JPH0721136B2 - グラウト材 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 本発明は、主として推進（押管）工法において地山の掘
削に伴う管壁背面の空隙（テールボイド）に充填するた
めのグラウト材に関するものである。

「従来の技術」 一般に、推進工法は、発進立坑と到達立坑を築造し、発
進立坑に推進刃口と押管をセットしジャッキによって到
達口まで圧入する工法であり、押管は漸次に掘削ととも
に前進する工法であって、この推進工法の特徴は押管が
常時前進することにある。

この推進工法のように押管を地山に圧入して管を敷設す
る場合、地山から大きな抵抗を受けるため、ジャッキ推
力を押管の口径と推進距離に比例させさせて増大させ敷
設させる管と地山との摩擦抵抗に打ち勝たねばならな
い。

従来においては、推進用管に加わる摩擦抵抗を減少さ
せ、長距離に及ぶ圧入を可能にするために、地山と敷設
管との間の空隙に減摩材を注入して管推進に必要なジャ
ッキ推力の軽減を図っている。

従来法において減摩材として用いられているのは、ベン
トナイトを主成分とし、これにCMC,マットオイル（重
油）、石膏等を添加した滑材であって、減摩効果の発現
を主目的にするため、ほとんど強度のない軟らかなグラ
ウトである。

そして従来の推進工法においては、一次注入として上記
の滑材を敷設管の推進と共に通常は１本ごとに１度の注
入を行い、敷設管の先端が到達立坑に達するまで一次注
入を繰り返す。

このようにして敷設管の圧入敷設が終了した後に、敷設
された管の防護や地盤の沈下防止のために、二次注入と
して裏込め注入を行なう。

この二次注入は、通常のシールド等の裏込めグラウト注
入と同じであり、地山相当強度以上の強度を持つグラウ
トを用いること原則とする。

よって、二次注入に用いられる一般的なグラウトはセメ
ント系グラウトであり、セメントにベントナイト、粘土
鉱物を含有する土、フライアッシュ、微細な砂等を配合
したものである。

「発明が解決しようとする問題点」 しかしながら、上記従来技術のグラウト材では、次のよ
うな問題点がある。

（１）一次注入（滑材注入）と二次注入（裏込め注入）
とに分けて注入施工を行なわねばならないので、手間が
かかり、材料費（量）、工期、工費が嵩む。

（２）敷設された管の周囲は一次注入された軟らかい滑
材が充填されていて大きな空隙は残されておらず、裏込
め材を二次注入で注入によって注入しても管周囲の滑材
を押し退けて置換することが困難である。

その結果、管防護や地盤沈下防止が極めて難しくなる。

「問題点を解決するための手段」 本発明は、上述の従来法の推進工法の致命的な欠陥を取
り除くことができるようにしたスラグと、石灰と、ベン
トナイトを主成分とした滑材と、硬化遅延剤とを配合し
てなる新規のグラウト材を提案するものである。

即ち本発明によれば、従来の煩雑な注入工程の代えて減
摩材と裏込め材両方の効果を合わせ持つグラウトを一回
注入することにより、推進工法の作業能率を大幅の高め
ることができる。

本発明によるグラウトは、これに配合する硬化遅延剤
を、押管が発進立坑から到達立坑に達するまでの期間は
軟らかいゲル状を保って減摩材として働き、その後はグ
ラウト自体が硬化して地山相当以上に固結強度を発現す
るような硬化時間を得られる配合量に調整した自硬性グ
ラウトであることを特徴としている。

推進工法における発進立坑から到達立坑に至るまでの期
間は、押管の管径、推進距離、土質その他の施工条件に
よって異なるが、一般には１乃至４週間、長くとも３週
間程度が多い。

従って本発明のグラウトは、推進工法の施工中におい
て、注入した時点から押管が到達立坑に到達するまでは
硬化せずに減摩材として働くようにしたものである。

本発明のグラウトは、滑材と、硬化発現材であるスラグ
と、石灰と、硬化遅延剤を含有するグラウトからなるも
のであるのに対して、推進工法を含む各種の工事におい
て従来使用されている従来法の裏込め材はセメント系の
グラウトである。

しかしながら、セメント系のグラウトは硬化発現が早
く、硬化遅延剤を添加しても最長で数日間の硬化遅延が
限度であるため、セメントは本発明グラウトで用いる硬
化発現材としては不適当である。

推進工法における通常の推進期間である１乃至３週間の
間は硬化せずに、少量の硬化遅延剤の添加により硬化発
現を大幅に遅延させることができる硬化発現材として、
本発明グラウトではスラグと石灰を組み合わせて使用す
る。

本発明グラウトで使用する滑材の例としては、主にベン
トナイト及びにベントナイト油分又はアルカリ性のもの
で安定の化学化合物その他の添加剤を加えたものを挙げ
ることができるが、減摩効果を有する滑剤であればよ
く、特に制約を受けない。

本発明グラウトに用いるスラグは、高炉スラグを溶融状
態から水で急冷固化したいわゆる水さいを微粉砕したも
のである。

また石灰は、消石灰と生石灰とがあるが好ましいのは消
石灰である。

本発明グラウトに添加する硬化遅延剤にしては特に限定
するものではないが、例えばリグニンスルフォン酸を主
成分とする硬化遅延剤を用いることができ、なかでも、
ヒドロキシカルボン酸が最も好ましい。

グラウトに添加する硬化遅延剤の量は、発進から到達に
至るまで変化させずに同時に配合のグラウトを継続的に
使用することができるが、発進時には比較的多量の減摩
剤を添加しておき、掘削の進行に伴って漸次に硬化遅延
剤の添加量を減少することもできる。

