JP2006213888A - 有機無機複合材料及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 多様な形状や構造を構築可能な、特に多分岐状ネットワーク構造を実現可能な酸化チタン含有有機無機複合材料、及び該有機無機複合材料の簡便な製造方法を提供すること。
【解決手段】 直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマー(a)とシリカ(b)とからなる複合ナノファイバ、及び該複合ナノファイバを被覆する酸化チタン(c)とからなる有機無機複合材料、及び、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーの結晶性ポリマーフィラメントを得た後、該結晶性ポリマーフィラメントをシリカで被覆して複合ナノファイバを形成し、次いで、該複合ナノファイバ表面でチタン化合物を加水分解縮合反応させて、複合ナノファイバを酸化チタンにより被覆する有機無機複合材料の製造方法。
【選択図】 図2

Description

本発明は、ポリマーとシリカとからなる複合ナノファイバに、酸化チタンが被覆された有機無機複合材料、及び該有機無機複合材料の製造方法に関する。
酸化チタンは白色顔料として古くから利用されてきたが、近年ではその高い屈折率に基づく光の反射・屈折現象を利用して、化粧料、干渉顔料等にも幅広く使用されており、フォトニック結晶の構成材料としての期待も高い。また光触媒としての有用性もよく知られており、太陽電池や、物質の光分解、酸化反応を利用した殺菌、抗菌、防臭システム等に応用されている。
こうした特性を有する酸化チタンの更なる応用範囲の拡大やより優れた特性発現のために、酸化チタンをナノ構造体に構築することが大きな課題のひとつとなっている。例えば、酸化チタンの球状ナノ粒子、或いはナノファイバ、ナノチューブなどがその代表例である。
酸化チタンのナノ構造体としては、シリカをコアとし、酸化チタンをシェル層とする複合体や、粉末酸化チタンを出発原料とする酸化チタンのナノチューブに関する開発研究が広く知られている。しかしながら、酸化チタンのナノ構造体は機械的な強度の弱さ、低い熱安定性、成形加工限界など、多くの応用的な問題点を抱えている。このため、酸化チタンを機械的、熱的に安定な材料、例えばシリカやアルミナと組み合わせたナノ構造体の検討がなされている。
シリカと酸化チタンとを組み合わせたナノ構造体としては、シリカのナノ粒子やナノ薄膜が比較的に容易に得られることから、これら表面に酸化チタンの固定化層を形成させた複合材料の検討が広くなされている(非特許文献1、非特許文献2参照)。しかしながら、酸化チタンが有する諸機能、特に触媒、殺菌、抗菌、防臭などの機能を有効に発現させるためには、好適に他物質との接触面積を稼ぐための構造、すなわち不織布状やネットワーク構造を有するスポンジ状の構造が有効であるが、上記の粒子状や薄膜状の複合材料は二次的な構造を構築することが困難であるため、これら構造を実現することはできなかった。
Hanprasopwattana et al.,Cat.Letters,1997年、45巻、165頁 Baskaran et al.,J.Am.Ceram.Soc.,1998年、81巻、401頁
本発明が解決しようとする課題は、多様な形状や構造を構築可能な、特に多分岐状ネットワーク構造を実現可能な酸化チタン含有有機無機複合材料、及び該有機無機複合材料の簡便な製造方法を提供することにある。
酸化チタンのナノ構造制御には、酸化チタンを固定する支持体としてナノ構造制御可能な支持体を使用することが必要となる。特に多分岐状のネットワーク構造を形成するには、その支持体が多分岐状ネットワーク構造を構築できることが必要である。本発明においては、その支持体として、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーとシリカとからなる複合ナノファイバを使用する。該複合ナノファイバは、内部のポリマーが形成する結晶性ポリマーフィラメントにより誘導される多様な形状の会合体や該会合体が相互に会合した構造体を形成でき、且つ、該ポリマーが、チタン化合物のシリカ表面での加水分解縮合反応を加速させるため、多様な形状や構造、特に多分岐状ネットワーク構造を有する酸化チタン含有有機無機複合材料が実現される。
すなわち本発明は、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマー(a)及びシリカ(b)からなる複合ナノファイバと、該複合ナノファイバを被覆する酸化チタン(c)とからなる有機無機複合材料を提供するものである。
さらに本発明は、(1)直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを溶媒に溶解させた後、水の存在下で析出させ、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーの結晶性ポリマーフィラメントを得る工程と、(2)水の存在下で、前記結晶性ポリマーフィラメントとアルコキシシランとを接触させることにより、前記結晶性ポリマーフィラメントをシリカで被覆して複合ナノファイバを得る工程と、(3)前記複合ナノファイバとチタン化合物の水性媒体溶液とを接触させることにより、前記複合ナノファイバ表面で前記チタン化合物を加水分解縮合反応させて、前記複合ナノファイバを酸化チタンにより被覆する工程、を有する有機無機複合材料の製造方法を提供するものである。
本発明の有機無機複合材料の支持体として使用する複合ナノファイバは、繊維状の一次形状、該一次形状が相互に会合した会合体の有する二次形状、さらに、該会合体が相互に会合した構造体の有する三次形状等の様々な形状を形成できるため、これら形状を形成した複合ナノファイバを酸化チタンで被覆した本発明の有機無機複合材料は、複合ナノファイバが形成可能な多様な形状を実現できる。また、複合ナノファイバの形成する二次形状や三次形状は、繊維状の一次形状を基礎とする構造であり、複合ナノファイバの会合体や構造体は該一次形状が相互に会合した複雑な内部構造を有することから、本発明の有機無機複合材料は多分岐ネットワーク構造やウェブ構造等の複雑な内部構造を構築することが可能である。
このような、本発明の複合材料は、酸化チタンが関わる応用領域、光触媒、太陽電池、殺菌、抗菌、抗ウイルス、浄水、防臭材料への応用が期待できる。
本発明の有機無機複合材料は、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマー(a)及びシリカ(b)からなる複合ナノファイバと、該複合ナノファイバを被覆する酸化チタン(c)とからなる複合材料である。
[直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマー(a)]
本発明でいう直鎖状ポリエチレンイミン骨格とは、二級アミンのエチレンイミン単位を主たる構造単位とする直鎖状のポリマー骨格をいう。該骨格中においては、エチレンイミン単位以外の構造単位が存在していてもよいが、多様な構造を形成するための結晶性ポリマーフィラメントを形成させるためには、ポリマー鎖の一定鎖長が連続的なエチレンイミン単位からなることが好ましい。該直鎖状ポリエチレンイミン骨格の長さは、該骨格を有するポリマー(a)が結晶性ポリマーフィラメントを形成できる範囲であれば特に制限されないが、好適に結晶性ポリマーフィラメントを形成するためには、該骨格部分のエチレンイミン単位の繰り返し単位数が10以上であることが好ましく、20〜10000の範囲であることが特に好ましい。
本発明において使用するポリマー(a)は、その構造中に上記直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するものであればよく、その形状が線状、星状または櫛状であっても、水の存在下で結晶性ポリマーフィラメントを与えることができるものであればよい。
