたり体重1kgあたり、約0.001mgから1000mgの範囲、好ましくは約0.01mgから10mgの範囲となるよう、1日に1回から数回投与することができる。
治療薬は通常非経口投与経路で、例えば注射剤(皮下注、静注、筋注、腹腔内注など)、経皮、経粘膜、経鼻、経肺などで投与されるが、特に限定されず、経口投与でもよい。
さらに別の観点においては、本発明は、配列番号1に記載される塩基配列もしくはこれに相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチド、あるいはこれらのポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドを提供する。
さらに、本発明は、配列番号1に記載される塩基配列の少なくとも12個の連続する塩基配列もしくはこれに相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチド、あるいは配列番号1に記載される塩基配列を有するポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる少なくとも12ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドを提供する。
これらのポリヌクレオチドは、癌の診断、蛋白質の製造、プライマー、遺伝子発現阻害の為のアンチセンス・siRNAなどに有用である。癌は、膵臓癌、肝癌、肝芽腫、胆嚢癌、胆管癌、肺癌、大腸癌、胃癌、食道癌、子宮癌、膀胱癌、腎癌、脳腫瘍等である。好ましくは、膵臓癌、肝癌、肝芽腫、胆嚢癌、胆管癌、肺癌、大腸癌、および胃癌である。
本発明のDKK1遺伝子は、後述の実施例において示されるように、特定のヒト癌組織においてその発現が亢進されている。したがって、本発明のポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、DKK1遺伝子の発現をサイレンシングするためのアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、siRNA等の薬剤として、およびDKK1遺伝子を検出するためのプローブまたはプライマーとして用いることができる。又、本発明の蛋白質を製造する際に用いることも可能である。
本発明の組成物に含まれるポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、一本鎖であっても二本鎖であってもよく、DNA、RNA、またはこれらの混合物、あるいはPNA等の誘導体であってもよい。これらのポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、ヌクレオシド間結合、塩基および/または糖において化学的に修飾されていてもよく、5'末端および/または3' 末端に修飾基を有していてもよい。ヌクレオシド間結合の修飾の例としては、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホルアミドチオエート、ホスホルアミデート、ホスホルジアミデート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステル、およびホルムアセタール等が挙げられる。塩基修飾の例としては、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、および5−(カルボキシヒドロキシエチル)ウラシル等が挙げられる。糖修飾の例としては、2'−O−アルキル、2'−O−アルキル−O−アルキルまたは2'−フルオロ修飾等が挙げられる。また、アラビノース、2−フルオロアラビノース、キシルロースおよびヘキソース等の糖を用いてもよい。
本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1に記載される塩基配列もしくはこれに相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチド、あるいはこれらのポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドである。ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能なポリヌクレオチドは、通常、高い同一性を有する。ここで、高い同一性とは、配列番号1に記載されるヌクレオチド配列と70%以上の同一性を有し、好ましくは、80%以上の同一性、さらに好ましくは90%以上の同一性を有することを言う。
塩基配列の同一性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877, 1993)によって決定することができる。このアルゴリズムに基づいて、BLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul et al. J. Mol. Biol.215:403-410, 1990)。BLASTに基づいてBLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメータはたとえばscore = 100、wordlength = 12とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメータを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov.)。
さらに、本発明は、配列番号2に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含む。これらのポリヌクレオチドは本発明の蛋白質を製造する際に用いることができ、又、配列番号2に示されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列またはその相補的な配列を有するポリヌクレオチドが癌細胞で高発現していることから、それらのポリヌクレオチドを検出して癌の診断を行う際のプローブとして用いること等が可能である。
又、本発明のポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、これを導入した細胞内で所望のアンチセンス、リボザイム、siRNAを生成させることができる核酸構築物として提供してもよい。
本発明のポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドをアンチセンス、リボザイム、siRNAなどとして用いる場合、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは少なくとも12ヌクレオチド以上の鎖長を有していることが好ましく、さらに好ましくは12−50ヌクレオチドであり、特に好ましくは12−25ヌクレオチドである。これらのポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、所望のアンチセンス、リボザイムまたはsiRNAの活性を有する限り、上述したヌクレオチド配列から、1または数個の塩基が欠失、置換または付加された変異体であってもよい。このような変異体は、好ましくは、上述のヌクレオチド配列と、少なくとも70%、好ましくは90%またはそれ以上、より好ましくは95%またはそれ以上の同一性を有するヌクレオチド配列を有する。あるいは、このようなポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、配列番号1に記載されるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる。
