JP4700354B2 - シリカナノチューブ会合体及びその製造方法 - Google Patents

シリカナノチューブ会合体及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、中空のシリカナノチューブからなる会合体及びその製造方法に関する。
シリカナノチューブはナノサイズ特有の物質特性を有することから、将来の新産業創世に向けて多くの期待が寄せられており、他の無機のナノチューブと同様、電子、光学、触媒、あるいは、エネルギー変換などの各種分野において潜在価値の高い材料である。このようなシリカナノチューブを各種応用展開に用いるためには、シリカナノチューブの成形加工や、バインダへの固定化などにより、シリカナノチューブを高度に集積化する技術の開発が不可欠である。
シリカナノチューブを製造する方法としては、酒石酸の会合体の存在下でアルコキシシランをゾルゲル反応させることにより、マイクロの太さのファイバ中に、数十ナノの内径を有するシリカチューブを与える方法が開示されている(非特許文献1参照)。また、アミノ基を有する界面活性剤からなるシリンダー状の会合体や、有機低分子のヒドロゲルをテンプレートとしてゾルゲル反応させることにより、数十ナノの太さのファイバ中に数ナノの内径を有するシリカナノチューブが得られることが開示されている(特許文献1、非特許文献2参照)。さらに、カーボンナノチューブを用いることで、数ナノのシリカシェルに数ナノの内径を有するシリカナノチューブの製造も可能である(非特許文献3参照)。
しかしながら、これらの方法では、得られるシリカナノチューブ相互の空間配置や構造の制御がされていないため、単にシリカナノチューブの集合体が得られるのみであった。従って、その形状のままでは各種用途への応用展開に制限があるため、更なる加工により高度に集積化する必要があるが、一旦得られたシリカナノチューブを加工することは困難であった。
さらに、既知の多くの製造方法では、焼結工程前のシリカナノチューブの製造工程が数日以上の長い時間が必要であったため、工業的な生産性を考えた場合、より短時間で製造する方法が望まれていた。
特開2000−203826号公報 Nakamura et al.,J.Am.Chem.Soc. 1995年、117巻、2651頁 Adachi et al.,Langmuir, 1999年、15巻、7097頁 Satishkumar et al.,J.Mater. Res. 1997年、12巻、604頁
本発明が解決しようとする課題は、シリカナノチューブが高度に集積化されたシリカナノチューブ会合体、及び、該会合体を短時間で簡便に製造する方法を提供することにある。
本発明のシリカナノチューブ会合体を得るには、まず、その形を有するシリカナノファイバ会合体とそのファイバ中に除去できる芯が含まれることが要求される。このような前駆体を得るには、三つの条件が不可欠であると考えられる。それは、(a)ナノファイバ会合体形状を誘導するテンプレート、(b)シリカソースを濃縮する足場、(c)シリカソースを重合させる触媒である。
本発明においては、これら条件を満たすため、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを使用する。該ポリマー中の直鎖状ポリエチレンイミンは水中可溶であるが、室温では結晶性のフィラメント(以下、該フィラメントを、結晶性ポリマーフィラメントと略記する。)を形成し、該結晶性ポリマーフィラメントがテンプレートの働きをする。また、該結晶性ポリマーフィラメント表面には不可避的にフリーなポリエチレンイミンの鎖が多数存在し、これらフリーな鎖は会合体表面に垂れているブラシ状態である。これらの鎖はシリカソースを引き寄せる足場であり、同時にシリカソースを重合させる触媒の働きをする。これにより、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーからなる結晶性ポリマーフィラメント表面でゾルゲル反応が進行し、結晶性ポリマーフィラメント表面がシリカで被覆された、結晶性ポリマーフィラメントとシリカとの複合体となる。
上記結晶性ポリマーフィラメントは、水の存在下で相互に会合して、ポリマー構造等により多様な形状の結晶性ポリマーフィラメント会合体を形成できる。従って、該会合体の存在下で、シリカソースのゾルゲル反応を生じさせることにより、結晶性ポリマーフィラメントとシリカとの複合体が多分岐状構造を有する会合体(以下、該会合体を有機無機複合会合体と略記する。)が得られる。この有機無機複合会合体を焼成等することで、結晶性ポリマーフィラメントの芯が除去され、残留の部分がそのままシリカナノチューブからなるシリカナノチューブ会合体が得られる。
すなわち本発明は、シリカナノチューブが相互に会合した多分岐状構造からなるシリカナノチューブ会合体を提供するものである。
さらに本発明は、(1)(イ)直鎖状のポリエチレンイミン骨格を有するポリマーと水性媒体とを混合し、該混合液を加熱した後冷却するか、又は(ロ)直鎖状のポリエチレンイミン骨格を有するポリマーと有機溶媒を混合し、該混合液に水を加えることにより、前記親水性ポリマーを結晶化させると共に結晶化した親水性ポリマーを相互に会合させ、前記親水性ポリマー結晶によるヒドロゲルを得る工程、
(2)前記ヒドロゲルとアルコキシシランとを接触させることにより、前記親水性ポリマー結晶とシリカとの複合体の三次元網目構造からなる有機無機複合会合体を得る工程、
(3)前記有機無機複合会合体中の親水性ポリマー結晶を除去する工程、
からなるシリカナノチューブ会合体の製造方法を提供するものである。
本発明のシリカナノチューブ会合体は、シリカナノチューブの有するナノサイズ特有の物質特性を有すると共に、該シリカナノチューブが相互に会合した会合体として高度に集積化された空間形状を有する。さらに、該会合体同士を相互に架橋させて、任意の外形形状の構造体に成形することも可能である。このため、本発明のシリカナノチューブ会合体は各種応用展開に有用であり、例えば、バイオフィルタや濾過フィルタなどのナノフィルタを始めとして、触媒、生物高分子キャリアー、防菌剤、殺菌剤、抗ウイルス、化粧品など多くの領域への利用が可能である。
また、本発明の製造方法によれば、シリカナノチューブ会合体を容易に形成でき、且つ形状の制御も容易であることから、応用用途に応じて適した構造に容易に成型できる。
本発明のシリカナノチューブ会合体を構成するシリカナノチューブは、その外径が10〜100nm、好ましくは20〜30nmの範囲であり、内径が2〜30nm程度、好ましくは2〜10nmの範囲のものである。このような外径のシリカナノチューブはナノサイズ特有の物質特性を発現しやすく、また網目状に集積した際には数十nmの細孔径を有する網目状会合体を形成できる。また、内部にナノメートルオーダーの空洞部を有することから、当該空洞部に各種の機能性物質を担持することも可能である。
また、長さが太さの10倍以上、好ましくは100倍以上のものである。具体的な範囲としては、上記した太さの範囲のシリカナノチューブであれば、0.1μm〜3mm程度の範囲にあるものを好適に使用できる。このような形状を有するシリカナノチューブは、そのアスペクト比が非常に高いため、相互に会合しやすく、ナノチューブ同士の集積化に有利である。
本発明のシリカナノチューブ会合体は、多数のシリカナノチューブが多分岐状に会合したものである。該会合体は大別するとウェブ状、スポンジ状、又は星状の形状のものであり、該会合体の大きさは3〜1000μm程度の大きさとすることができる。該会合体は、前記形状と大きさを有し、また、大きな表面積、優れた分子選択性、化学的な安定性等を有することから、ポリマー材料添加剤、触媒担体、生体材料固定化等に好適に使用できる。