また、これら線状、星状または櫛状のポリマーは、直鎖状ポリエチレンイミン骨格のみからなるものであっても、直鎖状ポリエチレンイミン骨格からなるブロック(以下、ポリエチレンイミンブロックと略記する。)と他のポリマーブロックとのブロックコポリマーからなるものであってもよい。他のポリマーブロックとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピオニルエチレンイミン、ポリアクリルアミドなどの水溶性のポリマーブロック、あるいは、ポリスチレン、ポリオキサゾリン類のポリフェニルオキサゾリン、ポリオクチルオキサゾリン、ポリドデシルオキサゾリン、ポリアクリレート類のポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレートなどの疎水性のポリマーブロックを使用できる。これら他のポリマーブロックとのブロックコポリマーとすることで、結晶性ポリマーフィラメントの形状や特性を調整することができる。
直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマー(a)が、他のポリマーブロック等を有する場合の該ポリマー(a)中における直鎖状ポリエチレンイミン骨格の割合は結晶性ポリマーフィラメントを形成できる範囲であれば特に制限されないが、好適に結晶性ポリマーフィラメントを形成するためには、ポリマー(a)中の直鎖状ポリエチレンイミン骨格の割合が25モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがより好ましく、50モル%以上であることがさらに好ましい。
上記直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマー(a)は、その前駆体となるポリオキサゾリン類からなる直鎖状の骨格を有するポリマー(以下、前駆体ポリマーと略記する。)を、酸性条件下またはアルカリ条件下で加水分解することで容易に得ることができる。従って、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマー(a)の線状、星状、または櫛状などの形状は、この前駆体ポリマーの形状を制御することで容易に設計することができる。また、重合度や末端構造も、前駆体ポリマーの重合度や末端機能団を制御することで容易に調整できる。さらに、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するブロックコポリマーを形成する場合には、前駆体ポリマーをブロックコポリマーとし、該前駆体中のポリオキサゾリン類からなる直鎖状の骨格を選択的に加水分解することで得ることができる。
前駆体ポリマーは、オキサゾリン類のモノマーを使用して、カチオン型の重合法、あるいは、マクロモノマー法などの合成方法により合成が可能であり、合成方法や開始剤を適宜選択することにより、線状、星状、あるいは櫛状などの各種形状の前駆体ポリマーを合成できる。
ポリオキサゾリン類からなる直鎖状の骨格を形成するモノマーとしては、メチルオキサゾリン、エチルオキサゾリン、メチルビニルオキサゾリン、フェニルオキサゾリンなどのオキサゾリンモノマーを使用できる。
重合開始剤としては、分子中に塩化アルキル基、臭化アルキル基、ヨウ化アルキル基、トルエンスルホニルオキシ基、あるいはトリフルオロメチルスルホニルオキシ基などの官能基を有する化合物を使用できる。これら重合開始剤は、多くのアルコール類化合物の水酸基を他の官能基に変換させることで得られる。なかでも、官能基変換として、臭素化、ヨウ素化、トルエンスルホン酸化、およびトリフルオロメチルスルホン酸化されたものは重合開始効率が高いため好ましく、特に臭化アルキル、トルエンスルホン酸アルキルが好ましい。
また、ポリ(エチレングリコール)の末端水酸基を臭素あるいはヨウ素に変換したもの、またはトルエンスルホニル基に変換したものを重合開始剤として使用することもできる。その場合、ポリ(エチレングリコール)の重合度は5〜100の範囲であることが好ましく、10〜50の範囲であれば特に好ましい。
また、カチオン開環リビング重合開始能を有する官能基を有し、かつ光による発光機能、エネルギー移動機能、電子移動機能を有するポルフィリン骨格、フタロシアニン骨格、またはピレン骨格のいずれかの骨格を有する色素類は、得られるポリマーに特殊な機能を付与することができる。
線状の前駆体ポリマーは、上記オキサゾリンモノマーを1価または2価の官能基を有する重合開始剤により重合することで得られる。このような重合開始剤としては、例えば、塩化メチルベンゼン、臭化メチルベンゼン、ヨウ化メチルベンゼン、トルエンスルホン酸メチルベンゼン、トリフルオロメチルスルホン酸メチルベンゼン、臭化メタン、ヨウ化メタン、トルエンスルホン酸メタンまたはトルエンスルホン酸無水物、トリフルオロメチルスルホン酸無水物、5−(4−ブロモメチルフェニル)−10,15,20−トリ(フェニル)ポルフィリン、またはブロモメチルピレンなどの1価のもの、ジブロモメチルベンゼン、ジヨウ化メチルベンゼン、ジブロモメチルビフェニレン、またはジブロモメチルアゾベンゼンなどの2価のものが挙げられる。また、ポリ(メチルオキサゾリン)、ポリ(エチルオキサゾリン)、または、ポリ(メチルビニルオキサゾリン)などの工業的に使用されている線状のポリオキサゾリンを、そのまま前駆体ポリマーとして使用することもできる。
星状の前駆体ポリマーは、上記したようなオキサゾリンモノマーを3価以上の官能基を有する重合開始剤により重合することで得られる。3価以上の重合開始剤としては、例えば、トリブロモメチルベンゼン、などの3価のもの、テトラブロモメチルベンゼン、テトラ(4−クロロメチルフェニル)ポルフィリン、テトラブロモエトキシフタロシアニンなどの4価のもの、ヘキサブロモメチルベンゼン、テトラ(3,5−ジトシリルエチルオキシフェニル)ポルフィリンなどの5価以上のものが挙げられる。
櫛状の前駆体ポリマーを得るためには、多価の重合開始基を有する線状のポリマーを用いて、該重合開始基からオキサゾリンモノマーを重合させることができるが、例えば、通常のエポキシ樹脂やポリビニルアルコールなどの側鎖に水酸基を有するポリマーの水酸基を、臭素やヨウ素等でハロゲン化するか、あるいはトルエンスルホニル基に変換させた後、該変換部分を重合開始基として用いることでも得ることができる。
また、櫛状の前駆体ポリマーを得る方法として、ポリアミン型重合停止剤を用いることもできる。例えば、一価の重合開始剤を用い、オキサゾリンを重合させ、そのポリオキサゾリンの末端をポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリプロピルアミンなどのポリアミンのアミノ基に結合させることで、櫛状のポリオキサゾリンを得ることができる。
上記により得られる前駆体ポリマーのポリオキサゾリン類からなる直鎖状の骨格の加水分解は、酸性条件下またはアルカリ条件下のいずれの条件下でもよい。
酸性条件下での加水分解は、例えば、塩酸水溶液中でポリオキサゾリンを加熱下で攪拌することにより、ポリエチレンイミンの塩酸塩を得ることができる。得られた塩酸塩を過剰のアンモニウム水で処理することで、塩基性のポリエチレンイミンの結晶粉末を得ることができる。用いる塩酸水溶液は、濃塩酸でも、1mol/L程度の水溶液でもよいが、加水分解を効率的に行うには、5mol/Lの塩酸水溶液を用いることが望ましい。また、反応温度は80℃前後が望ましい。
アルカリ条件下での加水分解は、例えば、水酸化ナトリウム水溶液を用いることで、ポリオキサゾリンをポリエチレンイミンに変換させることができる。アルカリ条件下で反応させた後、反応液を透析膜にて洗浄することで、過剰な水酸化ナトリウムを除去し、ポリエチレンイミンの結晶粉末を得ることができる。用いる水酸化ナトリウムの濃度は1〜10mol/Lの範囲であればよく、より効率的な反応を行うには3〜5mol/Lの範囲であることが好ましい。また、反応温度は80℃前後が好ましい。