ハイブリダイゼーションとは、DNAまたはこれに対応するRNAが、溶液中でまたは固体支持体上で、別のDNAまたはRNA分子と水素結合相互作用により結合することを意味する。このような相互作用の強さは、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーを変化させることにより評価することができる。所望の特異性および選択性によって、種々のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件を用いることができ、ストリンジェンシーは、塩濃度または変性剤の濃度を変化させることにより調節することができる。そのようなストリンジェンシーの調節方法は当該技術分野においてよく知られており、例えば、"Molecular Cloning:A Laboratory Manual"、第2版.Cold Spring Harbor Laboratory,Sambrook,Fritsch,&Maniatis,eds.、1989)に記載されている。
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とは、50%ホルムアミドの存在下で、700mMのNaCl中42℃、またはこれと同等の条件をいう。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の一例は、50%ホルムアミド、5XSSC、50mMNaH2PO4、pH6.8、0.5%SDS、0.1mg/mL超音波処理サケ精子DNA、および5Xデンハルト溶液中で42℃で一夜のハイブリダイゼーション;2XSSC、0.1%SDSで45℃での洗浄;および0.2XSSC、0.1%SDSで45℃での洗浄である。
本発明のポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドは、当業者に公知の方法で製造することが可能である。例えば、当該技術分野において知られるプロトコールを用いて、市販のDNA合成機(例えば394合成器、Applied Biosystems社製)で合成することができる。あるいは、本明細書に開示される配列情報に基づいて、適当なテンプレートとプライマーとを組み合わせて用いて、当該技術分野においてよく知られるPCR増幅技術により製造することができる。
さらに、本発明のポリペプチドを発現している細胞よりcDNA ライブラリーを作製し、本発明のポリヌクレオチドの配列の一部をプローブにしてハイブリダイゼーションを行うことにより調製できる。cDNAライブラリーは、例えば、(Sambrook, J. et al., Molecular Cloning、Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989))に記載の方法により調製してもよいし、市販のDNAライブラリーを用いてもよい。また、本発明のポリペプチドを発現している細胞よりRNAを調製し、逆転写酵素によりcDNAを合成した後、本発明のDNAの配列に基づいてオリゴDNAを合成し、これをプライマーとして用いてPCR反応を行い、本発明のポリペプチドをコードするcDNAを増幅させることにより調製することも可能である。
また、得られたcDNAの塩基配列を決定することにより、それがコードする翻訳領域を決定でき、本発明の蛋白質のアミノ酸配列を得ることができる。また、得られたcDNAをプローブとしてゲノムDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、ゲノムDNAを単離することも可能である。
より具体的には、例えば、まず本発明の蛋白質を発現する細胞、組織(例えば、膵臓癌,肝癌等)などから、mRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin, J. M. et al., Biochemistry (1979) 18, 5294-5299)、AGPC法 (Chomczynski, P. and Sacchi, N., Anal. Biochem. (1987) 162, 156-159)等により全RNAを調製し、mRNA Purification Kit (Pharmacia社) 等を使用して全RNAからmRNAを精製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit (Pharmacia社) を用いることによりmRNAを直接調製することもできる。
得られたmRNAから逆転写酵素を用いてcDNAを合成する。cDNAの合成は、AMV Reverse Transcriptase First-strand cDNA Synthesis Kit (生化学工業社)等を用いて行うこともできる。また、5'-Ampli FINDER RACE Kit (Clontech製)およびポリメラーゼ連鎖反応 (polymerase chain reaction ; PCR)を用いた5'-RACE法(Frohman, M. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85, 8998-9002 ; Belyavsky, A. et al., Nucleic Acids Res. (1989) 17, 2919-2932)に従い、cDNAの合成および増幅を行うことができる。
得られたPCR産物から目的とするDNA断片を調製し、ベクターDNAと連結する。さらに、これより組換えベクターを作製し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。目的とするDNAの塩基配列は、公知の方法、例えば、ジデオキシヌクレオチドチェインターミネーション法により確認することができる。
また、本発明のDNAにおいては、発現に使用する宿主のコドン使用頻度を考慮して、より発現効率の高い塩基配列を設計することができる(Grantham, R. et al., Nucelic Acids Research (1981) 9, r43-74 )。また、本発明のDNAは、市販のキットや公知の方法によって改変することができる。改変としては、例えば、制限酵素による消化、合成オリゴヌクレオチドや適当なDNAフラグメントの挿入、リンカーの付加、開始コドン(ATG)および/または終止コドン(TAA、TGA、またはTAG)の挿入等が挙げられる。
