JP2004267003A - ヒト白血球型抗原領域に存在する新規遺伝子 - Google Patents

ヒト白血球型抗原領域に存在する新規遺伝子 Download PDF

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    • A61P11/00Drugs for disorders of the respiratory system

Abstract

【課題】HLA領域に存在する新規な遺伝子、該遺伝子がコードするポリペプチド、並びにそれらの製造および用途を提供することを課題とする。
【解決手段】HLA領域のゲノム配列につき、コンピュータプログラムを用いて発現配列の予測を行なうと供に、繰り返し配列を除いた該領域の塩基配列をデータベースを用いて相同性検索を行い、HLA領域内で機能的遺伝子の存在する可能性が高い発現配列を見い出した。予測された発現配列の情報を基にプライマーを設計し、ヒト肺cDNAライブラリーを鋳型として、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施し、これにより得られた増幅産物の塩基配列の決定を行なうことにより、目的の遺伝子を単離することに成功した。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多くの疾患と遺伝的相関を示すヒト白血球型抗原(HLA)領域に存在する新規な遺伝子、該遺伝子がコードするポリペプチド、並びにそれらの製造および用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
主要組織適合複合体は、きわめて多型性に富む一群の遺伝子からなる染色体上の領域で、ヒト第6染色体短腕に存在し、ヒト白血球型抗原(HLA)とも呼ばれている。HLA領域は数多くの疾患との遺伝学的解析が行われ、100種以上の疾患との遺伝的相関や連鎖が報告されている。びまん性汎細気管支炎感受性遺伝子もまたHLA領域に存在していると考えられている。びまん性汎細気管支炎は、両肺にびまん性に存在する呼吸細気管支領域の慢性炎症を特徴とし、呼吸機能障害をきたす疾患であり、慢性副鼻腔炎の合併から副鼻腔気管支症候群の一型とされる。病因は不明であるが、高率に慢性副鼻腔炎を合併し、家族発生頻度の高いこと、HLA−B54との高度の相関がみられることから、気道系の防御機構障害を中心とした遺伝性素因の関与が考えられている(新臨床内科学 第2版、医学書院)。
HLA領域に存在する遺伝子は、このように多くの疾患との関連が示唆されていることから、現在、医薬品開発の標的として注目されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的はHLA領域に存在する新規な遺伝子、該遺伝子がコードするポリペプチド、並びにそれらの製造および用途を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、まず、HLA領域のゲノム配列につき、コンピュータプログラムを用いて発現配列の予測を行なうと供に、一般的に機能的遺伝子が存在しないと考えられている繰り返し配列を除いた該領域の塩基配列をデータベースを用いて相同性検索を行った。これにより、HLA領域内で機能的遺伝子の存在する可能性が高い発現配列を見い出した。そこで、本発明者らは、次ぎに、予測された発現配列の情報を基にプライマーを設計し、該プライマーを用いてヒト肺cDNAライブラリーを鋳型にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施した。これによりHLA領域に存在する新規遺伝子を単離することに成功した。、単離した遺伝子のヒト各組織における発現パターンをRT−PCRによって解析した結果、該遺伝子は、心臓、胎盤、腎臓、直腸、小腸を除く幅広い組織で発現していることが判明した。単離した遺伝子は、HLA領域内において、特にびまん性汎細気管支炎の原因遺伝子の感受性領域と思われる領域に存在するため、該疾患との関連が示唆される。
【0005】
本発明は、HLA領域に存在する新規な遺伝子、該遺伝子がコードするポリペプチド、並びにそれらの製造および用途に関し、より詳しくは、
(1) 下記(a)から(d)のいずれかに記載のDNA、
(a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするDNA。
(b)配列番号:1に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA。
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドをコードするDNA。
(d)配列番号:1に記載の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドをコードするDNA。
(2) 配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの部分ペプチドをコードするDNA、
(3) (1)または(2)に記載のDNAによりコードされるポリペプチド、
(4) (1)または(2)に記載のDNAが挿入されたベクター、
(5) (1)または(2)に記載のDNAまたは(4)に記載のベクターを保持する形質転換細胞、
(6) (5)に記載の形質転換細胞を培養し、該形質転換細胞またはその培養上清から発現させたポリペプチドを回収する工程を含む、(3)に記載のポリペプチドの製造方法、
(7) (3)に記載のポリペプチドに結合する抗体、
(8) 配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNAまたはその相補鎖に相補的な少なくとも15ヌクレオチドを含むポリヌクレオチド、
(9) (3)に記載のポリペプチドに結合する化合物のスクリーニング方法であって、
(a)該ポリペプチドに被検試料を接触させる工程、
(b)該ポリペプチドと被検試料との結合活性を検出する工程、および
(c)該ポリペプチドに結合する活性を有する化合物を選択する工程、を含む方法、
(10) (9)に記載の方法により単離し得る、(3)に記載のポリペプチドに結合する化合物、および
(11) (1)若しくは(2)に記載のDNA、(3)に記載のポリペプチド、または(10)に記載の化合物を含有する医薬組成物、を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明は、HLA領域に存在する新規な遺伝子「xv−β」を提供する。ヒト由来のxv−β cDNAの塩基配列を配列番号:1に、該cDNAによりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号:2に示す。ヒト由来のxv−βゲノムDNAの塩基配列を配列番号:3に示す。
【0007】
本発明は、配列番号:1に示すヒト由来のxv−β cDNAの塩基配列を含む完全長cDNAを包含する。完全長cDNAは、xv−β cDNAの 3’末端を3’RACE (rapid amplification cDNA ends) 法により決定し、5’末端を5’RACE (rapid amplification cDNA ends) および Cap−site cDNAライブラリーのスクリーニングにより決定することにより、取得することができる。
【0008】
xv−β遺伝子は、ヒトゲノムにおいてヒト白血球型抗原(HLA)領域に存在する。該領域は数多くの疾患との遺伝的相関や連鎖が報告されている。xv−β遺伝子は該領域において、びまん性汎細気管支炎感受性遺伝子の原因遺伝子の感受性領域と推定される領域(S遺伝子とTFIIH遺伝子の間)に存在する。従って、xv−βポリペプチドは、HLA領域と関連する疾患、特にびまん性汎細気管支炎と関係していることが示唆され、これら疾患の治療や予防への応用が期待される。
【0009】
本発明は、また、xv−β遺伝子と機能的に同等なポリペプチドをコードするDNAを包含する。このようなDNAには、例えば、xv−βポリペプチドの変異体、アレル、バリアント、ホモログ等をコードするDNAが含まれる。ここで「機能的に同等」とは、対象となるポリペプチドが、xv−βポリペプチドと同等の生物学的機能を有することを指す。
【0010】
あるポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドを調製するための、当業者によく知られた方法としては、ポリペプチドに変異を導入する方法が知られている。例えば、当業者であれば、部位特異的変異誘発法(Gotoh, T. et al. (1995) Gene 152, 271−275、Zoller, MJ, and Smith, M.(1983) Methods Enzymol. 100, 468−500、Kramer, W. et al. (1984) Nucleic Acids Res. 12, 9441−9456、Kramer W, and Fritz HJ(1987) Methods. Enzymol. 154, 350−367、Kunkel,TA(1985) Proc Natl Acad Sci USA. 82, 488−492、Kunkel (1988) Methods Enzymol. 85, 2763−2766)などを用いて、xv−βポリペプチドのアミノ酸に適宜変異を導入することにより、該ポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドを調製することができる。
【0011】
また、アミノ酸の変異は自然界においても生じうる。このように、xv−βポリペプチドのアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が変異したアミノ酸配列からなり、該ポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドもまた本発明に含まれる。このような変異体における、変異するアミノ酸数は、通常、30アミノ酸以内であり、好ましくは15アミノ酸以内であり、さらに好ましくは5アミノ酸以内(例えば、3アミノ酸以内)であると考えられる。
【0012】
変異するアミノ酸残基においては、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に変異されることが望ましい。例えばアミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I、P)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)、カルボン酸及びアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ離(R、K、H)、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H、F、Y、W)を挙げることができる(括弧内はいずれもアミノ酸の一文字標記を表す)。
【0013】