酸性条件下またはアルカリ条件下での加水分解における、酸またはアルカリの使用量は、ポリマー中のオキサゾリン単位に対し、1〜10当量でよく、反応効率の向上と後処理の簡便化のためには、3当量程度とすることが好ましい。
上記加水分解により、前駆体ポリマー中のポリオキサゾリン類からなる直鎖状の骨格が、直鎖状ポリエチレンイミン骨格となり、該ポリエチレンイミン骨格を有するポリマー(a)が得られる。
また、直鎖状ポリエチレンイミンブロックと他のポリマーブロックとのブロックコポリマーを形成する場合には、前駆体ポリマーをポリオキサゾリン類からなる直鎖状のポリマーブロックと、他のポリマーブロックとからなるブロックコポリマーとし、該前駆体ポリマー中のポリオキサゾリン類からなる直鎖状のブロックを選択的に加水分解することで得ることができる。
他のポリマーブロックが、ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)などの水溶性ポリマーブロックである場合には、ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)が、ポリ(N−ホルミルエチレンイミン)やポリ(N−アセチルエチレンイミン)に比べて、有機溶剤への溶解性が高いことを利用してブロックコポリマーを形成することができる。即ち、2−オキサゾリンまたは2−メチル−2−オキサゾリンを、前記した重合開始化合物の存在下でカチオン開環リビング重合した後、得られたリビングポリマーに、さらに2−エチル−2−オキサゾリンを重合させることによって、ポリ(N−ホルミルエチレンイミン)ブロックまたはポリ(N−アセチルエチレンイミン)ブロックと、ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)ブロックとからなる前駆体ポリマーを得る。該前駆体ポリマーを水に溶解させ、該水溶液にポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)ブロックを溶解する水とは非相溶の有機溶剤を混合して攪拌することによりエマルジョンを形成する。該エマルジョンの水相に、酸またはアルカリを添加することによりポリ(N−ホルミルエチレンイミン)ブロックまたはポリ(N−アセチルエチレンイミン)ブロックを優先的に加水分解させることにより、直鎖状ポリエチレンイミンブロックと、ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)ブロックとを有するブロックコポリマーを形成できる。
ここで使用する重合開始化合物の価数が1および2の場合には、直鎖状のブロックコポリマーとなり、それ以上の価数であれば星型のブロックコポリマーが得られる。また、前駆体ポリマーを多段のブロックコポリマーとすることで、得られるポリマーも多段のブロック構造とすることも可能である。
[複合ナノファイバ]
本発明において使用する、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマー(a)とシリカ(b)とからなる複合ナノファイバ(以下、複合ナノファイバと略記する。)は、上記ポリマー(a)とシリカ(b)とが複合化された繊維形状のものであり、その太さが10〜1000nm、好ましくは15〜100nmのものであり、長さが太さの10倍以上、好ましくは100倍以上の長さを有するものである。
該複合ナノファイバ中のシリカ(b)としては、公知慣用のシリカソースのゾルゲル反応により得られるシリカを使用できる。
該繊維形状の複合ナノファイバは、該複合ナノファイバが相互に会合した多様な形状を有する複合ナノファイバ会合体を形成でき、さらに、該会合体が相互に会合した構造体の有する三次形状等の様々な形状を形成できる。また、これら複合ナノファイバの形成する会合体や構造体は、微細なナノファイバを基礎とする構造であり、複合ナノファイバの会合体や構造体は該一次形状が相互に会合した、多分岐ネットワーク構造やウェブ構造等の複雑な内部構造を構築することが可能である。
[有機無機複合材料]
本発明の有機無機複合材料は、酸化チタン(c)が、複合ナノファイバにハイブリッドされたものであり、該有機無機複合材料は多様な外形形状を形成でき、その形状中に複雑な内部構造を構築できることが大きな特徴である。
本発明の有機無機複合材料の形状は、数〜数百nm程度の太さ、好ましくは15〜200nmの太さを有する繊維形状(以下、一次形状という。)を基礎の形状とするものであり、本発明の複合材料は該一次形状の形状をはじめとして、該一次形状同士の会合により多様な形状を発現できる。該一次形状である繊維形状の長さは、特に制限されるものではないが、0.1μm〜3mmの範囲のものであることが好ましい。
上記一次形状中においては、酸化チタン(c)は複合ナノファイバ中に含まれるポリマー(a)によってデポジットされることにより、これらがハイブリッドされた状態となる。この酸化チタン(c)は、チタン化合物の加水分解縮合により形成されるものを使用できる。
本発明の有機無機複合材料は、上記一次形状同士の会合により、マイクロ〜ミリメートルオーダーの二次元あるいは三次元的な空間形状(以下、二次形状という。)を有する会合体を形成できる。該会合体の二次形状は、例えば、フィルム状、花束状、アスター状、など様々な形状に調整できる。これら形状は、ポリマー(a)の構造の幾何学的な形状や、分子量、ポリマー(a)中に導入できる非エチレンイミン部分、さらにはポリマー(a)の結晶の形成条件等に依存するものであり、使用するポリマー(a)の分子構造、重合度、組成、及びポリマー結晶の調製方法に特に影響される。
さらに上記二次形状の会合体同士、あるいは二次形状の会合体が一次形状を介して結合することにより、ミリメートルオーダー以上の大きさのマクロな階層構造の構造体を形成することができる。該構造体の外形形状(以下、三次形状という。)は任意の形状に成形することが可能であり、具体的な応用の要求に合わせて、円盤型、円柱型、プレート型、フィルタ型、膜型、球型、ロッド型などに成形することができる。該構造体は、上記一次形状や二次形状を基礎とするものであるため、内部にはこれら一次、二次形状が相互に会合した、多分岐ネットワーク構造やウェブ構造等の複雑な内部構造を有する。
本発明の複合材料中におけるシリカ(b)の含有量としては、上記一次、二次、三次形状を形成できれば特に制限されないが、30〜80質量%の範囲であると上記各形状を安定して形成できるため好ましい。また、酸化チタン(c)の含有量は、各種用途に応じて適宜調整することができ、その用途に応じて任意に調整することが好ましいが、製造する観点からは5〜60質量%の範囲であることが好ましい。
[有機無機複合材料の製造方法]
本発明の有機無機複合材料を製造するには、形状制御可能なテンプレートと、チタン化合物を濃縮できる配位性分子の存在が必須であると考えられる。本発明の製造方法においては、該配位性分子として直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを使用して(i)直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーからなる結晶性ポリマーフィラメントを形成させ、(ii)該結晶性ポリマーフィラメント表面でゾルゲル反応を進行させることによりシリカを固定して複合ナノファイバを得る、(iii)そのシリカ中に存在する直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーによりチタン化合物の加水分解縮合が促進されて酸化チタンをデポジットさせることにより、本発明の有機無機複合材料を実現できる。
