JP2006194369A

JP2006194369A - 自動調心ころ軸受用保持器及び自動調心ころ軸受とその製造方法

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Publication number: JP2006194369A
Application number: JP2005007549A
Authority: JP
Inventors: Noritoshi Imaide; 典敏今出
Original assignee: NSK Ltd
Current assignee: NSK Ltd
Priority date: 2005-01-14
Filing date: 2005-01-14
Publication date: 2006-07-27

Abstract

【課題】各球面ころを各ポケット９内に挿入する作業を容易に行なえると共に、これら各球面ころの脱落を有効に防止できる構造を実現する。
【解決手段】外向フランジ部１０を構成する円輪部１６の内周縁の円周方向複数個所に、舌片１４ａを形成する。各球面ころを各ポケット９に挿入する以前の状態で、各舌片１４ａのポケット９側の片側面を、上記円輪部１６のうちのこれら各舌片１４ａと円周方向同位置のポケット９側の片側面と同一の仮想平面上に位置させる。又、上記各舌片１４ａのこれら各ポケット９側の片側面と、これら各ポケット９の舌片１４ａと対向する内側面との最短距離Ｌ₉ ´を、これら各ポケット９内に保持する各球面ころの軸方向長さよりも大きくする。
【選択図】図２

Description

この発明に係る自動調心ころ軸受用保持器は、各種機械装置に組み込まれ、例えばハウジングの内側に回転軸を支承する為の自動調心ころ軸受に組み込んで利用する。

例えば重量の嵩む軸をハウジングの内側に回転自在に支承する為に従来から、特許文献１に記載された様な自動調心ころ軸受が使用されている。この特許文献１には、各球面ころを保持する１対の保持器を案内リングにより案内する構造が記載されている。これに対して、この案内リングを省略した構造が、特許文献２に記載されている。図６〜７は、この特許文献２に記載された自動調心ころ軸受１を示している。この自動調心ころ軸受１は、互いに同心に組み合わされた外輪２と内輪３との間に、複数の球面ころ４、４を転動自在に配列して成る。そして、１対の保持器５、５により、これら複数の球面ころ４、４の分離防止を図っている。これら各保持器５、５は、金属板にプレス加工を施す事により造った、所謂プレス保持器である。

上記外輪２の内周面には、単一の中心を有する球状凹面である外輪軌道６を形成している。又、内輪３の外周面の幅方向（図６の左右方向）両側には、それぞれが上記外輪軌道６と対向する、１対の内輪軌道７、７を形成している。又、上記複数の球面ころ４、４は、その最大径部が各球面ころ４、４の軸方向長さの中央部にある対称形で、上記外輪軌道６と上記１対の内輪軌道７、７との間に、２列に亙って転動自在に配列している。

上記各保持器５、５は、円すい筒状に形成した主部８を備える。この主部８には、上記各球面ころ４、４をそれぞれ転動自在に保持する複数のポケット９を、円周方向に関して等間隔に打ち抜き形成している。円周方向に隣り合うポケット９、９同士の間は、柱部１３、１３としている。又、上記主部８の大径側端縁部に外向フランジ部１０を、同じく小径側端縁部に内向フランジ部１１を、それぞれ上記金属板を径方向外方又は内方に折り曲げる事により形成している。

又、上記外向フランジ部１０の片側面外径寄り部分で、上記各球面ころ４、４（図６に記載。図７では省略。）の軸方向一端面に対向する部分に、断面矩形状のガイド凸部１２、１２を、上記各ポケット９毎に２個ずつ、互いに円周方向に離隔させて形成している。これら各ポケット９に上記各球面ころ４、４を、径方向外側から挿入した状態では、上記各ガイド凸部１２、１２の先端面がこれら各球面ころ４、４の軸方向一端面に摺接若しくは近接して、これら各球面ころ４、４がスキューする事を防止する。

