JP2006213589A - 空隙充填材料とその作成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】珪酸ソーダ(以下、水ガラス)を、通常の使用方法である、2液ないし1.5液型混合プラントへの多量投入により凝結促進剤として用いるのではなく、1液型プラントにごく少量(全充填材に対する体積比2%以下)を投入することで材料分離低減剤として用いることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
地盤からの土圧(外圧)を、加えて構造物の種類によってはその内側からの水圧等(内圧)を、設計どおりに構造物に載荷させて、構造物の安定性を保つためには、上記の空隙を充填して構造物と地盤とを一体化させることが望ましい。そのため、従来から、トンネル等の背面空隙への充填(グラウチング)が実施されてきた。
また、大谷石採石鉱山跡の陥没事故に代表されるように、トンネル等の残置に伴う事故も多発しており、トンネル等自体の廃棄に伴う内部充填もその重要性を増しつつある。
しかし、トンネル等は地中深くにある構造物であるため、施工性に制約があることが多い。すなわち、材料練り混ぜのプラントをトンネル内の充填箇所から遠く離れた外部地表に設置し、そこから配管によって充填材を長距離圧送によって施工することを強いられることも多く、その制約は既設のトンネル等においてより厳しい。
そのような条件下において、セメントモルタルは粘性が強くて長距離の圧送は困難である。また、セメントペーストはモルタルに比べれば適するものの、材料分離(ブリージング)が大きいため、圧送中に分離沈降したセメント分が配管を閉塞してしまう事故を発生させる。
この現象は、上記の膨潤の時間を多くとることでより効果的である。貯留タンクにより数時間や一晩程度貯留しておけるような施工空間・時間の余裕がある場合には、ベントナイトの膨潤による増容量効果(最大5〜10倍程度)も絶大であり、効果と経済性に優れた充填材を得ることができる。
その場合、膨潤による材料分離低減効果も十分に発揮されないばかりか、増容量効果も生じない。そうなると、ベントナイト単体はセメントに比べて高価な材料であるため、効果も経済性も低下せざるを得ない。
このフライアッシュを前項まで述べてきたセメント系の充填材に混入させることで、以下のような効果が期待される。
(イ)副産物であるため材料自体が安価であり、充填材への混入量が増えるにつれ、充填材全体の材料単価が下がり、経済的となる。
(出願日現在の概算価格:セメント20円/kg、ベントナイト30円/kg、フライアッシュ10円/kg)
(ロ)セメントに比べて単位重量が小さく、セメントをフライアッシュで置換することで、充填材料中の単位水量を減少させることができるため材料分離が低減されるほか、充填材全体の単位重量が減る。
(ハ)(ロ)項の材料分離の抑制により、より一層の長距離圧送が可能となる。
(ニ)(ロ)項の単位水量の減少により、乾燥収縮が減少するとともに、水密性・耐久性が向上する。
(ホ)(ロ)項の充填材単位重量の減少により、充填時および充填後の構造物への荷重が減る。
(ヘ)長期強度が増進する。
(イ)特許第3607383号「スラリー添加材」
(ロ)特許第3566359号「裏込め充填材料」
(ハ)特許第3450420号「裏込め充填材料」
(ニ)特許第3099166号「水硬性組成物」
(ホ)特開2003−119062「注入材用硬化材及び注入材」
(ヘ)特開2003−2723「セメント系組成物」
(ト)特開平11−92760「裏込め充填材料」
(チ)特開平9−77546「空隙充填材料」
(イ)流動性及び材料分離抵抗の低下
フライアッシュの混入量を本発明より多量に混入している事例が大半であり、その点では本発明を凌駕している。しかし、その分、単位水量が下がりすぎており、充填時の圧送性を左右する流動性に支障が出ていると言わざるを得ない。
その流動性の指標として、各事例ではモルタルに用いるテーブルフロー試験(広がりの幅で測定)を用いており、確かに各事例ともにモルタルに比べればフロー値は大きい。しかし、セメントミルク系充填材のフロー値の評価は漏斗(P漏斗ないしJ漏斗)からの流下時間による指標を用いるべきであり、その指標に乗らない程度の流動性は「高い流動性を持つ」とは言い難い。加えて、ブリージング率についても、5%以上、事例によっては10%に達する配合までも適合と判定としている。
この程度の流動性そして材料分離抵抗では、発明者・出願人が業務として携わっている、「0003」に述べたようなトンネル等の奥の1、2km先までの圧送には到底耐え得ない。