一方、推進用管の先端が到達立坑に到達した推進完了時
点では、管周囲や立坑接続部には地盤強化及び止水等の
処理を速やかに施して地盤を安定化する必要がある。

このため、到達した管周辺のグラウトは減摩剤としての
性状は必要とせず、注入後速やかに硬化発現することが
望まれる。

本発明によれば、到達までに使用したグラウト材をＡ液
とし、水ガラス溶液をＢ液とする二液性の裏込め材を注
入して上記の目的を達成することができる。

本発明による裏込め注入工法としては特に限定するもの
ではないが、注入対象地盤の状況に応じて主に２種の異
なる方法によって実施することが好ましい。

まず一つの方法は、管が粘性土中に敷設されて管背面に
掘削により生じた空隙が存在する場合にこれらの空隙に
限定注入（充填）を行う方法である。

この場合には、AB両液をグラウトホールの手前で合流さ
せ、グラウトホールに至るまでの間にゲル化させて可塑
状のゲルを形成させ、この可塑状ゲルをテールボイドに
注入する。

この方法による場合のグラウトのゲルタイムは５秒乃至
20秒程度が望ましく、小量のグラウト注入により完全に
空隙を充填して止水及び地盤強化を行うことができる。

もう一つの方法は、帯水地盤でルーズな砂質土等に管を
敷設した場合に見られるように、掘削により生じた空隙
がグラウト注入前に崩壊して大きな空隙が無くなった状
況の地盤の強化に適する方法である。

この場合には、Ａ液とＢ液とをグラウトホールの直前で
合流させ、ゲル化時間を保持した薬液を小さな空隙に充
填した後に固化させる。

この方法によるときの注入グラウトのゲル化時間は10秒
乃至１分程度、好ましくは10秒乃至20秒である。

「実施例」 以下に実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明
する。

＜実施例１〜４＞ 微粉末水枠スラグ（商品名：セラメント）と工業用消石
灰に滑材としてベントナイト（250メッシュ）を添加
し、更にヒドロキシカルボン酸を主成分とする硬化遅延
剤を加えた配合物の硬化時間を表１に示す。

本発明のようにスラグと石灰と滑材とから成り、これに
硬化遅延剤を所定量加えたグラウトの硬化するまでの日
数は、１日から４週間程度であり、推進工法の進行状況
に合わせてグラウトの硬化時間を任意に調整することが
できることが分かる。

＜比較例１＞ セメントとベントナイトとから成る従来法のグラウトの
硬化時間を表１に示す。

この従来法のグラウトは硬化遅延剤を加えても硬化時間
を大幅に延ばすことはできず、本発明のグラウトとして
は不適当であることが分かる。

表１において、硬化するまでの日数の判定は、アスファ
ルトの針入度試験方法（JISK−2530−1961）に準じて、
重量180g、先端角度15゜の貫入コーンを用い、原位置に
おける静適貫入値として100mm（推定一軸圧縮強度:0.1k
gf/cm²）をもって表した。

また、表１の結果によれば、スラグと石灰との間で起こ
る潜在水硬性反応の反応性は必ずしも石灰が多いほど早
く硬化するとは限らず、重量基準でスラグ100部に対し
て石灰17〜50部の範囲の配合日にした場合に硬化するま
での時間を最も長く保持できることが判明した。

従って、本発明グラウトにおけるスラグと石灰の好まし
い配合割合は、スラグ100重量部に対し石灰約17〜50重
量部である。

表１に示す実施例２において、硬化遅延剤を1.51添加し
た配合物の硬化後の強度は、３ケ月後で6.2kgf/cm²、６
ケ月後で19.4kgf/cm²であった。

＜実施例５〜６＞ スラグと石灰とベントナイトと硬化遅延剤とから成るグ
ラウトをＡ液とし、水ガラス液をＢ液として用いた裏込
め注入薬液のゲルタイムと一軸圧縮強度を実施例５、実
施例６として表２に示す。

＜比較例２＞ 比較例２として示す配合は、Ａ液中の石灰の量が少な
く、到達立坑に管が到達した後に注入する裏込め注入薬
液としては不適当な配合である。

即ち、比較例２の配合物はゲルタイムが長すぎたため
に、到達立坑に管が到達した後注入するには適せない。

水ガラス溶液と組み合わせて二液性の裏込め注入薬液と
して使用する場合におけるスラグと石灰の配合割合は、
スラグ30重量部に対し消石灰４〜15重量部の範囲であ
り、消石灰の配合比を更に増加しても強度は高くならな
い。

「発明の効果」 以上の説明及び実施例から判るように、本発明によるグ
ラウト及びその注入工法は推進工法に応用すると、従来
の推進工法の欠点を取り除くことができ、作業能率を大
幅に向上できる。

本発明によるグラウトは、推進工法や同様工法であるパ
イプルーフ工法やその他工法に用いることができる。

また本発明による注入の裏込め注入は推進工法を初めシ
ールド工法やその他の工法に使用することができる。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁶ 識別記号 庁内整理番号 ＦＩ 技術表示箇所 Ｃ０４Ｂ 22:06）

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】スラグと、石灰と、ベントナイトを主成分
   とした滑材と、硬化遅延剤とを配合してなり、前記硬化
   遅延剤は推進工法により押管を推進中はグラウトを硬化
   させず、推進完了後に硬化するような硬化時間を得られ
   る配合量に調整してなることを特徴とする推進工法に用
   いるグラウト材。
2. 【請求項２】スラグと、石灰と、ベントナイトを主成分
   とした滑材と、硬化遅延剤とを配合してなり、前記硬化
   遅延剤は推進工法により押管を推進中はグラウトを硬化
   させず、推進完了後に硬化するような硬化時間を得られ
   る配合量に調整してなるＡ液と水ガラスからなるＢ液と
   の混合液であることを特徴とする推進工法に用いるグラ
   ウト材。