あるアミノ酸配列に対する1又は複数個のアミノ酸残基の欠失、付加及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を有するポリペプチドがその生物学的活性を維持することはすでに知られている(Mark, D. F. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1984) 81, 5662−5666 、Zoller, M. J. & Smith, M. Nucleic Acids Research (1982) 10, 6487−6500 、Wang, A. et al., Science 224, 1431−1433 、Dalbadie−McFarland, G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1982) 79, 6409−6413)。
【0014】
xv−βポリペプチドのアミノ酸配列に複数個のアミノ酸残基が付加されたポリペプチドには、これらポリペプチドを含む融合ポリペプチドが含まれる。融合ポリペプチドは、これらポリペプチドと他のポリペプチドとが融合したものであり、本発明に含まれる。融合ポリペプチドを作製するには、例えば、xv−βポリペプチドをコードするDNAと他のポリペプチドをコードするDNAをフレームが一致するように連結してこれを発現ベクターに導入し、宿主で発現させればよい。本発明のポリペプチドとの融合に付される他のポリペプチドとしては、特に限定されない。
【0015】
本発明のポリペプチドとの融合に付される他のペプチドとしては、例えば、FLAG(Hopp, T. P. et al., BioTechnology (1988) 6, 1204−1210 )、6個のHis(ヒスチジン)残基からなる6×His、10×His、インフルエンザ凝集素(HA)、ヒトc−mycの断片、VSV−GPの断片、p18HIVの断片、T7−tag、HSV−tag 、E−tag 、SV40T 抗原の断片、lck tag 、α−tubulinの断片、B−tag 、Protein C の断片等の公知のペプチドを使用することができる。また、本発明のポリペプチドとの融合に付される他のポリペプチドとしては、例えば、GST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)、HA(インフルエンザ凝集素)、イムノグロブリン定常領域、β−ガラクトシダーゼ、MBP(マルトース結合蛋白質)等が挙げられる。市販されているこれらポリペプチドをコードするDNAを本発明のポリペプチドをコードするDNAと融合させ、これにより調製された融合DNAを発現させることにより、融合ポリペプチドを調製することができる。
【0016】
また、あるポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドをコードするDNAを調製する当業者によく知られた他の方法としては、ハイブリダイゼーション技術(Sambrook,J et al., Molecular Cloning 2nd ed., 9.47−9.58, Cold Spring Harbor Lab. press, 1989)を利用する方法が挙げられる。即ち、当業者においては、xv−βポリペプチドをコードするDNA配列(配列番号:1、3)もしくはその一部を利用して、これと相同性の高いDNAを単離すること、さらに、該DNAからxv−βポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドを単離することは、周知の技術である。
【0017】
本発明には、xv−βポリペプチドをコードするDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、xv−βポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドをコードするDNAが含まれる。このようなDNAとしては、例えば、ヒトおよび他の哺乳動物(例えば、ラット、ウサギ、ウシなど)由来のホモログが挙げられる。
【0018】
xv−βポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドをコードするDNAを単離するためのハイブリダイゼーションの条件は、当業者であれば適宜選択することができる。ハイブリダイゼーションの条件としては、例えば、低ストリンジェントな条件が挙げられる。低ストリンジェントな条件とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄において、例えば42℃、0.1×SSC、0.1%SDSの条件であり、好ましくは50℃、0.1×SSC 、0.1%SDSの条件である。より好ましいハイブリダイゼーションの条件としては、高ストリンジェントな条件が挙げられる。高ストリンジェントな条件とは、例えば65℃、5×SSC及び0.1%SDSの条件である。これらの条件において、温度を上げる程に高い相同性を有するDNAが効率的に得られることが期待できる。但し、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度や塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0019】
また、xv−βポリペプチドをコードするDNA(配列番号:1、3)の配列情報を基に合成したプライマーを用いる遺伝子増幅法、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を利用して、xv−βポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドをコードするDNAを単離することも可能である。
【0020】
これらハイブリダイゼーション技術や遺伝子増幅技術により単離されるDNAがコードする、xv−βポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドは、通常、xv−βポリペプチドとアミノ酸配列において高い相同性を有する。本発明のポリペプチドには、xv−βポリペプチドと機能的に同等であり、かつ該ポリペプチドのアミノ酸配列と高い相同性を有するポリペプチドも含まれる。高い相同性とは、アミノ酸レベルにおいて、通常、少なくとも50%以上の同一性、好ましくは75%以上の同一性、さらに好ましくは85%以上の同一性、さらに好ましくは95%以上の同一性を指す。
【0021】
アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad. Sei. USA 90:5873−5877, 1993)によって決定することができる。このアルゴリズムに基づいて、BLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul et al. J. Mol. Biol.215:403−410, 1990)。BLASTに基づいてBLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメーターはたとえばscore = 100、wordlength = 12とする。また、BLASTに基づいてBLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメーターはたとえばscore = 50、wordlength = 3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov.)。
【0022】
本発明のDNAは、後述する本発明のポリペプチドのin vivoやin vitroにおける生産に利用される他、例えば、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の異常に起因する疾患や本発明のポリペプチドにより治療可能な疾患の遺伝子治療などへの応用も考えられる。本発明のDNAは、本発明のポリペプチドをコードしうるものであればいかなる形態でもよい。即ち、mRNAから合成されたcDNAであるか、ゲノムDNAであるか、化学合成DNAであるかなどを問わない。また、本発明のポリペプチドをコードしうる限り、遺伝暗号の縮重に基づく任意の塩基配列を有するDNAが含まれる。
【0023】
本発明のDNAは、当業者に公知の方法により調製することができる。例えば、本発明のポリペプチドを発現している細胞よりcDNAライブラリーを作製し、本発明のDNAの配列(例えば、配列番号:1、3)の一部をプローブにしてハイブリダイゼーションを行うことにより調製できる。cDNAライブラリーは、例えば、文献(Sambrook, J. et al., Molecular Cloning、Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989))に記載の方法により調製してもよいし、市販のDNAライブラリーを用いてもよい。また、本発明のポリペプチドを発現している細胞よりRNAを調製し、逆転写酵素によりcDNAを合成した後、本発明のDNAの配列(例えば、配列番号:1)に基づいてオリゴDNAを合成し、これをプライマーとして用いてPCR反応を行い、本発明のポリペプチドをコードするcDNAを増幅させることにより調製することも可能である。
【0024】
また、得られたcDNAの塩基配列を決定することにより、それがコードする翻訳領域を決定でき、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列を得ることができる。また、得られたcDNAをプローブとしてゲノムDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、ゲノムDNAを単離することができる。
【0025】
具体的には、次のようにすればよい。まず、本発明のポリペプチドを発現する細胞、組織、臓器から、mRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin, J. M. et al., Biochemistry (1979) 18, 5294−5299) 、AGPC法 (Chomczynski, P. and Sacchi, N., Anal. Biochem. (1987) 162, 156−159) 等により全RNAを調製し、mRNA Purification Kit (Pharmacia社) 等を使用して全RNAからmRNAを精製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit (Pharmacia社) を用いることによりmRNAを直接調製することもできる。
【0026】
得られたmRNAから逆転写酵素を用いてcDNAを合成する。cDNAの合成は、AMV Reverse Transcriptase First−strand cDNA Synthesis Kit (生化学工業社)等を用いて行うこともできる。また、本明細書に記載されたプライマー等を用いて、5’−Ampli FINDER RACE Kit (Clontech製)およびポリメラーゼ連鎖反応 (polymerase chain reaction ; PCR)を用いた5’−RACE法(Frohman, M. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85, 8998−9002 ; Belyavsky, A. et al., Nucleic Acids Res. (1989) 17, 2919−2932) に従い、cDNAの合成および増幅を行うことができる。