上記(i)においては、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマー中の直鎖状ポリエチレンイミン骨格は水中可溶であるが、室温では水不溶性であることを利用して結晶性ポリマーフィラメントを得る。該結晶性ポリマーフィラメントは相互に会合することができ、多様な形状を形成することができる。これを利用して、該ポリマー会合体を多様な形状のテンプレートとすることができる。また、結晶性ポリマーフィラメント表面には不可避的に会合体形成に関わりがないフリーなポリエチレンイミンの鎖が多数存在し、これらフリーな鎖は結晶性ポリマーフィラメント表面に垂れている状態となる。これらの鎖はシリカソースを引き寄せる足場であり、同時にシリカソースを重合させる触媒の働きをする。
上記(ii)においては、該結晶性ポリマーフィラメント表面でゾルゲル反応を進行させることにより、該結晶性ポリマーフィラメント表面がシリカで被覆された複合ナノファイバとなる。この際、該結晶性ポリマーフィラメントが相互に会合したポリマー会合体を形成している場合には、該会合体の形状がシリカに複写され複合ナノファイバの会合体が形成される。従って、該ポリマー会合体が誘導可能な多様な形状と同様の多様な形状を複合ナノファイバの会合体により実現できる。
また、該ポリマー会合体は、水の存在下で形状を容易に制御できるヒドロゲルを与えるため、該ヒドロゲルを任意の形状に成形した後、ヒドロゲル中のポリマー会合体同士を、二つ以上の官能基を有する化合物による化学結合で架橋した後、ゾルゲル反応を行うことで、大きなシリカゲルの固まりの中に、個々のポリマー会合体の形状が取り込まれた複合ナノファイバ会合体からなる構造体が得られる。該ヒドロゲルは各種形状に成形が可能であるため、複合ナノファイバ会合体からなる構造体はマクロな形状制御が可能となる。
この多様な形状を形成可能な、複合ナノファイバを、チタン化合物の水溶液と接触させることで、上記(iii)により、複合ナノファイバに多くのチタンが濃縮され、該チタン化合物が、複合ナノファイバ中の直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーによりチタン化合物の加水分解と縮合反応がシリカの表面だけで進行する。その結果、シリカの表面では、酸化チタンがデポジットされ、シリカ/ポリマー/酸化チタンの有機無機複合材料が形成される。
本発明の複合材料を製造する具体的な方法としては、下記(1)〜(3)の工程、
(1)直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを溶媒に溶解させた後、水の存在下で析出させ、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーの結晶性ポリマーフィラメントを得る工程と、
(2)水の存在下で、前記結晶性ポリマーフィラメントとアルコキシシランとを接触させることにより、前記結晶性ポリマーフィラメントをシリカで被覆して複合ナノファイバを得る工程と、
(3)前記複合ナノファイバとチタン化合物の水性媒体溶液とを接触させることにより、前記複合ナノファイバ表面で前記チタン化合物を加水分解縮合反応させて、前記複合ナノファイバを酸化チタンにより被覆する工程、を有する製造方法が挙げられる。
(結晶性ポリマーフィラメントを得る工程)
本発明の製造方法においては、まず、(1)直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを溶媒に溶解させた後、水の存在下で析出させ、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーの結晶性ポリマーフィラメントを形成する。ここで、使用できる直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーは、上記ポリマー(a)と同様である。
上記ポリマー(a)は、直鎖状ポリエチレンイミン骨格が、水性媒体中で結晶性を発現して結晶化し、該結晶同士が相互に会合することで、上記した結晶性ポリマーフィラメントを形成する。該結晶性ポリマーフィラメントは、水の存在下での結晶性ポリマーフィラメント同士の物理的な結合によりポリマー会合体を形成することができ、さらにこの会合体間での結晶性ポリマーフィラメント同士の物理的な結合により三次元網目構造を有するヒドロゲル状とすることもできる。また、ポリマー会合体同士を架橋剤で架橋することにより化学的な架橋結合を有する架橋ヒドロゲルとすることもできる。これらヒドロゲルを使用すると、ヒドロゲルの作製条件を調製することにより得られる複合材料の二次形状の調整を容易にでき、また、複合材料のマクロな三次形状を形成する際に形状制御が容易であるため好ましい。
従来広く使用されてきたポリエチレンイミンは、環状エチレンイミンの開環重合により得られる分岐状ポリマーであり、その一次構造には一級アミン、二級アミン、三級アミンが存在する。従って、分岐状ポリエチレンイミンは水溶性であるが、結晶性は持たないため、分岐状ポリエチレンイミンを用いてヒドロゲルを作るためには、架橋剤による共有結合により網目構造を与えなくてはならない。しかしながら本発明に使用するポリマーが骨格として有する直鎖状ポリエチレンイミンは、二級アミンだけで構成されており、該二級アミン型の直鎖状ポリエチレンイミンは水溶性でありながら、結晶化が可能である。
このような、直鎖状ポリエチレンイミンの結晶は、そのポリマーのエチレンイミン単位に含まれる結晶水数により、ポリマー結晶構造が大きく異なることが知られている(Y.Chatani et al.、Macromolecules、1981年、第14巻、p.315−321)。無水のポリエチレンイミンは二重螺旋構造を特徴とする結晶構造を優先するが、モノマー単位に2分子の水が含まれると、ポリマーはzigzag構造を特徴とする結晶体に成長することが知られている。実際、水中から得られる直鎖状ポリエチレンイミンの結晶は一つのモノマー単位に2分子水を含む結晶であり、その結晶は室温状態では水中不溶である。
本発明における直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーの結晶性ポリマーフィラメントは、上記の場合と同様に直鎖状ポリエチレンイミン骨格の結晶発現により形成されるものであり、ポリマー形状が線状、星状、または櫛状などの形状であっても、一次構造に直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーであれば、結晶性ポリマーフィラメントが得られる。
結晶性ポリマーフィラメントの存在はX線散乱により確認でき、広角X線回折計(WAXS)における2θ角度値で20°,27°,28°近傍の結晶性ヒドロゲル中の直鎖状ポリエチレンイミン骨格に由来するピーク値により確認される。
また、結晶性ポリマーフィラメントの示差走査熱量計(DSC)における融点は、ポリエチレンイミン骨格のポリマーの一次構造にも依存するが、概ねその融点が45〜90℃で現れる。
結晶性ポリマーフィラメントは、水の存在下で結晶性ポリマーフィラメント同士の物理的な結合により三次元網目構造を有するヒドロゲルを形成することもでき、さらに結晶性ポリマーフィラメント同士を架橋剤で架橋することにより化学的な架橋結合を有する架橋ヒドロゲルを形成することもできる。
結晶性ポリマーフィラメントのヒドロゲル中では、結晶性ポリマーフィラメント同士が、水の存在下で相互に会合して、マイクロ〜ミリメートルの大きさの三次元形状を有するポリマー会合体を形成する(以下、該ポリマー会合体の三次元形状を二次形状と言う場合がある。)。これら二次形状を有する会合体間において、会合体中の結晶性ポリマーフィラメントがさらに物理的に会合して架橋構造を形成し、全体として結晶性ポリマーフィラメントからなる三次元網目構造を形成する。これらは水の存在下で生じるため、該三次元網目構造中に水を包含したヒドロゲルが形成される。架橋剤を使用した場合には、結晶性ポリマーフィラメント間が化学的に架橋し、該三次元網目構造が化学的な架橋により固定化された架橋ヒドロゲルとなる。