本発明のオリゴヌクレオチドは、試料中においてDKK1遺伝子を検出するための核酸プローブとして用いることができる。本発明のプローブは、配列番号1に記載される塩基配列またはこれと相補的な塩基配列の少なくとも12塩基、20、30、50または100塩基またはそれ以上の連続する塩基配列を有し、DKK1遺伝子の特定の領域に特異的にハイブリダイズするよう選択される。組織、血液等の試料からDNAを抽出するか、またはmRNAを抽出してcDNAを合成し、これをハイブリダイゼーションが生じるような条件下でプローブと接触させ、試料に結合したプローブの存在または量を検出することにより、試料中におけるDKK1遺伝子またはその転写産物の存在または量または変異を検出することができる。
プローブは、固体支持体上に固定化してもよい。そのような固体支持体の例としては、限定されないが、プラスチック、アガロース、セファロース、ポリアクリルアミド、ラテックスビーズおよびニトロセルロース等が含まれる。プローブをそのような固体支持体に結合させる技術は当該技術分野においてよく知られている。プローブは、標準的な標識技術、例えば放射性標識、酵素標識(西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ)、蛍光標識、ビオチン−アビジン標識、化学発光等を用いて標識することにより可視化することができる。すなわち、本発明のポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、試料中のDKK1遺伝子またはその転写産物の存在を検出するためのキットとして提供することができる。このようなキットは、上述のプローブに加えて、洗浄試薬、結合したプローブの存在を検出することができる試薬、ならびに使用の指針を含むことができる。
あるいは、本発明の診断用キットは、配列番号1に記載される塩基配列を増幅することができる1組のプライマーを含んでいてもよい。このようなプライマーを用いて、適当なcDNAライブラリをテンプレートとして、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により目的とする配列を増幅した後、ハイブリダイゼーションまたは塩基配列決定などの手法によりPCR産物を分析し、試料中のDKK1遺伝子またはその転写産物の存在または量または変異を検出することができる。このようなPCR手法は当該技術分野においてよく知られており、例えば、"PCR Protocols,A Guide to Methods and Applications"、Academic Press,Michael,et al.,eds.1990に記載されている。
プライマーとして用いるためには、本発明のオリゴヌクレオチドは、好ましくは、配列番号1に示される塩基配列、またはこれと相補的な塩基配列中の連続する少なくとも12塩基、好ましくは12−50塩基、より好ましくは12−20塩基の配列を有する。
本発明のポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、DKK1遺伝子によりコードされるmRNAに結合しその発現を阻害するアンチセンス分子、またはmRNAを切断するリボザイムまたはsiRNAとして用いて、癌関連遺伝子をサイレンシングすることができる。アンチセンス、リボザイムおよびsiRNA技術を用いて遺伝子発現を制御する方法は当該技術分野においてよく知られている。例えば、本発明の組成物を適当な担体とともに投与してもよく、あるいは、アンチセンス、リボザイムまたはsiRNAをコードするベクターを投与してインビボでこれらの発現を誘導してもよい。
"リボザイム"とは、mRNAを切断する触媒活性を有する核酸分子を表す。リボザイムは、一般に、エンドヌクレアーゼ、リガーゼまたはポリメラーゼ活性を示す。種々のタイプのトランス作用性リボザイム、例えばハンマーヘッドおよびヘアピンタイプのリボザイムが知られている。
"アンチセンス"とは、ゲノムDNAおよび/またはmRNAと特異的にハイブリダイズし、その転写および/または翻訳を阻害することによりその蛋白質の発現を阻害する、核酸分子またはその誘導体を表す。結合は一般的な塩基対相補性によるものでもよく、または、例えば、DNAデュープレックスへの結合の場合には、二重ヘリックスの主溝における特異的相互作用によるものでもよい。アンチセンス核酸の標的部位としては、mRNAの5' 末端、例えばAUG開始コドンまでおよびこれを含む5' 非翻訳配列が好ましいが、mRNAの3' 非翻訳配列またはコーディング領域の配列もmRNAの翻訳の阻害に有効であることが知られている。
siRNAとは、RNA干渉(RNAi)を行うことができる二本鎖核酸を意味する(例えば、Bass,2001,Nature,411,428−429;Elbashir et al.,2001,Nature,411,494−498を参照)。siRNAは、配列特異的にmRNAを分解し、このことにより遺伝子の発現を抑制することができる。siRNAは、典型的には、標的とする配列に相補的な配列を含む20−25塩基対の長さの二本鎖RNAである。siRNA分子は、化学的に修飾されたヌクレオチドおよび非ヌクレオチドを含んでいてもよい。
さらに、本発明のポリヌクレオチドは、本発明の蛋白質を製造する際に用いることも可能である。
さらに別の観点においては、本発明は、抗癌活性を有する化合物を同定する方法を提供する。この方法は、培養ヒト細胞を試験化合物と接触させ、そして前記細胞において配列番号1に記載される塩基配列を含む遺伝子の発現量の変化を引き起こす化合物を抗癌活性を有する化合物として同定する工程を含む。
試験化合物としては、天然または合成の任意の化合物を用いることができ、コンビナトリアルライブラリを用いてもよい。細胞におけるDKK1遺伝子の発現量は、例えば、上述した定量的PCR法により簡便に測定することができるが、当該技術分野において知られる他のいずれの方法を用いてもよい。
また、本発明は、DKK1遺伝子または蛋白質の発現量を測定する工程を含む、癌の診断・モニター方法を提供する。以下に診断・モニター方法の具体的な態様を記載するが、本発明は、それらの方法に限定されるものではない。
本発明の方法の1つの態様としては、まず、被検者からRNA試料を調製する。次いで、該RNA試料に含まれる本発明の蛋白質をコードするRNAの量を測定する。次いで、測定されたRNAの量を対照と比較する。別の態様としては、まず、被検者からcDNA試料を調製する。次いで、該cDNA試料に含まれる本発明の蛋白質をコードするcDNAの量を測定する。次いで、測定されたcDNAの量を対照と比較する。
これらのような方法としては、当業者らに周知の方法、例えばノーザンブロッティング法、RT-PCR法、DNAアレイ法等を挙げることができる。
DNAアレイ法においては、被検者から調製したRNAを鋳型としてcDNA試料を調製し、本発明のオリゴヌクレオチドが固定された基板と接触させ、該cDNA試料と該基板に固定されたヌクレオチドプローブとのハイブリダイズの強度を検出することにより、該cDNA試料に含まれる本発明の遺伝子の発現量を測定する。次いで、測定された本発明の遺伝子の発現量を対照と比較する。
被検者からのcDNA試料の調製は、当業者に周知の方法で行うことができる。cDNA試料の調製の好ましい態様においては、まず被検者の細胞あるいは組織(例えば、膵臓,、肝臓など)から全RNAの抽出を行う。全RNAの抽出は、当業者にとって周知の方法、例えば次のようにして行うことができる。全RNA抽出には純度の高い全RNAが調製できる方法であれば、既存の方法およびキット等を用いることが可能である。例えばAmbion社 "RNA later"を用い前処理を行った後、ニッポンジーン社"Isogen"を用いて全RNAの抽出を行う。具体的方法にはそれらの添付プロトコールに従えばよい。
