JP4180938B2 - 自硬性空隙充填材及び空隙充填工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シールドマシンによりオーバーカットされて生じたシールドマシン及びセグメントの外周側の空間部に空隙充填材を充填して、オーバーカットによる地盤の崩壊・崩落、沈下等の変状を防止すると共に、自由断面のトンネル築造を行うにあたり事前に空洞に充填して地盤の変状を防止する自硬性空隙充填材及び空隙充填工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シールド工法は、シールドマシンと呼ばれる掘削機で地山を掘削し、シールドマシンの後方でセグメントを組み立て、これを反力にしつつ、地中にトンネルを築造する工法である。
このマシンは、トンネルの線形により地山をオーバーカットして地山を掘削するようになっている。さらに、シールドトンネルの途中にトンネル標準断面より大きな断面を必要とする場合には、特許文献1,2,3及び非特許文献1,2,3に記載のように、シールドトンネルの途中を内部より切り広げていく過程で、円周方向に移動する円周シールドとトンネル軸方向に移動するドーナツ状の拡大シールドを用いて一回り大きなシールドを築造していた。これらを築造する際の余掘りの処理は、予め余掘りが必要とされる断面を想定しグラウトや薬液注入工法にて周辺地盤を強固にし、地盤掘削後の地盤の変状を防止していた。
或いは、特許文献3及び非特許文献4に記載のように、袋付セグメントを用いて余掘部分に充填された充填材を裏込め材と置換し地山の緩みや地盤の変状防止、セグメントの急速安定を図っていた。
【0003】
このように予め行われる処理は、地上よりグラウト等の注入を行ったり、シールド坑内から薬液注入等の工法で地盤改良を行っていた為に、路面占有範囲や作業時間の制約を受けて工期が長くなっていた。また、施工上やむを得ず停止する場合においては、余掘部分の処理が出来ない場合があり長時間に渡って空洞が生じたままになっていた。
或は、先に充填した充填材と裏込め材を置換せざるを得ず、完全な置換が出来ず未硬化部分を残すことがあった。
【0004】
〔従来技術の問題点〕
このような地表面の変状が懸念される場合には、事前に地表面或はシールド坑内からの地盤改良として、予め余掘り掘削し発生した空洞部分に自硬性空隙充填材或は空隙充填材を充填することが必要である。非特許文献1,2,3に記載のように、裏込め材を使用した場合は、円周部分の掘削方式として機械掘、手掘、半機械掘から選択し、補助工法として圧気やグラウト、薬液注入で周辺地盤を地盤改良する必要があった。
また、特許文献3記載の充填材を余掘部分或いは拡大部分の空隙に使用した場合には、充填材に硬化成分が含まれていないため、充填後も固化することがなく、長期間の荷重によって圧密沈下する可能性があり、地表面の変状抑止作用が不十分となる問題点があると共に、裏込め材と置換せざるを得ず不経済であり好ましくなかった。
【0005】
【特許文献1】
特開平6-288181号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開2002-303100号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開2000-220385号公報(特許請求の範囲)
【非特許文献1】
泥水式拡大シールド工法の開発、地下空間利用に関する建設技術発表会(日本トンネル技術協会)p.103〜108,1989年2月
【非特許文献2】
拡大シールド工法協会:拡大シールド工法技術資料,1989年11月
【非特許文献3】
シールド洞道内をシールドで部分拡大,トンネルと地下,Vol.16 No.10,p29〜34,1985年10月
【非特許文献4】
充填式シールド急曲線工法技術マニュアル:財団法人 下水道新技術推進機構,2000年3月
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の技術における前記問題点に鑑みて成されたものであり、これらを解決するため具体的に設定した課題は、自硬性のある材料に遅硬性を持たせることにより充填した充填材を取り出すことなく硬化させ、ゲル化した充填材がシールドマシン通過後まで固結せずに余掘部分乃至拡大工事部の安定を保持し、シールドマシンの再移動の際にも摩擦抵抗を最小限に食い止める。さらに、トンネル拡大を行う際に本発明品を用いることにより、予め拡大部分を坑内から余掘りし充填しておくことにより、地表面の変状を抑え、機械式掘削シールド施工における自由断面のトンネル拡径築造が安全に行えるようになる自硬性空隙充填材、及び、この自硬性空隙充填材を用いた空隙充填工法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を効果的に解決できる具体的に構成された手段としての本発明における請求項1に係る自硬性空隙充填材は、シールドマシンの余掘り掘削によって生じた空隙部分、または、トンネルを拡大するときに生じる空洞部分に充填するための充填材と水とを混合した自硬性空隙充填材であって、上記充填材は、充填材100重量%のうち、(イ)セメントあるいはセメント系固化材、消石灰から選ばれる少なくとも一種の硬化材を11〜74重量%、(ロ)スメクタイト、バーミキュライト、ブロフェンから選ばれる少なくとも一種である珪酸塩鉱物からなる膨潤材を11〜85.5重量%、(ハ)前記硬化材の凝結・硬化を緩やかに行わせる糖類及び糖アルコール類を主成分とし、この糖類及び糖アルコール類の組成のうちマルトースが20重量%以上混合されている凝結・硬化遅延剤を0.5〜15重量%、(ニ)酸化マグネシウムからなる硬化促進剤を1〜15重量%、を含み、かつ、この充填材と水とを、重量比で充填材/(充填材+水)=0.1〜0.5となる割合で混合してなることを特徴とするものである。