ここでいう三次元網目構造とは、通常の高分子ヒドロゲルと異なり、ナノスケールの結晶性ポリマーフィラメント同士が、その表面に存在するフリーなエチレンイミン鎖の水素結合により、物理的な架橋により形成された網目構造である。従って、その結晶の融点以上の温度では、結晶が水中溶解されてしまい、三次元網目構造も解体される。ところが、それが室温に戻ると結晶性ポリマーフィラメントが成長し、その結晶間では水素結合による物理的な架橋が形成するため、再び、三次元網目構造が現れる。
ヒドロゲル中で、結晶性ポリマーフィラメントが形成する二次形状は、ポリマー構造の幾何学的な形状や、分子量、一次構造中に導入できる非エチレンイミン部分、さらには結晶性ポリマーフィラメントの形成条件などを調整することにより、例えばファイバ状、ブラシ状、星状などの各種形状に制御可能である。また、ヒドロゲルは、概ねの外形(以下、該ヒドロゲルの外形形状を三次形状と言う場合がある。)を保持できるが、外力により任意に変形させることができるため、その形状を容易に制御できるものである。
上記結晶性ポリマーフィラメントは、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーが室温の水に不溶である性質を利用し、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを溶媒に溶解させた後、水の存在下で析出させることで得られる。
具体的な方法としては、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを水又は水と親水性有機溶剤の混合溶媒(以下、これらを水性媒体という。)に溶解し、該溶液を加熱した後冷却する方法や、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを親水性有機溶剤に溶解し、該溶液に水を加える方法などが例として挙げられる。
直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを溶解する溶媒は、水性媒体又は親水性有機溶剤を好ましく使用できる。該該親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォンオキシド、ジオキシラン、ピロリドンなどの親水性有機溶剤が挙げられる。
直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーの溶液から結晶性ポリマーフィラメントを析出させるには、水の存在が不可欠であるため、析出は水性媒体中で生じる。
また、上記方法において、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーの量を調整することで、結晶性ポリマーフィラメントからなるヒドロゲルを得ることができる。例えば、該ヒドロゲルは、まず直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを一定量水中に分散し、該分散液を加熱することにより、ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーの透明な水溶液を得る。次いで、加熱状態のポリマーの水溶液を室温に冷やすことにより得られる。該ヒドロゲルは、剪断力等の外力により変形を生じるが、概ねの形状を保持できるアイスクリームのような状態を有し、多様な形状に変形させることが可能である。
上記方法において、加熱温度は100℃以下が好ましく、90〜95℃の範囲であることがより好ましい。また、ポリマー分散液中のポリマー含有量は、ヒドロゲルが得られる範囲であれば特に限定されないが、0.01〜20質量%の範囲であることが好ましく、形状の安定したヒドロゲルを得るためには0.1〜10質量%の範囲がさらに好ましい。このように、本発明においては、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを使用すると、ごく少量のポリマー濃度でもヒドロゲルを形成することができる。
上記ポリマー水溶液の温度を室温まで低下させる過程により、得られるヒドロゲル中の結晶性ポリマーフィラメントの二次形状を調整することができる。温度を低下させる方法を例示すると、ポリマー水溶液を80℃に1時間保持した後、1時間かけて60℃にし、該温度でさらに1時間保持する。その後1時間かけて40℃まで低下させた後、自然に室温まで下げる方法、上記ポリマー水溶液を一気に氷点の氷り水、または氷点下のメタノール/ドライアイス、あるいはアセトン/ドライアイスの冷媒液にて冷却させた後、その状態のものを室温のワータバスにて保持する方法、あるいは、上記のポリマー水溶液を室温のワータバスまたは室温空気環境にて、室温まで温度を低下させる方法などが挙げられる。
上記ポリマー水溶液の温度を低下させる過程は、得られるヒドロゲル中において結晶性ポリマーフィラメント同士の会合に強く影響を与えるため、上記異なる方法により得られるヒドロゲル中の結晶性ポリマーフィラメントが形成する二次形状は同一ではない。
上記のポリマー水溶液の温度を、濃度を一定として多段階的に低下させた場合、ヒドロゲル中における結晶性ポリマーフィラメントが形成する二次形状を、ファイバ状の形状とすることができる。これを急冷した後、室温に戻した場合には、花弁状の形態とすることができ。また、これをドライアイス状のアセトンで再度急冷して、室温に戻した場合、波状の形態とすることができる。このように、本発明のヒドロゲル中における結晶性ポリマーフィラメントが形成する二次形状の形態を、各種形状に設定することができる。
上記により得られるヒドロゲルは、不透明なゲルであり、ゲル中にはポリエチレンイミン骨格を有するポリマーからなる結晶性ポリマーフィラメントが形成され、その結晶性ポリマーフィラメント同士は水素結合により物理的に架橋化され、三次元の物理的な網目構造を形成している。一旦形成したヒドロゲル中の結晶性ポリマーフィラメントは室温中では不溶状態を保つが、加熱すると結晶性ポリマーフィラメントが解離し、ヒドロゲルはゾル状態に変化してしまう。従って、本発明の物理的なヒドロゲルは、熱処理を行うことでゾルからゲル、またゲルからゾルへと可逆的な変化が可能である。
本発明でいうヒドロゲルは三次元網目構造中に少なくとも水を含有するが、該ヒドロゲルの調製時に、親水性有機溶剤を加えることで、有機溶剤を含有したヒドロゲルが得られる。該親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォンオキシド、ジオキシラン、ピロリドンなどの親水性有機溶剤が挙げられる。
有機溶剤の含有量は、水の体積に対し、0.1〜5倍の範囲であることが好ましく、1〜3倍の範囲であればより好ましい。
上記親水性有機溶剤を含有させることにより結晶性ポリマーフィラメントの形態を変えることができ、単純な水系と異なる形態の結晶を与えることができる。例えば、水中では繊維状の広がりを有する分岐状の二次形状であっても、その調製に一定量のエタノールが含まれた場合、繊維が収縮したような鞠状の二次形状を得ることができる。
本発明でいうヒドロゲル調製時に、他の水溶性ポリマーを加えることで、水溶性ポリマーを含有するヒドロゲルが得られる。該水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリンなどを取りあげることができる。
水溶性ポリマーの含有量は、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーの質量に対し、0.1〜5倍の範囲であることが好ましく、0.5〜2倍の範囲であればより好ましい。
上記水溶性ポリマーを含有させることによっても結晶性ポリマーフィラメントの形態を変えることができ、単純な水系と異なる形態の二次形状を与えることができる。また、ヒドロゲルの粘性を増大させ、ヒドロゲルの安定性を向上させることに有効である。
また、上記方法で得られたヒドロゲルを、ポリエチレンイミンのアミノ基と反応する2官能基以上を含む化合物で処理することで、ヒドロゲル中の結晶性ポリマーフィラメント表面同士を化学結合でリンクさせた架橋ヒドロゲルを得ることができる。