次いで、抽出した全RNAを鋳型として、逆転写酵素を用いてcDNAの合成を行い、cDNA試料を調製する。全RNAからのcDNAの合成は、当業者に周知の方法で実施することができる。調製したcDNA試料には、必要に応じて、検出のための標識を施す。標識物質としては、検出可能なものであれば特に制限はなく、例えば、蛍光物質、放射性元素等を挙げることができる。標識は、当業者によって一般的に行われる方法(L Luo et al., Gene expression profiles of laser-captured adjacent neuronal subtypes. Nat Med. 1999, 117-122)記載の方法で実施することができる。
ヌクレオチドプローブと該cDNAとのハイブリダイズの強度の検出は、cDNA試料を標識した物質の種類に応じて当業者においては適宜行うことができる。例えば、cDNAが蛍光物質によって標識された場合、スキャナーによって蛍光シグナルを読み取ることによって検出することができる。
本発明の方法の別の態様としては、まず、被検者の細胞あるいは組織から蛋白質試料を調製する。次いで、該蛋白質試料に含まれる本発明の蛋白質の量を測定する。次いで、測定された蛋白質の量を対照と比較する。
このような方法としては、SDSポリアクリルアミド電気泳動法、並びに本発明の抗体を用いた、ウェスタンブロッティング法、ドットブロッティング法、免疫沈降法、酵素結合免疫測定法(ELISA)、および免疫蛍光法を例示することができる。又、本発明の遺伝子の発現量の測定のかわりに、本発明の蛋白質の発現量を測定することによっても、癌の診断を行うことが可能である。
上記の方法において、対照と比較して、本発明の遺伝子または蛋白質の発現量が有意に上昇していた場合、被検者は、癌を発症している、もしくは発症する可能性が高いと判定される。
本発明はまた、癌の診断・モニター方法に用いるための診断・モニター薬を提供する。このような診断・モニター薬としては、本発明のオリゴヌクレオチドを含む検査薬(オリゴヌクレオチドプローブが固定された基板を含む)、本発明の抗体を含む検査薬が挙げられる。上記抗体は、検査に用いることが可能な抗体であれば、特に制限はない。抗体は必要に応じて標識される。
上記の診断・モニター薬においては、有効成分であるオリゴヌクレオチドや抗体以外に、例えば、滅菌水、生理食塩水、植物油、界面活性剤、脂質、溶解補助剤、緩衝剤、蛋白質安定剤(BSAやゼラチンなど)、保存剤等が必要に応じて混合されていてもよい。
以下に実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1
肺癌患者組織及び肺癌由来細胞株におけるDKK1遺伝子のGene Chipによる発現解析
肺癌組織及び正常肺組織から得たmRNAからcRNAを調製し、そこに含まれるDKK1遺伝子の発現量を解析した。まず、RNAはISOGEN(日本ジーン社)を用いて添付の方法に従い調製した。その後、Affymetrix社のプロトコールに従ってcRNA合成を行った。すなわち、SuperScript II(Invitrogen社)を用いて逆転写反応し、cDNAを合成した。このcDNAを鋳型としてDNAポリメラーゼを用いて二本鎖cDNAを合成し、この二本鎖cDNAを鋳型としてMegaScript(Ambion社)を用いてビオチンラベル化されたcRNA合成を行った。合成されたcRNAは福元らの方法(Shin-ichi Fukumotoら、クリニカル・キャンサー・リサーチ)によって、GeneChip U133 A、及びBチップ(アフィメトリックス社) に添加した。45℃、60 rpmで16時間ハイブリダイゼーションした後、蛍光ラベルしたアビジンを作用させ、スキャナーで蛍光強度を測定することでmRNAの発現量を測定した。それぞれの解析における全遺伝子の発現スコアの平均値を100とし、各遺伝子の発現量は相対値とした。
その結果、図1に示すように、肺の癌部では正常部に対してDKK1の遺伝子発現が亢進していることを見いだした。また、同様に肺癌に由来する細胞株A549でもDKK1遺伝子の発現の亢進が確認された。
実施例2
膵癌患者組織及び膵癌由来細胞株におけるDKK1遺伝子のGene Chipによる発現解析
実施例1に示した方法で、膵癌組織及び正常膵臓組織から得たmRNAからcRNAを調製し、そこに含まれるDKK1遺伝子の発現量を解析した。結果は図2に示すように、膵臓の癌部では正常部に対してDKK1の遺伝子発現が亢進していた。また、同様に膵癌に由来する細胞株PK1、PK59、Capan1、KLN1、Panc1、PaCa2でもDKK1遺伝子の発現の亢進が確認された。
実施例3
肝癌患者組織、および肝癌由来細胞株におけるDKK1遺伝子のGene Chipによる発現解析
実施例1に示した方法で、肝癌組織、肝硬変部位、および正常肝臓組織から得たmRNAからcRNAを調製し、そこに含まれるDKK1遺伝子の発現量を解析した結果を図3に示した。正常部及び肝硬変部位に比較して肝癌部位でDKK1遺伝子の発現が亢進していることが明らかになった。特に低分化型肝癌で発現亢進が著しい。肝癌由来細胞株HePG2、HLE、Huh6、Huh7でもDKK1遺伝子の高い発現が確認された。
実施例4
大腸癌患者組織、および大腸癌由来細胞株におけるDKK1遺伝子のGene Chip発現解析
実施例1に示した方法で、大腸癌組織、および正常大腸組織から得たmRNAからcRNAを調製し、そこに含まれるDKK1遺伝子の発現量を解析した結果を図4に示した。正常部に比較して大腸癌部位でDKK1遺伝子の発現が亢進していることが明らかになった。大腸癌由来細胞株SW480、HCT116、CaCo2、HT29でもDKK1遺伝子の高い発現が確認された。
実施例5
胃癌患者組織、および胃癌由来細胞株におけるDKK1遺伝子のGene Chipによる発現解析
実施例1に示した方法で、胃癌組織、および正常胃組織から得たmRNAからcRNAを調製し、そこに含まれるDKK1遺伝子の発現量を解析した結果を図5に示した。正常部に比較して胃癌部位でDKK1遺伝子の発現が亢進していることが明らかになった。胃癌由来細胞株2M、2MLNでもDKK1遺伝子の高い発現が確認された。
実施例6
肝芽種患者組織におけるDKK1遺伝子のGene Chipによる発現解析
実施例1に示した方法で、肝芽種組織、および正常小児肝組織から得たmRNAからcRNAを調製し、そこに含まれるDKK1遺伝子の発現量を解析した結果を図6に示した。正常部に比較して肝芽種部位でDKK1遺伝子の発現が亢進していることが明らかになった。
実施例7
肝芽種患者組織及び肝癌細胞株におけるDKK1遺伝子の定量的RT-PCRによる発現解析