【0027】
得られたPCR産物から目的とするDNA断片を調製し、ベクターDNAと連結する。さらに、これより組換えベクターを作製し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。目的とするDNAの塩基配列は、公知の方法、例えば、ジデオキシヌクレオチドチェインターミネーション法により確認することができる。
【0028】
また、本発明のDNAにおいては、発現に使用する宿主のコドン使用頻度を考慮して、より発現効率の高い塩基配列を設計することができる(Grantham, R. et al., Nucelic Acids Research (1981) 9, r43−74 )。また、本発明のDNAは、市販のキットや公知の方法によって改変することができる。改変としては、例えば、制限酵素による消化、合成オリゴヌクレオチドや適当なDNAフラグメントの挿入、リンカーの付加、開始コドン(ATG)及び/又は終止コドン(TAA、TGA、又はTAG)の挿入等が挙げられる。
【0029】
本発明は、上記本発明のDNAがコードするポリペプチドを提供する。本発明のポリペプチドは、後述するそれを産生する細胞や宿主あるいは精製方法により、アミノ酸配列、分子量、等電点又は糖鎖の有無や形態などが異なり得る。しかしながら、得られたポリペプチドが、xv−βポリペプチドと同等の機能を有している限り、本発明に含まれる。例えば、本発明のポリペプチドを原核細胞、例えば大腸菌で発現させた場合、本来のポリペプチドのアミノ酸配列のN末端にメチオニン残基が付加される。本発明のポリペプチドはこのようなポリペプチドも包含する。
【0030】
本発明のポリペプチドは、当業者に公知の方法により、組み換えポリペプチドとして、また天然のポリペプチドとして調製することが可能である。組み換えポリペプチドであれば、本発明のポリペプチドをコードするDNAを、適当な発現ベクターに組み込み、これを適当な宿主細胞に導入して得た形質転換体を回収し、抽出物を得た後、イオン交換、逆相、ゲル濾過などのクロマトグラフィー、あるいは本発明のポリペプチドに対する抗体をカラムに固定したアフィニティークロマトグラフィーにかけることにより、または、さらにこれらのカラムを複数組み合わせることにより精製し、調製することが可能である。
【0031】
また、本発明のポリペプチドをグルタチオン S−トランスフェラーゼ蛋白質との融合ポリペプチドとして、あるいはヒスチジンを複数付加させた組み換えポリペプチドとして宿主細胞(例えば、動物細胞や大腸菌など)内で発現させた場合には、発現させた組み換えポリペプチドはグルタチオンカラムあるいはニッケルカラムを用いて精製することができる。融合ポリペプチドの精製後、必要に応じて融合ポリペプチドのうち、目的のポリペプチド以外の領域を、トロンビンまたはファクターXaなどにより切断し、除去することも可能である。
【0032】
天然のポリペプチドであれば、当業者に周知の方法、例えば、本発明のポリペプチドを発現している組織や細胞(例えば、精巣)の抽出物に対し、後述する本発明のポリペプチドに結合する抗体が結合したアフィニティーカラムを作用させて精製することにより単離することができる。抗体はポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。
【0033】
本発明は、また、本発明のポリペプチドの部分ペプチドを包含する。本発明の部分ペプチドは、例えば、本発明のポリペプチドに対する抗体の作製、本発明のポリペプチドに結合する化合物のスクリーニングや、本発明のポリペプチドの促進剤や阻害剤のスクリーニングに利用し得る。また、本発明のポリペプチドのアンタゴニストや競合阻害剤になり得る。
【0034】
本発明の部分ペプチドは、免疫原とする場合には、少なくとも7アミノ酸以上、好ましくは8アミノ酸以上、さらに好ましくは9アミノ酸以上のアミノ酸配列からなる。本発明のポリペプチドの競合阻害剤として用いる場合には、少なくとも100アミノ酸以上、好ましくは200アミノ酸以上、さらに好ましくは300アミノ酸以上(例えば、400アミノ酸以上)のアミノ酸配列からなる。
【0035】
本発明の部分ペプチドは、遺伝子工学的手法、公知のペプチド合成法、あるいは本発明のポリペプチドを適切なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。ペプチドの合成は、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによってもよい。
【0036】
本発明は、また、本発明のDNAが挿入されたベクターを提供する。本発明のベクターは、宿主細胞内において本発明のDNAを保持したり、本発明のポリペプチドを発現させるために有用である。
【0037】
ベクターとしては、例えば、大腸菌を宿主とする場合には、ベクターを大腸菌(例えば、JM109、DH5α、HB101、XL1Blue)などで大量に増幅させ大量調製するために、大腸菌で増幅されるための「ori」をもち、さらに形質転換された大腸菌の選抜遺伝子(例えば、なんらかの薬剤(アンピシリンやテトラサイクリン、カナマイシン、クロラムフェニコール)により判別できるような薬剤耐性遺伝子)を有すれば特に制限はない。
【0038】
ベクターの例としては、M13系ベクター、pUC系ベクター、pBR322、pBluescript、pCR−Scriptなどが挙げられる。また、cDNAのサブクローニング、切り出しを目的とした場合、上記ベクターの他に、例えば、pGEM−T、pDIRECT、pT7などが挙げられる。
【0039】
本発明のポリペプチドを生産する目的においてベクターを使用する場合には、特に、発現ベクターが有用である。発現ベクターとしては、例えば、大腸菌での発現を目的とした場合は、ベクターが大腸菌で増幅されるような上記特徴を持つほかに、宿主をJM109、DH5α、HB101、XL1−Blueなどの大腸菌とした場合においては、大腸菌で効率よく発現できるようなプロモーター、例えば、lacZプロモーター(Wardら, Nature (1989) 341, 544−546;FASEB J. (1992) 6, 2422−2427)、araBプロモーター(Betterら, Science (1988) 240, 1041−1043 )、またはT7プロモーターなどを持っていることが不可欠である。このようなベクターとしては、上記ベクターの他にpGEX−5X−1(ファルマシア社製)、「QIAexpress system」(キアゲン社製)、pEGFP、またはpET(この場合、宿主はT7 RNAポリメラーゼを発現しているBL21が好ましい)などが挙げられる。
【0040】
また、ベクターには、ポリペプチド分泌のためのシグナル配列が含まれていてもよい。ポリペプチド分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei, S. P. et al J. Bacteriol. (1987) 169, 4379 )を使用すればよい。宿主細胞へのベクターの導入は、例えば塩化カルシウム法、エレクトロポレーション法を用いて行うことができる。
【0041】
大腸菌以外にも、例えば、本発明のポリペプチドを製造するためのベクターとしては、哺乳動物由来の発現ベクター(例えば、pcDNA3 (インビトロゲン社製)や、pEGF−BOS (Nucleic Acids. Res.1990, 18(17),p5322)、pEF 、pCDM8 )、昆虫細胞由来の発現ベクター(例えば「Bac−to−BAC baculovairus expression system」(ギブコBRL社製)、pBacPAK8)、植物由来の発現ベクター(例えばpMH1、pMH2)、動物ウィルス由来の発現ベクター(例えば、pHSV、pMV、pAdexLcw )、レトロウィルス由来の発現ベクター(例えば、pZIPneo)、酵母由来の発現ベクター(例えば、「Pichia Expression Kit」(インビトロゲン社製)、pNV11 、SP−Q01)、枯草菌由来の発現ベクター(例えば、pPL608、pKTH50)が挙げられる。
【0042】
CHO細胞、COS細胞、NIH3T3細胞等の動物細胞での発現を目的とした場合には、細胞内で発現させるために必要なプロモーター、例えばSV40プロモーター(Mulliganら, Nature (1979) 277, 108)、MMLV−LTRプロモーター、EF1αプロモーター(Mizushimaら, Nucleic Acids Res. (1990) 18, 5322)、CMVプロモーターなどを持っていることが不可欠であり、細胞への形質転換を選抜するための遺伝子(例えば、薬剤(ネオマイシン、G418など)により判別できるような薬剤耐性遺伝子)を有すればさらに好ましい。このような特性を有するベクターとしては、例えば、pMAM、pDR2、pBK−RSV、pBK−CMV、pOPRSV、pOP13などが挙げられる。
【0043】
さらに、遺伝子を安定的に発現させ、かつ、細胞内での遺伝子のコピー数の増幅を目的とする場合には、核酸合成経路を欠損したCHO細胞にそれを相補するDHFR遺伝子を有するベクター(例えば、pCHOIなど)を導入し、メトトレキセート(MTX)により増幅させる方法が挙げられ、また、遺伝子の一過性の発現を目的とする場合には、SV40 T抗原を発現する遺伝子を染色体上に持つCOS細胞を用いてSV40の複製起点を持つベクター(pcDなど)で形質転換する方法が挙げられる。複製開始点としては、また、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス(BPV)等の由来のものを用いることもできる。さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは選択マーカーとして、アミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。
【0044】
一方、動物の生体内で本発明のDNAを発現させる方法としては、本発明のDNAを適当なベクターに組み込み、例えば、レトロウイルス法、リポソーム法、カチオニックリポソーム法、アデノウイルス法などにより生体内に導入する方法などが挙げられる。これにより、本発明のxv−β遺伝子の変異に起因する疾患に対する遺伝子治療を行うことが可能である。用いられるベクターとしては、例えば、アデノウイルスベクター(例えばpAdexlcw)やレトロウイルスベクター(例えばpZIPneo)などが挙げられるが、これらに制限されない。ベクターへの本発明のDNAの挿入などの一般的な遺伝子操作は、常法に従って行うことが可能である(Molecular Cloning ,5.61−5.63)。生体内への投与は、ex vivo法であっても、in vivo法であってもよい。
【0045】
また、本発明は、本発明のベクターが導入された宿主細胞を提供する。本発明のベクターが導入される宿主細胞としては特に制限はなく、例えば、大腸菌や種々の動物細胞などを用いることが可能である。本発明の宿主細胞は、例えば、本発明のポリペプチドの製造や発現のための産生系として使用することができる。ポリペプチド製造のための産生系は、in vitroおよびin vivo の産生系がある。in vitroの産生系としては、真核細胞を使用する産生系や原核細胞を使用する産生系が挙げられる。