【0008】
これにより、自硬性のある空隙充填材料を余掘部分或は空洞へ充填することで、効果的に吸水・膨潤した自硬性空隙充填材が余掘部分或は空洞を埋めると共に、このゲル化した充填材がシールドマシン通過後まで固結せずに余掘部分或は空洞を安定に保持し、シールドマシンの再移動の際にもゲル化した充填材が抵抗を少なくして摩擦抵抗を最小限に止め、またセグメントの拡大時においても地山の崩壊、地盤の変状を抑止する。
【0009】
請求項2に係る自硬性空隙充填材は、前記(イ)の硬化材100重量部に対し、前記(ハ)の凝結・硬化遅延剤が5〜10重量部混合されることを特徴とする。
これにより、ゲル化した充填材がシールドマシン通過後まで固結せずに余掘部分或は空洞を安定に保持し、シールドマシンの再移動の際にもゲル化した充填材が抵抗を少なくして摩擦抵抗を最小限に止め、またセグメントの拡大時においても地山の崩壊、地盤の変状を抑止する。
【0010】
また、請求項3に係る自硬性空隙充填材は、請求項1または2記載の自硬性空隙充填材に、硬化開始時間、硬化速度及び強度を調節・変更可能にするために、珪酸ナトリウムからなる凝結刺激剤を添加して硬化させることを特徴とする。
これにより、シールドマシンの掘削によって生じた余掘部分に自硬性空隙充填材を充填し硬化させることができる。また、凝結刺激剤を混合して急速に充填材を硬化して地山を安定に保持し、崩壊・沈下の防止ができるようにする。
【0011】
また、請求項4に係る自硬性空隙充填材は、珪酸ナトリウムからなる前記凝結刺激剤が、珪酸ナトリウムの成分のうち、二酸化珪素23〜30%、酸化ナトリウム6〜10%を含有し、比重30(15℃Be ' )以上であり、凝結刺激剤を清水と希釈した濃度が50〜100%であることを特徴とする。
これにより、硬化開始時期、硬化速度及び強度を調節・変更可能にした自硬性空隙充填材を構成することができる。
【0012】
また、請求項5に係る空隙充填工法は、請求項1または2記載のゲル状の自硬性空隙充填材を地中の掘削や地中構造物の拡大時の掘削によって生じる余掘部分に充填し、任意の時間が経過した後に、珪酸ナトリウムからなる凝結刺激剤を接触・混合して硬化させて急速に強度発現させることにより、硬化速度・強度を変更可能にしたことを特徴とする。
これにより、ゲル化した自硬性空隙充填材がシールドマシン通過後或いはセグメント拡大施工終了後までは固結せずに余掘部分或いは空洞を安定に保持し、崩壊・沈下を抑止して地表面の変状を抑止し、しかも、必要に応じて任意に設定した時間が経過した後に、充填した自硬性空隙充填材を急速に硬化させ、強度を速やかに発現できるようにして、シールドマシンの掘削・掘進、セグメント拡大施工に実質的に支障がなくなってから自硬性空隙充填材が硬化するように調整できるようにし、余掘部分或いは空洞が大きくなるような場合であっても、大幅なコスト増加させることなく、かつ地表面の変状を抑止しつつ、シールドトンネルを形成できるようにする。
【0013】
また、請求項6に係る空隙充填工法は、珪酸ナトリウムからなる前記凝結刺激剤が、珪酸ナトリウムの成分のうち、二酸化珪素23〜30%、酸化ナトリウム6〜10%を含有し、比重30(15℃Be ' )以上であり、珪酸ナトリウムを清水と希釈した濃度が50〜100%であることを特徴とする。
これにより、硬化開始時期、硬化速度及び強度を調節・変更可能にした自硬性空隙充填材を構成することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
なお、実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるため具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、発明内容を限定するものではない。
【0022】
〔自硬性空隙充填材〕
この実施の形態における自硬性空隙充填材は、下記(イ)〜(ハ)を含有する材料と水とを、重量比で充填材/(充填材+水)=0.1〜0.5となる割合で混合してなるものとする。
(イ)硬化材として、セメントあるいはセメント系固化材、消石灰などから選ばれる少なくとも一種を11〜74重量%。
(ロ)膨潤材として、モンモリナイトを含有する珪酸塩鉱物からなる膨潤材を11〜85.5重量%。
(ハ)凝結・硬化遅延剤を0.5〜15重量%。
【0023】