肝芽種及び正常小児肝臓組織、肝癌由来細胞株より、実施例1に示した方法、すなわち、ISOGENによるRNA抽出、SuperScript IIによるcDNA合成を行い、これにより得られたcDNAを鋳型にした定量的RT-PCRを行った。定量的RT-PCRはcDNAの存在量を定量化する方法である。具体的には、SYBR GREENを添加したRT-PCRを行い、cDNAの増幅量をSYBR GREEN由来の蛍光量で測定した。用いたPCRプライマーは、DKK1(NM_012242)の633から828番の塩基を増幅させる配列番号3及び配列番号4に記載されたオリゴヌクレオチドである。これによって定量化されたDKK1遺伝子の発現量を図7に示す。正常部に比較して肝芽種および肝癌由来細胞株でDKK1遺伝子の発現亢進が確認された。この結果は、3及び実施例7のGeneChipによるDKK1遺伝子の発現解析の結果と相関していた。
実施例8
DKK1遺伝子のサブクローニング
配列番号2に記載されたDKK1の蛋白質をコードする領域の遺伝子は、大腸癌細胞株CaCo2のcDNAから増幅させた。PCRプライマーには、制限酵素サイトBamHIが付加されたフォワードプライマー配列番号5及びSmaIサイトが付加された配列番号6からなるリバースプライマーのオリゴヌクレオチドを用いた。PCR用酵素及び試薬には、アドバンテージ2ポリメラーゼミックス(Advantage 2 Polymerase Mix;クロンテック社製)及びアドバンテージ2PCRバッファー(Advantage 2 PCR buffer)、200μM デオキシヌクレオチド三リン酸、0.2μMプライマーを用い、cDNA 1μLを鋳型にしたPCR(94℃30秒、68℃30秒、72℃2分、35サイクル)を行った。
PCR産物は0.8%のアガロースゲルで電気泳動を行った後、DKK1の遺伝子と長さが同一である部位を切り出し、キアクイック ゲル抽出キット(QIAquick gel extraction kit;キアゲン社製)を用いてゲルからPCR産物の溶出及び精製を行った。
精製されたPCR産物は、DNAライゲーションキット(タカラ社製)を用いてpGEM−Teasyベクター(プロメガ社製)に組み込みを行った。ゲルから精製を行ったPCR産物4μLに、ライゲーションバッファー 5μL及びpGEM−Teasyベクターを加え、16℃で30分間保温した。
PCR産物を組み込んだpGEM−T easyベクターはコンピテント細胞XL−1 Blue(ストラタジーン社製)へ形質転換し、5−ブロモ−4−クロロ−3−β−インドリルーガラクトピラノシド(5-Bromo-4-Chloro-3-Indolyl-β-Galactopyranoside;X-gal)を用いたカラーセレクションを行い、PCR産物が組み込まれたベクターのみを選出した。形質転換は、コンピテント細胞に10μLのライゲーション反応産物を加え、30分間氷冷後に、42℃のヒートショック45秒、続けて2分間氷冷して形質転換を起こさせた。さらに、抗生物質耐性遺伝子の発現を行うために抗生剤を含まないLB培地を900μL加え、37℃で30分間穏やかに撹拌した。遠心で菌体を回収し、20mg/mLのX−galを20μL散布させた、アンピシリンを含むLBプレートに菌体をまき込み、37℃で16時間培養した。プレート上で生育したコロニーのうち、発色をしていないコロニー(PCR産物がベクターに組み込まれていることが予想されるもの)を5個選択し、最終濃度が100μg/mLのアンピシリンを含む5mLのLB培地で37℃、16時間激しく撹拌し、菌体を増殖させた。
増殖した菌体の一部から、フェノール/クロロホルム抽出によってプラスミドDNAを回収し、EcoR I(8U/μL)を0.5μL、10×H バッファーを2μL、蒸留水を7.5μL加え、37℃で1時間消化を行った。0.8%のアガロースゲルを用いた電気泳動で消化物のサイズが目的のPCR産物のサイズと同一であることを確認した。
DKK1の遺伝子が組み込まれたと考えられるプラスミドDNAの回収はカンタムプレップ プラスミド ミニプレップキット(Quantum Prep Plasmid MiniPrep Kit (バイオラッド社製)を用いて行った。溶出は蒸留水で行った。
精製されたプラスミドに組み込まれたPCR産物の塩基配列の確認をキャピラリー電気泳動によるシーケンスで行った。シーケンスの反応は、ダイナミックETターミネーター サイクル シーケンス キット(DYEnamic ET Terminator Cycle Sequencing Kit;アマシャムバイオサイエンス社製)を用い、各0.2μMのT7プライマー(配列番号7)及びSP6プライマー(配列番号8)を用いた。シーケンスによって得られたPCR産物の塩基配列は、UniGeneのデータから得られた野生型のDKK1配列(NM_012242)のコーディング領域と比較し、変異のないPCR産物をもつプラスミドDNAを選び出した。
実施例9
大腸菌発現系ベクターの構築
シーケンスで野生型のDKK1と同一のアミノ酸配列(配列番号2)をコードすることが確認されたプラスミドDNAは、制限酵素(Bam HI及びSma I)で酵素消化(37℃、1時間)を行い、0.8%のアガロースゲルで電気泳動を行い、pGEM−T easyから遺伝子を単離、精製した。精製はキアクイック ゲル抽出キットを用いて行った。
pGEM−T easyによって増幅され、切り出されたフラグメントは、大腸菌蛋白質発現用ベクターであるpET41b(ノバジェン社製)に組み換えた。pET41に組み込まれた遺伝子は、GST融合蛋白質として翻訳される。
pET41を制限酵素(Bam HI及びSma I)で消化し、電気泳動を行い、キアクイック ゲル抽出キットで精製を行った。pGEM−T easyによって増幅したDKK1の配列をもつフラグメントはDNAライゲーションキットを用いてpET41bに組み込みを行った。
pGEM−T easyから精製を行ったDKK1フラグメント4μLに、ライゲーションバッファー5μL及びpET41bを1μL加え、16℃で30分間保温した。
ライゲーション反応の終了したプラスミドDNAはXL−1 Blueへ形質転換を行い、カナマイシンを含むLB培地で16時間振盪を行い、菌体を増殖させた。増殖させた大腸菌から、カンタムプレップ プラスミド ミニプレップキットを用いて、プラスミドの精製を行った。pET41へのDKK1の挿入を確認するために、pETがもつ配列に対するプライマー(配列番号9及び10)でシーケンスを行った。
pET41ベクターに組み込まれた配列番号1のDKK1は、T7プロモーターを持つコンピテント細胞BL21 Codon PLUS pLys(ノバジェン社製)に形質転換させた。
形質転換は、以下の手順で行った。100μLのBL21 Codon PLUS RILにpET‐DKK1‐FLを1μg/μL濃度で1μL加え5分間氷冷した。その後、42℃の恒温層に20秒間漬け、ヒートショックを与えた。さらに2分間氷冷した後、900μLの抗生剤無添加のLBを加え、37℃で10分間インキュベートした後に、遠心(1000×g、5分)を行った。
上清を廃棄した後コンピテント細胞を再懸濁させ、カナマイシンを含んだLBプレートにまきこんで37℃で16時間、選択培養を行った。
実施例10
大腸菌発現系におけるGST融合DKK1蛋白質の調製