【0046】
真核細胞を使用する場合、例えば、動物細胞、植物細胞、真菌細胞を宿主に用いることができる。動物細胞としては、哺乳類細胞、例えば、CHO(J. Exp. Med. (1995) 108, 945)、COS、3T3、ミエローマ、BHK(baby hamster kidney)、HeLa、Vero、両生類細胞、例えばアフリカツメガエル卵母細胞(Valle, et al., Nature (1981) 291, 358−340)、あるいは昆虫細胞、例えば、Sf9、Sf21、Tn5が知られている。CHO細胞としては、特に、DHFR遺伝子を欠損したCHO細胞であるdhfr−CHO(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1980) 77, 4216−4220)やCHO K−1(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1968) 60, 1275)を好適に使用することができる。動物細胞において、大量発現を目的とする場合には特にCHO細胞が好ましい。宿主細胞へのベクターの導入は、例えば、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、カチオニックリボソームDOTAP(ベーリンガーマンハイム社製)を用いた方法、エレクトロポーレーション法、リポフェクションなどの方法で行うことが可能である。
【0047】
植物細胞としては、例えば、ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)由来の細胞がポリペプチド生産系として知られており、これをカルス培養すればよい。真菌細胞としては、酵母、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌、例えば、アスペルギルス(Aspergillus)属、例えば、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)が知られている。
【0048】
原核細胞を使用する場合、細菌細胞を用いる産生系がある。細菌細胞としては、大腸菌(E. coli)、例えば、JM109、DH5α、HB101等が挙げられ、その他、枯草菌が知られている。
【0049】
これらの細胞を目的とするDNAにより形質転換し、形質転換された細胞をin vitroで培養することによりポリペプチドが得られる。培養は、公知の方法に従い行うことができる。例えば、動物細胞の培養液として、例えば、DMEM、MEM、RPMI1640、IMDMを使用することができる。その際、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできるし、無血清培養してもよい。培養時のpHは、約6〜8であるのが好ましい。培養は、通常、約30〜40℃で約15〜200時間行い、必要に応じて培地の交換、通気、攪拌を加える。
【0050】
一方、in vivoでポリペプチドを産生させる系としては、例えば、動物を使用する産生系や植物を使用する産生系が挙げられる。これらの動物又は植物に目的とするDNAを導入し、動物又は植物の体内でポリペプチドを産生させ、回収する。本発明における「宿主」とは、これらの動物、植物を包含する。
【0051】
動物を使用する場合、哺乳類動物、昆虫を用いる産生系がある。哺乳類動物としては、ヤギ、ブタ、ヒツジ、マウス、ウシを用いることができる(Vicki Glaser, SPECTRUM Biotechnology Applications, 1993)。また、哺乳類動物を用いる場合、トランスジェニック動物を用いることができる。
【0052】
例えば、目的とするDNAを、ヤギβカゼインのような乳汁中に固有に産生されるポリペプチドをコードする遺伝子との融合遺伝子として調製する。次いで、この融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ移植する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギ又はその子孫が産生する乳汁から、目的のポリペプチドを得ることができる。トランスジェニックヤギから産生されるポリペプチドを含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい(Ebert, K.M. et al., Bio/Technology (1994) 12, 699−702)。
【0053】
また、昆虫としては、例えばカイコを用いることができる。カイコを用いる場合、目的のポリペプチドをコードするDNAを挿入したバキュロウィルスをカイコに感染させることにより、このカイコの体液から目的のポリペプチドを得ることができる(Susumu, M. et al., Nature (1985) 315, 592−594)。
【0054】
さらに、植物を使用する場合、例えばタバコを用いることができる。タバコを用いる場合、目的とするポリペプチドをコードするDNAを植物発現用ベクター、例えばpMON 530に挿入し、このベクターをアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のようなバクテリアに導入する。このバクテリアをタバコ、例えば、ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)に感染させ、本タバコの葉より所望のポリペプチドを得ることができる(Julian K.−C. Ma et al., Eur. J. Immunol. (1994) 24, 131−138)。
【0055】
これにより得られた本発明のポリペプチドは、宿主細胞内または細胞外(培地など)から単離し、実質的に純粋で均一なポリペプチドとして精製することができる。ポリペプチドの分離、精製は、通常のポリペプチドの精製で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、クロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、溶媒沈殿、溶媒抽出、蒸留、免疫沈降、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動法、透析、再結晶等を適宜選択、組み合わせればポリペプチドを分離、精製することができる。
【0056】
クロマトグラフィーとしては、例えばアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等が挙げられる(Strategies for Protein Purification and Characterization: A Laboratory Course Manual. Ed Daniel R. Marshak et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1996)。これらのクロマトグラフィーは、液相クロマトグラフィー、例えばHPLC、FPLC等の液相クロマトグラフィーを用いて行うことができる。本発明は、これらの精製方法を用い、高度に精製されたポリペプチドも包含する。
【0057】
なお、ポリペプチドを精製前又は精製後に適当な蛋白質修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり部分的にペプチドを除去することもできる。蛋白質修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、リシルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グルコシダーゼなどが用いられる。
【0058】
本発明は、また、本発明のポリペプチドと結合する抗体を提供する。本発明の抗体の形態には、特に制限はなく、ポリクローナル抗体の他、モノクローナル抗体も含まれる。また、ウサギなどの免疫動物に本発明のポリペプチドを免疫して得た抗血清、すべてのクラスのポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、さらにヒト抗体や遺伝子組み換えによるヒト型化抗体も含まれる。
【0059】
抗体取得の感作抗原として使用される本発明のポリペプチドは、その由来となる動物種に制限されないが哺乳動物、例えばヒト、マウス又はラット由来のポリペプチドが好ましく、特にヒト由来のポリペプチドが好ましい。ヒト由来のポリペプチドは、本明細書に開示される遺伝子配列又はアミノ酸配列を用いて得ることができる。
【0060】
本発明において、感作抗原として使用されるポリペプチドは、完全な蛋白質であってもよいし、また、蛋白質の部分ペプチドであってもよい。蛋白質の部分ペプチドとしては、例えば、蛋白質のアミノ基(N)末端断片やカルボキシ(C)末端断片が挙げられる。本明細書で述べる「抗体」とは蛋白質の全長又は断片に反応する抗体を意味する。
【0061】
本発明のポリペプチド又はその断片をコードする遺伝子を公知の発現ベクター系に挿入し、該ベクターで本明細書で述べた宿主細胞を形質転換させ、該宿主細胞内外から目的のポリペプチド又はその断片を公知の方法で得て、これらを感作抗原として用いればよい。また、ポリペプチドを発現する細胞又はその溶解物あるいは化学的に合成した本発明のポリペプチドを感作抗原として使用してもよい。短いペプチドは、キーホールリンペットヘモシアニン、ウシ血清アルブミン、卵白アルブミンなどのキャリア蛋白質と適宜結合させて抗原とすることが好ましい。
【0062】
感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的には、げっ歯目、ウサギ目、霊長目の動物が使用される。
【0063】
げっ歯目の動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター等が使用される。ウサギ目の動物としては、例えば、ウサギが使用される。霊長目の動物としては、例えば、サルが使用される。サルとしては、狭鼻下目のサル(旧世界ザル)、例えば、カニクイザル、アカゲザル、マントヒヒ、チンパンジー等が使用される。
【0064】
感作抗原を動物に免疫するには、公知の方法にしたがって行われる。一般的方法としては、感作抗原を哺乳動物の腹腔内又は皮下に注射する。具体的には、感作抗原をPBS(Phosphate−Buffered Saline)や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものに対し、所望により通常のアジュバント、例えば、フロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に投与する。さらに、その後、フロイント不完全アジュバントに適量混合した感作抗原を、4〜21日毎に数回投与することが好ましい。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することができる。このように免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを常法により確認する。