又、上記外向フランジ部１０を構成する円輪部１６の内周縁部で上記各ポケット９の円周方向中間部に相当する位置に、それぞれ舌片１４を突出形成している。これら各舌片１４は、それぞれの先端が上記各ポケット９の内側に突出する方向に、上記外向フランジ部１０に対し傾斜している。前記自動調心ころ軸受１を組み立てた状態で保持器５の主部８は、図６に示す様に、球面ころ４、４のピッチ円よりも径方向内方に位置する。そして、上記各舌片１４は、図６に示す様に、球面ころ４、４の軸方向両端面の中央部にそれぞれ形成した円形の凹部１５、１５に係合して、これら各球面ころ４、４がポケット９から径方向外方に抜け出すのを防止する。各球面ころ４、４がポケット９から径方向内方に抜け出るのは、これら各球面ころ４、４の転動面と前記各柱部１３、１３の両側縁との係合により防止する。この為、上記各ポケット９の円周方向に関する幅は、上記各球面ころ４、４の直径よりも小さくしている。尚、上記各凹部１５、１５は、円形のものに限らず、これら各球面ころ４、４と同心の円環状のものでも良い。何れにしても、上記外向フランジ部１０の内側面に形成したガイド凸部１２、１２の端面は、上記各球面ころ４、４の軸方向一端面の一部で、上記各凹部１５、１５から各球面ころ４、４の径方向外方に外れた部分に摺接若しくは近接する。

上述の様に構成される自動調心ころ軸受１により、例えばハウジングの内側に回転軸を支承する場合、外輪２をハウジングに内嵌固定し、内輪３を回転軸に外嵌固定する。回転軸と共にこの内輪３が回転する場合には、複数の球面ころ４、４が転動して、この回転を許容する。ハウジングの軸心と回転軸の軸心とが不一致の場合、上記外輪２の内側で上記内輪３が調心する（外輪２の中心軸に対し内輪３の中心軸を傾斜させる）事で、この不一致を補償する。この場合に於いて、外輪軌道６は単一球面状に形成されている為、上記複数の球面ころ４、４の転動は、不一致補償後に於いても、円滑に行なわれる。

ところで、上述した従来構造の自動調心ころ軸受１の場合には、外向フランジ部１０の内周縁部に形成した舌片１４、１４を、各ポケット９に球面ころ４、４を挿入する以前から、これら各ポケット９の内側に向け、上記外向フランジ部１０に対し傾斜させている。この為、上記各球面ころ４、４を上記保持器５に組み付ける場合に、上記各ポケット９内にこれら各球面ころ４、４を挿入しにくいと言った問題があった。これに就いて、特許文献２に記載された構造と似た構造を有する、図８〜１１に示す保持器５ａを用いて説明する。この保持器５ａは、前述の図６〜７に示した保持器５の場合と同様に、金属板をプレス成形して成る。又、この保持器５ａの場合には、外向フランジ部１０の片側面外径寄り部分で、各球面ころ４の軸方向一端面に対向する部分に、断面半円形状のガイド凸部１２、１２を形成している。そして、各ポケット９に球面ころ４を挿入する以前でも、各舌片１４、１４を、これら各ポケット９の内側に向け、上記外向フランジ部１０に対し傾斜させている。この為、これら各ポケット９のうち、上記舌片１４を突出させた部分での、上記各球面ころ４の軸方向に関する間隔が狭くなり、これら各舌片１４の先端縁と上記各ポケット９のこれら各舌片１４と対向する内側面との最短距離Ｌ₉ （図９）が、上記各球面ころ４の軸方向長さＬ₄ （図１０）よりも小さくなる（Ｌ₉ ＜Ｌ₄ ）。従って、図１０に示す様に、球面ころ４をポケット９に外径側から挿入する場合に、この球面ころ４の軸方向一端面側（図１０、１１の左端側）の端縁部が上記舌片１４の先端縁に、上記球面ころ４の軸方向他端側（図１０〜１１の右端側）の端縁部が上記ポケット９の内向フランジ部１１側（図９〜１１の右端側）の内側面に、それぞれ当接する。この状態で、上記球面ころ４を上記ポケット９に更に挿入すると、上記舌片１４が、この球面ころ４の軸方向一端面により、このポケット９内の空間を広げる様に外側に弾性的に押される。そして、図１１に示す様に、上記球面ころ４の軸方向一端面に形成した凹部１５と上記舌片１４の先端部とが整合した状態で、この舌片１４が弾性復帰し、この凹部１５と係合する。