また、本発明のシリカナノチューブ会合体は、該会合体同士を相互に架橋させることができ、ミリメートルオーダー以上の大きさの構造体を得ることもできる。該構造体中の会合体の架橋は、構造体の外形を制御した後に行うことができるため、該構造体は任意の外形とすることができる。該構造体は、上記特性を有するシリカナノチューブ会合体同士が相互に架橋した網目構造を有することから、バイオフィルタ、エアフィルタなどの高機能フィルタなどの用途に好適に使用できる。また、構造体を構成するシリカナノチューブの内部の空洞部に機能性物質を固定化できるため、高比表面積の触媒担体などに有用である。
本発明のシリカナノチューブ会合体は、
(1)直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを溶媒に溶解させた後、水の存在下で析出させ、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーの結晶性ポリマーフィラメントを得ると共に、前記結晶性ポリマーフィラメントを相互に会合させて前記結晶性ポリマーフィラメントからなるヒドロゲルを得る工程、
(2)水の存在下で、前記結晶性ポリマーフィラメントからなるヒドロゲルとアルコキシシランとを接触させることにより、前記ヒドロゲル中の結晶性ポリマーフィラメントをシリカで被覆して有機無機複合会合体を得る工程、
(3)前記有機無機複合会合体中の結晶性ポリマーフィラメントを除去する工程。
からなる製造方法により得ることができる。
上記(1)の工程において使用する直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマー中の直鎖状ポリエチレンイミン骨格とは、二級アミンのエチレンイミン単位を主たる構造単位とする直鎖状のポリマー骨格をいう。該骨格中においては、エチレンイミン単位以外の構造単位が存在していてもよいが結晶性ポリマーフィラメントを形成させるためには、ポリマー鎖の一定鎖長が連続的なエチレンイミン単位からなることが好ましい。該直鎖状ポリエチレンイミン骨格の長さは、該骨格を有するポリマーが結晶性ポリマーフィラメントを形成できる範囲であれば特に制限されないが、好適に結晶性ポリマーフィラメントを形成するためには、該骨格部分のエチレンイミン単位の繰り返し単位数が10以上であることが好ましく、20〜10000の範囲であることが特に好ましい。
本発明において使用する直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーは、その構造中に上記直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するものであればよく、その形状が線状、星状または櫛状であっても、水の存在下で結晶性ポリマーフィラメントを与えることができるものであればよい。
また、これら線状、星状または櫛状のポリマーは、直鎖状ポリエチレンイミン骨格のみからなるものであっても、直鎖状ポリエチレンイミン骨格からなるブロック(以下、ポリエチレンイミンブロックと略記する。)と他のポリマーブロックとのブロックコポリマーからなるものであってもよい。他のポリマーブロックとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピオニルエチレンイミン、ポリアクリルアミドなどの水溶性のポリマーブロック、あるいは、ポリスチレン、ポリオキサゾリン類のポリフェニルオキサゾリン、ポリオクチルオキサゾリン、ポリドデシルオキサゾリン、ポリアクリレート類のポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレートなどの疎水性のポリマーブロックを使用できる。これら他のポリマーブロックとのブロックコポリマーとすることで、結晶性ポリマーフィラメントの形状や特性を調整することができる。
直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーが、他のポリマーブロック等を有する場合の該ポリマー中における直鎖状ポリエチレンイミン骨格の割合は結晶性ポリマーフィラメントを形成できる範囲であれば特に制限されないが、好適に結晶性ポリマーフィラメントを形成するためには、ポリマー中の直鎖状ポリエチレンイミン骨格の割合が25モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがより好ましく、50モル%以上であることがさらに好ましい。
上記直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーは、その前駆体となるポリオキサゾリン類からなる直鎖状の骨格を有するポリマー(以下、前駆体ポリマーと略記する。)を、酸性条件下またはアルカリ条件下で加水分解することで容易に得ることができる。従って、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーの線状、星状、または櫛状などの形状は、この前駆体ポリマーの形状を制御することで容易に設計することができる。また、重合度や末端構造も、前駆体ポリマーの重合度や末端機能団を制御することで容易に調整できる。さらに、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するブロックコポリマーを形成する場合には、前駆体ポリマーをブロックコポリマーとし、該前駆体中のポリオキサゾリン類からなる直鎖状の骨格を選択的に加水分解することで得ることができる。
前駆体ポリマーは、オキサゾリン類のモノマーを使用して、カチオン型の重合法、あるいは、マクロモノマー法などの合成方法により合成が可能であり、合成方法や開始剤を適宜選択することにより、線状、星状、あるいは櫛状などの各種形状の前駆体ポリマーを合成できる。
ポリオキサゾリン類からなる直鎖状の骨格を形成するモノマーとしては、メチルオキサゾリン、エチルオキサゾリン、メチルビニルオキサゾリン、フェニルオキサゾリンなどのオキサゾリンモノマーを使用できる。
重合開始剤としては、分子中に塩化アルキル基、臭化アルキル基、ヨウ化アルキル基、トルエンスルホニルオキシ基、あるいはトリフルオロメチルスルホニルオキシ基などの官能基を有する化合物を使用できる。これら重合開始剤は、多くのアルコール類化合物の水酸基を他の官能基に変換させることで得られる。なかでも、官能基変換として、臭素化、ヨウ素化、トルエンスルホン酸化、およびトリフルオロメチルスルホン酸化されたものは重合開始効率が高いため好ましく、特に臭化アルキル、トルエンスルホン酸アルキルが好ましい。
また、ポリ(エチレングリコール)の末端水酸基を臭素あるいはヨウ素に変換したもの、またはトルエンスルホニル基に変換したものを重合開始剤として使用することもできる。その場合、ポリ(エチレングリコール)の重合度は5〜100の範囲であることが好ましく、10〜50の範囲であれば特に好ましい。
また、カチオン開環リビング重合開始能を有する官能基を有し、かつ光による発光機能、エネルギー移動機能、電子移動機能を有するポルフィリン骨格、フタロシアニン骨格、またはピレン骨格のいずれかの骨格を有する色素類は、得られるポリマーに特殊な機能を付与することができる。