【0065】
ここで、本発明のポリペプチドに対するポリクローナル抗体を得るには、血清中の所望の抗体レベルが上昇したことを確認した後、抗原を感作した哺乳動物の血液を取り出す。この血液から公知の方法により血清を分離する。ポリクローナル抗体としては、ポリクローナル抗体を含む血清を使用してもよいし、必要に応じこの血清からポリクローナル抗体を含む画分をさらに単離して、これを使用してもよい。例えば、本発明のポリペプチドをカップリングさせたアフィニティーカラムを用いて、本発明のポリペプチドのみを認識する画分を得て、さらにこの画分をプロテインAあるいはプロテインGカラムを利用して精製することにより、免疫グロブリンGあるいはMを調製することができる。
【0066】
モノクローナル抗体を得るには、上記抗原を感作した哺乳動物の血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞を取り出し、細胞融合に付せばよい。この際、細胞融合に使用される好ましい免疫細胞として、特に脾細胞が挙げられる。前記免疫細胞と融合される他方の親細胞としては、好ましくは哺乳動物のミエローマ細胞、より好ましくは、薬剤による融合細胞選別のための特性を獲得したミエローマ細胞が挙げられる。
前記免疫細胞とミエローマ細胞の細胞融合は基本的には公知の方法、例えば、ミルステインらの方法(Galfre, G. and Milstein, C., Methods Enzymol. (1981) 73, 3−46)等に準じて行うことができる。
【0067】
細胞融合により得られたハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えば、HAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。当該HAT培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間、通常、数日〜数週間継続して行う。次いで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングおよびクローニングを行う。
【0068】
また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球、例えばEBウィルスに感染したヒトリンパ球をin vitroでポリペプチド、ポリペプチド発現細胞又はその溶解物で感作し、感作リンパ球をヒト由来の永久分裂能を有するミエローマ細胞、例えばU266と融合させ、ポリペプチドへの結合活性を有する所望のヒト抗体を産生するハイブリドーマを得ることもできる(特開昭63−17688号公報)。
【0069】
次いで、得られたハイブリドーマをマウス腹腔内に移植し、同マウスより腹水を回収し、得られたモノクローナル抗体を、例えば、硫安沈殿、プロテインA、プロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、本発明のポリペプチドをカップリングしたアフィニティーカラムなどにより精製することで調製することが可能である。本発明の抗体は、本発明のポリペプチドの精製、検出に用いられる他、本発明のポリペプチドのアゴニストやアンタゴニストの候補になる。また、この抗体を本発明のポリペプチドが関与する疾患の抗体治療へ応用することも考えられる。得られた抗体を人体に投与する目的(抗体治療)で使用する場合には、免疫原性を低下させるため、ヒト抗体やヒト型抗体が好ましい。
【0070】
例えば、ヒト抗体遺伝子のレパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原となるポリペプチド、ポリペプチド発現細胞又はその溶解物を免疫して抗体産生細胞を取得し、これをミエローマ細胞と融合させたハイブリドーマを用いてポリペプチドに対するヒト抗体を取得することができる(国際公開番号WO92−03918、WO93−2227、WO94−02602、WO94−25585、WO96−33735およびWO96−34096参照)。
【0071】
ハイブリドーマを用いて抗体を産生する以外に、抗体を産生する感作リンパ球等の免疫細胞を癌遺伝子(oncogene)により不死化させた細胞を用いてもよい。
【0072】
このように得られたモノクローナル抗体はまた、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型抗体として得ることができる(例えば、Borrebaeck, C. A. K. and Larrick, J. W., THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD, 1990 参照)。組換え型抗体は、それをコードするDNAをハイブリドーマ又は抗体を産生する感作リンパ球等の免疫細胞からクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させる。本発明は、この組換え型抗体を包含する。
【0073】
さらに、本発明の抗体は、本発明のポリペプチドに結合する限り、その抗体断片や抗体修飾物であってよい。例えば、抗体断片としては、Fab、F(ab’)2、Fv又はH鎖とL鎖のFvを適当なリンカーで連結させたシングルチェインFv(scFv) (Huston, J. S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85, 5879−5883)が挙げられる。具体的には、抗体を酵素、例えば、パパイン、ペプシンで処理し抗体断片を生成させるか、又は、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させる(例えば、Co, M. S. et al., J. Immunol. (1994) 152, 2968−2976 ; Better, M. and Horwitz, A. H., Methods Enzymol. (1989) 178, 476−496 ; Pluckthun, A. and Skerra, A., Methods Enzymol. (1989) 178, 497−515 ; Lamoyi, E., Methods Enzymol. (1986) 121, 652−663 ; Rousseaux, J. et al., Methods Enzymol. (1986) 121, 663−669 ; Bird, R. E. and Walker, B. W., Trends Biotechnol. (1991) 9, 132−137参照)。
【0074】
抗体修飾物として、ポリエチレングリコール(PEG)等の各種分子と結合した抗体を使用することもできる。本発明の「抗体」にはこれらの抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物を得るには、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。これらの方法はこの分野において既に確立されている。
【0075】
また、本発明の抗体は、公知の技術を使用して非ヒト抗体由来の可変領域とヒト抗体由来の定常領域からなるキメラ抗体又は非ヒト抗体由来のCDR(相補性決定領域)とヒト抗体由来のFR(フレームワーク領域)及び定常領域からなるヒト型化抗体として得ることができる。
【0076】
前記のように得られた抗体は、均一にまで精製することができる。本発明で使用される抗体の分離、精製は通常のポリペプチドで使用されている分離、精製方法を使用すればよい。例えば、アフィニティークロマトグラフィー等のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動等を適宜選択、組み合わせれば、抗体を分離、精製することができる(Antibodies : A Laboratory Manual. Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988) が、これらに限定されるものではない。上記で得られた抗体の濃度測定は吸光度の測定又は酵素結合免疫吸着検定法(Enzyme−linked immunosorbent assay;ELISA)等により行うことができる。
【0077】
アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、プロテインAカラム、プロテインGカラムが挙げられる。例えば、プロテインAを用いたカラムとして、Hyper D, POROS, Sepharose F. F. (Pharmacia)等が挙げられる。
【0078】
アフィニティークロマトグラフィー以外のクロマトグラフィーとしては、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等が挙げられる(Strategies for Protein Purification and Characterization : A Laboratory Course Manual. Ed Daniel R. Marshak et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1996)。これらのクロマトグラフィーはHPLC、FPLC等の液相クロマトグラフィーを用いて行うことができる。
【0079】
また、本発明の抗体の抗原結合活性を測定する方法として、例えば、吸光度の測定、酵素結合免疫吸着検定法(Enzyme−linked immunosorbent assay;ELISA)、EIA(酵素免疫測定法)、RIA(放射免疫測定法)あるいは蛍光抗体法を用いることができる。ELISAを用いる場合、本発明の抗体を固相化したプレートに本発明のポリペプチドを添加し、次いで目的の抗体を含む試料、例えば、抗体産生細胞の培養上清や精製抗体を加える。酵素、例えば、アルカリフォスファターゼ等で標識した抗体を認識する二次抗体を添加し、プレートをインキュベーションし、次いで洗浄した後、p−ニトロフェニル燐酸などの酵素基質を加えて吸光度を測定することで抗原結合活性を評価することができる。ポリペプチドとしてポリペプチドの断片、例えばそのC末端からなる断片を使用してもよい。本発明の抗体の活性評価には、BIAcore(Pharmacia製)を使用することができる。
【0080】
これらの手法を用いることにより、本発明の抗体と試料中に含まれる本発明のポリペプチドが含まれると予想される試料とを接触せしめ、該抗体と該ポリペプチドとの免疫複合体を検出又は測定することからなる、本発明のポリペプチドの検出又は測定方法を実施することができる。本発明のポリペプチドの検出又は測定方法は、ポリペプチドを特異的に検出又は測定することができるため、ポリペプチドを用いた種々の実験等に有用である。
【0081】
本発明はまた、xv−βポリペプチドをコードするDNAまたはその相補鎖に相補的な少なくとも15ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを提供する。