但し、上記保持器５ａは、耐久性を向上させる等の為の表面処理が施される場合があり、この場合には、上記舌片１４を含めた部分の剛性が高くなる。この為、球面ころ４をポケット９に組み付ける際に、この舌片１４を弾性変形させる為に要する力が大きくなる。従って、従来は、この球面ころ４をポケット９に挿入する作業を行なう為に、専用の挿入設備や治具を使用している。又、この様な専用の挿入設備を使用した場合でも、上記力が大きい為に、球面ころ４をポケット９の所望位置に挿入できない、所謂挿入ミスが発生する場合があり、この挿入ミスが発生する度に、製造作業が停止する事態が発生する。この事は、保持器５ａの製造コストが嵩む原因となる為、好ましくない。又、球面ころ４のポケット９への挿入時に上記舌片１４に加わる応力が弾性限度を越え、この舌片１４が塑性変形する場合もあり、この塑性変形が、球面ころ４が組み付け後にポケット９から外れ易くなる原因の一つとなっている。

例えば、球面ころ４をポケット９に挿入する方向（図１０に矢印イで示す方向）と、舌片１４のポケット９側の側面とがなす角度が大きくなると、上記球面ころ４の軸方向一端側の端縁部がこの舌片１４を乗り越える際に、この舌片１４を大きく変形させなくてはならず、この舌片１４に過大な力が作用する。そして、この舌片１４に過大な力が作用した場合には、この舌片１４に、機能不良に結び付く塑性変形が生じ易い。例えば、上記球面ころ４の挿入に伴いこの舌片１４が上記ポケット９の外側に塑性変形すると、この球面ころ４がこのポケット９内に挿入された状態で、上記舌片１４と前記凹部１５とが十分に係合されなくなる。これら舌片１４と凹部１５とが十分に係合されないと、上記球面ころ４が上記ポケット９の径方向外方に抜け落ちるのを確実に防止できない。
尚、本発明に関連する先行技術文献として、特許文献１、２の他に、特許文献３〜６がある。

特許第３０３９０８７号公報特許第３５２９１９１号公報特許第３５３８４８８号公報特許第３４７７８３５号公報特開２００２−１４７４５０号公報特開平１１−１６６５４５号公報

本発明は、上述の様な事情に鑑み、各球面ころの挿入作業を容易に行なえる様にし、更に、各球面ころの脱落を有効に防止すべく発明したものである。

本発明の自動調心ころ軸受用保持器及び自動調心ころ軸受のうち、請求項１に記載した自動調心ころ軸受用保持器は、前述の図６〜１１に示した従来構造と同様に、金属板にプレス加工を施す事により造られたもので、円すい筒状に形成され円周方向複数個所に、それぞれ球面ころを１個ずつ、転動自在に保持する複数のポケットを設けた主部と、この主部の大径側端縁部から径方向外方に折れ曲がった外向フランジ部とを備える。
そして、この外向フランジ部を構成する円輪部の内周縁で、上記各球面ころを上記各ポケット内に保持した状態で、これら各球面ころの軸方向一端面と対向する部分に、これら各ポケットの内側に向けて突出し、これら各球面ころの軸方向一端面に形成された凹部と係合して、これら各球面ころがこれら各ポケットから径方向外方に抜け出すのを防止する為の舌片を設けている。
特に、請求項１に記載した自動調心ころ軸受用保持器に於いては、上記各球面ころを上記各ポケット内に挿入する以前の状態で、上記各舌片のこれら各ポケット側の片側面と、これら各ポケットのこれら各舌片と対向する内側面との最短距離を、これら各ポケット内に保持する各球面ころの軸方向長さよりも大きくすると共に、上記各舌片を上記各ポケットの内側に向け塑性変形可能としている。

又、請求項３に記載した自動調心ころ軸受も、前述の図６〜１１に示した従来構造と同様に、外輪と、内輪と、複数の球面ころと、１対の保持器とから構成される。
このうちの外輪は、単一の中心を有する球状凹面である外輪軌道を内周面に形成している。
又、上記内輪は、上記外輪軌道と対向する１対の内輪軌道を外周面に形成している。
又、上記各球面ころは、これら外輪軌道と内輪軌道との間に、２列に亙って転動自在に設けられている。
又、上記両保持器は、上記各球面ころを転動自在に保持する複数のポケットを備えている。
特に、請求項３に記載した自動調心ころ軸受に於いては、上記両保持器が、上述した自動調心ころ軸受用保持器である。

又、請求項４に記載した自動調心ころ軸受の製造方法は、上述した自動調心ころ軸受の製造方法であって、複数のポケットのうちの少なくとも１個のポケットに球面ころを挿入した後、このポケットに対向する舌片をこの球面ころの軸方向一端面に形成した凹部に向け塑性変形させる事により、これら舌片と凹部とを係合させる。