蛋白質合成は以下の手順で行った。プラスミドが導入されたと考えられるカナマイシン耐性のコロニーを、カナマイシンを含む5mLのLB培地の中でコンフルエントになるまで培養を行った。この培養液を500mLのカナマイシン入りLB培地に加え、旋回振とうさせながら37℃で培養を行った後に、菌体が増殖したことを確認した上で、蛋白質合成を誘導するIPTG(Isopropyl-Thio-β-D-Galactopyranoside)を500μMになるように加え、22℃で16時間、旋回振とう培養を行った。
GST融合蛋白質の精製は、GSTとグルタチオンの結合を利用したアフィニティー精製で行った。まず、培養液を6000×g、4℃で10分間遠心することで大腸菌の菌体を回収した。菌体溶解バッファー(50mM塩化ナトリウム、1mM EDTA、1mM ジチオスレイトール(DTT)、50mMトリスヒドロキシアミノメタン塩酸塩, pH8.0)を加え、氷上で超音波処理を行った。その後、最終濃度が1%になるようにTriton X‐100を添加し、13400×g、4℃で45分間遠心を行って上清を回収した。この上清にグルタチオンセファロース(アマシャムバイオサイエンス社製)を500μL加え、4℃で1時間転倒混和を行ない、GST‐DKK1融合蛋白質を吸着させた。
遠心(3000×g、4℃、5分)でグルタチオンセファロースを回収し、10mLのPBS‐T(0.5%Triton X‐100を含むPBS)で洗浄後、溶出バッファー(50mM還元型グルタチオン、200mM塩化ナトリウム1mM EDTA、1mMDTT、200mM Tris-HCl,pH8.0)を加えて4℃で1時間転倒混和し、GST融合蛋白質を溶出させた。遠心(3000×g、4℃、5分)によってグルタチオンセファロースを除去し、GST融合DKK1精製蛋白質を得た。この精製蛋白質は脱塩カラムであるPD‐10カラム(アマシャムバイオサイエンス社製)でPBS溶液とした。
さらに純度を高めるために、FPLCによるイオン交換クロマトグラフィーを行った。PD‐10カラム(アマシャムバイオサイエンス社製)でPBS溶液とし、用いたカラムはMonoQカラム、塩化カリウムの濃度勾配によって溶出を行った。
FPLC精製されたGST融合DKK1は、PD‐10カラムでPBS溶液とした。ブラッドフォード法によって蛋白質濃度を定量し、SDS‐PAGEによって純度を検定し、免疫に必要な蛋白質の量及び純度を満たしていることを確認し、この蛋白質を以下に示すモノクローナル抗体作製のための免疫原とした。
実施例11
哺乳類細胞発現系によるDKK1蛋白質の調製
哺乳類細胞発現系に用いるベクターを作製した。実施例8によってサブクローニングされたDKK1遺伝子を鋳型に、制限酵素サイトHindIIIが付加された配列番号11のフォワードプライマー、及びポリヒスチジンタグをコードする配列と制限酵素サイトBamHIの配列が付加された配列番号12のリバースプライマーを用いたPCRを行った。増幅されたPCR産物は、実施例9と同様の手法で精製を行った後、HindIIIおよびBamHIサイトにて切断したフラグメントをphCMVベクター(ストラタジーン社)への挿入を行った。
TransIT(TaKaRa社)のプロトコールに準じて、トランスフェクションを行った。前日に6ウェルデイッシュに、10万個のチャイニーズハムスター卵巣由来のCHO細胞を播種し一晩培養を行った。翌日に8μgの発現ベクターphCMV-DKK1-Hisと16μLのTransIt reagentを無血清DMEM培地100μLに混合し、20分間の室温におけるインキュベーションを行った後、細胞培養液に加えトランスフェクションを行った。トランスフェクション翌日に限外希釈法および選択試薬であるG418を用いてクローニングを開始した。各クローンの培養上清のサンプリングを行い培養上清中のDKK1の発現量の検定を行った結果、約5-10μg/mLのDKK1-His融合蛋白質を発現する恒常的クローンが存在し、これらを選択した。
選択した恒常的発現クローンを150cm2のフラスコ、無血清培地S-SFM-II(Invitrogen社)20mLにて培養を48時間行い、培養上清を回収した。得られた培養上清からTARON Hisタグ精製レジン(BD Bioscience社)を用いて添付マニュアルに従いDKK1- His 融合蛋白質の精製を行った。精製された融合蛋白質はPBSに対し透析を行いSDS-PAGEによる純度検定の後、免疫用抗原およびELISA測定における標準品として用いた。
実施例12
抗DKK1モノクローナル抗体の作製
実施例10の方法で調製したGST融合DKK1蛋白質、または実施例11の方法で調製したDKK1-His抗原100μg/0.1mLと、フロイント完全アジュバント0.1mLを混合してエマルジョンを形成させ、BALB/cマウスに腹腔内投与することにより、初回免疫を行った。2週間後に、GST融合DKK1蛋白質、またはDKK1-His抗原100μg/0.1mLと、フロイント不完全アジュバント0.1mLを混合してエマルジョンを形成させ、BALB/cマウスに腹腔内投与して2回目の免疫を行った。さらに2週間後に、GST融合DKK1蛋白質、またはDKK1-His抗原25μg/0.1mLを静脈注射して投与し、最終免疫を行った。最終免疫後にこのマウスから脾臓細胞を調製し、通常のポリエチレングリコールを使用する方法によってマウスNS-1細胞との細胞融合を行った。
抗体産生細胞のスクリーニングは、GST融合DKK1蛋白質、またはDKK1-His抗原を固相したELISAで行い、特異的に結合する抗体の選別を行った。DKK1のみを特異的に認識する細胞、すなわち、GSTあるいはHisを認識せず、DKK1蛋白質を認識する細胞のみを選択し、DKK1に対する特異性の高いモノクローナル抗体を多数作製することに成功した。このモノクローナル抗体、PPMX0301はウエスタンブロティングによるDKK1測定に利用可能であったことから、特許微生物寄託センターにFERM P−20317として寄託した。
実施例13
抗DKK1ポリクローナル抗体の作製
精製DKK1-Hisを用いて、ウサギポリクローナル抗体の作製を行った。作製には、公知の方法を用いた。精製DKK1-Hisを、アジュバントを用いてエマルジョン化したものを皮下に投与し、免疫を行った。これを数回繰り返し、抗体価が上昇したのを確認した後、採血を行い、血清を得た。次いで、Protein Gを固定化したセファロースビーズ(アマシャムバイオサイエンス社製)により精製後、さらにDKK1-Hisを固定化したSepharose 4Bにて精製し、精製ポリクローナル抗体を取得した。
実施例14
哺乳類細胞における一過性発現に用いるDKK1発現ベクターの構築
実施例9によってサブクローニングされたDKK1遺伝子を鋳型に、Bam HIの配列が付加された配列番号13、およびXho Iが付加された配列番号14のオリゴヌクレオチドをプライマーとしたPCR(94℃30秒、68℃30秒、72℃2分、35サイクル)を行った。このPCR産物を実施例9で実施した方法と同様の手法で、あらかじめ、Bam HI及びXho Iで切断されたpcDNA4 MycHis A(インビトロジェン社)に組み換えを行った。
実施例15
哺乳類細胞におけるDKK1の一過性発現及びウェスタンブロッティング