この場合の一例としては、例えば、シールドマシンの前方チャンバ隔壁に直近に設置された注入口より注入される充填材であって、硬化材としてセメント鉱物組成のうちエーライトC3Sを40〜70%、ビーライトC2Sを6〜37%含むポルトランドセメントが5〜50重量%、膨潤材として膨潤度が 5mL/g以上のモンモリナイトを含む珪酸塩鉱物が5〜20重量%、凝結・硬化遅延剤の主成分として糖組成のうちマルトースが20重量%占めているデンプン分解生成物が1〜15重量%、水が750〜900重量%含まれる自硬性空隙充填材が挙げられる。
【0024】
前記(イ)の硬化材は、水硬性の混合物である。これはセメントあるいはセメント系固化材がJIS規格によって規定されているセメントなら何れでも良く、また、土壌改良材に使用されるセメント形固化材や消石灰でも使用可能である。
前記(ロ)の膨潤材は、一般に、モンモリナイトが含有されている珪酸塩鉱物を使用する。この珪酸塩鉱物としては、スメクタイト、バーミキュライト、ブロフェンから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0025】
また、膨潤性を有する珪酸塩鉱物としてはスメクタイトが代表され、スメクタイトを有する珪酸塩鉱物はチキソトロピー性を有する。これは、繰り返しを受けると粒子相互の接着部が壊され、粒子の配向が変化し、また吸着水にエネルギーが与えられ、吸着水の一部は自由水化して電気二重層が薄くなる。その結果、粒子間の引力が反発力を大幅に上回るようになり強度(粘性)が低下する。この状態を静置しておくと次第に粒子の再配向が進み、エネルギーの消散とともに粒子表面の吸着水の厚さが厚くなり、電気二重層が厚くなる。さらに、粒子間の引力と反発力とが次第につり合うようになり、強度が回復する。つまり、ポンプ圧送時は乱された状態となり、粘性が低下し圧力損失が低下する。しかし、充填完了後は、次第に強度(粘性)が増加して地山を保持することとなる。
【0026】
また、スメクタイトは、膨潤度が大きいほど粘度特性がよいことを示す。このスメクタイトの替わりに、結晶構造が繊維状形態を示す粘土鉱物のセピオライト及びアパタルジャイトの中から選ばれる少なくとも1種をさらに追加して用いても良く、これら増粘として用いる材料の替わりに用いる。または、セルロースエーテルやガムに代え、もしくはセルロースエーテルやガムなどと共に添加することによっても増粘効果を大きくすることができる。
また、アパタルジャイト、セピオライトは海水でも懸濁して増粘する効果があるので地盤条件によってはこれらを含有するものが良い。
【0027】
前記(ハ)の前記凝結・硬化遅延剤が、無機系遅延・硬化剤のカルシウム、ナトリウム、カリウムの塩化物、硝酸塩、亜硝酸塩、硫黄化合物等の塩類や、ケイふっ化物、ホウ酸類、リン酸塩、亜鉛、鉛、銅化合物、有機系遅延・硬化剤のアミン類、有機酸カルシウム塩、カルボン酸(塩)、ケト酸(塩)、脂肪酸、糖類及び糖アルコール類、リグニンスルホン酸類、ナフタレン類等のうちから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
さらに、好ましくは、糖類及び糖アルコール類の組成のうちマルトースが20重量%以上混合されているものを使用するのが良い。
【0028】
この自硬性空隙充填材は、前記(イ)〜(ハ)と水とを混合した後の粘性が10000〜70000cp(リヨンメーターによる。)、あるいはベーンせん断強さが0.2〜1.0N/mm2であり、所定の外力により塑性変形に優れた自硬性空隙充填材である。
【0029】
また、この自硬性空隙充填材は、硬化促進剤として、水酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、シリカヒューム、セメントを水和して再粉砕乾燥させたもの及び乾燥粘土、フライアッシュ、石炭灰の中から選ばれる少なくとも1種を1〜15重量%含有させ、前記(イ)、(ロ)、(ハ)からなる充填材との混合物が、充填材/(充填材+水)=0.1〜0.5となる割合で水と混合して成るものが好ましく、これにより流動性に優れ、前記(ロ)の珪酸塩鉱物の膨潤を促進する自硬性空隙充填材が得られる。
【0030】
また、前記(イ)の硬化材には無水石膏、二水石膏、水滓スラグ、フライアッシュから選ばれる少なくとも1種以上が、ポルトランドセメント100重量部に対して5〜60重量%含むようにすることが望ましい。また、ポルトランドセメントに半水石膏がポルトランドセメント100重量部に対して1〜20重量%含むようにしても良い。半水石膏は、ポルトランドセメントが水と接触した際に生じるアルカリのpHを下げる役目をも担っている。
【0031】
この自硬性空隙充填材は、界面活性剤や油性成分から選ばれる少なくとも1種と前記(イ)、(ロ)、(ハ)との混合物としても良い。これにより、加圧流動性及び摩擦抵抗の低減、容器の腐食防止が改善される。
この自硬性空隙充填材は、水溶性の高分子系増粘材及び高分子系凝集剤、高分子系吸水性樹脂が含まれても良く、この高分子系材料のうち、カルボキシルセルロース、メチルセルロース等の水溶性エーテル、天然ガム、人工ガム、高分子系凝集剤のうちポリアクリルアミド共重合物、高分子系吸水性樹脂のうち水溶性のエチレン性不飽和モノマーを重合し水溶性ポリマーの中から選ばれる少なくとも1種を1〜30%含有することが望ましい。また、自硬性空隙充填材の粘性が低い場合には、ガム(天然ガムもしくは人工ガム)を追加するとなお良い。これにより、高粘性の自硬性空隙充填材が得られる。