線状の前駆体ポリマーは、上記オキサゾリンモノマーを1価または2価の官能基を有する重合開始剤により重合することで得られる。このような重合開始剤としては、例えば、塩化メチルベンゼン、臭化メチルベンゼン、ヨウ化メチルベンゼン、トルエンスルホン酸メチルベンゼン、トリフルオロメチルスルホン酸メチルベンゼン、臭化メタン、ヨウ化メタン、トルエンスルホン酸メタンまたはトルエンスルホン酸無水物、トリフルオロメチルスルホン酸無水物、5−(4−ブロモメチルフェニル)−10,15,20−トリ(フェニル)ポルフィリン、またはブロモメチルピレンなどの1価のもの、ジブロモメチルベンゼン、ジヨウ化メチルベンゼン、ジブロモメチルビフェニレン、またはジブロモメチルアゾベンゼンなどの2価のものが挙げられる。また、ポリ(メチルオキサゾリン)、ポリ(エチルオキサゾリン)、または、ポリ(メチルビニルオキサゾリン)などの工業的に使用されている線状のポリオキサゾリンを、そのまま前駆体ポリマーとして使用することもできる。
星状の前駆体ポリマーは、上記したようなオキサゾリンモノマーを3価以上の官能基を有する重合開始剤により重合することで得られる。3価以上の重合開始剤としては、例えば、トリブロモメチルベンゼン、などの3価のもの、テトラブロモメチルベンゼン、テトラ(4−クロロメチルフェニル)ポルフィリン、テトラブロモエトキシフタロシアニンなどの4価のもの、ヘキサブロモメチルベンゼン、テトラ(3,5−ジトシリルエチルオキシフェニル)ポルフィリンなどの5価以上のものが挙げられる。
櫛状の前駆体ポリマーを得るためには、多価の重合開始基を有する線状のポリマーを用いて、該重合開始基からオキサゾリンモノマーを重合させることができるが、例えば、通常のエポキシ樹脂やポリビニルアルコールなどの側鎖に水酸基を有するポリマーの水酸基を、臭素やヨウ素等でハロゲン化するか、あるいはトルエンスルホニル基に変換させた後、該変換部分を重合開始基として用いることでも得ることができる。
また、櫛状の前駆体ポリマーを得る方法として、ポリアミン型重合停止剤を用いることもできる。例えば、一価の重合開始剤を用い、オキサゾリンを重合させ、そのポリオキサゾリンの末端をポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリプロピルアミンなどのポリアミンのアミノ基に結合させることで、櫛状のポリオキサゾリンを得ることができる。
上記により得られる前駆体ポリマーのポリオキサゾリン類からなる直鎖状の骨格の加水分解は、酸性条件下またはアルカリ条件下のいずれの条件下でもよい。
酸性条件下での加水分解は、例えば、塩酸水溶液中でポリオキサゾリンを加熱下で攪拌することにより、ポリエチレンイミンの塩酸塩を得ることができる。得られた塩酸塩を過剰のアンモニウム水で処理することで、塩基性のポリエチレンイミンの結晶粉末を得ることができる。用いる塩酸水溶液は、濃塩酸でも、1mol/L程度の水溶液でもよいが、加水分解を効率的に行うには、5mol/Lの塩酸水溶液を用いることが望ましい。また、反応温度は80℃前後が望ましい。
アルカリ条件下での加水分解は、例えば、水酸化ナトリウム水溶液を用いることで、ポリオキサゾリンをポリエチレンイミンに変換させることができる。アルカリ条件下で反応させた後、反応液を透析膜にて洗浄することで、過剰な水酸化ナトリウムを除去し、ポリエチレンイミンの結晶粉末を得ることができる。用いる水酸化ナトリウムの濃度は1〜10mol/Lの範囲であればよく、より効率的な反応を行うには3〜5mol/Lの範囲であることが好ましい。また、反応温度は80℃前後が好ましい。
酸性条件下またはアルカリ条件下での加水分解における、酸またはアルカリの使用量は、ポリマー中のオキサゾリン単位に対し、1〜10当量でよく、反応効率の向上と後処理の簡便化のためには、3当量程度とすることが好ましい。
上記加水分解により、前駆体ポリマー中のポリオキサゾリン類からなる直鎖状の骨格が、直鎖状ポリエチレンイミン骨格となり、該ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーが得られる。
また、直鎖状ポリエチレンイミンブロックと他のポリマーブロックとのブロックコポリマーを形成する場合には、前駆体ポリマーをポリオキサゾリン類からなる直鎖状のポリマーブロックと、他のポリマーブロックとからなるブロックコポリマーとし、該前駆体ポリマー中のポリオキサゾリン類からなる直鎖状のブロックを選択的に加水分解することで得ることができる。
他のポリマーブロックが、ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)などの水溶性ポリマーブロックである場合には、ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)が、ポリ(N−ホルミルエチレンイミン)やポリ(N−アセチルエチレンイミン)に比べて、有機溶剤への溶解性が高いことを利用してブロックコポリマーを形成することができる。即ち、2−オキサゾリンまたは2−メチル−2−オキサゾリンを、前記した重合開始化合物の存在下でカチオン開環リビング重合した後、得られたリビングポリマーに、さらに2−エチル−2−オキサゾリンを重合させることによって、ポリ(N−ホルミルエチレンイミン)ブロックまたはポリ(N−アセチルエチレンイミン)ブロックと、ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)ブロックとからなる前駆体ポリマーを得る。該前駆体ポリマーを水に溶解させ、該水溶液にポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)ブロックを溶解する水とは非相溶の有機溶剤を混合して攪拌することによりエマルジョンを形成する。該エマルジョンの水相に、酸またはアルカリを添加することによりポリ(N−ホルミルエチレンイミン)ブロックまたはポリ(N−アセチルエチレンイミン)ブロックを優先的に加水分解させることにより、直鎖状ポリエチレンイミンブロックと、ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)ブロックとを有するブロックコポリマーを形成できる。
ここで使用する重合開始化合物の価数が1および2の場合には、直鎖状のブロックコポリマーとなり、それ以上の価数であれば星型のブロックコポリマーが得られる。また、前駆体ポリマーを多段のブロックコポリマーとすることで、得られるポリマーも多段のブロック構造とすることも可能である。
本発明で使用する直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーは、上記のとおり各種構造に設計が可能である。本発明のシリカナノチューブ会合体の形状は、該ポリマーの構造に強く依存するため、該ポリマーの構造制御により、シリカナノチューブ会合体の会合形状を制御することができる。
上記工程(1)における結晶性ポリマーフィラメントは、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーが室温の水に不溶である性質を利用し、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを溶媒に溶解させた後、水の存在下で析出させることで得られる。
具体的な方法としては、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを水又は水と親水性有機溶剤の混合溶媒(以下、これらを水性媒体という。)に溶解し、該溶液を加熱した後冷却する方法や、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを親水性有機溶剤に溶解し、該溶液に水を加える方法などが例として挙げられる。
直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを溶解する溶媒は、水性媒体又は親水性有機溶剤を好ましく使用できる。該該親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォンオキシド、ジオキシラン、ピロリドンなどの親水性有機溶剤が挙げられる。