実施例14で作製したDKK1をコードする遺伝子を組み込んだpcDNA4 Myc-Hisを、FuGENE6(ロシュ・ダイアグノスティクス社)を用いてミドリザル腎臓由来のCOS7細胞に導入した。導入後、48時間後の細胞内蛋白質および培養上清を回収した。細胞内蛋白質は、培養細胞をPBSで3回洗浄した後にRIPAバッファー(150mM塩化ナトリウム,1%NP-40,0.5%デオキシコール酸, 0.1%SDS,50mMTris-HCl pH8.0)によって抽出した。各々の蛋白質抽出液の蛋白質濃度をブラッドフォード法で定量し、5 mg/mLとなるように調製した後、SDS-サンプルバッファーと等量混合し(最終濃度、SDS 2%,2-メルカプトエタノール5%)、95℃で5分間加熱処理を行った。10μgの蛋白質抽出液について12%ポリアクリルアミドゲルを用いたSDS-PAGEを行った。分離された蛋白質は渡辺らの方法(Akira Watanabeら、キャンサー・リサーチ、63巻8629頁(2003年))によってウェスタンブロッティングを行った。すなわち、Hybond-P(アマシャムバイオサイエンス社製)膜に100Vで60min転写し、転写膜を2%スキムミルクで25℃ 1hブロッキングした後、50mM Tris buffered saline(以下TBS)で3回洗浄した。抗Myc抗体(サンタクルーズ社、最終濃度1μg/ml)もしくは抗DKK1モノクローナル抗体(PPMX0301;最終濃度10μg/ml)を、室温で1時間反応させた後、TBSで3回洗浄を行った。HRP標識抗マウスIgG抗体(アマシャムバイオサイエンス社製)の5000倍希釈液5mLをアプライし、室温で1時間反応させた後TBSで3回洗浄を行った。ECL plus検出試薬(アマシャムバイオサイエンス社製)を2mLアプライし、得られた化学発光シグナルをX腺フィルムに5min感光させた。このようにして実施したウェスタンブロッティングの結果を図8に示す。陰性コントロールとしてDKK1遺伝子の導入していないCOS7細胞の抽出液を用いた。抗Myc抗体、及び抗DKK1モノクローナル抗体を用いた細胞質抽出液に対するウェスタンブロッティングでは、2種類の抗体で、ともに37kダルトン付近にバンドが検出された。培養上清に対するウェスタンブロッティングでは、2種類の抗体でともに、37kダルトンから50kダルトンの間にバンドが検出された。このことは細胞質に存在するDKK1蛋白質と培養上清に分泌されるDKK1蛋白質の分子量が異なっていることを示している。これは、例えば、糖鎖修飾等による翻訳後修飾の可能性もあるし、立体構造の変化による可能性もある。
実施例16
各種癌細胞株抽出液中DKK1のウエスタンブロッティングによる検出
実施例1、2、3、4、5および6にて、各種癌組織および癌由来細胞株におけるDKK1遺伝子の発現亢進が確認できたことから、蛋白質レベルでの産生亢進を確認する目的で、各種癌細胞株Panc1(膵臓癌細胞株)、Caco2(大腸癌細胞株)、Huh-6(肝癌細胞株)、MDA-MB-231(乳癌細胞株)、KatoIII(胃癌細胞株)、PC3(前立腺癌細胞株)、H157(
肺癌細胞株)、A549(肺癌細胞株)の抽出液について、ウエスタンブロッティングを行いDKK1の検出を試みた。標準品として、精製DKK1−Hisを用いた。抽出液は、各培養細胞をPBSで3回洗浄した後にRIPA buffer(150mM塩化ナトリウム,1%NP-40,0.5%デオキシコール酸, 0.1%SDS,50mMTris-HCl pH8.0)を添加することで得た。各抽出液2.0μLを還元状態でSDS-PAGEし、泳動後のゲルをPVDF膜に転写した。転写した膜上のDKK1を抗DKK1ポリクローナル抗体と反応させた。その後、抗DKK1ポリクローナル抗体は HRP標識抗ウサギIgG抗体と反応させ、DKK1のバンドを検出した。その結果を図9に示した。5つの細胞株Panc1、Caco2、Huh-6、MDA-MB-231、PC3、A549の抽出液で、標準品DKK1-Hisとほぼ同一位置にバンドが確認できたことから、膵臓、大腸、肝臓、乳、前立腺および肺の組織上の癌化した細胞内にDKK1蛋白質が存在することが予測され、癌組織を用いた癌の確定診断への利用が示唆された。
実施例17
各種癌細胞株培養液中DKK1のウエスタンブロッティングによる検出
各種癌細胞株培養液中にDKK1蛋白質が存在するか否かを調べるため、各種癌細胞株Panc1、Caco2、Huh-6、MDA-MB-231、KatoIII、PC3、H157、A549の培養上清について、ウエ
スタンブロットにて検討した。各レーンに細胞培養上清4.0μLをアプライした。還元状態でSDS-PAGEを行い、抗DKK1ポリクローナル抗体で、膜上のDKK1と反応させた。その後、抗DKK1ポリクローナル抗体は HRP標識抗ウサギIgG抗体と反応させ、DKK1のバンドの検出を試みた。尚、陽性コントロールには精製DKK1-Hisを用いた。その結果、図10に示すように5つの細胞株Panc1、Caco2、Huh-6、MDA-MB-231、PC3、A549の培養液で、標準品DKK1-Hisとほぼ同一位置にバンドが確認できたことから、膵癌、大腸癌、肝癌、乳癌、前立腺癌および肺癌患者血清において蛋白質レベルでのDKK1蛋白質が存在することが予測され、癌組織を用いた癌の診断・モニターへの利用の可能性が示唆された。
実施例18
ELISA測定系の構築
実施例13にて作製した抗DKK1ポリクローナル抗体をPIERCE社のNHS-LC-BIOTINを用いてビオチン標識した。NUNC社のMaxi sorp 96穴プレートに抗DKK1抗体5μg/mL 100μL/wellを添加し、4℃ 一晩吸着させた。0.05%Tween-20を含むPBS(以後wash液)にてプレートを洗浄し、ABi biotechnologies社のImmunoassay stabilizer 150μL/wellにて室温下、1時間プレート上の未吸着部分をブロッキングさせた。Wash液で洗浄後、各濃度のDKK1-His 100μL/wellを室温下、1時間反応させた。Wash液で洗浄後、ビオチン標識した抗DKK1抗体 0.1μg/mL、100μL/wellで室温下、1時間反応させた。Wash液で洗浄後、Vector社のストレプタビジンー西洋ワサビペルオキシダーゼ1.0μg/mL、110μL/wellで室温下、1時間反応させた。Wash液で洗浄後、TMB試薬で暗所にて室温、30分間反応させたのち、STOP液にて反応を停止させた。その後、ELISAプレートにて450nmの吸光度を測定した。測定条件検討の結果、血清検体の希釈を40%BA/ TBS/ 0.1%NaN3にて実施することにした。
実施例19
各種癌細胞株培養液中DKK1のELISAによる定量
実施例18で作製したELISA系にて、実施例17で使用した各種癌由来細胞株培養液中DKK1蛋白質濃度を測定した。先ず、各濃度のDKK1とその測定値からブランクの測定値を差し引いた値(NET)より図11の検量線を作成した。次いで、各種癌細胞株の培養上清を2から1000倍に希釈した溶液について測定し、元の培養上清中のDKK1濃度を求めた。結果は、図12に示すように実施例8のウエスタンブロッティングの結果とほぼ同様であったことから、本ELISA測定系がDKK1測定に使用可能であり、癌患者血清を用いた癌の診断・モニターへの利用の可能性が示唆された。
実施例20
膵癌患者および健常者血清中のDKK1の検出