ここで「相補鎖」とは、A:T(ただしRNAの場合はU)、G:Cの塩基対からなる2本鎖核酸の一方の鎖に対する他方の鎖を指す。また、「相補的」とは、少なくとも15個の連続したヌクレオチド領域で完全に相補配列である場合に限られず、少なくとも70% 、好ましくは少なくとも80% 、より好ましくは90% 、さらに好ましくは95% 以上の塩基配列上の相同性を有すればよい。相同性を決定するためのアルゴリズムは本明細書に記載したものを使用すればよい。
【0082】
このような核酸には、本発明のポリペプチドをコードするDNAの検出や増幅に用いるプローブやプライマー、該DNAの発現を検出するためのプローブやプライマー、本発明のポリペプチドの発現を制御するためのヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドやリボザイム、またはこれらをコードするDNA等)が含まれる。また、このような核酸は、DNAチップの作製に利用することもできる。
プライマーとして用いる場合、3’側の領域は相補的とし、5’側には制限酵素認識配列やタグなどを付加することができる。
【0083】
アンチセンスオリゴヌクレオチドとしては、例えば、配列番号:1の塩基配列中のいずれかの箇所にハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。このアンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは配列番号:1の塩基配列中の連続する少なくとも15個以上のヌクレオチドに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。さらに好ましくは、連続する少なくとも15個以上のヌクレオチドが翻訳開始コドンを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0084】
アンチセンスオリゴヌクレオチドとしては、それらの誘導体や修飾体を使用することができる。修飾体として、例えばメチルホスホネート型又はエチルホスホネート型のような低級アルキルホスホネート修飾体、ホスホロチオエート修飾体又はホスホロアミデート修飾体等が挙げられる。
【0085】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、DNA又はmRNAの所定の領域を構成するヌクレオチドに対応するヌクレオチドが全て相補配列であるもののみならず、DNAまたはmRNAとオリゴヌクレオチドとが配列番号:1に示される塩基配列に特異的にハイブリダイズできる限り、1 又は複数個のヌクレオチドのミスマッチが存在しているものも含まれる。
【0086】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体は、本発明のポリペプチドの産生細胞に作用して、該ポリペプチドをコードするDNA又はmRNAに結合することにより、その転写又は翻訳を阻害したり、mRNAの分解を促進したりして、本発明のポリペプチドの発現を抑制することにより、結果的に本発明のポリペプチドの作用を抑制する効果を有する。
【0087】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体は、それらに対して不活性な適当な基剤と混和して塗布剤、パップ剤等の外用剤とすることができる。
また、必要に応じて、賦形剤、等張化剤、溶解補助剤、安定化剤、防腐剤、無痛化剤等を加えて錠剤、散財、顆粒剤、カプセル剤、リポソームカプセル剤、注射剤、液剤、点鼻剤など、さらに凍結乾燥剤とすることができる。これらは常法にしたがって調製することができる。
【0088】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体は患者の患部に直接適用するか、又は血管内に投与するなどして結果的に患部に到達し得るように患者に適用する。さらには、持続性、膜透過性を高めるアンチセンス封入素材を用いることもできる。例えば、リポソーム、ポリ−L− リジン、リピッド、コレステロール、リポフェクチン又はこれらの誘導体が挙げられる。
【0089】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体の投与量は、患者の状態に応じて適宜調整し、好ましい量を用いることができる。例えば、0.1 〜100mg/kg、好ましくは0.1〜50mg/kgの範囲で投与することができる。
【0090】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは本発明のポリペプチドの発現を阻害し、従って、本発明のポリペプチドの生物学的活性を抑制することにおいて有用である。また、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有する発現阻害剤は、本発明のポリペプチドの生物学的活性を抑制することが可能である点で有用である。
【0091】
また、本発明は、本発明のポリペプチドに結合する化合物のスクリーニング方法を提供する。この方法は、本発明のポリペプチドとこれに結合する化合物を含むと予想される被検試料とを接触せしめ、該ポリペプチドと被検試料との結合活性を検出し、そして本発明のポリペプチドに結合する活性を有する化合物を選択する、ことを含む。
【0092】
スクリーニングに用いられる本発明のポリペプチドは組換えポリペプチドであっても、天然由来のポリペプチドであってもよい。また部分ペプチドであってもよい。また細胞表面に発現させた形態、または膜画分としての形態であってもよい。被検試料としては特に制限はなく、例えば、細胞抽出物、細胞培養上清、発酵微生物産生物、海洋生物抽出物、植物抽出物、精製若しくは粗精製ポリペプチド、非ペプチド性化合物、合成低分子化合物、天然化合物が挙げられる。被検試料を接触させる本発明のポリペプチドは、例えば、精製したポリペプチドとして、可溶型ポリペプチドとして、担体に結合させた形態として、他のポリペプチドとの融合ポリペプチドとして、細胞膜上に発現させた形態として、膜画分として被検試料に接触させることができる。
【0093】
本発明のポリペプチドを用いて、これに結合するポリペプチドをスクリーニングする方法としては、当業者に公知の多くの方法を用いることが可能である。このようなスクリーニングは、例えば、免疫沈降法により行うことができる。具体的には、以下のように行うことができる。本発明のポリペプチドをコードする遺伝子を、pSV2neo, pcDNA I, pCD8 などの外来遺伝子発現用のベクターに挿入することで動物細胞などで当該遺伝子を発現させる。発現に用いるプロモーターとしては SV40 early promoter (Rigby In Williamson (ed.), Genetic Engineering, Vol.3. Academic Press, London, p.83−141(1982)), EF−1 α promoter (Kimら Gene 91, p.217−223 (1990)), CAG promoter (Niwa et al. Gene 108, p.193−200 (1991)), RSV LTR promoter (Cullen Methods in Enzymology 152, p.684−704 (1987), SR α promoter (Takebe et al. Mol. Cell. Biol. , p.466 (1988)), CMV immediate early promoter (Seed and Aruffo Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84, p.3365−3369 (1987)), SV40 late promoter (Gheysen and Fiers J. Mol. Appl. Genet. , p.385−394 (1982)), Adenovirus late promoter (Kaufman et al. Mol. Cell. Biol. , p. 946 (1989)), HSV TK promoter 等の一般的に使用できるプロモーターであれば何を用いてもよい。
【0094】
動物細胞に遺伝子を導入することで外来遺伝子を発現させるためには、エレクトロポレーション法 (Chu, G. et al. Nucl. Acid Res. 15, 1311−1326 (1987))、リン酸カルシウム法 (Chen, C and Okayama, H. Mol. Cell. Biol. , 2745−2752 (1987))、DEAEデキストラン法 (Lopata, M. A. et al. Nucl. Acids Res. 12, 5707−5717 (1984); Sussman, D. J. and Milman, G. Mol. Cell. Biol. , 1642−1643 (1985))、リポフェクチン法 (Derijard, B. Cell , 1025−1037 (1994); Lamb, B. T. et al. Nature Genetics , 22−30 (1993); Rabindran, S. K. et al. Science 259, 230−234 (1993))等の方法があるが、いずれの方法によってもよい。
【0095】
特異性の明らかとなっているモノクローナル抗体の認識部位(エピトープ)を本発明のポリペプチドのN末またはC末に導入することにより、モノクローナル抗体の認識部位を有する融合ポリペプチドとして本発明のポリペプチドを発現させることができる。用いるエピトープ−抗体系としては市販されているものを利用することができる(実験医学 13, 85−90 (1995))。マルチクローニングサイトを介して、β−ガラクトシダーゼ、マルトース結合蛋白質、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、緑色蛍光蛋白質(GFP)などとの融合ポリペプチドを発現することができるベクターが市販されている。
【0096】
融合ポリペプチドにすることにより本発明のポリペプチドの性質をできるだけ変化させないようにするために数個から十数個のアミノ酸からなる小さなエピトープ部分のみを導入して、融合ポリペプチドを調製する方法も報告されている。例えば、ポリヒスチジン(His−tag)、インフルエンザ凝集素 HA、ヒトc−myc、FLAG、Vesicular stomatitis ウイルス糖蛋白質(VSV−GP)、T7 gene10 蛋白質(T7−tag)、ヒト単純ヘルペスウイルス糖蛋白質(HSV−tag)、E−tag(モノクローナルファージ上のエピトープ)などのエピトープとそれを認識するモノクローナル抗体を、本発明のポリペプチドに結合するポリペプチドのスクリーニングのためのエピトープ−抗体系として利用できる(実験医学 13, 85−90 (1995))。
【0097】
免疫沈降においては、これらの抗体を、適当な界面活性剤を利用して調製した細胞溶解液に添加することにより免疫複合体を形成させる。この免疫複合体は本発明のポリペプチド、それと結合能を有するポリペプチド、および抗体からなる。上記エピトープに対する抗体を用いる以外に、本発明のポリペプチドに対する抗体を利用して免疫沈降を行うことも可能である。本発明のポリペプチドに対する抗体は、例えば、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子を適当な大腸菌発現ベクターに導入して大腸菌内で発現させ、発現させたポリペプチドを精製し、これをウサギやマウス、ラット、ヤギ、ニワトリなどに免疫することで調製することができる。また、合成した本発明のポリペプチドの部分ペプチドを上記の動物に免疫することによって調製することもできる。