直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーの溶液から結晶性ポリマーフィラメントを析出させるには、水の存在が不可欠であるため、析出は水性媒体中で生じる。
得られる結晶性ポリマーフィラメントは、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーの一次構造中の直鎖状ポリエチレンイミン骨格の複数が水分子の存在化で結晶化することにより、ポリマーが相互に会合して繊維状に成長したものであり、結晶の性質を構造中に有するものである。
該結晶性ポリマーフィラメントは、2〜30nm程度、好ましくは2〜10nmの範囲の太さを有し、長さが太さの10倍以上、好ましくは100倍以上の繊維形状(以下、該繊維形状を一次形状と言う場合がある。)のものである。
従来広く使用されてきたポリエチレンイミンは、環状エチレンイミンの開環重合により得られる分岐状ポリマーであり、その一次構造には一級アミン、二級アミン、三級アミンが存在する。従って、分岐状ポリエチレンイミンは水溶性であるが、結晶性は持たないため、分岐状ポリエチレンイミンを用いてヒドロゲルを作るためには、架橋剤による共有結合により網目構造を与えなくてはならない。しかしながら本発明に使用するポリマーが骨格として有する直鎖状ポリエチレンイミンは、二級アミンだけで構成されており、該二級アミン型の直鎖状ポリエチレンイミンは水溶性でありながら、結晶化が可能である。
このような、直鎖状ポリエチレンイミンの結晶は、そのポリマーのエチレンイミン単位に含まれる結晶水数により、ポリマー結晶構造が大きく異なることが知られている(Y.Chatani et al.、Macromolecules、1981年、第14巻、p.315−321)。無水のポリエチレンイミンは二重螺旋構造を特徴とする結晶構造を優先するが、モノマー単位に2分子の水が含まれると、ポリマーはzigzag構造を特徴とする結晶体に成長することが知られている。実際、水中から得られる直鎖状ポリエチレンイミンの結晶は一つのモノマー単位に2分子水を含む結晶であり、その結晶は室温状態では水中不溶である。
本発明における直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーの結晶性ポリマーフィラメントは、上記の場合と同様に直鎖状ポリエチレンイミン骨格の結晶発現により形成されるものであり、ポリマー形状が線状、星状、または櫛状などの形状であっても、一次構造に直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーであれば、結晶性ポリマーフィラメントが得られる。
結晶性ポリマーフィラメントの存在はX線散乱により確認でき、広角X線回折計(WAXS)における2θ角度値で20°,27°,28°近傍の結晶性ヒドロゲル中の直鎖状ポリエチレンイミン骨格に由来するピーク値により確認される。
また、結晶性ポリマーフィラメントの示差走査熱量計(DSC)における融点は、ポリエチレンイミン骨格のポリマーの一次構造にも依存するが、概ねその融点が45〜90℃で現れる。
上記工程(1)においては、結晶性ポリマーフィラメントを得ると共に、結晶性ポリマーフィラメント同士を相互に会合させて結晶性ポリマーフィラメントからなるヒドロゲルを得る。該ヒドロゲルは、上記結晶性ポリマーフィラメントを得る方法において、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーの量を調整することで得られる。例えば、該ヒドロゲルは、まず直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを一定量水中に分散し、該分散液を加熱することにより、ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーの透明な水溶液を得る。次いで、加熱状態のポリマーの水溶液を室温に冷やすことにより得られる。該ヒドロゲルは、剪断力等の外力により変形を生じるが、概ねの形状を保持できるアイスクリームのような状態を有し、多様な形状に変形させることが可能である。
上記方法において、加熱温度は100℃以下が好ましく、90〜95℃の範囲であることがより好ましい。また、ポリマー分散液中のポリマー含有量は、ヒドロゲルが得られる範囲であれば特に限定されないが、0.01〜20質量%の範囲であることが好ましく、形状の安定したヒドロゲルを得るためには0.1〜10質量%の範囲がさらに好ましい。このように、本発明においては、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを使用すると、ごく少量のポリマー濃度でもヒドロゲルを形成することができる。
結晶性ポリマーフィラメントのヒドロゲル中では、結晶性ポリマーフィラメント同士が、水の存在下で相互に会合して、マイクロ〜ミリメートルの大きさの三次元形状(以下、該微細な三次元形状を二次形状と言う場合がある。)を形成している。これら二次形状を有する会合体間において、会合体中の結晶性ポリマーフィラメントがさらに物理的に会合して架橋構造を形成し、全体として結晶性ポリマーフィラメントからなる三次元網目構造を形成する。これらは水の存在下で生じるため、該三次元網目構造中に水を包含したヒドロゲルが形成される。架橋剤を使用した場合には、結晶性ポリマーフィラメント間が化学的に架橋し、該三次元網目構造が化学的な架橋により固定化された架橋ヒドロゲルとなる。
ここでいう三次元網目構造とは、通常の高分子ヒドロゲルと異なり、ナノスケールの結晶性ポリマーフィラメント同士が、その表面に存在するフリーなエチレンイミン鎖の水素結合により、物理的な架橋により形成された網目構造である。従って、その結晶の融点以上の温度では、結晶が水中溶解されてしまい、三次元網目構造も解体される。ところが、それが室温に戻ると結晶性ポリマーフィラメントが成長し、その結晶間では水素結合による物理的な架橋が形成するため、再び、三次元網目構造が現れる。
ヒドロゲル中で、結晶性ポリマーフィラメントが形成する二次形状は、ポリマー構造の幾何学的な形状や、分子量、一次構造中に導入できる非エチレンイミン部分、さらには結晶性ポリマーフィラメントの形成条件などを調整することにより、各種形状に制御可能である。また、ヒドロゲルは、概ねの外形(以下、該ヒドロゲルの外形形状を三次形状と言う場合がある。)を保持できるが、外力により任意に変形させることができるため、その形状を容易に制御できるものである。
ヒドロゲル中の結晶性ポリマーフィラメントの二次形状は、上記ポリマー水溶液の温度を室温まで低下させる過程によっても調整することができる。温度を低下させる方法を例示すると、ポリマー水溶液を80℃に1時間保持した後、1時間かけて60℃にし、該温度でさらに1時間保持する。その後1時間かけて40℃まで低下させた後、自然に室温まで下げる方法、上記ポリマー水溶液を一気に氷点の氷り水、または氷点下のメタノール/ドライアイス、あるいはアセトン/ドライアイスの冷媒液にて冷却させた後、その状態のものを室温のワータバスにて保持する方法、あるいは、上記のポリマー水溶液を室温のワータバスまたは室温空気環境にて、室温まで温度を低下させる方法などが挙げられる。
上記ポリマー水溶液の温度を低下させる過程は、得られるヒドロゲル中において結晶性ポリマーフィラメント同士の会合に強く影響を与えるため、上記異なる方法により得られるヒドロゲル中の結晶性ポリマーフィラメントが形成する二次形状は同一ではない。