膵癌由来細胞株培養上清にDKK1蛋白質が検出されたことから、膵癌患者37例および健常者47名について実施例18で作製したELISA系を用いて測定した。血清検体を10倍希釈して血清中に含まれるDKK1濃度を先の検量線から算出した。得られたDKK1濃度の分布を図13に示した。その結果、健常者47名の測定値は0.92から5.97ng/mL、平均で1.58 ng/mLであるのに対し、膵癌患者血清では5.05から21.72 ng/mL、平均で8.96 ng/mLであった。この結果から、DKK1蛋白質を測定することで膵癌を診断できることが明らかとなった。
実施例21
大腸癌、肝癌、胆嚢癌、胆管癌および胃癌患者血清中のDKK1の検出
多くの癌由来細胞株培養上清にDKK1蛋白質が検出されたことから、大腸癌患者20例、肝癌患者12例、胆嚢癌患者9例、胆管癌患者13例および胃癌患者14例について、膵癌患者血清と同様に血清中のDKK1濃度を測定した。得られたDKK1濃度の分布を図14に示す。その結果、大腸癌患者血清 2.92から9.57、平均 5.49、肝癌患者血清 3.80から7.85、平均 5.03、胆嚢癌患者血清 5.97から21.38、平均で10.46、胆管癌患者血清 3.76から11.29、平均で6.91、胃癌患者血清 3.15から10.38、平均 6.40であった。これらの癌患者群においても、健常者群に比べ高いDKK1濃度を示した。この結果から、DKK1蛋白質を測定することで大腸癌、肝癌、胆嚢癌、胆管癌および胃癌を診断できることが明らかとなった。
肺癌患者組織および癌由来細胞株におけるDKK1遺伝子のgene chipによる発現解析結果を示す図である。 膵癌患者組織および癌由来細胞株におけるDKK1遺伝子のgene chipによる発現解析結果を示す図である。 肝癌患者組織および癌由来細胞株におけるDKK1遺伝子のgene chipによる発現解析結果を示す図である。 大腸癌患者組織および癌由来細胞株におけるDKK1遺伝子のgene chipによる発現解析結果を示す図である。 胃癌患者組織および癌由来細胞株におけるDKK1遺伝子の解析結果を示す図である。 肝芽腫患者組織におけるDKK1遺伝子のgene chipによる発現解析結果を示す図である。 肝芽腫患者組織および癌由来細胞株におけるDKK1遺伝子の定量的RT-PCRによる解析結果を示す図である。 COS7細胞へのDKK1-pcDNA4 MycHisをトランスフェクションした細胞抽出液及び培養上清に対するウェスタンブロッティングの結果を示す図である。 ウエスタンブロッティングによる各種癌由来細胞株抽出液中におけるDKK1検出結果を示す図である。 ウエスタンブロッティングによる各種癌由来細胞株培養液中におけるDKK1検出結果を示す図である。 ELISA系におけるDKK1の検量線を示す図である。 ELISA測定による各種癌由来細胞株培養液中におけるDKK1濃度を示す図である。 ELISA測定による健常者および膵癌患者血清のDKK1濃度分布を示す図である。 ELISA測定による健常者および大腸癌、肝癌、胆嚢癌、胆管癌および胃癌患者血清のDKK1濃度分布を示す図である。

Claims (20)

  1. 生体試料中の、配列番号1に記載される塩基配列を有するDKK1遺伝子、蛋白質又はそのフラグメントを検出することを特徴とする癌の診断・モニター方法。
  2. 生体試料が、組織又は血液である請求項1記載の診断・モニター方法。
  3. 癌が、ミエローマ、乳癌及び前立腺癌を除く癌である請求項1又は2記載の診断・モニター方法。
  4. 検出が、免疫学的手法又は遺伝子検出手法によるものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の診断・モニター方法。
  5. 検出が、DKK1の蛋白質又はそのフラグメントを認識する抗体又は抗原結合性フラグメントを用いる免疫学的検出である請求項1〜3のいずれか1項に記載の診断・モニター方法。
  6. 以下の工程:
    (a)被験者から試料を採取する工程;
    (b)採取された試料中のDKK1の蛋白質を検出する工程
    を含む癌の診断・モニター方法。
  7. 生体試料中の、DKK1の蛋白質又はそのフラグメントを認識する抗体又は抗原結合性フラグメントを含有する癌の診断・モニター薬。
  8. 配列番号1に記載される塩基配列からなるポリヌクレオチド、これに相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチド、又はこれらのポリヌクレオチドとストリンジエントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを含有する癌の診断・モニター薬。
  9. 組織又は血液を試料とするものである請求項7又は8記載の診断・モニター薬。
  10. 癌が、ミエローマ、乳癌及び前立腺癌を除く癌である請求項7〜9のいずれか1項に記載の診断・モニター薬。
  11. DKK1の蛋白質又はそのフラグメントを認識する抗体又は抗原結合性フラグメントを用いることを特徴とする癌の治療方法。
  12. 配列番号1に記載される塩基配列からなるポリヌクレオチド、これに相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチド、又はこれらのポリヌクレオチドとストリンジエントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを用いることを特徴とする癌の治療方法。
  13. 癌が、ミエローマ、乳癌及び前立腺癌を除く癌である請求項11又は12記載の治療方法。
  14. DKK1の蛋白質又はそのフラグメントを認識する抗体又は抗原結合性フラグメントを含有する癌の治療薬。
  15. 配列番号1に記載される塩基配列からなるポリヌクレオチド、これに相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチド、又はこれらのポリヌクレオチドとストリンジエントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを含有する癌の治療薬。
  16. 癌が、ミエローマ、乳癌及び前立腺癌を除く癌である請求項14又は15記載の治療薬。
  17. DKK1の蛋白質又はそのフラグメントを認識する抗体又は抗原結合性フラグメントを含有する癌の診断・モニター用キット。
  18. 配列番号1に記載される塩基配列からなるポリヌクレオチド、これに相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチド、又はこれらのポリヌクレオチドとストリンジエントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを含有する癌の診断・モニター用キット。
  19. 癌が、ミエローマ、乳癌及び前立腺癌を除く癌である請求項17又は18記載のキット。
  20. 配列番号1に記載される塩基配列を有するDKK1遺伝子の発現量を測定することによる、抗癌活性を有する化合物の選定方法。
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