前記アミノ基と室温状態で反応できる2官能基以上を含む化合物としては、アルデヒド類架橋剤、エポキシ類架橋剤、酸クロリド類、酸無水物、エステル類架橋剤を用いることができる。アルデヒド類架橋剤としては、例えば、マロニルアルデヒド、スクシニルアルデヒド、グルタリルアルデヒド、アジホイルアルデヒド、フタロイルアルデヒド、イソフタロイルアルデヒド、テレフタロイルアルデヒドなどがあげられる。また、エポキシ類架橋剤としては、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、グリシジルクロライド、グリシジルブロマイドなどがあげられる。酸クロリド類としては、例えば、マロニル酸クロリド、スクシニル酸クロリド、グルタリル酸クロリド、アジホイル酸クロリド、フタロイル酸クロリド、イソフタロイル酸クロリド、テレフタロイル酸クロリドなどがあげられる。また、酸無水物としては、例えば、フタル酸無水物、スクシニル酸無水物、グルタリル酸無水物などがあげられる。また、エステル類架橋剤としては、マロニル酸メチルエステル、スクシニル酸メチルエステル、グルタリル酸メチルエステル、フタロイル酸メチルエステル、ポリエチレングリコールカルボン酸メチルエステルなどがあげられる。
架橋反応は、得られたヒドロゲルを架橋剤の溶液に浸す方法でも、架橋剤溶液をヒドロゲル中に加える方法でも可能である。この際、架橋剤は系内での浸透圧変化と共に、ヒドロゲル内部へ浸透し、そこで結晶性ポリマーフィラメント同士を水素結合で繋いでエチレンイミンの窒素原子との化学反応を引き起こす。
架橋反応は、結晶性ポリマーフィラメント表面のフリーなエチレンイミンとの反応により進行するが、その反応を結晶性ポリマーフィラメント内部では起こらないようにするためには、ヒドロゲルを形成する結晶性ポリマーフィラメントの融点以下の温度で反応を行うことが望ましく、さらには架橋反応を室温で行うことが最も望ましい。
架橋反応を室温で進行させる場合には、ヒドロゲルを架橋剤溶液と混合した状態で放置しておくことで、架橋ヒドロゲルを得ることができる。架橋反応させる時間は、数分から数日でよく、概ね一晩放置することで好適に架橋が進行する。
架橋剤量はヒドロゲル形成に用いるポリエチレンイミン骨格を有するポリマー中のエチレンイミンユニットのモル数に対し、0.05〜20%であればよく、それが1〜10%であればもっと好適である。
上記ヒドロゲルは、ゲル化剤が結晶性ポリマーフィラメントであるため多様なモルフォロジーを有するゲルを発現できる。また少量の結晶性ポリマーフィラメントであっても水中で好適に三次元網目構造を形成するため高い水保持性を有する。さらに、使用する直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーは構造設計や合成が容易であり、かつヒドロゲルの調整が簡便である。また、該ヒドロゲル中の結晶性ポリマーフィラメント間を架橋剤により架橋することにより、ヒドロゲルの形状を固定化できる。
[複合ナノファイバを得る工程]
本発明の製造方法においては上記(1)の工程に次いで、(2)水の存在下で、前記結晶性ポリマーフィラメントとアルコキシシランとを接触させることにより、前記結晶性ポリマーフィラメントをシリカで被覆して複合ナノファイバを得る工程を有する。また、結晶性ポリマーフィラメントが架橋剤で架橋された状態や結晶性ポリマーフィラメントがヒドロゲルを形成した状態、あるいは該ヒドロゲルを架橋剤で架橋させた状態でシリカソースを接触させることで、複合ナノファイバからなる構造体(以下、単に複合構造体と言う場合がある。)を得ることができる。
結晶性ポリマーフィラメントとシリカソースとを接触させる方法としては、結晶性ポリマーフィラメントの水中分散液または結晶性ポリマーフィラメントのヒドロゲル又は架橋ヒドロゲル中に、通常のゾルゲル反応において使用できる溶媒にシリカソースを溶解した溶液を加えて、室温下でゾルゲル反応させる方法が挙げられる。該方法により複合ナノファイバ、複合構造体を容易に得ることができる。
シリカソースとして用いる化合物としては、ゾルゲル反応によりシリカ(b)を形成するテトラアルコキシシラン類、アルキルトリアルコキシシラン類などが挙げられる。
テトラアルコキシシラン類としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシランなどを挙げられる。
アルキルトリアルコキシシラン類としては、メチルトリメトキシラン、メチルトリエトキシラン、エチルトリメトキシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシラン、n−プロピルトリエトキシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシトキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシトキシプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシラン、3−メルカプトプロピルトメトキシシラン、3−メルカプトトリエトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシラン、p−クロロメチルフェニルトリメトキシラン、p−クロロメチルフェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシアンなどを挙げられる。
複合ナノファイバを与える上記ゾルゲル反応は、水、あるいは水と親水性有機溶剤の混合溶液などの水性媒体中、結晶性ポリマーフィラメントの存在下で進行するが、その反応は水性液体相では起こらず、結晶性ポリマーフィラメントの表面で進行する。従って、複合化反応条件では結晶性ポリマーフィラメントが溶解することがなければ、反応条件は任意である。
結晶性ポリマーフィラメントを不溶とするためには、ゾルゲル反応の際、親水性有機溶剤を含む水性液体中、水の存在が20%以上とすることが好ましく、それが40%以上であればさらに好ましい。
ゾルゲル反応においては、ポリエチレンイミンのモノマー単位であるエチレンイミンに対し、シリカソースであるアルコキシシランの量を過剰とすれば好適に複合ナノファイバを形成できる。過剰の度合いとしては、エチレンイミンに対し2〜1000倍等量の範囲であることが好ましい。
また、結晶性ポリマーフィラメントを形成する際の水性媒体中のポリマー濃度はそのポリマー中に含まれるポリエチレンイミンの量を基準に、0.1〜30%にすることが好ましい。また、水性媒体中のポリエチレンイミン量は、結晶性ポリマーフィラメントの結晶形態が保持された状態で濃縮することにより30%を越える濃度にすることも可能である。この際の濃縮方法としては、上記結晶性ポリマーフィラメントの水中分散液や結晶性ポリマーフィラメントのヒドロゲルを常温で常圧濾過又は減圧濾過する方法等が使用できる。
ゾルゲル反応の時間は1分から数日まで様々であるが、アルコキシシランの反応活性が高いメトキシシラン類の場合は、反応時間は1分〜24時間でよく、反応効率を上げることから、反応時間を30分〜5時間に設定すればさらに好適である。また、反応活性が低い、エトキシシラン類、ブトキシシラン類の場合は、ゾルゲル反応時間が24時間以上が好ましく、その時間を一週間程度とすることも望ましい。
シリカとポリマーとを複合化する際に、ポリマー構造の幾何学的な形状や、分子量、一次構造中に導入できる非エチレンイミン部分等を調整することにより、複合ナノファイバの会合体形状を調整できる。該複合ナノファイバの会合体形状は複合、使用するポリマーの分子構造、重合度、組成、及び複合構造体調製時の温度低下の方法によく依存する。