上記のポリマー水溶液の温度を、濃度を一定として多段階的に低下させた場合、ヒドロゲル中における結晶性ポリマーフィラメントが形成する二次形状を、ファイバ状の形状とすることができる。これを急冷した後、室温に戻した場合には、花弁状の形態とすることができ。また、これをドライアイス状のアセトンで再度急冷して、室温に戻した場合、波状の形態とすることができる。このように、本発明のヒドロゲル中における結晶性ポリマーフィラメントが形成する二次形状の形態を、各種形状に設定することができる。
上記により得られるヒドロゲルは、不透明なゲルであり、ゲル中にはポリエチレンイミン骨格を有するポリマーからなる結晶性ポリマーフィラメントが形成され、その結晶性ポリマーフィラメント同士は水素結合により物理的に架橋化され、三次元の物理的な網目構造を形成している。一旦形成したヒドロゲル中の結晶性ポリマーフィラメントは室温中では不溶状態を保つが、加熱すると結晶性ポリマーフィラメントが解離し、ヒドロゲルはゾル状態に変化してしまう。従って、本発明の物理的なヒドロゲルは、熱処理を行うことでゾルからゲル、またゲルからゾルへと可逆的な変化が可能である。
本発明でいうヒドロゲルは三次元網目構造中に少なくとも水を含有するが、該ヒドロゲルの調製時に、親水性有機溶剤を加えることで、有機溶剤を含有したヒドロゲルが得られる。該親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォンオキシド、ジオキシラン、ピロリドンなどの親水性有機溶剤が挙げられる。
有機溶剤の含有量は、水の体積に対し、0.1〜5倍の範囲であることが好ましく、1〜3倍の範囲であればより好ましい。
上記親水性有機溶剤を含有させることにより結晶性ポリマーフィラメントの形態を変えることができ、単純な水系と異なる形態の結晶を与えることができる。例えば、水中では繊維状の広がりを有する分岐状の二次形状であっても、その調製に一定量のエタノールが含まれた場合、繊維が収縮したような鞠状の二次形状を得ることができる。
本発明でいうヒドロゲル調製時に、他の水溶性ポリマーを加えることで、水溶性ポリマーを含有するヒドロゲルが得られる。該水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリンなどを取りあげることができる。
水溶性ポリマーの含有量は、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーの質量に対し、0.1〜5倍の範囲であることが好ましく、0.5〜2倍の範囲であればより好ましい。
上記水溶性ポリマーを含有させることによっても結晶性ポリマーフィラメントの形態を変えることができ、単純な水系と異なる形態の二次形状を与えることができる。また、ヒドロゲルの粘性を増大させ、ヒドロゲルの安定性を向上させることに有効である。
また、上記方法で得られたヒドロゲルを、ポリエチレンイミンのアミノ基と反応する2官能基以上を含む化合物で処理することで、ヒドロゲル中の結晶性ポリマーフィラメント表面同士を化学結合でリンクさせた架橋ヒドロゲルを得ることができる。
前記アミノ基と室温状態で反応できる2官能基以上を含む化合物としては、アルデヒド類架橋剤、エポキシ類架橋剤、酸クロリド類、酸無水物、エステル類架橋剤を用いることができる。アルデヒド類架橋剤としては、例えば、マロニルアルデヒド、スクシニルアルデヒド、グルタリルアルデヒド、アジホイルアルデヒド、フタロイルアルデヒド、イソフタロイルアルデヒド、テレフタロイルアルデヒドなどがあげられる。また、エポキシ類架橋剤としては、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、グリシジルクロライド、グリシジルブロマイドなどがあげられる。酸クロリド類としては、例えば、マロニル酸クロリド、スクシニル酸クロリド、グルタリル酸クロリド、アジホイル酸クロリド、フタロイル酸クロリド、イソフタロイル酸クロリド、テレフタロイル酸クロリドなどがあげられる。また、酸無水物としては、例えば、フタル酸無水物、スクシニル酸無水物、グルタリル酸無水物などがあげられる。また、エステル類架橋剤としては、マロニル酸メチルエステル、スクシニル酸メチルエステル、グルタリル酸メチルエステル、フタロイル酸メチルエステル、ポリエチレングリコールカルボン酸メチルエステルなどがあげられる。
架橋反応は、得られたヒドロゲルを架橋剤の溶液に浸す方法でも、架橋剤溶液をヒドロゲル中に加える方法でも可能である。この際、架橋剤は系内での浸透圧変化と共に、ヒドロゲル内部へ浸透し、そこで結晶性ポリマーフィラメント同士を水素結合で繋いでエチレンイミンの窒素原子との化学反応を引き起こす。
架橋反応は、結晶性ポリマーフィラメント表面のフリーなエチレンイミンとの反応により進行するが、その反応を結晶性ポリマーフィラメント内部では起こらないようにするためには、ヒドロゲルを形成する結晶性ポリマーフィラメントの融点以下の温度で反応を行うことが望ましく、さらには架橋反応を室温で行うことが最も望ましい。
架橋反応を室温で進行させる場合には、ヒドロゲルを架橋剤溶液と混合した状態で放置しておくことで、架橋ヒドロゲルを得ることができる。架橋反応させる時間は、数分から数日でよく、概ね一晩放置することで好適に架橋が進行する。
架橋剤量はヒドロゲル形成に用いるポリエチレンイミン骨格を有するポリマー中のエチレンイミンユニットのモル数に対し、0.05〜20%であればよく、それが1〜10%であればもっと好適である。
上記ヒドロゲルは、ゲル化剤が結晶性ポリマーフィラメントであるため多様なモルフォロジーのゲル構造を発現できる。また少量の結晶性ポリマーフィラメントであっても水中で好適に三次元網目構造を形成するため高い水保持性を有する。さらに、使用する直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーは構造設計や合成が容易であり、かつヒドロゲルの調整が簡便である。また、該ヒドロゲル中の結晶性ポリマーフィラメント間を架橋剤により架橋することにより、ヒドロゲルの形状を固定化できる。
上記(2)の工程においては、上記により得られた結晶性ポリマーフィラメントからなるヒドロゲルとアルコキシシランとを接触させて、該ヒドロゲル中の結晶性ポリマーフィラメントをシリカで被覆して有機無機複合会合体を得る。
ヒドロゲルとアルコキシシランとを接触させる方法としては、ヒドロゲル中に通常のゾルゲル反応において使用できる溶媒にシリカソースを溶解した溶液を加えて、室温下でゾルゲル反応させる方法が挙げられる。
シリカソースとして用いるアルコキシシランとしては、テトラアルコキシシラン類、アルキルトリアルコキシシラン類などが挙げられる。
テトラアルコキシシラン類としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシランなどを挙げられる。
アルキルトリアルコキシシラン類としては、メチルトリメトキシラン、メチルトリエトキシラン、エチルトリメトキシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシラン、n−プロピルトリエトキシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシトキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシトキシプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシラン、3−メルカプトプロピルトメトキシシラン、3−メルカプトトリエトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシラン、p−クロロメチルフェニルトリメトキシラン、p−クロロメチルフェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシアンなどを挙げられる。