【0032】
この自硬性空隙充填材には、無機繊維(ガラス繊維、鋼繊維、炭素繊維)、有機繊維(オレフィン繊維、ポリビニールアルコール繊維、合成繊維、パルプ繊維)の中から選ばれる少なくとも1種からなる長さが10mm以下の短繊維を10重量%以下含有しても良い。これにより、自硬性空隙充填材のせん断強さが強くなる。
短繊維は、充填材を一体化させ、空隙部分に侵入する地下水、裏込め材、掘削用泥水、掘削用添加剤及びグラウト材等の影響により充填材が分離するのを防止する。
【0033】
さらに、自硬性空隙充填材には、防錆材を使用しても良い。防錆材は、鋼繊維や、シールドマシンや注入配管の酸化防止目的に使用する。
さらにまた、圧送時における配管摩擦抵抗の低減、注入後における充填材とシールドマシンの摩擦の低減等のために、界面活性剤や推進工事で使用される滑材、油性成分等が含まれていても良い。
【0034】
〔凝結刺激剤を添加する自硬性空隙充填材〕
次に、自硬性空隙充填材と、必要に応じて添加される凝結刺激剤からなる硬化開始時期、硬化速度及び強度を調節・変更可能にした自硬性空隙充填材を構成する。
この自硬性空隙充填材は、ゲル状の自硬性空隙充填材および必要に応じて添加される凝結刺激剤を用い、シールドマシンに予め取り付けられた注入口より充填材を注入して掘削時に地山の変状抑止を行い、同一注入口より必要に応じて注入添加される凝結刺激剤或いは別途設けられた注入口より注入添加される凝結刺激剤との接触・混合により、自硬性空隙充填材を急速に固結させ強度を速やかに発現させて余掘部分或は空洞を強固に固める。
【0035】
凝結刺激剤として用いられる珪酸ナトリウムは、珪酸ナトリウムの成分のうち、二酸化珪素23〜30%、酸化ナトリウム6〜10%を含有し、比重30(15℃Be’)以上であるものが好ましく、さらに、凝結刺激剤を清水と希釈し使用する事も可能である。また、凝結刺激剤としては、珪酸ナトリウムなどの他、一般にセグメントの背面に充填するために用いられる裏込め注入材に予め凝結刺激剤を混合し、裏込め注入に含有させた微量のアルカリ分から選ばれる少なくとも1種を使用しても良い。
【0036】
ゲル状の自硬性空隙充填材を地中の掘削や地中構造物の拡大時の掘削によって生じる余掘部分に充填し、掘削及び拡大工事終了後となる任意の時間が経過した後に、凝結刺激剤を接触・混合して硬化させる場合には、掘削時には余掘部分を未硬化状態の自硬性空隙充填材で保持することで地山の崩壊・崩落、沈下等の変状を抑止するとともにシールドマシンの再移動時には摩擦抵抗を最小限に食い止め、シールドマシンの胴体部分が通過した後では、凝結刺激剤と接触・混合した自硬性空隙充填材が固結し強度を発現して余掘部分を埋め固める。
【0037】
例えば、シールドマシンのシールド本体に予め設置した注入口より余掘部分に自硬性空隙充填材を充填し、充填材とは別途設けられた注入口より凝結刺激剤を注入して、自硬性空隙充填材を急速に硬化させるようにしても良い。
この場合、自硬性空隙充填材の注入口より後方の位置としては、シールドマシンの胴体後部からシールドマシンの後部に組み立てられるセグメントまでの位置が該当する。これらの位置で凝結刺激剤を注入すれば、掘削方向に対して後方となる位置であり、かつ掘削に関しては掘削が終了しているから時間的には後になる位置であって、実質的にシールドマシン通過後に充填材の強度を発現させ、硬化させて、掘削・掘進およびセグメントの拡大施工に支障なく、かつ地表面の崩落や沈下等の変状を抑止しつつ早期にシールドトンネルを形成できるようになる。
【0038】
また、凝結刺激剤を直接混合する方法の他に、自硬性空隙充填材の硬化速度は遅延するものの、一般に用いられている裏込め注入材に予め凝結刺激剤を混合し、注入直後の可塑状のゲル化した状態で自硬性空隙充填材と裏込め注入材に含有される凝結刺激剤などと接触させることにより、別系統で凝結刺激剤を新たに注入することなく、別途設けられた注入口で混合する方法と同様に自硬性空隙充填材を固結して強度増進を可能とする。
また同様に、シールドマシンに予め設置した注入口より余掘部分に自硬性空隙充填材を注入し、シールドマシンの後部に組み立てられたセグメントの外周部に裏込め注入材を凝結刺激剤の代替品として注入することにより、裏込め材に含有される凝結刺激剤との接触によって固結強度をシールドマシン通過後に得るようにしても良い。
【0039】
裏込め材の注入は、シールド径を拡径する場合にシールド掘削中に裏込め注入を行うと、シールドマシンのテール通過後の空隙を埋めるものであるから、掘削及び拡大工事中にフリクションが大きくなると掘削工程等に支障を与えるため、テール通過前には自硬性空隙充填を余掘部分へ注入し、シールドマシンの後部に組み立てられたセグメントの外周部に裏込め材を注入することによって、シールドマシンのテール通過後に裏込め注入材に予め含有させた珪酸ナトリウムと、先に充填されていた自硬性空隙充填材とが接触して急速に強度を発現させ、シールドマシン通過後の地盤の崩壊・崩落、沈下等の変状を抑止する。さらに、先に充填された裏込め注入材を凝結刺激剤と入れ替えることなく地盤の変状抑止をすることができるようになる。