各機関のトンネル背面空隙充填に係わる規定を次項の表1に示す。
(ロ)強度過大
各事例ともに、フライアッシュ多量混入により充填材の初期強度が低下するところを、水ガラスによる2液混合ないし1.5液混合を行うことにより強度を高めている。しかし、副作用として、前項のとおり単位水量が少なく粉体分の濃度が高いため、水ガラスによる凝固作用が飛躍的に進み過ぎ、材令28日強度、事例によっては材令7日や1日の時点で2N/mm2(≒20kgf/cm2)を超えている。
圧力水路トンネルような内圧のかかる構造物を除けば、力学的にはトンネル等の背面空隙への充填材には必要以上の強度は要求されない。地盤からの主働土圧を構造物壁体に均等に伝播・分散させることが充填材の主要目的であって、むしろ、強度が大きすぎると、均等には分散されなくなる恐れがある。自重や地盤からの主働土圧によって破壊されない程度の強度として、表1のとおり、各機関では1N/mm2(≒10kgf/cm2)程度、または、それに現場施工のばらつきの余裕を見込んで1.5N/mm2と設定している。
また、トンネル等自体の内部空隙充填についても、周辺地盤との応力の配分という意味で、上記と同様、強度が大きすぎる塊を地盤中に構築してしまうのは却って悪影響を引き起こしかねない。
以上より、各先行事例の充填材の強度発現は過大であることが示唆される。
(ハ)2液混合の不安
前項の2液や1.5液混合(=2ショット、1.5ショット充填)とは、セメント等の粉体の懸濁混合液であるA液と、水ガラス溶液のB液とを、別々のミキサーで混ぜて、地盤中(2液混合の場合)ないし地盤直前のY字管(1.5液混合の場合)で両液を混ぜ合わせる手法である。ゲルタイムを瞬結とするような薬液充填において多用されている。
しかし、上記の2液はミキサーを介さない混合となるため、混合後の充填材の品質にムラができる恐れがあり、先行事例内で行われている試験室内での試験結果を、そのまま現場施工に適用できるとは考えにくい。また、薬液充填は一般に仮設に用いられる手法であり、恒久対策となる空隙充填を、仮設対策と同手法で行うことに若干の疑問を呈せざるを得ない。
さらに、2液や1.5液混合の場合、充填設備が煩雑になり、施工性を悪化させる。
(ニ)分級フライアッシュ
先行事例の多くが、フライアッシュとして、JIS規格品ではなく、それをさらに細粒化選別した高品質品である分級フライアッシュを用いている。
しかし、試験室レベルでは容易であっても、実際の施工の時に購入等する際に、そのような高品質の特殊品を常に容易に入手できるとは限らない。
(イ)性状その1:長距離圧送(圧送距離1〜2km)が可能となる所定の流動性、材料分離抵抗。目安として、P漏斗によるフロー値が11秒以下、ブリージング試験によるブリージング値が5%以下(3%以下が理想)。
(ロ)性状その2:必要最小限の圧縮強度。材令28日で1N/mm2程度。
(ハ)製法その1:2液混合ではなく、1液型とする。すなわち、圧送前の混合プラントにより、水ガラス等の添加剤含む全材料を混合し、均質な充填材を得る。
(ニ)製法その2:ベントナイト膨潤のための施工手間(膨潤時間)をとらず、各材料を連続的に混合することにより作成する。
(イ)ベントナイト、フライアッシュ、セメント(以上A液)、そして水ガラス(B液)を、各材料ともに1分間程度攪拌のインターバルをおく程度での混練水への連続的投入によって混合して、1液型の空隙充填材とする。
(ロ)水ガラス以外の配合は下記のとおりとする。
水/全粉体 = 220〜190%(重量比)、
フライアッシュ:セメント = 3:7〜1:9(重量比)、
ベントナイト=50kg/m3以上
それに対して本発明では、水ガラスを、通常では考えられないほどの少量(2%以下)を使用することで、通常とは全く異なる効果が生じることを発見したものである。
しかし、凝固しないのではなく、その効果が僅かであるために見出されなくなっているだけであることは自明である。そして、僅かな凝固とはいえ、当然それに伴って充填材全体の粘性が僅かながら高まっている筈であり、それにより、むしろ場合によっては不必要な凝固が発生することなく、材料分離のみが抑えられるのではないだろうか?と発想したのが本発明の出発である。つまり、水ガラスの「凝結促進剤」としてではなく「材料分離低減剤」としての利用を見出した。
その上で、本発明ではセメントとフライアッシュの比率を変えた試験検討を行い、フライアッシュを極力多く用いることができる最適比率を提示するものである。
また、フライアッシュは、本実施例ではJIS規格品を用いているが、各種先行技術文献において提示されている高品質化した分級フライアッシュを使用できるならば、より好適な結果を期待できる。