上記ゾルゲル反応は、水、あるいは水と親水性有機溶剤の混合溶液などの水性媒体中、結晶性ポリマーフィラメントの存在下で進行するが、その反応は水性液体相では起こらず、結晶性ポリマーフィラメントの表面で進行する。従って、複合化反応条件では結晶性ポリマーフィラメントが溶解することがなければ、反応条件は任意である。
結晶性ポリマーフィラメントを不溶とするためには、ゾルゲル反応の際、親水性有機溶剤を含む水性液体中、水の存在が20%以上とすることが好ましく、それが40%以上であればさらに好ましい。
ゾルゲル反応においては、ポリエチレンイミンのモノマー単位であるエチレンイミンに対し、シリカソースであるアルコキシシランの量を過剰とすれば好適に有機無機複合会合体を形成できる。過剰の度合いとしては、エチレンイミンに対し4〜1000倍等量の範囲であることが好ましい。
また、結晶性ポリマーフィラメントを形成する際の水、水性液体中のポリマー濃度はそのポリマー中に含まれるポリエチレンイミンの量を基準に、0.1〜30%にすることが好ましい。
ゾルゲル反応の時間は1分から数日まで様々であるが、アルコキシシランの反応活性が高いメトキシシラン類の場合は、反応時間は1分〜24時間でよく、反応効率を上げることから、反応時間を30分〜5時間に設定すればさらに好適である。また、反応活性が低い、エトキシシラン類、ブトキシシラン類の場合は、ゾルゲル反応時間が24時間以上が好ましく、その時間を一週間程度とすることも望ましい。
有機無機複合会合体を作成する際に、ポリマー構造の幾何学的な形状や、分子量、一次構造中に導入できる非エチレンイミン部分、さらには有機無機複合会合体の形成条件等を調整することにより、会合体形状を調整できる。該会合体形状は、使用するポリマーの分子構造、重合度、組成、及び有機無機複合会合体調製時の温度低下の方法によく依存する。
例えば、直鎖ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーとして、重合度が300以上の線状ポリエチレンイミンを使用し、80℃以上のところから自然に常温まで低下させてヒドロゲルを得た後、該ヒドロゲルを用いてゾルゲル反応することにより、ウェブ状の会合体形状を得ることができる。レタス状の会合体形状において葉を形成する部分の厚みはポリマーを結晶化させる際のポリマー溶液中のポリマー濃度が低下するにつれて厚くなるが、濃度が2%以上では、葉の部分の厚みは100nm前後であり、濃度が1%以下では葉の部分の厚みは500nm前後となる。
また、星型ポリエチレンイミンを使用する場合には、その核となる中心残基の構造を変えることでも、得られる会合体形状を制御することができる。例えば、中心残基がポルフィリンのような大きなパイ平面を持つものである場合、得られる有機無機複合会合体の形状はアスター状(星状)であり、一つのアスター形状の結晶大きさは2〜6μm程度である。濃度が1%以上ではアスターのアーム数は少なく、各々のアームは結束する傾向があり、それ以下の濃度では、アーム数が多く、各々のアームは別れる傾向がある。また、中心残基がベンゼン環のような小さい構造の場合、得られる有機無機複合会合体の形状は多くの糸が結束されたファイバ状であり、そのファイバが相互に絡み合い、全体としてスポンジ状の有機無機複合会合体を形成する。一つのファイバ形状の太さは150nm前後である。
さらに、結晶性ポリマーフィラメント間が化学結合で架橋された架橋ヒドロゲルを用いることにより、各種形状の有機無機複合会合体が相互に架橋した構造体(以下、該構造体を有機無機複合構造体と言う。)を得ることもできる。その形状や大きさは、架橋ヒドロゲル調製時に用いた容器の大きさ及び形状と同一なものにすることができ、例えば、円盤状、円柱状、プレート状、球状などの任意の形状に調製できる。さらに、架橋ヒドロゲルを切断したり、削ったりすることにより、目的の形に成形することもできる。このように成形した架橋ヒドロゲルをシリカソースの溶液に浸せきさせることにより、任意の形状の有機無機複合構造体が簡単に得られる。シリカソースの溶液に浸せきする時間としては、使用するシリカソースの種類により1時間〜1週間と様々であるため適宜調製する必要があるが、メトキシシラン類の溶液中では1〜48時間程度であればよく、エトキシシラン類の溶液中では、1〜7日間程度が好適である。
上記(3)の工程においては、有機無機複合会合体を得た後、該会合体中から結晶性ポリマーフィラメントを除去することにより、本発明のシリカナノチューブ会合体を得る。
前記有機無機複合会合体中から結晶性ポリマーフィラメントを除去する方法としては、焼成処理や溶剤洗浄の方法で実現できるが、ポリマーを完全に除去することから、焼成炉中での焼成処理法が好ましい。
焼成処理では、空気、酸素存在下での高温焼成と不活性ガス、例えば、窒素、ヘリウムの存在下での高温焼成を用いることもできるるが、通常、空気中での焼成が好ましい。
焼成する温度としては、結晶性ポリマーフィラメントを形成するポリエチレンイミン骨格を有するポリマーは300度付近から熱分解できるため、300度以上の温度であれば好適に除去でき、300〜900度の範囲が特に好適である。
具体的な焼成方法としては、例えば、メソ多孔体シリカの焼成際の公知の方法(Diaz et al. J.Mater.Chem. 2004年、14巻、48頁)に準じて行うことができる。昇温において、複合体サンプルを100度あたりで10〜30分放置してから、10度/分の昇温速度で300度までに昇温させ、その温度で1時間放置し、さらに同様な昇温速度で500度まで昇温させ、その温度で1〜6時間焼成を行う方法などが例示できる。さらに温度上げるには、同様な昇温速度で700ないし800度まで昇温させ、その温度で1〜6時間焼成を行ってもよい。焼成後は焼成炉の温度を自然に室温まで低下させるか、または焼成炉中に空気を流すことで温度を室温まで下げてもよい。
上記したように本発明のシリカナノチューブ会合体は、シリカナノチューブが複雑な三次元網目構造を形成していることから、従来の単独のシリカナノチューブでは実現できないバイオフィルタや濾過フィルタ等の用途を始め、その応用には業種、領域を問わず、大きな期待が寄せられる。また、本発明の製造方法によれば、シリカナノチューブ会合体を容易に形成でき、且つ各種形状に容易に成形可能である。
これと同様に、上記有機無機複合構造体から結晶性ポリマーフィラメントを除去することにより、シリカナノファイバ構造体を得ることができる。
このように、本発明のシリカナノチューブ会合体は、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを溶解し、水の存在下で析出させて結晶性ポリマーフィラメントからなるヒドロゲルを得た後、水の存在下で該ヒドロゲルとアルコキシシランを接触させて有機無機複合体複合体とし、該複合体中から結晶性ポリマーフィラメントを除去することにより容易に製造することができる。該製造方法においては、結晶性ポリマーフィラメントを得る工程、シリカのゾルゲル反応工程を短時間で行うことが可能である。また、結晶性ポリマーフィラメントのヒドロゲルの調整や、複合体からの結晶性ポリマーフィラメントの除去も容易であることから、本発明の製造方法によれば、シリカナノチューブ会合体を容易に製造できる。