【0040】
また、この裏込め材に過剰に含有されている凝結刺激剤が、ゲル化した状態の自硬性空隙充填材によって覆われることにより、裏込め材の地下水汚染、高アルカリ溶液の溶出による弊害を吸収することになり、環境に優しい材料となる。
また、ゲル状の自硬性空隙充填材はシールドマシンの後部に組み立てられたセグメントの外周面に沿って移動するテールブラシ間にシール材を注入してシールドマシンのテール部分をシールするシール材として用いることもできる。
また、シールド発進時において、シールドマシン、地山、テールパッキンとの空洞に充填するゲル状の材料と地山の間に注入するゲル状の材料とを、掘削終了後に、凝結刺激剤により硬化させるようにしても良い。
【0041】
〔空隙充填工法〕
この実施の形態における空隙充填工法は、シールドマシンの胴体外周面を形成するスキンプレートの外周面に開口した充填材注入口からゲル状の自硬性空隙充填材を充填することにより、シールドマシンを姿勢制御し、地表面の変状を抑止しながら掘削を進め、急速に強度を得る場合には、裏込め注入材が注入される直前で凝結刺激剤を、シールドマシンの外周に設置された充填材注入口とは別の注入口から、またはセグメントの外周側へ開口したテールシール材注入口から、または裏込め注入材の注入口から注入してシールドマシンの後方で固結させ、自硬性空隙充填材を裏込め注入材と同等の強度を有する硬化体にする工法である。
この工法により、シールドマシンの掘削時には、シールドマシンの胴体周辺がゲル状の充填材で囲まれているため、シールドマシンのローリング、ピッチングの姿勢制御を容易に行うことができる。
【0042】
詳しくは、図1,2で示すように、シールドマシン1の横断面形状に関わらず掘削経路が直線の場合には余掘りが最小限にとどめられている(図1)が、シールドマシン1の横断面が円形の場合でも、掘削経路が曲線になる場合には、シールドマシン1が長いため、掘削方向に対して横方向を余分に掘削せざるを得ないため、シールドマシン1の外周面の外側に余掘部分3が形成される(図2)。このため、シールドマシン1の外周にゲル状の自硬性空隙充填材を充填し、自然硬化させる。或いは、シールドマシン1の後部に組み立てられたセグメント2の外周部に凝結刺激剤を注入して、地山の変状を抑止するとともにシールドマシン1の後方(セグメント2の組立箇所)で充填材を硬化させて、掘削工事部を安定に保持する。
【0043】
特に、非円形、超大断面シールド、拡大シールド工法の場合、従来の円形断面に比べて姿勢制御に必要なシールド切羽のオーバーカット部(余掘部分)が大きくなることから、掘削時に地表面の変状が大きく生じる可能性がある。また、曲線区間の施工では非常に大きな余掘部分を地中に生じさせることも考えられ、地山の崩落による地盤変状やシールドマシン1の姿勢制御不能などの事態が生じる恐れがある。
こうした大規模な余掘部分が引き起こすトラブルを未然に防止するためには、地山を保持するせん断応力を有し、しかもシールドマシン周辺部の充填部分では硬化せず、流動性を有する充填材を余掘部分に充填してシールドマシン1の円滑な姿勢制御を可能にすると共に地盤の変状抑止を行う。
【0044】
図3は、シールドマシンが地山を初めて掘削する場合の側面図である。一般に掘削する状況よりもより多くの空洞がある。図3の時点で自硬性空隙充填材を余掘部分3と地山4と地盤改良部分又は地中連続壁、構築物5とに囲まれた空洞部分に注入することにより、掘削時の地山からの地下水流入などを防止することができ、また、シールドマシンと地山との間の摩擦抵抗を軽減し、シールドマシンの通過を容易にすることができる。自硬性空隙充填材は自然硬化する。さらに、シールドマシン通過後の状態(図4)で凝結刺激剤を浸透させることにより、自硬性空隙充填材を急速に硬化させ、地山と同程度の強度を得ることができる。
【0045】
図5で示すように、シールドマシン1が掘削している時に、自硬性空隙充填材(以下、A液という)を貯蔵している自硬性空隙充填用タンク(以下、A液タンクという)16から自硬性空隙充填材供給用の定量ポンプ(以下、A液ポンプという)17を使用して、A液の注入口(以下、前部A液注入口という)22より余掘部分にA液を充填する。A液タンク16からシールドマシン1のスキンプレート外周側にA液が注入された後、シールドマシン1が移動し、シールドマシン1の胴体に設置された後部注入口23より凝結刺激剤(以下、B液という)を凝結刺激剤用タンク(以下、B液タンクという)18から凝結刺激剤用の定量ポンプ(以下、B液ポンプという)19を介して供給し、余掘部分に注入する。B液が注入されたのち先に充填させているA液と接して硬化が開始される。
【0046】