【0098】
免疫複合体は、例えば、抗体がマウスIgG 抗体であれば、Protein A SepharoseやProtein G Sepharoseを用いて沈降させることができる。また、本発明のポリペプチドを、例えば、GSTなどのエピトープとの融合ポリペプチドとして調製した場合には、グルタチオン−Sepharose 4Bなどのこれらエピトープに特異的に結合する物質を利用して、本発明のポリペプチドの抗体を利用した場合と同様に、免疫複合体を形成させることができる。
【0099】
免疫沈降の一般的な方法については、例えば、文献(Harlow,E. and Lane, D.: Antibodies, pp.511−552, Cold Spring Harbor Laboratory publications, New York (1988) )記載の方法に従って、または準じて行えばよい。
【0100】
免疫沈降されたポリペプチドの解析にはSDS−PAGEが一般的であり、適当な濃度のゲルを用いることでポリペプチドの分子量により結合していたポリペプチドを解析することができる。また、この際、一般的には本発明のポリペプチドに結合したポリペプチドは、クマシー染色や銀染色といったポリペプチドの通常の染色法では検出することは困難であるので、放射性同位元素である35S−メチオニンや35S−システインを含んだ培養液で細胞を培養し、該細胞内のポリペプチドを標識して、これを検出することで検出感度を向上させることができる。ポリペプチドの分子量が判明すれば直接SDS−ポリアクリルアミドゲルから目的のポリペプチドを精製し、その配列を決定することもできる。
【0101】
また、本発明のポリペプチドを用いて、該ポリペプチドに結合するポリペプチドを単離する方法としては、例えば、ウエストウエスタンブロッティング法(Skolnik, E. Y. et al.,Cell (1991) 65, 83−90)を用いて行うことができる。すなわち、本発明のポリペプチドと結合するポリペプチドを発現していることが予想される細胞、組織、臓器(例えば、精巣)よりファージベクター(λgt11, ZAPなど)を用いたcDNAライブラリーを作製し、これをLB−アガロース上で発現させフィルターに発現させたポリペプチドを固定し、精製して標識した本発明のポリペプチドと上記フィルターとを反応させ、本発明のポリペプチドと結合したポリペプチドを発現するプラークを標識により検出すればよい。本発明のポリペプチドを標識する方法としては、ビオチンとアビジンの結合性を利用する方法、本発明のポリペプチド又は本発明のポリペプチドに融合したポリペプチド(例えばGSTなど)に特異的に結合する抗体を利用する方法、ラジオアイソトープを利用する方法又は蛍光を利用する方法等が挙げられる。
【0102】
また、本発明のスクリーニング方法の他の態様としては、細胞を用いた2−ハイブリッドシステム(Fields, S., and Sternglanz, R.,Trends. Genet. (1994) 10, 286−292、Dalton S, and Treisman R (1992) Characterization of SAP−1, a protein recruited by serum response factor to the c−fos serum response element. Cell 68, 597−612、「MATCHMARKER Two−Hybrid System」,「Mammalian MATCHMAKER Two−Hybrid Assay Kit」,「MATCHMAKER One−Hybrid System」(いずれもクロンテック社製)、「HybriZAP Two−Hybrid Vector System」(ストラタジーン社製))を用いて行う方法が挙げられる。
【0103】
2−ハイブリッドシステムにおいては、本発明のポリペプチドまたはその部分ペプチドをSRF DNA結合領域またはGAL4 DNA結合領域と融合させて酵母細胞の中で発現させ、本発明のポリペプチドと結合するポリペプチドを発現していることが予想される細胞より、VP16またはGAL4転写活性化領域と融合する形で発現するようなcDNAライブラリーを作製し、これを上記酵母細胞に導入し、検出された陽性クローンからライブラリー由来cDNAを単離する(酵母細胞内で本発明のポリペプチドと結合するポリペプチドが発現すると、両者の結合によりレポーター遺伝子が活性化され、陽性のクローンが確認できる)。単離したcDNAを大腸菌に導入して発現させることにより、該cDNAがコードするポリペプチドを得ることができる。これにより本発明のポリペプチドに結合するポリペプチドまたはその遺伝子を調製することが可能である。
【0104】
2−ハイブリッドシステムにおいて用いられるレポーター遺伝子としては、例えば、HIS3遺伝子の他、Ade2遺伝子、LacZ遺伝子、CAT遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、PAI−1(Plasminogen activator inhibitor type1)遺伝子等が挙げられるが、これらに制限されない。2ハイブリッド法によるスクリーニングは、酵母の他、哺乳動物細胞などを使って行うこともできる。
【0105】
本発明のポリペプチドと結合する化合物のスクリーニングは、アフィニティクロマトグラフィーを用いて行うこともできる。例えば、本発明のポリペプチドをアフィニティーカラムの担体に固定し、ここに本発明のポリペプチドと結合するポリペプチドを発現していることが予想される被検試料を適用する。この場合の被検試料としては、例えば細胞抽出物、細胞溶解物等が挙げられる。被検試料を適用した後、カラムを洗浄し、本発明のポリペプチドに結合したポリペプチドを調製することができる。
【0106】
得られたポリペプチドは、そのアミノ酸配列を分析し、それを基にオリゴDNAを合成し、該DNAをプローブとしてcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、該ポリペプチドをコードするDNAを得ることができる。
【0107】
また、ポリペプチドに限らず、本発明のポリペプチドに結合する化合物(アゴニストおよびアンタゴニストを含む)を単離する方法としては、例えば、固定した本発明のポリペプチドに、合成化合物、天然物バンク、もしくはランダムファージペプチドディスプレイライブラリーを作用させ、本発明のポリペプチドに結合する分子をスクリーニングする方法や、コンビナトリアルケミストリー技術によるハイスループットを用いたスクリーニング方法(Wrighton NC; Farrell FX; Chang R; Kashyap AK; Barbone FP; Mulcahy LS;Johnson DL; Barrett RW; Jolliffe LK; Dower WJ., Small peptides as potent mimetics of the protein hormone erythropoietin, Science (UNITED STATES) Jul 26 1996, 273 p458−64、Verdine GL., The combinatorial chemistry of nature. Nature (ENGLAND) Nov 7 1996, 384 p11−13、Hogan JC Jr.,Directed combinatorial chemistry. Nature (ENGLAND) Nov 7 1996, 384 p17−9)が当業者に公知である。
【0108】
本発明において、結合した化合物を検出又は測定する手段として表面プラズモン共鳴現象を利用したバイオセンサーを使用することもできる。表面プラズモン共鳴現象を利用したバイオセンサーは、本発明のポリペプチドと被検化合物との間の相互作用を微量のポリペプチドを用いてかつ標識することなく、表面プラズモン共鳴シグナルとしてリアルタイムに観察することが可能である(例えばBIAcore、Pharmacia製)。したがって、BIAcore等のバイオセンサーを用いることにより本発明のポリペプチドと被検化合物との結合を評価することが可能である。
【0109】
本発明のスクリーニングにより単離しうる化合物は、本発明のポリペプチドの活性を調節するための薬剤の候補となり、本発明のポリペプチドの発現異常や機能異常などに起因する疾患や本発明のポリペプチドの活性を制御することにより治療可能な疾患の治療への応用が考えられる。治療や予防の対象となる疾患としては、例えば、HLA領域と関連する疾患、特にびまん性汎細気管支炎が考えられる。
【0110】
本発明のポリペプチドまたは本発明のスクリーニングにより単離しうる化合物をヒトや他の哺乳動物、例えばマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ、サル、マントヒヒ、チンパンジーの医薬として使用する場合には、ポリペプチドや単離された化合物自体を直接患者に投与する以外に、公知の製剤学的方法により製剤化した医薬組成物として投与を行うことも可能である。例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤として経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、又は懸濁液剤の注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、薬理学上許容される担体もしくは媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤などと適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することが考えられる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
【0111】
錠剤、カプセル剤に混和することができる添加剤としては、例えばゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸のような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖又はサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油又はチェリーのような香味剤が用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記の材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用蒸留水のようなベヒクルを用いて通常の製剤実施に従って処方することができる。
【0112】
注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えばD−ソルビトール、D−マンノース、D−マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80(TM)、HCO−50と併用してもよい。