以下、実施例および参考例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を表す。
[X線回折法による複合体の分析]
単離乾燥した複合体を測定試料用ホルダーにのせ、それを株式会社リガク製広角X線回折装置「Rint−Ultma」にセットし、Cu/Kα線、40kV/30mA、スキャンスピード1.0°/分、走査範囲4〜40°の条件で測定を行った。
[示差熱走査熱量法による複合体の分析]
単離乾燥した複合体を測定パッチにより秤量し、それをPerkin Elmer製熱分析装置「DSC−7」にセットし、昇温速度を10℃/分として、20℃から90℃の温度範囲にて測定を行った。
[走査電子顕微鏡による複合体の形状分析]
単離乾燥した複合体をガラススライドに乗せ、それをキーエンス製表面観察装置VE−7800にて観察した。
[透過電子顕微鏡による複合体の観察]
単離乾燥した複合体を炭素蒸着された銅グリッドに乗せ、それを(株)トプコン、ノーランインスツルメント社製EM−002B、VOYAGER M3055高分解能電子顕微鏡にて観察した。
[シリカ焼成法]
シリカサンプルの焼成は、(株)アサヒ理化製作所製セラミック電気管状炉ARF−100K型にAMF−2P型温度コントローラ付きの焼成炉装置にて行った。
(実施例1)
<線状のポリエチレンイミン(L−PEI)の合成>
市販のポリエチルオキサゾリン(数平均分子量500000,平均重合度5000,Aldrich社製)5gを、5Mの塩酸水溶液20mLに溶解させた。その溶液をオイルバスにて90℃に加熱し、その温度で10時間攪拌した。反応液にアセトン50mLを加え、ポリマーを完全に沈殿させ、それを濾過し、メタノールで3回洗浄し、白色のポリエチレンイミンの粉末を得た。得られた粉末をH−NMR(重水)にて同定したところ、ポリエチルオキサゾリンの側鎖エチル基に由来したピーク1.2ppm(CH)と2.3ppm(CH)が完全に消失していることが確認された。即ち、ポリエチルオキサゾリンが完全に加水分解され、ポリエチレンイミンに変換されたことが示された。
その粉末を5mLの蒸留水に溶解し、攪拌しながら、その溶液に15%のアンモニア水50mLを滴下した。その混合液を一晩放置した後、沈殿したポリマー結晶粉末を濾過し、その結晶粉末を冷水で3回洗浄した。洗浄後の結晶粉末をデシケータ中で室温乾燥し、線状のポリエチレンイミン(L−PEI)を得た。収量は4.2g(結晶水含有)であった。ポリオキサゾリンの加水分解により得られるポリエチレンイミンは、側鎖だけが反応し、主鎖には変化がない。従って、L−PEIの重合度は加水分解前の5000と同様である。
<線状ポリエチレンイミンからの複合体の製造>
合成例1で得られたL−PEI粉末を一定量秤量し、それを蒸留水中に分散させて(2重量%)濃度のL−PEI分散液を作成した。この分散液をオイルバスにて、90℃に加熱し、濃度が異なる完全透明な水溶液を得た。その水溶液を室温に放置し、自然に室温までに冷やし、不透明なL−PEIヒドロゲルを得た。得られたヒドロゲルは、剪断力を加えると変形を生じるが、概ねの形状を保持できるアイスクリーム状態のヒドロゲルであった。
得られたヒドロゲルにつき、X線回折測定を行った結果、20.7°、27.6°、28.4°に散乱強度のピークが表れることが確認された。また、熱量分析装置による吸熱状態変化の測定結果により、64.7℃で吸熱のピークが確認された。これら測定結果より、ヒドロゲル中におけるL−PEIの結晶の存在が確認された。
これで得られたヒドロゲル5mL中に、テトラメトキシシラン(TMSO)とエタノールの1/1(体積比)の混合液を10mL加え、アイスクリーム状態のものを軽く一分間かき混ぜた後、そのまま40分放置した。その後、過剰なアセトンで洗浄し、それを円心分離器にて3回洗浄を行った。固形物を回収し、室温で乾燥し、複合体を得た。複合体のX線回折測定から、20.5°、27.2°、28.2°に散乱強度のピークが表れた。
<シリカナノチューブ会合体の製造>
上記方法で得られた複合体1gを焼成炉中に入れ、温度を100度に上げ、10分間放置した。その後、10度/分の速度で300度に上げ、その温度で1時間、さらに500度に昇温し、その温度で1時間、さらに700度に昇温させ、その温度で4時間焼成を行った。その後、焼成炉温度を室温まで自然低下させた。得られたシリカナノチューブ会合体は白色であり、収量は0.67gであった。元素分析から、シリカナノチューブ会合体中のポリマー成分は観測されなかった。
図1に焼成前後の透過型顕微鏡写真写真を示した。いずれの場合も、ナノウェブ形には変化がなかった。
さらに、図2では焼成前後の透過型顕微鏡拡大写真を示した。焼成前(左図)には、シリカナノファイバには中空構造が観察されなかったが、焼成後のシリカファイバの中心部は白色の細い線が伸びていることが観察された。すなわち、中心部に芯として含まれたポリマーが除去されることにより形成された空洞の部分であることが確認された。シリカナノチューブの内径は約2.5nm、外径は約13nmであった。
(実施例2)
<ベンゼン環中心の星状ポリエチレンイミン(B−PEI)の合成>
Jin,J.Mater.Chem.,13,672−675(2003)に示された方法に従い、前駆体ポリマーであるベンゼン環中心に6本のポリメチルオキサゾリンのアームが結合した星状ポリメチルオキサゾリンを次の通り行った。
磁気攪拌子がセットされたスリ口試験管中に、重合開始剤としてヘキサキス(ブロモメチル)ベンゼン0.021g(0.033mmol)を入れ、試験管の口に三方コックをつけた後、真空状態にしてから窒素置換を行った。窒素気流下で三方コックの導入口からシリンジを用いて2−メチル−2−オキサゾリン2.0ml(24mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド4.0mlを順次加えた。試験管をオイルバス上で60℃まで加熱し、30分間保ったところ、混合液は透明になった。透明混合液をさらに100℃まで加熱し、その温度で20時間攪拌して、前駆体ポリマーを得た。この混合液のH−NMR測定から、モノマーの転化率は98%であった。この転化率によりポリマーの平均重合度を見積もったところ、各アームの平均重合度は115であった。また、GPCによる分子量測定では、ポリマーの質量平均分子量は22700であり、分子量分布は1.6であった。
この前駆体ポリマーを用い、上記合成例1と同様な方法によりポリメチルオキサゾリンを加水分解し、6本のポリエチレンイミンがベンゼン環コアに結合した星状ポリエチレンイミンB−PEIを得た。H−NMR(TMS外部標準、重水中)測定の結果、加水分解前の前駆体ポリマーの側鎖メチルに由来した1.98ppmのピークは完全に消失した。
得られた星状ポリメチルオキサゾリンを、上記合成例1と同様な方法により加水分解し、6本のポリエチレンイミンがベンゼン環コアに結合した星状ポリエチレンイミン(B−PEI)を得た。
<ベンゼン環中心のポリエチレンイミンからの複合体の製造>
実施例1の複合体の製造において、L−PEI粉末を用いる代わりに上記で合成したB−PEIを使用し、実施例1の複合体の製造と同様な方法により、1重量%濃度のB−PEIヒドロゲルを得た。得られたヒドロゲルは、剪断力を加えると変形を生じるが、概ねの形状を保持できるアイスクリーム状態のヒドロゲルであった。
これで得られたヒドロゲル10mL中に、テトラメトキシシラン(TMSO)とエタノールの1/1(体積比)の混合液を15mL加え、アイスクリーム状態のものを軽く一分間かき混ぜた後、そのまま40分放置した。その後、過剰なアセトンで洗浄し、それを円心分離器にて3回洗浄を行った。固形物を回収し、室温で乾燥し、複合体を得た。該複合体のX線回折測定から、20°、27°、28°に散乱強度のピークが表れた。