また、シールドマシン1が掘削している時に、A液をA液タンク16からA液ポンプ17を使用して、A液注入口22より充填する。A液タンク16からA液が注入され、シールドマシン1の掘削が進み、セグメント2が設置された後、セグメント2が地山に解放された時、Cα液とCβ液とからなる二液性裏込め注入材(以下、C液という)は裏込め注入材用タンク(以下、Cα液タンク,Cβ液タンクという)11,13から裏込め注入材用の定量ポンプ(以下、Cα液ポンプ,Cβ液ポンプという)12,14により供給されて裏込め注入材注入口(第3C液注入口)10を介してセグメント外周側に形成されているテールシール材後方の空間部に注入され、裏込め硬化体が築造されるときに使用されている裏込め注入材Cβ液の中の凝結刺激剤がシールドマシン外周側に充填されている自硬性空隙充填材(A液)と接触することになり、自硬性空隙充填材は硬化を開始して、急速に固結する。
【0047】
あるいはまた、シールドマシン1が掘削している時に、A液タンク16からA液ポンプ17を使用して、前部A液注入口22よりシールドマシン外周側の余掘部分にA液を充填する。A液が注入された後、シールドマシン1の掘削が進むと同時にテールシール材26がテールシール材タンク20からテールシール材ポンプ21によりテールシール材注入口及び配管24を介して各テールブラシ25の間に充填される。この時、テールシール材タンク20の中のテールシール材26にB液を事前に混合してテールブラシ25の間に注入しても良い。
【0048】
【実施例】
〔模擬変状抑止試験〕
以下に、余掘部分に充填された自硬性空隙充填が長時間の土圧により充填部分の形状が保持されて変形しないことを実証するための模擬変状抑止試験の概要を、図6に示す模型地盤を用いた場合について説明する。
この試験に用いられる装置では、シールド工法による超大断面を左右対称としてその片側だけを模擬し、トンネル本体固定部31と余掘部32を想定した引抜空間を設けた粗粒材からなる模型地盤30を形成した。
【0049】
模型地盤30は、縦500mm、横500mm、奥行150mmの外径寸法を有する容器に、粒径 5mm程度に調整した気乾の粗粒材を深さ450mmまで密に詰め、単位体積重量を約11.6kN/m3とし、その内部に、トンネル本体固定部31と余掘部32で構成されるトンネル掘削模型を、トンネル上部の土かぶりが20cmの層厚になるように埋め込み形成した。
【0050】
この模型地盤30のトンネル掘削模型のうち、余掘部32を形成する半円筒ケースを土槽背面方向に15mm/minの引抜速度で引き抜きながら、半円筒ケースが引き抜かれて形成される空間に自硬性空隙充填材を充填率100%となるように充填することにより充填施工時を再現する。この場合に、余掘部分の引抜速度と自硬性空隙充填材の圧入速度とを計測管理しながら充填する。
【0051】
この模型地盤30の土層表面には、図中に示す土槽中心線上の(地表面沈下が最も大きいと予想される地点の)5箇所に、地表面の沈下等の変状を計測するレーザー変位計をそれぞれ設置する。
用意された模型地盤30を土層表面に重力がかかる状態になるように遠心実験装置(図示せず)内に設置して、回転させ、100倍の重力加速度(100G=981m/sec2)を作用させることで、模型地盤内に実規模大の土被り圧を再現させる。
【0052】
模擬試験に供される自硬性空隙充填材とその比較材料につき表1に示す。
このうち、α(モンモリナイトを含む珪酸塩鉱物:ベントナイト)、β(酸化マグネシウム粉体)、γ(繊維)および水からなる材料は、土圧に対して充填位置の形状が保たれ変形しない充填材である。この基本となる充填材の材料配合に対して硬化剤(普通ポルトランドセメント)および遅延剤を添加することにより以下の充填材を作成した。充填材は100重量部に対して表1に示す配合割合で材料を添加し、混合攪拌したものである。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示す配合割合の充填材を作成した直後に模擬試験容器に充填して模型地盤30を形成し、7日間常温にて静置した後、遠心載荷を100Gで5分間(実規模換算で1ヶ月相当)かけた後の各測定点における変位の結果を表2および図7に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
余掘部32の直上を示す変位計NO.2よりも外側の変位計NO.3,NO.4における沈下量がやや大きく、実規模換算で最大0.5〜0.9cm程度であった。これに対して、変位計NO.1の固定トンネル直上ではほとんど沈下がみられなかった。
この試験結果より、本発明に係る充填材を充填した実施例1-1,1-2の場合では、遅延剤の作用により硬化が遅れて比較例1-1に似た傾向の沈下をしているが、模擬試験の沈下量に対する実規模換算の沈下量がいずれの位置においても1cm以内であり、シールド現場における地表面沈下量として充分満足できる値である。一方、比較例1-2の場合では、凝結・硬化遅延剤の作用がなく、充填材の硬化が速く進み、地表面の実規模換算変位量がほとんど計測されていない。
【0057】
〔ベーンせん断強さ試験〕
本試験は、当該充填材を充填後、局部的な応力に対しては充填材が変形してシールドマシンの移動に支障のないことや、以後に当該充填材を取り除くことが容易にできることについて、基本となる充填材に硬化剤と凝結・硬化遅延剤とを混合することにより遅延効果を有しかつ硬化しないことを証明するためにベーンせん断強さ試験を行ったものである。ここではベーンせん断試験機としては、ロッドの先端に十字翼を充填材に圧入し、緩速で回転剪断する時の最大抵抗値(トルク値)を用い、RTD型トルクドライバー((株)東日製作所: 型式;RTD60CN)によりダイヤル式目盛り盤の値針で読みとった値を用いた。