例えば、直鎖ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーとして、重合度が300以上の線状ポリエチレンイミンを使用し、80℃以上のところから自然に常温まで低下させてヒドロゲルを得た後、該ヒドロゲルを用いてゾルゲル反応することにより、レタス状の会合体形状を有する複合構造体を得ることができる。レタス状の会合体形状において葉を形成する部分の厚みはポリマーを結晶化させる際のポリマー溶液中のポリマー濃度が低下するにつれて厚くなるが、濃度が2%以上では、葉の部分の厚みは100nm前後であり、濃度が1%以下では葉の部分の厚みは500nm前後となる。
また、星型ポリエチレンイミンを使用する場合には、その核となる中心残基の構造を変えることでも、得られる会合体形状を制御することができる。例えば、中心残基がポルフィリンのような大きなパイ平面を持つものである場合、得られる複合構造体中の二次的形状はアスター状であり、一つのアスター形状の結晶大きさは2〜6μm程度である。濃度が1%以上ではアスターのアーム数は少なく、各々のアームは結束する傾向があり、それ以下の濃度では、アーム数が多く、各々のアームは別れる傾向がある。また、中心残基がベンゼン環のような小さい構造の場合、得られる複合構造体中の会合体形状は多くの糸が結束されたファイバ状であり、そのファイバが相互に絡み合い、全体としてスポンジ状の複合構造体を形成する。一つのファイバ形状の太さは150nm前後である。
さらに、結晶性ポリマーフィラメント間が化学結合で架橋された架橋ヒドロゲルを用いることにより、各種形状の複合構造体を得ることもできる。その形状や大きさは、架橋ヒドロゲル調製時に用いた容器の大きさ及び形状と同一なものにすることができ、例えば、円盤状、円柱状、プレート状、球状などの任意の形状に調製できる。さらに、架橋ヒドロゲルを切断したり、削ったりすることにより、目的の形に成形することもできる。このように成形した架橋ヒドロゲルをシリカソースの溶液に浸せきさせることにより、任意の形状の複合構造体が簡単に得られる。シリカソースの溶液に浸せきする時間としては、使用するシリカソースの種類により1時間〜1週間と様々であるため適宜調製する必要があるが、メトキシシラン類の溶液中では1〜48時間程度であればよく、エトキシシラン類の溶液中では、1〜7日間程度が好適である。
上記複合ナノファイバは、上記したように様々な形状を形成可能であり、その形状は本発明の有機無機複合材料の一次形状、二次形状、三次形状を与えるものである。本発明の有機無機複合材料の一次形状を与えるのは、ナノメートルオーダーの太さを有する複合ナノファイバであり、二次形状を与えるのは、上記一次形状同士が会合して、三次元的な空間形状を形成した複合ナノファイバ会合体である。また、三次形状を与えるのは、上記の一次、二次形状がさらに会合したマクロな階層構造を有する複合構造体であり、その形状は上記したように各種加工により成形することができる。
上記の複合ナノファイバは、シリカ内部に結晶性ポリマーフィラメントが含まれるが、その結晶性ポリマーフィラメントを形成するポリマーに蛍光性物質を組み込むことができる。例えば、ポルフィリンを中心にした星状ポリエチレンイミンを用いることで、ポルフィリンの残基が複合ナノファイバ中に取り込まれる。また、例えば、ポリエチレンイミンの側鎖に少量のピレン類、例えば、ピレンアルデヒド(好ましくは、イミンに対し10モル%以下)を反応させたポリマーを用いることで、ピレン残基を複合ナノファイバに取り込むことができる。さらに、ポリエチレンイミンの塩基に酸性基、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基を有するポルフィリン類、フタロシアニン類、ピレン類など蛍光性染料を(好ましくは、イミンのモル数に対し0.1モル%以下)少量混合させ、それの会合体をテンプレートとして得た複合ナノファイバ中には、これらの蛍光性物質を取り込むことができる。
[シリカ/ポリマー/酸化チタン有機無機複合材料を得る工程]
本発明の製造方法においては上記(2)の工程に次いで、(3)前記複合ナノファイバとチタン化合物の水性媒体溶液とを接触させることにより、前記複合ナノファイバ表面で前記チタン化合物を加水分解縮合反応させて、前記複合ナノファイバを酸化チタンにより被覆する工程により、本発明の複合材料を得ることができる。
上記(3)の工程において上記複合ナノファイバと、チタン化合物が溶解した水性媒体溶液とを接触させる方法としては、特に制限されないが、例えば、上記(2)の工程により得られた複合ナノファイバを、チタン化合物の水溶液に浸漬させる方法が挙げられる。該方法により、チタン化合物を簡単にシリカ表面に濃縮することができる。シリカ表面に濃縮されたチタン化合物は、シリカ内部に存在するポリエチレンイミンが触媒として働くことにより、その場で加水分解と縮合反応を生じる。この工程により、本発明のシリカ/ポリマー/酸化チタンの有機無機複合材料を容易に得ることができる。
ここで、使用できるチタン化合物としては、水性媒体不安定であるアルコキシチタン、例えば、テトラブトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、または水性媒体中安定なチタニウムビス(アンモニウムラクテート)ジヒドロキシド水溶液、チタニウムビス(ラクテート)の水溶液、チタニウムビス(ラクテート)のプロパノール/水混合液、チタニウム(エチルアセトアセテート)ジイソプロポオキシドなどを好ましく用いることができる。シリカ表面だけに酸化チタンを容易にデポジットさせる際には、水性媒体中安定なチタン化合物を用いることが特に好ましい。
上記複合ナノファイバをチタン化合物と混合するには、その複合ナノファイバ会合体粉末や複合構造体をチタン化合物の水溶液または水を含むアルコール溶液に加え、その混合物を室温で一定時間放置させることで本発明の有機無機複合材料を得ることができる。
混合する際のチタン化合物の溶液濃度としては、1〜80%であることが好ましく、10〜40%であると更に好ましい。チタン化合物の量は複合ナノファイバに対し、過剰量用いてもよく、同量用いてもよい。複合ナノファイバ表面全体を酸化チタンで被服させる際には、チタン化合物の溶液の体積がシリカ固形物の体積より多く、かつチタン化合物がシリカより過剰量使われることが望ましい。
上記混合時間はチタン化合物の濃度によるが、一般的に、数分ないし数時間であれば、酸化チタンがシリカ表面に十分デポジットされる。好ましい濃度範囲であれば、20分ないし2時間後、得られた固体を洗浄し、有機無機複合材料が得られる。
洗浄溶媒としては、水、または親水性有機溶剤を用いることができる。親水性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、アセトンなどを好適に用いることができる。
複合ナノファイバをチタン化合物に接触させる工程では、上記のバッチ法以外に、連続流動式を用いることができる。すなわち、複合ナノファイバを乾式または湿式でカラム状容器に充填し、それにチタン化合物の溶液を流せることである。好ましくは、複合ナノファイバを水中に分散し、これをカラム中に充填し、シリカの全体積の10倍程度の体積のチタン化合物の水性溶液を循環式でカラムに通させる。循環回数は3〜10回でればよく、それ以上であってもよい。
チタン化合物を循環させた後、親水性有機溶剤を流し、洗浄を行い本発明の有機無機複合材料を得ることができる。
上記方法により得られた本発明の有機無機複合材料は、その支持体として使用する複合ナノファイバが上記したような様々な形状を与えることができるため、酸化チタンを形成する際の複合ナノファイバの形成する形状を制御することにより各種形状への制御が可能となる。従って、複合ナノファイバが相互に会合した会合体や複合構造体を支持体とした場合には、該複合ナノファイバ会合体、複合構造体が有する多分岐状ネットワーク構造やウェブ構造などの複雑な会合構造が酸化チタンにより被覆されるため、同様の多分岐状ネットワーク構造を有する有機無機複合材料を形成することができる。
以下、実施例および参考例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を表す。
[X線回折法による分析]