<シリカナノチューブ会合体の製造>
上記方法で得られた複合体1gを焼成炉中に入れ、温度を100度に上げ、10分間放置した。その後、10度/分の速度で300度に上げ、その温度で1時間、さらに500度に昇温し、その温度で1時間、さらに700度に昇温させ、その温度で4時間焼成を行った。その後、焼成炉温度を室温まで自然低下させた。得られたシリカナノチューブ会合体は白色であり、収量は0.63gであった。
図3に焼成前後の走査型顕微鏡写真を示した。いずれの場合も、ナノスポンジ形には変化がなかった。
(実施例3)
<ポルフィリン中心の星状ポリエチレンイミン(P−PEI)の合成>
Jin et al.,J.Porphyrin&Phthalocyanine,3,60−64(1999);Jin、Macromol.Chem.Phys.,204,403−409(2003)に示された方法により、前駆体ポリマーであるポルフィリン中心星型ポリメチルオキサゾリンの合成を次の通り行った。
三方コック付の50mlの二口フラスコをアルゴンガスで置換した後、0.0352gのテトラ(p−ヨードメチルフェニル)ポリオキサゾリン(TOMPP)、8.0mlのN,N−ジメチルアセトアミドを加えて、室温で撹拌し、TIMPPを完全に溶解させた。この溶液にポルフィリンに対し、1280倍モル数に相当する2−メチル−2−オキサゾリン3.4ml(3.27g)を加えてから、反応液の温度を100℃にし、24時間撹拌した。反応液温度を室温に下げてから、10mlのメタノールを加えた後、混合液を減圧濃縮した。残留物を15mlのメタノール中に溶解し、その溶液を100mlのテトラヒドロフランに注ぎ、重合体を沈殿させた。同一方法で、重合体を再沈殿させ、吸引ろ過後、得られた重合体をPが置かれたデシケータに入れ、1時間アスピレータで吸引乾燥した。さらに、真空ポンプにて減圧し、真空下24時間乾燥して前駆体ポリマーを得た。収量は3.05g、収率は92.3%であった。
得られた前駆体ポリマー(TPMO−P)のGPCによる数平均分子量は28000で、分子量分布は1.56であった。また、H−NMRにより、重合体アームにおけるエチレンプロトンと重合体中心におけるポルフィリンのピロル環プロトンとの積分比を計算した処、各アームの平均重合度は290であった。従って、H−NMRによる数平均分子量は99900と推定された。H−NMRによる数平均分子量値がGPCでの数平均分子量値を大きく上回ることは、星型高分子における一般的特徴に一致する。
この前駆体ポリマーを用い、上記合成例1と同様の方法によりポリメチルオキサゾリンを加水分解し、4本のポリエチレンイミンがポルフィリン中心に結合された星状ポリエチレンイミン(P−PEI)を得た。H−NMR(TMS外部標準、重水中)測定の結果、加水分解前の前駆体ポリマーの側鎖メチルに由来した1.98ppmのピークは完全に消失した。
<ポルフィリン含有星状ポリエチレンイミンからの複合体の製造>
実施例1の複合体の製造において、L−PEI粉末を用いる代わりに上記で合成したP−PEIを使用し、実施例1の複合体の製造と同様な方法により、P−PEIヒドロゲル(を得た。得られたヒドロゲルは、剪断力を加えると変形を生じるが、概ねの形状を保持できるアイスクリーム状態のヒドロゲルであった。
得られたヒドロゲル(25)につき、X線回折測定を行った結果、20.4°、27.3°、28.1°に散乱強度のピークが表れることが確認された。また、熱量分析装置による吸熱状態変化の測定結果により、64.1℃で吸熱のピークが確認された。これら測定結果より、ヒドロゲル中におけるP−PEIの結晶の存在が確認された。
これで得られたヒドロゲル1mL中に、テトラメトキシシラン(TMSO)とエタノールの1/1(体積比)の混合液を1mLまたは2mL加え、アイスクリーム状態のものを軽く一分間かき混ぜた後、そのまま40分放置した。その後、過剰なアセトンで洗浄し、それを円心分離器にて3回洗浄を行った。固形物を回収し、室温で乾燥し、複合体を得た。複合体のX線回折測定を行った結果、シリカ被覆前と同様な散乱ピークが20.5°、27.4°、28.1°に表れた。
得られた複合体を走査型顕微鏡により観察したところ、星形状であった。
<シリカナノチューブ会合体の製造>
上記方法で得られた複合体1gを焼成炉中に入れ、温度を100度に上げ、10分間放置した。その後、10度/分の速度で300度に上げ、その温度で1時間、さらに500度に昇温し、その温度で1時間、さらに700度に昇温させ、その温度で4時間焼成を行った。その後、焼成炉温度を室温まで自然低下させた。得られたシリカナノチューブ会合体は白色であり、収量は0.61gであった。
図4に焼成前後の走査型顕微鏡写真を示した。いずれの場合も、星形には変化がなかった。
本発明の実施例1におけるナノウェブ形状複合体(左、焼成前、スケールバー、500nm)と、ナノウェブ形状シリカナノチューブ会合体(右、焼成後、スケールバー、250nm)透過型顕微鏡写真である。 本発明の実施例1おけるナノウェブ形状複合体(左、焼成前、スケールバー、100nm)と、ナノウェブ形状シリカナノチューブ会合体(右、焼成後、スケールバー、100nm)の透過型顕微鏡拡大写真である。 本発明の実施例2におけるスポンジ形状複合体(左、焼成前、スケールバー、500nm)と、スポンジ形状シリカナノチューブ会合体(右、焼成後、スケールバー、500nm)走査型顕微鏡写真である。 本発明の実施例3における星形状複合体(左、焼成前、スケールバー、500nm)と実施例3における星形状シリカナノチューブ会合体(右、焼成後、スケールバー、500nm)走査型顕微鏡写真である。

Claims (5)

  1. 以下の工程を有するシリカナノチューブ会合体の製造方法。
    (1)直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを溶媒に溶解させた後、水の存在下で析出させ、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーの結晶性ポリマーフィラメントを得ると共に、前記結晶性ポリマーフィラメントからなるヒドロゲルを得る工程、
    (2)前記ヒドロゲルとアルコキシシランとを接触させることにより、前記結晶性ポリマーフィラメントとシリカとの複合体からなる有機無機複合会合体を得る工程、及び
    (3)前記有機無機複合会合体中の結晶性ポリマーフィラメントを除去する工程。
  2. 前記アルコキシシランが、テトラアルコキシシラン類、トリアルコキシアルキルシラン類からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項に記載のシリカナノチューブ会合体の製造方法。
  3. 前記工程(1)において結晶性ポリマーフィラメントを析出させてヒドロゲルを得る際の媒体中の水に対する直鎖状ポリエチレンイミン骨格の割合が0.1〜30質量%の範囲となる比率である請求項又はに記載のシリカナノチューブ会合体の製造方法。
  4. 前記工程(2)において加えるアルコキシシランの量が、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマー中のエチレンイミン単位に対し4〜1000倍等量である請求項1〜3のいずれかに記載のシリカナノチューブ会合体の製造方法。
  5. 前記工程(3)における親水性ポリマー結晶の除去が、300〜900℃の温度での焼成である請求項1〜4のいずれかに記載のシリカナノチューブ会合体の製造方法。
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