本試験で使用される充填材は表3に示す配合割合で材料を調整したものである。
【0058】
【表3】
【0059】
表3の配合にて作成された材料を500ccビーカーに400cc投入し、充填後、静置させ、所定の日数経過後に、ポケットベーンにてせん断強さの測定を行った。
表4および図8に試験結果を示す。
【0060】
【表4】
【0061】
表4および図8に示すように、本発明による充填材の配合を有する実施例2-1,2-2では、材齢の経過にも関わらず硬化剤が含まれていない比較例2-1と同様に硬化が進まずせん断応力が少ない状態で維持されているのに対して、硬化剤が含まれ凝結・硬化遅延剤が含有されていない比較例2-2では混合直後から顕著に強度が増加している。
【0062】
〔一軸圧縮強度試験〕
本試験は、当該充填材を充填後に一定時間経過後には固化してトンネル構造体を構築することが可能であることを実証するために、基本となる充填材に硬化剤と遅延剤とを混合し、後に凝結刺激剤と接触させることによって、硬化が急速に起こり、強度が増加することを、一軸圧縮強度試験を行って確認したものである。
使用される充填材は、表5に示す配合割合で材料を調整し、これを混合攪拌したものに、一定時間経過後に凝結刺激剤を接触させて硬化させるようにしたものである。
【0063】
【表5】
【0064】
表5のIに属する試料を配合、攪拌、混合した充填材の各材齢における一軸圧縮強度を試験した。試験は日本工業規格「土の一軸圧縮試験方法」(JIS A 1216 : 1998)に記載の方法により実行した。
なお、試験体の材齢が27日経過した後は、それぞれの濃度の凝結刺激剤に接触させ、急速に硬化させて強度を発現させた。この試験結果を表6および図9に示す。
【0065】
【表6】
【0066】
硬化剤及び凝結・硬化遅延剤の混合された充填材(実施例3-1,3-2)は凝結刺激剤が接触しない28日以前には、硬化剤及び凝結・硬化遅延剤の混合されていない充填材(比較例3-1)と同様に、時間経過しても強度増加があまり認められないが、凝結刺激剤を接触させた28日以降では急速に強度が高くなり、硬化剤が添加されているが凝結・硬化遅延剤が添加されていない充填材(比較例3-2)の強度発現と同等以上の速度で強度が増加するようになる。この結果により、実施例3-1,3-2はいずれも遅延効果を有しつつ、凝結刺激剤を添加することにより強度を自在に変更可能であることを示している。
【0067】
以上のように実施例1乃至3の試験結果によれば、実施例に係る充填材がシールド工法の掘削によって生じた余掘部分に適用できる特性を持った材料であり、その特性が、充填箇所における長時間の土圧によっても充填部位の形状が維持されて変形しないこと、またせん断強さが低く保たれることから、局部的な応力に対しては充填材が変形し易くシールドマシンの掘削・掘進に悪影響を与えないこと、さらに充填後の強度は任意の時間経過後に自在に変更可能であり、変更後には固化し、自由断面のトンネル築造を行うために、事前に空洞を充填して地盤変状を防止する空隙充填及び拡大シールドを安全に構築することが可能ならしめるものであることが実証されている。
【0068】
【発明の効果】
以上のように請求項1に係る自硬性空隙充填材では、自硬性のある空隙充填材料を余掘部分或は空洞へ注入することで、効果的に吸水・膨潤した自硬性空隙充填材で余掘部分或は空洞を埋めると共に、このゲル化した充填材がシールドマシン通過後まで固結せずに余掘部分或は空洞を安定に保持し、シールドマシンの再移動の際にもゲル化した充填材が抵抗を少なくして摩擦抵抗を最小限に止め、またセグメントの拡大時においても地山の崩壊沈下を抑止して、地表面の変状を抑止することができる。
【0069】
また、請求項2に係る自硬性空隙充填材では、ゲル化した充填材がシールドマシン通過後まで固結せずに余掘部分或は空洞を安定に保持し、シールドマシンの再移動の際にもゲル化した充填材が抵抗を少なくして摩擦抵抗を最小限に止め、またセグメントの拡大時においても地山の崩壊、地盤の変状を抑止する。
また、請求項3に係る自硬性空隙充填材では、シールドマシンの掘削によって生じた余掘部分に充填材を充填し、任意の位置や任意の時間経過後に、凝結刺激剤を接触・混合して、余掘部分に充填した自硬性充填材を急速に硬化させ、地山を安定に保持し崩壊・変状を抑止させることができる。
【0070】
また、請求項4に係る自硬性空隙充填材では、珪酸ナトリウムからなる前記凝結刺激剤が、珪酸ナトリウムの成分のうち、二酸化珪素23〜30%、酸化ナトリウム6〜10%を含有し、比重30(15℃Be ' )以上であり、凝結刺激剤を清水と希釈した濃度が50〜100%であることにより、硬化開始時期、硬化速度及び強度を調節・変更可能にした自硬性空隙充填材を構成することができる。