上述の様に構成する本発明の自動調心ころ軸受用保持器の場合、各球面ころの各ポケット内への挿入作業を、舌片により妨げられる事なく容易に行なえる。又、各球面ころの各ポケット内への挿入時に、舌片がこれら各球面ころの端縁部により、ポケットの外側に押される事を防止できる。この結果、上記舌片に、機能不良に結び付く様なポケットの外側への変形が生じる事を防止でき、保持器に対する各球面ころの脱落をより有効に防止できる。更に、本発明の自動調心ころ軸受は、上述の様な自動調心ころ軸受用保持器を組み込む事により、安価に信頼性を向上させる事ができる。又、本発明の自動調心ころ軸受の製造方法により、各球面ころの挿入作業を容易に行なえると共に、保持器に対するこれら各球面ころの脱落を有効に防止できる。

本発明を実施する為に好ましくは、請求項２に記載した様に、各球面ころを各ポケット内に挿入する以前の状態で、各舌片のポケット側の片側面を、外向フランジ部を構成する円輪部のうちの、これら各舌片と円周方向同位置の上記各ポケット側の片側面と同一の仮想平面上に位置させる。
この好ましい構成によれば、製造コストをより低減できる。

図１〜３は、本発明の実施例１の保持器５ａを示している。尚、本発明の自動調心ころ軸受用保持器の特徴は、各球面ころ４を各ポケット９内に挿入する際に、保持器５ａに設けた舌片１４ａがこの挿入の作業の妨げとなる事を防止すると共に、上記各球面ころ４の脱落を有効に防止すべく、舌片１４ａとポケット９の内側面との最短距離を、各球面ころ４の寸法との関係で適切に規制した点にある。その他の構造及び作用は、前述の図８〜１１に示した従来構造と同様である。又、本発明の自動調心ころ軸受のうち、保持器５ａ以外の部分の構造は、前述の図６に示した従来構造の自動調心ころ軸受１と同様である。この為、前述の図６に示した従来構造又は図８〜１１に示した従来構造と同等部分に関する説明は省略若しくは簡略にし、以下、本発明の特徴部分を中心に説明する。

本実施例の保持器５ａは、前述の図８〜１１に示した従来構造と同様に、金属板をプレス成形して成る。又、この保持器５ａを構成する円すい筒状の主部８の大径側端縁部に形成した外向フランジ部１０の内周縁部で、上記各ポケット９の円周方向中間部に相当する位置に、舌片１４ａを、それぞれ突出形成している。又、上記各球面ころ４を上記各ポケット９内に挿入する以前の状態で、上記各舌片１４ａのポケット９側の片側面（図１の表側面、図２、３の右側面）を、上記外向フランジ部１０を構成する円輪部１６のうちの、これら各舌片１４ａと円周方向同位置の上記各ポケット９側の片側面（図１の表側面、図２、３の右側面）と同一の仮想平面上に位置させている。そして、上記各球面ころ４を上記各ポケット９内に挿入する以前の状態で、上記各舌片１４ａのこれら各ポケット９側の片側面と、これら各ポケット９のこれら各舌片１４ａと対向する内側面との最短距離Ｌ₉ ´を、これら各ポケット９内に保持する各球面ころ４の軸方向長さＬ₄ （図１０参照）よりも大きくしている（Ｌ₉ ´＞Ｌ₄ ）。又、上記各舌片１４ａは、保持器５ａの他の部分と同様、金属板製であり、上記各ポケット９の内側に向け塑性変形可能としている。

上述の様に構成する本実施例の場合には、上記各ポケット９内に上記各球面ころ４を挿入する以前の状態で、上記各舌片１４ａのこれら各ポケット９側の片側面と、これら各ポケット９のこれら各舌片１４ａと対向する内側面との最短距離Ｌ₉ ´を、これら各ポケット９内に保持する各球面ころ４の軸方向長さＬ₄ よりも大きくしている（Ｌ₉ ´＞Ｌ₄ ）。この為、これら各球面ころ４を上記各ポケット９内に挿入する作業を、これら各球面ころ４の軸方向一端縁部（図３の左端縁部）が舌片１４ａに押し付けられる事なく、容易に行なえる。