さらに、遅延剤や減水剤等の添加剤の使用も、用途によっては可能である。
よって、薬液注入における現在の規制の中で、ほぼ唯一使用が認められている安全性の極めて高い無機材料の水ガラスを、材料分離低減剤としても使用できるならば、その社会的効果は計り知れない。
(イ)ミキサー内の混練水にベントナイトを投入して、1分間の攪拌を行う。
(ロ)次に、フライアッシュを連続的に投入し1分間の攪拌を行う。その後、セメントを投入して1分間攪拌する。
(ハ)引き続いて、水ガラス水溶液を2分割して投入し、それぞれに1分間の攪拌を行い、充填材が完成する。
(ニ)上記充填材を、圧送管により充填箇所まで圧送して、トンネル等の背面空隙、ないし廃棄トンネル等自体の内部に充填する。
なお、ミキサーに余裕がある場合、セメントを粉体ではなく一度水に溶いて液状にしておいてから、ベントナイト+フライアッシュの液に投入する方が、セメント自体の硬化作用にとっては望ましい。
また、水ガラスの全充填材に対する体積比としては、本発明に提示する2%以下が適用可であるが、実施例に示すとおり1%が最適である。
一般的な充填施工現場においては、1漕分のミキサーの充填材が7、8分間、余裕をみて約5分間で消費される。よって、充填材が5分間で完成するということは、通常の混合プラントで多用されている2漕のミキサーを用いることで、途切れることなく連続的充填ができることを意味しており、極めて実用的といえよう。
また、充填材としての評価基準値は、「0009」表1及び「0010」に提示したとおり、フローは11秒以下、ブリージングは3%以下、強度は材令28日で1N/mm2程度、とする。
ベントナイトを入れないセメントミルクが、本実施例と同程度の水セメント比200%程度の場合、ブリージング率が50%程度にまで達してしまうことを考えると、ベントナイトの効果は確かに生じている。とはいえ、「0005」のとおり、連続的投入のためにベントナイトの膨潤効果が完全ではないことが伺える。
また、数配合において、ベントナイトを25kg/m3増量して試行した。その結果、確かにブリージング率はそれぞれ2%程度低下したものの、評価基準値には届かなかった。また、フロー値がやや悪化傾向となった。ベントナイト自体が高価な材料であることからも、これ以上のベントナイト増量は好ましくないと判断された。
表4に示すとおり、No.9配合の充填材に、濃度を変えた水ガラス水溶液の混入を試行した(No.9+WG0.1〜5。No.9+WG1については表5、6参照)。その結果、水ガラスが全充填材に対する体積比5%の濃度では数秒でゲル化してしまい、本発明で提示する2%以下の濃度において、ゲル化することなくブリージング低減の効果のみが得られることを見出した。
これを踏まえ、No.1〜16全てについて1%濃度の水ガラスを混入させる配合を設定し、試験を行った。配合を表5に、試験結果を表6および図1に示す。
評価基準値を概ね満たしているNo.8、9、13、14より、F/Cは3:7〜1:9が望ましいと判断される。
以上より、水の重量比としては、上限を220%、下限を190%とするのが好ましいものと考える。
よって、既述のとおり高価であるため経済性の観点からは減量が望ましいところではあるものの、ベントナイトは自然産の材料であり、産地や鉱脈等の違いによる性状のバラツキがあることを考慮すると、本実施例のとおり最低50kg/m3を確保するのが無難であろう。
Claims (3)
- 空隙充填材料の作成において、珪酸ソーダ(以下、水ガラス)を、通常の使用方法である、2液ないし1.5液型混合プラントへの多量投入により凝結促進剤として用いるのではなく、1液型プラントにごく少量(全充填材に対する体積比2%以下)を投入することで材料分離低減剤として用い、ベントナイトの膨潤時間をとることなくかつ流動性を損なうことなく、空隙充填材料の材料分離抵抗を高めて、長距離圧送特性を向上させる方法。
- 「請求項1」の方法で作成することにより、「請求項1」に示す性状を有する空隙充填材料。
- 「請求項2」において、以下の手法および割合で作成することにより、「請求項1」に示す性状を有する空隙充填材料。
(イ)ベントナイト、フライアッシュ、セメント、そして水ガラスを、各材料ともに1分間程度攪拌のインターバルをおく程度での混練水への連続的投入によって混合して、1液型の空隙充填材料とする。
(ロ)水ガラス以外の配合割合は、下記のとおりとする。
水/全粉体 = 220〜190%(重量比)、
フライアッシュ:セメント = 3:7〜1:9(重量比)、
ベントナイト=50kg/m3以上
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