また、請求項5に係る空隙充填工法では、ゲル化した自硬性空隙充填材がシールドマシン通過後或いはセグメント拡大施工終了後までは固結せずに余掘部分或いは空洞を安定に保持し、崩壊・沈下を抑止して地表面の変状を抑止することができ、しかも、必要に応じて任意に設定した時間が経過した後に、充填した自硬性空隙充填材を急速に硬化させ、強度を速やかに発現できるようにして、シールドマシンの掘削・掘進、セグメント拡大施工について実質的に支障がなくなってから自硬性空隙充填材が硬化するように調整することができ、余掘部分或いは空洞が大きくなるような場合であっても、大幅なコスト増加させることなく、安全にかつ地表面の変状を抑止しつつ、自由断面のシールドトンネルを完成させることができる。
【0071】
また、請求項6に係る空隙充填工法では、珪酸ナトリウムからなる前記凝結刺激剤が、珪酸ナトリウムの成分のうち、二酸化珪素23〜30%、酸化ナトリウム6〜10%を含有し、比重30(15℃Be ' )以上であり、凝結刺激剤を清水と希釈した濃度が50〜100%であることにより、硬化開始時期、硬化速度及び強度を調節・変更可能にした自硬性空隙充填材を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の空隙充填工法における掘削経路が直線的な場合を示す平面説明図である。
【図2】本発明の空隙充填工法における掘削経路が曲線的な場合を示す平面説明図である。
【図3】本発明の空隙充填工法におけるシールドマシンの初期掘削時の状態を示す側面説明図である。
【図4】本発明の空隙充填工法におけるシールドマシン通過後の状態を示す側面説明図である。
【図5】本発明の空隙充填工法に用いられるシールドマシンの外周部への自硬性空隙充填材の供給システムを示す装置概要説明図である。
【図6】本発明の空隙充填試験装置を示す斜視説明図である。
【図7】本発明の空隙充填試験における地表面沈下の経時変化を示すグラフである。
【図8】本発明の自硬性空隙充填材に対するせん断強さの経時変化を示すグラフである。
【図9】本発明の自硬性空隙充填材に対する一軸圧縮強度の経時変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1 シールドマシン
2 セグメント
3 余掘部分
4 地山
5 地盤改良部分又は地中連続壁、構築物
10 裏込め注入材注入口(第3C液注入口)
11 裏込め注入材Cα液タンク
12 裏込め注入材Cα液ポンプ
13 裏込め注入材Cβ液タンク
14 裏込め注入材Cβ液ポンプ
15 裏込め材混合装置
16 自硬性空隙充填材タンク
17 自硬性空隙充填材ポンプ
18 凝結刺激剤タンク
19 凝結刺激剤ポンプ
20 テールシール材タンク
21 テールシール材ポンプ
22 自硬性空隙充填材注入口
23 凝結刺激剤注入口
24 テールシール材注入口、配管
25 テールブラシ
26 テールシール材
27 自硬性空隙充填材
28 硬化物
29 裏込め注入材
Claims (6)
- シールドマシンの余掘り掘削によって生じた空隙部分またはトンネルを拡大するときに掘削によって生じる空洞部分に充填するための充填材と水とを混合した自硬性空隙充填材であって、上記充填材は、充填材100重量%のうち、
(イ)セメントあるいはセメント系固化材または消石灰から選ばれる少なくとも一種の硬化材を11〜74重量%、
(ロ)スメクタイト、バーミキュライト、ブロフェンから選ばれる少なくとも一種である珪酸塩鉱物からなる膨潤材を11〜85.5重量%、
(ハ)前記硬化材の凝結・硬化を緩やかに行わせる糖類及び糖アルコール類を主成分とし、この糖類及び糖アルコール類の組成のうちマルトースが20重量%以上混合されている凝結・硬化遅延剤を0.5〜15重量%、
(ニ)酸化マグネシウムからなる硬化促進剤を1〜15重量%、
を含み、かつ、この充填材と水とを、重量比で充填材/(充填材+水)=0.1〜0.5となる割合で混合してなることを特徴とする自硬性空隙充填材。 - 前記(イ)の硬化材100重量部に対し、前記(ハ)の凝結・硬化遅延剤が5〜10重量部混合されることを特徴とする請求項1記載の自硬性空隙充填材。
- 請求項1または2記載の自硬性空隙充填材に、硬化開始時間、硬化速度及び強度を調節・変更可能にするために、珪酸ナトリウムからなる凝結刺激剤を添加して硬化させることを特徴とする自硬性空隙充填材。
- 珪酸ナトリウムからなる前記凝結刺激剤が、珪酸ナトリウムの成分のうち、二酸化珪素23〜30%、酸化ナトリウム6〜10%を含有し、比重30(15℃Be ' )以上であり、凝結刺激剤を清水と希釈した濃度が50〜100%であることを特徴とする請求項3記載の自硬性空隙充填材。
- 請求項1または2記載のゲル状の自硬性空隙充填材を地中の掘削や地中構造物の拡大時の掘削によって生じる余掘部分に充填し、任意の時間が経過した後に、珪酸ナトリウムからなる凝結刺激剤を接触・混合して硬化させて急速に強度発現させることにより、硬化速度・強度を変更可能にしたことを特徴とする空隙充填工法。
- 珪酸ナトリウムからなる前記凝結刺激剤が、珪酸ナトリウムの成分のうち、二酸化珪素23〜30%、酸化ナトリウム6〜10%を含有し、比重30(15℃Be ' )以上であり、珪酸ナトリウムを清水と希釈した濃度が50〜100%であることを特徴とする請求項5記載の空隙充填工法。
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