具体的には、図３（Ａ）に示す様に、球面ころ４をポケット９に、外径側から同図に矢印イで示す方向に挿入する。上述の様に、上記最短距離Ｌ₉ ´を上記軸方向長さＬ₄ よりも大きくしている為、上記球面ころ４の挿入作業時に、この球面ころ４の軸方向一端縁部と舌片１４ａとが当接する事を防止できる。次いで、図３（Ｂ）に示す様に、この球面ころ４の軸方向両端面に形成した凹部１５のうちの軸方向一端側の凹部１５と舌片１４ａとが整合した状態で、この舌片１４ａを、工具等により外側から塑性変形させ、その先端が上記凹部１５の内側に突出する方向に、上記外向フランジ部１０に対し傾斜させる。そして、上記各ポケット９ａ内に上記各球面ころ４を挿入した状態で、これら各球面ころ４の軸方向一端面に形成した凹部１５と上記各舌片１４とを係合させる。この結果、これら各球面ころ４が上記各ポケット９から径方向外方に抜け出る事を防止できる。尚、上記凹部１５は、円形のものに限らず、各球面ころ４と同心の円環状の場合もある。
本発明の自動調心ころ軸受の製造方法は、この様に、複数のポケット９のうちの少なくとも１個のポケット９に球面ころ４を挿入した後、このポケット９に対向する舌片１４ａを、この球面ころ４の軸方向一端面に形成した凹部１５に向け塑性変形させる事により、上記舌片１４ａと凹部１５とを係合させる。

この様に本実施例によれば、各球面ころ４を各ポケット９内に挿入する作業を、これら各球面ころ４の軸方向一端縁部が舌片１４ａに押し付けられる事なく、容易に行なえる。この為、本実施例の保持器５ａを組み込んだ自動調心ころ軸受の組立作業を容易に行なえると共に、上記球面ころ４の挿入に伴い上記舌片１４ａに、機能不良に結び付く様な過大な変形が生じる事を防止でき、上記保持器５ａに対する各球面ころ４の脱落を有効に防止できる。又、本実施例の場合には、各球面ころ４の各ポケット９内への挿入作業を容易に行なえる様にしつつ、これら各球面ころ４の軸方向一端面に形成した凹部１５と舌片１４ａとの係合代（引っ掛かり代）を十分に大きくできる。即ち、前述の図６〜１１に示した従来構造の場合には、各球面ころ４のポケット９への挿入時に、各球面ころ４の軸方向一端縁部により舌片１４を、ポケット９の外側に弾性変形させなければならない。この為に、従来構造の場合には、凹部１５と舌片１４との係合代をあまり大きくはできない。これに対して、本実施例の場合には、ポケット９に球面ころ４を挿入後、舌片１４ａをポケット９側に塑性変形させれば良く、上記係合代を十分に大きくできる。この為、各球面ころ４の脱落をより有効に防止でき、各製品での品質の安定化を図れる。更に、上述の様な保持器５ａを組み込んだ自動調心ころ軸受により、安価に信頼性を向上させる事ができる。

次に、図４〜５は、本発明の実施例２を示している。本実施例の保持器５ａの場合には、外向フランジ部１０のポケット９側（図４の表側、図５の右側）の片側面で、円輪部１６の内周縁と各舌片１４ａとの連結部に、それぞれ凹溝１７を、円周方向に亙って形成している。これら各凹溝１７の両端は、上記各舌片１４ａの幅方向両側縁にまで達している。
この様な本実施例の構造によれば、上記各舌片１４ａを各ポケット９の内側に向け塑性変形させるのに要する力を小さくできる。この為、ポケット９内に球面ころ４（図３参照）を挿入した後、この球面ころ４の軸方向一端面に形成した凹部１５（図３参照）に向け舌片１４ａを塑性変形させる作業を、より容易に行なえる。
その他の構成及び作用に就いては、前述の実施例１の場合と同様である為、同等部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。

尚、上述した各実施例では、各球面ころ４を各ポケット９内に挿入する以前の状態で、各舌片１４ａのポケット９側の片側面を、外向フランジ部１０を構成する円輪部１６のうちの、これら各舌片１４ａと円周方向同位置の上記各ポケット９側の片側面と同一の仮想平面上に位置させている。但し、本発明の自動調心ころ軸受用保持器は、この様な構造に限定するものではなく、各球面ころを各ポケット内に挿入する以前の状態で、各舌片のポケット側の片側面を、外向フランジ部を構成する円輪部のうちの、これら各舌片と円周方向同位置の上記ポケット側の片側面よりもポケットの外側に位置させる事もできる。例えば、上記円輪部の片側面と上記各舌片の片側面との間に段部を設ける等により、これら各舌片の片側面を、上記円輪部の片側面よりもポケットの外側に位置させる。