【0113】
油性液としてはゴマ油、大豆油があげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールと併用してもよい。また、緩衝剤、例えばリン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液、無痛化剤、例えば、塩酸プロカイン、安定剤、例えばベンジルアルコール、フェノール、酸化防止剤と配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填させる。
【0114】
患者への投与は、例えば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射などのほか、鼻腔内的、経気管支的、筋内的、経皮的、または経口的に当業者に公知の方法により行いうる。投与量は、患者の体重や年齢、投与方法などにより変動するが、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。また、該化合物がDNAによりコードされうるものであれば、該DNAを遺伝子治療用ベクターに組込み、遺伝子治療を行うことも考えられる。投与量、投与方法は、患者の体重や年齢、症状などにより変動するが、当業者であれば適宜選択することが可能である。
【0115】
本発明のポリペプチドの投与量は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法によっても異なるが、例えば注射剤の形では通常成人(体重60kgとして)においては、1日あたり約100μgから20mgであると考えられる。
【0116】
本発明のポリペプチドと結合する化合物の投与量は、症状により差異はあるが、経口投与の場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、1日あたり約0.1から100mg、好ましくは約1.0から50mg、より好ましくは約1.0から20mgであると考えられる。
【0117】
非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法によっても異なるが、例えば注射剤の形では通常成人(体重60kgとして)においては、通常、1日当り約0.01から30mg、好ましくは約0.1から20mg、より好ましくは約0.1から10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合であると考えられる。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量、あるいは体表面積あたりに換算した量を投与することができる。
【0118】
また、本発明のポリペプチドをコードするDNAを医薬組成物として用いる場合には、上述したように本発明のDNAを生体内でその発現を保証するベクターに組み込み、例えば、レトロウイルス法、リポソーム法、カチオニックリポソーム法、アデノウイルス法などにより生体内に導入すればよい。これにより、本発明のxv−β遺伝子の変異に起因する疾患に対する遺伝子治療を行うことが可能である。生体内への投与は、ex vivo法やin vivo法が考えられる。
【0119】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0120】
[実施例1] 発現配列の転写地図作成
HLA領域のゲノム配列をGRAIL(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)およびGENSCAN(e−mail:genscan@CCR−081.mit.edu)のコンピュータプログラムを用いて、発現配列の予測を行った。また、HLAゲノム配列内に存在する繰り返し配列をコンピュータプログラム(http://ftp.genome.washington.edu/cgi−bin/RepeatMasker)を用いて検出した。一般的に繰り返し配列内には機能的遺伝子は存在しないと考えられているため、繰り返し配列を除いた塩基配列をESTデータベース(e−mail:blast@ncbi.nlm.nih.gov)を用いて、相同性検索を行った。このようにして得られた発現配列の情報をまとめ、この領域内で機能的遺伝子の存在する可能性が最も高い発現配列を見い出した。
【0121】
[実施例2] vx−β遺伝子の単離および構造決定
発現配列の転写地図作成において予測された発現配列内にPCRプライマーを設計し、ヒト肺cDNAライブラリーを鋳型として、PCR反応を行った。PCR反応によるcDNAの単離は、ライブラリーを展開しハイブリダイゼーションによってcDNAを単離する方法と比較して、一度に多数の組織におけるスクリーニングを行うことが可能であり、迅速に各組織における発現の有無を確認することが可能である。
本実施例におけるPCR反応では、ハイブリダイゼーション法では検出が不可能な発現量の低い遺伝子の検出も可能とするために入れ子プライマー(nested primer)を用いた。
【0122】
PCR反応においては、50μl PCR反応溶液[5μl dNTP (2.5mM each),1μl ヒト肺cDNAライブラリー(2ng/μl), 5μl 10×バッファー (100mM Tris−HCl, pH8.3, 500mM KCl, 15mM MgCl) , 20pmolのフォワードおよびリバースプライマー、および 0.5U AmpliTaq Gold (PE biosystems)]を用いた。PCR反応条件は、95℃ 9分、次いで、95℃ 30秒, 60℃ 45秒, 72℃ 45秒を30サイクル、72℃ 7秒での最終伸長反応とした。このようにして単離された PCR産物を精製するために、エキソヌクレアーゼI および Shrimp Alkaline Phosphatase を加え、37℃で15分間インキュベートした。次に、85℃で15分間インキュベートして両酵素を失活させた。塩基配列の解析においては、20μlのシークエンシング反応溶液[PCR産物 (3−10ng),プライマー(3.2pmol)、Ready Reaction Premix 8μl (PE Biosystems)]を用い、反応条件は96℃ 10秒、60℃ 4分を40サイクルで行なった。そのシークエンシング産物を377自動蛍光シークエンサー(PE Biosystems)にて解析した。
単離された遺伝子を「vx−β遺伝子」と命名した。
【0123】
[実施例3] vx−β遺伝子の発現解析
遺伝子のイントロンを挟む形で設計されたPCRプライマーを用いて、ヒト各組織における遺伝子の発現パターンをRT−PCRによって解析した。PCR反応には、50μl PCR反応溶液[6μl dNTP (2.5mM each), 10μl 5×buffer (100mM Tris−HCl, pH8.3, 500mM KCl, 15mM MgCl) , 5μl 25mM Mn(OAc)2, 20pmol of forward and reverse primers, 2μl 10U/μl RNase Inhibitor, 2μl 2.5U/μl rTth DNA polymerase, human RNA(10ng/μl)]を用いた。反応条件としては、60℃ 30分, 94℃ 2分、次いで、94℃ 1分、60℃ 1.5分を40サイクル、次いで、60℃ 5分で行なった。
上記の各実験に使用したプライマーは表1に示した。
【0124】
【表1】
Figure 2004267003
【0125】
その結果、該遺伝子は、検討した組織の中では、脳、精巣、頚部、脾臓、膵臓、子宮、肝臓、胃、粘膜、食道、肺、皮膚、骨格筋、皮膚ケラチノサイト、皮膚繊維芽細胞、胎児心臓、胎児腎臓、胎児皮膚、胎児肺、肺腫瘍で発現が検出された。一方、心臓、胎盤、腎臓、直腸、小腸では発現が検出されなかった。
【0126】
【発明の効果】
本発明により、新規な遺伝子xv−βが提供された。xv−β遺伝子は、数多くの疾患との遺伝的相関や連鎖が報告されているHLA領域に存在し、該領域の中でもびまん性汎細気管支炎感受性遺伝子の感受性領域と推定される領域(S遺伝子とTFIIH遺伝子の間)に存在する。従って、xv−β遺伝子や該遺伝子がコードする蛋白質あるいはこれらの活性を調節する化合物は、HLA領域と関連する疾患、特にびまん性汎細気管支炎の治療や予防への応用が期待される。
【0127】
【配列表】
Figure 2004267003
Figure 2004267003
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Figure 2004267003
Figure 2004267003
Figure 2004267003
Figure 2004267003

Claims (11)

  1. 下記(a)から(d)のいずれかに記載のDNA。
    (a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするDNA。
    (b)配列番号:1に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA。
    (c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドをコードするDNA。
    (d)配列番号:1に記載の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドをコードするDNA。
  2. 配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの部分ペプチドをコードするDNA。
  3. 請求項1または2に記載のDNAによりコードされるポリペプチド。
  4. 請求項1または2に記載のDNAが挿入されたベクター。
  5. 請求項1または2に記載のDNAまたは請求項4に記載のベクターを保持する形質転換細胞。
  6. 請求項5に記載の形質転換細胞を培養し、該形質転換細胞またはその培養上清から発現させたポリペプチドを回収する工程を含む、請求項3に記載のポリペプチドの製造方法。
  7. 請求項3に記載のポリペプチドに結合する抗体。
  8. 配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNAまたはその相補鎖に相補的な少なくとも15ヌクレオチドを含むポリヌクレオチド。
  9. 請求項3に記載のポリペプチドに結合する化合物のスクリーニング方法であって、
    (a)該ポリペプチドに被検試料を接触させる工程、
    (b)該ポリペプチドと被検試料との結合活性を検出する工程、および
    (c)該ポリペプチドに結合する活性を有する化合物を選択する工程、を含む方法。
  10. 請求項9に記載の方法により単離し得る、請求項3に記載のポリペプチドに結合する化合物。
  11. 請求項1若しくは2に記載のDNA、請求項3に記載のポリペプチド、または請求項10に記載の化合物を含有する医薬組成物。
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