単離乾燥した試料を測定試料用ホルダーにのせ、それをリガク社製広角X線回折装置「Rint−Ultma」にセットし、Cu/Kα線、40kV/30mA、スキャンスピード1.0°/分、走査範囲10〜40°の条件で測定を行った。
[示差熱走査熱量法による分析]
単離乾燥した試料を測定パッチにより秤量し、それをPerkin Elmer社製熱分析装置「DSC−7」にセットし、昇温速度を10℃/分として、20℃から90℃の温度範囲にて測定を行った。
[走査電子顕微鏡による形状分析]
単離乾燥した試料をガラススライドに乗せ、それをキーエンス社製表面観察装置VE−7800にて観察した。
(合成例1)
[シリカ/線状ポリエチレンイミン複合体(SLP−1)の合成]
<線状のポリエチレンイミン(L−PEI)の合成>
市販のポリエチルオキサゾリン(数平均分子量50000,平均重合度5000,Aldrich社製)3gを、5Mの塩酸水溶液15mLに溶解させた。その溶液をオイルバスにて90℃に加熱し、その温度で10時間攪拌した。反応液にアセトン50mLを加え、ポリマーを完全に沈殿させ、それを濾過し、メタノールで3回洗浄し、白色のポリエチレンイミンの粉末を得た。得られた粉末をH−NMR(重水)にて同定したところ、ポリエチルオキサゾリンの側鎖エチル基に由来したピーク1.2ppm(CH)と2.3ppm(CH)が完全に消失していることが確認された。即ち、ポリエチルオキサゾリンが完全に加水分解され、ポリエチレンイミンに変換されたことが示された。
その粉末を5mLの蒸留水に溶解し、攪拌しながら、その溶液に15%のアンモニア水50mLを滴下した。その混合液を一晩放置した後、沈殿したポリマー会合体粉末を濾過し、そのポリマー会合体粉末を冷水で3回洗浄した。洗浄後の結晶粉末をデシケータ中で室温乾燥し、線状のポリエチレンイミン(L−PEI)を得た。収量は2.2g(結晶水含有)であった。ポリオキサゾリンの加水分解により得られるポリエチレンイミンは、側鎖だけが反応し、主鎖には変化がない。従って、L−PEIの重合度は加水分解前の5000と同様である。
<線状ポリエチレンイミン系からの複合ナノファイバ会合体>
上記で得られたL−PEI粉末を一定量秤量し、それを蒸留水中に分散させて表1に示した各種濃度のL−PEI分散液を作成した。これら分散液をオイルバスにて、90℃に加熱し、濃度が1%の完全透明な水溶液を得た。その水溶液を室温に放置し、自然に室温までに冷やし、不透明なL−PEI会合体のヒドロゲルを得た。
得られた会合体につき、X線回折測定を行った結果、20.7°、27.6°、28.4°に散乱強度のピークが表れることが確認された。また、熱量分析装置による吸熱状態変化の測定結果により、64.7℃で吸熱のピークが確認された。これら測定結果より、ヒドロゲル中におけるL−PEIの結晶の存在が確認された。
上記で得られたL−PEI会合体のヒドロゲル5mL中に、テトラメトキシシラン(TMSO)とエタノールの1/1(体積比)の混合液5mLを加え、軽く一分間かき混ぜた後、そのまま40分放置した。その後、過剰なアセトンで洗浄し、それを円心分離器にて3回洗浄を行った。固形物を回収し、室温で乾燥し、シリカとL−PEIとの複合体(SLP−1)を得た。該複合体(SLP−1)のX線回折測定から、20.5°、27.2°、28.2°に散乱強度のピークが表れた。
得られた複合体(SLP−1)を走査型顕微鏡により観察したところ(図1)、複合体(SLP−1)は多くの複合ナノファイバが会合して形成されたスポンジ形状であった。
(実施例1)
<L−PEI/シリカ/酸化チタン複合材料>
上記で得られた複合体(SLP−1)粉末3gを(l505−3wt%;EI,0.075−0.01g)50mLのTC315(50重量%水溶液、松本製薬工業製)に加え、軽くシェークした後、室温で40分放置した。その後、濾過、アセトン洗浄、室温で一晩乾燥して白色の粉末を得た。収量は13gであった。得られた粉末を走査型電子顕微鏡にて観察したところ(図2)、多分岐状ネットワーク構造を有するL−PEI/シリカ/酸化チタンの有機無機複合材料が確認された。
複合ナノファイバ構造体の走査電子顕微鏡写真。(上図:低倍率、下図:高倍率) 複合ナノファイバ表面に酸化チタンがコートされた構造体の走査電子顕微鏡写真。(上図:低倍率、下図:高倍率)

Claims (13)

  1. 直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマー(a)とシリカ(b)とからなる複合ナノファイバ、及び該複合ナノファイバを被覆する酸化チタン(c)とからなる有機無機複合材料。
  2. 前記直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマー(a)が、鎖状、星状、又は櫛状ポリマーである請求項1に記載の有機無機複合材料。
  3. 前記直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマー(a)が、直鎖状ポリエチレンイミンブロックと他のポリマーブロックとのブロックコポリマーからなるものである請求項1又は2に記載の有機無機複合材料。
  4. 前記直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマー(a)中のポリエチレンイミン骨格の割合が、40モル%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の有機無機複合材料。
  5. 前記複合ナノファイバの太さが10〜1000nmの範囲にあるナノ繊維形状である請求項1〜4のいずれかに記載の有機無機複合材料。
  6. 前記複合ナノファイバが多分岐状ナノファイバである請求項1〜5のいずれかに記載の有機無機複合材料。
  7. 太さが15〜200nmの範囲にあるファイバ形状からなる請求項1〜6のいずれかに記載の有機無機複合材料。
  8. 太さが15〜200nmの範囲にあるファイバ形状が相互に会合した会合構造を有する請求項1〜7のいずれかに記載の有機無機複合材料。
  9. 多分岐状ネットワーク構造を有する請求項8に記載の有機無機複合材料。
  10. (1)直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを溶媒に溶解させた後、水の存在下で析出させ、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーの結晶性ポリマーフィラメントを得る工程と、
    (2)水の存在下で、前記結晶性ポリマーフィラメントとアルコキシシランとを接触させることにより、前記結晶性ポリマーフィラメントをシリカで被覆して複合ナノファイバを得る工程と、
    (3)前記複合ナノファイバとチタン化合物の水性媒体溶液とを接触させることにより、前記複合ナノファイバ表面で前記チタン化合物を加水分解縮合反応させて、前記複合ナノファイバを酸化チタンにより被覆する工程、を有する有機無機複合材料の製造方法。
  11. 前記チタン化合物が、アルコキシチタン、チタニウムビス(アンモニウムラクテート)ジヒドロキシド、チタニウムビス(ラクテート)、チタニウムビス(ラクテート)チタニウム(エチルアセトアセテート)ジイソプロポオキシドから選ばれる一種又は二種である請求項10に記載の有機無機複合材料の製造方法。
  12. 前記工程(2)において結晶性ポリマーフィラメントと接触させるアルコキシシランの量が、結晶性ポリマーフィラメントを形成する直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーのエチレンイミン単位に対して2〜1000倍等量の範囲にある請求項10又は11に記載の有機無機複合材料の製造方法。
  13. 前記チタン化合物の水性媒体溶液中のチタン化合物濃度が、1〜80質量%の範囲にある請求項10〜12のいずれかに記載の有機無機複合材料の製造方法。
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