又、上述した各実施例では、保持器の案内リングがない構造に本発明を適用した場合に就いて示したが、例えば、前述の特許文献１に記載されている様に、案内リングを有すると共に、舌片により球面ころの脱落を防止する自動調心ころ軸受用保持器にも本発明は適用可能である。即ち、自動調心ころ軸受に使用する保持器のうち、球面ころの端面に形成した凹部に舌片を係合する構造であれば本発明を適用可能である。

本発明の実施例１の保持器を示す、図７のＡ−Ａ断面相当図。図１のＢ−Ｂ断面図。実施例１の保持器に球面ころを組み付ける状態を示す部分断面図。本発明の実施例２の保持器を示す、図１と同様の図。図４のＣ−Ｃ断面図。従来構造の自動調心ころ軸受の１例を示す部分断面図。図６の構造に組み込んだ保持器の一部を径方向外方から見た図。従来構造の別例の保持器を示す、図７のＡ−Ａ断面相当図。図８のＤ−Ｄ断面図。従来構造の別例の保持器のポケットに、球面ころを挿入する状態を示す部分断面図。同じく、球面ころを図１０に示す状態から更に挿入した状態を示す部分断面図。

符号の説明

１自動調心ころ軸受
２外輪
３内輪
４球面ころ
５、５ａ保持器
６外輪軌道
７内輪軌道
８主部
９ポケット
１０外向フランジ部
１１内向フランジ部
１２ガイド凸部
１３柱部
１４、１４ａ舌片
１５凹部
１６円輪部
１７凹溝

Claims

金属板にプレス加工を施す事により造られたもので、円すい筒状に形成され円周方向複数個所に、それぞれ球面ころを１個ずつ、転動自在に保持する複数のポケットを設けた主部と、この主部の大径側端縁部から径方向外方に折れ曲がった外向フランジ部とを備え、この外向フランジ部を構成する円輪部の内周縁で、上記各球面ころを上記各ポケット内に保持した状態で、これら各球面ころの軸方向一端面と対向する部分に、これら各ポケットの内側に向けて突出し、これら各球面ころの軸方向一端面に形成された凹部と係合して、これら各球面ころがこれら各ポケットから径方向外方に抜け出すのを防止する為の舌片を設けた自動調心ころ軸受用保持器に於いて、上記各球面ころを上記各ポケット内に挿入する以前の状態で、上記各舌片のこれら各ポケット側の片側面と、これら各ポケットのこれら各舌片と対向する内側面との最短距離を、これら各ポケット内に保持する各球面ころの軸方向長さよりも大きくすると共に、上記各舌片を上記各ポケットの内側に向け塑性変形可能とした事を特徴とする自動調心ころ軸受用保持器。
各球面ころを各ポケット内に挿入する以前の状態で、各舌片のポケット側の片側面を、外向フランジ部を構成する円輪部のうちの、これら各舌片と円周方向同位置の上記各ポケット側の片側面と同一の仮想平面上に位置させた、請求項１に記載した自動調心ころ軸受用保持器。
単一の中心を有する球状凹面である外輪軌道を、その内周面に形成した外輪と、上記外輪軌道と対向する１対の内輪軌道を、その外周面に形成した内輪と、これら外輪軌道と内輪軌道との間に、２列に亙って転動自在に設けられた複数の球面ころと、これら各球面ころを転動自在に保持する複数のポケットを備えた１対の保持器とから構成される、自動調心ころ軸受に於いて、これら両保持器が、請求項１又は請求項２に記載した自動調心ころ軸受用保持器である自動調心ころ軸受。
請求項３に記載した自動調心ころ軸受の製造方法であって、複数のポケットのうちの少なくとも１個のポケットに球面ころを挿入した後、このポケットに対向する舌片をこの球面ころの軸方向一端面に形成した凹部に向け塑性変形させる事により、これら舌片と凹部とを係合させる、自動調心ころ軸受の製造方法。